(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】輸送機器
(51)【国際特許分類】
B63H 21/14 20060101AFI20220714BHJP
B63H 21/17 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
B63H21/14
B63H21/17
(21)【出願番号】P 2022037181
(22)【出願日】2022-03-10
【審査請求日】2022-03-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522097049
【氏名又は名称】佐伯重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 豊
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2021-0145031(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0124365(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0011354(US,A1)
【文献】特表2013-517986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 21/14
B63H 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを貯蔵する第1の容器と、
前記アンモニアを改質して水素と窒素とを生成する水素生成装置と、
前記水素生成装置で生成された前記窒素を貯蔵する第2の容器と、
を備える輸送機器であって、
前記水素が燃料として使用され、
前記窒素は、パージガスとして前記水素を供給する水素供給ラインへ供給され
ることを特徴とする、輸送機器。
【請求項2】
前記水素供給ラインにおいて、前記パージガスの流れる方向は、前記水素が供給される方向と逆向きであることを特徴とする請求項
1に記載の輸送機器。
【請求項3】
前記パージガスは、前記水素の供給圧力より高い圧力で前記水素供給ラインへ供給されることを特徴とする請求項
1又は
2に記載の輸送機器。
【請求項4】
貨物艙を備え、
前記パージガスは、前記貨物艙へ供給されることを特徴とする請求項
1乃至
3の何れか1項に記載の輸送機器。
【請求項5】
前記パージガスは、前記第1の容器へ供給されることを特徴とする請求項
1乃至
4の何れか1項に記載の輸送機器。
【請求項6】
アンモニアを貯蔵する第1の容器と、
前記アンモニアを改質して水素と窒素とを生成する水素生成装置と、
前記水素生成装置で生成された前記窒素を貯蔵する第2の容器と、
貨物艙と、
を備える輸送機器であって、
前記水素が燃料として使用され、
前記窒素は、パージガスとして前記貨物艙へ供給されることを特徴とする、輸送機器。
【請求項7】
アンモニアを貯蔵する第1の容器と、
前記アンモニアを改質して水素と窒素とを生成する水素生成装置と、
前記水素生成装置で生成された前記窒素を貯蔵する第2の容器と、
を備える輸送機器であって、
前記水素が燃料として使用され、
前記窒素は、パージガスとして前記第1の容器へ供給されることを特徴とする、輸送機器。
【請求項8】
前記輸送機器は、船舶であることを特徴とする、請求項1乃至7の何れか1項に記載の輸送機器。
【請求項9】
内燃機関を備え、
前記内燃機関は、前記水素生成装置により生成された前記水素のみを燃料として動力を発生し、前記動力により駆動されることを特徴とする、請求項1乃至8の何れか1項に記載の輸送機器。
【請求項10】
内燃機関を備え、
前記内燃機関は、前記水素生成装置により生成された前記水素と前記アンモニアとを混焼して動力を発生し、前記動力により駆動されることを特徴とする、請求項1乃至8の何れか1項に記載の輸送機器。
【請求項11】
燃料電池と原動機とを備え、
前記燃料電池は、前記水素生成装置により生成された前記水素を用いて電気を発生し、前記電気により前記原動機が駆動されることを特徴とする、請求項1乃至8の何れか1項に記載の輸送機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアの改質により生成された水素を燃料とする輸送機器に関する。
【背景技術】
【0002】
2018年4月にIMO(国際海事機関)のGHG削減戦略が採択され、GHG(Greenhouse Gas)ゼロ排出を目指す必要性が出てきた。そこで、代替燃料としてカーボンフリーである水素やアンモニア等が検討されている。
【0003】
