(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】運転支援システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20220714BHJP
【FI】
G08G1/16 F
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2018054772
(22)【出願日】2018-03-22
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】桑原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】丸橋 雅幸
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-115356(JP,A)
【文献】国際公開第2018/011871(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周辺の走行環境を認識する走行環境認識手段と、
運転者の状態を監視する状態監視手段と、
前記運転者のハンドル把持を検出するハンドル把持検出手段と、
前記自車両の運転モードとして、少なくとも前記運転者のハンドルの把持を条件として自動運転を行う第1運転支援モードと、前記運転者の前記ハンドルの把持を条件としないで自動運転を行う第2運転支援モードとを有し、運転条件に応じて前記各モードを設定する運転モード設定演算手段と、
前記運転者に前記運転モードが遷移する状況を報知する報知手段と
を備える運転支援システムにおいて、
前記運転モード設定演算手段は、
前記走行環境認識手段で該自車両の周辺に他の車両が検出されない場合は周辺車両なし時運転支援モード処理を実行する周辺車両なし時運転支援モード処理実行手段と、周辺に前記他の車両が検出された場合は周辺車両有り時運転支援モード処理を実行する周辺車両有り時運転支援モード処理実行手段とを有し、
前記周辺車両なし時運転支援モード処理実行手段は、前記自車両が前記第2運転支援モードで走行中に、前記状態監視手段が前記運転者の状態異常を検知した場合は前記運転者に対して前記報知手段から注意喚起を報知し、予め設定されている第1待機判定時間内に正しい状態に復帰した場合は前記第2運転支援モードを継続させ、
一方前記周辺車両有り時運転支援モード処理実行手段は、前記自車両が前記第2運転支援モードで走行中に、前記
状態監視手段が前記運転者の
状態異常を検知した場合は前記運転者に対して前記報知手段から前記運転モードを前記第1運転支援モードに遷移させる引継要求を報知し、予め設定した第2待機判定時間内に正しい
状態に復帰した場合は前記運転モードを前記第1運転支援モードに遷移させる
ことを特徴とする運転支援システム。
【請求項2】
前記周辺車両なし時運転支援モード処理実行手段は、前記第1待機判定時間が経過した後も前記運転者が正しい
状態に復帰しない場合は前記運転者に対して前記報知手段から前記運転モードを前記第1運転支援モードに遷移させる引継要求を報知し、前記第2待機判定時間内に正しい
状態に復帰した場合は前記運転モードを前記第1運転支援モードに遷移させる
ことを特徴とする請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記周辺車両有り時運転支援モード処理実行手段は、前記第2待機判定時間が経過した後も前記運転者が正しい
状態に復帰しない場合は、前記自車両と前記他の車両との位置関係に基づいて第3待機判定時間を設定し、該第3待機判定時間が経過したとき前記運転モードを前記第1運転支援モードに遷移させる
ことを特徴とする請求項1或いは2に記載の運転支援システム。
【請求項4】
前記周辺車両なし時運転支援モード処理実行手段又は前記周辺車両有り時運転支援モード処理実行手段は、前記運転モードを前記第1運転支援モードに遷移させるに際しては、前記運転者に対し前記ハンドルを把持する旨を前記報知手段から報知させる
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項5】
前記周辺車両有り時運転支援モード処理実行手段で設定する前記第3待機判定時間は、前記他の車両が前記自車両の走行車線前方を走行する先行車又は該自車両の後方を走行する後続車の場合は該自車両と該先行車との相対車速及び車間時間に基づき可変設定する
ことを特徴とする請求項3に記載の運転支援システム。
【請求項6】
前記周辺車両有り時運転支援モード処理実行手段で設定する前記第3待機判定時間は、前記他の車両が前記自車両の走行車線に隣接する車線を走行する隣接車の場合、該自車両と該隣接車との横方向の車間距離に基づき可変設定する
ことを特徴とする請求項3に記載の運転支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転モードとして、少なくとも、運転者によるハンドル把持を条件として自動運転を行う第1運転支援モードと、運転者によるハンドル把持を条件としないで自動運転を行う第2運転支援モードとを有する運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の車両においては、運転者の負担を軽減し、快適且つ安全に運転できるようにするための自動運転による運転支援システムが種々提案され、一部は既に実用化されている。
【0003】
この運転支援システムの運転モードには、自動運転の継続を困難と判断した際に、運転者に操作を引継がせることができるように予め待機させる運転支援モード(以下、「第1運転支援モード」と称する)と、運転者に運転を引継がせる必要の無い転支援モード(以下、「第2運転支援モード」と称する)とがある。
【0004】
第1運転支援モードは、従来のレーンキープ(ALK)制御と車間距離自動維持制御付きクルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)システムとにより、自車両を車線に沿って先行車に追従走行させるものであり、先行車が検出されない場合はセット車速で定速走行する。従って、第1運転支援モードは、運転者が積極的にハンドル操作を行う必要は無いが、運転者がハンドルを把持(以下、この状態を「保舵」と称する場合もある)して、いつでも運転を引継ぐことのできる状況としておくことを条件となる。
【0005】
一方、第2運転支援モードは、地図ロケータにて検出した自車両が走行している地図上の道路形状と、カメラユニット等で検出した実際に走行している車線の道路形状との一致度を常に比較し、この一致度が高い場合に、運転者に保舵させることなく、制御システムが運転主体となって自動運転を継続させる。そして、自動運転の継続が困難と判断された場合にのみ、運転者に保舵を要求して第1運転モードへ遷移させ、或いは、自動退避モードを実行させる。尚、この自動退避モードは、走行車線を、法定若しくは指定されている最低速度で走行させる。或いは、路側帯等の安全な場所で自車両を停止させるものである。
