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特許7105081組電池、及び、これに用いられる二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】組電池、及び、これに用いられる二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/578 20210101AFI20220714BHJP
   H01M 50/512 20210101ALI20220714BHJP
   H01M 50/507 20210101ALI20220714BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20220714BHJP
   H01M 50/593 20210101ALI20220714BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20220714BHJP
   H01M 50/133 20210101ALI20220714BHJP
   H01M 50/159 20210101ALI20220714BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20220714BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20220714BHJP
【FI】
H01M50/578
H01M50/512
H01M50/507
H01M50/588
H01M50/593
H01M50/15
H01M50/133
H01M50/159
H01M50/342 101
H01M50/209
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018066017
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019175818
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 雄
(72)【発明者】
【氏名】細川 尚士
(72)【発明者】
【氏名】小林 恭平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直剛
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-205509(JP,A)
【文献】特開2003-051292(JP,A)
【文献】特開2014-011095(JP,A)
【文献】特開2017-216095(JP,A)
【文献】特開2016-081629(JP,A)
【文献】特開2015-187913(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0132618(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0065890(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 50/10-50/198
H01M 50/20-50/298
H01M 50/30-50/392
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
封口板に正極および負極の各電極端子が設けられた二次電池を複数含んだ電池ユニットと、
前記二次電池同士を並列接続するバスバーと、
前記二次電池の封口板と前記バスバーとの間に配置された絶縁プレートと、を備え、
前記封口板は前記二次電池の内圧上昇によって外側に膨らんで前記絶縁プレートが押し上げられ、前記絶縁プレートを介して前記バスバーが押し上げられることで、並列接続された前記二次電池間導電経路を遮断する短絡遮断部を有し、
前記封口板には所定の作動圧以上の圧力が加わったときに開放されるガス放出弁が設けられており、
前記封口板は可撓性を有する長方形状の板材で構成され、前記封口板の長辺長さ/短辺長さであるアスペクト比が6以下であり、前記封口板の厚さが2.5mm以下であり、前記封口板に設けられたガス放出弁の前記作動圧が0.9MPa以上であり、
前記二次電池内の圧力が前記作動圧に達したとき、前記封口板において最も膨らみが大きい部分が、前記封口板の外周縁部よりも1.5mm以上外側に突出する、組電池。
【請求項2】
前記二次電池内の圧力が前記作動圧に達したとき、前記封口板において最も膨らみが大きい部分は、前記封口板の中央部である、請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記短絡遮断部は、前記絶縁プレートを介して前記バスバーが押し上げられることで、前記バスバーが前記電極端子から分離されるか、あるいは前記バスバーが切断される、請求項1又は2に記載の組電池。
