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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20220714BHJP
   F24F 13/15 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
B60H1/34 611B
F24F13/15 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018100834
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2019202740
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高山 侑紀
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-337544(JP,A)
【文献】特開2010-095116(JP,A)
【文献】実開昭54-052847(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第106016655(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
F24F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風路を有するケース体と、
前記ケース体に前記通風路を通過する空気の流れと交差する第1の所定方向に沿って配置されるとともにその第1の所定方向の両端が回動可能に軸支され、前記通風路を通過する空気の風向を調整する複数の第1のフィンと
前記第1のフィンよりも前記通風路を通過する空気の流れの上流側の位置で、前記ケース体に前記通風路を通過する空気の流れ及び前記第1の所定方向と交差する第2の所定方向に沿って配置されるとともにその第2の所定方向の両端が回動可能に軸支され、前記通風路を通過する空気の風向を調整する複数の第2のフィンと、
前記第1のフィンの1つに前記第1の所定方向に沿って移動可能に取り付けられるとともに前記第2のフィンと連結され、前記第1の所定方向への移動により前記第2のフィンの回動角度を操作する操作部と を具備し、
前記第1のフィンは、前記通風路を通過する空気の流れに沿った方向の断面形状が中間部とこの中間部の両端から互いに異なる側に傾斜する両端の傾斜部とを有する断面S字形状の複数のS字形フィンを含 み、
前記操作部が取り付けられる前記第1のフィンは、前記通風路を通過する空気の流れに沿った方向の断面形状が直線形状の直線形フィンである
ことを特徴とする風向調整装置
【請求項2】
前記S字形フィン及び前記直線形フィンを連動して回動させる第1のリンクを具備し、
前記S字形フィン及び前記直線形フィンが前記通風路に対して一方向及び他方向のいずれかに回動して傾斜する状態で、前記S字形フィンの最も傾斜する部分の傾斜角度が前記直線形フィンの傾斜角度よりも大きい
ことを特徴とする請求項記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のフィンの回動によって風向を調整する風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、空調風を吹き出す吹出口に備えられる風向調整装置は、空調風吹出装置、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、例えばインストルメントパネルやセンターコンソール部などの車両の各部に設置され、冷暖房による快適性能の向上に寄与している。
【0003】
このような風向調整装置として、通風路を有する筒状のケース体内に複数のフィンを回動可能に配置し、これら複数のフィンを一方向または他方向に回動させて傾斜させることにより、その複数のフィンの傾斜方向に風向を調整するようにした構成が知られている。
【0004】
