(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】マイクロワイヤアレイデバイス及びマイクロワイヤを含むポリマーシートの作製方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/62 20060101AFI20220714BHJP
C30B 29/22 20060101ALI20220714BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20220714BHJP
C01G 49/06 20060101ALI20220714BHJP
C01G 51/00 20060101ALI20220714BHJP
C01G 49/00 20060101ALI20220714BHJP
D06M 10/00 20060101ALI20220714BHJP
D06M 11/28 20060101ALI20220714BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
C30B29/62 E
C30B29/22 F
C01G53/00 A
C01G49/06
C01G51/00 A
C01G49/00 A
D06M10/00 B
D06M11/28
C08J5/04 CEQ
C08J5/04 CET
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017121513
(22)【出願日】2017-06-21
【審査請求日】2020-06-09
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【氏名又は名称】土居 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ジェイ.ヴァオ
(72)【発明者】
【氏名】シャンイン ツゥイ
(72)【発明者】
【氏名】アダム エフ.グロス
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-299906(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0201980(US,A1)
【文献】特開2001-167692(JP,A)
【文献】特開2005-158921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/62
C30B 29/22
C01G 53/00
C01G 49/06
C01G 51/00
C01G 49/00
D06M 10/00
D06M 11/28
C08J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロワイヤを含むポリマーシートの作製方法であって、
基板上に複数の出発マイクロワイヤを成長させるとともに、前記出発マイクロワイヤを化学的に変化させて、磁性フェライトを含む複数のマイクロワイヤを準備し、その際に、前記複数のうちの個々のマイクロワイヤが、一端で前記基板に結合しており、固有の条長を有し、前記基板に対して略垂直な配向であり、且つ、磁性フェライトを含むものとし、
前記マイクロワイヤが前記基板に結合した状態で、前記マイクロワイヤの個々の条長の少なくとも一部分を非導電性のポリマーシートに封入することと、
前記マイクロワイヤを前記ポリマーシートから脱離させることなく、前記マイクロワイヤを前記基板から分離する、ことを含み、当該分離により、前記分離されたマイクロワイヤを含む独立したポリマーシートが作製され、前記複数のマイクロワイヤのうちの分離された個々のマイクロワイヤは、前記独立したポリマーシートに略垂直な配向である、方法。
【請求項2】
マイクロワイヤを含むポリマーシートの作製方法であって、
複数のマイクロワイヤを準備し、その際に、前記複数のうちの個々のマイクロワイヤが、一端で基板に結合しており、固有の条長を有し、前記基板に対して略垂直な配向であり、且つ、磁性フェライトを含むものとし、
前記マイクロワイヤが前記基板に結合した状態で、前記マイクロワイヤの個々の条長の少なくとも一部分を非導電性のポリマーシートに封入することと、
前記マイクロワイヤを前記ポリマーシートから脱離させることなく、前記マイクロワイヤを前記基板から分離する、ことを含み、当該分離により、前記分離されたマイクロワイヤを含む独立したポリマーシートが作製され、前記複数のマイクロワイヤのうちの分離された個々のマイクロワイヤは、前記独立したポリマーシートに略垂直な配向であり、
前記封入に先立って、前記マイクロワイヤ又は前記基板又はその両方を処理することをさらに含み、これにより前記基板に対するマイクロワイヤの結合弱化又は前記基板に対するポリマーシートの接着力低減又はその両方を行う、方法。
【請求項3】
前記出発マイクロワイヤは、金属酸化物を含み、前記出発マイクロワイヤを化学的に変化させることは、ハロゲン化金属塩との置換反応を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属酸化物は、酸化鉄、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化ニッケル又はその組み合わせを含み、前記ハロゲン化金属塩は、CoCl
2、NiCl
2、NiBr
2、NiI
2、ZnF
2、ZnCl
2、ZnBr
2、ZnI
2又はその組み合わせを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記封入に先立って、前記マイクロワイヤ又は前記基板又はその両方を処理することをさらに含み、これにより前記基板に対するマイクロワイヤの結合弱化又は前記基板に対するポリマーシートの接着力低減又はその両方を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基板は、前記マイクロワイヤが結合した非フェライト基材を含み、前記処理は、酸性溶液又は塩基溶液を用いて、前記マイクロワイヤに含まれる前記磁性フェライトよりも優先的に前記非フェライト基材をエッチングすることを含み、これにより前記基板に対するマイクロワイヤの結合を弱める、請求項2又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記酸性溶液は、HCl又はHFを含み、前記塩基溶液は、NaOHを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記処理は、前記ポリマーシートへの封入に先立って、前記基板に不活性オイルを塗布することを含み、これにより前記基板に対する前記ポリマーシートの接着力を低減し、前記不活性オイルは、任意の要件として、シリコーンオイルを含む、請求項2及び5~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記処理は、前記ポリマーシートへの封入に先立って、前記基板に犠牲層を塗布することと、前記マイクロワイヤを前記基板から分離するのに先立って、前記ポリマーシートよりも優先的に前記犠牲層を剥離することとを含み、これにより前記基板に対するポリマーシートの接着力を低減する、請求項2及び5~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記犠牲層は、ポリビニルアルコール、ドデカン酸又はその組み合わせを含み、前記犠