【請求項4】
前記封口板のアスペクト比が5~6であり、前記封口板の厚みが1.0~2.5mmであり、前記封口板に設けられたガス放出弁の作動圧が0.9~2.5MPaである、請求項に記載の組電池。
【請求項5】
前記封口板はアルミニウムもしくはアルミニウム合金製の板材である、請求項1~のいずれか一項に記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組電池、及び、これに用いられる二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の二次電池を含む組電池が知られている。この組電池は、隣接する複数の二次電池を並列に接続することで出力電流を大きくすることができ、また並列接続された二次電池同士を直列に接続することで出力電力を大きくすることができる。このため、このような組電池は、大きな出力電力を必要とする用途(例えば、車両駆動用)に好適に採用されている。
【0003】
このような組電池において、リチウムイオン二次電池などの高性能な二次電池を使用する場合、内部短絡すると極めて大きな電流が流れて二次電池が異常発熱することがある。特に、複数の二次電池を含む組電池は、異常発熱した二次電池によって、この二次電池と隣接する二次電池に異常発熱が誘発されると、組電池で発生する熱エネルギーが急激に増加する。
【0004】
なお、二次電池の信頼性を高めるため、電流遮断機構(Current Interrupt Device:以下「CID」という。)を備えた二次電池が開発されている(特許文献1参照)。CIDは、二次電池に短絡や過充電等の異常が生じ、電解液やガス発生剤等が分解した場合に、ガス発生による電池内の圧力上昇により作動して、電極体と電極端子との間の導電経路を切断して電流を遮断する機構である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-157451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
隣接する二次電池が並列接続された組電池においては、内部短絡した二次電池(以下、適宜に「トリガー電池」と呼ぶ。)の異常発熱がトリガー電池と並列に接続されている二次電池にも誘発される虞がある。
【0007】
上記のような異常発熱が誘発されるメカニズムは次の通りである。トリガー電池で内部短絡が生じてトリガー電池が異常発熱すると、トリガー電池の内部でガスが発生する。そうすると、電池内圧が所定値以上に上昇して、CIDが作動する。これにより、トリガー電池において、電極体と電極端子の間の導電経路が遮断される。しかし、CIDが作動して短絡電流が遮断されても、トリガー電池での異常発熱が続いて高温となる。これにより、トリガー電池の封口板において正極端子および負極端子を電気的に絶縁する絶縁部材が溶融して絶縁機能を果たさなくなり、正極端子および負極端子が金属板からなる封口板を介して導通した状態になる。すなわち、トリガー電池が低抵抗の導体とみなせる状態となる。その結果、トリガー電池に隣接して並列に接続されている二次電池が、トリガー電池の正極端子、封口板および負極端子を介して外部短絡する。そうすると、トリガー電池を介した外部短絡によって、隣接する二次電池に大電流が流れる。これにより、隣接する二次電池がジュール熱で発熱して異常発熱が誘発されることになる。
【0008】
本開示の目的は、内部短絡して異常発熱した二次電池に隣接する並列で接続されている二次電池での異常発熱の誘発が防止された組電池及びこれに用いられる二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様である組電池は、封口板に正極および負極の各電極端子が設けられた二次電池を複数含んだ電池ユニットと、二次電池同士を並列接続するバスバーと、二次電池の封口板とバスバーとの間に配置された絶縁プレートと、を備える。そして、封口板は二次電池の内圧上昇によって外側に膨らんで絶縁プレートが押し上げられ、絶縁プレートを介してバスバーが押し上げられることで、並列接続された二次電池間導電経路を遮断する短絡遮断部を有する。封口板には所定の作動圧以上の圧力が加わったときに開放されるガス放出弁が設けられている。二次電池内の圧力がガス放出弁の作動圧に達したとき、封口板において最も膨らみが大きい部分が、封口板の外周縁部よりも1.5mm以上外側に突出する。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る組電池及びこれに用いられる二次電池によれば、内部短絡して異常発熱した二次電池に隣接する並列で接続されている二次電池での異常発熱の誘発を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態である組電池の斜視図である。
