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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20220714BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20220714BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220714BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220714BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/31
A61K8/73
A61K8/81
A61Q11/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017232482
(22)【出願日】2017-12-04
(65)【公開番号】P2018090585
(43)【公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2016235836
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸川 純子
(72)【発明者】
【氏名】井上 翔太
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-226806(JP,A)
【文献】特開昭59-227812(JP,A)
【文献】特開2011-207781(JP,A)
【文献】特開2016-153396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバゾクロムおよびその塩からなる群より選ばれる1種以上である第1成分と、
水溶性高分子である第2成分と、
を含有する口腔用組成物であって、
前記第1成分を0.01w/w%以上0.03w/w%以下含有し、
前記第2成分を0.1w/w%以上10w/w%以下含有し、
前記第1成分1質量部に対する前記第2成分の含有比率は、5質量部以上500質量部以下であり、
前記第2成分は、ビニル系高分子および多糖類からなる群より選ばれる1種または2種以上であり、
前記ビニル系高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸およびそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上であり、
前記多糖類は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロース、コンドロイチン硫酸、アルギン酸、ヒアルロン酸、デキストラン、プルラン、キサンタンガム、ジェランガム、寒天およびそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上である、 口腔用組成物。
【請求項2】
前記第2成分は、2種以上の化合物を含む、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
前記口腔用組成物は、油性基剤である第3成分を含有する、請求項1または請求項2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
前記口腔用組成物は、非ステロイド系抗炎症剤である第4成分を含有する、請求項1~3のいずれかに記載の口腔用組成物。
【請求項5】
前記第4成分は、アラントインである、請求項4に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
前記第1成分を0.01w/w%以上0.02w/w%以下含有する、請求項1~5のいずれかに記載の口腔組成物。
【請求項7】
前記第2成分を1.0w/w%以上5w/w%以下含有する、請求項1~6のいずれかに記載の口腔組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物および口腔用組成物の口腔粘膜への付着性増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開昭60-226806号公報(特許文献1)には、歯肉炎などを予防および治療する歯肉マッサージ用の口腔用組成物が開示されている。具体的には、この口腔用組成物が所定の組成を有することによって、優れたマッサージ効果とともに口腔用組成物中に配合された有効成分の高い吸収性を達成したことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭60-226806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
口腔用組成物に関する技術分野では、常に濡れた状態の口腔粘膜において口腔用組成物をいかに良好に付着および維持させるかが、薬効を有効に発現させるために重要であると指摘されている。口腔用組成物では一般的に、水溶性高分子が口腔粘膜への付着性および親和性を付与する目的で配合されているため、この水溶性高分子の機能を強化する技術開発が進められている。しかしながら、未だ望んだ口腔粘膜への付着性および親和性を有する口腔用組成物は得られていない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされ、口腔粘膜への付着性を向上させた口腔用組成物および口腔用組成物の口腔粘膜への付着性増強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、本発明者らは、所定量のカルバゾクロム、カルバゾクロムの誘導体およびそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上と、水溶性高分子とを組み合わせた口腔用組成物において、これらの両成分が含有される場合に、口腔粘膜への付着性が顕著に向上することを見出した。本発明は、この知見に基づいて完成され、以下の各発明が提供されるものである。
【0007】
本発明に係る口腔用組成物は、カルバゾクロム、カルバゾクロムの誘導体およびそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上である第1成分と、水溶性高分子である第2成分とを含有する口腔用組成物であって、上記第1成分を0.04w/w%以下含有する。
【0008】
上記第2成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウムおよびプルランからなる群より選ばれる1種または2種以上を含むことが好ましい。
【0009】
上記第2成分は、2種以上の化合物を含むことが好ましい。
上記口腔用組成物は、上記第2成分を0.001w/w%以上20w/w%以下含有することが好ましい。
【0010】
上記口腔用組成物は、油性基剤である第3成分を含有することが好ましい。さらに非ステロイド系抗炎症剤である第4成分を含有することが好ましい。上記第4成分は、アラントインであることが好ましい。
【0011】
本発明に係る口腔用組成物の口腔粘膜への付着性増強方法は、上記口腔組成物を口腔内に付着させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、口腔粘膜への付着性を向上させた口腔用組成物および口腔用組成物の口腔粘膜への付着性増強方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
ここで、本明細書において「X~Y」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちX以上Y以下)を意味し、Xにおいて単位の記載がなく、Yにおいてのみ単位が記載されている場合、Xの単位とYの単位とは同じである。さらに本明細書において、特に記載のない限り、含有量の単位「%」は「w/w%」を意味し、「g/100g」と同じ数値を示す。
【0015】
<1.口腔用組成物>
本実施形態に係る口腔用組成物は、カルバゾクロム、カルバゾクロムの誘導体およびそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上である第1成分と、水溶性高分子である第2成分とを含有する口腔用組成物であって、上記第1成分を0.04w/w%以下含有する。
【0016】
〔第1成分〕