牲層を優先的に剥離することは、前記犠牲層を溶媒に溶解させることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記封入は、前記マイクロワイヤにブロック共重合体を塗布することを含み、前記塗布されたブロック共重合体は、溶融されるか、又は溶媒に溶解されるものである、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記ブロック共重合体は、スチレン・ブタジエン・スチレン(SBS)ブロック共重合体を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記封入は、第1のSBSブロック共重合体を、異なる第2のSBSブロック共重合体と混合して塗布することを含み、前記第1の共重合体におけるスチレン含有率は30%より高く、前記第2の共重合体におけるスチレン含有率は前記第1の共重合体におけるより高く、前記第2の共重合体の塗布量は前記第1の共重合体より少ない、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記マイクロワイヤは、MFe
2O
4を含み、Mは、Ni、Co、Zn又はその組み合わせを表す、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
マイクロワイヤを含むポリマーシートの作製方法であって、
複数のマイクロワイヤを準備し、その際に、前記複数のうちの個々のマイクロワイヤが、一端で基板に結合しており、固有の条長を有し、前記基板に対して略垂直な配向であり、且つ、磁性フェライトを含むものとし、
前記マイクロワイヤが前記基板に結合した状態で、前記マイクロワイヤの個々の条長の少なくとも一部分を非導電性のポリマーシートに封入することと、
前記マイクロワイヤを前記ポリマーシートから脱離させることなく、前記マイクロワイヤを前記基板から分離する、ことを含み、当該分離により、前記分離されたマイクロワイヤを含む独立したポリマーシートが作製され、前記複数のマイクロワイヤのうちの分離された個々のマイクロワイヤは、前記独立したポリマーシートに略垂直な配向であり、
前記封入は、前記マイクロワイヤにブロック共重合体を塗布することを含み、前記塗布されたブロック共重合体は、溶融されるか、又は溶媒に溶解されるものである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マイクロワイヤアレイデバイス(microwire array device)、及び、マイクロワイヤを含むポリマーシートの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボニル鉄粉(CIP鉄)をポリマーマトリックスやポリマー塗装に混合して、電磁干渉(EMI)のシールドに利用することが知られている。しかしながら、そのような構造体(structure)は、各用途に特定のニーズに合わせて磁気特性を調整することができないため、最適な磁気特性を備えるものではない。
【0003】
これとは別の構造体として、垂直配向のマイクロワイヤ及び/又はナノワイヤをポリマーマトリックスに封入したものが知られている。例として、カーボンナノチューブをポリマーガスケット(polymer gasket)に含ませたもの、及び、シリコンマイクロワイヤをポリマーシートに含ませたものが挙げられる(J.A.Beardslee著、Magnetic alignment of high-aspect ratio microwires into perpendicular arrays、博士論文、カリフォルニア工科大学、2014年)。ただし、これらのデバイスは磁性ではない。
【0004】
さらに別の例として、鉄ナノワイヤをポリアニリンに含ませたものが挙げられる(H.Cao、Z.Xu、D.Sheng、J.Hong、H.Sang、Y.Du共著、J.Mater.Chem.11、958~960(2001年))。ただし、鉄もポリアニリンも空気中で安定する物質ではなく、ほとんどの用途の環境曝露によって不具合が生じうる。このため、これらをEMI及びアンテナのシールドに利用することはできない。
【0005】
また、既知の構造体として、垂直方向に揃えられた(整揃化)酸化鉄(Fe2O3)ナノワイヤを表面に有するフォイル基板[C.H.Kim、H.J.Chun、D.S.Kim、S.Y.Kim、J.Park、J.Y.Moon、G.Lee、J.Yoon、Y.N Jo、M.H.Jung、S.I.Jung、C.J.Lee共著、Appl.Phys.Lett.89、223103(2006年); P.Hiralal、H.E.Unalan、K.G.U Wijayantha、A.Kursumovic、D.Jefferson、J.L.MacManus-Driscoll、G.A.J.Amaratunga共著、Nanotechnology 19、455608(2008年)]、及び、酸化鉄ナノワイヤから変換した磁性コバルトフェライト(CoFe2O4)[C.H.Kim、Y.Myung、Y.J.Cho、H.S.Kim、S.-H.Park、J.Park、J.-Y.Kim、B.Kim共著、J.Phys.Chem.C113、7085(2009年)]も挙げられる。後者の文献に記載のワイヤでは、テンプレートを用いない成長(template-free growth)により、密度約1ワイヤ/μm2の磁性フェライト(magnetic ferrite)マイクロワイヤアレイが形成される。ただし、これらのワイヤは、元の成長基板であるフォイル基板に化学結合されている。ナノワイヤアレイがフォイル基板表面に結合されていること、及び、可撓性を備えるポリマーマトリックスが設けられていないことにより、このようなアレイは、複雑な形状の表面に適合させることができず、また、フォイル基板から剥離に際しての耐摩耗性に欠ける。
【0006】
さらに、マイクロワイヤ又はナノワイヤを可撓性のポリマー層に封入したデバイスも既知であるが、約1ワイヤ/10μm2の低密度で整揃化されたワイヤが使われている(J.A.Beardslee著、Magnetic alignment of high-aspect ratio microwires into perpendicular arrays、博士論文、カリフォルニア工科大学、2014年)。これらのデバイスは、シリコンなどの基板にエッチングで形成したアライメント用テンプレートに、完全に成長させたワイヤを物理的に挿入して構成される。この組み込み後、ワイヤは、可撓性のポリマー層に封入され、アライメント用基板から引き抜かれる。しかしながら、整揃化されたワイヤの面密度を高める方法は知られていない。
【0007】
最後に、ワイヤ密度を大幅に高めたアレイも既に形成されており、大抵のものは、1ワイヤ/μm2を超える。このようなワイヤアレイは、多孔質陽極アルミナ(anodic porous alumina)などのテンプレートに直接に成長させることで形成される(J.A.Beardslee著、Magnetic alignment of high-aspect ratio microwires into perpendicular arrays、博士論文、カリフォルニア工科大学、2014年)。成長後、アルミナテンプレートを溶解させ、ワイヤを可撓性のポリマー層に封入する。この技術は、磁性フェライトについては有効でない。フェライトは、陽極アルミナを溶解させるのと同じ溶液で溶解するからである。加えて、これらのワイヤアレイは、テンプレートなしに成長させたワイヤに特有の結晶品質を備えていない。テンプレートを利用しつつも、テンプレートなしの成長の結晶品質を得る方法は知られていない。