このような風向調整装置に用いられるフィンには、通風路を通過する空気の流れに沿った方向の断面形状を直線形状とする直線形フィンが多く用いられているが、ケース体とのクリアランスがあるために回動角度を大きくできず、調整可能な風向角度の範囲が比較的小さい。また、通風路を通過する空気の流れに沿ったフィンの下流側を回動方向の一方側に向けて傾斜させた下流側傾斜形フィンを用いることにより、その下流側傾斜形フィンの下流側の傾斜方向へ向けた風向角度を拡大することが可能となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-205648号公報(第2-3頁、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、下流側傾斜形フィンでは、その下流側傾斜形フィンの下流側が傾斜する方向への風向角度を拡大することが可能となるが、下流側傾斜形フィンの下流側が傾斜する方向に対して反対方向への風向角度を拡大することができず、調整可能な風向角度の範囲の拡大が十分でない。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、調整可能な風向角度の範囲を拡大できる風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の風向調整装置は、通風路を有するケース体と、前記ケース体に前記通風路を通過する空気の流れと交差する第1の所定方向に沿って配置されるとともにその第1の所定方向の両端が回動可能に軸支され、前記通風路を通過する空気の風向を調整する複数の第1のフィンと、前記第1のフィンよりも前記通風路を通過する空気の流れの上流側の位置で、前記ケース体に前記通風路を通過する空気の流れ及び前記第1の所定方向と交差する第2の所定方向に沿って配置されるとともにその第2の所定方向の両端が回動可能に軸支され、前記通風路を通過する空気の風向を調整する複数の第2のフィンと、前記第1のフィンの1つに前記第1の所定方向に沿って移動可能に取り付けられるとともに前記第2のフィンと連結され、前記第1の所定方向への移動により前記第2のフィンの回動角度を操作する操作部とを具備し、前記第1のフィンは、前記通風路を通過する空気の流れに沿った方向の断面形状が中間部とこの中間部の両端から互いに異なる側に傾斜する両端の傾斜部とを有する断面S字形状の複数のS字形フィンを含み、前記操作部が取り付けられる前記第1のフィンは、前記通風路を通過する空気の流れに沿った方向の断面形状が直線形状の直線形フィンである。
【0009】
求項記載の風向調整装置は、請求項記載の風向調整装置において、前記S字形フィン及び前記直線形フィンを連動して回動させる第1のリンクを具備し、前記S字形フィン及び前記直線形フィンが前記通風路に対して一方向及び他方向のいずれかに回動して傾斜する状態で、前記S字形フィンの最も傾斜する部分の傾斜角度が前記直線形フィンの傾斜角度よりも大きいものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の風向調整装置によれば、第1のフィンとして複数のS字形フィンを用いて風向を調整することにより、調整可能な風向角度の範囲を拡大でき、さらに、第1のフィンの1つに直線形フィンを用いることにより、第2のフィンの回動角度を操作するための操作部を直線形フィンに沿って移動可能に取り付けることができる。
【0011】
請求項記載の風向調整装置によれば、請求項記載の風向調整装置の効果に加えて、S字形フィン及び直線形フィンが通風路に対して一方向及び他方向のいずれかに回動して傾斜する状態で、S字形フィンの最も傾斜する部分の傾斜角度が直線形フィンの傾斜角度よりも大きいことにより、調整可能な風向角度の範囲を拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態を示す風向調整装置の風向を風軸方向である略水平方向に調整した断面図である。
図2】同上風向調整装置の風向を上方に調整した断面図である。
図3】同上風向調整装置の風向を下方に調整した断面図である。
図4】同上風向調整装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
