(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】タブリード用フィルム、及びこれを用いたタブリード
(51)【国際特許分類】
H01M 50/184 20210101AFI20220714BHJP
H01M 50/193 20210101ALI20220714BHJP
H01M 50/197 20210101ALI20220714BHJP
H01M 50/178 20210101ALI20220714BHJP
H01M 50/186 20210101ALI20220714BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20220714BHJP
H01M 50/595 20210101ALI20220714BHJP
【FI】
H01M50/184 C
H01M50/193
H01M50/197
H01M50/178
H01M50/186
H01M50/586
H01M50/595
(21)【出願番号】P 2018115497
(22)【出願日】2018-06-18
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大山 正道
(72)【発明者】
【氏名】粟村 洋紀
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-091939(JP,A)
【文献】特開2017-033820(JP,A)
【文献】特開2017-216207(JP,A)
【文献】特開2017-144597(JP,A)
【文献】特開2017-045737(JP,A)
【文献】特開2003-011275(JP,A)
【文献】特許第4553966(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記電池素子を密封する包装材料との間に介在されるタブリード用フィルムであって、
前記タブリード用フィルムは、前記金属端子と接触する接着層(A)と、絶縁層(B)とを有し、
前記接着層(A)は、
プロピレン成分が50mol%以上である酸変性ポリプロピレン系樹脂(Y1)を
50重量%以上含み、
前記絶縁層(B)は、
下記構造式(1)に示す分岐構造を備える長鎖分岐構造を有する
、プロピレン成分が50mol%以上であるポリプロピレン系樹脂(X1)
、及び
下記構造式(1)に示す分岐構造の長鎖分岐構造を有さない
プロピレン成分が50mol%以上であるポリプロピレン系樹脂(X2)の混合樹脂を
50重量%以上含むことを特徴とするタブリード用フィルム。
【化1】
(Ca、Cb、Ccは、分岐炭素に隣接するメチレン炭素を示し、Cbrは、分岐鎖の根元のメチン炭素を示し、P1、P2、P3は、プロピレン系重合体残基を示す。)
【請求項2】
前記長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)は、プロピレン単独重合体であることを特徴とする請求項1記載のタブリード用フィルム。
【請求項3】
前記長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(X2)として、ブロックポリプロピレン及びホモポリプロピレンから選ばれる1種を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のタブリード用フィルム。
【請求項4】
前記絶縁層(B)における
前記長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)の構成比率は、3~45重量%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のタブリード用フィルム。
【請求項5】
前記タブリード用フィルムは、前記絶縁層(B)における前記接着層(A)とは反対側の面に、前記包装材料と接触する接着層(C)を有し、前記接着層(C)は
、プロピレン成分が50mol%以上である酸変性ポリプロピレン系樹脂(Y2)及び/又は、
前記構造式(1)に示す分岐構造の長鎖分岐構造を有さない
、プロピレン成分が50mol%以上であるポリプロピレン系樹脂(X3)を
50重量%以上含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載のタブリード用フィルム。
【請求項6】
前記長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(X3)として、エチレン含有量が0.1~10重量%のエチレン-プロピレンランダムコポリマーを含むことを特徴とする請求項5記載のタブリード用フィルム。
【請求項7】
金属端子の少なくとも一方の表面に、請求項1乃至6のいずれか記載のタブリード用フィルムが熱融着されたタブリードであって、前記金属端子の表面と前記タブリード用フィルムの前記接着層(A)とを熱融着したことを特徴とするタブリード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池素子の電極に電気的に接続された金属端子と、電池素子を密封する包装材料との間に介在されるタブリード用フィルムに関する。また該タブリード用フィルムを用いたタブリードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器の小型化や自然発電エネルギーの有効活用の要求が増しており、より高い電圧が得られ、エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池(蓄電デバイスの一種)の研究開発が行われている。
