(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】洗浄剤入り包装体、ラミネートフィルム
(51)【国際特許分類】
B65D 75/26 20060101AFI20220714BHJP
C11D 17/04 20060101ALI20220714BHJP
C11D 3/30 20060101ALI20220714BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220714BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
B65D75/26
C11D17/04
C11D3/30
B65D65/40 D
B32B27/40
(21)【出願番号】P 2018042491
(22)【出願日】2018-03-09
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】筒井 淳浩
(72)【発明者】
【氏名】宮本 憲一
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-274578(JP,A)
【文献】特開2015-157363(JP,A)
【文献】特開平11-115094(JP,A)
【文献】特開2005-097496(JP,A)
【文献】特開2015-151497(JP,A)
【文献】特開2012-035849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/26
B65D 65/40
C11D 17/04
C11D 3/30
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層
、接着剤層
、シーラント層
、を順に備えるラミネートフィルムから形成された袋状容器に、エタノールアミン系アルカリ剤を含む洗浄剤が封入された洗浄剤入り包装体において、
前記接着剤層が、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエーテルポリウレタンポリオールを主成分とする主剤と、
芳香族系のポリイソシアネート
であるトリレンジイソシアネートを主成分とする硬化剤とからなる二液硬化型接着剤から形成されていることを特徴とする洗浄剤入り包装体。
【請求項2】
前記ラミネートフィルムが、前記
基材層、バリア層、前記接着剤層、前記シーラント層、を順に備えており、
前記バリア層はアルミニウム箔であることを特徴とする請求項1記載の洗浄剤入り包装体。
【請求項3】
前記ラミネートフィルムが、前記基材層、外側接着剤層、前記バリア層、前記接着剤層、前記シーラント層、を順に備えており、
前記外側接着剤層がポリエステルポリウレタンポリオールを主成分とする主剤と、脂肪族系ポリイソシアネートを主成分とする硬化剤とからなる二液硬化型接着剤から形成されていることを特徴とする請求項2に記載の包装体。
【請求項4】
前記エタノールアミン系アルカリ剤が、モノエタノールアミン及び/又はジエタノールアミンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の洗浄剤入り包装体。
【請求項5】
少なくとも基材層
、接着剤層
、シーラント層
、を順に備えるラミネートフィルムであって、
前記接着剤層が、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエーテルポリウレタンポリオールを主剤とし、
芳香族系のポリイソシアネート
であるトリレンジイソシアネートを硬化剤とする二液硬化型接着剤から形成されていることを特徴とするエタノールアミン系アルカリ剤を含む洗浄剤包装用ラミネートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエタノールアミン系アルカリ剤を含む洗浄剤が封入された包装体に関する。また該包装体に用いられるラミネートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減の観点から、使用後に廃棄物となる包装容器の排出量削減が求められる。そして排出量を削減する為に、プラスチックボトルから成る包装容器の多くが、ラミネートフィルムからなる袋状容器へ切り替わっている。例えばシャンプーやボディーソープ、洗濯用洗剤等は、ラミネートフィルムから成る袋状容器に封入されたものが詰替用として提供されている。