図2図1に示す組電池の並列電池ユニットの分解斜視図である。
図3】いずれかの二次電池が内部短絡したとき並列電池に異常発熱が誘発される状態を説明するための図である。
図4】絶縁プレートが並列電池の短絡電流経路を遮断する状態を示す図である。
図5】並列電池ユニットの概略斜視図であって、並列電池の短絡電流経路を遮断する状態を示す図である。
図6図5に示す並列電池ユニットの幅方向断面図である。
図7図5に示す並列電池ユニットの厚み方向断面図である。
図8】封口板で押し上げられる絶縁プレートの他の一例を示す概略断面図である。
図9】封口板で押し上げられる絶縁プレートの他の一例を示す概略断面図である。
図10】実施例の二次電池を用いた電池ユニットの試験方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本開示の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0013】
図1は、本開示の一実施形態である組電池100の斜視図である。図2は、図1に示す組電池の並列電池ユニットの分解斜視図である。図1および図2において、幅方向が矢印Xで示され、厚み方向が矢印Yで示され、高さ方向が矢印Zで示される。これらの3方向は互いに直交する。
【0014】
図1に示すように、組電池100は、複数の角形二次電池10が積層された電池ブロック2と、電池ブロック2を構成している各々の角形二次電池10の電極端子13に接続されて、角形二次電池10を並列と直列に接続するバスバー5とを備える。
【0015】
組電池100では、角形二次電池10が並列と直列に接続されている。より詳しくは、バスバー5は、角形二次電池10を並列に接続する並列接続のバスバー5aと、直列に接続する直列接続のバスバー5bとからなる。組電池100は、角形二次電池10を並列に接続して出力電流を大きく、直列に接続して出力電圧を高くできる。したがって、組電池100は、用途に最適な出力電流と出力電圧となるように、角形二次電池10を並列と直列に接続している。
【0016】
電池ブロック2は、複数の角形二次電池10を、絶縁性のセパレータ(図示せず)を介して積層したものである。また、電池ブロック2は、積層された複数の角形二次電池10の積層方向両側の端面に一対のエンドプレート3を配置し、エンドプレート3をバインドバー4で連結して、複数の角形二次電池10を加圧状態に固定している。
【0017】
なお、本実施形態の組電池100では、複数の角形二次電池10が加圧状態に固定される例を示すが、これに限定されるものではなく、角形二次電池とセパレータとが接触しているが加圧されていない状態で配置されて組電池を構成してもよい。
【0018】
角形二次電池10は、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池であることが好ましい。
【0019】
角形二次電池10は、図2に示すように、電池ケース11と、封口板12を備える。電池ケース11は、扁平直方体状の外形形状をなす筐体であり、上端が上面視で長方形状に開口している。電池ケース11は金属板を深絞り加工して形成することができる。電池ケース11と封口板12の材質は、金属製であることが好ましく、アルミニウムもしくはアルミニウム合金からなることが好ましい。
【0020】
封口板12の外周縁は、電池ケース11の開口縁部に例えばレーザー溶接されて固定されている。また、封口板12には、正極端子取り付け孔と負極端子取り付け孔が設けられている。正極の電極端子13は、樹脂製の絶縁部材により封口板12と絶縁された状態で、正極端子取り付け孔に挿入されている。負極の電極端子13は、樹脂製の絶縁部材により封口板12と絶縁された状態で、負極端子取り付け孔に挿入されている。
【0021】
封口板12は、角形二次電池10の内部短絡等の異常により内圧が上昇したときに変形する可撓性を有する板材である。封口板12は、アルミニウム(この明細書においてアルミニウムはアルミニウム合金を含む意味に使用する。)等の可撓性のある金属板が使用できる。金属製の封口板12は、材質と厚さを調整して、内部短絡して内圧が上昇すると変形する可撓性を実現できる。
【0022】