図1ないし図4において、10は風向調整装置で、この風向調整装置10は、ルーバ装置あるいはベンチレータなどとも呼ばれ、例えば自動車の被取付部材である図示しないインストルメントパネルなどに取り付けられ、空調装置に接続されて、車室内に風を吹き出し、空調を行う車両用空調装置を構成している。なお、以下、前後方向、左右方向及び上下方向については、風向調整装置10をインストルメントパネルなどに取り付けた状態での自動車の前後方向、左右方向及び上下方向を基準として説明する。
【0015】
この風向調整装置10は、ケース体15と、このケース体15に回動可能に軸支された第1の風向調整羽根である第1のフィンとしての横ルーバ16と、この横ルーバ16よりも前方の位置でケース体15に配置された第2の風向調整羽根である第2のフィンとしての縦ルーバ17と、これら横ルーバ16及び縦ルーバ17のそれぞれの回動角度、すなわち振り角を操作する操作部としての操作ノブ18とを備えている。
【0016】
そして、ケース体15は、例えば合成樹脂などによって角筒状に形成されたケース体本体21と、このケース体本体21の後端部に取り付けられる意匠部材としての角筒状のフィニッシャ(図示せず)とを備えている。また、このケース体15の内側は、通風路22となっているとともに、前側が空調装置のエアダクトに接続される接続口23、後側がフィニッシャにより区画される吹出口24となっている。このケース体15(ケース体本体21)の左右両側部には、横ルーバ16を軸支するための例えば丸穴状の第1の軸受部25,25が開口されている。このケース体15の上部及び下部には、縦ルーバ17を軸支するための例えば丸穴状の第2の軸受部26,26が開口されている。
【0017】
また、横ルーバ16は、手前ルーバなどとも呼ばれ、通風路22内にて縦ルーバ17の風下側である後側に、通風路22を通過する空気の流れと交差する第1の所定方向である左右方向(水平方向)D1(図4参照)に沿って配置されている。この横ルーバ16は、ケース体15の第1の軸受部25,25に左右方向D1を回転軸として回動可能に軸支されている。この横ルーバ16は、通風路22を通過する空気の流れを制御する細長板状の第1の羽根部としての第1のフィン本体である横ルーバ本体31と、この横ルーバ本体31の長手方向すなわち左右両端部から突設され第1の軸受部25,25に嵌合してケース体15に回動可能に軸支される円柱状の第1の回動軸部32とを備え、ケース体15(ケース体本体21)に対して通風路22を通過する空気の流れ及び左右方向D1と交差(直交)する第2の所定方向としての上下方向(垂直方向)D2に回動可能となっている。
【0018】
この横ルーバ16は、本実施の形態では複数設定され、上下方向D2に互いに離間されて配置されている。複数の横ルーバ16は、互いに連動して回動するように第1のリンク33によって連結されている。各横ルーバ16には、横ルーバ本体31の一端部に、第1の回動軸部32から離間されるとともにこの第1の回動軸部32と平行に、第1のリンク33と連結される図示しない第1のリンク軸部が突設されている。各横ルーバ16の第1のリンク軸部は、ケース体本体21の一側壁に設けられる溝部21aから外側に突出され、このケース体15の外側に配置される第1のリンク33に連結されている。そして、本実施の形態では、例えば全ての横ルーバ16が通風路22の風軸方向である前後方向D3に沿う中立位置から、第1のリンク33により各横ルーバ16が連動して上下方向D2に回動し、風向を調整可能に構成されている。また、本実施の形態では、これら横ルーバ16は、例えば上から下へと、徐々に後側にずれるように、換言すれば、吹出口24の開口面方向に略平行となるように配置されている。
【0019】
これら横ルーバ16のいずれか1つ、例えば上下方向D2の中央部に位置する横ルーバ16には、図4に示すように、操作ノブ18が横ルーバ16(横ルーバ本体31)の長手方向である左右方向D1に沿って移動(スライド)可能に取り付けられている。
【0020】
さらに、横ルーバ16は、通風路22を通過する空気の流れに沿った方向の断面形状が断面S字形状である複数のS字形フィンとしてのS字形横ルーバ34と、通風路22を通過する空気の流れに沿った方向の断面形状が直線形状の直線形フィンとしての直線形横ルーバ35とを備えている。本実施の形態では、横ルーバ16は、3つで、上下の2つがS字形横ルーバ34、中央の1つが直線形横ルーバ35である。