しかしながらアルカリ剤を含む洗浄剤(特にアルカリ剤の配合割合が高く、pHが10を超える洗浄剤)は、袋状容器への切り替えがあまり進んでいない。これはアルカリ剤を含む洗浄剤は、洗浄力に優れるものの、プラスチックフィルムへの浸透性が高いため、ラミネートフィルムからなる袋状容器を使用すると、アルカリ剤がラミネートフィルムへ浸透し、該ラミネートフィルムをデラミネーション(層間剥離)させる恐れがある為である。
【0003】
特許文献1は、ラミネートフィルム(特許文献1における「複合フィルム基材」に相当)からなる袋状容器に、アミン型アルカリ剤と溶剤とを含有する液体洗浄剤組成物を収納した包装体(特許文献1における「袋状容器入り液体洗浄剤」に相当)に係る発明で、油脂汚れ洗浄性及び高温下の長期保存安定性(過酷な熱さでの保存時に、容器を構成するラミネートフィルムがデラミネーションしない性能)に優れた袋状容器入り液体洗浄剤の提供を課題とする。
特許文献1では、油脂汚れ洗浄性を高めながら、デラミネーション等の課題を解決するために、洗浄剤に比較的分子量の大きいアミン型アルカリ剤、具体的にはトリエタノールアミンのような分子量が110以上のアミン型アルカリ剤を配合することが提案されており、更にラミネートフィルムとして直鎖状低密度ポリエチレンフィルムと補強用プラスチックフィルムとからなるフィルムを採用することが提案されている。
【0004】
特許文献2は、モノエタノールアミンやジエタノールアミンのような揮発性成分を含む液体洗浄剤がプラスチックフィルム内に封入された液体洗浄剤入りパウチが、外箱内に複数個梱包されてなる液体洗浄剤入りパウチ梱包箱の発明である。
特許文献2には、揮発性成分を含む液体洗浄剤は長期間保存されると、液体洗浄剤に含まれる揮発性成分が液体洗浄剤入りパウチのプラスチックフィルムを透過することがある旨、開示されている。また、揮発性成分の透過を抑制する為の手段として、バリア性の高いシリカ蒸着フィルム、アルミ蒸着フィルム、アルミニウム箔層等を備えるラミネートフィルムを用いることが検討されているが、揮発性成分が、モノエタノールアミンやジエタノールアミンといった揮発性アルカリ剤である場合、該アルカリ剤が接着層(蒸着層や金属層との貼り合せ層)に蓄積し、接着剤を溶かすという問題が指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-097496
【文献】特開2016-098017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、洗浄性に優れるエタノールアミン系アルカリ剤を含む洗浄剤が、ラミネートフィルムからなる袋状容器に封入された包装体において、ラミネートフィルムのデラミネーションを抑制することである。
また本発明は、アルカリ剤がラミネートフィルムを透過しないようにすることも同時に課題とする。アルカリ剤がラミネートフィルムを透過すると、包装体の表面がべとつき、使用者に不快な印象を与える。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記課題を解決する為の手段として、少なくとも基材層と接着剤層とシーラント層とを順に備えるラミネートフィルムから形成された袋状容器に、エタノールアミン系アルカリ剤を含む洗浄剤が封入された洗浄剤入り包装体において、前記接着剤層が、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエーテルポリウレタンポリオールを主成分とする主剤と、ポリイソシアネートを主成分とする硬化剤とからなる二液硬化型接着剤から形成されていることを特徴とする洗浄剤入り包装体が提供される。
また、前記ラミネートフィルムが、前記基材層と前記接着剤層との間にバリア層を備えることを特徴とする前記洗浄剤入り包装体が提供される。
また、前記硬化剤が、芳香族系のポリイソシアネートであることを特徴とする前記洗浄剤入り包装体が提供される。
また、前記エタノールアミン系アルカリ剤が、モノエタノールアミン及び/又はジエタノールアミンであることを特徴とする前記洗浄剤入り包装体が提供される。
【0008】