【0006】
運転支援システムでは、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星を代表とする測位衛星からの信号に基づき道路地図上の自車位置を特定すると共に、その周辺の道路情報を取得する地図ロケータと、自車両周辺の走行環境を取得する車載カメラを代表とするセンシングデバイスとに基づき冗長系を構築する。
【0007】
そして、地図ロケータとセンシングデバイスとの双方から一致度の高い道路情報(例えば、現在走行中している車線の道路曲率)が取得されている場合には、第2運転支援モードを実行させる。又、地図ロケータとセンシングデバイスとの一方が失陥した場合には、運転者に保舵を要求して第1運転支援モードを実行し、自車両の運転操作をいつでも運転者に安全に引継がせることができるようにする。
【0008】
従って、第2運転支援モードで走行している場合であっても、運転者は、地図ロケータとセンシングデバイスとの一方の失陥に備えて、常に前方を視認し、第1運転支援モードにいつでも遷移できる状況で待機している必要がある。
【0009】
運転者の異常姿勢(わき見)を監視するシステムとして、例えば、特許文献1(特開2007-226666号公報)には、道路形状、自車両の運転状況、周辺車両の状況等に応じて警告レベルを設定し、運転者のわき見が検出された際には、警告待機時間経過後に、設定した警告レベルでわき見警告を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、自動運転による運転支援システムは、自車両が走行している車線の周辺に他の車両が存在している場合と、存在していない場合とでは、地図ロケータとセンシングデバイスとの一方が失陥した場合の緊急対応が相違する。
【0012】
すなわち、自車両の周辺に他の車両が存在しない場合は、例えば、センシングデバイスが失陥しても、地図ロケータにて設定した目標進行路に沿って自車両を継続的に走行させて、運転者に運転操作を引継がせることが可能である。同様に、地図ロケータが失陥した場合であっても、センシングデバイスで走行車線を区画する左右区画線を認識し、車線中央を走行させることが可能である。
【0013】
そのため、第2運転支援モードから第1運転支援モードへいきなり切り替えるような緊急時の対応度は低い。これに対し、自車両の周辺に他の車両が存在する状態でセンシングデバイスが失陥した場合、他の車両を認識することができなくなるので、緊急時は高い対応度が要求される。
【0014】
上述した文献に開示されている技術では、単に、自車両の運転状況や周辺車両の状況に応じて警告レベルを設定し、その警告レベルでわき見警告により注意喚起しているに過ぎない。そのため、実際に運転者が正しい姿勢に復帰したか否かを適正に判定することができない。
【0015】
更に、運転者が正しい姿勢に復帰した場合であっても、緊急時の対応度に応じた姿勢を適正に行わせることができないばかりでなく、第2運転支援モードで走行している場合に、この第2運転支援モードを維持するか、第1運転支援モードへ遷移させるかの判定を適正に行うことができない。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑み、運転者が正しい姿勢に復帰したか否かを適正に判断することができ、正しい姿勢に復帰した場合には緊急時の対応度に応じた姿勢を運転者に対して適正に行わせることで安全性を確保すると共に、第2運転支援モードで走行している場合には、緊急時の対応度に応じて、第2運転支援モードを維持させるか第1運転支援モードへ遷移させるかの判定を適正に行うことで利便性を得ることのできる運転支援システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、自車両の周辺の走行環境を認識する走行環境認識手段と、運転者の状態を監視する状態監視手段と、前記運転者のハンドル把持を検出するハンドル把持検出手段と、前記自車両の運転モードとして、少なくとも前記運転者のハンドルの把持を条件として自動運転を行う第1運転支援モードと、前記運転者の前記ハンドルの把持を条件としないで自動運転を行う第2運転支援モードとを有し、運転条件に応じて前記各モードを設定する
運転モード設定演算手段と、前記運転者に前記運転モードが遷移する状況を報知する報知手段とを備える運転支援システムにおいて、前記運転モード設定演算手段は、前記走行環境認識手段で該自車両の周辺に他の車両が検出されない場合は周辺車両なし時運転支援モード処理を実行する周辺車両なし時運転支援モード処理実行手段と、周辺に前記他の車両が検出された場合は周辺車両有り時運転支援モード処理を実行する周辺車両有り時運転支援モード処理実行手段とを有し、前記周辺車両なし時運転支援モード処理実行手段は、前記自車両が前記第2運転支援モードで走行中に、前記状態監視手段が前記運転者の状態異常を検知した場合は前記運転者に対して前記報知手段から注意喚起を報知し、予め設定されている第1待機判定時間内に正しい状態に復帰した場合は前記第2運転支援モードを継続させ、一方前記周辺車両有り時運転支援モード処理実行手段は、前記自車両が前記第2運転支援モードで走行中に、前記状態監視手段が前記運転者の状態異常を検知した場合は前記運転者に対して前記報知手段から前記運転モードを前記第1運転支援モードに遷移させる引継要求を報知し、予め設定した第2待機判定時間内に正しい状態に復帰した場合は前記運転モードを前記第1運転支援モードに遷移させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、周辺車両有り時運転支援モードは、周辺車両なし時運転支援モードに比し、運転者に要求する緊急時の対応度が高いため、第2運転支援モードで走行中に運転者が状態異常から第2待機判定時間内に正しい状態に復帰した場合、第1運転支援モードへ遷移させることで安全性を確保することができる。
【0019】
又、周辺車両なし時運転支援モードでは、第2運転支援モードで走行中に運転者が状態異常から、第1待機判定時間内に正しい状態に復帰した場合は第2運転支援を継続させることで利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】運転モード設定ルーチンを示すフローチャート
【
図3】運転支援モード処理サブルーチンを示すフローチャート
【
図4】周辺車両なし時運転支援モード処理サブルーチンを示すフローチャート(その1)
【
図5】周辺車両なし時運転支援モード処理サブルーチンを示すフローチャート(その2)
【
図6】周辺車両有り時運転支援モード処理サブルーチンを示すフローチャート(その1)
