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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220714BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/01 501
B41M5/00 120
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017189623
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019064051
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】大澤 信介
(72)【発明者】
【氏名】志村 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】守永 真利絵
(72)【発明者】
【氏名】安藤 一行
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 光
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-356636(JP,A)
【文献】国際公開第2011/077996(WO,A1)
【文献】特開2011-252169(JP,A)
【文献】特開2016-132167(JP,A)
【文献】特開2010-059402(JP,A)
【文献】国際公開第01/000415(WO,A1)
【文献】特開2017-094678(JP,A)
【文献】特開2015-229323(JP,A)
【文献】特開2000-313832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される印刷媒体にインクを吐出する複数のノズルがノズル面の長手方向に沿って配列されたノズル列をそれぞれ有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向を印刷媒体の搬送方向に非直交で交差する方向として互いに隣接配置された複数のインクジェットヘッドを備え、
前記インクジェットヘッドが前記ノズルから吐出するインクが、シリコーンオイルを含む油性インクであることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記シリコーンオイルは、前記油性インクの非水系溶剤の15~100質量%の範囲で含有されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドから印刷媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のノズルが配列されたノズル列を有するインクジェットヘッドのノズルから印刷媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット印刷装置が知られている。
【0003】
このようなインクジェット印刷装置として、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1のインクジェット印刷装置では、複数のインクジェットヘッドを、ノズル列におけるノズルの配列方向が印刷媒体の搬送方向に非直交で交差する方向として、互いに隣接配置している。このようにインクジェットヘッドを設置することで、装置内におけるインクジェットヘッドの占有スペースが抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-132167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のインクジェット印刷装置のようなインクジェットヘッドの配置では、インクジェットヘッドが密集しているため、インクジェットヘッド間に冷却風が通過する隙間が小さい。このため、インクジェットヘッドを冷却しにくく、インクジェットヘッドの温度が上昇しやすい。
【0006】
インクジェットヘッドの温度が上昇すると、インクジェットヘッド内のインクの温度が上昇することで、インクの粘度が低下する。このようなインクの粘度の変化により、インクジェットヘッドのノズルからのインクの吐出量にばらつきが生じ、印刷画質が低下するおそれがある。特に、非水系溶剤を主溶媒として含有する油性インクでは、水を主溶媒として含有する水性インクよりも、上述のようなインクの粘度の変化による吐出量のばらつきが生じやすい。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、印刷画質の低下を軽減できるインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のインクジェット印刷装置は、搬送される印刷媒体にインクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列をそれぞれ有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向を印刷媒体の搬送方向に非直交で交差する方向として互いに隣接配置された複数のインクジェットヘッドを備え、前記インクジェットヘッドが前記ノズルから吐出するインクが、シリコーンオイルを含む油性インクであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のインクジェット印刷装置によれば、印刷画質の低下を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。