【0021】
S字形横ルーバ34は、通風路22を通過する空気の流れに沿った方向の断面形状が、中間部36と、この中間部36の風上側及び風下側の両端から互いに異なる側に傾斜する両端の傾斜部37,38とを有する断面S字形状に形成されている。本実施の形態では、風上側の傾斜部(上流側傾斜部)37が中間部36から下側に向けて傾斜され、風下側の傾斜部(下流側傾斜部)38が中間部36から上側に向けて傾斜されている。これら傾斜部37,38の中間部36からの傾斜角度α1は、本実施の形態では約33°である。さらに、図1に示すように横ルーバ16(S字形横ルーバ34)が通風路22の風軸方向である前後方向D3に沿う中立位置にある状態において、通風路22の風軸方向である前後方向D3に対するS字形横ルーバ34の傾斜部37,38の傾斜角度α2は、例えば20°以下が好ましく(より好ましくは15°以下)、本実施の形態では約14°である。
【0022】
また、縦ルーバ17は、奥ルーバなどとも呼ばれ、ケース体15内に上下方向D2に沿って配置されているとともに、ケース体15の第2の軸受部26,26に上下方向D2を回転軸として回動可能に軸支されている。この縦ルーバ17は、通風路22を通過する空気の流れを制御する矩形板状の第2の羽根部としての第2のフィン本体である縦ルーバ本体41と、この縦ルーバ本体41の長手方向すなわち上下両端部から突設され第2の軸受部26,26に嵌合してケース体15に回動可能に軸支される円柱状の第2の回動軸部42とを備え、ケース体15(ケース体本体21)に対して左右方向(水平方向)D1に回動可能となっている。
【0023】
この縦ルーバ17は、本実施の形態では複数設定され、左右方向D1に互いに離間されて配置されている。複数の縦ルーバ17は、連動して回動するように第2のリンク43によって連結されている。各縦ルーバ17には、縦ルーバ本体41の下端部に、第2の回動軸部42から離間されるとともにこの第2の回動軸部42と平行に、第2のリンク43と連結される第2のリンク軸部44が突設されている。さらに、これら縦ルーバ17のいずれか1つ、例えば左右方向D1の中央部に位置する縦ルーバ17には、操作ノブ18の前部側が連結されている。そして、本実施の形態では、例えば全ての縦ルーバ17が通風路22の風軸方向である前後方向D3に沿う中立位置から、第2のリンク43により各縦ルーバ17が連動して左右方向D1に回動し、風向を調整可能に構成されている。
【0024】
そして、自動車の乗員から見て、横ルーバ16が手前側、すなわち車室側に位置して吹出口24に露出し、縦ルーバ17が奥側、すなわち車体側に位置して、車室内の乗員から見て横ルーバ16の背後に位置されている。
【0025】
また、操作ノブ18は、車両の乗員などの使用者が風向を変える際に摘んで操作するための摘み部である。この操作ノブ18は、この横ルーバ16(直線形横ルーバ35)に沿って左右方向D1に摺動(スライド)可能となっている。そして、操作ノブ18の上下方向D2への操作により、横ルーバ16が連動して上下に回動し、また、操作ノブ18の左右方向D1への操作により、縦ルーバ17が連動して左右に回動する。
【0026】
そして、風向調整装置10は、空調装置から供給された空調風が接続口23からケース体15の内部の通風路22へと導入され、この通風路22を通過して吹出口24から乗員側、すなわち車室内に吹き出される。
【0027】
このとき、操作ノブ18を横ルーバ16に沿って左右方向D1に操作すると、縦ルーバ17が左右方向D1に回動し、吹出口24から吹き出される空調風の風向が左右に調整される。一方、操作ノブ18を横ルーバ16とともに上下方向D2に操作すると、横ルーバ16が上下方向D2に回動し、吹出口24から吹き出される空調風の風向が上下に調整される。
【0028】
そして、図1には、横ルーバ16(S字形横ルーバ34及び直線形横ルーバ35)が通風路22の風軸方向である前後方向D3に沿う中立位置にある状態を示す。S字形横ルーバ34は、傾斜部37、中間部36及び傾斜部38が風軸方向である前後方向D3に並ぶことにより、空調風の風向が通風路22の風軸方向である略水平方向に調整される。直線形横ルーバ35は、通風路22の風軸方向である前後方向D3に沿うことにより、空調風の風向が通風路22の風軸方向である略水平方向に調整される。したがって、横ルーバ16により、空調風が吹出口24から通風路22の風軸方向である略水平方向に吹き出す。
