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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】電線被覆剥ぎ取り装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/12 20060101AFI20220714BHJP
   B26B 27/00 20060101ALI20220714BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20220714BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
H02G1/12 021
B26B27/00 G
B26D3/00 603Z
H02G1/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018128326
(22)【出願日】2018-07-05
(65)【公開番号】P2019195246
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2017216044
(32)【優先日】2017-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018087442
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519157727
【氏名又は名称】マクセルイズミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 剛
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/183614(WO,A1)
【文献】特開平07-177631(JP,A)
【文献】特開平10-201036(JP,A)
【文献】特開2009-060753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 1/00-11/00
23/00-29/06
B26D 3/00-3/30
H02G 1/00-1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架設された電線を収容する収容空間を有するフレームと、前記収容空間への前記電線の入口となる切り欠きが形成されるとともに第1回転軸を軸心として前記電線の周囲を回動可能に前記フレームに内蔵される第1ギヤと、前記フレームに内蔵され前記第1ギヤを連動させる第2ギヤと、前記第1回転軸と直交する第2回転軸を軸心として第1操作棒と連結可能に配設される連結部と、前記連結部と前記フレームとに連結固定されて前記第1操作棒の回転力を前記第2ギヤに伝達するギヤボックスとを有する本体部と、
前記第1ギヤと共回り可能に連結される被覆剥ぎ部と、を備え、
前記被覆剥ぎ部は、前記収容空間に収容された状態の前記電線に当接可能に配設される受け部と、前記受け部に対して摺動可能で前記受け部と共に前記電線の外周を把持可能に配設されるスライド部と、前記スライド部に配設される被覆剥ぎ刃と、を有し、
前記受け部および前記スライド部によって把持された状態の前記電線の絶縁被覆に前記被覆剥ぎ刃の刃先が切り込む位置となる構成であ り、
前記被覆剥ぎ部は、前記受け部を前記第1回転軸に接離させる方向に移動させて前記受け部の位置を調節する第1調節部を備え、前記第1調節部は、前記スライド部の側と反対側の位置で前記受け部に連結される構成であり、
前記被覆剥ぎ部は、前記スライド部を前記第1回転軸に接離させる方向に移動させて前記スライド部の位置を調節する第2調節部を備え、前記第2調節部は、前記受け部の側と反対側の位置で前記スライド部に連結される こと
を特徴とする電線被覆剥ぎ取り装置。
【請求項2】
前記被覆剥ぎ部は、前記スライド部と前記受け部とを接離可能に連結する中空の支持部と、前記支持部に形成されたザグリ穴に配設されて前記スライド部を前記受け部から離す方向に付勢する圧縮ばねと、前記支持部および前記圧縮ばねを挿通して前記第1調節部と前記第2調節部とを連結する連結ボルトと、を備えること
を特徴とする請求項1に記載の電線被覆剥ぎ取り装置。
【請求項3】
前記受け部は、前記スライド部を摺動させるプレート部と、前記スライド部の進行方向が前記受け部に近づく方向と逆方向の場合に規制する第2ラチェットと、外部から操作可能に前記第2ラチェットに接続される操作レバーと、を備えること
を特徴とする請求項1または2に記載の電線被覆剥ぎ取り装置。
【請求項4】