【0008】
上述した既存の技術の欠点から明らかなように、非導電性及び可撓性を有するポリマーマトリックス内に整揃化された磁性マイクロワイヤを形成する方法は有益であろう。
【発明の概要】
【0009】
マイクロワイヤを含むポリマーシートの作製方法は、複数のマイクロワイヤを準備することを含む。前記複数のうちの個々のマイクロワイヤは、一端で基板に結合しており、固有の条長を有し、前記基板に対して略垂直な配向であり、磁性フェライトを含む。本方法は、前記マイクロワイヤが前記基板に結合した状態で、前記マイクロワイヤの個々の条長の少なくとも一部分を非導電性のポリマーシートに封入することを含む。前記マイクロワイヤを前記ポリマーシートから脱離させることなく、前記マイクロワイヤが前記基板から分離される。当該分離ステップにより、前記分離されたマイクロワイヤを含む独立したポリマーシートが作製される。前記複数のマイクロワイヤのうちの分離された個々のマイクロワイヤは、前記独立したポリマーシートに略垂直な配向である。
【0010】
マイクロワイヤアレイデバイスは、非導電性のポリマーシート及び複数のマイクロワイヤを含む。前記複数のマイクロワイヤのうちの個々のマイクロワイヤは、少なくとも一部分が前記ポリマーシートに封入された固有の条長を有し、前記ポリマーシートに対して略垂直な配向であり、且つ、磁性フェライトを含む。
【0011】
上述した特徴、機能、及び、利点は、本開示の様々な実施形態において個別に実現可能であるが、他の実施形態おいて組み合わせてもよい。そのような実施形態のさらなる詳細については、以下の記載及び図面を参照することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
下記図面を参照して、いくつかの実施形態の説明を後述する。
【0013】
【
図1A-1B】走査型電子顕微鏡(SEM)によるFe
2O
3マイクロワイヤ及び酸化物基板の断面画像である。出発フォイルは、Fe99.99%、厚さ0.25mm;成長温度は、800℃;ガス組成は、100SCCM(標準立方センチメーター/分)のAr+50SCCMのO
2;成長時間は、10時間とした。
図1Aでは、アレイの下に酸化物基板が示されている。縮尺を示すバーの下に、目盛り全体の長さに相当する長さが記載されている。
【
図2】気相置換反応により形成されたNiFe
2O
4マイクロワイヤアレイのSEM画像であり、出発物質としてのFe
2O
3マイクロワイヤアレイと形状が同じである。縮尺を示すバーの下に、目盛り全体の長さに相当する長さが記載されている。
【
図3A-3B】Ni
0.4Co
0.6Fe
2O
4マイクロワイヤアレイのSEM画像であり、出発物質としてのFe
2O
3マイクロワイヤアレイに形状が非常に似ている。
図3Aでは、アレイの下に酸化物基板が示されている。縮尺を示すバーの下に、目盛り全体の長さに相当する長さが記載されている。
【
図4】酸によるプリエッチング及び潤滑層を用いる方法で、スチレン・ブタジエン・スチレン(SBS)ポリマー(SOLPRENE9168)に埋設され、分離されたNiFe
2O
4ワイヤのサンプルのSEM断面である。フェライトマイクロワイヤ(いくつかの輪郭を黒で示してある)がポリマーに内包されている様子が観察できる。このSEM画像は、液体窒素中でポリマーを破断させた後、断面を高傾斜角で撮像したものである。ワイヤは、ポリマー中に垂直配向で整列している。
【
図5】自立ポリマーに含まれるNi
0.4Co
0.6Fe
2O
4マイクロワイヤの強磁性ヒステリシスループを示す。磁性データは、ワイヤに対して平行な磁場(点線)及び直交する磁場(実線)を印加して測定した。
【
図6】SOLPRENEに埋設され、ポリビニルアルコール(PVA)犠牲層と共に分離されたNi
0.4Co
0.6Fe
2O
4ワイヤのSEM断面である。このSEMは、液体窒素中でポリマーを破断させた後、断面を高傾斜角で撮像したものである。ワイヤは、ポリマー中に垂直配向で整列している。
【
図7】自立ポリマーに含まれるNiFe
2O
4マイクロワイヤの強磁性ヒステリシスループを示す。磁性データは、ワイヤに対して平行な磁場(点線)及び直交する磁場(実線)を印加して測定した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に記載の方法及びデバイスは、ポリマーマトリックス内で揃えた柱状(rod-shaped)の磁性金属酸化物粒子を提供する。ポリマーマトリックスは、非導電性であってもよい。この複合デバイスは可撓性を有するように構成することができるので、電磁放射のマイクロ波領域を含むアンテナシールドなどを目的とした様々な表面形状に適合させることができる。このデバイスは、磁場内で異方性(directional anisotropy)を示しうる。
【0015】
背景技術に記載したような丸い粒子やフレーク状の粒子を有する既知のデバイスは、異方性に寄与する柱状粒子を有していないので、本開示のデバイスとは異なる。また、既知のデバイスは、強化剤として丸いシリカ粒子を含むが、これらの粒子は、磁性でもなく、柱状でもない。
【0016】
背景技術に記載した既知の方法は、カーボンナノチューブをポリマーガスケット(polymer gasket)に封入することや、シリコンマイクロワイヤをポリマーシートに封入することを含む。背景技術に記載した既知のデバイスは、垂直方向に揃えられた(整揃化)酸化鉄(Fe2O3)ナノワイヤのアレイを表面に有するフォイル基板を含む。しかしながら、フォイル基板のナノワイヤに対して既知の封入方法を適用すると、封入したナノワイヤを引き抜く際に、ポリマーガスケットが破断してばらばらになり、整揃化マイクロワイヤのアレイを分離することができない。また、背景技術に記載の既知のデバイスには、鉄ナノワイヤをポリアニリンに含ませたものもあるが、ポリアニリンが導電性であり、鉄が金属酸化物でないため、EMI及びアンテナのシールドに利用するには不向きである。
【0017】
これに対し、本開示に記載の複合マイクロワイヤアレイデバイスは、整揃化マイクロワイヤを内包する可撓性のシートを含む。整揃化マイクロワイヤによれば、高いモーメント及び低い導電性など、ランダムな配向の磁性材料では得られない最適な磁気特性を得ることができる。望ましい磁気特性が、優れたEMI及びアンテナシールド材料として適切な組成、大きさ、密度、及び結晶品質を有する磁性フェライトにより得られる。磁性フェライトのそのような磁気特性は、マイクロワイヤをフォイル基板から自発的核生成を介してテンプレートなしに成長させた後、化学的に変化させることで得ることができる。本開示で教示される方法によれば、アレイ構造を維持したまま、ポリマー層を成長基板から剥離することで、ポリマー層に含まれるマイクロワイヤを基板から容易に分離することができる。
【0018】