【0029】
S字形横ルーバ34が中立位置にある状態においては、S字形横ルーバ34が吹出口24から通風路22の風軸方向である略水平方向に吹き出す空調風の流れを阻害しないことが好ましい。このS字形横ルーバ34が中立位置にある状態において、通風路22の風軸方向である前後方向D3に対するS字形横ルーバ34の傾斜部37,38の傾斜角度α2は、例えば20°以下が好ましく(より好ましくは15°以下)、本実施の形態では約14°であるため、S字形横ルーバ34が吹出口24から通風路22の風軸方向である略水平方向に吹き出す空調風の流れを阻害することが少なく、空調風が吹き出す風力や風量への影響を少なくできる。
【0030】
図2には、横ルーバ16(S字形横ルーバ34及び直線形横ルーバ35)が上方に向けて回動された風向の上振り状態を示す。S字形横ルーバ34は、傾斜部37、中間部36及び傾斜部38の上面側が風上側に対向するように上振り傾斜し、空調風が傾斜部37、中間部36及び傾斜部38の上面側に当たることにより、空調風の風向が上方へ向けて調整される。このとき、S字形横ルーバ34の上面側でのコアンダ効果(噴流が粘性の効果により周りの流体を引き込むこと)により、空調風が上方へ向けて流れやすく、上方への風向角度が大きくなる。直線形横ルーバ35は、上面側が風上側に対向するように上振り傾斜し、空調風が上面側に当たることにより、空調風の風向が上方へ向けて調整される。したがって、横ルーバ16により、空調風が吹出口24から上方に向けて吹き出す。
【0031】
S字形横ルーバ34及び直線形横ルーバ35が通風路22に対して一方向である上方に向けて回動して傾斜する状態では、通風路22の風軸方向である前後方向D3に対して、S字形横ルーバ34の最も傾斜する部分つまり風下側の傾斜部38の傾斜角度β1が直線形横ルーバ35の傾斜角度β2よりも大きくなる。そのため、S字形横ルーバ34では、通風路22の風軸方向である前後方向D3に対して、空調風の上方への風向角度を直線形横ルーバ35による風向角度に比べて大きくできる。
【0032】
図3には、横ルーバ16(S字形横ルーバ34及び直線形横ルーバ35)が下方に向けて回動された風向の下振り状態を示す。S字形横ルーバ34は、傾斜部37、中間部36及び傾斜部38の下面側が風上側に対向するように下振り傾斜し、空調風が傾斜部37、中間部36及び傾斜部38の下面側に当たることにより、空調風の風向が下方へ向けて調整される。このとき、S字形横ルーバ34の下面側でのコアンダ効果(噴流が粘性の効果により周りの流体を引き込むこと)により、空調風が下方へ向けて流れやすく、下方への風向角度が大きくなる。直線形横ルーバ35は、下面側が風上側に対向するように下振り傾斜し、空調風が下面側に当たることにより、空調風の風向が下方へ向けて調整される。したがって、横ルーバ16により、空調風が吹出口24から下方に向けて吹き出す。
【0033】
S字形横ルーバ34及び直線形横ルーバ35が通風路22に対して他方向である下方に向けて回動して傾斜する状態では、通風路22の風軸方向である前後方向D3に対して、S字形横ルーバ34の最も傾斜する部分つまり中間部36の傾斜角度β3が直線形横ルーバ35の傾斜角度β4よりも大きくなる。そのため、S字形横ルーバ34は、通風路22の風軸方向である前後方向D3に対して、空調風の下方への風向角度を直線形横ルーバ35による風向角度に比べて大きくできる。
【0034】
そして、横ルーバ16が複数のS字形横ルーバ34を含む本実施の形態と、横ルーバ16が直線形横ルーバ35のみの場合の比較例とについて、吹出口24から吹き出す風の風軸角度を測定する風向制御性測定試験を行った。試験では、風量2.0m3/min、上振り時の横ルーバ16の回動角度35°、下振り時の横ルーバ16の回動角度40°とした。
【0035】