前記第2調節部は、前記第1回転軸と直交する第3回転軸を軸心として回動可能に、第2操作棒と係止可能に配設される第1フックを備え、
前記第2操作棒は、伝達トルクの上限を制限するトルクリミッタを備え、
前記トルクリミッタによって前記被覆剥ぎ刃の前記刃先が切り込む切り込み量が調節可能な構成であること
を特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電線被覆剥ぎ取り装置。
【請求項5】
前記第1フックは、前記第3回転軸の軸上に、前記第2操作棒の先端部の第2磁石と吸着し合う第1磁石が配設されていること
を特徴とする請求項4に記載の電線被覆剥ぎ取り装置。
【請求項6】
前記本体部は、前記第2ギヤの両側の位置に配設されて前記第2ギヤと噛合する2つの第3ギヤを備え、
前記第3ギヤの両方もしくはいずれか一方が前記第1ギヤと噛合すること
を特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の電線被覆剥ぎ取り装置。
【請求項7】
前記本体部は、前記フレーム内に配設されて前記第1ギヤの回転方向が前記被覆剥ぎ刃の進行方向と逆方向の場合に前記第1ギヤの回転を規制する第1ラチェットを備えること
を特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の電線被覆剥ぎ取り装置。
【請求項8】
前記本体部は、前記第1ギヤに連結固定されて前記フレームに沿って回転する保持部を備え、
前記被覆剥ぎ部が前記保持部に取り付けられること
を特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の電線被覆剥ぎ取り装置。
【請求項9】
前記スライド部は、前記電線の外周と接する押え板を備え、前記押え板によって前記被覆剥ぎ刃の前記刃先が切り込む位置を調節する構成であること
を特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の電線被覆剥ぎ取り装置。
【請求項10】
前記受け部は、前記電線の外周に当接可能なV溝形状の把持面が形成されているとともに、
前記把持面に所定間隔で突出して配設され、前記電線の前記絶縁被覆を前記被覆剥ぎ刃の前記刃先の側に送り出す送り部を備えること
を特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の電線被覆剥ぎ取り装置。
【請求項11】
前記被覆剥ぎ部は、前記被覆剥ぎ刃の前記刃先が切り込まれて剥ぎ取られた状態の前記絶縁被覆が収納される籠部を備え、
前記籠部は、開口を前記被覆剥ぎ刃の前記刃先の側に向けた位置で前記スライド部に配設されること
を特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の電線被覆剥ぎ取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架設電線の絶縁被覆を剥ぎ取る電線被覆剥ぎ取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
架設電線は地上よりも数メートル以上高い位置で架空配線されている。配電のため分岐接続する際は、工事作業者は、絶縁性の操作棒を用いて電線被覆剥ぎ取り装置を操作し、活線状態で架設電線の絶縁被覆を所定範囲で剥ぎ取る作業を行う。
【0003】
従来、架設電線の外径規格に各々対応した複数の被覆剥ぎ取り具を予め準備しておき、架設電線の外径規格や断面積規格に応じて前記被覆剥ぎ取り具を交換する構成の電線被覆剥ぎ取り装置が知られている(特許文献1:特開2009-060753号公報、特許文献2:特開2008-136299号公報)。また、電線被覆剥ぎ取り装置を下方の作業者が操作し、把持部と先端部とが絶縁された絶縁性の操作棒(ドライブフックと称される)が知られている(特許文献3:特開2008-253059号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-060753号公報
【文献】特開2008-136299号公報
【文献】特開2008-253059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