本実施形態に係る口腔用組成物は、カルバゾクロム、カルバゾクロムの誘導体およびそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上である第1成分を含有する。
【0017】
第1成分は、止血作用を有する。そのメカニズムは、血液などの血管透過性の亢進を抑えることによって止血作用を示すと考えられている。第1成分のうち、カルバゾクロムの誘導体は、医薬上、薬理学的に(製薬上)または生理学的に許容されるものであれば、制限されるべきではない。カルバゾクロムの誘導体として、たとえばエステル化誘導体、エーテル化誘導体、アミド化誘導体、スルホン化誘導体、ニトロ化誘導体、ニトロソ化誘導体、ハロゲン化誘導体などが挙げられる。
【0018】
カルバゾクロムおよびカルバゾクロムの誘導体の塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)または生理学的に許容されるものであれば、制限されるべきではない。カルバゾクロムおよびカルバゾクロムの誘導体の塩として、たとえばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩として、たとえばナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。アルカリ土類金属塩として、たとえばマグネシウム塩、カルシウム塩が挙げられる。
【0019】
第1成分は、カルバゾクロム、カルバゾクロムの誘導体およびそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上のうち、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム、カルバゾクロムが好ましく、カルバゾクロムがより好ましい。さらに、第1成分であるカルバゾクロム、カルバゾクロムの誘導体およびそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上は、市販のものを用いることができる。第1成分は、カルバゾクロム、カルバゾクロムの誘導体およびそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上である限り、これらを1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
口腔用組成物は、上記第1成分を0.04w/w%以下含有する。すなわち口腔用組成物における第1成分の含有量は、口腔用組成物の総量を基準として、0.04w/w%以下である。第1成分の含有量の下限値は、0.04w/w%以下であれば、制限されるべきではない。したがって第1成分の含有量は、0w/w%超0.04w/w%以下であればよく、この範囲内において第1成分の種類、他の成分の種類およびその含有量、口腔用組成物の用途およびその製剤形態などに応じて適宜選択することができる。第1成分の含有量が口腔用組成物の総量を基準として、0.04w/w%を超えると、本発明の顕著な効果が現れにくくなる傾向がある。
【0021】
第1成分の含有量の上限値は、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、たとえば0.03w/w%以下であることが好ましく、0.02w/w%以下であることがより好ましい。第1成分の含有量の下限値は上述のとおり制限されるべきではないが、本発明による効果をより顕著に奏する観点および使用感の観点から、たとえば0.001w/w%以上であることが好ましく、0.005w/w%以上であることがより好ましく、0.01w/w%以上であることがさらに好ましい。第1成分の含有量は0.02w/w%が最も好ましい。
【0022】
〔第2成分〕
本実施形態に係る口腔用組成物は、水溶性高分子である第2成分を含有する。この第2成分は、口腔用組成物の口腔粘膜への付着性および親和性を向上させる目的で含有される。第2成分のうち、水溶性高分子の塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)または生理学的に許容されるものであれば、制限されるべきではない。第2成分は、後述する定義により規定される水溶性高分子である限り、これらを1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよいが、第2成分は、2種以上の化合物を含むことが好ましい。
【0023】
水溶性高分子として、化学組成的にはたとえば、ビニル系高分子〔たとえばポリビニルアルコール(完全または部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン(K25,K30,K90など)、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸およびそれらの塩(ポリアクリル酸ナトリウムなど)など〕、多糖類[セルロース系高分子〔たとえばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)(2208,2906,2910など)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロースおよびそれらの塩(カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)など〕、ムコ多糖〔コンドロイチン硫酸、アルギン酸、ヒアルロン酸およびそれらの塩(コンドロイチン硫酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムなど)など〕、デキストラン(デキストラン40およびデキストラン70など)、プルラン、キサンタンガム、ジェランガム、寒天など]からなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物が挙げられる。水溶性高分子は、市販のものを用いることができる。
【0024】
水溶性高分子は、数平均分子量が5000以上であることが好ましく、6000以上であることがより好ましく、7000以上であることがさらに好ましく、8000以上であることがさらにより好ましく、9000以上であることが特に好ましく、10000以上であることが最も好ましい。水溶性高分子の数平均分子量は、5000000以下であればよく、2000000以下であることが好ましく、1000000以下であることがより好ましい。
【0025】
第2成分である水溶性高分子は、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、イオン性の水溶性高分子であることが好ましい。イオン性の水溶性高分子として、たとえばカルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ムコ多糖およびそれらの塩などが挙げられ、好ましくはカルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ムコ多糖およびそれらの塩が挙げられ、より好ましくはカルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウムが挙げられ、さらに好ましくはカルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられ、最も好ましくはカルボキシビニルポリマーが挙げられる。
【0026】
別の観点から、第2成分として好ましくは、ビニル系高分子、多糖類が挙げられ、より好ましくは、ビニル系高分子が挙げられ、さらに好ましくはカルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸およびそれらの塩が挙げられ、特に好ましくはカルボキシビニルポリマーが挙げられる。
【0027】
さらに別の観点から、第2成分は、セルロース系高分子、ビニル系高分子、ムコ多糖、プルランが好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウムおよびプルランからなる群より選ばれる1種または2種以上を含むことがより好ましい。
【0028】