マイクロワイヤを含むポリマーシートを作製する一方法は、複数のマイクロワイヤを形成することを含む。複数のうちの個々のマイクロワイヤは、一端で基板に結合しており、固有の条長(independent length)を有し、基板に対して略垂直な配向であり、且つ、磁性フェライトを含む。本方法は、マイクロワイヤが基板に結合した状態で、マイクロワイヤの個々の条長の少なくとも一部分を非導電性のポリマーシートに封入することを含む。次いで、マイクロワイヤをポリマーシートから脱離させることなく、マイクロワイヤを基板から分離する。この分離ステップにより、分離されたマイクロワイヤを含む分離されたポリマーシートが作製される。複数のマイクロワイヤのうち分離された個々のマイクロワイヤは、分離されたポリマーシートに対して略垂直な配向である。
【0019】
一例として、分離された個々のマイクロワイヤは、マイクロワイヤの条長に沿った長手軸がポリマーシートの表面に交差する点において、当該表面に略垂直である。本明細書の記載においては、「略垂直」とは、直角度(perpendicularity)の20度以内を意味し、例えば、10度以内であり、5度以内を含む。
【0020】
本方法は、さらに、基板上に複数の出発マイクロワイヤを成長させることを含む。本方法は、さらに、出発マイクロワイヤを化学的に変化させて、磁性フェライトを含有するマイクロワイヤを得ることを含む。この代わりに、既に成長した複数の出発マイクロワイヤを有する基板を入手してもよい。別途入手したこの基板を、本方法において化学的に変化させて、磁性フェライトを含有させてもよい。あるいは、別途入手したこの基板に形成されているマイクロワイヤが、磁性フェライトを既に含有していてもよい。
【0021】
出発マイクロワイヤは、金属酸化物を含有するものでもよい。さらに言えば、出発マイクロワイヤは、金属酸化物からなるものでもよい。出発マイクロワイヤを化学的に変化させることは、ハロゲン化金属塩(metal halide salt)との置換反応を含みうる。金属酸化物は、酸化鉄、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化ニッケル又はその組み合わせを含みうる。ハロゲン化金属塩は、CoF2、CoCl2、CoBr2、CoI2、NiF2、NiCl2、NiBr2、NiI2、ZnF2、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2、FeF2、FeCl2、FeBr2、FeI2又はその組み合わせを含みうる。例えば、ハロゲン化金属塩は、CoCl2、NiCl2、NiBr2、NiI2、ZnF2、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2又はその組み合わせを含みうる。変化後のマイクロワイヤは、磁性フェライトを含有するものでもよい。さらに言えば、変化後のマイクロワイヤは、磁性フェライトからなるものでもよい。
【0022】
本方法の実施態様として本明細書に記載する例では、出発マイクロワイヤ中に酸化鉄を形成する。つまり、出発マイクロワイヤは、酸化鉄を含まず、その他の金属酸化物のみを含有するものでもよい。そのような場合、鉄を含有するハロゲン化金属塩を用いて磁性フェライトを形成することができる。本明細書の記載においては、「フェライト」とは、鉄と1つ又は複数のその他の金属との混合酸化物からなるセラミック化合物(ceramic compound)を含むと定義される。つまり、「フェライト」には、MFe2O4が包含され、ここで、Mは、Ni、Co、Zn又はその組み合わせを表す。また、「フェライト」には、この他の化合物も包含される。
【0023】
フェライトを生成する反応をいくつか下記に記載するが、これに類似する多くの反応も可能である。
(1)Fe3O4(FeOFe2O3とも表記可)+CoCl2 → CoFe2O4(CoOFe2O3とも表記可)+FeCl2
(2)Co3O4(別名CoOCO2O3とも表記可)+FeCl2 → FeCO2O4(FeOCO2O3)+CoCl2
(3)2ZnO+FeCl2 → FeZnO2+ZnCl2
(4)2NiO+FeCl2 → FeNiO2+NiCl2
【0024】
反応1及び反応2は、Fe3O4には、異なる酸化状態としてFe(II)及びFe(III)があり、Co3O4には、Co(II)及びCo(III)があることを表わしている。これに対し、反応3及び反応4は、NiOには、唯一の酸化状態としてNi(II)があり、ZnOには、Zn(II)のみがあることを表わしている。従来の定義の中には、「フェライト」を、例えば、MFe2O4(Mは他の金属を表す)など、酸化鉄(Fe2O3)に1つ又は複数の追加金属元素を化学結合させたセラミック化合物に限定するものもあるが、この定義は本明細書には適用されない。本開示で定義するフェライト化合物には、本開示の方法及びデバイスの目的に適う類似性質を示すものまで含まれるので、本開示の定義は都合がよい。
【0025】
本方法は、さらに、マイクロワイヤ又は基板又はその両方を処理することを含みうる。この処理は、基板に対するマイクロワイヤの結合を弱めたり、基板に対するポリマーシートの接着力を低減させたり、あるいは、その両方を行う処理である。マイクロワイヤの結合を弱めることに関し、基板は、マイクロワイヤが結合する非フェライト基材(non-ferrite base)を含むものでもよい。上述の処理は、酸又は塩基溶液を用いて、マイクロワイヤに含まれる磁性フェライトよりも優先的に非フェライト基材をエッチングすることを含んでもよく、これにより基板に対するマイクロワイヤの結合を弱めることができる。
【0026】
ここで、「優先的に」エッチングするとは、同一のエッチング液に曝すにも関わらず、マイクロワイヤに含まれる磁性フェライトに対するよりも速い速度で、非フェライト基材をエッチングすることをいう。エッチング速度の差が十分に大きいと、磁性フェライトが最小限の量だけエッチングされる間に、非フェライト基材に対するマイクロワイヤの結合を十分に弱めて、エッチングを行わない場合に比べて明らかに容易にマイクロワイヤを分離可能な状態にできる。一例では、基板のFe3O4は、マイクロワイヤに含まれるNiFe2O4に比べて、酸に対する溶解性が高い。酸性溶液は、HCl又はHFを含んでもよく、塩基溶液は、NaOHを含んでもよい。酸性溶液のpHは、4未満、例えば、1未満のpHであってもよく、塩基溶液のpHは、10超、例えば12超のpHでもよい。
【0027】
ポリマーシートの接着の低減に関し、基板は、マイクロワイヤの隙間で基板に接触するポリマーシートに接着する傾向を示しうる。よって、上述の処理は、ポリマーシートへの封入に先立って、基板に不活性オイルを塗布することを含んでもよく、これにより、基板に対するポリマーシートの接着力を低減することができる。不活性オイルは、シリコーンオイルを含みうる。
【0028】
この代わりに、あるいは、これに加えて、上述の処理は、ポリマーシートへの封入に先立って、基板に犠牲層を塗布することと、マイクロワイヤを基板から分離するのに先立って、ポリマーシートよりも優先的に犠牲層を剥離することと、を含んでもよく、これにより、基板に対するポリマーシートの接着力を低減することができる。犠牲層は、ポリビニルアルコール、ドデカン酸又はその組み合わせを含みうる。犠牲層を優先的に剥離することは、溶媒に犠牲層を優先的に溶解させることを含みうる。よって、「優先的に」溶解させることは、ポリマーシートよりも速い速度で犠牲層を溶解させることをいう。溶媒の例としては、水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール及びアセトンが含まれる。ポリマーシートは、トルエンにのみ溶解すると考えられ、これにより前記優先的溶解が可能になる。