その結果、比較例では、上振り時の風軸角度が37°、下振り時の風軸角度が-37.7°であったのに対して、本実施の形態では、上振り時の風軸角度が42.1°、下振り時の風軸角度が-40.8°となり、上振り時の風軸角度が5.1°、下振り時の風軸角度が3.1°それぞれ拡大した。
【0036】
このように、本実施の形態では、横ルーバ16に複数のS字形横ルーバ34を用いて上下方向D2の空調風の風向を調整することにより、上下方向D2に調整可能な風向角度の範囲を拡大できる。
【0037】
また、横ルーバ16の1つに操作ノブ18を取り付けるが、仮にS字形横ルーバ34に操作ノブ18を取り付けるとした場合、操作ノブ18の形状が複雑になったり、操作感の調整が難しくなる。そこで、操作ノブ18を取り付ける横ルーバ16に直線形横ルーバ35を用いることにより、操作ノブ18の形状を簡単にできたり、操作感の調整がし易くできる。
【0038】
また、S字形横ルーバ34及び直線形横ルーバ35が通風路22に対して一方向及び他方向のいずれかに回動して傾斜する状態で、S字形横ルーバ34の最も傾斜する部分の傾斜角度が直線形横ルーバ35の傾斜角度よりも大きいことにより、上下方向D2に調整可能な風向角度の範囲を拡大できる。
【0039】
また、S字形横ルーバ34が中立位置にある状態において、通風路22の風軸方向である前後方向D3に対するS字形横ルーバ34の傾斜部37,38の傾斜角度α2は、例えば20°以下が好ましく(より好ましくは15°以下)、本実施の形態では約14°とするため、上下方向D2に調整可能な風向角度の範囲を拡大できるとともに、S字形横ルーバ34が中立位置にある状態においては、吹出口24から通風路22の風軸方向である略水平方向に吹き出す空調風の流れを阻害することが少なく、空調風が吹き出す風力や風量への影響を少なくできる。
【0040】
なお、上記実施の形態において、S字形横ルーバ34は、上下面が逆向きでもよい。すなわち、S字形横ルーバ34は、風上側の傾斜部37が中間部36から上側に向けて傾斜され、風下側の傾斜部38が中間部36から下側に向けて傾斜されていてもよい。この場合にも、上下方向D2に調整可能な風向角度の範囲を拡大できる。
【0041】
また、上記実施の形態では、横ルーバ16が3本の場合で、上下の横ルーバ16がS字形であり、真ん中の横ルーバ16が直線形であるが、例えば、4本の場合には、上側2本と下側1本をS字形、残りの1本を直線形とし、また、5本の場合には、上下2本ずつをS字形、真ん中の1本を直線形とすることもできる。すなわち、少なくとも上下両端がS字形であれば、真ん中側はS字形、直線形のいずれでも構わない。
【0042】
また、上記実施の形態では、上下の横ルーバ16(S字形横ルーバ34)の傾斜角度α1は、同一に設けたが、それぞれ異なる角度にしても構わない。さらに、上下の横ルーバ16(S字形横ルーバ34)の傾斜部37の傾斜角度α1と傾斜部38の傾斜角度α1とは、それぞれ異なる角度にしても構わない。
【0043】
また、縦ルーバ17にも、S字形フィン構造を適用し、左右方向D1に調整可能な風向角度の範囲を拡大してもよい。
【0044】
また、風向調整装置10の使用場所などによっては、通風路22の風軸方向における横ルーバ16と縦ルーバ17との配置関係は逆でもよい。
【0045】
また、上記実施の形態において、横ルーバ16は、操作ノブ18で直接回動させる構成の他に、例えばケース体15に操作可能に取り付けられたダイヤルなどの操作体により回動させることもできる。
【0046】
また、風向調整装置10は、横ルーバ16及び縦ルーバ17のいずれか一方のみを備え、その一方にS字形フィン構造を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、例えば、自動車のインストルメントパネルなどに備えられる空調装置の風向調整装置として適用できる。
【符号の説明】
【0048】
10 風向調整装置
15 ケース体
16 第1のフィンとしての横ルーバ
17 第2のフィンとしての縦ルーバ
18 操作部としての操作ノブ
22 通風路
33 第1のリンク
34 S字形フィンとしてのS字形横ルーバ
35 直線形フィンとしての直線形横ルーバ
36 中間部
37,38 傾斜部
D1 第1の所定方向としての左右方向
D2 第2の所定方向としての上下方向
図1
図2
図3
図4