(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】エアバッグ及びその折畳方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/237 20060101AFI20220714BHJP
B60R 21/205 20110101ALI20220714BHJP
【FI】
B60R21/237
B60R21/205
(21)【出願番号】P 2018098844
(22)【出願日】2018-05-23
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小泉 裕之
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-030617(JP,A)
【文献】特開2007-261441(JP,A)
【文献】特開2018-024285(JP,A)
【文献】特開2012-030717(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0088356(US,A1)
【文献】米国特許第06460885(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状のエアバッグ本体部が折り畳まれた状態からこのエアバッグ本体部の内部にガスが導入されて膨張展開するエアバッグであって、
折り畳まれた状態で、
被保護物に対向して展開する対向面部の一部を含んで前記エアバッグ本体部が折り畳まれて形成された第1折畳部と、
前記対向面部の残りの他部を含んで前記エアバッグ本体部が折り畳まれて形成された第2折畳部と、
ガスが導入される部分から前記第1折畳部及び前記第2折畳部までの部分で前記エアバッグ本体部が折り畳まれて形成された第3折畳部とを備え、
前記第1折畳部は、前記第2折畳部に重ねられて配置され、
前記第3折畳部は、前記第1折畳部及び前記第2折畳部の前記被保護物とは反対側に沿い先端部が前記第1折畳部以上に位置するように配置された延出部を有
し、
前記延出部は、被保護物とは反対側から第1折畳部及び第2折畳部に対して連結されて配置されている
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
第3折畳部は、ガスが導入される部分に対向するとともに第2折畳部が重ねられる対向部を備えた
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。
【請求項3】
第3折畳部は、延出部に対して被保護物とは反対側に沿って配置された支持部を備えた
ことを特徴とする請求項2記載のエアバッグ。
【請求項4】
袋状のエアバッグ本体部が折り畳まれた状態からこのエアバッグ本体部の内部にガスが導入されて膨張展開するエアバッグの折畳方法であって、
前記エアバッグ本体部を所定幅に折り畳み、
この所定幅に折り畳んだエアバッグ本体部の被保護物に対向して展開する対向面部の一部を含む部分を折り畳んで第1折畳部を形成し、
前記所定幅に折り畳んだエアバッグ本体部の前記対向面部の残りの他部を含む部分を折り畳んで第2折畳部を形成し、
前記第1折畳部を前記第2折畳部と重なるように配置し、
前記所定幅に折り畳んだエアバッグ本体部のガスが導入される部分から前記第1折畳部及び前記第2折畳部までの部分を折り畳んで、前記第1折畳部及び前記第2折畳部の前記被保護物とは反対側に沿い先端部が前記第1折畳部以上に位置
し被保護物とは反対側から第1折畳部及び第2折畳部に対して連結される延出部を有する第3折畳部を形成する
ことを特徴とするエアバッグの折畳方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋状のエアバッグ本体部が折り畳まれた状態からこのエアバッグ本体部の内部にガスが導入されて膨張展開するエアバッグ及びその折畳方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のインストルメントパネルに配置される助手席乗員用のエアバッグ装置が知られている。このエアバッグ装置は、上側を開口部とするケース体を備え、このケース体の内側に、折り畳まれたエアバッグと、このエアバッグを膨張させるガスを噴射するインフレータとを収納している。また、ケース体の上側部には、インストルメントパネルに沿って取り付けられるカバー体が取り付けられ、このカバー体により上側の開口部が覆われている。そして、自動車の衝突時には、インフレータからガスを噴射してエアバッグを膨張させ、このエアバッグの膨張の圧力によりカバー体に形成したテアラインを破断して膨出口を形成し、この膨出口からエアバッグを助手席の乗員の前方に膨張展開させ、乗員を拘束して乗員に加わる衝撃を緩和するようになっている。
