(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】超臨界流体処理装置の洗浄剤
(51)【国際特許分類】
C11D 1/72 20060101AFI20220714BHJP
C11D 1/722 20060101ALI20220714BHJP
C07C 43/23 20060101ALI20220714BHJP
C07C 43/178 20060101ALI20220714BHJP
B08B 9/032 20060101ALI20220714BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
C11D1/72
C11D1/722
C07C43/23 Z
C07C43/178 Z
B08B9/032 321
B08B3/08 Z
(21)【出願番号】P 2017238250
(22)【出願日】2017-12-13
【審査請求日】2020-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】591018051
【氏名又は名称】明成化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓登
(72)【発明者】
【氏名】原田 亨
(72)【発明者】
【氏名】橋本 貴史
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-125145(JP,A)
【文献】特開昭54-112905(JP,A)
【文献】特開平05-179294(JP,A)
【文献】特表2005-535797(JP,A)
【文献】特開2018-009124(JP,A)
【文献】特開2004-088095(JP,A)
【文献】特開2000-282086(JP,A)
【文献】特開2002-210423(JP,A)
【文献】特開平07-003296(JP,A)
【文献】特開平07-003297(JP,A)
【文献】特開昭61-264099(JP,A)
【文献】国際公開第2012/105011(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
B08B 3/00-3/14
C07B 31/00-63/04
C07C 1/00-409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)または一般式(2)で表され、重量平均分子量が、725~5453の化合物である、超臨界二酸化炭素流体と共に使用される、超臨界流体染色処理装置の洗浄剤。
【化1】
[一般式(1)及び一般式(2)中、HO-(CH
2-X-O)
n-は、ポリオキシエチレン単位及びポリオキシプロピレン単位から選ばれるポリアルキレンオキシド単位であり、n個の(CH
2-X-O)の部分は、全て同一であってもよいし、異なっていてもよい。nは、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物の重量平均分子量が上記の範囲となるのに必要な、アルキレンオキシドの繰り返し単位の数である。Arは、スチリル基
、クミル基
、及びスチリル基が置換したクミル基から選ばれる芳香族置換基であ
る。mは1~5の整数である。]
【請求項2】
下記一般式(3)で表され、重量平均分子量が、800~1050の化合物である、超臨界二酸化炭素流体と共に使用される、超臨界流体染色処理装置の洗浄剤。
【化2】
[一般式(3)中、HO-(CH
2-X-O)
n-は、ポリオキシエチレン単位及びポリオキシプロピレン単位から選ばれるポリアルキレンオキシド単位であり、n個の(CH
2-X-O)の部分は、全て同一であってもよいし、異なっていてもよい。nは、一般式(3)で表される化合物の重量平均分子量が上記の範囲となるのに必要な、アルキレンオキシドの繰り返し単位の数である。R
1は
、ステアリル基及びベヘニル基から選ばれる炭化水素基である。]
【請求項3】
下記一般式(5)で表され、重量平均分子量が、913~23387の化合物である、超臨界二酸化炭素流体と共に使用される、超臨界流体染色処理装置の洗浄剤。
【化4】
[一般式(5)中、HO-(CH
2-X-O)
n-は、ポリオキシエチレン単位及びポリオキシプロピレン単位から選ばれるポリアルキレンオキシド単位であり、n個の(CH
2-X-O)の部分は、全て同一であってもよいし、異なっていてもよい。nは、一般式(5)で表される化合物の重量平均分子量が上記の範囲となるのに必要な、アルキレンオキシドの繰り返し単位の数である。]
【請求項4】
請求項1~
3のいずれかに記載の洗浄剤と超臨界二酸化炭素流体の存在下に、超臨界流体染色処理装置の処理槽及び/又は流路を洗浄する洗浄工程を備える、超臨界流体染色処理装置の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界流体処理装置の洗浄剤、当該洗浄剤を用いた超臨界流体処理装置の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維製品の染色を行う場合、一般に、染色媒体として大量の水が使用されている。しかしながら、水資源の節約や廃液処理の問題等が指摘されており、環境に対する負荷がより少ない染色技術の開発が求められている。そこで、超臨界流体を染色媒体として用いる方法、それに伴う繊維製品や染色装置の洗浄方法が提案されている(例えば特許文献1~3を参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリエステルやナイロン、ポリオレフィンなどの疎水性繊維材料と分散染料とを超臨界二酸化炭素で処理する際、圧力を7.3MPa以上で40MPa以下、温度を80℃以上300℃以下に制御して、染色後、二酸化炭素を段階的に放出させて、濃度の高い染色物を得る方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、親水性繊維を超臨界二酸化炭素中で染色する方法が開示されており、超臨界二酸化炭素中の相対湿度をメラミン、尿素又はチオジエチレングリコール等の水性給湿剤により10%~100%の間で制御し、ピリジン又はアンモニウム塩などの反応促進剤を加えることで、絹や羊毛、セルロース繊維であっても染色可能であることが示されている。