架設電線は、屋外の現場にて架設電線の外径が判明する場合も少なからずある。このため、従来の電線被覆剥ぎ取り装置の場合、工事作業者は、架設電線の外径規格に各々対応した複数の被覆剥ぎ取り具(被覆剥ぎ部)と回転駆動具(本体部)とを一組で携行する必要がある。一方、現場で被覆剥ぎ取り具を都度交換しなければならず、被覆剥ぎ取り具の交換の都度、架設電線の外径に合わせて被覆剥ぎ取り具の位置合わせをしなければならないため準備作業が煩雑となる等の問題があった。また、複数の被覆剥ぎ取り具と回転駆動具のセットは一纏まりの状態を維持し難く、例えば交換の際に取り外した被覆剥ぎ取り具を現場に置き忘れるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、被覆剥ぎ部が架設電線を把持可能な範囲を拡大することで前記電線の複数の外径規格に対して一つの被覆剥ぎ部で剥ぎ取り作業が可能であり、尚且つ前記電線の外径に合わせた位置合わせが簡単にできる構成の電線被覆剥ぎ取り装置を提供することを目的とする。
【0007】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
本発明に係る電線被覆剥ぎ取り装置は、架設された電線を収容する収容空間を有するフレームと、前記収容空間への前記電線の入口となる切り欠きが形成されるとともに第1回転軸を軸心として前記電線の周囲を回動可能に前記フレームに内蔵される第1ギヤと、前記フレームに内蔵され前記第1ギヤを連動させる第2ギヤと、前記第1回転軸と直交する第2回転軸を軸心として第1操作棒と連結可能に配設される連結部と、前記連結部と前記フレームとに連結固定されて前記第1操作棒の回転力を前記第2ギヤに伝達するギヤボックスとを有する本体部と、前記第1ギヤと共回り可能に連結される被覆剥ぎ部と、を備え、前記被覆剥ぎ部は、前記収容空間に収容された状態の前記電線に当接可能に配設される受け部と、前記受け部に対して摺動可能で前記受け部と共に前記電線の外周を把持可能に配設されるスライド部と、前記スライド部に配設される被覆剥ぎ刃と、を有し、前記受け部および前記スライド部によって把持された状態の前記電線の絶縁被覆に前記被覆剥ぎ刃の刃先が切り込む位置となる構成であり、前記被覆剥ぎ部は、前記受け部を前記第1回転軸に接離させる方向に移動させて前記受け部の位置を調節する第1調節部を備え、前記第1調節部は、前記スライド部の側と反対側の位置で前記受け部に連結される構成であり、前記被覆剥ぎ部は、前記スライド部を前記第1回転軸に接離させる方向に移動させて前記スライド部の位置を調節する第2調節部を備え、前記第2調節部は、前記受け部の側と反対側の位置で前記スライド部に連結されることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、第1操作棒の操作によってスライド部を所定回転させるとスライド部が架設電線の下方位置となり、受け部に近づく方向にスライド部を押し上げるなどして摺動させると、受け部とスライド部とが電線を把持するとともに第1回転軸の軸心と電線の中心線とが一致して回転可能な状態となる。したがって、一つの被覆剥ぎ部によって架設電線の外径が例えば数十ミリメートルの範囲で調節可能となり、且つ、スライド部を受け部に近づく方向に押し上げてスライドさせる簡単な操作で架設電線の外径に合わせた位置合わせができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、架設電線の複数の外径規格に対して一つの被覆剥ぎ部で剥ぎ取り作業が可能となり、尚且つ前記電線の外径に合わせた位置合わせが簡単にできる構成の電線被覆剥ぎ取り装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電線被覆剥ぎ取り装置の例を示す概略の斜視図であり、正面側から見た図である。
図2】第1の実施形態に係る電線被覆剥ぎ取り装置の正面図である。
図3】第1の実施形態に係る電線被覆剥ぎ取り装置の右側面図である。
図4】第1の実施形態に係る電線被覆剥ぎ取り装置の背面図である。
図5】第1の実施形態の電線被覆剥ぎ取り装置を構成する本体部の例を示す概略の正面図である。
図6図5における内部構造を一部省略して示すVI-VI線断面図である。
図7】第1の実施形態の本体部におけるギヤの配置例を示す概略の構造図である。
図8】第1の実施形態の電線被覆剥ぎ取り装置を構成する被覆剥ぎ部の例を示す概略の正面図である。
図9図8における内部構造を一部省略して示す断面図である。
図10】第1の実施形態の電線被覆剥ぎ取り装置の使用態様の例を示す概略の図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る電線被覆剥ぎ取り装置の例を示す概略の斜視図であり、右側面側から見た図である。
図12】第2の実施形態の電線被覆剥ぎ取り装置の例を示す概略の斜視図であり、左側面側から見た図である。
図13】第2の実施形態の電線被覆剥ぎ取り装置の正面図である。
図14】第2の実施形態の電線被覆剥ぎ取り装置の使用態様の例を示す概略の図である。
図15】被覆剥ぎ刃の例を示す概略の斜視図である。