特許文献1には、可燃性ガスとしてアンモニアを搭載し、アンモニアによって内燃機関を作動させる船舶が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているような内燃機関によるアンモニアの燃焼では、二酸化炭素の約300倍の温室効果がある酸化二窒素(N2O)が発生するので、GHGゼロ排出にはならない。また、特許文献1では、不活性ガスを供給するために不活性ガス供給装置が必要となり、例えば、窒素ガス発生装置等の大きな設備を搭載する必要がある。
【0006】
本発明は、アンモニアの改質により生成された水素を燃料とする輸送機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の輸送機器は、アンモニアを貯蔵する第1の容器と、前記アンモニアを改質して水素と窒素とを生成する水素生成装置と、を備える輸送機器であって、前記水素が燃料として使用されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アンモニアの改質により生成された水素を燃料とする輸送機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る輸送機器100の模式図である。
【
図3】アンモニア補給時のシステムフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照符号を付し、重複する部材の説明は省略する。
【0011】
まず、
図1を参照して、本実施形態における輸送機器100の概略について説明する。
図1は、本実施形態の動力発生システムを搭載した輸送機器100を示す模式図である。
【0012】
本実施形態の動力発生システムは、エネルギー源となるアンモニアを貯蔵するアンモニアタンク1(第1の容器)、アンモニアを改質して水素と窒素とを生成する水素生成装置A、生成された水素を燃料として使用する内燃機関8で構成されている。または、内燃機関8の代わりに燃料電池と原動機を備えて、水素生成装置Aにより生成された水素のみを用いて電気を発生し、電気により原動機が駆動される構成としてもよい。このシステムを搭載する輸送機器100としては、船舶、自動車、列車、航空機等が含まれる。
【0013】
以下、輸送機器100が船舶である実施形態について説明する。本発明の実施形態である船舶は、船体に上記システムを搭載する。船種は、例えば、ばら積み貨物船、コンテナ船、液化ガス運搬船、原油タンカー、フェリー、RORO船、自動車運搬船、客船等が含まれる。
【0014】
次に、動力発生システムを構成する各構成部材について、
図1、
図2を用いて説明する。
図2は、動力発生システムが通常運転している時のシステムのフローを示す。
【0015】
船体に搭載されるアンモニアタンク1には、液体のアンモニア(LNH3)を水素生成装置Aへ供給するためのアンモニア供給ライン2が接続されている。更に、後述の不活性ガスをパージするためのタンクパージライン13(第3のパージライン)及び外部からアンモニアを補給するためのバンカリングライン14も接続されている。図面において、アンモニアの流れは一点鎖線の矢印、水素の流れは破線の矢印、そして、窒素の流れは実線の矢印で示されている。
【0016】
バンカリングライン14からは、液体アンモニアがアンモニアタンク1に充填される。そして、液体のアンモニアは、アンモニア供給ライン2を通り調節弁V1を介して気化器3へ送られる。この気化器3において、液体のアンモニアは気化し調節弁V2を介して改質器4へ送られる。
【0017】
改質器4は、気体のアンモニアを改質して、水素と窒素を生成する水素生成装置Aの一部を構成する。改質器4自体は一般的な装置であるので、ここでは改質器4の詳細な説明は省略する。改質器4で生成された窒素は改質器4内で分離され、窒素タンク5(第2の容器)に一般的な圧縮機を用いて加圧して貯蔵される。一時的に窒素タンク5に貯蔵された窒素は、パージガスとして所望の場所に供給される。パージガスの供給については、後述する。
【0018】
同様に、改質器4で生成された水素は改質器4内で分離され、水素タンク6に一般的な圧縮機を用いて加圧して貯蔵される。一時的に水素タンク6に貯蔵された水素は、水素供給ライン7を経由して、内燃機関8へ供給される。水素供給ライン7は、いわゆる二重管となっており、
図1に示すように二重管の中央部には、破線で示された内側管7aが設けられ、内側管7aの外周部を囲むように外側管7bが形成されている。生成された水素は、内側管7aを通って内燃機関8へ供給され、外側管7bには、不活性ガスが供給される。
【0019】
不活性ガスである窒素は、水素供給ライン7をパージするパージガスとして使用することができる。パージガスを供給する際は、水素を供給する水素供給ライン7の外側管7bに窒素が供給される。一方、水素の漏洩が検知された際には、内側管7aにも窒素が供給されるようになっている。
【0020】