封口板12には、ガス放出弁14が設けられている。ガス放出弁14は、封口板12の長手方向において、正極の電極端子13と負極の電極端子13の間に設けられている。ガス放出弁14は、封口板12で密閉された電池ケース11の内圧が所定値以上に上昇したときに開弁して内部のガスを放出する機能を有する。ガス放出弁14は、後述する短絡遮断部6によって並列電池の短絡電流経路が遮断された後に開弁する作動圧に設定されている。なお、本明細書において、並列電池とは、任意の二次電池に対して、この二次電池と並列に接続されている二次電池を意味するものとする。
【0023】
電池ケース11の内部には、電極体および非水電解質が収容されている。電極体は、例えば、帯状の正極板と帯状の負極板とが、帯状のセパレータを介して巻回された扁平形状の扁平巻回型とすることができる。このような扁平巻回型の電極体は、巻回軸方向の一端部に正極芯体露出部が形成され、巻回軸方向の他端部に負極芯体露出部が形成されている。電極体は、巻回軸が角形二次電池10の幅方向に沿った向きで電池ケース11内に収容される。
【0024】
電極体の正極芯体露出部には正極集電体が例えば超音波接合によって接続され、電極体の負極芯体露出部には負極集電体が例えば超音波接合によって接続される。正極集電体は、電池ケース11内においてCIDを介して正極の電極端子13の電池内側端部に電気的に接続される。負極集電体は、電池ケース11内において負極の電極端子13の電池内側端部に電気的に接続される。
【0025】
CIDは、変形板を備えることが好ましい。変形板は、正極集電体と接続されるとともに、正極集電体と正極の電極端子を電気的に接続する。角形二次電池10の内部の圧力が所定値以上となったとき、変形板は、変形板において正極集電体と接続された部分が正極集電体から離れるように変形する。そして、この変形により変形板と正極集電体の電気的接続が切断される。これにより、電極体と正極の電極端子の電気的接続が切断され、電流が遮断される。
【0026】
なお、上記では扁平巻回型の電極体が巻回軸を幅方向に沿った向きで電池ケース11内に収容される例を説明したが、これに限定されない。扁平巻回型の電極体は巻回軸が高さ方向Zに沿った向きで電池ケース内に収容されてもよい。また、電極体は、各々が長方形状に形成された正極板および負極板をセパレータを挟んで多数枚積層された積層型の電極体であってもよい。
【0027】
図1に示すように、組電池100は、並列接続のバスバー5aで複数の角形二次電池10を並列に接続して並列電池ユニット8とし、さらに、並列接続ユニット8を直列接続のバスバー5bで直列に接続している。図1の組電池100では、バスバー5を介して、隣接する2個の角形二次電池10を並列に接続して並列電池ユニット8とし、さらに、隣接する並列電池ユニット8を直列に接続している。ただし、本開示の組電池は、必ずしも2個の角形二次電池10を接続して並列電池ユニットとすることなく、3個以上の角形二次電池を接続して並列電池ユニットとし、あるいは、全体の角形二次電池を並列に接続することもできる。
【0028】
本実施形態の組電池100は、可撓性を有して電池内圧の上昇によって中央部が外側(上方)へ膨らむように突出変形する封口板12と、封口板12の表面とバスバー5との間に配置された絶縁プレート7とによって構成される短絡遮断部6を設けている。角形二次電池10の圧力がガス放出弁14の作動圧に達したとき、封口板12において最も膨らみが大きい部分は、封口板12の中央部である。封口板12の中央部とは、封口板2において、封口板12の長手方向における中央であり、封口板12の短手方向における中央である。なお、角形二次電池10の封口板12においては、ガス放出弁14の周囲の部分が最も膨らみが大きい部分となる。
【0029】
封口板12は、角形二次電池10内の圧力がガス放出弁14の作動圧に達したときの封口板12の中央部の膨らみ量P(図4参照)が封口板12の外周縁部に対して1.5mm以上であることが好ましい。ここで、膨らみ量Pは、封口板12の中央部が、封口板12の外周縁部から外側へ突出した突出量である。このように封口板12の中央部が外周部に対して1.5mm以上突出して変形することで、絶縁プレート7を押し上げてバスバー5を電極端子13から分離することによる短絡電流経路の遮断をより確実に行うことができる。封口板12の中央部における膨らみ量Pは、2mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましい。
【0030】
封口板12の中央部における1.5mm以上の膨らみ量Pを実現するため、封口板12の厚さは2.5mm以下で、上面視で長方形状をなす封口板12の長辺長さをa、短辺長さをbとしたときのアスペクト比a/bが6以下で、封口板12に設けたガス放出弁14の作動圧が0.9MPa以上であることが好ましい。さらに詳しくは、封口板12のアスペクト比a/bが5~6であり、封口板12の厚みが1.0~2.5mmであり、封口板に設けられたガス放出弁14の作動圧が0.9~2.5MPaであることがより好ましい。なお、上面視で長方形状をなす封口板12の短辺長さbは、2~5cmであることが好ましく、2~4cmであることがより好ましい。