【0005】
また、特許文献3には、水や親水性化合物、疎水性化合物を5~100mol%添加することで、メタ型全芳香族ポリアミド繊維のような剛直な分子構造と高い結晶性を有する繊維であっても、内部まで均一に染色可能であることが記載されている。
【0006】
ところで、超臨界流体処理装置を用いて染色を行うと、処理槽や流路に染料や汚れなどが付着する。しかしながら、上記の通り、水資源の節約や廃液処理の問題等から環境に対する負荷がより少ない技術の開発が求められているため、洗浄方法についても水や有機溶媒を使用しない方法が理想的である。特許文献1~3には、超臨界流体処理装置の処理槽や流路に付着した染料などの洗浄方法について開示が無い。
【0007】
超臨界流体を用いた洗浄方法としては、例えば、非特許文献1では実機スケールで染色を行った後の耐圧容器(処理槽)の洗浄に関して、同色の染色を行う場合には二酸化炭素のみを使用した洗浄で問題なく、色替えの際にはポリエステルの白布帛で捨て染めを行うことで洗浄可能であることが記載されている。しかしながら、この方法では、ポリエステル繊維で捨て染めを行うため、多くの廃棄物が排出されるという問題がある。
【0008】
また、特許文献4では、超臨界流体を洗浄剤とし、製品および耐圧容器を洗浄する方法が記載されている。この方法について簡単に説明すると、染色終了後、染料を含まない超臨界状態にある純粋の流体を耐圧容器内に引き続き導入しながら耐圧容器の温度を2~8℃/minで降温させ、二酸化炭素の臨界点以上で繊維材料のガラス転移点以下にすることにより、超臨界流体に溶解していた染料の析出を抑えつつ、超臨界流体によって製品及び耐圧容器を効果的に洗浄できるとされている。また、この方法では、洗浄処理を染色処理から連続的に行うため、洗浄効率を大幅に向上させることができるとされている。
【0009】
しかしながら、特許文献4に記載された方法では、降温中および洗浄中に常に純粋な二酸化炭素を導入し続けるため、多くの二酸化炭素を使用し、降温速度の制御を行うための専用の装置も必要となる。また、洗浄方法が二酸化炭素を循環させるのみであるため、十分な洗浄効果が得られていない。
【0010】
特許文献5には、超臨界二酸化炭素流体を用いて繊維に染色加工や機能加工等を行う超臨界流体処理装置の処理槽内部や流体の通路内の洗浄に用いる洗浄剤に関する発明が記載されており、当該洗浄剤として、2種類が開示されている。1つ目の洗浄剤としては、「エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドを単位ユニットとする、分子量1,000~20,000の重合体、又は分子量1,000~20,000の糖鎖化合物を有する親水部と、炭素数が8から20までの炭化水素鎖又はこの一部にフェニル基、ナフチル基を含む化合物を有する疎水部とを有することを特徴とする、超臨界流体処理装置の洗浄剤」が開示されており、2つ目の洗浄剤としては、「フェニル基又はナフチル基とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド又は炭素数8から20の炭素水素鎖を単位ユニットとする分子量が20,000以上の高分子化合物を含む高分子吸着剤を有すること特徴とする、超臨界流体処理装置の洗浄剤」が開示されている。前者の洗浄剤は、染料やオリゴマーなどの汚れを二酸化炭素中に溶解させる役割を持っているとされ、また、後者の洗浄剤は、汚れを吸着させることで装置の洗浄が可能であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平5-132880号公報
【文献】特開2001-316988号公報
【文献】特開2006-45702号公報
【文献】国際公開第2012-105011号
【文献】特開2017-125145号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】京都工業繊維大学 繊維科学センター「第6回大阪地区講演会」 要旨
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者等が超臨界流体処理装置の洗浄剤について検討を重ねたところ、特許文献5に開示された2種類の洗浄剤では、洗浄能力が不十分であることが明らかとなった。
【0014】
このような状況下、本発明は、超臨界流体処理装置の洗浄剤として優れた洗浄能力を発揮する新規な洗浄剤を提供することを主な目的とする。また、本発明は、当該洗浄剤を用いた、超臨界流体処理装置の洗浄方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、ポリアルキレンオキシド単位を有しており、当該ポリアルキレンオキシド単位にエーテル結合を介して結合した特定の官能基や、特定の重量平均分子量を備える化合物が、超臨界流体処理装置の洗浄剤として優れた洗浄能力を発揮することを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0016】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. ポリアルキレンオキシド単位と、
前記ポリアルキレンオキシド単位にエーテル結合を介して結合しており、芳香族置換基を有することがある、フェニル基またはベンジル基と、
を有しており、
重量平均分子量が、700以上、20000未満である、超臨界流体処理装置の洗浄剤。
項2. ポリアルキレンオキシド単位と、
前記ポリアルキレンオキシド単位にエーテル結合を介して結合している、炭素数が8~22の炭化水素基と、
を有しており、
重量平均分子量が、300以上、1100未満である、超臨界流体処理装置の洗浄剤。
項3. ポリアルキレンオキシド単位と、
前記ポリアルキレンオキシド単位にエーテル結合を介して結合している、炭素数が22以上の炭化水素基と、
を有しており、
重量平均分子量が、2500以上、20000未満である、超臨界流体処理装置の洗浄剤。
項4. ポリアルキレンオキシド単位からなり、
重量平均分子量が、600以上、30000未満である、超臨界流体処理装置の洗浄剤。
項5. 超臨界流体と共に使用される、項1~4のいずれかに記載の超臨界流体処理装置の洗浄剤。