【0003】
上記リチウムイオン二次電池に用いられる包装材料として、従来は金属製の缶が多く用いられてきたが、適用する製品の薄型化や多様化等の要求に対し、製造コストが低いという理由から金属層(例えば、アルミニウム箔)と樹脂フィルムとを積層した積層体を袋状にした包装材料が多く用いられるようになってきている。
【0004】
上記包装材料の内部に電池素子を収容して密封したラミネート型リチウムイオン二次電池には、タブリードと呼ばれる電流取り出し端子が備えられている。タブリードは、電池素子の負極または正極に接続され、包装材料の外側に延在する金属端子と、金属端子の一部の外周面をそれぞれ覆うタブリード用フィルム(「タブシーラント」と呼ばれることもある)と、を有する。
【0005】
タブリード用フィルムには、(1)包装材料の内側に充填された電解液の液漏れ等を防ぐために包装材料及び金属端子の両方に対して良好な密着性(ヒートシール性)を示すこと、(2)金属端子と包装材料における金属層との短絡を防ぐために絶縁性に優れることなどが求められ、これらの要求性能を満たすために近年では性質の異なる樹脂を組み合わせて多層構成としたものが知られている。
【0006】
例えば、特許文献1には、リード線及び外装体のシーラント層とのヒートシール性に優れるとともに、リード線用フィルムがヒートシールの熱と圧力によって加圧部の領域の外に押出され、外装体の金属層とリード線とが接触し、ショートすることを防ぐ為、高流動性ポリプロピレン層と、低流動性ポリプロピレン層と、高流動性酸変性ポリプロピレン層とをこの順に備えてなる3層構成のリード線用フィルムが記載されている。
【0007】
また、タブリード用フィルムは、
図3に示すようにタブリード21において金属端子22の面上からはみ出したタブリード用フィルム23のみで構成されるはみ出し部Lが形成される。はみ出し部Lは、タブリード21と包装材料との密着性を高める役割を果たすものであるが、金属端子22にタブリード用フィルム23を熱融着する際、或いはタブリード21と電池素子を収容した包装材料とを熱融着する際の加熱・冷却条件によっては、うねり・たわみが生じてしまったり、冷却固化するまでの間に、はみ出し部Lが自重により垂れて変形してしまうという問題がある。はみ出し部Lが垂れて(変形したまま固化)しまうと、ハンドリング性が悪くなるほか、搬送時に設備治具等に引っ掛かり裂けてしまうことや、タブリード用フィルム23の肩部(はみ出し部の角部)を用いてタブリード21の位置決めを行う際に、位置決め精度が低下し、場合によってはセンサーが反応しなくなるといった問題がある。
【0008】
そこで、特許文献2では、はみ出し部の変形を抑制するために動的粘弾性測定における120℃での引張貯蔵弾性率が10~1000MPaである端子用樹脂フィルムとすることが記載され、端子用樹脂フィルムの少なくとも1層をブロックポリプロピレン又はホモポリプロピレンから選ばれる1種を含む層とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-7268
【文献】特開2016-91939
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載のように、動的粘弾性測定における120℃での引張貯蔵弾性率を10~1000MPaとした上記構成のタブリード用フィルムであっても、タブリード用フィルムを金属端子に熱融着する際、或いはタブリードと電池素子を収容した包装材料とを熱融着する際の加熱・冷却条件によっては、はみ出し部の変形を抑制することが不十分となることがあった。
【0011】
本発明はこのような問題に鑑みなされたものであり、タブリード用フィルムを金属端子に熱融着する際、或いはタブリードと電池素子を収容した包装材料とを熱融着する際のはみ出し部の変形を抑制することができるタブリード用フィルム、及びこれを用いたタブリードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは 、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、電池素子の電極に電気的に接続された金属端子と、電池素子を密封する包装材料との間に介在されるタブリード用フィルムに、一般的なポリプロピレン系樹脂よりも溶融張力が高い長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂を配合することにより、タブリード用フィルムを金属端子に熱融着する際、或いはタブリードと電池素子を収容した包装材料とを熱融着する際のはみ出し部の変形が抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明によれば、
(1)電池素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記電池素子を密封する包装材料との間に介在されるタブリード用フィルムであって、前記タブリード用フィルムは、前記金属端子と接触する接着層(A)と、絶縁層(B)とを有し、前記接着層(A)は酸変性ポリプロピレン系樹脂(Y1)を主成分として含み、前記絶縁層(B)は長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)及び長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(X2)の混合樹脂を主成分として含むことを特徴とするタブリード用フィルムが提供され、