【
図7】周辺車両有り時運転支援モード処理サブルーチンを示すフローチャート(その2)
【
図8】周辺車両なし時運転支援モード実行時の制御例を示すタイムチャート
【
図9】周辺車両有り時運転支援モード実行時の制御例を示すタイムチャート
【
図10】自車両が周辺車両を検出している状態を示す俯瞰図
【
図11】(a)は第1運転支援モード時の運転姿勢を示す側面図、(b)は第2運転支援モード時の運転姿勢を示す側面図、(c)は運転者の異常な運転姿勢を示す側面図
【
図12】(a)は車間時間と相対車速とに基づいて第3待機判定時間を設定するデータマップの概念図、(b)は横車間距離に基づいて第3待機判定時間を設定するデータテーブルの概念図
【
図14】(a)はカメラユニットにて認識した道路曲率と地図上の道路曲率とが一致した状態を示す説明図、(b)はカメラユニットにて認識した道路曲率と地図上の道路曲率とが相違している状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
図1に示す運転支援システム1は、自車両M(
図10参照)に搭載されている。この運転支援システム1は、周辺の道路形状を検出するセンサユニットとして、ロケータユニット11、カメラユニット21を有し、更に、運転者D(
図11参照)のわき見や居眠りなどの姿勢を監視する、状態監視手段としての運転者監視システム31を備えている。
【0022】
この両ユニット11,21が互いに依存することのない完全独立の多重系を構成している。更に、両ユニット11,21の一方が失陥した場合には、他方のユニット11,21で自動運転を一時的に継続させ、自車両Mの運転を運転者Dに安全に引継がせる冗長系が構築されている。運転支援システム1は、ロケータユニット11とカメラユニット21とで現在走行中の道路形状が同一か否かを監視し、同一の場合に自動運転を継続させる。尚、検出する同一道路形状の一例として、本実施形態では道路曲率を示す。
【0023】
ロケータユニット11は道路地図上の自車両Mの位置(自車位置)を推定すると共に、この自車位置の前方の道路地図データを取得する。一方、カメラユニット21は自車両Mの走行車線の左右を区画する区画線を認識し、この区画線の中央の道路曲率を求めると共に、この車線区画線の中央を基準とする自車両Mの車幅方向の横位置偏差を検出する。
【0024】
ロケータユニット11は、地図ロケータ演算部12と記憶手段としての高精度道路地図データベース18とを有している。この地図ロケータ演算部12、後述する前方走行環境認識部21d、運転モード設定演算手段としての運転モード設定演算部22、運転者監視システム31に設けられている運転者姿勢認識部31c、及び後述する自動運転制御ユニット51は、CPU,RAM,ROM等を備える周知のマイクロコンピュータ、及びその周辺機器で構成されており、ROMにはCPUで実行するプログラムやベースマップ等の固定データ等が予め記憶されている。
【0025】
この地図ロケータ演算部12の入力側に、GNSS受信機13、及び自律走行センサ14が接続されている。GNSS受信機13は複数の測位衛星から発信される測位信号を受信する。又、自律走行センサ14は、トンネル内走行等GNSS衛生からの受信感度が低く測位信号を有効に受信することのできない環境において、自律走行を可能にするもので、車速センサ、ジャイロセンサ、及び前後加速度センサ等で構成されている。すなわち、地図ロケータ演算部12は、車速センサで検出した車速とジャイロセンサで検出した角速度、及び前後加速度センサで検出した前後加速度等に基づき移動距離と方位からローカライゼーションを行う。
【0026】
この地図ロケータ演算部12は、自車位置を推定する機能として自車位置推定演算部12aと、推定した自車位置を道路地図上にマップマッチングして位置を特定すると共に、その前方の道路形状情報を取得する地図情報取得部12bとを備えている。
【0027】
又、高精度道路地図データベース18はHDD等の大容量記憶媒体であり、高精度な道路地図情報(ダイナミックマップ)が記憶されている。この高精度道路地図情報は、自動運転を行う際に必要とする車線データ(車線幅データ、車線中央位置座標データ、車線の進行方位角データ、制限速度等)を保有しており、この車線データは、道路地図上の各車線に数メートル間隔で格納されている。
【0028】
上述した地図情報取得部12bは、この高精度道路地図データベース18に格納されている道路地図情報から現在地の道路地図情報を取得する。そして、例えば運転者Dが自動運転に際してセットした目的地に基づき、上述した自車位置推定演算部12aで推定した自車位置(現在地)から目的地までのルート地図情報を、この道路地図情報から取得し、取得したルート地図情報(ルート地図上の車線データ及びその周辺情報)を自車位置推定演算部12aへ送信する。
【0029】
自車位置推定演算部12aは、GNSS受信機13で受信した測位信号に基づき自車両Mの位置座標を取得し、この位置座標をルート地図情報上にマップマッチングして、道路地図上の自車位置(現在地)を推定すると共に走行車線を特定し、ルート地図情報に記憶されている走行車線の道路形状、すなわち、本実施形態では車線中央の道路曲率(以下、「地図曲率」と称する)RMPU[1/m]を取得し、逐次記憶させる。
【0030】
更に、自車位置推定演算部12aは、トンネル内走行等のようにGNSS受信機13の感度低下により測位衛星からの有効な測位信号を受信することができない環境では、車速センサで検出した車速、ジャイロセンサで検出した角速度、前後加速度センサで検出した前後加速度等に基づいて自車位置を推定する自律航法に切替えて、道路地図上の自車位置を推定し、自車両Mが走行している道路の曲率(図曲率)RMPUを取得する。
【0031】
一方、カメラユニット21は、自車両Mの車室内前部の上部中央に固定されており、車幅方向中央を挟んで左右対称な位置に配設されているメインカメラ21a及びサブカメラ21bからなる車載カメラ(ステレオカメラ)と、画像処理ユニット(IPU)21c、及び前方走行環境認識部21dとを有している。このカメラユニット21は、両カメラ21a,21bで撮像した自車両M前方の所定領域Er1(
図10参照)を撮影するステレオカメラである。IPU21は両カメラ21a,21bで撮影した走行方向前方の周辺環境画像を所定に画像処理し、前方走行環境認識部21dへ出力する。
【0032】
前方走行環境認識部21dは、受信した自車両M前方の走行環境画像情報に基づき、自車両Mが走行する進行路(自車進行路)の道路形状、すなわち、本実施形態では、左右を区画する区画線の道路曲率[1/m]、及び左右区画線間の幅(車幅)を求める。この道路曲率、及び車幅の求め方は種々知られているが、例えば、道路曲率は走行環境画像情報に基づき輝度差による二値化処理にて、左右の区画線を認識し、最小二乗法による曲線近似式等にて左右区画線の曲率を所定区間毎に求め、更に、両区画線間の曲率の差分から車幅を算出する。そして、この左右区間線の曲率と車線幅とに基づき車線中央の道路曲率(以下、「カメラ曲率」と称する)RCAM[1/m]を求め、逐次記憶させる。