口腔用組成物における第2成分の含有量は、制限されるべきではない。したがって第2成分の含有量は、その種類、他の成分の種類およびその含有量、口腔用組成物の用途およびその製剤形態などに応じて適宜選択することができる。本発明による効果をより顕著に奏する観点から、口腔用組成物は、第2成分を0.001w/w%以上20w/w%以下含有することが好ましい。すなわち口腔用組成物における第2成分の含有量は、口腔用組成物の総量を基準として、0.001~20w/w%であることが好ましい。第2成分の含有量は、0.01~10w/w%であることがより好ましく、0.1~10w/w%であることが最も好ましい。中でも、5w/w%以下であることが特に好ましい。
【0029】
口腔用組成物における第1成分と第2成分との含有比率は、制限されるべきではない。したがって第1成分と第2成分との含有比率は、第1成分および第2成分の種類、他の成分の種類およびその含有量、口腔用組成物の用途およびその製剤形態などに応じて適宜選択することができる。本発明による効果をより顕著に奏する観点から、第1成分と第2成分との含有比率は、たとえば口腔用組成物に含まれる第1成分1質量部に対し、第2成分が0.1~5000質量部であることが好ましい。より好ましくは、第1成分1質量部に対し、第2成分は1~1000質量部であり、さらに好ましくは第1成分1質量部に対し、第2成分は5~500質量部である。中でも、第1成分1質量部に対し、第2成分は50質量部以上、70質量部以上、90質量部以上であることも好ましい。
【0030】
〔第3成分〕
本実施形態に係る口腔用組成物は、上記第1成分、上記第2成分の他に、さらに油性基剤である第3成分を含有することが好ましい。本実施形態の口腔用組成物は、第1成分、第2成分とともに、第3成分を更に含有することにより、本発明による効果がより顕著に奏される。
【0031】
第3成分である油性基剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)または生理学的に許容されるものであれば、制限されるべきではない。第3成分は、油性基剤として後述する具体的な化合物である限り、これらを1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
このような油性基剤として、たとえばワセリン、固形パラフィン、流動パラフィン、軽質流動パラフィンなどのパラフィン類、白色ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、サラシミツロウおよびゲル化炭化水素からなる群より選ばれる1種または2種以上を挙げることができる。上記のうち好ましくは、白色ワセリン、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、サラシミツロウおよびゲル化炭化水素を用いることができる。中でも、パラフィン類が好ましく、流動パラフィン、軽質流動パラフィンがより好ましい。油性基剤は、市販のものを用いることもできる。
【0033】
口腔用組成物における第3成分の含有量は、制限されるべきではない。第3成分の含有量は、その種類、他の成分の種類およびその含有量、口腔用組成物の用途およびその製剤形態などに応じて適宜選択することができる。本発明による効果をより顕著に奏する観点から、口腔用組成物における第3成分の含有量は、口腔用組成物の総量を基準として、たとえば1~95w/w%であることが好ましく、3~90w/w%であることがより好ましく、10~90w/w%であることがさらに好ましく、30~90w/w%であることがさらにより好ましく、40~90w/w%であることが特に好ましく、50~85w/w%であることが最も好ましい。
【0034】
口腔用組成物における第1成分と第3成分との含有比率は、制限されるべきではない。第1成分と第3成分との含有比率は、第1成分および第3成分の種類、他の成分の種類およびその含有量、口腔用組成物の用途およびその製剤形態などに応じて適宜選択することができる。本発明による効果をより顕著に奏する観点から、第1成分と第3成分との含有比率は、たとえば口腔用組成物に含まれる第1成分1質量部に対し、第3成分が5~100000質量部であることが好ましい。より好ましくは、第1成分1質量部に対し、第3成分は10~100000質量部であり、さらに好ましくは第1成分1質量部に対し、第3成分は100~50000質量部であり、さらにより好ましくは第1成分1質量部に対し、第3成分は500~10000質量部であり、最も好ましくは第1成分1質量部に対し、第3成分は1000~5000質量部である。
【0035】
口腔用組成物における第2成分と第3成分との含有比率は、制限されるべきではない。第2成分と第3成分との含有比率は、第2成分および第3成分の種類、他の成分の種類およびその含有量、口腔用組成物の用途およびその製剤形態などに応じて適宜選択することができる。本発明による効果をより顕著に奏する観点から、第2成分と第3成分との含有比率は、たとえば口腔用組成物に含まれる第2成分1質量部に対し、第3成分が0.01~1000質量部であることが好ましい。より好ましくは、第2成分1質量部に対し、第3成分は0.05~100質量部であり、さらに好ましくは第2成分1質量部に対し、第3成分は0.1~50質量部であり、最も好ましくは第2成分1質量部に対し、第3成分は1~20質量部である。
【0036】
〔第4成分〕
本実施形態に係る口腔用組成物は、非ステロイド系抗炎症剤である第4成分を含有することが好ましい。口腔用組成物が第1成分、第2成分とともに、第4成分を更に含有することにより、本発明による効果がより顕著に奏される。これに第3成分を更に含有することにより、本発明による効果がさらに顕著に奏される。また、本実施形態に係る口腔組成物は、口腔粘膜への付着性が向上することから、口腔用組成物を患部に付着させた初期および経時滞留時において、第4成分が有する抗炎症効果および組織修復効果をより効率的に発揮させることができる。
【0037】
第4成分である非ステロイド系抗炎症剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)または生理学的に許容されるものであれば、制限されるべきではない。第4成分は、抗炎症剤として後述する具体的な化合物である限り、これらを1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
このような非ステロイド系抗炎症剤として、たとえばアラントイン、アルジオキサ、イクタモール、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、サリチル酸、ジメチルイソプロピルアズレン、インドメタシン、イプシロン-アミノカプロン酸、ベルベリン、プラノプロフェン、アズレンスルホン酸、ジクロフェナク、ブロムフェナク、トラネキサム酸、塩化リゾチーム、ブロメライン、セラペプターゼ、イブプロフェンピコノール、プレステロン、これらの誘導体(アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、サリチル酸メチル、サリチル酸モノグリコールエステルなど)、およびこれらの塩からなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物が挙げられる。さらに非ステロイド系抗炎症剤として、抗炎症効能を有するチンキ剤(カミツレチンキ、ミルラチンキ、ラタニアチンキ、シコンエキスなど)を用いることもできる。抗炎症剤は、市販のものを用いることもできる。
【0039】
上記のうち好ましくは、アラントイン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、サリチル酸、イプシロン-アミノカプロン酸、アズレンスルホン酸、カミツレチンキ、これらの誘導体およびこれらの塩からなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物である。さらに、アラントイン、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、β-グリチルレチン酸、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、イプシロン-アミノカプロン酸、カミツレチンキからなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物であることがより好ましく、アラントインおよびグリチルリチン酸二カリウムの両方またはいずれか一方であることがさらにより好ましく、アラントインであることが最も好ましい。
【0040】