【0029】
マイクロワイヤを封入することは、マイクロワイヤにブロック共重合体を塗布することを含みうる。塗布したブロック共重合体は、溶融又は溶媒への溶解が可能である。ブロック共重合体は、スチレン・ブタジエン・スチレン(SBS)ブロック共重合体を含みうる。上述の封入は、第1のSBSブロック共重合体を、これとは異なる第2のSBSブロック共重合体と混合して塗布することを含む。この際に、第1の共重合体のスチレン含有率は30%より高く、第2の共重合体のスチレン含有率は、前記第1の共重合体におけるより高く、スチレン含有率の高い第2の共重合体の塗布量は、前記第1の共重合体より少ない。例を挙げると、第1の共重合体のスチレン含有率は、約30%から約45%でもよく、例えば、31%超から約45%である。第2共重合体のスチレン含有率は、約90%から約100%でもよく、例えば、約90%超から約98%である。スチレン含有率の高い第2共重合体とスチレン含有率の低い第1共重合体との比率は、約2:98から約10:90でもよい。ポリマーシートは、複数のマイクロワイヤすべての個々の条長を封入するのに十分な厚みを有していてもよく、さらに言えば、10ミクロンから200ミクロンの厚さでもよい。
【0030】
本開示の個々の方法における特徴及び利点は、特にその旨の示唆が無くとも、本開示に記載の他の方法及びデバイスと組み合わせて用いることが可能である。同様に、本開示に記載の個々のデバイスにおける特徴及び利点は、特にその旨の示唆が無くとも、本開示に記載の他のデバイス及び方法と組み合わせて用いることが可能である。よって、本開示の複数の方法を用いて、マイクロワイヤアレイデバイスを作製することが可能である。そのようなデバイスの一例として、非導電性のポリマーシート及び複数のマイクロワイヤを含むデバイスがある。複数のマイクロワイヤにおける個々のマイクロワイヤは、少なくとも一部分がポリマーシートに封入された固有の条長を有し、ポリマーシートに略垂直であり、且つ、磁性フェライトを含む。
【0031】
例えば、本開示において、デバイスとその要素は、方法について説明した特性及び特徴の1つ又は複数を有しうる。同様に、本開示において、方法で用いられる要素及び材料は、デバイスについて説明した特性及び特徴の1つ又は複数を有しうる。
【0032】
一例において、マイクロワイヤの長さは、約1μmから約100μmの範囲でもよく、例えば、約5μmから約20μmである。マイクロワイヤの幅は、約0.1μmから約1μmでもよく、例えば約0.5μmである。マイクロワイヤが構成するアレイの面密度は、約0.1ワイヤ/μm2から約10ワイヤ/μm2でもよく、例えば、1ワイヤ/μm2から約10ワイヤ/μm2である。マイクロワイヤは、直角度の20度以内でもよく、例えば、10度以内とし、5度以内を含む。
【0033】
基板の組成、化学的変化の反応物及び反応条件は、磁性フェライトがマイクロワイヤの条長に対して[110]結晶配向を有する単双結晶(single bicrystal)になるように選択することができる。また、磁性フェライトは、MがNi、Co、Zn又はその組み合わせを表す場合のMFe2O4を含みうる。
【0034】
ポリマーシートに封入されたアレイ構造は、酸化鉄(Fe2O3)を出発物質とし、これを磁性酸化鉄(Fe3O4)に還元し、次いで、例えばMFe2O4などの磁性フェライトに変換してなる組成を有するワイヤを含む。ワイヤは、基板から核生成及び成長させたものに特徴的な結構構造を有する結晶質であってもよい。ワイヤの封入に用いられるポリマー層としては、本開示の方法の実現及び本開示のデバイスの作製に十分な粘度、接着力、可撓性、溶解性などの性質を有する組成のものを選択することができる。
【0035】
例えば、粘度が高すぎると、ポリマーの流動性が低くなり、本開示に記載した面密度を有するアレイにおけるマイクロワイヤの隙間に流れ込みにくくなり、完全な封入が困難になる。また、接着力が強すぎると、マイクロワイヤに対する接着が促進されるものの、ポリマーシートを基板から剥離して、アンテナシールドなど意図する用途で使用可能な大きさの連続片を得ることが難しくなる。また、ポリマーシートの可撓性が低すぎると、剛性の基板からの剥離性及び/又は意図する用途の表面形状への適合性が損なわれうる。また、犠牲層の除去に用いられる溶媒に対する溶解性が高すぎると、本開示の方法において犠牲層をポリマーシートよりも優先的に溶解させる場合の妨げとなりうる。
【0036】
後述する実施例1~4において、基板からマイクロワイヤを剥離する一方法は、ポリマー層の被着及び剥離に先立って、マイクロワイヤ又は基板又はその両方を処理することを含むものであり、2種類の処理を説明する。即ち、(1)マイクロワイヤのベース基板を酸性溶液で軽くエッチングした後、不活性オイルの薄層を塗布して、基板に対するポリマーの接着力を低減する処理、及び、(2)ワイヤを剥離する際に水に溶解する水溶性層をワイヤの基部に塗布する処理である。
【0037】
以上の処理の後、可撓性ポリマーとなるべきポリマーを有機溶媒に溶かした溶液をワイヤアレイに被着させる。溶媒を蒸発させることで、ポリマーを硬化させ、次いで、マイクロワイヤアレイを内包するポリマー層を基板から剥離する。2種類目の処理においては、この剥離を水の存在下で行って、犠牲層を溶解させる。ポリマーの可撓性により、マイクロワイヤアレイの垂直配向や面密度を保ったまま剥離を行うことができる。
【0038】
後述する実施例5においては、別の方法でマイクロワイヤを基板から分離しており、ポリマー層の被着及び剥離に先立ってマイクロワイヤ又は基板を処理することは含まない。その場合でも、適切なポリマーを選択する必要があることは、比較例3によって示されている。
【0039】
鉄フォイルの高温(約800℃)酸化により、ワイヤが成長(つまり、核生成)を開始する。既に公開されているように、ワイヤは、これを取り囲む任意のテンプレートにも拘束されることなく、フォイル表面に対して垂直方向に成長して、ワイヤ軸に対して[110]結晶成長配向で、ワイヤの先端から成長した単双結晶となる(H.Srivastava、P.Tiwari、A.K.Srivastava、R.V.Nandedkar共著、J. Appl. Phys.102、054303(2007年)、L.Yuan、Y.Wang、R.Cai、Q.Jiang、J,Wang、B.Li、A.Sharma、G.Zhou共著、Mater.Sci.Eng.B、177、327~336(2012年)、X.Wen、S.Wang、Y.Ding、Z.-L.Wang、S.Yang共著、J.Phys.Chem.B、109、215~220(2005年)、A.G.Nasibulin、S.Rackauskas、H.Jaing、Y.Tian、P.R.Mulimela、S.D.Shandakov、L.I.Nasibulina、J.Sainio、E.I.Kauppinen共著、Nano Res.、2、373~379(2009年))。
【0040】