(2)前記長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)は、プロピレン単独重合体であることを特徴とする(1)記載のタブリード用フィルムが提供され、
(3)前記長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(X2)として、ブロックポリプロピレン又はホモポリプロピレンから選ばれる1種を含むことを特徴とする(1)又は(2)記載のタブリード用フィルムが提供され、
(4)前記絶縁層(B)における長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)の構成比率は、3~45重量%であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか記載のタブリード用フィルムが提供され、
(5)前記タブリード用フィルムは、前記絶縁層(B)における前記接着層(A)とは反対側の面に、前記包装材料と接触する接着層(C)を有し、前記接着層(C)は酸変性ポリプロピレン系樹脂(Y2)及び/又は長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(X3)を主成分として含むことを特徴とする(1)乃至(4)のいずれか記載のタブリード用フィルムが提供され、
(6)前記長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(X3)として、エチレン含有量が0.1~10重量%のエチレン-プロピレンランダムコポリマーを含むことを特徴とする(5)記載のタブリード用フィルムが提供され、
(7)金属端子の少なくとも一方の表面に、(1)乃至(6)のいずれか記載のタブリード用フィルムが熱融着されたタブリードであって、前記金属端子の表面と前記タブリード用フィルムの前記接着層(A)とを熱融着したことを特徴とするタブリードが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタブリード用フィルムは、高溶融張力を示す長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂が配合されている為、タブリード用フィルムを金属端子に熱融着する際、或いはタブリードと電池素子を収容した包装材料とを熱融着する際のはみ出し部の変形を抑制することができる。また、本発明のタブリードは、はみ出し部の変形が抑制される為、蓄電デバイス作製時のハンドリング性や位置決め精度に優れるとともに、搬送時に設備治具等に引っ掛かり裂けてしまうといったトラブルを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態1に係るタブリード用フィルムの構造を模式的に示す拡大断面図である。
【
図2】本発明の実施形態2に係るタブリード用フィルムの構造を模式的に示す拡大断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るタブリードの構造を模式的に示す平面図(a)と、そのα-α断面図(b)である。
【
図4】形状安定性に関する評価方法を説明するための平図面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲において、種々の形態をとることができる。
【0017】
[タブリード用フィルム(実施形態1)]
図1は本発明の実施形態1に係るタブリード用フィルムの構造を模式的に示す拡大断面図である。
図1に示すように、タブリード用フィルム1は、金属端子と接触する接着層(A)2、絶縁層(B)3とを有する。なお、本発明の目的を達成しうる範囲で各層の間に他の層を設けることも可能である。
【0018】
[接着層(A)]
接着層(A)は、後述するタブリードにおいて金属端子と接触する層であり、金属接着性に優れる酸変性ポリプロピレン系樹脂(Y1)を主成分とすることを特徴とする。ここで、本発明において、「主成分とする」とは、層を構成する成分のうち、構成比率が50重量%以上であることを意味するものであり、好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上であり、特に好ましくは95重量%以上である。また、本発明におけるポリプロピレン系樹脂は、プロピレン成分が50mol%以上である重合体である。
【0019】
本発明に用いられる酸変性ポリプロピレン系樹脂(Y1)は、不飽和カルボン酸又はその無水物でグラフト変性されたポリプロピレン系樹脂である。酸変性されるポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、プロピレンとエチレンとの共重合体であるエチレン-プロピレンランダムコポリマー、プロピレンと1-ブテンとの共重合体である1-ブテン-プロピレンランダムコポリマー、プロピレンとエチレンと1-ブテンとの共重合体であるエチレン-ブテン-プロピレンランダムターポリマー等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、金属端子との接着性に優れるとともに、比較的低温で金属端子と接着できることから、エチレン-プロピレンランダムコポリマーが好ましい。酸変性に使用される不飽和カルボン酸又はその無水物としては、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0020】