図16】第2操作棒の例を示す概略の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態は、架設電線の絶縁被覆を剥ぎ取る電線被覆剥ぎ取り装置1である。以下、単に「装置1」と称する場合がある。以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。ここでは、装置1の各部の位置関係を説明し易くするため、図中にX,Y,Zの矢印で向きを示している。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0013】
[第1の実施形態]
図1図4に示すように、第1の実施形態の電線被覆剥ぎ取り装置1は、第1ギヤ11が内蔵された本体部5と、第1ギヤ11と共回り可能に連結される被覆剥ぎ部9とを備える。フレーム2は、架設された電線E1を収容する収容空間V1を有する筐体である。第1ギヤ11は、フレーム2に内蔵されており、第1回転軸P1を軸心として回転可能に配設される。
【0014】
図5図7は、装置1を構成する本体部5を示す図である。第1ギヤ11は、中央に電線E1の外径よりも大きな貫通穴11aが形成されており、外径側に電線E1の入口となる切り欠きU1が形成されており、貫通穴11aと切り欠きU1とは連続している。第1ギヤ11は、貫通穴11aおよび切り欠きU1が形成された外歯車であり、正面視で「C形状」を呈している(図7参照)。
【0015】
本実施形態は、一例として、本体部5は、フレーム2の外側で第1ギヤ11に連結固定されて共回りする保持部6を備える。フレーム2の両側には回動可能に2つの支持板25が配設されている。支持板25は、正面視で「C形状」を呈しており、第1ギヤ11を挟み込んで連結固定されている。そして、フレーム2の正面側に隣接して保持部6が配設され、支持板25と保持部6とが連結固定されている。
【0016】
図6に示すように、本体部5は、第1回転軸P1と直交する第2回転軸P2を軸心として第1操作棒94と連結可能に配設される連結部3と、第1操作棒94の回転力を第2ギヤ12に伝達するため連結部3とフレーム2とに連結固定されるギヤボックス4とを有する。図6の例では、ギヤ32とギヤ42とが、ギヤボックス4に配設される。ギヤ32は、シャフト31に連結固定されており、ギヤ42と噛合する。ギヤ42と第2ギヤ12とは、いずれもシャフト41に連結固定されている。ギヤ32とギヤ42とは、マイタギヤである。この例によれば、ギヤ32とギヤ42とを同一部品とすることができる。なお、この例に限定されず、ギヤ32とギヤ42とを、ベベルギヤとする場合がある。第1操作棒94は、ジョイント付き操作棒であり、例えば特許文献3等に記載された従来品が適用できる。
【0017】
図7に示すように、本体部5は、第1ギヤ11と、第1ギヤ11を連動させる第2ギヤ12と、第2ギヤ12の両側の位置に配設され第2ギヤ12と噛合する2つの第3ギヤ13を備え、これらのギヤ11,12,13がフレーム2に内蔵されている。そして、これら第3ギヤ13の両方もしくはいずれか一方が第1ギヤ11と噛合する構成である。この構成によれば、貫通穴11aおよび切り欠きU1が形成された外歯車の第1ギヤ11に対して、第1操作棒94から第2ギヤ12に伝達された回転力を2つの第3ギヤ13のいずれかないしは両方を介して第1ギヤ11に確実に伝達することができる。図7の例では、第2回転軸P2の線上に第2ギヤ12の軸心が直交しており、2つの第3ギヤ13は、第2回転軸P2に対して対称な位置に配設される。この例によれば、2つの第3ギヤ13を同一部品とすることができる。なお、この例に限定されず、2つの第3ギヤ13を、第2回転軸P2に対して非対称な位置に配設する場合がある。
【0018】
本実施形態は、一例として、本体部5は、第1ラチェット51が配設されている。第1ラチェット51は、支持板25と連結固定された係止部51aと、フレーム2内で作動するアーム部51bとからなる。ここで、回転方向D1は、第1ギヤ11が正回転する方向であり、被覆剥ぎ刃81の進行方向と一致している。第1操作棒94によってシャフト31を回転方向C1に回転させると、第1ギヤ11が回転方向D1に回転する。
【0019】
第1ラチェット51は、第1ギヤ11が正回転する場合に、第1ギヤ11の回転を妨げない。一方、第1ラチェット51は、第1ギヤ11が逆回転する場合に、第1ギヤ11の逆回転を規制する構成となっている。この構成によれば、第1ギヤ11の逆回転を防止するので、架設された電線E1への本体部5の挿入時(アプローチ時)に位置決めが容易にできる。尚且つ、絶縁被覆剥ぎ取り作業終了の際に、電線E1からの本体部5の取外しが容易にできる。
【0020】