項6. 項1~5のいずれかに記載の洗浄剤の存在下に、超臨界流体処理装置の処理槽及び/又は流路を洗浄する洗浄工程を備える、超臨界流体処理装置の洗浄方法。
項7. 前記洗浄工程において、超臨界流体を用い、前記洗浄剤の存在下に、前記超臨界流体処理装置の前記処理槽及び/又は前記流路を洗浄する、項6に記載の超臨界流体処理装置の洗浄方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、超臨界流体処理装置の洗浄剤として優れた洗浄能力を発揮する新規な洗浄剤を提供することができる。また、本発明によれば、当該洗浄剤を用いた、超臨界流体処理装置の洗浄方法を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】超臨界流体処理装置のプロセスフローの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.洗浄剤
本発明の洗浄剤は、超臨界流体処理装置の洗浄に用いられる洗浄剤であり、具体的には、超臨界流体処理装置の処理槽、流路などの内面に付着した染料や汚れなどを洗浄するために用いられる洗浄剤である。
【0020】
本発明の洗浄剤は、超臨界流体と共に、超臨界流体処理装置の洗浄に使用することが好ましい。本発明の洗浄剤を用いた超臨界流体処理装置の洗浄方法については、後述するが、例えば、超臨界流体処理装置において、超臨界流体と染料を用いて繊維製品等の染色を行った後、超臨界流体処理装置を洗浄する場合であれば、当該染色に用いたのと同じ超臨界流体を用いて、本発明の洗浄剤の存在下に、超臨界流体処理装置の処理槽や流路を好適に洗浄することができる。
【0021】
本発明の洗浄剤による洗浄機構については、限定的な解釈を望むものではないが、本発明の洗浄剤は、染料などの汚れを吸着する機能と、超臨界流体に汚れなどを溶解・分散させる機能を発揮し、超臨界流体処理装置から汚れを好適に除去していると考えられる。超臨界流体に溶解・分散した汚れは、処理槽、流路などから排出される。また、洗浄剤をフィルター(ガラスフィルターなど)などに固定しておけば、洗浄剤に付着した染料などの汚れをフィルターと共に取り除くことができる。
【0022】
超臨界流体としては、超臨界流体処理装置に用いられるものであれば特に制限されないが、一般的には、超臨界二酸化炭素が挙げられる。
【0023】
本発明の第1の洗浄剤は、ポリアルキレンオキシド単位と、当該ポリアルキレンオキシド単位にエーテル結合を介して結合しており、芳香族置換基を有することがある、フェニル基またはベンジル基とを有しており、重量平均分子量が、700以上、20000未満であることを特徴としている。
【0024】
また、本発明の第2の洗浄剤は、ポリアルキレンオキシド単位と、当該ポリアルキレンオキシド単位にエーテル結合を介して結合している、炭素数が8~22の炭化水素基とを有しており、重量平均分子量が、300以上、1100未満であることを特徴としている。
【0025】
また、本発明の第3の洗浄剤は、ポリアルキレンオキシド単位と、当該ポリアルキレンオキシド単位にエーテル結合を介して結合している、炭素数が22以上の炭化水素基とを有しており、重量平均分子量が、2500以上、20000未満であることを特徴としている。
【0026】
また、本発明の第4の洗浄剤は、ポリアルキレンオキシド単位からなり、重量平均分子量が、600以上、30000未満であることを特徴としている。
【0027】
以下、本発明の第1~4の洗浄剤について、詳述する。
【0028】
(第1の洗浄剤)
第1の洗浄剤は、ポリアルキレンオキシド単位と、フェニル基またはベンジル基とが、エーテル結合を介して結合した構造を備えている化合物である。フェニル基及びベンジル基は、それぞれ、芳香族置換基を有することがある。また、第1の洗浄剤は、重量平均分子量が、700以上、20000未満である。第1の洗浄剤は、このような特定の構造と重量平均分子量とを備えていることにより、超臨界流体処理装置の洗浄剤として優れた洗浄能力を発揮する。
【0029】
第1の洗浄剤を構成している化合物は、下記の一般式(1)または(2)で表すことができる。一般式(1)は、ポリアルキレンオキシド単位と、芳香族置換基を有することがあるフェニル基とが、エーテル結合を介して結合した構造を備えている化合物である。また、一般式(2)は、ポリアルキレンオキシド単位と、芳香族置換基を有することがあるベンジル基とが、エーテル結合を介して結合した構造を備えている化合物である。
【0030】
【0031】
一般式(1)、(2)において、「HO-(CH2-X-O)n-」の部分が、ポリアルキレンオキシド単位を示している。Xは、アルキレン基であり、例えば、Xがメチレン基である場合、ポリオキシアルキレン単位は、ポリオキシエチレン単位となり、Xがエチレン基である場合、ポリオキシプロピレン単位となる。nは、アルキレンオキシドの繰り返し単位の数である。n個の(CH2-X-O)の部分は、全て同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、n個の(CH2-X-O)の部分が全て同一である例としては、後述のポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどが挙げられ、n個の(CH2-X-O)の部分が2種類のポリアルキレンオキシドにより構成されている例としては、後述のエチレンオキシド-プロピレンオキシド共重合体などが挙げられる。
【0032】
また、フェニル基またはベンジル基に結合している「Ar」は、芳香族置換基を意味しており、mは0であるか、1~5の正数である。すなわち、フェニル基及びベンジル基のベンゼン環の5つの水素原子が、それぞれ、m個の芳香族置換基で置換されている構造を有している。
【0033】