【0033】
そして、自車位置推定演算部12aで取得した地図曲率RMPUと前方走行環境認識部21dで推定したカメラ曲率RCAMとが、運転モード設定演算部22に読込まれる。尚、ロケータユニット11とカメラユニット21とは完全独立の多重系を構成している。
【0034】
又、前方走行環境認識部21dは、取得した走行環境画像情報に基づき、自車両Mの前方を走行する先行車P(
図10参照)の有無を検出する。そして、前方走行環境認識部21dは、先行車Pを検出した場合、自車両Mとの車間距離(道のり距離)、相対車速(=自車速-先行車速)、及び車間時間を算出する。尚、ステレオカメラを用いた先行車Pの検出、車間距離、相対車速、及び車間時間の求め方は既に知られている技術であるため、ここでの説明は省略する。
【0035】
又、運転者監視システム31は車室内の運転席上部に設けた運転者認識カメラ31aと、この運転者認識カメラ31aで撮像した画像を画像処理するIPU31と、このIPU31bで処理した運転者Dの画像に基づき運転者Dの姿勢を画像取得毎に検出する運転者姿勢認識部31cとを備えている。尚、運転者認識カメラ31aは運転席前方のインストルメントパネルに取付けられていても良いが、運転者の状態(姿勢)を監視できる位置であれば、これに限定されるものではない。
【0036】
運転者姿勢認識部31cは取得した運転者Dの画像から、運転者Dの姿勢が正常か、換言すれば、正しい姿勢で前方を視認しているか否かの運転の姿勢(状態)を監視する情報(姿勢(状態)監視情報)を生成する。
【0037】
すなわち、後述する運転モード設定演算部22が運転モードとして第2運転支援モードを設定した場合、
図11(b)に示すように、運転者Dは非保舵が許容される(ハンドルMhの把持を要求されない)。そのため、同図(c)に示すように運転者Dは、前方を視認することなく、わき見や運転席シートのシートバックを傾倒させて居眠りしたり、後部を振り向いた状態などの異常な姿勢を取り易い。
【0038】
このような異常な姿勢を運転者Dが継続していると、運転モード設定演算部22が運転モードを第2運転支援モードから、保舵が必要な第1運転支援モードへ遷移させた際に、対応することができない。又、第2運転支援モードで先行車Pを追従走行(ACC(Adaptive Cruise Control)走行)している際に、カメラユニット21が一時的に失陥した場合、運転者Dに対して運転操作をスムーズに引継がせることができなくなる。尚、運転者姿勢認識部31cでは、例えば、運転者Dの頭部の動きから前方を視認しているか否かを調べ、前方を視認していない場合、姿勢異常と判定する。
【0039】
後述する運転モード設定演算部22は、運転者姿勢認識部31cで運転者Dの姿勢異常を検知した場合、運転者Dに注意喚起し、若しくはハンドルMhを保舵させる引継要求を行う。
【0040】
この運転モード設定演算部22の入力側には、上述した自車位置推定演算部12a、前方走行環境認識部21d、運転者姿勢認識部31c以外に、運転者Dが自動運転をON/OFFする自動運転スイッチ41、運転者DのハンドルMhの把持(保舵)を検出してON動作する、ハンドル把持検出手段としてのハンドルタッチセンサ42が接続されている。このハンドルタッチセンサ42は、例えば、ハンドルMhの左右に一対配設されており、運転者Dが両手でハンドルMhを把持した際にそれぞれがON動作される。
【0041】
更に、この運転モード設定演算部22の入力側には、前側方センサ43と後側方センサ44とが接続されている。尚、上述したカメラユニット21、前側方センサ44,後側方センサ45が、本発明の走行環境認識手段に対応している。
【0042】
この両センサ43,44は、フロントバンパとリヤバンパの左右側部に各々取付けられている。尚、この両センサ43,44は、超音波センサ、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ、赤外線センサ、レーザレーダ(又はライダー(Light Detection And Ranging、若しくはLaser Imaging Detection And Ranging))等で構成されている。
【0043】
図10に示すように、前側方センサ43は上述したカメラユニット21の視野から外れている左右斜め前方の領域Er2L,Er2Rをスキャンする。又、後側方センサ44のスキャン領域は上述した前側方センサ43よりも比較的広く、自車両Mの後方から左右の、前側方センサ43では監視することのできない領域Er3L,Er3Rをスキャンする。
【0044】
そして、前側方センサ43は自車両Mに近接する、先行車P以外の他の車両(隣接車線を走行する隣接車S)を検出し、後側方センサ44は、自車両Mに接近する他の車両(隣接車S、及び自車両Mの走行車線後方を走行する後続車F)を検出する。そして、後続車Fの場合は、自車両Mとの相違車速(=後続車速ー自車速)、及び車間時間を算出する。又、隣接車Sの場合は自車両Mとの横方向の車間距離(横車間距離)を求める。
【0045】
尚、カメラユニット21で取得した前方走行環境情報は、ACC制御ユニット(図示せず)においても読込まれる。ACC制御ユニットは、前方走行環境情報に基づき、自車両Mが走行している車線前方に先行車Pを検出した場合は、この先行車Pに対して所定車間距離を維持した状態で先行車追従走行制御を実行する。又、先行車Pが検出されてない場合は予め運転者Dが設定したセット車速で走行させる。
【0046】
更に、この運転モード設定演算部22の出力側に音声スピーカやモニタからなる報知手段としての報知装置45が接続されている。又、この運転モード設定演算部22に自動運転制御ユニット51が双方向通信自在に接続されている。この自動運転制御ユニット51は、運転モード設定演算部22で設定した運転モード(手動運転モード、第1運転支援モード、第2運転支援モード)に従い、対応する運転モードを実行する。
【0047】
運転モード設定演算部22は、自車位置推定演算部12aで推定した自車位置前方の地図曲率RMPUと前方走行環境認識部21dで推定したカメラ曲率RCAMとを常時比較する。すなわち、地図上の自車位置と実走行による自車位置とをそれぞれ基準として所定前方の同一距離区間における両曲率RMPU,RCAMの一致度(信頼度)[%]を調べ、その一致度が予め設定した閾値(例えば、95~99[%])を超えている場合は一致していると判定し、下回っている場合は、不一致と判定する。
【0048】
例えば、