図2図1に示すインクジェット印刷装置の印刷部の概略構成図である。
図3】印刷部のインクジェットヘッドのノズルの配列を示す図である。
図4】印刷部における各インクジェットヘッドのノズルの位置関係を示す図である。
図5図3のA-A線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0012】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。図2は、図1に示すインクジェット印刷装置の印刷部の概略構成図である。図3は、印刷部のインクジェットヘッドのノズルの配列を示す図である。図4は、印刷部における各インクジェットヘッドのノズルの位置関係を示す図である。図5は、図3のA-A線に沿った断面図である。
【0014】
なお、以下の説明において、用紙の搬送方向をY方向とし、Y方向に直交する用紙の幅方向をX方向とする。また、X方向およびY方向に直交する上下方向をZ方向とする。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、搬送部2と、印刷部3と、制御部4とを備える。
【0016】
搬送部2は、印刷媒体である用紙PをY方向に搬送する。
【0017】
印刷部3は、搬送部2により搬送される用紙Pに画像を形成する。図1図2に示すように、印刷部3は、複数のインクジェットヘッド11を備える。
【0018】
インクジェットヘッド11は、図示しないインク供給機構により供給されるインクを用紙Pに吐出して画像を形成する。
【0019】
インクジェットヘッド11に供給されて吐出されるインクは、シリコーンオイルを含む油性インクである。具体的には、インクジェットヘッド11が吐出する油性インクは、主として非水系溶剤と色材とから構成され、非水系溶剤としてシリコーンオイルを含む。シリコーンオイルは、非水系溶剤の15~100質量%の範囲で含有されることが好ましい。非水系溶剤には、シリコーンオイル以外に、石油系炭化水素溶剤、脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤等が含まれていてもよい。
【0020】
また、インクジェットヘッド11が吐出する油性インクの色材としては、顔料および染料のいずれも使用することができ、単独で使用しても両者を併用してもよい。また、インクジェットヘッド11が吐出する油性インクは、顔料分散剤、防腐剤、酸化防止剤、界面活性剤等を含んでいてもよい。
【0021】
インクジェットヘッド11は、図3に示すように、2列のノズル列12A,12Bを有する。ノズル列12A,12Bは、それぞれ複数のノズル13が直線状に配列されて形成されている。
【0022】
なお、図3は、インクジェットヘッド11を上側(インクジェットヘッド11を挟んで用紙Pの反対側)から下方向(インクの吐出方向)に向かって透視した場合の図である。図4についても同様である。
【0023】
また、図3図4の例では、説明の簡略化のため、ノズル列12A,12Bのそれぞれにおけるノズル13の個数を12個としているが、もっと多くのノズル13が形成されていてもよい。
【0024】
ノズル13は、用紙Pにインクを吐出する。ノズル13は、インクジェットヘッド11のノズル面(用紙Pに対向する面)に開口している。
【0025】
ノズル列12A,12Bにおいて、複数のノズル13は、W1方向に沿って所定のピッチP1で配置されている。また、ノズル列12A,12Bは、W1方向に直交するW2方向の所定のピッチP2だけ互いに離間して配置されている。
【0026】
ここで、図3において、ノズル13を特定するためのノズル番号を示している。すなわち、ノズル列12Aにおいて、W1方向の負側端部のノズル13から順番にノズル番号が1番(#1)、2番(#2)、…、12番(#12)が付与されている。また、ノズル列12Bにおいて、W1方向の負側端部のノズル13から順番にノズル番号が13番(#13)、14番(#14)、…、24番(#24)が付与されている。
【0027】
ノズル列12Aとノズル列12Bとは、W1方向の位置が互いにずれるように配置されている。図3の例では、ピッチP1の2.5倍分だけ、ノズル列12Aとノズル列12BとがW1方向に互いにずれるように配置されている。
【0028】
インクジェットヘッド11において、1番~6番のノズル13は、ブラック(K)のインクを吐出する。7番~12番のノズル13は、シアン(C)のインクを吐出する。13番~18番のノズル13は、マゼンタ(M)のインクを吐出する。19番~24番のノズル13は、イエロー(Y)のインクを吐出する。
【0029】
インクジェットヘッド11は、ノズル列12A,12Bにおけるノズル13の配列方向であるW1方向を、用紙Pの搬送方向であるY方向に非直交で交差する方向として配置されている。そして、印刷部3において、各インクジェットヘッド11は、X方向に沿って、互いに隣接配置されている。
【0030】
インクジェットヘッド11(ノズル列12A,12B)のY方向に対する傾斜角度θは、同一インクジェットヘッド11内のノズル列12Aのノズル13とノズル列12Bのノズル13とが、X方向の位置(座標)が同じになるように設定されている。
【0031】
具体的には、図4に示すように、ノズル列12Aの1番のノズル13とノズル列12Bの13番のノズル13とが、Y方向に平行な仮想線Lを通過するように、傾斜角度θが設定されている。これにより、ノズル列12Aの1番~12番のノズル13と、ノズル列12Bの13番~24番のノズル13とが、それぞれ互いにX方向の位置が同じになっている。