ポリアルキレンオキシド単位は、アルキレンオキシドが繰り返し結合して形成された構造を備えている。ポリアルキレンオキシド単位を構成しているアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどの炭素数が2~4の脂肪族アルキレンオキシドが挙げられ、より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどの炭素数が2~3の脂肪族アルキレンオキシドが挙げられる。なお、例えばプロピレンオキシドとしては、1,2-プロピレンオキシド及び1,3-プロピレンオキシドが挙げられる。また、例えばブチレンオキシドとしては、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、及びイソブチレンオキシドが挙げられる。ポリアルキレンオキシド単位において、これらのアルキレンオキシドは、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。また、ポリアルキレンオキシド単位は、これらのアルキレンオキシドのうち少なくとも1種を含むブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
【0034】
特に好ましいポリアルキレンオキシド単位の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、エチレンオキシド-プロピレンオキシド共重合体、エチレンオキシド-ブチレンオキシド共重合体、プロピレンオキシド-ブチレンオキシド共重合体などが挙げられる。これらの共重合体は、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれであってもよい。ポリアルキレンオキシド単位は、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
第1の洗浄剤を製造するにあたり、ポリアルキレンオキシド単位は、従来公知の方法で製造してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0036】
第1の洗浄剤において、ポリアルキレンオキシド単位の重量平均分子量としては、ポリアルキレンオキシド単位と芳香族置換基を有することがあるフェニル基またはベンジル基とがエーテル結合を介して形成された第1の洗浄剤としての重量平均分子量が、700以上、20000未満となる限りにおいて、特に制限されないが、超臨界流体処理装置の洗浄剤として優れた洗浄能力を好適に発揮する観点から、例えば、44~19800程度、好ましくは150~15000程度、より好ましくは250~10000程度である。
【0037】
第1の洗浄剤において、一般式(1)、(2)に示すように、ポリアルキレンオキシド単位には、エーテル結合を介して、芳香族置換基を有することがあるフェニル基、または芳香族置換基を有することがあるベンジル基が結合している。
【0038】
芳香族置換基としては、特に制限されず、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、スチリル基、クミル基、フェニル基が結合したアルキレン基などが挙げられる。これらの基は、さらに置換基を有していてもよく、当該置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数が1~3のアルキル基、フェニル基、スチリル基などが好ましい。また、「フェニル基が結合したアルキレン基」のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などの炭素数が1~3のアルキレン基などが好ましい。
【0039】
また、芳香族置換基の数mは、0又は1~5の正数であれば、特に制限されないが、好ましくは1~4が挙げられる。
【0040】
第1の洗浄剤において、一般式(1)、(2)で表される化合物の好ましい具体例としては、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルクミルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンポリスチリルクミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリスチリルクミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリスチリルフェニルエーテル、などが挙げられる。第1の洗浄剤は、1種類の化合物であってもよいし、2種類以上の化合物の混合物であってもよい。
【0041】
第1の洗浄剤の重量平均分子量は、700以上、20000未満である。すなわち、第1の洗浄剤を構成している化合物(一般式(1)、(2)で表される化合物)は、当該重量平均分子量を有している。超臨界流体処理装置の洗浄剤として優れた洗浄能力を好適に発揮する観点から、第1の洗浄剤の重量平均分子量は、好ましくは900~10000であり、より好ましくは1000~5000である。
【0042】
第1の洗浄剤の重量平均分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフィ(GPC法)により測定された値であり、具体的には、実施例に記載の方法により測定された値である。
【0043】
(第2の洗浄剤)
第2の洗浄剤は、ポリアルキレンオキシド単位と、炭素数が8~22の炭化水素基とが、エーテル結合を介して結合した構造を備えている化合物である。また、第2の洗浄剤は、重量平均分子量が、300以上、1100未満である。第2の洗浄剤は、このような特定の構造と重量平均分子量とを備えていることにより、超臨界流体処理装置の洗浄剤として優れた洗浄能力を発揮する。
【0044】
第2の洗浄剤を構成している化合物は、下記の一般式(3)で表すことができる。
【0045】
【0046】
一般式(3)において、「HO-(CH2-X-O)n-」の部分は、一般式(1)、(2)と同じく、ポリアルキレンオキシド単位を示している。nは、アルキレンオキシドの繰り返し単位の数である。また、R1は、炭素数が8~22の炭化水素基を意味している。
【0047】
第2の洗浄剤において、ポリアルキレンオキシド単位は、第1の洗浄剤について説明したものと同様である。
【0048】
また、ポリアルキレンオキシド単位とエーテル結合を介して結合している炭素数が8~22の炭化水素基としては、炭素数が8~22の飽和炭化水素基であることが好ましい。炭素数が8~22の炭化水素基の具体例としては、好ましくは、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、ベヘニル基などが挙げられ、より好ましくは、ステアリル基及びベヘニル基が挙げられる。