併せて、少なくとも基材層と接着剤層とシーラント層とを順に備えるラミネートフィルムであって、前記接着剤層が、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエーテルポリウレタンポリオールを主剤とし、ポリイソシアネートを硬化剤とする二液硬化型接着剤から形成されていることを特徴とするエタノールアミン系アルカリ剤を含む洗浄剤包装用ラミネートフィルムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗浄剤入り包装体は、内容物がエタノールアミン系アルカリ剤を含むにもかかわらず、接着剤層が劣化しない為、袋状容器を形成するラミネートフィルムがデラミネーションし難い。その為、包装体の外観は長期間にわたり良好である。
また該ラミネートフィルムが、基材層と接着剤層との間にバリア層を備える場合、エタノールアミン系アルカリ剤がラミネートフィルムを透過することも抑制できる。よって、内容物(洗浄剤)の目減りを防止できると共に、包装体表面がべたつくという問題も解決できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲において、種々の形態をとることができる。
本発明の洗浄剤入り包装体は、ラミネートフィルムからなる袋状容器と、エタノールアミン系アルカリ剤を含む洗浄剤とからなる。
【0011】
≪袋状容器≫
本発明の包装体の構成要素の一つである袋状容器は、ラミネートフィルムからなる。
<ラミネートフィルム>
本発明において袋状容器に用いられるラミネートフィルムは、少なくとも基材層と接着剤層とシーラント層とを順に備え、好ましくは更にバリア層を備える。本発明のラミネートフィルムの代表的な構成は、(i)基材層/接着剤層/シーラント層、或いは(ii)基材層/接着剤層/バリア層/接着剤層/シーラント層である。
(ii)の構成では接着剤層が二つ在るが、本発明において特定するのはバリア層よりも内側(シーラント層側)の接着剤層である。バリア層よりも外側(基材層側)の接着剤層は、バリア層によってエタノールアミン系アルカリ剤の浸透が妨げられるため、アルカリ剤によって変質することはない。以下、バリア層よりも内側の接着剤層と、外側の接着剤層を区別する必要がある場合は、バリア層よりも内側の接着剤層を「内側接着剤層」、バリア層よりも外側の接着剤層を「外側接着剤層」と称する。
尚、本発明に用いられるラミネートフィルムは、本発明の効果を奏する範囲において他の樹脂層や金属層等を備えることもできる。
【0012】
(基材層)
本発明のラミネートフィルムにおける基材層は、一般的な袋状容器に用いられるラミネートフィルムの基材層と同様のものを、適宜採用することができる。
基材層は、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、6-ナイロンフィルム、6,6-ナイロンフィルム、MXD6-ナイロンフィルム、11-ナイロンフィルム、12-ナイロンフィルム等のポリアミドフィルムより形成することができる。また必要に応じ、これらのフィルムを積層した多層フィルムから基材層を形成することも可能である。
基材層は、耐熱性、耐衝撃性の面から、2軸延伸されたフィルムを採用することが好ましい。また基材層の厚さは特に限定されないが、通常、5~30μm程度である。基材層を形成するフィルムは、表面又は裏面に印刷処理が行われていてもよく、必要に応じ易引裂性処理や帯電防止処理等が施されていてもよい。
【0013】
(シーラント層)
本発明のラミネートフィルムにおけるシーラント層も、一般的な袋状容器に用いられるラミネートフィルムのシーラント層と同様のものを、適宜採用することができる。
シーラント層は、例えば低密度ポリエチレンや中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂を主成分とするフィルムから形成することができる。中でも直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とするフィルムは、ヒートシール強度に優れ、袋状容器を成形した際に高いシール強度を発現するため、本発明のシーラント層として適する。
シーラント層の厚さは特に限定されないが、通常、10~300μmの範囲であり、好ましくは、50~150μmである。
【0014】
(接着剤層)