【0032】
また、各インクジェットヘッド11の位置関係は、次のようになっている。すなわち、互いに隣接する2つのインクジェットヘッド11のうち図4における左側のインクジェットヘッド11の1番のノズル13と13番のノズル13とを通過する仮想線Lが、右側のインクジェットヘッド11の7番のノズル13と19番のノズル13とを通過するように、各インクジェットヘッド11が配置されている。これにより、各色のインクを吐出するノズル13がY方向に沿って並んでおり、各色のインクをX方向における同じ位置に吐出可能であるため、カラー印刷が可能になっている。
【0033】
ここで、X方向におけるノズル13の間隔Dxは、下記の式(1)で表される。
【0034】
Dx=P1×sinθ …(1)
例えば、P1=84.7μm、θ=60°とすると、Dx=42.3μmとなり、X方向において600dpiの高解像度での印刷を実現できる。
【0035】
インクジェットヘッド11は、ピエゾ方式によりインクを吐出するものである。具体的には、インクジェットヘッド11は、ピエゾ方式のうちベントタイプのものである。
【0036】
図5に示すように、インクジェットヘッド11は、流路基板21のうち、Z方向の負側の面上に圧力室基板22と振動板23と封止体24と支持体25とが設けられるとともに、流路基板21のうち、Z方向の正側の面上にノズル板26とコンプライアンス部27とを設置した構造体(ヘッドチップ)である。ノズル板26にノズル13が形成されている。インクジェットヘッド11の各要素は、概略的にはW1方向に長尺な略平板状の部材であり、例えば接着剤を利用して互いに固定される。また、流路基板21および圧力室基板22は、例えばシリコンの単結晶基板で形成されている。
【0037】
流路基板21は、インクの流路を形成する平板材である。流路基板21には、開口部31と供給流路32と連通流路33とが形成されている。供給流路32および連通流路33は、ノズル13ごとに形成され、開口部31は、同色のインクを吐出する複数のノズル13にわたって連続するように形成されている。
【0038】
流路基板21のうちZ方向の負側の表面には、支持体25が固定されている。支持体25には、収容部34と導入流路35とが形成されている。収容部34は、平面視にて(すなわちZ方向から見て)、流路基板21の開口部31に対応した外形の凹部(窪み)であり、導入流路35は、収容部34に連通する流路である。
【0039】
流路基板21の開口部31と支持体25の収容部34とを互いに連通させた空間が、液体貯留室(リザーバー)Srとして機能する。液体貯留室Srは、インクの色ごとに互いに独立に形成され、図示しないインク供給機構により供給されて導入流路35を通過したインクを貯留する。すなわち、1個のインクジェットヘッド11の内部には、それぞれ異なるインクに対応する4個の液体貯留室Srが形成されている。
【0040】
液体貯留室Srの底面を構成し、当該液体貯留室Srおよび内部流路におけるインクの圧力変動を抑制(吸収)する要素がコンプライアンス部27である。コンプライアンス部27は、例えばシート状に形成された可撓性の部材を含んで構成され、具体的には、流路基板21における開口部31と各供給流路32とが閉塞されるように流路基板21の表面に固定される。
【0041】
圧力室基板22のうち流路基板21とは反対側の表面に振動板23が設置される。振動板23は、弾性的に振動可能な平板状の部材であり、例えば酸化シリコン等の弾性材料で形成された弾性膜と、酸化ジルコニウム等の絶縁材料で形成された絶縁膜との積層で構成される。振動板23と流路基板21とは、圧力室基板22の各開口部36の内側で互い間隔をあけて対向する。各開口部36の内側で流路基板21と振動板23とに挟まれた空間は、インクに圧力を付与する圧力室Scとして機能する。各圧力室Scは、流路基板21の連通流路33を介してノズル13に連通する。
【0042】
振動板23のうち圧力室基板22とは反対側の表面には、ノズル13(圧力室Sc)に対応する圧電素子(ピエゾ素子)Pztがノズル13ごとに形成されている。
【0043】
圧電素子Pztは、振動板23の面上に圧電素子Pztごとに個別に形成された駆動電極41と、駆動電極41の面上に形成された圧電体42と、圧電体42の面上に形成された駆動電極43とを包含する。なお、駆動電極41,43によって圧電体42を挟んで対向する領域が圧電素子Pztとして機能する。
【0044】
駆動電極41の一部は、封止体24および支持体25から露出しており、この露出部分において、配線基板(図示せず)が接続されて、駆動信号の電圧が印加される構成となっている。一方、駆動電極43には、複数の圧電素子Pztにわたって共通の定電圧が印加される。なお、駆動電極43については複数の圧電素子Pztにわたって電気的に共通接続となるから、圧電素子Pztごとに個別に形成して、共通配線に接続する構成としてもよいし、複数の圧電素子Pztにわたって連続させた構成としてもよい。
【0045】
このような構成の圧電素子Pztでは、駆動電極41,43に印加された電圧に応じて、駆動電極41,43および振動板23とともに、図5において周辺に対して中央部分が上方向または下方向に撓む。具体的には、圧電素子Pztは、駆動電極41を介して印加される駆動信号の電圧が低くなると、上方向に撓む一方、当該電圧が高くなると、下方向に撓む構成となっている。
【0046】