口腔用組成物における第4成分の含有量は、制限されるべきではない。第4成分の含有量は、その種類、他の成分の種類およびその含有量、口腔用組成物の用途およびその製剤形態などに応じて適宜選択することができる。本発明による効果をより顕著に奏する観点から、口腔用組成物における第4成分の含有量は、口腔用組成物の総量を基準として、たとえば0.001~10w/w%であることが好ましく、0.01~5w/w%であることがより好ましく、0.1~1w/w%であることが最も好ましい。
【0041】
口腔用組成物における第1成分と第4成分との含有比率は、制限されるべきではない。第1成分と第4成分との含有比率は、第1成分および第4成分の種類、他の成分の種類およびその含有量、口腔用組成物の用途およびその製剤形態などに応じて適宜選択することができる。本発明による効果をより顕著に奏する観点から、第1成分と第4成分との含有比率は、たとえば口腔用組成物に含まれる第1成分1質量部に対し、第4成分が0.01~1000質量部であることが好ましい。より好ましくは、第1成分1質量部に対し、第4成分は0.1~500質量部であり、さらに好ましくは第1成分1質量部に対し、第4成分は1~100質量部であり、最も好ましくは第1成分1質量部に対し、第4成分は10~50質量部である。
【0042】
口腔用組成物における第2成分と第4成分との含有比率は、制限されるべきではない。第2成分と第4成分との含有比率は、第2成分および第4成分の種類、他の成分の種類およびその含有量、口腔用組成物の用途およびその製剤形態などに応じて適宜選択することができる。本発明による効果をより顕著に奏する観点から、第2成分と第4成分との含有比率は、たとえば口腔用組成物に含まれる第2成分1質量部に対し、第4成分が0.00005~1000質量部であることが好ましい。より好ましくは、第2成分1質量部に対し、第4成分は0.0001~100質量部であり、さらに好ましくは第2成分1質量部に対し、第4成分は0.0005~10質量部であり、さらにより好ましくは第2成分1質量部に対し、第4成分は0.001~4質量部であり、最も好ましくは第2成分1質量部に対し、第4成分は0.01~1質量部である。
【0043】
〔その他の有効成分(薬剤成分)〕
本実施形態に係る口腔用組成物は、上記の各成分以外に、その他の有効成分(薬剤成分)を配合することができる。本実施形態に係る口腔用組成物は、口腔粘膜への付着性が向上することから、口腔用組成物を患部に付着させた初期および経時滞留時において、これらの薬剤成分の効果をより効率的に発揮させることができる。上記有効成分(薬剤成分)として、殺菌剤、抗ヒスタミン剤、組織修復剤、局所麻酔剤、生薬、ビタミン剤、ステロイド系抗炎症剤、その他成分を挙げることができる。上記有効成分(薬剤成分)は、これらからなる群より選ばれる1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
殺菌剤として、たとえばヨウ素、ヨウ化カリウム、液状フェノール、フェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化デカリニウム、クレオソート、チモール、トリクロカルバン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、アクリノール、オキシドール、エタノール、イソプロパノール、マーキュロクロム、クレゾール、イソプロピルメチルフェノール、サリチル酸フェニル、スルファジアジン、ホモスルファミン、ケイヒ油、ヒノキチオールなどが挙げられる。なお、本実施形態に係る口腔用組成物には、グルコン酸クロルヘキシジンを含有しないことが好ましい。これを含有した場合にアナフィラキシーショックが起こる恐れを排除するためである。
【0045】
抗ヒスタミン剤として、たとえばマレイン酸クロルフェニラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェニルピラリン、メキタジン、塩酸トリプロリジン、マレイン酸カルビノキサミン、塩酸ジフェンヒドラミン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナート、塩酸プロメタシン、テオクル酸プロメタジン、塩酸メクリジン、塩酸イソペンチルなどが挙げられる。
【0046】
組織修復剤として、たとえば銅クロロフィリンナトリウム、メチルメチオニンスルホニウムクロリド、スクラルファート、塩酸セトラキサート、ソファルコン、ゲファルナート、マレイン酸トリメブチン、テプレノン、ヘパリン類似物質などが挙げられる。
【0047】
局所麻酔剤として、たとえば塩酸ジブカイン、ジブカイン、塩酸リドカイン、リドカイン、アミノ安息香酸エチル、オキセサゼイン、テーカインなどが挙げられる。
【0048】
生薬として、たとえばケイヒ、ケイヒ油、サイコ、ブクリョウ、オウバク、チョウジ成分、エンゴサク、ショウマ、キキョウ、ベニバナなどが挙げられる。
【0049】
ビタミン剤として、たとえばビタミンA油、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、トコフェロール、酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウム、パンテノール、パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カルシウム、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、ビタミンB2、リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、塩酸ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、ニコチン酸アミド、ビオチン、塩酸チアミン、硝酸チアミン、硝酸ビスチアミン、チアミンジスルフィド、チアミンジセチル硫酸エステル塩、塩酸ジセチアミン、塩酸フルスルチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、フルスルチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミンなどが挙げられる。
【0050】
ステロイド系抗炎症剤として、たとえばプレドニゾロン、ベクロメタゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、フルチカゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、およびこれらのエステル(より具体的には、これらとプロピオン酸、酢酸、酪酸、または吉草酸などとのエステル、たとえばトリアムシノロンアセトニドなど)などが挙げられる。
【0051】
その他成分として、グリセリン、濃グリセリンなどの局所保護剤、l-メントール、ハッカ油、dl-メントールなどの局所刺激剤、ヒノキチオールなどの組織収斂剤、ニコチン酸ベンジル、ポリエチレンスルホン酸ナトリウムなどの血行促進剤、塩酸ミノサイクリンなどの抗生物質などが挙げられる。
【0052】
〔添加物〕
本実施形態に係る口腔用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、その用途および製剤形態に応じ、常法に従って様々な添加物を含有することができる。このような添加物として、たとえば「医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編集)」に記載されている各種の添加物が挙げられる。
【0053】
添加物の代表的な例として、軽質無水ケイ酸、無水ケイ酸、pH調整剤、抗酸化剤、キレート剤、油分、着色剤、香料、湿潤剤、界面活性剤、溶剤などが挙げられる。
【0054】
pH調整剤として、たとえばクエン酸、アジピン酸、酒石酸、マレイン酸、イソクエン酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸、マロン酸、グルタル酸、グルタコン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ピメリン酸、シュウ酸、グリコール酸、グリセリン酸、ピルビン酸、アクリル酸、メタクリル酸、スベリン酸、アゼライン酸、メバロン酸、エチレンジアミン四酢酸、フタル酸、テレフタル酸、オキシ酢酸、フェニルコハク酸、エチルマロン酸、ピバリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、バルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、N-パルミトイル-L-グルタミン酸、アスコルビン酸、ピロリドンカルボン酸、スルファミン酸、グルコノデルタラクトン、リン酸、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸水素カルシウム、炭酸、ホウ酸などの酸性物質などが挙げられる。