従来、ラミネートフィルムへ浸透し易い内容物を包装する場合、ラミネートフィルムの接着剤には、ポリエステル系のものやポリエステルポリウレタン系のものが採用されている。これは接着剤層が凝集力の大きいエステル結合を有していると、該層が硬質となり、シーラント層を浸透してきた内容物にアタックされ難い為である。しかしながら本発明者らは、内容物がエタノールアミン系のアルカリ剤を含む場合、これらの接着剤ではラミネートフィルムのデラミネーションを抑制できないことを見出した。これはエタノールアミンの特異な性質によるものと考えられる。
【0015】
まず、エタノールアミンは塩基性物質であるため、エステル結合(R-COOR’)の加水分解を促進させる。
またエタノールアミンは、分子中にアミノ基(-NH2)を有しているが、アミノ基の窒素原子は非共有電子対を有しており、該非共有電子対の部分はδ-の状態にある。一方、エステル結合では、電子が酸素原子側に引き寄せられ、カルボニル炭素の酸素原子と反対側の部分がδ+の状態にある。その為、アミノ基の窒素原子のδ-の部分とカルボニル炭素のδ+の部分は引き付け合いやすく、交換反応を起こし易い。更にエタノールアミンは、分子中にヒドロキシル基(-OH)を有しているが、ヒドロキシル基を有する分子は、酸或いは塩基条件で、エステル交換反応を起こし易い。よって、エステル結合を備える接着剤層にエタノールアミンが接触すると、交換反応により接着剤の分子量低下が引き起こされ、接着力が低下するものと思われる。
更にエタノールアミンは、アルコールとしての性質も備える。アルコールは接着剤の溶剤としても使用されており、接着剤を溶かす性質を備える。よって、エタノールアミンはエステル系の接着剤を膨潤させ、接着力を低下させるものと思われる。
【0016】
そこで本発明では、上述した(i)のようなバリア層を備えない構成においては、少なくとも一つの接着剤層を、好ましくは全ての接着剤層を、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエーテルポリウレタンポリオールを主剤とし、ポリイソシアネートを硬化剤とする二液硬化型接着剤から形成することとする。また上述した(ii)のようなバリア層を備える構成においては、少なくとも一つの内側接着剤層を、好ましくは全ての内側接着剤層を、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエーテルポリウレタンポリオールを主剤とし、ポリイソシアネートを硬化剤とする二液硬化型接着剤から形成することとする。ポリエーテルポリオール及び/又はポリエーテルポリウレタンポリオールはエステル結合を備えない為、極性が低く、エタノールアミンと反応し難い。
【0017】
本発明ではポリエーテルポリオールとして、公知のものを使用することができる。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の活性水素原子を2個有する化合物の1種以上を開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のモノマーの1種以上を常法により付加重合したポリエーテル類を挙げることができる。
【0018】
またポリエーテルポリウレタンポリオールは、上記のポリエーテルポリオールをウレタン化したものを使用することができる。ウレタン化に用いられるジイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート(ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、低分子グリコール類と前記芳香族ジイソシアネートとのプレポリマー等);脂肪族ジイソシアネート(1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、エチレングリコール、プロピレングリコール等の低分子グリコール類と前記脂肪族ジイソシアネートとのプレポリマー等);脂環族ジイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、水添化4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルー4,4’-ジイソシアネート、低分子グリコール類と前記脂環族ジイソシアネートとのプレポリマー等);及びこれらの二種以上の混合物が挙げられる。
尚、ポリエーテルポリオールを主剤とする接着剤層よりも、ポリエーテルポリウレタンポリオールを主剤とする接着剤層の方が、得られる接着剤層の凝集力が高くなる為、内容物による変質が発生し難い。
【0019】