ここで、インクはノズル13にてメニスカスを形成するように維持されている。駆動電極41を介して圧電素子Pztを振動させる駆動信号を印加すると、圧電素子Pztが振動し、ノズル13の内部に超音波振動が発生してインクがノズル13から吐出される。
【0047】
このように、圧電素子Pztに適切な駆動信号が印加されると、圧電素子Pztの振動によって、液体貯留室Srから引き込まれたインクがノズル13から吐出される構成となっている。
【0048】
制御部4は、インクジェット印刷装置1全体の動作を制御する。制御部4は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0049】
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
【0050】
インクジェット印刷装置1で印刷を行う際、制御部4は、図示しない給紙台から印刷枚数分の用紙Pを順次取り出して搬送するよう搬送部2を制御する。
【0051】
そして、制御部4は、印刷対象の画像データに基づき、インクジェットヘッド11を駆動させて、搬送される用紙Pに画像を形成させる。
【0052】
印刷された用紙Pは、図示しない排紙台へ搬送されて排紙される。印刷枚数分の印刷、排紙が終了すると、一連の印刷動作が終了となる。
【0053】
上述の印刷動作においてインクジェットヘッド11が駆動されると、圧電素子Pztの発熱により圧力室Sc内およびノズル13近傍でインクジェットヘッド11内のインクの温度が上昇する。
【0054】
ここで、本実施の形態とは異なり、インクジェットヘッド11が吐出するインクが、シリコーンオイルを含むものではない場合、インクの温度の上昇により、粘度が低下する。インクの粘度が変化すると、ノズル13からのインクの吐出量のばらつきが生じ、印刷画質の低下を招く。特に、非水系溶剤を主溶媒として含有する油性インクでは、水を主溶媒として含有する水性インクよりも、上述のようなインクの粘度の変化による吐出量のばらつきが生じやすい。
【0055】
インクジェットヘッド11内のインクの温度の上昇を抑えるため、冷却ファン等によりインクジェットヘッド11に冷却風を送るようにしても、図2のようなインクジェットヘッド11の配置では、インクジェットヘッド11間に冷却風が通過する隙間が小さい。このため、インクジェットヘッド11を冷却しにくく、インクの温度の上昇による粘度の低下が生じやすい。
【0056】
これに対し、本実施の形態では、インクジェットヘッド11が吐出するインクは、シリコーンオイルを含む油性インクである。シリコーンオイルを含む油性インクは、粘度の温度依存性が低い。このため、インクジェットヘッド11の駆動によりインクの温度が上昇しても、インクの粘度の低下が抑えられる。これにより、ノズル13からのインクの吐出量のばらつきが抑えられるので、印刷画質の低下を軽減できる。
【0057】
また、シリコーンオイルを含む油性インクは、体積弾性率が低い。このため、ピエゾ方式のインクジェットヘッド11において、液体貯留室Srのインクを介して圧力波が伝搬することで圧力室Sc内の圧力状態が変化する、いわゆるクロストークが抑えられる。
【0058】
クロストークは、ノズル13のピッチP1が小さいほど発生しやすくなるが、インクジェット印刷装置1では、シリコーンオイルを含む油性インクを用いているため、例えば、ピッチP1を100μm以下の小さい値にしても、クロストークが抑えられる。このため、クロストークの影響による印刷画質の低下を抑えつつ、前述のようにP1=84.7μmとして高解像度での印刷を実現することが可能になる。
【0059】
また、シリコーンオイルを含む油性インクは、低表面張力である。このため、インクジェットヘッド11のインク流路を形成する部材への濡れ性に優れ、インクの初期充填時において流路部材表面に残留する気泡が抑制できる等、初期充填性に優れる。
【0060】
特に、ベントタイプのインクジェットヘッドのように、圧電素子により発生した圧力をノズル近傍に効率よく伝えるためにインク貯留室から圧力室まで長いインク流路を要するインクジェットヘッドにおいて、初期充填性の効果が顕著に現れる。
【0061】
なお、上述した実施の形態では、インクジェットヘッド11が、ピエゾ方式のうちベントタイプのものである場合で説明したが、ベントタイプに限らず、シェアタイプでもプッシュタイプでもよい。
【0062】
また、上述した実施の形態では、1つのインクジェットヘッド11が2列のノズル列12A,12Bを有する構成で説明したが、1つのインクジェットヘッドが有するノズル列の数はこれに限らない。
【0063】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。
【0064】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0065】
(付記1)
搬送される印刷媒体にインクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列をそれぞれ有し、前記ノズル列における前記ノズルの配列方向を印刷媒体の搬送方向に非直交で交差する方向として互いに隣接配置された複数のインクジェットヘッドを備え、
前記インクジェットヘッドが前記ノズルから吐出するインクが、シリコーンオイルを含む油性インクであることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【符号の説明】
【0066】
1 インクジェット印刷装置
2 搬送部
3 印刷部
4 制御部
11 インクジェットヘッド
12A,12B ノズル列
13 ノズル
図1
図2
図3
図4
図5