エチレン-プロピレンランダムコポリマーにおいて、エチレン含有量は0.1~10重量%であることが好ましく、1~7重量%であることがより好ましく、2~5重量%であることがさらに好ましい。エチレン含有量が上記範囲であると、エチレンを共重合させることによる融点低下効果が十分に得られ、タブリード用フィルムを金属端子に低温融着した場合の密着性が向上する。また、エチレン含有量が上記範囲であれば、不飽和カルボン酸又はその無水物による変性度の高いエチレン-プロピレンランダムコポリマーを得ることができる為、金属端子との密着性に優れる層とすることができる。
【0021】
本発明に用いられる酸変性ポリプロピレン系樹脂(Y1)のメルトフローレート(MFR:溶融流量)は、金属端子端部への樹脂の回り込みや充填性を考慮すると、3.5~30.0g/10minであることが好ましく、4.0~15.0g/minであることがより好ましく、5.0~10g/minであることがさらに好ましい。なお、本発明におけるMFRはJIS-K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重にて測定された値をいう。
【0022】
本発明に用いられる酸変性ポリプロピレン系樹脂(Y1)の融点は、120~160℃であることが好ましく、120~145℃であることがより好ましく、125~135℃であることがさらに好ましい。融点が上記範囲であると、タブリード用フィルムを金属端子に低温融着した場合の密着性が向上する。なお、本発明における融点はJIS-K7121に準拠して測定された値をいう。
【0023】
なお、接着層(A)は、酸変性ポリプロピレン系樹脂(Y1)を主成分として含んでいれば、本発明の目的を達成しうる範囲で他の熱可塑性樹脂や充填剤等を含んでいても良い。
【0024】
[絶縁層(B)]
絶縁層(B)は、タブリードと電池素子を収容した包装材料とを熱融着する際の熱や圧力によって包装材料における金属層と金属端子とが短絡しないよう絶縁性を担保するとともに、タブリード用フィルムを金属端子に熱融着する際、或いはタブリードと電池素子を収容した包装材料とを熱融着する際の形状安定性(はみ出し部の変形を抑制)を向上させる層であり、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)及び長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(X2)の混合樹脂を主成分として含むことを特徴とする。
【0025】
本発明に用いられる長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)は、高い溶融張力により、はみ出し部の変形を抑制するために必要な成分であり、下記構造式(1)に示すような分岐構造を備えた長鎖分岐構造を有するものでなくてはならない。本発明における長鎖分岐構造とは、高い溶融張力を発現するために主鎖炭素数が数十以上、分子量では数百以上からなる分子鎖による分岐構造を言い、1-ブテンなどのα-オレフィンと共重合を行うことにより形成される短鎖分岐構造とは区別される。なお、下記構造式(1)において、Ca、Cb、Ccは、分岐炭素に隣接するメチレン炭素を示し、Cbrは、分岐鎖の根元のメチン炭素を示し、P1、P2、P3は、プロピレン系重合体残基を示す。P1、P2、P3は、それ自体の中に、下記構造式(1)に記載されたCbrとは、別の分岐メチン炭素(Cbr)を含有することもあり得る。
【0026】
【0027】
本発明に用いられる長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)は、プロピレン単独重合体であっても、プロピレン共重合体であってもよい。プロピレン共重合体である場合、コモノマーは、エチレン及び炭素数4~10のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンであり、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)中のコモノマーの含有量は3重量%以下であることが好ましい。長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)は、プロピレン単独重合体であるほうが、耐熱性や剛性が高く好ましい。また、プロピレン単独重合体であるほうが、プロピレン共重合体よりも相対的に溶融張力が高く、少量でその効果を発揮する。
【0028】
本発明に用いられる長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)は、溶融張力(MT)とメルトフローレート(MFR)が下記式(1)を満たすものである。溶融張力とメルトフローレートが下記式(1)を満たす長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)は、長鎖分岐構造を有さない一般的なポリプロピレンに比べて溶融張力が高く、熱融着の際の熱によるはみ出し部の変形を効果的に抑制し得る。
式(1):log(MT)≧-0.9×log(MFR)+0.7