【0049】
第2の洗浄剤において、一般式(3)で表される化合物の好ましい具体例としては、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシプロピレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテルなどが挙げられる。第2の洗浄剤は、1種類の化合物であってもよいし、2種類以上の化合物の混合物であってもよい。
【0050】
第2の洗浄剤の重量平均分子量は、300以上、1100未満である。すなわち、第2の洗浄剤を構成している化合物(一般式(3)で表される化合物)は、当該重量平均分子量を有している。超臨界流体処理装置の洗浄剤として優れた洗浄能力を好適に発揮する観点から、第2の洗浄剤の重量平均分子量は、好ましくは500~1080であり、より、好ましくは800~1050である。
【0051】
第2の洗浄剤の重量平均分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフィ(GPC法)により測定された値であり、具体的には、実施例に記載の方法により測定された値である。
【0052】
(第3の洗浄剤)
第3の洗浄剤は、ポリアルキレンオキシド単位と、炭素数が22以上の炭化水素基とが、エーテル結合を介して結合した構造を備えている化合物である。また、第3の洗浄剤は、重量平均分子量が、2500以上、20000未満である。第3の洗浄剤は、このような特定の構造と重量平均分子量とを備えていることにより、超臨界流体処理装置の洗浄剤として優れた洗浄能力を発揮する。
【0053】
第3の洗浄剤を構成している化合物は、下記の一般式(4)で表すことができる。
【0054】
【0055】
一般式(4)において、「HO-(CH2-X-O)n-」の部分は、一般式(1)、(2)と同じく、ポリアルキレンオキシド単位を示している。nは、アルキレンオキシドの繰り返し単位の数である。また、R2は、炭素数が22以上の炭化水素基を意味している。
【0056】
第3の洗浄剤において、ポリアルキレンオキシド単位は、第1の洗浄剤について説明したものと同様である。
【0057】
また、ポリアルキレンオキシド単位とエーテル結合を介して結合している炭素数が22以上の炭化水素基としては、炭素数が22以上の飽和炭化水素基であることが好ましい。炭素数が22以上の炭化水素基の具体例としては、好ましくは、ベヘニル基、リグノセリル基などが挙げられ、より好ましくはベヘニル基が挙げられる。
【0058】
第3の洗浄剤において、一般式(4)で表される化合物の好ましい具体例としては、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシプロピレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンリグノセリルエーテル、ポリオキシプロピレンリグノセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンリグノセリルエーテルなどが挙げられる。第3の洗浄剤は、1種類の化合物であってもよいし、2種類以上の化合物の混合物であってもよい。
【0059】
第3の洗浄剤の重量平均分子量は、2500以上、20000未満である。すなわち、第3の洗浄剤を構成している化合物(一般式(4)で表される化合物)は、当該重量平均分子量を有している。超臨界流体処理装置の洗浄剤として優れた洗浄能力を好適に発揮する観点から、第3の洗浄剤の重量平均分子量は、好ましくは2600~15000であり、より好ましくは2800~10000である。
【0060】
第3の洗浄剤の重量平均分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフィ(GPC法)により測定された値であり、具体的には、実施例に記載の方法により測定された値である。
【0061】
(第4の洗浄剤)
第4の洗浄剤は、ポリアルキレンオキシドからなり、重量平均分子量が600以上、30000未満である化合物である。第4の洗浄剤は、ポリアルキレンオキシドが特定の重量平均分子量を備えていることにより、超臨界流体処理装置の洗浄剤として優れた洗浄能力を発揮する。
【0062】
第4の洗浄剤を構成している化合物は、下記の一般式(5)で表すことができる。
【0063】
【0064】
nは、アルキレンオキシドの繰り返し単位の数である。
【0065】
第4の洗浄剤において、ポリアルキレンオキシドは、第1の洗浄剤について説明したものと同様である。
【0066】
第4の洗浄剤として特に好ましいポリアルキレンオキシドの具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、エチレンオキシド-プロピレンオキシド共重合体、エチレンオキシド-ブチレンオキシド共重合体、プロピレンオキシド-ブチレンオキシド共重合体などが挙げられる。これらの共重合体は、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれであってもよい。第4の洗浄剤は、1種類の化合物であってもよいし、2種類以上の化合物の混合物であってもよい。
【0067】
第4の洗浄剤の重量平均分子量は、600以上、30000未満である。すなわち、第4の洗浄剤を構成している化合物(一般式(5)で表される化合物)は、当該重量平均分子量を有している。超臨界流体処理装置の洗浄剤として優れた洗浄能力を好適に発揮する観点から、第4の洗浄剤の重量平均分子量は、好ましくは800~28000であり、より好ましくは2000~25000である。
【0068】
第4の洗浄剤の重量平均分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフィ(GPC法)により測定された値であり、具体的には、実施例に記載の方法により測定された値である。
【0069】
2.洗浄方法