以下の複数のステップを含むプロセスにより、磁性フェライトからなるマイクロワイヤが垂直配向に整揃化されたアレイを内包する可撓性の薄いポリマーシートを作製した。すなわち、(1)酸化鉄(Fe2O3)マイクロワイヤのアレイを、鉄フォイルの表面に垂直な配向で熱的に成長させるステップ、(2)ハロゲン化金属塩との気相反応にて、Fe2O3ワイヤを磁性フェライトに変化させるステップ、(3)フェライトマイクロワイヤをポリマー層に封入し、自立した可撓性フィルムとしてマイクロワイヤアレイを基板から分離するステップである。
【0041】
ステップ1:酸化鉄マイクロワイヤの形成: このステップは、文献に十分に説明されている。鉄フォイルを酸化させて、Fe2O3マイクロワイヤのアレイを合成した。公知の合成例では、高純度(99.99%)の鉄フォイル基板(例えば、約2cm×2cm及び厚さ0.25mm)をアルゴン流下(20sccm(標準立方センチメーター/分)から200sccm)で、750℃から800℃の温度まで加熱する。所望の温度に到達したら、アルゴン流にO2(10sccmから100sccm)を追加する。成長時間は、約1時間から約10時間である。ワイヤは、基板に対して垂直な配向で成長する。ワイヤは、長さが約5μmから20μm未満、及び、厚さが約1μmである。ワイヤの面密度は、約1ワイヤ/μm2である。ワイヤの下側には、酸化物のバルク層(bulk layer)が位置しており、この層は比較的厚いFeO層の上に、比較的薄いFe2O3層及びFe3O4層を含む。これら酸化物層の全体の厚みは、成長条件及び成長時間により、約50μmから200μmの間で変化する。バルク酸化物層は、下層にある非酸化の金属フォイルから剥落することが多い。ワイヤは、フォイルの両面に成長する。一例は後述する。
【0042】
ステップ2:フェライトマイクロワイヤアレイへの変換: このステップは、文献に十分に説明されている。酸化鉄マイクロワイヤのアレイを、750℃~850℃のアルゴン流下でハロゲン化金属の蒸気にさらすと、ハロゲン化金属に含まれる金属が、同じ酸化状態にある鉄原子全体の1/3を占める鉄原子と置換して、磁性フェライトが形成される。磁性フェライトへの変換は、2段階で生じる。先ず、酸化鉄マイクロワイヤアレイをAr中で加熱すると、Fe2O3の熱還元反応の結果、Fe3O4マイクロワイヤが生成される。次いで、金属ハライド(例えば、MCl2)とFe3O4中のFe(II)との置換反応が起こる。
(5) MCl2(気相)+Fe3O4(固相ワイヤ) → MFe2O4(固相ワイヤ)+FeCl2(気相)
【0043】
この置換反応により、Fe3O4に含まれる鉄の1/3が別の金属イオンに置換される(Fe3O4中のFe(II)のみが置換される)が、マイクロワイヤの形状は維持される。これは、変換前後で、固相のワイヤにおける原子の総数が一定であり、結晶構造が変わらないためである。一例は後述する。
【0044】
ステップ3:マイクロワイヤの自立フィルムの剥離: ポリマーフィルム中のワイヤを基板から分離するステップは、文献には記載されていない。このステップは、いくつかの理由により、困難であった。1つには、ワイヤの密度が高いため、林立するワイヤの間にポリマーを十分に浸透させるためには、ポリマーが低粘度である必要があった。第2に、ワイヤは最初に酸化物の連続層から成長させていること、及び、ワイヤの基部が粗面を構成して表面積が大きいことにより、基板層への接着が強固であった。多くの場合において、どのようなポリマーであっても、ワイヤ間に進入したポリマーを、凝集破壊、即ち、破断(ripping)することなしに剥離することはできなかった。
【0045】
低粘度のポリスチレン-ポリブタジエン共重合体(SBSポリマー)にマイクロワイヤを封入したことにより、マイクロワイヤの形状に適合した被覆、酸に対する化学的耐性、ポリマーを基板から剥離する力に耐える高い機械的強度が得られた。SBSポリマー中、スチレンは、ポリマーの強度に寄与し、ブタジエンは、弾性を付与する。スチレンの割合を高くすると、基板に対するポリマーの接着が弱くなったが、スチレンが多すぎると、凝集破壊が生じた。
【0046】
マイクロワイヤを内包するポリマーを、3つの方法(下記に記載)を使用して剥離した。スチレン濃度の低いSBSポリマー(スチレン31%、テキサス州ヒューストンのDynasol社から入手可能なSOLPRENE9168)については、ポリマーにマイクロワイヤを封入するのに先立って、下記方法(A)及び(B)で前処理を行って、基板に対する接着力を低減した。方法(C)は、特定の配合の高スチレン濃度のSBSポリマーによって接着力を低減したので、前処理は行わなかった。
【0047】
A)酸によるプリエッチング及び潤滑層: 先ず、ワイヤの基部の強度を下げて、ポリマーを容易に剥離できるようにするため、酸水溶液でフェライトワイヤのプリエッチングを行った。この酸処理により、ワイヤの下部がわずかに切り取られた。不活性オイル(Dow Corning社より入手可能なシリコーンオイル200)の潤滑層を薄く基板に塗布した。このオイルにより、基板に対するポリマーの接着が低減された。次に、有機溶媒に溶解させたポリマー(SOLPRENE9618)を、基板にドロップキャスト(drop-cast)し、乾燥させた。次いで、ポリマーを基板から剥離した。この剥離では、先ず、基板をエポキシでスライドガラスに固定し、剃刀を一辺に沿ってポリマーの下に切り込ませ(剥離を開始し)、エラストマーを、これに内包されたマイクロワイヤと共にゆっくりと剥離した。
【0048】
B)ポリビニルアルコール犠牲層: 酸によるプリエッチング及び潤滑層の追加の代わりに、ポリビニルアルコール(PVA)水溶液をマイクロワイヤアレイに滴下し、乾燥させて、犠牲層としてのPVA薄層をワイヤの基部に形成した。これは、封入ポリマーのドロップキャストに先立って行った。このPVA薄層を水に溶解して除去することにより、マイクロワイヤの大半を内包したエラストマーが基板から分離された。これにより、剥離が容易に行えた。
【0049】
C)混合ポリマー: 2種類のポリスチレン-ポリブタジエン(SBS)共重合体を特定の配合で混合することで、バランスのよい強度と弾性が得られた。これにより、方法A及びBで言及した処理を追加しなくても、ポリマーに埋設したマイクロワイヤを剥離できた。スチレン含有率が比較的高いSBSポリマー(スチレン96%)と、スチレン含有率が中程度であるSBSポリマー(CALPRENE540、スチレン40%、Dynasol社から入手可能)とのそれぞれを、トルエンに溶解させ、これら2種類の共重合体を、高スチレン対中スチレンの比率が8:92になるように混合した。
【0050】
磁性フェライトからなるマイクロワイヤが垂直配向に整揃化されたアレイを内包する可撓性の薄いポリマーシートの作製方法AからCを、下記の実施例によりさらに説明する。
【実施例1】
【0051】
Fe2O3マイクロワイヤが整揃化されたアレイを鉄フォイル基板上に合成
【0052】
オレゴン州アシュランドのESPI Metals社から入手した、厚さ0.25mm、純度99.99%の鉄フォイルから、約2cm×2cmのサンプル片を切り出した。そのフォイルをアセトンで拭き、アルミナ製のセラミックボート(ceramic boat)の両端に渡して支持した。このボートを、100sccmのAr流中で750°Cに加熱した。750℃に到達後、50sccmのO
2をAr流に追加した。750℃での成長時間は、8時間とした。第2のサンプルについても、成長温度を800℃とし、成長時間を10時間とした以外は、同様に処理した。800℃で成長させたワイヤ及びバルク酸化物層の断面の走査電子顕微鏡(SEM)画像を、