【0003】
このような助手席乗員用のエアバッグにおいて、乗員の拘束性を向上するためには、エアバッグ本体部を乗員方向へとより迅速に展開させ、乗員拘束面部をより迅速に形成することが望まれる。そこで、ガスが導入される部分から乗員拘束面部を含む折畳部までの距離を短くするようにエアバッグの折り形状を設定してエアバッグの展開挙動を制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、乗員拘束面部を乗員に対して、より安定的に展開させることも望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-30717号公報 (第5-11頁、
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、エアバッグの乗員拘束面部を迅速かつ安定的に展開させることが求められている。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、対向面部を迅速かつ安定的に展開させることができるエアバッグ及びその折畳方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のエアバッグは、袋状のエアバッグ本体部が折り畳まれた状態からこのエアバッグ本体部の内部にガスが導入されて膨張展開するエアバッグであって、折り畳まれた状態で、被保護物に対向して展開する対向面部の一部を含んで前記エアバッグ本体部が折り畳まれて形成された第1折畳部と、前記対向面部の残りの他部を含んで前記エアバッグ本体部が折り畳まれて形成された第2折畳部と、ガスが導入される部分から前記第1折畳部及び前記第2折畳部までの部分で前記エアバッグ本体部が折り畳まれて形成された第3折畳部とを備え、前記第1折畳部は、前記第2折畳部に重ねられて配置され、前記第3折畳部は、前記第1折畳部及び前記第2折畳部の前記被保護物とは反対側に沿い先端部が前記第1折畳部以上に位置するように配置された延出部を有し、前記延出部は、被保護物とは反対側から第1折畳部及び第2折畳部に対して連結されて配置されているものである。
【0009】
請求項2記載のエアバッグは、請求項1記載のエアバッグにおいて、第3折畳部は、ガスが導入される部分に対向するとともに第2折畳部が重ねられる対向部を備えたものである。
【0010】
請求項3記載のエアバッグは、請求項2記載のエアバッグにおいて、第3折畳部は、延出部に対して被保護物とは反対側に沿って配置された支持部を備えたものである。
【0011】
請求項4記載のエアバッグの折畳方法は、袋状のエアバッグ本体部が折り畳まれた状態からこのエアバッグ本体部の内部にガスが導入されて膨張展開するエアバッグの折畳方法であって、前記エアバッグ本体部を所定幅に折り畳み、この所定幅に折り畳んだエアバッグ本体部の被保護物に対向して展開する対向面部の一部を含む部分を折り畳んで第1折畳部を形成し、前記所定幅に折り畳んだエアバッグ本体部の前記対向面部の残りの他部を含む部分を折り畳んで第2折畳部を形成し、前記第1折畳部を前記第2折畳部と重なるように配置し、前記所定幅に折り畳んだエアバッグ本体部のガスが導入される部分から前記第1折畳部及び前記第2折畳部までの部分を折り畳んで、前記第1折畳部及び前記第2折畳部の前記被保護物とは反対側に沿い先端部が前記第1折畳部以上に位置し被保護物とは反対側から第1折畳部及び第2折畳部に対して連結される延出部を有する第3折畳部を形成するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のエアバッグによれば、折り畳まれた状態のエアバッグ本体部の内部にガスが導入されると、第1折畳部及び第2折畳部に先行して第3折畳部の延出部にガスが供給されることで、まず第3折畳部が被保護物に向かう方向に対して交差する方向にて被保護物とは反対側の位置で膨張展開し、その後、第3折畳部により被保護物側に押し出されるように第1折畳部及び第2折畳部が被保護物に向かって膨張展開する。この結果、対向面部を迅速かつ安定的に展開させることができる。