本発明の超臨界流体処理装置の洗浄方法は、本発明の洗浄剤の存在下に、超臨界流体処理装置の処理槽、流路などを洗浄する洗浄工程を備えている。本発明の洗浄方法により、超臨界流体処理装置の処理槽、流路などの内面に付着した染料や汚れなどを好適に洗浄することができる。本発明の洗浄方法に使用される洗浄剤の詳細については、前述の通りである。
【0070】
本発明の洗浄方法が適用される超臨界流体処理装置については、特に制限されず、超臨界流体を用いる種々の処理装置の洗浄に適用することができる。一般的な超臨界流体処理装置のプロセスフローの一例を
図1の模式図に示す。なお、
図1は、二酸化炭素を超臨界流体として用いる場合の例を示している。
【0071】
図1において、貯蔵タンク1から導入バルブ7を介して導出された液化二酸化炭素は、冷却部2に接続された圧縮部3内で圧縮される。ここで圧縮された二酸化炭素は、供給バルブ8を通じてヒータ5内で加温される。こうして加圧、加温された二酸化炭素は、耐圧容器4(処理槽)に供給され、超臨界二酸化炭素による所望の処理が行われる。この時、耐圧容器4内に処理対象とする繊維と染料とを共存させておくことにより、繊維の染色処理を行うことができる。超臨界流体を用いた繊維の染色処理については、例えば特許文献1~5及び非特許文献1に記載のとおり、公知である。処理後、二酸化炭素は、排出バルブ9を通ってガス分離層6に送られ、染料を分離後、排出される。
【0072】
本発明の洗浄方法は、特に、染料を用いた処理が行われた後の超臨界流体処理装置の洗浄に好適に適用することができる。
【0073】
本発明の洗浄方法においては、超臨界流体を用い、本発明の洗浄剤の存在下に、超臨界流体処理装置の処理槽、流路を洗浄することが好ましい。より具体的には、例えば、洗浄対象とする処理槽や流路などに本発明の洗浄剤を配置し、超臨界流体を処理槽や流路に導入することにより洗浄工程を行うことができる。例えば、超臨界流体処理装置を用いた処理条件と同様の条件で、超臨界流体と洗浄剤の共存下で運転を行うことにより、超臨界流体処理装置の処理槽、流路などの洗浄を行うことができる。
【0074】
洗浄工程において、本発明の洗浄剤は、超臨界流体中に分散させてもよいし、フィルター(ガラスフィルターなど)などに固定してもよい。超臨界流体中に分散した洗浄剤は、染料などの汚れを吸着・除去する機能を発揮すると共に、超臨界流体中に染料などの汚れを溶解・分散させる機能を発揮すると考えられる。一方、洗浄工程において、フィルターなどに固定された状態の洗浄剤は、染料などの汚れを吸着・除去する機能を発揮すると考えられる。超臨界流体に分散しやすい洗浄剤は、主に前者の機構によって染料などの汚れを除去し、超臨界流体に分散し難い洗浄剤は、主に後者の機構によって染料などの汚れを除去する。限定的な解釈を望むものではないが、本発明の第1~第4の洗浄剤についての大まかな傾向としては、第2の洗浄剤は、超臨界流体中に溶解・分散させる機能が発揮されやすく、第1の洗浄剤及び第3の洗浄剤は、吸着・除去する機能が発揮されやすいといえる。また、第4の洗浄剤については、アルキレンオキシドが2種類含まれている化合物のうち、低分子量の化合物については、超臨界流体中に溶解・分散させる機能が発揮されやすく、高分子量のものについては吸着・除去する機能が発揮されやすく、アルキレンオキシドが1種類のみで構成されているものは、超臨界流体中に溶解・分散させる機能が発揮されやすいといえる。ただし、これらの傾向には例外も存在する。
【0075】
例えば、超臨界流体処理装置において、超臨界流体と染料を用いて繊維製品等の染色を行った後、超臨界流体処理装置を洗浄する場合であれば、当該染色に用いたのと同じ超臨界流体を用い、本発明の洗浄剤の存在下に、超臨界流体処理装置の処理槽や流路の洗浄を好適行うことができる。前述の通り、超臨界流体としては、二酸化炭素が一般的であり、本発明でも特に好ましい。なお、超臨界二酸化炭素の代わりに、亜臨界二酸化炭素、または臨界していない二酸化炭素を用いて、本発明の洗浄剤の存在下に、洗浄工程を行ってもよい。
【0076】
洗浄剤の存在下に超臨界流体を用いて超臨界流体処理装置を洗浄する場合、洗浄剤の濃度(洗浄剤と超臨界流体の合計量に対する、洗浄剤の割合)としては、特に制限されず、汚れの程度などに応じて適宜調整すればよいが、好ましくは0.02~200g/L程度、より好ましくは10~100g/L程度が挙げられる。
【0077】
洗浄工程における温度、圧力などの条件としては、特に制限されないが、洗浄剤の存在下に超臨界流体を用いて超臨界流体処理装置を洗浄する場合には、超臨界流体状態が保持される条件とする。例えば、超臨界二酸化炭素を用いる場合であれば、温度31~300℃程度、圧力7.3~40MPa程度で、二酸化炭素が超臨界状態となる条件とする。
【0078】
また、洗浄工程における洗浄時間は、装置の大きさや汚れの程度などに応じて適宜調整すればよく、例えば、30~120分間程度である。
【0079】
本発明の洗浄方法において、本発明の洗浄剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【実施例】
【0080】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
【0081】
(実施例1)
1Lオートクレーブにクミルフェノール 200 g、苛性カリ(特級) 0.9 gを仕込み、密閉した。減圧状態で130℃まで加熱後、プロピレンオキサイド82 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。続いて減圧状態でエチレンオキサイド664 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して中間生成物を取り出した。中間生成物 100 gと苛性カリ(特級) 0.5 gを1Lオートクレーブに仕込み、密閉した。減圧状態で130℃まで加熱後、エチレンオキサイド362 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(90%) 0.7 gを加え、15分撹拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンクミルフェニルエーテル)を作製した。
【0082】
(実施例2)