本発明において硬化剤として用いられるポリイソアネートは、例えば、前記したジイソシアネートとポリオールとのアダクト体、イソシアヌレート体(三量体)、ビューレット体等の1分子内にイソシアネート基が少なくとも2個以上有するものが挙げられる。
本発明で用いられる硬化剤は、これらの硬化剤の中でも、ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族系のジイソシアネートモノマーからなる芳香族系のポリイソシアネート、特にジフェニルメタンジイソシアネートモノマーから成る芳香族系のポリイソシアネートが適する。芳香族系のポリイソシアネートは電子求引基である芳香環にイソシアネート基が直結しているため、イソシアネート基の反応活性が非常に高く、得られる接着剤層を硬質のものとするのに寄与する。
【0020】
主剤のポリエーテルポリオール及び/又はポリエーテルポリウレタンポリオールに起因する水酸基と、硬化剤のポリイソシアネートに起因するイソシアネート基の割合は、OH:NCO=1:1~1:4が好ましく、1:1~1:3がより好ましい。
主剤と硬化剤とは、基材層用のフィルム等に塗工するに先立ち、溶剤にて希釈しておくことが望ましい。希釈に使用される溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロリド、エチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等が例示される。これらのうち入手のし易さや、希釈性能、乾燥のし易さ等を考慮すると、酢酸エチルを使用することが好ましい。
【0021】
本接着剤の塗布量は、固形分で1.5~5g/m2が好ましく、特に2~4g/m2が好ましい。通常、溶剤型では塗布量を約1.0~4.0g/m2、無溶剤型では約0.5~3.0g/m2程度で使用するとよい。
【0022】
(バリア層)
本発明に用いられるラミネートフィルムは、更にエタノールアミン系アルカリ剤の浸透を妨げるバリア層を備えることが望ましい。
バリア層はエタノールアミン系アルカリ剤の浸透を妨げることができれば、その材質は特に限定されるものでなく、例えばアルミニウム、ニッケル、ステンレス、銅、チタンなどの金属からなる金属箔を用いることができる。また アルミニウムやアルミニウム酸化物、ケイ素酸化物を二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等の基材フィルムに蒸着した蒸着フィルムを使用することもできる。前記蒸着フィルムを使用する場合、蒸着層の厚みは150~2000Åの範囲が適当である。蒸着用の基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、6-ナイロンフィルム、6,6-ナイロンフィルム等のポリアミドフィルムが好適に用いられるが、これらに限定されない。
【0023】
これらのバリア層の中でも、アルミニウム箔は安価で高いバリア性を奏する為、本発明のバリア層として特に適している。また、ラミネートフィルムに透明性が求められる場合は、アルミニウム酸化物やケイ素酸化物を蒸着したフィルムをバリア層として用いるとよい。尚、バリア層の厚さは、5~30μm程度が一般的であるが、これに限定されるものではない。
【0024】
(ラミネートフィルムの製造方法)
本発明に使用されるラミネートフィルムは、従来公知の方法により製造することができる。例えば(i)基材層/接着剤層/シーラント層という構成のラミネートフィルムは、基材層用フィルム上に、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエーテルポリウレタンポリオールと、ポリイソシアネートとが、酢酸エチルなどの溶剤にて希釈された接着剤を塗布し、該接着剤を乾燥させた後、シーラント層用フィルムを貼り合せることにより製造することができる。
尚、上述した方法では、基材層用フィルムに接着剤を塗布したが、シーラント層用フィルムに接着剤を塗布し、その後、基材層用フィルムを貼り合せることもできる。
【0025】
また(ii)基材層/外側接着剤層/バリア層/内側接着剤層/シーラント層という構成のフィルムは、例えば外側接着剤層を介して基材層用フィルムとバリア層用フィルム(蒸着フィルムや金属箔等)とを積層し、基材層/外側接着剤層/バリア層の積層フィルムを製造し、その後、該積層フィルムのバリア層上に内側接着剤層を介してシーラント層用フィルムを積層することにより製造することができる。尚、外側接着剤層は公知のドライラミネート用接着剤を、特に限定なく用いることができる。