図14(a)に示すように、ロケータユニット11で取得した地図曲率RMPUと前方走行環境認識部21dで認識したカメラ曲率RCAMとがほぼ一致している場合、自車両Mは確かに目標進行路を走行していると評価する。一方、同図(b)に示すように、GNSS受信機13による測位位置が誤差により、隣の車線上にマップマッチングされた場合、ロケータユニット11は隣の車線の地図曲率RMPUを自車進行路上の道路曲率と誤認するため、両曲率RCAM,RMPUは一致度(信頼性)が低いと評価する。或いは、降雨時等の視界の悪い状態での走行において前方走行環境認識部21dにてカメラ曲率RCAMを求めることができなかった場合も、一致度が低い(閾値未満)と評価される。
【0049】
そして、両曲率RMPU,RCAMが一致していると判定した場合は、自動運転を継続させる。或いは、運転モードを手動運転から自動運転に切り替える。尚、運転モードを切り替えるに際しては、その旨を報知装置45から運転者Dに予め報知する。
【0050】
一方、自動運転中に両曲率RMPU,RCAMが不一致と判定した場合は、信頼度が低いため、報知装置45を介して運転者Dに、手動運転モードに切り替える旨を報知した後、自動運転を手動運転モードに切り替える。
【0051】
ところで、本実施形態では、運転モードとして手動運転モードと第1運転支援モードと第2運転支援モードとが設定されており、この第1運転支援モード,第2運転支援モードが、上述した自動運転の範疇に含まれる。ここで、第1運転支援モードと第2運転支援モードとは、自車両Mを目標進行路に沿って自動走行(自動運転)させる点は共通しているが、第1運転支援モードは運転者Dの保舵(ハンドルMhの把持)を前提とする運転モードであり、第2運転支援モードは運転者Dの保舵を前提としない(非保舵の)運転モードである。
【0052】
例えば、カメラユニット21が一時的に失陥した場合、第2運転支援モードによる自動運転の継続が困難となるが、いきなり手動運転モードへ遷移させることはせず、先ず、運転者Dに対して引継要求を行って、ハンドルMhを保舵させた後、第1運転支援モードへ遷移し、地図ロケータ演算部12で推定した自車位置に基づき自動運転を継続させる。これは、地図ロケータ演算部12で自車位置の推定が失陥した場合も同様であり、運転者DにハンドルMhを保舵させた後、カメラユニット21で認識した左右区画線の中央を目標進行路として設定し、この目標進行路に沿って自車両Mを走行させる。
【0053】
従って、上述した失陥が発生した際に、運転者Dに対して運転操作をスムーズに引継がせるには、非保舵を前提とする第2運転支援モードで走行している場合であっても、運転者Dに対しては前方を常時視認させておく必要がある。しかし、第2運転支援モードでの走行時において、運転者姿勢認識部31cが運転者Dの姿勢異常を検知した場合であっても、例えば、自車両Mの進行方向前方や周辺に他の車両が検出されていない場合と、他の車両が検出されたとでは緊急時の対応度が相違する。
【0054】
そのため、本実施形態では、第2運転支援モードでの走行に際し、運転者Dの姿勢異常を検知した場合、自車両Mの前方や周辺に他の車両が検出されない場合は、先ず、注意喚起し、所定時間内に運転者Dが前方を視認する正常な(正しい)姿勢に戻った場合は、第2運転支援モードを継続させる。一方、自車両Mの前方、或いは周辺に他の車両が検出された場合は、運転者Dに対して直ちに引継要求を行い、運転者DにハンドルMhの保舵を要求し、運転モードを第1運転支援モードへ遷移させる。
【0055】
運転モード設定演算部22で実行される運転モードの設定は、具体的には
図2~
図6に示すフローチャートに従って処理される。
【0056】
自車両Mが走行すると、
図2に示す運転モード設定ルーチンが起動し、先ず、ステップS1で、自動運転スイッチ41からの信号を読込む。この自動運転スイッチ41は運転者Dが自動運転を選択する場合にON操作するものであり、ステップS2でONか否かを調べ、ONの場合はステップS3へ進み、運転支援モード処理を実行してルーチンを抜ける。一方、この自動運転スイッチ41がOFFの場合は、ステップS4へ分岐し、手動運転モードを実行してルーチンを抜ける。運転モードとして手動運転モードが選択されると、自車両Mを目的地までガイドする従来のナビゲーション機能により設定された目標進行路がモニタ(図示せず)に表示される。運転者Dはモニタの表示、及び音声ガイドに従い、自らの運転によって自車両Mを走行させる。
【0057】
ステップS3で実行される運転支援モード処理は、
図3に示す運転支援モード処理サブルーチンに従って実行される。このサブルーチンでは、先ず、ステップS11で、図示しないACC制御ユニットで演算したACC制御情報を読込む。そして、ステップS12へ進み、このACC制御情報に基づき、ACC制御ユニットが先行車追従走行制御を実行しているか否かを調べ、先行車追従走行制御を実行していない場合、すなわち、セット車速で走行している場合は、ステップS13へ進む。一方、先行車追従走行制御を実行している場合は、ステップS16へジャンプする。
【0058】
ステップS13へ進むと、前側方センサ43、及び後側方センサ44で取得した周辺環境情報を読込み、ステップS14で自車両Mに近接する他の車両(後続車F、隣接車S)があるか否かを調べる。そして、近接する車両(後続車F、隣接車S)が検出されない場合はステップS15へ進み、検出された場合はステップS16へジャンプする。
【0059】
ステップS15へ進むと、周辺車両なし時運転支援モード処理を実行してルーチンを抜ける。一方、ステップS16へ進むと、周辺車両有り時運転支援モードを実行してルーチンを抜ける。
【0060】
周辺車両なし時運転支援モード処理は、
図4~
図5に示す周辺車両なし時運転支援モード処理サブルーチンに従って実行され、又、周辺車両有り時運転支援モードは、
図6~
図7に示す周辺車両有り時運転支援モードサブルーチンに従って実行される。尚、周辺車両なし時運転支援モード処理サブルーチンが、本発明の周辺車両なし時運転支援モード処理実行手段に対応し、又、周辺車両有り時運転支援モード処理サブルーチンが、本発明の周辺車両有り時運転支援モード処理実行手段に対応している。
【0061】
先ず、周辺車両なし時運転支援モード処理サブルーチンについて説明する。このサブルーチンでは、先ず、ステップS21で第1運転支援モード条件を読込む。この第1運転支援モード条件は、例えば、
図13に示す手動運転モードから第1運転支援モードへの遷移条件と同じであり、自動運転スイッチ41と、カメラユニット21の前方走行環境認識部21dで認識した自車両Mが走行している車線の左右を区画する区画線と、一対のハンドルタッチセンサ42とに基づき判定する。尚、自動運転スイッチ41のONは、ステップS2で既に判定しているため条件から除外される。
【0062】