【0055】
抗酸化剤として、たとえばトコフェロール類〔トコフェロール、トコフェロール誘導体(酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールなどのトコフェロールエステル)〕、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどの脂溶性抗酸化剤、ビタミンC、ヒドロキノン、システイン、グルタチオンなどの水溶性抗酸化剤などが挙げられる。
【0056】
キレート剤として、たとえばエデト酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0057】
油分として、たとえばゴマ油、ヒマシ油、ダイズ油、オリーブ油、スクワラン、精製ラノリンなどが挙げられる。
【0058】
着色剤として、たとえば赤色3号、青色1号、黄色4号、緑色3号、二酸化チタンなどが挙げられる。
【0059】
香料として、たとえばペパーミント油、スペアミント油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、クローブ油、タイム油、セージ油、カルダモン油、ローズマリー油、マジョラム油、レモン油、ナツメグ油、ラベンダー油、パラクレス油などの天然精油、l-メントール、l-カルボン、シンナミックアルデヒド、オレンジオイル、アネトール、1,8-シネオール、メチルサリシレート、オイゲノール、チモール、リナロール、リモネン、メントン、メンチルアセテート、シトラール、カンファー、ボルネオール、ピネン、スピラントールなどの上記天然精油中に含まれる香料成分、エチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルアセテート、ヘキサナール、ヘキセナール、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、ベンツアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、フラネオール、マルトール、エチルマルトール、ガンマ/デルタデカラクトン、ガンマ/デルタウンデカラクトン、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、メンチルラクテート、エチレングリコール-l-メンチルカーボネートなどの香料成分などが挙げられる。
【0060】
さらに香料として、上述した香料成分および天然精油からなる群より選ばれる1種または2種以上の成分を組み合わせてなるアップル、バナナ、ストロベリー、ブルーベリー、メロン、ピーチ、パイナップル、グレープ、マスカット、ワイン、チェリー、スカッシュ、コーヒー、ブランデー、ヨーグルトなどの調合フレーバーが挙げられる。
【0061】
湿潤剤として、たとえばグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(マクロゴール200、マクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール1000、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000など)、ソルビトール、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコールなど、水あめなどが挙げられる。
【0062】
界面活性剤として、たとえばノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。ノニオン界面活性剤として、POE硬化ヒマシ油、POEソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ソルビタン、(ポリ)プロピレングリコール脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル、POEアルキルエーテル、POE-POPアルキルエーテル、POE脂肪酸エステルなどが挙げられる。アニオン界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩などが挙げられる。カチオン界面活性剤として、アルキルアンモニウム型が挙げられる。両性界面活性剤として、ベタイン型、イミダゾリン型などが挙げられる。
【0063】
溶剤として、たとえば水、エタノール、グリセリン、1,3-ブチレングリコールなどが挙げられる。
【0064】
〔剤型〕
本実施形態に係る口腔用組成物は、液状、ペースト状、ゲル状などの形態で、練歯磨、潤製歯磨、液体歯磨などの歯磨剤、洗口剤、ゲル剤、軟膏剤、口中清涼剤、うがい用錠剤、口腔用パスタ、ガムなどの各種剤型に調製することができる。さらに剤型に応じ、上記第1成分および第2成分以外の公知の成分を、本発明の効果を損ねない範囲において配合し、常法に従って調製することができる。
【0065】
本実施形態に係る口腔用組成物は、本発明による効果をより顕著に発揮する観点から、口腔用軟膏剤であることが好ましい。口腔用軟膏剤である場合の用法および用量は、たとえば成人(15歳以上)および7歳以上の小児の場合、1日2回歯茎に塗布して用いる方法が挙げられるが、本発明の効果を奏し、副作用の少ない用法および用量であれば、これに限定すべきではない。
【0066】
本実施形態に係る口腔用組成物は、本発明による効果をより顕著に発揮する観点から、口腔用クリーム剤であることも好ましい。口腔用クリーム剤である場合の用法および用量は、たとえば成人(15歳以上)および7歳以上の小児の場合、1日2回歯ブラシにつけて歯茎をマッサージするように磨いて用いる方法が挙げられ、本発明の効果を奏し、副作用の少ない用法および用量であれば、これに限定すべきではない。
【0067】
本実施形態に係る口腔用組成物は、たとえば該口腔用組成物と接する部分の一部または全部がアルミで形成されたラミネート容器に収容して提供される形態が例示される。さらに、ガラス製、プラスチック製の容器に収容して提供される形態も例示される。
【0068】
〔口腔用組成物の硬度〕
本実施形態に係る口腔用組成物の硬度は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば、制限されるべきではない。しかしながら、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、口腔用組成物の硬度は、下限値が15g以上であることが好ましく、20g以上であることがより好ましく、30g以上であることがさらに好ましく、40g以上であることがさらにより好ましく、50g以上であることが最も好ましい。硬度の上限値は、1000g以下であることが好ましく、500g以下であることがより好ましく、300g以下であることがさらに好ましい。
【0069】
ここで口腔用組成物の硬度は、次の方法により測定することができる。すなわち、レオメーター(商品名(品番):FUDOH RHEO METER(RT2100D/D-CW)、株式会社レオテック製)を用い、T.Speed(UP)2cm/min、25℃の条件で、φ20(圧縮弾性)の専用アダプターをプラスチック製軟膏壺(A-55号(55cc)、エムアイケミカル株式会社製)に充填した口腔用組成物に進入させ、その深さが1cmに到達した時点までに記録した硬度(g)の最高値を、上記口腔用組成物の硬度とすることにより測定することができる。
【0070】
〔口腔用組成物の付着性〕
本実施形態に係る口腔用組成物は、第1成分および第2成分を含み、第1成分を0.04w/w%以下含有することにより、口腔粘膜への付着性が顕著に向上する効果が得られる。この効果は、本実施形態に係る口腔用組成物が、口腔内の唾液などの水分で膨潤することにより、膨潤前よりも歯肉などの患部に付着しやすくなる性質を有することに基づく。したがって、本実施形態に係る口腔用組成物の口腔粘膜への付着性が向上するかどうかについては、以下の方法により評価することができる。
【0071】