1Lオートクレーブにポリスチリルクミルフェノール 350 g、苛性カリ(特級) 1.5 gを仕込み、密閉した。減圧状態で150℃まで加熱後、エチレンオキサイド 157 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(90%) 1.7 gを加え、15分撹拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレンポリスチリルクミルフェニルエーテル)を作製した。
【0083】
(実施例3)
1Lオートクレーブにポリスチリルクミルフェノール 300 g、苛性カリ(特級) 1.5 gを仕込み、密閉した。減圧状態で150℃まで加熱後、エチレンオキサイド 205 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(90%) 1.7 gを加え、15分撹拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレンポリスチリルクミルフェニルエーテル)を作製した。
【0084】
(実施例4)
1Lオートクレーブにポリスチリルクミルフェノール 200 g、苛性カリ(特級) 1.5 gを仕込み、密閉した。減圧状態で150℃まで加熱後、エチレンオキサイド 230 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(90%) 1.8 gを加え、15分撹拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレンポリスチリルクミルフェニルエーテル)を作製した。
【0085】
(実施例5)
1Lオートクレーブにトリスチリルフェノール 200 g、苛性カリ(特級) 1.6 gを仕込み、密閉した。減圧状態で150℃まで加熱後、プロピレンオキサイド 369 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(90%) 1.9 gを加え、15分撹拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシプロピレントリスチリルフェニルエーテル)を作製した。
【0086】
(実施例6)
1Lオートクレーブにトリスチリルフェノール 200 g、苛性カリ(特級) 2.5 gを仕込み、密閉した。減圧状態で150℃まで加熱後、プロピレンオキサイド 614 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(90%) 2.8 gを加え、15分撹拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシプロピレントリスチリルフェニルエーテル)を作製した。
【0087】
(実施例7)
1Lオートクレーブにトリスチリルフェノール 200 g、苛性カリ(特級) 1.6 gを仕込み、密閉した。減圧状態で150℃まで加熱後、エチレンオキサイド 350 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(90%) 1.9 gを加え、15分撹拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル)を作製した。
【0088】
(実施例8)
1Lオートクレーブにトリスチリルフェノール 100 g、苛性カリ(特級) 1.6 gを仕込み、密閉した。減圧状態で150℃まで加熱後、エチレンオキサイド 458 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(90%) 1.9 gを加え、15分撹拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル)を作製した。
【0089】
(比較例1)
1Lオートクレーブにトリスチリルフェノール 300 g、苛性カリ(特級) 1.5 gを仕込み、密閉した。減圧状態で150℃まで加熱後、エチレンオキサイド 209 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(90%) 1.7 gを加え、15分撹拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル)を作製した。
【0090】
(比較例2)
1Lオートクレーブにベンジルアルコール 100 g、苛性カリ(特級) 1.3 gを仕込み、密閉した。減圧状態で150℃まで加熱後、エチレンオキサイド 369 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(90%) 1.6 gを加え、15分撹拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレンベンジルエーテル)を作製した。
【0091】
(実施例9)
1Lオートクレーブにべへニルアルコール 300 g、苛性カリ(特級) 1.4 gを仕込み、密閉した。減圧状態で150℃まで加熱後、エチレンオキサイド 195 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(90%) 1.7 gを加え、15分撹拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレンべへニルエーテル)を作製した。
【0092】
(実施例10)
1Lオートクレーブにステアリルアルコール 300 g、苛性カリ(特級) 1.5 gを仕込み、密閉した。減圧状態で150℃まで加熱後、エチレンオキサイド 232 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(90%) 1.8 gを加え、15分撹拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレンステアリルエーテル)を作製した。
【0093】
(比較例3)
1Lオートクレーブにステアリルアルコール 100 g、苛性カリ(特級) 1.6 gを仕込み、密閉した。減圧状態で150℃まで加熱後、エチレンオキサイド 463 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(90%) 1.9 gを加え、15分撹拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレンステアリルエーテル)を作製した。