次いで、ステップS22へ進み、第1運転支援モード条件が成立しているか否かを判定する。そして、自動運転スイッチ41がONで、カメラユニット21で自車両Mが走行している車線の左右を区画する区画線が認識されており、且つ一対のハンドルタッチセンサ42がONの場合、条件成立と判定してステップS23ヘ進む。又、これらの条件の一つでも満足されない場合は、条件不成立と判定してステップS4へ戻り、手動運転モードを実行してルーチンを抜ける。尚、その際、第1運転支援モードも手動運転モードも共にハンドルMhの保舵は前提であるため、ハンドルタッチセンサ42がOFFの場合は、ハンドルMhを保舵するように注意喚起した後、手動運転モードに遷移させる。
【0063】
その後、ステップS23へ進むと、第1運転支援モードを実行させる指令信号を自動運転制御ユニット51に送信し、ステップS24へ進む。ステップS24では、第1運転支援モードから第2運転支援モードへの遷移条件を読込む。第1運転支援モードから第2運転支援モードへの遷移条件は、例えば、
図13に示すように、自動運転スイッチ41と、地図曲率RMPUとカメラ曲率RCAMとの一致度と、走行車線が自動運転道路か否かと、運転者状態と、ハンドルタッチセンサ42とに基づいて判定する。
【0064】
尚、走行車線が自動運転道路か否かは道路地図情報から現在の走行車線が自動運転道路として指定されているか否かで判定する。この自動運転道路は、例えば、高速道路等の自動車専用道路において指定された区間である。又、運転者Dの運転姿勢は運転者監視システム31からの運転者監視情報に基づいて判定する。更に、自動運転スイッチ41のONは、ステップS2で既に判定しているため条件から除外される。又、
図13には上述した遷移条件以外に各運転モードへの遷移条件が記載されているが、それらについての説明は省略する。
【0065】
そして、ステップS25へ進み、地図曲率RMPUとカメラ曲率RCAMとが一致(例えば、一致度が95~99[%]以上)しており、現在の走行車線が自動運転道路であり、運転者監視情報から運転者Dの正常な姿勢を検知し、且つ、一対のハンドルタッチセンサ42がOFFのハンドルMhを非保舵状態のとき、第2運転支援モード遷移条件が成立していると判定し、ステップS26へ進む。又、これらの条件の一つでも満足していない場合、条件不成立と判定し、ルーチンを抜ける。従って、この場合は、第1運転支援モードが継続される。
【0066】
ステップS26へ進むと、第2運転支援モードを実行させる指令信号を自動運転制御ユニット51へ送信して、ステップS27へ進む。ステップS27では、運転者監視システム31からの運転者監視情報を読込み、ステップS28で運転者の状態(姿勢)が異常か否かを調べる。すなわち、第2運転支援モードはハンドルMhの保舵を前提としていないため、運転者Dはついつい前方から目を離しやすく、わき見や、極端な場合、
図11(c)に示すように運転席シートのシートバックを傾倒させて居眠りしてしまう場合も考えられる。このような異常な姿勢のままで、第2運転支援モードによる自動運転が継続されると、カメラユニット21が一時的に失陥した際の緊急時に対応することが困難となる。
【0067】
そのため、ステップS28では、運転者監視情報に基づき運転者Dの頭部や両肩の動き、頭部の移動量等から運転者Dの状態(姿勢)を検出する。そして、ステップS29へ進み、運転者Dが正常な姿勢か否かを調べる。そして、運転者Dの姿勢が異常(姿勢が正しくない、前方を視認していない等)と判定した場合は、ステップS30へ進み、注意喚起指令を報知装置45に送信する。すると、報知装置45から運転者Dに対して、「前を向いてください」等の音声案内が報知されて注意が促される。
【0068】
その後、ステップS31へ進み、注意喚起時間tim1をインクリメントし、ステップS32で、この注意喚起時間tim1と予め設定されている第1待機判定時間T1(例えば5~15[sec])とを比較する。そして、tim1<T1の場合、ステップS27へ戻り、運転者Dが正常な姿勢か否かを調べる。又、tim1≧T1の場合、第1待機判定時間T1到達後も運転者Dの姿勢は異常であると判定し、ステップS33へ進む。
【0069】
従って、周辺に先行車Pや他の車両(後続車F、隣接車S)が走行していない状態での第2運転支援モードによる走行時に、運転者Dが後を向いたり、わき見をしたり、シートバックを傾倒させて居眠りをした場合であっても、注意喚起を受けてからいきなり第1運転支援モードへ遷移させることなく、第1待機判定時間T1内では、第2運転支援モードを継続させる。そして、その間、運転者Dの姿勢が正常な状態に復帰した場合は、第1運転支援モードへ遷移せずに、第2運転支援モードを継続させるようにしたので、利便性を向上させることができる。
【0070】
そして、ステップS33へ進むと、運転者引継要求指令を報知装置45に送信し、ステップS34へ進む。すると、報知装置45から運転者Dに対して、「運転モードを第1運転支援モードに遷移させます。ハンドルと把持してください」等の音声案内が報知されて、運転モードを第1運転支援モードに遷移させる旨を報知する。
【0071】
ステップS34では、引継時間tim2をインクリメントし、ステップS35で、引継時間tim2と予め設定されている第2待機判定時間T2(例えば5~15[sec])とを比較する。そして、引継時間tim2が第2待機判定時間T2に達するまで、運転者引継要求の報知を繰り返し、tim2≧T2のときステップS23へ戻り、運転モードを第1運転支援モードに遷移させる。
【0072】
従って、運転者Dは運転者引継要求を受けてから第2待機判定時間T2内に正常な姿勢に戻ったとしても、第2運転支援モードが継続されることはなく、一意的に第1運転支援モードへ遷移される。そして、その後、第2運転支援モード遷移条件が満足された場合、運転モードが第2運転支援モードに遷移される。従って、第2待機判定時間T2内は第2運転支援モードが継続されるため、運転者Dは余裕を持ってハンドルMhを保舵し、第1運転支援モードへの遷移に備えることができる。尚、運転者Dが第2待機判定時間T2内にハンドルMhを保舵しない場合であっても、運転モードは第1運転支援モードへ遷移することになるが、この場合、自動退避モードを実行させるようにしても良い。
【0073】
次に、
図6~
図7に示す周辺車両有り時運転支援モードサブルーチンについて説明する。尚、ステップS41~S49は、前述した周辺車両なし時運転支援モードサブルーチンのステップS21~S29と同一の処理が行われる。従って、このステップS21~S29を、ステップS41~49と読み替えることで、ここでの説明を省略する。
【0074】
そして、ステップS49からステップS50へ進むと、運転者引継要求指令を報知装置45に送信し、ステップS51へ進む。すると、報知装置45から運転者Dに対して、「運転モードを第1運転支援モードに遷移させます。ハンドルと把持してください」等の音声案内が報知されて、運転モードを第1運転支援モードに遷移させる旨を報知する。