本実施形態の内燃機関8は、船上でアンモニアを改質して生成された水素を燃料として動力を発生する。内燃機関8によって発生された動力により輸送機器100である船舶は推進することができる。一方、水素燃料タンクを船上に備え、水素を燃料として用いることも考えられるが、水素は液体でも重油の4.5倍の体積となるため燃料体積が大きく、また、液化の状態を保持するためには-253℃にする必要があり、タンクの構造の条件が厳しい。そして、水素バンカリング技術が未成熟であり、供給インフラも未整備である。更に水素の漏洩、BOG(ボイルオフガス)対策、タンクの脆性対策が必要となるといった問題がある。
【0021】
また、アンモニアを直接内燃機関で燃焼させて動力を得るアンモニア燃焼船も考えられるが、難燃性であるアンモニアの燃焼制御の確立、排気ガス中のN2O対策が必要となる。また、アンモニアを専焼させる技術が未成熟である等の問題がある。
【0022】
本実施形態では、アンモニアを一次燃料として用いることで、理論的に水素燃料タンクに対して約2/3の容積とすることが可能である。すなわち、次式で示されるように、
2NH3→N2+3H2
アンモニアを改質することにより、アンモニアの体積の1.5倍の体積の水素を得ることができる。このようにしてアンモニアタンク1は、水素燃料タンクに対して小型化することができる。
【0023】
また、本実施形態では、水素タンク6を生成された水素の一時的なバッファータンクとして用いるため、水素燃料タンクに求められる極低温(-253℃)の保持やBOG対策は不要となる。また、アンモニアを改質して得られる水素を燃料とすることで、アンモニアの燃焼性の問題とN2Oの発生の問題も同時に解決することができる。
【0024】
本実施形態によれば、アンモニアの改質により生成された水素を燃料とする輸送機器100を提供することができる。
【0025】
また、排気ガスの浄化に尿素SCR(選択触媒還元)17を装備する必要があるときは、アンモニアタンク1からアンモニアを尿素SCR17に供給するようにしてもよい。
【0026】
次に、水素の生成と同時に生成される窒素によるパージについて
図1、
図2を用いて説明する。改質により生成された窒素は加圧され、窒素タンク5に貯蔵されている。燃料配管パージライン11(第1のパージライン)は、窒素タンク5から水素供給ライン7へ接続されている。水素供給ライン7は、内側管7aとその外側を取り囲む外側管7bによって構成された二重管となっており、一端側は内燃機関8へ、他端側は水素生成装置Aへ接続されている。燃料である水素は、内側管7aを通って内燃機関8の燃料バルブへ供給される。
【0027】
内燃機関8と水素供給ライン7が備えられている領域は、ガス安全機関区域Bである。このガス安全機関区域Bには、排気用の換気口15が備えられ、換気口15からの配管が水素供給ライン7の外側管7bに接続されている。そして、水素生成装置Aには、排気ファン16が接続されている。換気口15と排気ファン16により、水素供給ライン7の外側管7bと水素生成装置Aは、少なくとも毎時30回の空気を送り込む換気を行うことができる。また、より好適には毎時10回の換気としてもよい。
【0028】
または、水素供給ライン7の外側管7bに接続された燃料配管パージライン11から窒素を供給してもよい。窒素は、水素供給ライン7において水素タンク6から最も離れている位置から供給され、窒素の流れる方向は、内側管7aにおける水素が供給される方向と逆向きとなっている。このようにすることで、水素をより安全に内燃機関8へ供給することができる。
【0029】
次に、不図示のセンサー等により、水素の漏洩が検知された際のパージについて説明する。水素の漏洩が検知された際は、換気口15を閉じると共に、水素タンク6からの水素の供給を停止する。そして、燃料配管パージライン11の調節弁V3を開放して、内側管7aと外側管7bの両方に自動的に窒素が充填されるようになっている。このようにすることで、水素供給ライン7の内側管7a内の水素がガス安全機関区域B内に漏洩することを防止できる。若しくは、窒素は、水素の供給圧力P1より高い圧力(P2)で水素供給ライン7へ供給される。
【0030】
貨物艙パージライン12(第2のパージライン)は、窒素タンク5から貨物艙9へ接続されている。生成された窒素は、貨物艙パージライン12を通って貨物艙9へ供給される。この貨物艙9には、例えば原油等の引火性のある物質が貯蔵されることがあるので、不活性ガスとしての窒素を充填しておく。
【0031】
タンクパージライン13は、窒素タンク5からアンモニアタンク1へ接続されている。生成された窒素は、タンクパージライン13を通ってアンモニアタンク1へ供給される。アンモニアは燃料として使用されるので、アンモニアタンク1のアンモニアは減少していくが、窒素によってパージしておくことにより、アンモニアタンク1が最適な圧力で保たれる。パージ圧力は、アンモニアタンク1内の温度と圧力により決定されるが、アンモニアタンク1内でアンモニアを液化状態で保持するように設定される。
【0032】
次に、燃料補給時のパージについて、
図3を用いて説明する。