【0094】
(比較例4)
1Lオートクレーブにラウリルアルコール 100 g、苛性カリ(特級) 2.2 gを仕込み、密閉した。減圧状態で150℃まで加熱後、エチレンオキサイド 661 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(90%) 2.6 gを加え、15分撹拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)を作製した。
【0095】
(実施例11)
1Lオートクレーブにべへニルアルコール 100 g、苛性カリ(特級) 1.4 gを仕込み、密閉した。減圧状態で150℃まで加熱後、エチレンオキサイド 385 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(90%) 1.6 gを加え、15分撹拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレンべへニルエーテル)を作製した。
【0096】
(実施例12~14)
実施例12~14では、それぞれ、表1に記載のポリエチレングリコール(三洋化成工業株式会社製)を洗浄剤とした。
【0097】
(実施例15)
1Lオートクレーブにポリプロピレングリコール(分子量約2000) 200 g、苛性カリ(特級) 1.1 gを仕込み、密閉した。減圧状態で150℃まで加熱後、エチレンオキサイド 200 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(90%) 1.4 gを加え、15分撹拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー)を作製した。
【0098】
(実施例16)
1Lオートクレーブにポリプロピレングリコール(分子量約3000) 100 g、苛性カリ(特級) 1.4 gを仕込み、密閉した。減圧状態で150℃まで加熱後、エチレンオキサイド 400 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(90%) 1.7 gを加え、15分撹拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー)を作製した。
【0099】
(実施例17)
1Lオートクレーブにポリプロピレングリコール(分子量約2000) 100 g、苛性カリ(特級) 1.4 gを仕込み、密閉した。減圧状態で150℃まで加熱後、エチレンオキサイド 400 gを注入し、1.5時間熟成した後に脱気を行った。脱気終了後、80℃まで冷却して酢酸(90%) 1.7 gを加え、15分撹拌を行うことで洗浄剤(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー)を作製した。
【0100】
(比較例5)
比較例5では、表1に記載のポリエチレングリコール(青木油脂工業株式会社製)を洗浄剤とした。
【0101】
(比較例6)
比較例6では、ポリエチレンテレフタレート(PET)布帛(株式会社色染社製)を洗浄剤とした。
【0102】
<洗浄剤の分子量の測定>
以下の条件により、洗浄剤として用いた化合物の分子量(重量平均分子量)を、ゲルパーミッションクロマトグラフィ(GPC法)により測定した。結果を表1~4に示す。
装置:Shimazu GPC 分析装置 (株式会社島津製作所製)
検出器:示差屈折計検出器 RID-10A (株式会社島津製作所製)
使用カラム:KF-802.5、KF-804、KF-805(いずれも昭和電工株式会社製)
移動相:THF
流量:0.5 mL/min
カラム温度:30℃
試料濃度:0.2% (w/v)
注入量:0.1 mL
分子量標準物質:ポリスチレン (Agilent Technologies株式会社製)
【0103】
<洗浄試験例>
上記の各洗浄剤について、それぞれ、超臨界二酸化炭素を用いた洗浄能力の評価試験を行った。洗浄対象とした超臨界流体処理装置のプロセスフローは、
図1に示す通りである。耐圧容器(日本分光株式会社製 EV-2、内容量 50 mL)に染料(紀和化学工業株式会社製 KIWA-SFD RED B)12.5 mgを添加し、アセトン(ナカライテスク社より購入)で溶解させた後に耐圧容器中で傾けながらアセトンを除去することで、疑似的な染料汚れとした。また、上記の各洗浄剤1.0 gをガラスフィルター(東京濾紙株式会社製 THIMBLE FILTER 88R)に含侵させ、試験片とした。耐圧容器に撹拌子、設置台、試験片を充填した後、耐圧容器の蓋、ガスのラインを閉じて密閉系とし、マグネティックスターラー内蔵型オーブン(日本分光株式会社製 SFC-Pro)の所定の位置に設置した。次いで、撹拌子による撹拌を行いながら125℃に昇温し、1時間保持した。昇温後、送液ポンプ(日本分光株式会社製 PU-2086インテリジェントHPLCポンプ)により二酸化炭素を25MPaになるように導入し、125℃で1時間の超臨界処理を行った。超臨界処理を行った後、ガスの開閉ラインを開いて二酸化炭素を排出した。
【0104】
試験後の耐圧容器について、耐圧容器内部及び設置台、洗浄剤を含侵させたガラスフィルターそれぞれをアセトンで洗浄・抽出を行った後に分光光度計(株式会社島津製作所製 UV-2550)により測定し、下記式(1)により耐圧容器内に存在する染料残存率(容器内染料残存率)を算出した。結果を表1~4に示す。
【0105】
なお、比較例6については、ポリエチレンテレフタレート(PET)布帛1.0 gを洗浄剤として、同様にして洗浄能力の評価試験を行った。結果を表5に示す。
【0106】
容器内染料残存率=(アセトンにより洗浄・抽出された染料量)/(染料仕込み量)×100 (1)
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【符号の説明】
【0112】
1 貯蔵タンク
2 冷却器
3 圧縮部
4 耐圧容器
5 ヒータ
6 ガス分離槽
7 導入バルブ
8 供給バルブ
9 排出バルブ