【0013】
請求項2記載のエアバッグによれば、請求項1記載のエアバッグの効果に加えて、エアバッグ本体部の内部に導入されたガスによって対向部がまず膨張展開することで第1折畳部及び第2折畳部を押し出して迅速に展開させることができる。
【0014】
請求項3記載のエアバッグによれば、請求項2記載のエアバッグの効果に加えて、エアバッグ本体部の膨張展開時に、支持部によって第1折畳部ないし第3折畳部を被保護物とは反対側から支持するので、エアバッグ本体部を被保護物に確実に向かわせて展開させることができる。
【0015】
請求項4記載のエアバッグの折畳方法によれば、折り畳んだエアバッグ本体部の内部にガスが導入されると、第1折畳部及び第2折畳部に先行して第3折畳部の延出部にガスが供給されることで、まず第3折畳部が被保護物に向かう方向に対して交差する方向にて被保護物とは反対側の位置で膨張展開し、その後、第3折畳部により被保護物側に押し出されるように第1折畳部及び第2折畳部が被保護物に向かって膨張展開する。この結果、対向面部を迅速かつ安定的に展開させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施の形態のエアバッグを示す断面図である。
【
図2】同上エアバッグの展開挙動を(a)ないし(g)に示す説明図である。
【
図3】(a)は同上エアバッグの展開状態を模式的に示す側面図、(b)は同上エアバッグの展開状態を示す斜視図である。
【
図4】同上エアバッグの折畳方法を(a)ないし(d)の順に示す説明図である。
【
図5】同上エアバッグの折畳方法の
図4に続く工程を(a)ないし(g)の順に示す説明図である。
【
図6】同上エアバッグの折畳方法の
図5に続く工程を(a)ないし(d)の順に示す説明図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態のエアバッグを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
図1ないし
図3において、10はエアバッグ装置で、このエアバッグ装置10は、車両としての自動車の助手席、すなわち被保護物としての助手席の乗員Aの前方に位置する被設置部としてのインストルメントパネル部11の内側に配置され、助手席乗員用のエアバッグ装置10を構成している。なお、以下、前後方向、両側方向、及び上下方向は、それぞれエアバッグ装置10を自動車に取り付けた状態における自動車の直進方向を基準として説明する。
【0019】
そして、このエアバッグ装置10は、エアバッグモジュールとも呼び得るもので、基布にて構成された袋状のエアバッグ12、エアバッグ12にガスを供給するインフレータ13、これらエアバッグ12とインフレータ13となどが取り付けられるケース体14、リテーナ15、展開前のエアバッグ12を覆うカバー体16、及びインフレータ13の動作を制御する図示しない制御手段などを備えている。さらに、このエアバッグ装置10は、自動車のインストルメントパネル部11に取り付けられ、センサなどを備えた制御装置に電気的に接続して構成される。
【0020】
ケース体14は、略箱状に形成され、正面側あるいはインストルメントパネル部11の上方に連続するウインドシールドであるフロントガラス18に向かう上側を開口部である矩形状の突出口19とし、内側が、折り畳んだエアバッグ12を収納するエアバッグ収納部20とされている。また、このケース体14の底部には、インフレータ13の取り付け用の図示しない取付孔が形成されている。そして、突出口19は、通常時、カバー体16により覆われている。
【0021】
インフレータ13は、例えば円盤状をなす本体部24を備え、この本体部24の外側に図示しないフランジ部が突設され、このフランジ部には通孔が形成されている。そして、この本体部24の上側部、すなわちフランジ部の上方に位置して、本体部24の外周面に、複数のガス噴射口26が形成されている。そして、本体部24の内側には、点火器及び薬剤が収納され、底部に接続されたコネクタを介して伝えられる制御手段からの電気信号により、点火器が薬剤を燃焼させ、ガス噴射口26から膨張用のガスを急速に供給するようになっている。そして、このインフレータ13は、ガス噴射口26を設けた本体部24をエアバッグ12の内側に挿入した状態で、ケース体14の底部に取り付けられている。なお、インフレータ13は、種々の形状があり、例えば、円柱状の本体部24をエアバッグ12の内側に配置する構成を採ることもできる。