【0031】
絶縁プレート7は、図2に示すように、封口板12の表面であって、その一部を互いに並列に接続されている角形二次電池10の封口板12とバスバー5との間に配置されている。2個又は3個の角形二次電池10を並列に接続している組電池100では、互いに並列に接続する全ての角形二次電池10、すなわち2個又は3個の角形二次電池10の封口板12との対向位置に1枚の絶縁プレート7が配置される。4個以上の角形二次電池を並列に接続している組電池では、複数に分割した複数枚の絶縁プレートが、角形二次電池の封口板の対向位置に配置されてもよい。複数の分割された各々の絶縁プレートは、少なくとも並列接続している2個以上の角形二次電池の封口板との対向位置に配置される。
【0032】
組電池100は、いずれかの角形二次電池10が内部短絡したとき、並列接続されている角形二次電池10、すなわち並列電池の短絡電流が流れる電流経路を遮断する短絡遮断部6を有する。図3の概略回路図は、複数の角形二次電池10を並列に接続して構成される組電池100において、何れかの角形二次電池A(図3において最上段の角形二次電池10)が内部短絡(矢印aで表示)すると、この角形二次電池Aと並列に接続されている隣の並列電池、すなわち角形二次電池B(図3において上から2段目に配置されている角形二次電池10)にも短絡電流が流れる状態(矢印bで表示)を表している。図3に示すように、角形二次電池Aが内部短絡すると、並列電池の角形二次電池Bは、外部にできる外部短絡回路によってショートされるからである。いずれか1つの角形二次電池10が内部短絡して過大電流が流れて異常発熱する状態で、さらに隣の角形二次電池10も外部短絡による過大電流で異常発熱すると、異常発熱が連鎖して複数の角形二次電池10に誘発される。短絡遮断部6は、この弊害を防止するために、内部短絡した角形二次電池10と並列に接続されている並列電池の短絡電流の電流経路を遮断して異常発熱の誘発を防止している。
【0033】
図4は、短絡遮断部6の動作原理図を示す図である。図4に示すように、角形二次電池10の封口板12の表面に絶縁プレート7が配置されている。この絶縁プレート7の幅方向の両端部が、封口板12と並列接続のバスバー5aとの間に挿入されている。上段の角形二次電池Aに内部短絡が生じて内圧が上昇すると、封口板12が外側に略円弧状に膨れるように変形する。この変形によって変形量が最も大きくなる封口板12の中央部によって絶縁プレート7が押し上げられる。
【0034】
このように変形した封口板12の中央部によって絶縁プレート7が押し上げられる。そして、封口板12の中央部の膨らみが封口板12の外周縁部に対して設定値以上になると、押し上げられた絶縁プレート7が並列接続のバスバー5aを押し上げて、並列接続のバスバー5aと電極端子13との接続を分離する。これにより、外部短絡によって並列電池である角形二次電池Bの短絡電流の電流経路が遮断される。なお、図4では封口板12の変形を利用して電極端子13から並列接続のバスバー5aが分離されることで短絡電流の電流経路が遮断される場合について説明したが、これに限定されるものではない。絶縁プレート7で押し上げられた並列接続のバスバー5aが切断されることにより、短絡電流経路が遮断されてもよい。また、絶縁プレート7で押し上げられた並列接続のバスバー5aの一部が切断されてバスバー5aの断面積が小さくなることにより、バスバー5aが溶断し、短絡電流経路が遮断されてもよい。
【0035】
図5は、2個の角形二次電池10を並列に接続している並列電池ユニット8の概略斜視図である。図5では、一方の角形二次電池Aにおいて内部短絡が生じ、角形二次電池Aの内圧が上昇して封口板12が変形することにより、短絡電流経路を遮断する状態を示している。また、図6図5において角形二次電池10の幅方向に切断した概略断面図、図7図5において角形二次電池10の厚み方向に切断した概略断面図で、共に封口板12で絶縁プレート7が押し上げられている状態を示している。図5ないし図7において、変形する前の平面状の封口板12の上に配置される絶縁プレート7を破線で示し、中央部が外側に突出するように変形した封口板12で押し上げられた絶縁プレート7を一点鎖線で示している。
【0036】