【0075】
ステップS51では、引継時間tim2をインクリメントし、ステップS52で、引継時間tim2と予め設定されている第2待機判定時間T2(例えば5~15[sec])とを比較し、tim2<T2のときはステップS47へ戻り、運転者Dの姿勢が正常か否かを調べる。そして、tim2≧T2に達すると、ステップS53へ済み、一対のハンドルタッチセンサ42がONか否か、すなわち、運転者DがハンドルMhを両手で保舵しているか否かを調べる。
【0076】
従って、運転者Dが第2待機判定時間T2内にハンドルMhを保舵したとしても、第2待機判定時間T2が経過するまでは第2運転支援モードが継続されている。そのため、運転者Dは慌てることなく余裕を持ってハンドルMhを保舵することができる。
【0077】
そして、一対のハンドルタッチセンサ42が共にONの場合、運転者は正しくハンドルMhを保舵していると判定し、ステップS43へ戻り、第1運転支援モードを実行する。自車両Mの周辺に先行車や他の車両が検出された場合、周辺に先行車や他の車両が存在しない場合に比し、より高い安全性が要求され、ロケータユニット11やカメラユニット21が一時的に失陥した場合には、直ちに運転者Dに運転を引継がせる必要がある。
【0078】
そのため、本実施形態では、例えば、第2運転支援モードで先行車Pを追従しながら走行している際に、運転者Dの姿勢の異常を検知した場合は、注意喚起することなく、運転者引継要求を報知した後、第2待機判定時間T2経過後に運転モードを第1運転支援モードに一意的に遷移させることで、走行時の安全性を確保する。
【0079】
そして、ステップS53において、一対のハンドルタッチセンサ42の一方、或いは双方がOFFの場合、ステップS54へ進み、保舵要求指令を報知装置45に送信し、ステップS55へ進む。すると、報知装置45は、運転者Dに対して「運転モードを第1運転支援モードへ遷移します。ハンドルを把持してください」等の保舵要求を行う。
【0080】
次いで、ステップS55で、先行車P及び後続車Fと自車両Mとの相対車速、及び車間時間の各データを読込む。又、ステップS56で、隣接車Sと自車両Mとの横車間距離データを読込む。尚、検出されない先行車P、後続車F、隣接車Sに対するデータはクリアされている。
【0081】
そして、ステップS57で、検出されたデータに基づき第3待機判定時間T3[sec]を、それぞれ求める。この第3待機判定時間T3は、運転モードを第2運院支援モードから第1運転支援モードへ遷移させる際の猶予時間である。
【0082】
すなわち、第2運転支援モードでの走行中に、周辺車両(先行車P、後続車F、隣接車S)が検出された場合は、周辺車両が検出されない場合に比し、より高い安全性が要求される。従って、運転者Dの姿勢異常が検知された際に、引継要求を報知したにも拘わらず、第2待機判定時間T2が経過しても運転者DがハンドルMhを保舵しない場合は(ハンドルタッチセンサ42がOFF)、運転者Dの責任として一意的に第1運転支援モードへ遷移させることも考えられる。しかし、第2運転支援モードで走行中に、ロケータユニット11やカメラユニット21が一時的に失陥しても、数秒程度であれば、蓄積された走行データに基づいて継続的に走行させることは可能である。
【0083】
そのため、本実施形形態では、第2待機判定時間T2が経過しても運転者DがハンドルMhを保舵しない場合であっても、第3待機判定時間T3を設定し、その間は第2運転支援モードを継続させるようにしている。
【0084】
この第3待機判定時間T3の最大時間は、上述した蓄積された走行データによって自走することが可能な時間から第2待機判定時間T2を減算した時間内に設定されている。又、この第3待機判定時間T3は、例えば、
図12(a)に示すデータマップ、及び(b)に示すデータテーブルを参照して設定する。同図(a)に示すデータマップには、相対車速と車間時間とに基づき、相対車速が次第に大きくなり(自車両Mが先行車Pに近づく、或いは後続車Fが先行車Pに近づく)、且つ車間時間が短くなるに従い短い保舵要求遷延時間が設定されている。一方、同図(b)に示すデータテーブルには、横車間距離が短くなるに従い短い第3待機判定時間T3が設定されている。
【0085】
すなわち、相対車速が大きく、且つ車間時間が短い場合は、自車両Mと先行車P、或いは後続車Fとが短時間に近接し易くなる。一方、隣接車Sとの横車間距離が短い場合、隣接車Sは、自車両Mの前方に車線変更してくる可能性が高くなる。そのため、本実施形態では、自車両Mと他の車両(先行車P、後続車F、隣接車S)との相対位置関係に応じて第3待機判定時間T3を可変設定する。
【0086】
上述したステップS57では、
図12(a)に示すデータマップと、同図(b)に示すデータテーブルとを参照して、第3待機判定時間T3を設定する。この第3待機判定時間T3は、先行車P、後続車F、隣接車Sの内から少なくとも2つが検出された場合、検出された車両P,F,S毎に設定される。そして、複数の第3待機判定時間T3が検出された場合、最も短い第3待機判定時間T3を選択する。
【0087】
その後、ステップS58ヘ進み、保舵要求遷延時間tim3をインクリメントし、ステップS59へ進み、保舵要求遷延時間tim3が第3待機判定時間T3に達するまで待機する。そして、tim3≧T3に達したとき、ステップS43へ戻り、運転モードを第1運転支援モードに遷移させる。従って、第3待機判定時間T3が経過した場合、運転者DがハンドルMhの保舵、非保舵に拘わりなく、一意的に第1運転支援モードへ遷移される。
【0088】
その結果、運転者Dは第2待機判定時間T2に第3待機判定時間T3を加算した時間内にハンドルMhを保舵すれば良いので、余裕を持って対応することができる。この場合、第3待機判定時間T3が経過した際に、ハンドルタッチセンサ42からの信号を読込み、ONの場合は第1運転支援モードへ遷移させ、OFFの場合は自動退避モードを実行させるようにしても良い。
【0089】
そして、自動運転制御ユニット51は、運転モード設定演算部22で設定した運転モード(手動運転モード、第1運転支援モード、第2運転支援モード)に従い、対応する運転モードを実行する。
【0090】
次に、
図8に周辺車両なし時運転支援モードサブルーチンで設定される運転モードの遷移を例示する。
【0091】
自動運転制御ユニット51が自車両Mを第2運転支援モードで自動走行させている際に、運転者監視システム31の運転者姿勢認識部31cが、運転者Dのわき見や居眠り等の姿勢異常を検知した場合、運転モード設定演算部22は運転者Dに対して報知装置45から注意喚起を行うと共に、注意喚起時間tim1の計時を開始する。そして、注意喚起時間tim1が第1待機判定時間T1に到達する前に、運転者姿勢認識部31cが運転者Dの正常な姿勢を検知した場合、第2運転支援モードを継続させる。