[式(1)中、MT(単位:g)は、キャピログラフを使用し、温度230℃に加熱した直径9.6mmのシリンダーに樹脂を入れ、押し込み速度20mm/分で、溶融樹脂を直径2.0mm、長さ40mmのオリフィスから押し出された樹脂を、速度4.0m/分(但し、MTが高すぎて樹脂が破断してしまう場合には、引き取り速度下げ、引き取りのできる最高の速度で測定する。)で引き取った時にプーリーに検出される張力であり、MFR(単位:g/10min)は、JIS-K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定されたメルトフローレートである。]
【0029】
また、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)は、溶融張力及びメルトフローレートが下記式(2)を満たすことが好ましく、下記式(3)を満たすことがより好ましい。
式(2):log(MT)≧-0.9×log(MFR)+0.9
式(3):log(MT)≧-0.9×log(MFR)+1.1
【0030】
本発明に用いられる長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)の溶融張力(MT)は、上述した絶縁性の確保、形状安定性の向上の観点から、2g以上であることが好ましく、4g以上であることが好ましく、10g以上であることがより好ましく、15g以上であることが特に好ましい。溶融張力の上限は特に制限するものではないが、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)として、30g程度のものまで入手可能であり、これが本発明における長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)の溶融張力の上限となる。
【0031】
本発明に用いられる長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)のMFRは、上述した絶縁性の確保、形状安定性の向上の観点から、0.5~10.0g/10minであることが好ましく、0.5~7.0g/10minであることがより好ましく、0.5~5.0g/10minであることがさらに好ましく、1.0~3.5g/10minであることが特に好ましい。また、MFRが上記範囲の長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)は、溶融張力が高く、はみ出し部の変形を効果的に抑制することができる。
【0032】
本発明に用いられる長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)の融点は、140~165℃であることが好ましく、145~160℃であることがより好ましく、150~160℃であることがさらに好ましい。融点が上記範囲であれば、はみ出し部の変形を効果的に抑制することができるとともに、絶縁性を向上させることができる。
【0033】
本発明に用いられる長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(X2)は、長鎖分岐構造を有さないものであれば、その種類は特に制限されるものではなく、長鎖分岐構造を有さない直鎖状のホモポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィンランダムコポリマー、ブロックポリプロピレン等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。α-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。これらの中でも、融点が比較的高いことからホモポリプロピレン及びブロックポリプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0034】
本発明においてブロックポリプロピレンは、ホモポリプロピレン中にポリエチレンやエチレン-プロピレンゴム(EPR)等が分散した状態のものを意味する。ブロックポリプロピレンは、ホモポリプロピレン中にEPR及びポリエチレンが島状に分散した構成(海島構造)を有している。ブロックポリプロピレンにおいて、エチレン含有量は、0.1~10重量%であることが好ましく、1~7重量%であることが好ましく、2~5重量%であることがより好ましい。エチレン含有量が上記範囲のブロックポリプロピレンは、はみ出し部の変形が抑制しやすくなるとともに、タブリード用フィルムに耐衝撃性を付与することができる。
【0035】
本発明に用いられる長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(X2)のMFRは、上述した絶縁性の確保、形状安定性の向上の観点から、0.5~10.0g/10minであることが好ましく、0.5~7.0g/10minであることがより好ましく、0.5~5.0g/10minであることがさらに好ましく、1.0~3.5g/10minであることが特に好ましい。
【0036】
本発明に用いられる長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(X2)の融点は、135~165℃であることが好ましく、145~165℃であることがより好ましく、155~165℃であることがさらに好ましい。融点が上記範囲であれば、はみ出し部の変形を効果的に抑制することができるとともに、絶縁性を向上させることができる。
【0037】