【0026】
基材層用フィルムとバリア層用フィルムとの積層は、外側接着剤層を介することなく、サンドイッチラミネート法により積層することもできる。詳しくは基材層用フィルム上(或いはバリア層用フィルム上)に溶融状態の樹脂をフィルム状に押し出し、該樹脂により基材層とバリア層とを接着することができる。
【0027】
≪洗浄剤≫
本発明の包装体は、エタノールアミン系アルカリ剤を含む洗浄剤を内容物とする。エタノールアミン系アルカリ剤は任意のものを用いることができるが、特にモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルアミノエタノール、エチルアミノエタノールが好適である。中でも、分子量が小さく、ラミネートフィルムに対して高い浸透性を有するモノエタノールアミンやジエタノールアミンのようなアルカリ剤を含む洗浄剤に対して、本発明は特に効果を発揮する。尚、これらアルカリ剤が配された洗浄剤は、非常に優れた洗浄力を備える。
【0028】
本発明の洗浄剤は、エタノールアミン系アルカリ剤を含んでいれば、他の成分は特に限定されず、例えば、界面活性剤、溶剤、キレート剤等を含んでいてもよい。界面活性剤として、例えばアルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等を例示することができる。溶剤としては、例えばグリコールエーテル類又はアルコール類等を例示することができる。またキレート剤としては、例えばクエン酸等を例示することができる。
【0029】
また、洗浄性向上の為に、エタノールアミン系以外のアルカリ剤を含んでいても良く、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸カルシウムや炭酸ナトリウムなどの炭酸塩、ケイ酸ナトリウムやケイ酸カリウム等のケイ酸塩等を含んでいても良い。更に本発明の洗浄剤は、防腐剤、天然エキス、香料、水等が必要に応じ添加される。
【0030】
本発明の洗浄剤のpHは、特に限定されないが、10以上であることが望ましく、10~13であることがより望ましく、特にpHが11~13であることが望ましい。pHが上記範囲である洗浄剤は、アルカリ剤の配合割合が高く、濃縮タイプの洗浄剤として有用である。洗浄剤のpHは、洗浄剤におけるアルカリ剤の配合量を調整することにより、コントロールすることができる。
尚、pHが10を超える、特に11を超えるような洗浄剤は、使用者の手等に付着することを避けなければならない。よってpHの高い洗浄剤を袋状容器に封入する際には、袋状容器を形成するラミネートフィルムとしてバリア層を備えるものを採用することが望ましい。バリア層により、洗浄剤のアルカリ剤が袋状容器の外側に染み出すことが妨げられる。
【0031】
≪包装体≫
本発明の包装体は、上述したラミネートフィルムからなる袋状容器に、上述した洗浄剤を封入して得られる。例えば矩形のラミネートフィルムを、シーラント層を内側にして二枚重ねし、四辺のうちの三辺をヒートシールして製袋した後、ヒートシールされていない一方より洗浄剤を充填し、最後に充填口となった一辺をヒートシールすることにより得られる。また予めラミネートフィルムを上方が開放されたスタンディングパウチの形状に製袋し、該開放部から洗浄剤を充填し、開放部を封鎖することによっても得られる。
尚、自動液体包装機を用いて、ロール状に巻き取られたラミネートフィルムロールから、ラミネートフィルムを繰り出しながら、該フィルムを製袋するとともに内容物を充填してもよい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づき、本発明を更に詳細に説明する。尚、各参考例、実施例、比較例の評価は以下の方法にて行った。
[ラミネート強度]
各参考例、実施例、比較例により得られた洗浄剤入り包装体を、室温45℃、湿度90%RHの雰囲気下に保管し、ラミネート直後、2週間保管後、4週間保管後のラミネートフィルムについて、バリア層とシーラント層とのラミネート強度を測定する。具体的には、ラミネートフィルムから幅15mmの長方形の試験片を切り出し、該試験片の一辺(幅方向と平行な辺)においてバリア層とシーラント層とを剥離し、次いで該剥離部分を引張試験機のチャックに装着し、チャック間距離を100mm/minで広げながら、180度剥離法にて接着強度(ラミネート強度)を測定する。測定結果を表1に示す。尚、ラミネート強度は、袋状容器として使用する為には、3.0N/15mmを超えていることが望まれる。