図8図9は、装置1を構成する被覆剥ぎ部9を示す図である。被覆剥ぎ部9は、電線E1の外周に当接可能に配設される受け部7と、受け部7と共に電線E1を把持可能に前記受け部と連結して配設されるスライド部8と、電線E1の絶縁被覆に切り込み可能な位置でスライド部8に配設される被覆剥ぎ刃81とを有する。図8の例では、受け部7の第1把持面7aは、電線E1の外周に沿わせるように正面視で円弧状に凹みが形成されている。また、スライド部8の第2把持面8aは、例えば窒化処理等の表面処理が施されており、絶縁被覆剥ぎ取り作業における本体部5の回転時に電線E1との摩擦力の低減を図っている。スライド部8は、電線E1の外周に食い込み可能な凸部が所定間隔で第2把持面8aに形成されている構成としてもよい。
【0021】
本実施形態は、スライド部8は、電線E1の外周と接する押え板83を備え、押え板83によって被覆剥ぎ刃81の刃先81aが切り込む位置を調節する構成である。図12の例では、押え板83は、被覆剥ぎ刃81の刃先81aと対応する位置で、被覆剥ぎ刃81の短手方向の両側となる位置に、ネジ等の固定手段で交換可能にスライド部8に取り付け固定されている。例えば厚みの薄い押え板83を取り付けることで被覆剥ぎ刃81の刃先81aの出代を大きくできる。例えば厚みの厚い押え板83を取り付けることで被覆剥ぎ刃81の刃先81aの出代を小さくできる。この構成によれば、電線E1の被覆の厚みに対応した厚みの押え板83を取り付けることで、被覆剥ぎ刃81の刃先81aの出代を調節できる。または、押え板83の高さ位置を調整可能にスライド部8に取り付けることで、同様に、被覆剥ぎ刃81の刃先81aの出代を調節できる。この場合、スライド部8の第2把持面8aは、押え板83の電線E1の外周と接する面となる。
【0022】
本実施形態は、被覆剥ぎ部9は、受け部7を第1回転軸P1に接離させる方向に移動させて受け部7の位置を調節する第1調節部21を備える。第1調節部21は、スライド部8の側と反対側の位置で受け部7に連結している。この構成によれば、受け部7の回転中心を電線E1の中心線に精度よく一致させることができる。
【0023】
第1調節部21の正面側には、ダイヤル21aが配設されている。一例として、第1調節部21にはカム機構が内蔵されており、ダイヤル21aを所定目盛に合わせると、前記目盛と対応したストロークで受け部7を前進または後退させる。また、第1調節部21には、ダイヤル21aをロックするロック部21bが配設される。この例によれば、ダイヤル21aを一回転させると受け部7を原点位置に復帰させることができる。なお、この例に限定されず、ラックアンドピニオン機構、ウオームギヤ機構、その他既知の機構とする場合がある。
【0024】
本実施形態は、被覆剥ぎ部9は、被覆剥ぎ刃81の刃先角度を調節する角度調節部23を備え、スライド部8の正面側にはダイヤル23aが配設されている。角度調節部23によって、被覆剥ぎ刃81は、受け部7およびスライド部8によって把持された電線E1の絶縁被覆に刃先81aが切り込む位置となるようにスライド部8に配設される。一例として、カム機構がスライド部8に内蔵されており、ダイヤル23aを所定目盛に合わせると、前記目盛と対応した角度で被覆剥ぎ刃81の刃先角度を調節する。ここで、ダイヤル23aをロックするロック部がスライド部8に配設されている。前記ロック部はダイヤル23aに設けることができる(不図示)。この例によれば、ダイヤル23aを一回転させると被覆剥ぎ刃81を原点位置に復帰させることができる。なお、この例に限定されず、ダイヤル23aと被覆剥ぎ刃81とを直結する場合や、ギヤ機構を介する場合があり、その他既知の機構とする場合がある。
【0025】
第2調節部22は、第1回転軸P1と直交する第3回転軸P3を軸心として回動可能に、フック付き操作棒と係止可能に配設される第1フック22bを備える。第2調節部22は、一例として、アイナットである。この例によれば、作業者は、先端にフックが付いたフック付き操作棒を用いて、装置1から離れた位置で第2調節部22を回転させて調整することができる。なお、第2調節部22はアイナットに限定されず、アイボルト、単純な構成のナット、その他既知の締付け機構とする場合がある。
【0026】
本実施形態では、第2調節部22は、第3回転軸P3を軸心として時計回りG1方向に回転させることでスライド部8を受け部7に接近させる構成である。この例によれば、連結ボルト92と締付け方向を逆方向として、連結ボルト92が緩まないようにできる。
【0027】
本実施形態は、被覆剥ぎ部9は、スライド部8と受け部7とを接離可能に連結する中空の支持部91が配設される。ここでは、スライド部8は円柱形状の結合部82を有し、結合部82のザグリ穴の内側面82aに、円柱状の支持部91の外周面が当接してスライド部8と受け部7とを接離可能に連結している。そして、スライド部8は、受け部7に設けられたプレート部71に沿って摺動可能に配設される.