長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)と長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(X2)のMFRが同程度である場合、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)の溶融張力と、長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(X2)の溶融張力とを比べると、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)の溶融張力の方が遥かに高く、絶縁層(B)に少量でも配合されていればその効果を発揮する。絶縁層(B)における長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)の構成比率は、特に制限するものではないが、例えば、0.1~99重量%であることが好ましく、1~50重量%であることがより好ましく、3~45重量%であることがさらに好ましく、3~35重量%であることが特に好ましく、5~25重量%であることが最も好ましい。
【0038】
絶縁層(B)は、タブリード用フィルムに電解液に起因する酸をトラップさせる機能を付与することを目的にとして、フッ化水素と反応する無機充填剤を含んでいても良い。フッ化水素と反応する無機充填剤としては、特に制限するものではないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩が挙げられる。絶縁層(B)がフッ化水素と反応する無機充填剤を含む場合、絶縁層(B)における構成比率は、特に制限するものではないが、例えば、0.1~50重量%であることが好ましく、10~45重量%であることがより好ましく、20~45重量%であることがさらに好ましく、25~40重量%であることが特に好ましい。
【0039】
なお、絶縁層(B)は、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)及び長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(X2)の混合樹脂を主成分として含んでいれば、本発明の目的を達成しうる範囲で他の熱可塑性樹脂や上述した酸変性ポリプロピレン系樹脂(Y1)等を含んでいても良い。
【0040】
タブリード用フィルムの厚みは、リチウムイオン二次電池等の大きさなどを考慮して適宜設計すれば良く、特に制限するものではなないが、例えば、10~500μmであることが好ましく、30~200μmであることがより好ましく、50~180μnであることがさらに好ましい。
【0041】
タブリード用フィルムの各層の厚み構成比は、特に制限するものではないが、例えば、1:4~4:1程度が好ましい。各層の厚み構成比が上記範囲であれば、接着層(A)が十分な厚みを有する為、金属端子端部への樹脂の回り込みや充填性に優れる。また、絶縁層(B)が十分な厚みを有する為、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)の配合量が相対的に多くなり、はみ出し部の変形を効果的に抑制することができるとともに、絶縁性を向上させることができる。
【0042】
本発明のタブリード用フィルムを構成する各層には本発明の目的を損なわない範囲において、通常、熱可塑性樹脂に使用する公知の酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、金属不活性化剤、可塑剤、充填剤、滑剤、アンチブロッキング剤、着色剤等の添加剤を配合することができる。
【0043】
[タブリード用フィルム(実施形態2)]
図2は本発明の実施形態2に係るタブリード用フィルムの構造を模式的に示す拡大断面図である。本発明のタブリード用フィルムは、上述したように、金属端子と接触する接着層(A)、絶縁層(B)とを有するものであるが、絶縁層(B)における接着層(A)とは反対側の面に包装材料と接触する接着層(C)を有していても良い。具体的には、
図2に示すように、タブリード用フィルム11は、金属端子と接触する接着層(A)12、絶縁層(B)13、包装材料と接触する接着層(C)14をこの順に有してなる。なお、本発明の目的を達成しうる範囲で各層の間に他の層を設けることも可能である。
【0044】
接着層(C)は、後述するタブリードにおいて、最表層(金属端子と接着しない表面層)となる層であり、最終的に蓄電デバイスにおける包装材料のラミネートフィルムと熱融着される層である。接着層(C)は、酸変性ポリプロピレン系樹脂(Y2)及び/又は長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(X3)を主成分とする。なお、接着層(C)の構成は、接着層(A)と同様の構成としても良い。
【0045】
本発明に用いられる酸変性ポリプロピレン系樹脂(Y2)は、不飽和カルボン酸又はその無水物でグラフト変性されたポリプロピレン系樹脂であり、酸変性ポリプロピレン系樹脂(Y1)にて例示したものと同様の樹脂を使用することができる。
【0046】
本発明に用いられる長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(X3)は、長鎖分岐構造を有さないものであれば、その種類は特に制限されるものではなく、長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(X2)にて例示したものと同様の樹脂を使用することができる。