すなわち、膨潤後の口腔用組成物に対し、所定のプローブを挿入し引き上げたときに、このプローブに付着する量(以下、「膨潤後のプローブ付着量」とも記す)を、後述する方法により測定する。さらに、この膨潤後のプローブ付着量について、第1成分および第2成分の両者を含むという構成を具備しない組成物(以下、「比較組成物」とも記す)に対しても同じ方法により測定する。これにより得られる比較組成物の膨潤後のプローブ付着量と本実施形態の口腔用組成物の膨潤後のプローブ付着量とを比較し、上記付着量が増加していたとき、本実施形態の口腔用組成物は、口腔粘膜への付着性が向上したと定めることができる。
【0072】
各組成物の上記膨潤後のプローブ付着量の測定方法は、以下のとおりである。まず口腔用組成物を常法により調製する。比較組成物についても常法により調製する。次に、これらの口腔用組成物2gおよび比較組成物2gに対し、精製水を2mLずつ添加し、撹拌混合し、続いて30℃で24時間放置して膨潤させることにより口腔用組成物の膨潤体および比較組成物の膨潤体を得る。その後、これらの膨潤体1.5gを、容量20mLのねじ口瓶(日電理化硝子株式会社製)にそれぞれ充填する。
【0073】
その後、上記FUDOH RHEO METERを用い、ねじ口瓶に充填された膨潤体の表面へ向けてφ1cmの専用プローブを、その先端が膨潤体の表面に接着するまで挿入し、続けて2cm/minの速度で該プローブを引き上げることによってプローブに膨潤体を付着させ、膨潤体のプローブ付着量(質量)を測定する。このときプローブに付着した膨潤体の量が大きい程、口腔粘膜への付着性が良好であることを意味する。プローブに付着した膨潤体の量が大きい程、歯肉などの患部に付着しやすいことを意味するからである。
【0074】
最後に、比較組成物の膨潤後のプローブ付着量と口腔用組成物の膨潤後のプローブ付着量とを下記の式(1)に代入することにより、「付着量変化率(%)」として、口腔用組成物の口腔粘膜への付着性が向上するかどうかを評価する。「付着量変化率(%)」は、正の数であってその値が大きい程、比較組成物の膨潤体に比べ、口腔用組成物の膨潤体がより多くプローブに付着したことを意味する。このため「付着量変化率(%)」が正の数であって大きいとき、口腔用組成物は、口腔粘膜への付着性が向上したと評価することができる。
【0075】
付着量変化率(%)={(口腔用組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)-比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g))/比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)}×100 ・・・(1)。
【0076】
〔作用〕
以上より、本実施形態では、口腔粘膜への付着性を向上させた口腔用組成物を提供することができる。
【0077】
〔対象疾患(用途)〕
本発明に係る口腔用組成物の対象疾患(用途)は、口腔用である限り、特に限定されるべきではないが、たとえば歯茎の腫れ、出血、痛み、膿、歯槽膿漏および口内炎などの緩和、改善、抑制または治療に有用である。さらに、歯茎の組織修復作用、歯茎および歯根膜の再生作用が期待される。
【0078】
<2.口腔用組成物の口腔粘膜への付着性増強方法>
本実施形態に係る口腔用組成物の口腔粘膜への付着性増強方法は、上記口腔組成物を口腔内に付着させるものである。具体的には、カルバゾクロム、カルバゾクロムの誘導体およびそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上である第1成分、ならびに水溶性高分子である第2成分を準備する第1工程と、上記第1成分および上記第2成分を含む口腔用組成物を調製する第2工程とを含む。上記第2工程において、上記口腔用組成物の総量に対して上記第1成分を0.04w/w%以下配合することが好ましい。0.04w/w%以下の上記第1成分、および上記第2成分をそれぞれ配合することにより、口腔用組成物は口腔粘膜への付着性を顕著に向上させることができる。
【0079】
〔第1工程〕
第1工程では、カルバゾクロム、カルバゾクロムの誘導体およびそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上である第1成分、および水溶性高分子である第2成分を準備する。第1工程に用いる第1成分、第2成分の種類は、<1.口腔用組成物>で説明したとおりである。さらに第1工程では、<1.口腔用組成物>で説明した第3成分、第4成分、その他の有効成分および添加物を、後述する第2工程において口腔用組成物を調製するために必要に応じて準備してもよい。
【0080】
〔第2工程〕
第2工程では、上記第1成分および上記第2成分を含む口腔用組成物を調製する。ここでは第1工程において準備した第1成分および第2成分、ならびに必要に応じて準備した第3成分、第4成分、その他の有効成分および添加物を常法に従って調製することができる。このとき、口腔用組成物の総量に対して第1成分を0.04w/w%以下配合する。第2工程において配合する第2成分の量、その他の成分の種類および配合量などについては、<1.口腔用組成物>で説明したとおりである。本実施形態により製造された口腔用組成物の製剤形態および用途についても、<1.口腔用組成物>で説明したとおりである。
【実施例
【0081】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
〔口腔用組成物の製造〕
表1に示す各成分を準備し、この各成分を組成とする口腔用組成物を常法に従って調製することにより、実施例1の口腔用組成物を製造した。さらに表1に示す各成分を準備し、実施例1と同じ方法により比較例1、2の比較組成物を製造した。表1中の「カルボキシビニルポリマー」は水溶性高分子であり、本実施例における第2成分として配合した。表1中の「マクロゴール400」および「マクロゴール4000」はそれぞれポリエチレングリコールであり、湿潤剤(添加物)として実施例および比較例の口腔用組成物に配合した。
【0083】
〔試験例1〕
〔口腔用組成物の膨潤後のプローブ付着量の測定および評価〕
実施例1の口腔用組成物2g、ならびに比較例1および比較例2の比較組成物2gに対し、精製水を2mLずつ添加し、撹拌混合し、30℃で24時間放置して膨潤させることにより実施例1の口腔用組成物の膨潤体、ならびに比較例1および比較例2の比較組成物の膨潤体を得た。その後、これらの膨潤体1.5gを、容量20mLの上記のねじ口瓶(日電理化硝子株式会社製)にそれぞれ充填した。
【0084】
その後、上記FUDOH RHEO METERを用い、ねじ口瓶に充填された膨潤体の表面へ向けてφ1cmの専用プローブを、その先端が膨潤体の表面に接着するまで挿入し、続いて2cm/minの速度で該プローブを引き上げることによってプローブに膨潤体を付着させ、膨潤体のプローブ付着量(質量)を測定した。
【0085】
上記測定に基づき、比較例1の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量と比較例2の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量とを下記の式(2)に代入することにより、「付着量変化率(%)」として、比較例2の比較組成物が比較例1の比較組成物に比べ口腔粘膜への付着性が向上するかどうかを評価した。さらに、比較例1の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量と実施例1の口腔用組成物の膨潤後のプローブ付着量とを下記の式(3)に代入することにより、「付着量変化率(%)」として、実施例1の口腔組成物が比較例1の比較組成物に比べ口腔粘膜への付着性が向上するかどうかを評価した。「付着量変化率(%)」の値は、上述のとおり正の数であって大きいとき、口腔用組成物は、口腔粘膜への付着性が向上したと評価することができる。その結果を表1に示す。
【0086】
式(2)および式(3)は以下のとおりである。
付着量変化率(%)={(比較例2の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)-比較例1の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g))/比較例1の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)}×100 ・・・(2)