図5ないし図7に示すように、封口板12の対向面に絶縁プレート7が配置されている。絶縁プレート7は、1枚の板状で、図2に示すように、プレート部21の両端部に一対の押圧部22が設けられている。この絶縁プレート7は、プラスチック製の板材、あるいは表面が絶縁された金属板とすることができる。絶縁プレート7は、剛性のある絶縁板である。図5ないし図7に示すように、プレート部21が封口板12で押し上げられると、押圧部22でバスバー5aを押し上げてバスバー5aを電極端子13から分離する。これにより、並列接続の外部短絡経路を遮断し、並列電池である角形二次電池Bに流れる短絡電流を遮断する。封口板12は外周縁を電池ケース11に固定されているので、内部短絡等により角形二次電池10の内部の圧力が上昇すると中央部が突出するように変形する。突出した封口板12によって押し上げられるように、絶縁プレート7において、プレート部21が封口板12の中央部に配置され、押圧部22がバスバー5と封口板12との間に挿入されている。
【0037】
再び図1を参照すると、組電池100において、電池ブロック2の上面、すなわち、複数の角形二次電池10の封口板12が同一平面に配置されている面に、複数の絶縁プレート7が配置されている。複数の絶縁プレート7は、隣接する絶縁プレート7との境界に隙間17を設けて、互いに干渉することなく押し上げられる。
【0038】
図2及び図5に示すように、絶縁プレート7には、電極端子13を挿入する貫通孔23が形成されている。貫通孔23は、電極端子13の外形より内径が大きく形成されて、電極端子13に対して移動できる状態で挿入されている。
【0039】
絶縁プレート7は、図6に示すように、封口板12の突出部12Aに接触する位置が力点F、バスバー5aを押し上げて分離する位置が作用点S、バスバー5aを押し上げて分離しない位置が支点Nとなって、バスバー5aを電極端子13から分離する。絶縁プレート7は、各々の電極端子13(図5において4個の電極端子13)に接続しているバスバー5aを、電極端子13から引き離すように押し上げるが、破断強度の最も弱い部分において、バスバー5aは電極端子13か分離される。
【0040】
例えば、角形二次電池10の一方の電極端子13及びこの電極端子13に接続されるバスバー5aがアルミニウム製で、他方の電極端子13及びこの電極端子13に接続されているバスバー5aが銅製(この明細書においてアルミニウム、銅等の金属は合金を含む意味に使用する。)とする組電池にあっては、アルミニウムの連結強度が銅よりも弱いので、アルミニウム製の電極端子13とバスバー5との接続部分が分離される。
【0041】
図6において、突出部12Aで押し上げられる絶縁プレート7は、突出部12Aで押圧される力点Fの両側に、作用点Sと支点Nとが配置される。封口板12に押し上げられて、作用点Sでバスバー5aを電極端子13から分離すると絶縁プレート7は傾斜する。平面状の絶縁プレート7を突出部12Aの湾曲面が押圧する。この状態で、傾斜する絶縁プレート7は、力点Fと作用点Sとの間の長さが力点Fと支点Nとの間の長さよりも長くなる。絶縁プレート7が傾斜することで、力点Fが支点Nに接近するからである。力点Fが支点Nに接近するにしたがって、支点Nから力点Fまでの長さL1と、支点Nから作用点Sまでの長さL2の比率、すなわち、テコの比率L2/L1が大きくなって、作用点Sがバスバー5aを電極端子13から引き離す距離、すなわち、電極端子13とバスバー5との間隔dが大きくなる。電極端子13とバスバー5との間隔dを大きくすると、短絡電流をより確実に遮断できる。
【0042】
組電池100は、テコの比率L2/L1を調整して、引き離された電極端子13とバスバー5との間隔dを適宜に設定できる。なお、絶縁プレート7の封口板12との対向面の形状を変更して力点Fの位置を変更できる。図8図9の断面図に示す絶縁プレート7は、突出する封口板12に押圧される力点Fを幅方向に位置ずれさせるために、封口板12との対向面を突出させている。絶縁プレート7は、図8に示すように、封口板12側に突出する突出部24の頂点を中央部よりも支点N側にずらしてテコの比率L2/L1を大きくでき、図9に示すように、突出部24の頂点を中央部よりも作用点S側にずらしてテコの比率L2/L1を小さくできる。テコの比率L2/L1を大きくして、バスバー5が電極端子13から離れる間隔dを大きくでき、また、テコの比率L2/L1を小さくして、作用点Sがバスバー5を電極端子13から分離する力を強くできる。バスバー5が電極端子13から離れる間隔dと、作用点Sがバスバー5を電極端子13から分離する力とは、互いに相反する関係にある。したがって、テコの比率L2/L1は、バスバー5の分離距離と分離力を考慮して適当な位置に設定すればよい。
【0043】
また、図2に示すように、絶縁プレート7には、封口板12に設けたガス放出弁14から放出されるガスを通過させるガス通過穴26をガス放出弁14と対向する位置に設けている。ガス通過穴26が設けられていると、ガス放出弁14から放出されたガスをスムーズに排出することができる。
【0044】