【0022】
リテーナ15は、枠状に形成されており、エアバッグ12とともにインフレータ13をケース体14に取り付けるための図示しない取付ボルト(スタッドボルト)が突設されている。
【0023】
カバー体16は、樹脂にてインストルメントパネル部11と一体あるいは別体をなして形成され、他の部分より薄肉で容易に破断するテアラインが平面略H字状などに形成されている。
【0024】
そして、
図1、
図3(a)及び
図3(b)に示すエアバッグ12は、袋状の外殻部であるエアバッグ本体部30を備えている。このエアバッグ本体部30は、単数、あるいは複数の基布を縫製、接着あるいは溶着などにより組み合わせて接合することで全体としては袋状に形成されている。このエアバッグ本体部30は、展開状態で乗員Aに対向して上下方向及び左右方向(幅方向)に延びる対向面部である乗員拘束面部31を後端部に有し、この乗員拘束面部31の両側から反乗員側すなわち乗員側と反対側、換言すれば前側に前後方向に沿って延びる側面部32,32が連接され、これら乗員拘束面部31及び側面部32,32の上部間に前後方向に沿って延びる上面部33が連接され、かつ、乗員拘束面部31及び側面部32,32の下部間に前後方向に沿って延びる下面部34が連接されている。さらに、このエアバッグ本体部30は、インフレータ13からのガスが導入されるガス導入部35を乗員拘束面部31と反対側の端部である前端部に備えている。そして、このエアバッグ本体部30は、展開状態で、ガス導入部35側から乗員拘束面部31側へと幅寸法及び高さ寸法が拡大する形状となっている。このガス導入部35には、導入口としての円孔状のインフレータ取付口37が形成されているとともに、これらインフレータ取付口37を囲み、リテーナ15の取付ボルトが挿入される複数の取付孔38が形成されている。また、下面部34のインフレータ取付口37の周囲には、エアバッグ12の折畳形状を保持するラッピング手段であるシート40が重ねられて接合されている。また、側面部32には、ベントホールとも呼ばれる円孔状の排気口41がそれぞれ形成されている。その他、エアバッグ12には、適宜の補強部材や、エアバッグ本体部30内を複数の気室に仕切るための隔壁、あるいは、エアバッグ本体部30の展開挙動を制御するためのテザーなどが備えられていてもよい。
【0025】
そして、このエアバッグ12は、エアバッグ本体部30の内側にリテーナ15を挿入し、取付孔38からリテーナ15の取付ボルトを引き出した状態で、後述するように所定の形状に折り畳まれる。そして、折り畳まれたエアバッグ12をケース体14のエアバッグ収納部20に収納し、ケース体14の底部の取付孔から下側に取付ボルトを突設させる。そして、ケース体14の底部の下側からインフレータ13をあてがい、インフレータ13のフランジ部の取付孔に取付ボルトを挿入し、これら取付ボルトにナットを螺合して締め付ける。この状態で、各インフレータ13の本体部24は、インフレータ取付口37に挿入され、ガス噴射口26はエアバッグ12のガス導入部35に配置される。そして、このケース体14をカバー体16により覆うとともに車体側の部材に連結して、エアバッグ装置10が構成される。
【0026】
そして、このエアバッグ装置10を備えた自動車が衝突などすると、制御装置により動作されたインフレータ13からガスが供給されて、このガスがガス導入部35からエアバッグ本体部30の内部に導入され、エアバッグ12がケース体14の内側で膨張展開すなわち膨出し、この膨出する圧力により、カバー体16をテアラインに沿って破断して突出口19を形成し、所定方向である上方に向かってエアバッグ12を突出させ、さらにエアバッグ12がフロントガラス18に沿って乗員Aの前方に膨張展開して乗員Aを保護する。
【0027】
次に、
図4ないし
図6を参照して、エアバッグ12の折畳方法を説明する。
【0028】
エアバッグ12は、まず、エアバッグ本体部30にリテーナ15を挿入してガス導入部35に装着するとともに、折畳装置により、あるいは手作業で、エアバッグ本体部30を膨らませた状態としてから、
図4(a)に示すように上面部33と下面部34とを重ねて平板状に折り畳むとともに、ケース体14のエアバッグ収納部20(
図3(a))の両側方向の寸法に合わせて、側面部32,32を上面部33と下面部34との間に折り込んで
図4(b)に示すようにエアバッグ本体部30を所定幅の帯状に折り畳み、