付着量変化率(%)={(実施例1の口腔用組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)-比較例1の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g))/比較例1の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)}×100 ・・・(3)。
【0087】
【表1】
【0088】
表1から、実施例1の口腔用組成物は、比較例1の比較組成物に対して付着量が8.5%増大する付着量変化率を示したことから、口腔粘膜への付着性が向上していると理解される。さらに、比較例2の比較組成物は、その組成にカルバゾクロムを含有することから、比較例1の比較組成物よりも口腔粘膜への付着性が向上していると理解されるものの、その含有量が0.04w/w%以下ではないため、実施例1の口腔用組成物に比べて口腔粘膜への付着性は顕著に向上しなかった。すなわち実施例1の口腔用組成物は、含有量が0.02w/w%(0.04w/w%以下)である第1成分と、第2成分とを含むため、比較例1、2に比して口腔粘膜への付着性が顕著に向上しているものである。
【0089】
〔試験例2〕
〔口腔用組成物の膨潤性の測定および評価〕
実施例1の口腔用組成物0.5g、ならびに比較例1および比較例2の比較組成物0.5gを、それぞれ容量2.5mLのプラスチック製注射筒(商品名:「テルモシリンジ」、テルモ株式会社製)のプランジャを抜いた状態のものに充填した。充填された上記組成物およびプラスチック製注射筒の合計質量を測定した後、各注射筒に精製水を300μLずつ添加した。さらに、2mL容量チューブ(「商品名」:BIO-BIK マイクロチューブ、株式会社イナ・オプティカ製)のキャップ部分(チューブから切り取ったもの)を、上記注射筒のプランジャ挿入口部分に装着した。次に、上記注射筒の長手方向が鉛直となり、かつ上記キャップが装着された部分が上記注射筒の上側に位置するように保持し、常温で24時間放置することにより、口腔用組成物を膨潤させた。その後、上記注射筒の上下を反転させて上記キャップ部が装着された部分を下側に位置させるとともに、上記注射筒を50°の角度で立て掛けて3分間放置することにより、膨潤に関与しなかった精製水を上記キャップ部に誘導した。最後に、上記キャップ部を外し、上記注射筒に残った上記組成物の質量を測定した。
【0090】
上記組成物の膨潤前後の質量を以下の式(4)に代入することにより、実施例1の口腔用組成物ならびに比較例1および比較例2の比較組成物における膨潤率(%)を算出した。この「膨潤率(%)」の値が大きいほど、より容易に膨潤しやすく、速やかに付着性を奏すると評価することができる。実施例1、比較例2について比較例1との膨張率(%)の差を算出したので、表2に示す。
【0091】
式(4)は以下のとおりである。
膨潤率(%)=膨潤後の質量(g)/膨潤前の質量(g)×100 ・・・(4)。
【0092】
【表2】
【0093】
表2から、実施例1の口腔用組成物は、比較例1の比較組成物と比べて4.2%膨張率が向上したことから、口腔粘膜へ適用された際の膨潤が起こりやすく、口腔粘膜への付着がしやすい状態であると理解される。さらに、比較例2の比較組成物は、その組成にカルバゾクロムを含有することから、比較例1の比較組成物よりも膨潤性が向上していると理解されるものの、実施例1の口腔用組成物に比べて膨潤性の向上はわずかであった。すなわち、実施例1の口腔用組成物は、カルバゾクロムの含有量が0.02w/w%(0.04w/w%以下)である第1成分と、第2成分とを含むため、比較例1、2に比して口腔粘膜における膨潤性が顕著に向上しているものである。
【0094】
さらに実施例1の口腔用組成物は、膨潤性が向上していることにより、口腔粘膜へ速やかに付着するだけではなく、口腔粘膜に塗布され膨潤した際に、口腔用組成物がより隙間なく塗布部と接することから、口腔用組成物と塗布部との密着性を向上させることができる。同時に、塗布部への滞留効果が高められており、たとえば、歯周ポケットの内部に滞留することにより、歯茎の内部に存在する歯根膜部分などに対する各成分の作用を高めることもできる。
【0095】
〔試験例3〕
〔口腔用組成物の製造〕
表3に示す各成分を準備し、この各成分を組成とする口腔用組成物を常法に従って調製することにより、実施例2~実施例4の口腔用組成物を製造した。さらに表3に示す各成分を準備し、実施例2~実施例4と同じ方法により比較例3~比較例5の比較組成物を製造した。表3中の「ヒプロメロース2910」、「アルギン酸ナトリウム」および「プルラン」は、水溶性高分子であるので第2成分である。表3中の「アラントイン」は非ステロイド系抗炎症剤であるので第4成分である。表3中の「マクロゴール400」および「マクロゴール4000」はそれぞれポリエチレングリコールであるので湿潤剤(添加物)である。
【0096】
〔口腔用組成物の膨潤後のプローブ付着量の測定および評価〕
実施例2~実施例4の口腔用組成物各2g、ならびに比較例3~比較例5の比較組成物2gに対し、精製水を2mLずつ添加し、撹拌混合し、30℃で24時間放置して膨潤させることにより実施例2~実施例4の口腔用組成物の膨潤体、ならびに比較例3~比較例5の比較組成物の膨潤体をそれぞれ得た。その後、これらの膨潤体1.5gを、試験例1で用いたのと同じ容量20mLのねじ口瓶にそれぞれ充填した。
【0097】
その後、上記FUDOH RHEO METERを用い、ねじ口瓶に充填された膨潤体の表面へ向けてφ1cmの専用プローブを、その先端が膨潤体の表面に接着するまで挿入し、続いて2cm/minの速度で該プローブを引き上げることによってプローブに膨潤体を付着させ、膨潤体のプローブ付着量(質量)を測定した。
【0098】
上記測定に基づき、比較例3の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量と実施例2の口腔用組成物の膨潤後のプローブ付着量とを下記の式(5)に代入することにより、「付着量変化率(%)」として、実施例2の口腔組成物が比較例3の比較組成物に比べ口腔粘膜への付着性が向上するかどうかを評価した。
【0099】
さらに比較例4の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量と実施例3の口腔用組成物の膨潤後のプローブ付着量とを下記の式(6)に代入することにより、「付着量変化率(%)」として、実施例3の口腔組成物が比較例4の比較組成物に比べ口腔粘膜への付着性が向上するかどうかを評価した。比較例5の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量と実施例4の口腔用組成物の膨潤後のプローブ付着量とを下記の式(7)に代入することにより、「付着量変化率(%)」として、実施例4の口腔組成物が比較例5の比較組成物に比べ口腔粘膜への付着性が向上するかどうかも評価した。
【0100】
試験例1と同様に「付着量変化率(%)」が正の数であって、その値が大きいとき、口腔用組成物は、口腔粘膜への付着性が向上したと評価することができる。その結果を表3に示す。
【0101】
式(5)は以下のとおりである。
付着量変化率(%)={(実施例2の口腔用組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)-比較例3の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g))/比較例3の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)}×100 ・・・(5)。
【0102】
式(6)は以下のとおりである。
付着量変化率(%)={(実施例3の口腔用組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)-比較例4の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g))/比較例4の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)}×100 ・・・(6)。
【0103】
式(7)は以下のとおりである。
付着量変化率(%)={(実施例4の口腔用組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)-比較例5の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g))/比較例5の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)}×100 ・・・(7)。