電極端子13とバスバー5aとの連結強度は、バスバー5aを電極端子13に溶接する面積で調整することができる。具体的には、電極端子13とバスバー5aとの溶接面積を小さくして連結強度を弱くし、反対に溶接面積を大きくして連結強度を強くすることができる。ただし、バスバー5aと電極端子13との連結強度は、電極端子13とバスバー5aとの溶接部の形状で調整することができる。また、バスバー5aと電極端子13との連結強度は、電極端子13とバスバー5aの材質により調整できる。また、バスバー5aと電極端子13との連結強度は、バスバー5aと電極端子13との溶接条件により調整できる。レーザー溶接の場合は、レーザーの出力、レーザーの照射面積、照射時間等で調整できる。超音波溶接の場合は、出力、押圧力、超音波振動させる時間等で調整できる。
【0045】
また、並列接続のバスバー5aの一部を破断させて、短絡電流を遮断することもできる。図2に示すように、並列接続のバスバー5aは、長手方向中央部で幅を狭く形成し、あるいは、図示しないが破断予定部分の薄肉に形成して、強制的に引張強度を弱くすることで短絡電流を遮断してもよい。本実施形態において並列接続のバスバー5aは、金属板の両側に切欠部5dを形成して中央部に幅狭部5cを設け、あるいは、金属板の一部をプレス加工や切削加工で薄く形成して引張強度を弱くし、押圧部22で押し上げられるときに、この部分で破断する構造とする。なお、並列接続のバスバー5aの破断は、必ずしも押圧部22による機械的な作用のみである必要はなく、押圧部22による押圧と、並列接続のバスバー5aの幅狭部5cに流れる電流による発熱が合わさって、並列接続のバスバー5aが破断するように構成されてもよい。
【0046】
次に、本開示の実施例について説明する。
【実施例1】
【0047】
<正極板の作製>
正極活物質としてのリチウム遷移金属複合酸化物(LiNi0.35Co0.35Mn0.3)と、ガス発生剤としての炭酸リチウムと、導電剤としてのアセチレンブラックと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンがN-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に分散された分散液を混合し、正極活物質スラリーとした。ここで、正極活物質:ガス発生剤:導電剤:結着剤を質量比で95.8:0.9:2.1:1.2とした。この正極活物質スラリーを、アルミニウム合金製の正極芯体(厚さ15μm)の両面に塗布した。このとき、正極芯体の長手方向に沿う一方の端部(両面ともに同一方向の端部)には正極活物質スラリーを塗布せず、正極芯体を露出させて正極芯体露出部を形成した。この極板を乾燥し、正極活物質中のNMPを除去した。この後、圧延ロールで圧延し、所定のサイズに裁断することで、正極板を作製した。
【0048】
<負極板の作製>
負極活物質としての天然黒鉛と、結着剤としてのスチレンブタジエンゴムと、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースとを、質量比98:1:1で混合し、さらに水と混合して負極活物質スラリーとした。この後、この負極活物質スラリーを銅製の負極芯体(厚さ8μm)の両面に塗布した。このとき、負極芯体の長手方向に沿う一方の端部(両面とも同一方向の端部)には負極活物質スラリーを塗布せず、負極芯体を露出させて、負極芯体露出部を形成した。この極板を乾燥し、負極活物質スラリー中の水を除去した。この後、圧延ロールで圧延し、所定のサイズに裁断した。この後、アルミナと、アクリロニトリル系の結着剤と、NMPとを、質量比30:0.9:69.1で混合して保護層スラリーとし、この保護層スラリーを負極活物質層上に塗布した。この極板を乾燥し、保護層スラリー中のNMPを除去して、保護層が形成された負極板を作製した。なお、保護層の厚さは、2μmとした。
【0049】
<非水電解質>
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比(25℃、1気圧)で3:3:4となるように混合した混合溶媒を作製した。この混合溶媒に、LiPFを1mol/Lとなるように添加し、さらに非水電解質の総質量に対してビニレンカーボネート(VC)を0.3質量%添加して非水電解液とした。
【0050】
<電池の組立>
上記正極板および負極板を、正極芯体露出部と負極芯体露出部とがそれぞれ対向する電極の合剤層と重ならないようにずらし、セパレータを挟んで互いに絶縁した状態で巻回し、扁平状にプレス成形することにより、扁平状の巻回型電極体を作製した。セパレータとしては、好ましくはポリオレフィン製の微多孔性膜が2枚あるいは長尺状の1枚を折り畳んで使用される。セパレータの幅は正極合剤層を被覆できるとともに負極合剤層の幅よりも大きいものが使用されている。
【0051】