図4(c)に示すように断面平板状の第1治具50をあてがい、第1折畳部45、第2折畳部46、及び第3折畳部47をそれぞれ分岐した帯状に形成する。この状態で、インフレータ13が装着されるガス導入部35から分岐部となる中間部48までの部分を折り畳んだ部分がマウス部とも呼び得る第3折畳部47となり、中間部48から上面部33及び乗員拘束面部31の一部である上側部分を含む部分を折り畳んだ部分が第1折畳部45となり、中間部48から下面部34及び乗員拘束面部31の残りの他部である下側部分を含む部分を折り畳んだ部分が第2折畳部46となる。第1折畳部45は、
図4(d)に示すように、例えば第3折畳部47上に折り返して直接重ねられる。第3折畳部47は、インフレータ取付口37に対向する位置から中間部48までの長さが所定長さLとなるように設定される(
図4(c))。また、第3折畳部47は、インフレータ取付口37を挟んで、エアバッグ本体部30の基端側となる一側部47aと、エアバッグ本体部30の先端側すなわち乗員A(
図3(a))側となる他側部47bとに分岐される。
【0029】
そして、
図5(a)に示すように、第1折畳部45に対して中間部48の位置で断面L字状の第2治具51及び断面平板状の第3治具52をあてがい、第1折畳部45を波状(蛇腹状)に折り畳む。
【0030】
次いで、
図5(b)に示すように、波状に折り畳んだ第1折畳部45とともに第2折畳部46を矢印に示すように第3折畳部47側に180°折り返し、
図5(c)に示すように第3折畳部47の他側部47b上に直接重ねる。
【0031】
さらに、
図5(d)に示すように、第2折畳部46に断面L字状の第4治具53をあてがい、第2折畳部46を波状(蛇腹状)に折り畳む。
【0032】
そして、
図5(e)に示すように、波状に折り畳んだ第2折畳部46を矢印に示すように180°折り返して第1折畳部45に直接重ねる。この状態で、
図5(f)に示すように、中間部48が第1折畳部45と第2折畳部46との間に挟み込まれて位置する。
【0033】
次いで、
図5(f)の矢印に示すように、第1折畳部45及び第2折畳部46を背面側に180°折り返し、
図5(g)に示すように、第1折畳部45と第2折畳部46との上下を反転させる。したがって、第1折畳部45が上側、第2折畳部46が下側となるようにこれら第1折畳部45と第2折畳部46とが直接重ねられた状態となる。
【0034】
そして、
図6(a)に示すように、第3折畳部47の他側部47bをZ字状に折り、第1折畳部45と第2折畳部46とを第3折畳部47側に移動させて、
図6(b)に示すように、第1折畳部45と第2折畳部46とを、ガスが導入される部分であるインフレータ取付口37に対向する位置で第3折畳部47の他側部47bに重ねる。この状態で、第3折畳部47の他側部47bは、第2折畳部46が直接重ねられる対向部55がインフレータ取付口37に対向して形成されるとともに、対向部55から第1折畳部45及び第2折畳部46間に位置する中間部48までの間が、余剰部56として形成される。
【0035】
この後、
図6(c)に示すように、余剰部56を第1折畳部45及び第2折畳部46に沿わせるように折り畳んで立ち上げ、これら第1折畳部45及び第2折畳部46の乗員A(
図3(a))とは反対側にて第3折畳部47の他側部47bに延出部57を形成する。延出部57は、先端部57aが第1折畳部45以上となる位置に配置される。本実施の形態において、延出部57の先端部57aは、第1折畳部45と同一高さまたは略同一高さとなる。そして、
図6(d)に示すように、第3折畳部47の残りの部分である一側部47aをさらに延出部57の乗員A(
図3(a))とは反対側に沿わせて立ち上げ、支持部58を形成する。この結果、第1折畳部45、第2折畳部46及び第3折畳部47について、エアバッグ本体部30が最終形状に折り畳まれる。
【0036】
したがって、この最終形状において、第3折畳部47における所定長さL(
図4(c))は、
図1に破線Bで示す部分の長さとなる。すなわち、第3折畳部47の乗員A(
図3(a))側から延出部57までの図中の左右の幅をa、インフレータ取付口37から第2折畳部46までの高さをb、第2折畳部46から第1折畳部45までの高さをc、第1折畳部45の図中の左右の幅をd、インフレータ取付口37から延出部57の先端部57aまでの高さをE、第1折畳部45と第2折畳部46との合計の高さをHとしたとき、L≧(1/2)a+a+H+c+d、H=b+c、E≧Hをそれぞれ満たしている。また、支持部58の先端部58aについては、延出部57の先端部57a以下、かつ、第1折畳部45と同一高さまたは略同一高さに位置するように配置される。