【0047】
本発明に用いられる長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(X3)は、包装材料のラミネートフィルム(或いはシーラントフィルム)との接着性の観点から、プロピレンとエチレンとの共重合体であるエチレン-プロピレンランダムコポリマーを含むことが好ましい。エチレン-プロピレンランダムコポリマーにおいて、エチレン含有量は0.1~10重量%であることが好ましく、1~7重量%であることがより好ましく、2~5重量%であることがさらに好ましい。エチレン含有量が上記範囲であると、エチレンを共重合させることによる融点低下効果が十分に得られ、タブリード用フィルムを包装材料に低温融着した場合の密着性が向上する。
【0048】
本発明に用いられる酸変性ポリプロピレン系樹脂(Y2)及び/又は長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(X3)のMFRは、包装材料とのヒートシール性等を考慮すると、3.5~30.0g/10minであることが好ましく、4.0~15.0g/minであることがより好ましく、5.0~10.0g/minであることがさらに好ましい。
【0049】
本発明に用いられる酸変性ポリプロピレン系樹脂(Y2)及び/又は長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X3)の融点は、120~160℃であることが好ましく、120~145℃であることがより好ましく、125℃~140℃であることがさらに好ましい。融点が上記範囲であると、タブリード用フィルムを包装材料に低温融着した場合の密着性が向上する。
【0050】
なお、接着層(C)は、酸変性ポリプロピレン系樹脂(Y2)及び/又は長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂(X3)を主成分として含んでいれば、本発明の目的を達成しうる範囲で他の熱可塑性樹脂を含んでいても良い。
【0051】
タブリード用フィルムの各層の厚み比は、特に制限するものではないが、例えば、接着層(A)の厚みをta、絶縁層(B)の厚みをtb、接着層(C)の厚みをtcとしたとき、下記式(4)及び(5)を満たすことが好ましい。
式(4): ta≧tc
式(5): ta:tb:tc=25~75:20~65:5~40
タブリード用フィルムの各層の厚み比が上記式(4)及び(5)を満たせば、接着層(A)が十分な厚みを有する為、金属端子端部への樹脂の回り込みや充填性に優れるとともに、金属端子の角部において接着層(A)が途切れ、金属端子の角部が絶縁層(B)に達して金属端子とタブリード用フィルムとの接着力が低下することを抑制することができる。また、絶縁層(B)が十分な厚みを有すれば、タブリード用フィルムにおける長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)の配合量が相対的に多くなる為、はみ出し部の変形を効果的に抑制することができるとともに、絶縁性を向上させることができる。
【0052】
[タブリード用フィルムの製造方法]
本発明のタブリード用フィルムの製造方法は、従来公知の方法を採用することができ、特に制限するものではないが、例えば、上述した接着層(A)を形成する樹脂と、絶縁層(B)を形成する樹脂とを別々の押出機に供給し、1つのダイスから押出すインフレーション共押出法やTダイ共押出法等により多層フィルムを押出す方法が挙げられる。なお、3層構成の場合も同様の方法により製造することができる。
【0053】
[タブリード]
図3は本発明の実施形態に係るタブリードの構造を模式的に示す平面図(a)と、そのα-α断面図(b)である。
図3に示すように、タブリード21は、金属端子22と、金属端子の一部の外周面をそれぞれ覆うタブリード用フィルム23とを有してなる。このときタブリード用フィルムは、接着層(A)が金属端子の表面と熱融着し、絶縁層(B)、或いは接着層(C)が最表面となっている(図示しない)。
【0054】
タブリード21は、金属端子22の面上からはみ出したタブリード用フィルム23のみで構成されるはみ出し部Lを有する。はみ出し部Lの幅は、タブリードと包装材料との密着性を考慮して適宜設計すれば良く、特に制限するものではないが、1mm以上であっても良い。はみ出し部Lの幅が1mm以上であると、はみ出し部Lが垂れにより変形しやすいが、本発明によれば、はみ出し部Lの幅が1mm以上であっても垂れの発生を抑制することができる。また、はみ出し部Lの幅が1mm以上であると、タブリードと包装材料との密着性が向上するという利点がある。
【0055】
本発明に用いられる金属端子は、リチウムイオン二次電池等の電極(正極又は負極)に電気的に接続される部材であり、金属材料により構成されている。金属端子を構成する金属材料としては、特に制限されず、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅等が挙げられる。なお、リチウムイオン二次電池等の正極に接続される金属端子は、通常、アルミニウム等により構成されている。また、リチウム電池等の負極に接続される金属端子は、通常、銅、ニッケル等により構成されている。
【0056】
本発明に用いられる金属端子の表面は、耐電解液性を高める観点から、化成処理が施されていることが好ましい。例えば、金属端子がアルミニウムにより形成されている場合、化成処理の具体例としては、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物等の耐酸性被膜を形成する公知の方法が挙げられる。