[デラミネーションの有無]
各参考例、実施例、比較例により得られた洗浄剤入り包装体を、室温45℃、湿度90%RHの雰囲気下に保管し、2週間後及び4週間後に包装体の外観を目視にて確認した。デラミネーションにより袋状容器の表面に皺が発生していたものを×、袋状容器の表面に僅かに皺が見られたものを△、デラミネーションに起因する皺が見られなかったものを○とし、結果を表1に記す。
【0033】
本発明の参考例、実施例、比較例では、以下の接着剤を使用した。
エーテル系接着剤1:ポリエーテルポリウレタンポリオールAを主剤とし、該主剤Aと芳香族系ポリイソシアネートであるメチレンビス(4,1-フェニレンジイソシアネート)(MDI)を主成分とする硬化剤aとからなる低凝集力タイプの接着剤
エーテル系接着剤2:ポリエーテルポリウレタンポリオールBを主剤とし、該主剤Bと芳香族系ポリイソシアネートであるトリレンジイソシアネート(TDI)を主成分とする硬化剤bとからなる高凝集力タイプの接着剤
エステル系接着剤1:ポリエステルポリウレタンポリオールCを主剤とし、該主剤Cと脂肪族系ポリイソシアネートを主成分とする硬化剤cとからなる接着剤
エステル系接着剤2:ポリエステルポリウレタンポリオールDを主剤とし、該主剤Dとトリレンジイソシアネート(TDI)を主成分とする硬化剤dとからなる接着剤
エステル系接着剤3:ポリエステルポリウレタンポリオールEを主剤とし、該主剤Eとトリレンジイソシアネート(TDI)を主成分とする硬化剤bとからなる接着剤
エステル系接着剤4:ポリエステルポリウレタンポリオールFを主剤とし、該主剤Fとトリレンジイソシアネート(TDI)を主成分とする硬化剤bとからなる接着剤
【0034】
[参考例1]
基材層用フィルムとして、12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、O-PET)と15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(以下、O-Ny)の積層体を採用した。またバリア層として、7μmのアルミニウム箔を、シーラント層用フィルムとして、120μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂からなるフィルムを採用し、基材層(O-PET/外側接着剤層/O-Ny)/外側接着剤層/バリア層/内側接着剤層/シーラント層の7層構成のフィルムを製造した。
尚、外側接着剤層は上述したエステル系接着剤1から、内側接着剤層は上述したエーテル系接着剤1から形成した。
得られたラミネートフィルムを袋状容器に成形すると共に、モノエタノールアミンからなるアルカリ剤と、界面活性剤、溶剤を含む高濃度タイプの油汚れ用洗浄剤(pH11~13)を、該袋状容器に封入し、洗浄剤入り包装体を得た。
【0035】
[実施例2]
内側接着剤層に、エーテル系接着剤2を使用した以外は、参考例1と同様にして、洗浄剤入り包装体を得た。
【0036】
[比較例1~3]
内側接着剤層に、エステル系接着剤2乃至4を使用した以外は、参考例1と同様にして、比較の為の洗浄剤入り包装体を得た。
【0037】
【0038】
バリア層とシーラント層との間に位置する内側接着剤層としてエーテル系接着剤を使用した参考例1、実施例2の包装体は、室温45℃、湿度90%RHの雰囲気下に保管しても、ラミネート強度が大きく低下することはなく、袋状容器に皺が入ることもなく、更に包装体表面がべたつくこともなかった。特に高凝集力タイプのエーテル系接着剤2は、ラミネート強度の低下がみられず、また袋状容器表面に皺なども全く入らなかった。
一方、エステル系の接着剤を使用した比較例1~3の包装体におけるラミネート強度は、ラミネート直後は良好であったものの、時間の経過と共に大きく低下し、2週間から4週間で全て層間剥離(デラミネーション)した。これはバリア層とシーラント層との間に蓄積したモノエタノールアミンが、エステル系の接着剤を変質(加水分解等)させた為と思われる。
以上の実験により、内容物がエタノールアミン系アルカリ剤を含む場合、接着剤層はエステル結合を備えず、更に凝集力が高いものが適することが確認された。