【0037】
そして、折り畳まれたエアバッグ本体部30は、シート40(
図4(a))により折り畳んだ形状で保持され、エアバッグ12の折畳工程が完了する。
【0038】
次に、エアバッグ装置10が作動しエアバッグ12が膨出する状態を説明する。
【0039】
図2(a)に示す初期状態から、インフレータ13のガス噴射口26からエアバッグ12のガス導入部35にガスが導入されると、このガスにより、エアバッグ12は、まず第3折畳部47が膨張展開する。
【0040】
より詳細に、折り畳まれた状態のエアバッグ本体部30の内部にガス導入部35からガスが導入されると、
図2(b)に示すように、ガスが対向部55を膨張展開させ、この対向部55に重ねられた第1折畳部45及び第2折畳部46が所定方向である上方に向かって押し上げられ、エアバッグ本体部30の展開圧力によってカバー体16をテアラインから破断させて突出口19を開く。
【0041】
このとき、支持部58によって第1折畳部45ないし第3折畳部47を乗員Aとは反対側(図中の左側)から支持し、エアバッグ本体部30が乗員Aとは反対側に展開しないように規制する。
【0042】
次いで、ガスが第1折畳部45及び第2折畳部46に先行して第3折畳部47の延出部57に供給される。延出部57では、
図2(c)に示すように、第1折畳部45及び第2折畳部46間に挟み込まれている中間部48側よりも第1折畳部45及び第2折畳部46に沿っている位置に先行してガスが導入されるので、
図2(d)に示すように、第3折畳部47が乗員Aに向かう方向に対して交差する左右方向に大きく膨張展開する。
【0043】
この後、
図2(e)ないし
図2(f)に示すように、第3折畳部47の膨張展開にしたがい第1折畳部45及び第2折畳部46が乗員A側に押し出されるように解けながら乗員Aに向かって迅速に膨張展開する。
【0044】
このように、本実施の形態によれば、折り畳まれた状態のエアバッグ本体部30の内部にガスが導入されると、第1折畳部45及び第2折畳部46に先行して第3折畳部47の延出部57にガスが供給されることで、まず第3折畳部47が乗員に向かう方向に対して交差する左右方向に膨張展開し、その後、第3折畳部47により乗員A側に押し出されるように第1折畳部45及び第2折畳部46が膨張展開する。すなわち、初期展開時に、乗員A側へとエアバッグ本体部30が展開する前に、カバー体16付近でエアバッグ本体部30がまず左右へ膨張する。この結果、第1折畳部45及び第2折畳部46に含まれる乗員拘束面部31を、左右にばらつくことなく迅速かつ安定的に展開させることができる。
【0045】
また、エアバッグ本体部30にガスが導入されると、まず対向部55の膨張展開により第1折畳部45及び第2折畳部46を押し出すので、これら第1折畳部45及び第2折畳部46を迅速に展開させることができる。
【0046】
さらに、エアバッグ本体部30の膨張展開時に、支持部58によって第1折畳部45ないし第3折畳部47を乗員Aとは反対側から支持するので、エアバッグ本体部30を乗員Aに確実に向かわせて展開させることができる。
【0047】
なお、上記の第1の実施の形態において、
図7に示す第2の実施の形態のように、延出部57の先端部57aを、第1折畳部45よりも上方に延出する形状としても、第1折畳部45及び第2折畳部46に先行して第3折畳部47の延出部57にガスが供給されることで、まず第3折畳部47が乗員に向かう方向に対して交差する左右方向に膨張展開させることができ、乗員拘束面部31を、左右にばらつくことなく迅速かつ安定的に展開させることができる効果を奏する。
【0048】
また、上記の各実施の形態において、エアバッグ装置10は、助手席用だけでなく、例えば運転席用など、任意のエアバッグ装置として用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば助手席乗員用のインストルメントパネル部に備えられるエアバッグとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
12 エアバッグ
30 エアバッグ本体部
31 対向面部である乗員拘束面部
45 第1折畳部
46 第2折畳部
47 第3折畳部
55 対向部
57 延出部
57a 先端部
58 支持部
A 被保護物としての乗員