【0057】
本発明に用いられる金属端子の大きさは、使用されるリチウムイン二次電池等の大きさなどに応じて適宜設計すれば良い。金属端子の厚みは、特に制限するものではないが、例えば、50~400μmが好ましく、100~300μmがより好ましい。金属端子の長さ及び幅は、特に制限するものではないが、例えば、1~200mmが好ましく、3~150mmがより好ましい。
【0058】
タブリード用フィルムの厚みや各層の厚み比は上述した通りであるが、タブリード用フィルムの全層厚みは、金属端子の厚みに基づき決定されることが好ましい。例えば、タブリード用フィルムの全層厚みをTf、金属端子の厚みTmとしたとき、Tf≧0.5Tmであることが好ましく、Tf≧0.7Tmであることがより好ましく、Tf≧0.8Tmであることがさらに好ましい。タブリード用フィルムの全層厚みTfが金属端子の厚みTmの0.5倍以上であれば、金属端子端部への樹脂の回り込みに優れる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明のタブリード用フィルムについて、実施例に基づき説明する。なお、各タブリード用フィルムにおいて行った測定・評価方法は以下の通りである。
(1)溶融張力(MT)
明細書の本文中に記載した方法により測定した。
(2)形状安定性
短冊状のフィルム(25mm×230mm)の中央部(1番標点31a)、該中央部から上に85mm離れた箇所(2番標点31b)及び該中央部から下に85mm離れた箇所(3番標点31c)に標点(計3箇所)を付けたサンプル片31を、
図4に示すようステンレス製の枠32上に架け渡し、該サンプル片31の端部を枠32にそれぞれ固定(枠内端部がそれぞれ2番標点、3番標点に位置するよう)し、190℃の環境下(一般的なヒートシール温度以上)で60秒間加熱した。次いで、加熱後のサンプル片31における1番標点と2番標点との距離(1・2標点間距離)、1番標点と3番標点との距離(1・3標点間距離)を測定し、その変化率を下記式に基づき算出した。(尚、サンプル数は3とし、変化率はその平均値から算出した。)
変化率=[(加熱後のサンプル片における1・2標点間距離と1・3標点間距離の合計)-(加熱前のサンプル片における1・2標点間距離と1・3標点間距離の合計)]×100/(加熱前のサンプル片における1・2標点間距離と1・3標点間距離の合計)
形状安定性の評価基準は以下の通りである。
○:変化率が0%未満
△:変化率が0%以上~5%未満
×:変化率が5%以上
【0060】
各実施例、比較例で使用した原料は以下の通りである。
・無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa)
[融点:135℃、密度:890kg/m3]
・長鎖分岐構造を有するポリプロピレン単独重合体(PP-1)
[融点:155℃、溶融張力:17g、日本ポリプロ株式会社製「WAYMAX(登録商標)MFX6」]
・長鎖分岐構造を有するポリプロピレン共重合体(PP-2)
[融点:154℃、溶融張力:4g、日本ポリプロ株式会社製「WAYMAX(登録商標)EX4000」]
・ブロックポリプロピレン(bPP)
[融点:163℃、密度:890kg/m3、EPR成分含有量:20重量%]
・エチレン-プロピレンランダムコポリマー(rPP)
[融点:138℃、密度:900kg/m3、エチレン含有量:4.5重量%]
【0061】
[実施例1乃至7、比較例1]
表1に示す樹脂を用いて、Tダイ共押出法にて、接着層(A)/絶縁層(B)/接着層(C)のフィルムを製膜した。各フィルムの評価結果を表1に示す。
【0062】
【0063】
表1に示すように、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)を含む実施例1乃至7のタブリード用フィルムは、190℃の環境下に曝した際において、加熱前後の変化率が小さく、形状安定性に優れる結果を示した。この結果は、高溶融張力を示す長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂をタブリード用フィルムに配合することで、該タブリード用フィルムが熱を受けても、はみ出し部が自重によって垂れることを効果的に抑制することができることを示している。また、表1に示すように、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)を特定量以上含む実施例2乃至7のタブリード用フィルムは、190℃の環境下に曝した際においても、加熱後に寸法が幾何か縮む結果を示しており、このような傾向を示すタブリード用フィルムは、より効果的にはみ出し部の垂れを抑制することができる。
【0064】
一方、表1に示すように、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X1)を含まない比較例1のタブリード用フィルムは、190℃の環境下に曝した際において、加熱前後の変化率が大きく、形状安定性が悪い結果を示した。
【符号の説明】
【0065】
1、11:タブリード用フィルム
2、12:接着層(A)
3、13:絶縁層(B)
14:接着層(C)
21:タブリード
22:金属端子
23:タブリード用フィルム
L:はみ出し部
31:サンプル片
31a:1番標点
31b:2番標点
31c:3番標点
32:枠