複数枚積層された正極芯体露出部は、正極集電体を介して正極の電極端子に電気的に接続されている。複数枚積層された負極芯体露出部は、負極集電体を介して負極の電極端子に電気的に接続されている。
【0052】
巻回型電極体は、封口板側に位置する面を除く周囲が樹脂材料からなる絶縁シートに覆われて角形電池ケースに挿入されて収容される。そして、封口板が角形電池ケースの開口部に嵌合され、封口板と電池ケースとの嵌合部がレーザー溶接される。これにより、角形電池ケースの開口部が封口板により気密に密閉される。この後、封口板の電解液注液口から上記の非水電解液が注液され、この電解液注液口をブラインドリベット等の封止部材により封止する。これにより、実施例1の角形二次電池となる。なお、実施例1の角形二次電池は、外形寸法が幅148mm、高さ91mm、厚さ26.5mm、電池容量50Ahである。
【0053】
なお、実施例1の角形二次電池には、アスペクト比a/bが5.8、厚さが2mmで、ガス放出弁の作動圧が1.9MPaであるアルミニウム製の封口板を用いた。
【実施例2】
【0054】
アスペクト比a/bが6.0、厚さが2.5mm、ガス放出弁の作動圧が0.9MPaであるアルミニウム製の封口板を用いて、これ以外は実施例1と同様にして、実施例2の角形二次電池を作製した。
【0055】
<電池ユニットの作製>
上記のように作製した実施例1の角形二次電池を2個準備した。そして、図10に示すように、2つの角形二次電池10の間に絶縁性のセパレータ9を挟んで積層した。そして、各角形二次電池の封口板上に絶縁プレート7を配置し、正極の電極端子同士をアルミニウム製のバスバー5aで並列に接続し、負極の電極端子同士を銅製のバスバー5aで並列に接続した。バスバー5aは、レーザー溶接によって電極端子に溶接した。このようにして実施例1の角形二次電池の電池ユニットを作製した。同様にして、実施例2の角形二次電池を2個含む電池ユニットを作製した。
【0056】
<試験方法>
図10に示すように、上面視で四角形状をなす厚み20mmの2枚のステンレス板30,32の間に電池ユニットを挟んで配置した。そして、2枚のステンレス板30,32を4本のボルト34で締結して電池ユニットを固定した。ステンレス板30の中央部には直径3mmの貫通孔36が形成されており、この貫通孔36から上側に位置する角形二次電池Aに直径1.2mmの金属製の釘38を刺して内部短絡による熱暴走(異常発熱)を生じさせた。そして、トリガー電池である上側の角形二次電池Aに隣接する下側の角形二次電池Bに熱暴走が連鎖しないかどうか、及び、封口板12の膨らみで絶縁プレート7が押し上げられてバスバー5aが電極端子13から分離されるかどうかを観察した。下側の角形二次電池Bに熱暴走が誘発されたか否かは、角形二次電池Bが発煙したかどうかで判断した。
【0057】
<試験結果>
以下の表1に試験結果を示す。下記の表1に示すように、実施例1および2のいずれの角形二次電池を用いた電池ユニットにおいても、ガス放出弁14が開弁する前に、トリガー電池Aの封口板12の膨らみ長Pが1.5mm以上となって絶縁プレート7を押し上げ、その結果、バスバー5aが絶縁プレート7を介して押し上げられて電極端子13から分離した。これにより、実施例1および2の角形二次電池10を用いた組電池によれば、トリガー電池Aの封口板12を介して並列電池Bが外部短絡するのを有効に防止でき、熱暴走の連鎖を防止できることが確認できた。
【0058】
【表1】
【0059】
なお、本開示に係る組電池およびこれに用いる角形二次電池は、上述した実施形態およびその変形例や実施例の構成に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【0060】
絶縁プレートは封口板上に直接配置される必要はない。例えば、絶縁プレートと封口板の間に他の部材が配置されていてもよい。また、絶縁プレートとバスバーの間に他の部材が配置されていてもよい。
【0061】
組電池において、全ての二次電池が並列接続されている必要はない。少なくとも2つの二次電池が並列接続されていればよい。
【符号の説明】
【0062】
2 電池ブロック、3 エンドプレート、4 バインドバー、5 バスバー、5a 並列接続のバスバー、5b 直列接続のバスバー、5c 幅狭部、5d 切欠部、6 短絡遮断部、7 絶縁プレート、8 並列電池ユニット、9 セパレータ、10 角形二次電池、11 電池ケース、12 封口板、12A (封口板の)突出部、13 電極端子、14 ガス放出弁、17 隙間、21 プレート部、22 押圧部、23,36 貫通孔、24 突出部、26 ガス通過穴、30,32 ステンレス板、34 ボルト、38 釘。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10