【0104】
【表3】
【0105】
表3から、実施例2の口腔用組成物は、比較例3の比較組成物に対して付着量が9.7%増大する付着量変化率を示したことから、比較例3に比べ口腔粘膜への付着性が向上していると理解される。さらに実施例3の口腔用組成物は、比較例4の比較組成物に対して付着量が13.5%増大する付着量変化率を示し、かつ実施例4の口腔用組成物は、比較例5の比較組成物に対して付着量が13.0%増大する付着量変化率を示したことから、実施例3および実施例4についても、それぞれ比較例4および比較例5に比べ口腔粘膜への付着性がさらに向上していると理解される。
【0106】
〔試験例4〕
〔口腔用組成物の製造〕
表4に示す各成分を準備し、この各成分を組成とする口腔用組成物を常法に従って調製することにより、実施例5~実施例8の口腔用組成物を製造した。さらに表4に示す各成分を準備し、実施例5~実施例8と同じ方法により比較例6の比較組成物を製造した。表4中の「カルボキシビニルポリマー」、「アルギン酸ナトリウム」および「プルラン」はそれぞれ水溶性高分子であるので、第2成分である。表4中の「流動パラフィン」は油性基剤であるので、第3成分である。表4中の「アラントイン」は非ステロイド系抗炎症剤であるので、第4成分である。試験例4における各実施例および比較例は、その剤型を試験例1および試験例3の各実施例および比較例における口腔用軟膏剤に代え、口腔用クリーム剤とした。
【0107】
〔口腔用組成物の膨潤後のプローブ付着量の測定および評価〕
実施例5~実施例8の口腔用組成物各2g、ならびに比較例6の比較組成物2gに対し、精製水を2mLずつ添加し、撹拌混合し、30℃で24時間放置して膨潤させることにより実施例5~実施例8の口腔用組成物の膨潤体、ならびに比較例6の比較組成物の膨潤体をそれぞれ得た。その後、これらの膨潤体1.5gを、試験例1で用いたのと同じ容量20mLのねじ口瓶にそれぞれ充填した。
【0108】
その後、上記FUDOH RHEO METERを用い、ねじ口瓶に充填された膨潤体の表面へ向けてφ1cmの専用プローブを、その先端が膨潤体の表面に接着するまで挿入し、続いて2cm/minの速度で該プローブを引き上げることによってプローブに膨潤体を付着させ、膨潤体のプローブ付着量(質量)を測定した。
【0109】
上記測定に基づき、比較例6の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量に対し、実施例5~実施例8の各口腔用組成物の膨潤後のプローブ付着量をそれぞれ下記の式(8)~(11)の該当するいずれかに代入することにより、「付着量変化率(%)」として実施例5~実施例8の口腔組成物が、それぞれ比較例6の比較組成物に比べ口腔粘膜への付着性が向上するかどうかを評価した。試験例1と同様に、「付着量変化率(%)」が正の数であって、その値が大きいとき、口腔用組成物は、口腔粘膜への付着性が向上したと評価することができる。その結果を表4に示す。
【0110】
式(8)は以下のとおりである。
付着量変化率(%)={(実施例5の口腔用組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)-比較例6の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g))/比較例6の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)}×100 ・・・(8)。
【0111】
式(9)は以下のとおりである。
付着量変化率(%)={(実施例6の口腔用組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)-比較例6の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g))/比較例6の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)}×100 ・・・(9)。
【0112】
式(10)は以下のとおりである。
付着量変化率(%)={(実施例7の口腔用組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)-比較例6の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g))/比較例6の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)}×100 ・・・(10)。
【0113】
式(11)は以下のとおりである。
付着量変化率(%)={(実施例8の口腔用組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)-比較例6の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g))/比較例6の比較組成物の膨潤後のプローブ付着量(g)}×100 ・・・(11)。
【0114】
【表4】
【0115】
表4から、実施例5の口腔用組成物は、比較例6の比較組成物に対して付着量が77.7%増大する付着量変化率を示したことから、比較例6に比べ口腔粘膜への付着性が向上していると理解される。さらに表4に示すように、アラントインを含有する実施例6の口腔用組成物、水溶性高分子を2種以上含有する実施例7および実施例8の口腔用組成物では、付着量変化率が更に大きくなる傾向が確認された。
【0116】
〔製剤例〕
以下、本発明に係る口腔組成物を用いたいくつかの製剤例について説明する。以下の製剤例は、次に記載する処方において常法により調製することができる。各成分の含有量の単位は全てw/w%である。
【0117】
[製剤例1] マクロゴール軟膏
カルバゾクロム 0.02
カルボキシビニルポリマー 3
マクロゴール400 48.49
マクロゴール4000 残量
全量 100.0 w/w%。
【0118】
上記製剤例1と関連する製剤例として、上記製剤例1のマクロゴール軟膏を金属製容器に充填した例を挙げることができる。
【0119】
[製剤例2] 軟膏
カルバゾクロム 0.02
アラントイン 0.3
カルボキシビニルポリマー 2
酢酸トコフェロール 2
白色ワセリン 30
マイクロクリスタリンワックス 2
サラシミツロウ 2
ハッカ油 0.1
ゲル化炭化水素 残量
全量 100.0 w/w%。
【0120】
上記製剤例2と関連する製剤例として、上記製剤例2の軟膏をアルミ製容器に充填した例を挙げることができる。
【0121】
[製剤例3] 軟膏
カルバゾクロム 0.02
セチルピリジニウム塩化物水和物 0.05
ヒノキチオール 0.1
アルギン酸ナトリウム 3
ゲル化炭化水素 残量
全量 100.0 w/w%。
【0122】
上記製剤例3と関連する製剤例として、上記製剤例3の軟膏をアルミ製容器に充填した例を挙げることができる。
【0123】
[製剤例4] O/Wクリーム
カルバゾクロム 0.02
グリチルリチン酸二カリウム 0.4
無水ケイ酸 1
流動パラフィン 5
ヒドロキプロピルメチルセルロース 1
グリセリン 5
ソルビタンモノステアレート 0.3
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 3
精製水 残量
全量 100.0 w/w%。
【0124】
上記製剤例4と関連する製剤例として、上記製剤例4のO/Wクリームをラミネート製容器に充填した例を挙げることができる。
【0125】
[製剤例5] 洗口液
カルバゾクロム 0.02
エタノール 10
プロピレングリコール 10
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5
キシリトール 1
パラベン 0.2
カルメロースナトリウム 1
精製水 残量
全量 100.0 w/w%。
【0126】
上記製剤例5と関連する製剤例として、上記製剤例5の洗口液をポリエチレンテレフタレート製容器に充填した例を挙げることができる。
【0127】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせたり、様々に変形したりすることも当初から予定している。
【0128】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。