図3は、アンモニアタンク1にアンモニアを補給する時のシステムのフローを示す。生成された窒素は加圧され、窒素タンク5に貯蔵されている。燃料補給時において内燃機関8は停止しているので、内燃機関8へ水素は供給されていない。そこで、燃料配管パージライン11における調節弁V4は閉鎖され、水素供給ライン7へ窒素は供給しない。
【0033】
燃料補給時においても、貨物艙9には貨物艙パージライン12から窒素がパージされている。それは、引火性のある貨物等は常に不活性ガスでパージしておく必要があるためである。
【0034】
また、燃料補給時においても、アンモニアタンク1にはタンクパージライン13から窒素がパージされる。それは、アンモニアタンク1及びアンモニア供給ライン2は、その内部に爆発性危険雰囲気が形成されることを避けるため、乾燥空気により通気する前に窒素によりイナーティングされるものとする。また、液体アンモニア(無水)は、発火源となる静電気を発生させる危険性があるため、空気の存在する空のアンモニアタンク1に吹きつけないようにしなければならない。
【0035】
本実施形態によれば、アンモニアを改質して得られた窒素をパージガスとして用いることにより、不活性ガスを供給するための不活性ガス供給装置を追加で備える必要がなく、貨物艙9の拡大や燃料タンクの大型化等、スペースの有効活用が可能となる。また、追加の設備が不要となるので、コストダウンも可能となる。
【0036】
(実施例1)
本発明の実施例1について、
図4を用いて説明をする。
図4は、実施例1の改質器4の周辺の構成を示す。気化器3で気化したアンモニアは、改質器4における触媒槽4Aで改質され、改質されたガスには水素(破線矢印)、窒素(実線矢印)及び残留アンモニア(一点鎖線矢印)が含まれる。これらのガスは、触媒槽4Aの下流に配置された水素分離PSA装置4C(Pressure Swing Adsorption、圧力変動吸着)により水素が分離され、分離された水素は水素分離PSA装置4Cの水素出力配管から水素タンク6へ送られる。
【0037】
一方、水素分離PSA装置4Cで分離されなかった窒素と残留アンモニアを含むガスは、水素分離PSA装置4Cの下流に配置された窒素分離PSA装置4Bにより窒素が分離される。分離された窒素は窒素分離PSA装置4Bの窒素出力配管から窒素タンク5へ送られる。なお、窒素分離PSA装置4Bで分離の際に残された残留アンモニアには、多少の残留窒素が含まれている。
【0038】
窒素分離PSA装置4Bの下流に配置された再液化装置4Dによって、残留アンモニアは液化されるが、この液化の際に残留窒素は分離される。そして、液体のアンモニアとして気化器3の上流に還元される。実施例1で使用される再液化装置4Dは、圧縮機で構成されている。アンモニアは、常温において8気圧以上に加圧することで液化できるので、この再液化装置4Dでアンモニアは容易に液化される。なお、再液化装置4Dには、安全のために安全弁V5が備えられている。
【0039】
本発明の実施例1では、水素の純度は約90%、残りは窒素を約10%の構成とし、残留アンモニアは完全に除去され、高純度の水素と若干の窒素が内燃機関8へ供給される。そして、内燃機関8の運転全域において、水素生成装置Aの改質器4により生成された水素のみを燃料として内燃機関8は動力を発生させる。またパージ用のガスとして、生成された窒素を利用することができるので付加的な窒素発生装置や窒素容器を設けることを必要としないという優れた効果が得られる。
【0040】
実施例1では、水素の純度が高いので、内燃機関8ではなく、燃料電池と原動機を備え、燃料電池は、水素生成装置Aの改質器4により生成された水素のみを用いて電気を発生し、この電気により原動機を駆動して動力を発生させてもよい。このように、実施例1では、高純度の水素を燃焼させるので、温室効果ガスの排出をほぼゼロにすることが可能となる。
【0041】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について
図5を用いて説明をする。
図5は、実施例2の改質器24の周辺の構成を示す。気化器3で気化したアンモニアは、改質器24における触媒槽24Aで改質され、改質されたガスには水素、窒素及び残留アンモニアが含まれることは実施例1と同じである。これらのガスは、触媒槽24Aの下流に配置された再液化装置24Dによってガス中の残留アンモニアが液化され、液体のアンモニアとして気化器3の上流に還元される。
【0042】
実施例2で使用される再液化装置24Dは、冷却器で構成されている。アンモニアは、例えば-33度以下に冷却することで液化できるので、この再液化装置24Dでアンモニアは容易に液化される。
【0043】
そして、再液化装置24Dを通過した水素と窒素を含むガスは、再液化装置24Dの下流に配置された水素分離PSA装置24Cにより水素が分離され、分離された水素は水素分離PSA装置24Cの水素出力配管から水素タンク6へ送られる。