図1A及び
図1Bに示す。
【実施例2】
【0053】
フェライトマイクロワイヤが整揃化されたアレイを鉄フォイル基板上に合成
【0054】
実施例1に記載したようなサンプルから開始して、フェライトマイクロワイヤが整揃化されたアレイを合成した。この合成では、実施例1のアレイを、NiCl
2などの金属塩70mgと共に、雰囲気制御された筒状炉に導入した。この炉内に、アルゴンを流速10~100cm
3/分で供給し、また、温度を室温から800℃まで45分かけて上昇させ、800℃で30分間維持し、その後、冷却した。アルゴン流は、サンプルを取り出すまで継続して供給した。X線回折(XRD)により、材料がNiFe
2O
4に変化したことが示された。また、このマイクロワイヤアレイのSEM画像を、
図2に示す。
【0055】
混合金属の磁性フェライトも、同様のプロセスにより合成した。実施例1に記載したようなサンプルから開始して、実施例1のアレイを、2種類の金属塩(NiCl
2とCoCl
2)を質量比1:1で混合した混合物70mgと共に、雰囲気制御された筒状炉に導入した。この炉内に、アルゴンを流速10~100cm
3/分で供給し、また、温度を室温から800℃まで45分かけて上昇させ、800℃で30分間維持し、その後、冷却した。アルゴン流は、サンプルを取り出すまで継続して供給した。ニュージャージー州マファのEDAX社から入手可能な分析器を用いたエネルギー分散型X線分析(EDS)により、材料がNi
0.4Co
0.6Fe
2O
4に変化したことが示された。また、このマイクロワイヤアレイのSEM画像を、
図3A及び
図3Bに示す。
【実施例3】
【0056】
マイクロワイヤの自立フィルムの剥離
【0057】
実施例2に記載したような、基板に支持されたフェライトマイクロファイヤのアレイを用いて、整揃化フェライトマイクロワイヤを内包する自立フィルムを作製した。この作製では、先ず、3M濃度のHCl水溶液においてワイヤアレイを10分間エッチングして、ワイヤの基部を弱めた。水洗浄及び乾燥を行った後、トルエン25部に対してシリコーンオイル1部を含むトルエンを1滴、基板に滴下し、トルエンを蒸発させて、潤滑及び接着低減のためのシリコーンオイル薄層を塗布した。次いで、ポリスチレン-ポリブタジエン共重合体(SOLPRENE9618)をトルエンに溶解させた溶液を、基板にドロップキャストし、乾燥させた。このドロップキャストのステップ及び乾燥のステップを何層分か繰り返して、ピンセットで扱うのに十分な厚さである約100μmのポリマー層を形成した。SOLPRENEの粘度は低いので、マイクロワイヤの形状に適合した被覆、酸に対する化学的耐性、基板からポリマーを剥離する力に耐える高い機械的強度が得られる。
【0058】
次いで、基板をエポキシでスライドガラスに固定し、SOLPRENE共重合体の自立フィルムを基板から剥離した。この剥離は、剃刀を一辺に沿ってポリマーの下に切り込ませ、垂直配向のフェライトマイクロワイヤを内包するSOLPRENE共重合体をゆっくりと剥離して行った。約2cm×2cmのシートが複数枚得られた。この自立層のSEM顕微鏡写真を、
図4に示す。
【0059】
ポリマーフィルム内におけるマイクロワイヤの整揃化は、ワイヤ軸に平行な電界を印加した時の方が、ヒステリシス及び残留磁気が大きいことにより特徴づけられる。
図5は、ニッケル-コバルト-フェライト複合材料の自立フィルムの異方性を示唆するヒステリシスループを示す。ワイヤ軸に平行な電界を印加した時の方が、ヒステリシス及び残留磁気が大きいので、ポリマーフィルム内でマイクロワイヤが整揃化していることが分かる。
【実施例4】
【0060】
マイクロワイヤの自立フィルムを犠牲ポリマー層と共に剥離
【0061】
実施例2に記載したような、基板に支持されたフェライトマイクロワイヤアレイを用いて、整揃化フェライトマイクロワイヤの自立フィルムを作製した。この作製では、先ず、0.5重量%のポリビニルアルコール(PVA)を約10~20μL用いて、サンプル全体を湿潤させた。SEMで撮像された断面によれば、マイクロワイヤの根元を被覆するPVA層の厚みは、約2~5μmであった。このPVA薄層を乾燥させた後、ポリスチレン-ポリブタジエン共重合体(SOLPRENE9618)をトルエンに溶解させた溶液を、基板にドロップキャストし、乾燥させた。このドロップキャストのステップ及び乾燥のステップを何層分か繰り返して、ピンセットで扱うのに十分な厚さである約100μmのポリマー層を形成した。次いで、基板をエポキシでスライドガラスに固定し、SOLPRENE共重合体の自立フィルムを基板から剥離した。この剥離では、一辺に沿ってポリマーの下に剃刀を切り込ませて剥離を開始した後、垂直配向のフェライトマイクロワイヤを内包するSOLPRENEの剥離に先立って、ポリマーのこの一辺を散発的に脱イオン水流に晒して、下にあるPVA層を溶解させた。この自立層のSEM顕微鏡写真を、
図6に示す。
【実施例5】
【0062】
マイクロワイヤの自立フィルムを混合SBSポリマーと共に剥離
【0063】
高スチレン濃度のSBS(スチレン96%)及び中スチレン濃度のSBS(CALPRENE540、スチレン40%)の2種類のSBSポリマーを、別々にトルエンに溶解させた。これら2種類のSBSポリマーを、高スチレン濃度のSBS:中スチレン濃度のSBSの質量比が8:92になるように混合して、混合SBSポリマーを得た。実施例2に記載したような、基板に支持されたフェライトマイクロワイヤのアレイを用いて、整揃化フェライトマイクロワイヤを内包する自立フィルム作製した。この作製では、混合ポリマーの溶液を基板にドロップキャストし、乾燥するまで放置した。このドロップキャストのステップ及び乾燥のステップを何層分か繰り返して、ピンセットで扱うのに十分な厚さである約100μmのポリマー層を形成した。次いで、基板をエポキシでスライドガラスに固定し、一辺に沿ってポリマーの下に剃刀を切り込ませて剥離を開始し、SBSポリマーの自立フィルムを基板から剥離した。フィルムの残りの部分は、ピンセットや指で剥離した。ワイヤに対して平行な電界及び直交する電界に対する磁気応答を、
図7に示す。
【比較例1】
【0064】
マイクロワイヤをパリレンCに封入
【0065】
実施例1の酸化鉄マイクロワイヤのサンプルに対して約200μmのパリレンC(PARYLENE C)を、SCSパリレンコーティングシステムを用いて蒸着した。このシステムは、インディアナ州インディアナポリスのSpecialty Coating Systems社から入手可能であり、パリレンCは、芳香族水素のうちの1つを塩素で置換したポリ(パラキシリレン)ポリマーの商品名である。パリレンCの基板に対する接着が強すぎたため、力加減に関わらずマイクロワイヤを適切に分離することができなかった。
【比較例2】
【0066】
マイクロワイヤをPDMSに封入
【0067】
異なる粘度のポリジメチルシロキサン(PDMS)ポリマーそれぞれを、実施例1の酸化鉄マイクロワイヤサンプルにドロップキャストした。ポリマーを一晩放置して乾燥させた後、ポリマーフィルムの下に剃刀を切り込ませて剥離した。高粘度のPDMSは、容易に剥離できたが、マイクロワイヤは全く分離されなかった。低粘度のPDMS(GELEST社のDMS-V21及びHMS-501、シリカビーズを10重量%含む)をドロップキャストした。SEM断面によれば、ワイヤ周辺にポリマーが十分に浸透していた。ただし、PDMS層の強度は、ポリマーとマイクロワイヤの複合体の剥離により生じる力に耐えるのに十分でなく、破断した。