【0092】
その後、運転者姿勢認識部31cが再び、運転者Dの異常な姿勢を検知した場合、上述と同様、運転モード設定演算部22は運転者Dに対して注意喚起を行うと共に、注意喚起時間tim1の計時を開始する。そして、注意喚起時間tim1が第1待機判定時間T1に到達しても、運転者Dが正常な姿勢に戻らない場合、第1運転支援モードへ遷移する旨の引継要求を報知装置45から運転者Dに対して報知し、引継時間tim2の計時を開始する。そして、引継時間tim2が第2待機判定時間T2に達する前に、ハンドルタッチセンサ42がONし、運転者DによるハンドルMhの保舵が検出された場合、第2待機判定時間T2が経過した後、運転モードを第1運転支援モードへ遷移する。
【0093】
そして、運転モード設定演算部22は、自動運転制御ユニット51が自車両Mを第1運転支援モードで走行させている間に、第2運転支援モード遷移条件を判定し、条件が成立した場合、運転者Dに第2運転支援モードへ遷移する旨、及びハンドルMhを非保舵にする旨を報知装置45から報知する。その後、ハンドルタッチセンサ42が非保舵(OFF)を検知したとき、運転モードを第2運転支援モードに遷移させる。
【0094】
又、
図9に周辺車両有り時運転支援モードサブルーチンで設定される運転モードの遷移を例示する。
【0095】
自動運転制御ユニット51が自車両Mを第2運転支援モードで自動走行させている際に、運転者監視システム31の運転者姿勢認識部31cが、運転者Dの姿勢異常を検知した場合、運転モード設定演算部22は運転者Dに対して、第1運転支援モードへ遷移する旨の引継要求を報知装置45から運転者Dに対して直ちに報知し、引継時間tim2の計時を開始する。そして、引継時間tim2が第2待機判定時間T2に達する前に、ハンドルタッチセンサ42がONし、運転者Dによる保舵が検出された場合、第2待機判定時間T2が経過した後、運転モードを第1運転支援モードへ遷移する。
【0096】
その後、運転モード設定演算部22は、自動運転制御ユニット51が自車両Mを第1運転支援モードで走行させている間に、第2運転支援モード遷移条件を判定し、条件が成立した場合、運転者Dに第2運転支援モードへ遷移する旨、及びハンドルMhを非保舵にする旨を報知装置45から報知し、ハンドルタッチセンサ42が非保舵(OFF)を検知したとき、運転モードを第2運転支援モードに遷移させる。
【0097】
そして、自動運転制御ユニット51が自車両Mを第2運転支援モードで自動走行させている際に、運転者姿勢認識部31cが運転者Dの姿勢異常を再び検知した場合、第1運転支援モードへ遷移する旨の引継要求を報知装置45から運転者Dに報知する。しかし、待機判定時間T2が経過しても運転者DがハンドルMhを保舵しない場合(ハンドルタッチセンサ42がOFF)、運転モード設定演算部22は、運転者Dに保舵要求を報知装置45から報知する。尚、その間、第2運転支援モードは継続している。
【0098】
そして、第3待機判定時間T3が経過した後、運転者Dの保舵、非保舵に拘わらず運転モードを第1運転支援モードに一意的に遷移させる。尚、第1運転支援モードへ遷移させるに際し、運転者Dの非保舵が継続している場合は(ハンドルタッチセンサ42がOFF)、自動退避モードに遷移させるようにしても良い。
【0099】
このように、本実施形態では、自車両Mが第2運転支援モードで走行している際の、運転者Dの姿勢異常、及びその後正しい姿勢に復帰したか否かを運転者監視システム31で検知しているため、運転者Dの当該姿勢を適正に判定することができる。
【0100】
又、運転者監視システム31が運転者Dの姿勢異常を検知した場合であっても、自車両Mの周辺に他の車両(先行車P、後続車F、隣接車S)が存在しない状況と、存在する状況とでは緊急時の対応度が相違する。そのため、本実施形態では、他の車両が存在しない状態で、運転者Dの姿勢異常を検出した場合は、先ず、注意喚起し、第1待機判定時間T1内に正しい姿勢に復帰したことを運転者監視システム31で検知した場合は、非保舵による第2運転支援モードを継続させることで、運転者Dに対する利便性を確保する。
【0101】
一方、第1待機判定時間T1を経過しても、運転者Dの姿勢異常が継続されている場合は、引継要求を報知して、第2待機判定時間T2が経過したとき、運転モードを第1運転支援モードへ遷移させることで、緊急時の対応度に応じた姿勢を運転者Dに対して適正に行わせて安全性を確保する。
【0102】
これに対し、自車両Mの周辺に他の車両が存在する場合は、他の車両が存在しない場合に比し、緊急時の対応度が高いため、運転者監視システム31が運転者Dの姿勢異常を検知した場合は、注意喚起することなく、直ちに引継要求を行うことで、安全性を確保する。そして、第2待機判定時間T2が経過した後、運転者Dの保舵が検出されていれば(ハンドルタッチセンサ42がON)、第1運転支援モードへ遷移させ、運転者Dがいつでも運転を引継ぐことのできる状態で待機させて安全性を確保する。
【0103】
一方、第2待機判定時間T2経過後であっても、運転者Dの保舵が検出されていなければ(ハンドルタッチセンサ42がOFF)、運転者Dに対して保舵要求を行い、第3待機判定時間T3の猶予時間だけ第2運転支援モードを継続させる。これにより、安全性と利便性とを両立させることができる。
【0104】
その結果、本実施形態によれば、第2運転支援モードで走行している際に、運転者Dの姿勢異常を検知した後、正しい姿勢に復帰した場合に、運転モードとして第2運転支援モードを維持するか、第1運転支援モードへ遷移させるかの判定を、周辺に他の車両(P,F,S)が存在するか否かに応じて適正に行うことができる。
【符号の説明】
【0105】
1…運転支援システム、
11…ロケータユニット、
12…地図ロケータ演算部、
12a…自車位置推定演算部、
12b…地図情報取得部、
13…GNSS受信機、
14…自律走行センサ、
18…高精度道路地図データベース、
21…カメラユニット、
21a…メインカメラ、
21b…サブカメラ、
21c,31b…画像処理ユニット(IPU)、
21d…前方走行環境認識部、
22…運転モード設定演算部、
31a…運転者認識カメラ、
31c…運転者姿勢認識部、
41…自動運転スイッチ、
42…ハンドルタッチセンサ、
43…前側方センサ、
44…後側方センサ、
45…報知装置、
51…自動運転制御ユニット、
D…運転者、
Er1,Er2L,Er2R,Er3L,Er3R…領域、
F…後続車、
M…自車両、
Mh…ハンドル、
P…先行車、
RCAM…カメラ曲率、
RMPU…地図曲率、
S…隣接車、
T1…第1待機判定時間、
T2…第2待機判定時間、
T3…第3待機判定時間、
tim1…注意喚起時間、
tim2…引継時間、
tim3…保舵要求遷延時間