【0044】
一方、水素分離PSA装置24Cで分離されなかった窒素には若干の残留水素が含まれており、このガスは、水素分離PSA装置24Cの下流に配置された窒素分離PSA装置24Bにより窒素が分離される。分離された窒素は窒素分離PSA装置24Bの窒素出力配管から窒素タンク5へ送られる。なお、窒素分離PSA装置24Bで分離の際に残された残留水素は、水素タンク6へ送られる。また、窒素分離PSA装置24Bでは完全に窒素を分離することは難しいので、多少の窒素も水素タンク6へ送られる。
【0045】
本発明の実施例2でも、水素の純度は約90%、残りは窒素を約10%の構成とし、残留アンモニアは完全に除去され、高純度の水素と若干の窒素が内燃機関8へ供給される。本発明の実施例2も実施例1と同様な効果が得られる。
【0046】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3について
図6を用いて説明をする。
図6は、実施例3の改質器34の周辺の構成を示す。気化器3で気化したアンモニアは、改質器34における触媒槽34Aで改質され、改質されたガスには水素、窒素及び残留アンモニアが含まれることは実施例1と同じである。実施例3は、実施例2と比較して、実施例2における水素分離PSA装置24Cが省略され、更に窒素分離PSA装置24Bに代わって膜分離による窒素膜分離装置34Bを備えた構成である。
【0047】
再液化装置34Dを通過した水素と窒素を含むガスから、窒素だけをPSAで分離することはできないため、実施例3では、膜分離による窒素膜分離装置34Bを用いる。そして、再液化装置34Dの下流に配置された窒素膜分離装置34Bにより窒素が分離され、分離された窒素は窒素膜分離装置34Bの窒素出力配管から窒素タンク5へ送られる。
【0048】
一方、窒素膜分離装置34Bで分離されなかったガスには水素が含まれており、このガスが窒素膜分離装置34Bの窒素出力配管とは異なる出力配管から水素タンク6へ送られる。
【0049】
本発明の実施例3でも、水素の純度は約90%、残りは窒素を約10%の構成とし、残留アンモニアは完全に除去され、高純度の水素と若干の窒素が内燃機関8へ供給される。本発明の実施例3も実施例1と同様な効果が得られる。
【0050】
(実施例4)
次に、本発明の実施例4について
図7を用いて説明をする。
図7は、実施例4の改質器44の周辺の構成を示す。気化器3で気化したアンモニアは、改質器44における触媒槽44Aで改質され、改質されたガスには水素、窒素及び残留アンモニアが含まれることは実施例1と同じである。実施例4は、実施例3と比較して、実施例3における再液化装置34Dが省略された構成である。
【0051】
触媒槽44Aを通過した水素、窒素及び残留アンモニアを含むガスから、窒素だけをPSAで分離することはできないため、実施例4でも実施例3と同様、膜分離による窒素膜分離装置44Bを用いる。そして、触媒槽44Aの下流に配置された窒素膜分離装置44Bにより窒素が分離され、分離された窒素は窒素膜分離装置44Bの窒素出力配管から窒素タンク5へ送られる。
【0052】
一方、窒素膜分離装置44Bで分離されなかったガスには水素と残留アンモニアが含まれており、このガスが窒素膜分離装置44Bの窒素出力配管とは異なる出力配管から水素タンク6へ送られる。
【0053】
本発明の実施例4では、水素の純度は約90%、窒素を約1~10%の構成とし、残留アンモニアが数%残っている。高純度の水素、若干の窒素及び少量の残留アンモニアが内燃機関8へ供給され、水素とアンモニアとの混焼となる。すなわち、内燃機関8は、水素生成装置Aの改質器44により生成された水素と残留アンモニアを混焼して動力を発生させる。
【0054】
実施例4のような簡略な装置によって、難燃性のアンモニアを容易に混焼させることが可能となる。また、高純度の水素を燃焼させるので、温室効果ガスの排出を極めて低く抑えることが可能となる。将来的にN2Oの処理が可能になった場合には、実施例4の構成によるアンモニアの混焼でもGHGゼロ排出を達成することができる。更に、アンモニアを改質して得られる窒素をパージガスとして用いることで、窒素ガス発生装置を別途設ける必要が無く、船体のスペースを有効に活用することができる。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 アンモニアタンク(第1の容器)
5 窒素タンク(第2の容器)
7 水素供給ライン
8 内燃機関
9 貨物艙
100 輸送機器
A 水素生成装置
P1 供給圧力
P2 圧力
【要約】
【課題】 アンモニアの改質により生成された水素を燃料とする輸送機器を提供する。
【解決手段】 アンモニアを貯蔵するアンモニアタンク1と、アンモニアを改質して水素と窒素とを生成する水素生成装置Aと、を備える輸送機器100であって、水素が燃料として使用されることを特徴とする。
【選択図】
図1