【比較例3】
【0068】
シリコーンオイルの接着力低減層なしに、マイクロワイヤをSOLPRENEに封入
【0069】
実施例1又は実施例2におけるような酸化鉄マイクロワイヤ又はフェライトマイクロワイヤのサンプルを、接着力を低減する前処理なしに、SOLPRENE接着剤に封入した。各サンプルをスライドガラスにエポキシで固定した後、接着剤SOLPRENE9618のシートでマイクロワイヤアレイを被覆した。次いで、トルエンを接着シートに1滴又は2滴、滴下した。トルエンがポリマーシートを溶解させ、ワイヤが封入された。その後、トルエンを蒸発させて、ワイヤを内包した状態でポリマーを再硬化させた。上述の実施例に記載したように、剃刀及び鉗子を用いてポリマーを基板から剥離したが、1mm×1mm程度の小片しか得られなかった。より大きな片の剥離を複数回試みたが、基板に対する接着が強かったため、いずれもポリマーが破断する結果に終わった。この結果は、基板に対する接着力を低減するシリコーンオイル又はその他の材料を用いると、マイクロワイヤを大きなサイズの自立シートとして分離することがどのように可能になるかを示している。
【0070】
また、本開示は、以下の付記による実施形態を包含するものとする。
【0071】
付記1. マイクロワイヤを含むポリマーシートの作製方法であって、
複数のマイクロワイヤを準備し、その際に、前記複数のうちの個々のマイクロワイヤが、一端で基板に結合しており、固有の条長を有し、前記基板に対して略垂直な配向であり、且つ、磁性フェライトを含むものとし、
前記マイクロワイヤが前記基板に結合した状態で、前記マイクロワイヤの個々の条長の少なくとも一部分を非導電性のポリマーシートに封入し、
前記マイクロワイヤを前記ポリマーシートから脱離させることなく、前記マイクロワイヤを前記基板から分離する、ことを含み、当該分離により、前記分離されたマイクロワイヤを含む独立したポリマーシートが作製され、前記複数のマイクロワイヤのうちの分離された個々のマイクロワイヤは、前記独立したポリマーシートに略垂直な配向である、方法。
【0072】
付記2. 前記基板上に複数の出発マイクロワイヤを成長させることと、前記出発マイクロワイヤを化学的に変化させて、磁性フェライトを含む前記マイクロワイヤを得ることと、を含む、付記1に記載の方法。
【0073】
付記3. 前記出発マイクロワイヤは、金属酸化物を含み、前記出発マイクロワイヤを化学的に変化させることは、ハロゲン化金属塩との置換反応を含む、付記2に記載の方法。
【0074】
付記4. 前記金属酸化物は、酸化鉄、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化ニッケル又はその組み合わせを含み、前記ハロゲン化金属塩は、CoCl2、NiCl2、NiBr2、NiI2、ZnF2、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2又はその組み合わせを含む、付記3に記載の方法。
【0075】
付記5. 前記封入に先立って、前記マイクロワイヤ又は前記基板又はその両方を処理することをさらに含み、これにより前記基板に対するマイクロワイヤの結合弱化又は前記基板に対するポリマーシートの接着力低減又はその両方を行う、付記1~4のいずれかに記載の方法。
【0076】
付記6. 前記基板は、前記マイクロワイヤが結合した非フェライト基材を含み、前記処理は、酸性溶液又は塩基溶液を用いて、前記マイクロワイヤに含まれる前記磁性フェライトよりも優先的に前記非フェライト基材をエッチングすることを含み、これにより前記基板に対するマイクロワイヤの結合を弱める、付記5に記載の方法。
【0077】
付記7. 前記酸性溶液は、HCl又はHFを含み、前記塩基溶液は、NaOHを含む、付記6に記載の方法。
【0078】
付記8. 前記処理は、前記ポリマーシートへの封入に先立って、前記基板に不活性オイルを塗布することを含み、これにより前記基板に対する前記ポリマーシートの接着力を低減する、付記5~7のいずれかに記載の方法。
【0079】
付記9. 前記不活性オイルは、シリコーンオイルを含む、付記8に記載の方法。
【0080】
付記10. 前記処理は、前記ポリマーシートへの封入に先立って、前記基板に犠牲層を塗布することと、前記マイクロワイヤを前記基板から分離するのに先立って、前記ポリマーシートよりも優先的に前記犠牲層を剥離することとを含み、これにより前記基板に対するポリマーシートの接着力を低減する、付記5~9のいずれかに記載の方法。
【0081】
付記11. 前記犠牲層は、ポリビニルアルコール、ドデカン酸又はその組み合わせを含み、前記犠牲層を優先的に剥離することは、前記犠牲層を溶媒に溶解させることを含む、付記10に記載の方法。
【0082】
付記12. 前記封入は、前記マイクロワイヤにブロック共重合体を塗布することを含み、前記塗布されたブロック共重合体は、溶融されるか、又は溶媒に溶解されるものである、付記1~11のいずれかに記載の方法。
【0083】
付記13. 前記ブロック共重合体は、スチレン・ブタジエン・スチレン(SBS)ブロック共重合体を含む、付記12に記載の方法。
【0084】
付記14. 前記封入は、第1のSBSブロック共重合体を、異なる第2のSBSブロック共重合体と混合して塗布することを含み、前記第1の共重合体におけるスチレン含有率は30%より高く、前記第2の共重合体は前記第1の共重合体より高いスチレン含有率を有しており、前記第2の共重合体の塗布量は前記第1の共重合体より少ない、付記13に記載の方法。
【0085】
付記15. 前記マイクロワイヤは、MFe2O4を含み、Mは、Ni、Co、Zn又はその組み合わせを表す、付記1~14のいずれかに記載の方法。
【0086】
付記16. 非導電性のポリマーシートと、
複数のマイクロワイヤと、を含むマイクロワイヤアレイデバイスであって、前記複数のマイクロワイヤのうちの個々のマイクロワイヤは、少なくとも一部分が前記ポリマーシートに封入された固有の条長を有し、前記ポリマーシートに対して略垂直な配向であり、且つ、磁性フェライトを含むものである、マイクロワイヤアレイデバイス。
【0087】
付記17. 前記マイクロワイヤの条長は、約1μmから約100μmであり、前記マイクロワイヤの幅は、約0.1μmから約1μmである、付記16に記載のデバイス。
【0088】
付記18. 前記マイクロワイヤは、面密度が約0.1ワイヤ/μm2から約10ワイヤ/μm2であり、且つ、直角度の20度以内のマイクロワイヤのアレイを構成する、付記16~17のいずれかに記載のデバイス。
【0089】
付記19. 前記磁性フェライトは、前記マイクロワイヤの条長に対して、[110]結晶配向を有する単双結晶である、付記16~18のいずれかに記載のデバイス。
【0090】
付記20. 前記磁性フェライトは、MFe2O4を含み、Mは、Ni、Co、Zn又はその組み合わせを表す、付記16~19のいずれかに記載のデバイス。
【0091】
法令に従い、構造及び方法の特徴についてある程度具体的な用語を用いて実施形態を説明したが、これら実施形態が、図示又は説明した具体的に特徴を限定されないことは理解されよう。したがって、添付の特許請求の範囲を均等論に従って解釈した適切な範囲内の任意の態様又は変形で、実施形態は特許請求される。