【0028】
ここで、連結ボルト92は、支持部91および圧縮ばね93を挿通して第1調節部21と第2調節部22とを連結している。連結ボルト92には台形ねじが形成されている。圧縮ばね93は、支持部91に形成されたザグリ穴91aに配設されてスライド部8を受け部7から離す方向に付勢する。この構成によれば、装置1の電線E1への取り付け作業において、電線E1への本体部5の挿入時(アプローチ時)に被覆剥ぎ刃81が電線E1に当接することを防止できる。尚且つ、絶縁被覆剥ぎ取り作業終了の際に、電線E1からの本体部5の取外し時に、被覆剥ぎ刃81が電線E1に当接することを防止できる。
【0029】
本実施形態は、被覆剥ぎ部9は、電線E1の側と反対側の位置で受け部7に第2ラチェット52が配設されている。第2ラチェット52は、スライド部8の進行方向が受け部7に近づく方向と逆方向の場合に規制する構成である。この構成によれば、装置1の取り付け作業において、電線E1を把持する際に、スライド部8を電線E1の外周に当接させる作業を確実に進行させる。また、装置1の取り外し作業において、操作レバー52aを引き下げる簡単な操作で第2ラチェット52を解除することができるので、スライド部8を電線E1の外周から離す作業が迅速にできる。
【0030】
本実施形態は、操作レバー52aが第2ラチェット52に一体的に接続されており、スリット71aがプレート部71に形成されている。また、操作レバー52aをプレート部71から離す方向に付勢する圧縮ばね等の付勢手段52bが、プレート部71に配設されている。操作レバー52aは、先端側がスリット71aから突出している。この構成によれば、操作レバー52aによって、第2ラチェット52を外部から操作できる。
【0031】
そして、図1図6に示すように、本体部5は、フレーム2の外側で第1ギヤ11と共回り可能に連結固定される保持部6を備えており、且つ、被覆剥ぎ部9は、第1調節部21の両側が保持部6に保持される構成となっており、押え部61を引くことで被覆剥ぎ部9が保持部6に脱着可能に取り付けられる。この構成によれば、被覆剥ぎ部9の本体部5への取り付けが簡単にできる。尚且つ、被覆剥ぎ部9の本体部5からの取り外しが簡単にできるのでメンテナンス性が向上する。本構成においては、被覆剥ぎ部9が電線E1を把持するサイズの調節可能範囲を超えた規格の電線が架設される場合は、別途、電線E1を把持するサイズの調節可能範囲を変更した被覆剥ぎ部9を準備して取り付ける場合がある。また、被覆剥ぎ部9を保持部6に脱着可能に取り付けられる場合に限定されず、被覆剥ぎ部9を保持部6に固定する場合がある。
【0032】
図10は、第1の実施形態に係る電線被覆剥ぎ取り装置1の使用態様の例を示す概略の図である。本実施形態の電線被覆剥ぎ取り装置1の操作方法について、以下に説明する。
【0033】
準備作業として、ロック部21bを正回転させてロックを外し、架設された電線E1の外径規格や断面積規格に合わせて第1調節部21のダイヤル21aを回動させて受け部7の位置合わせを行い、ロック部21bを逆回転させてロックする。次に、角度調節部23のダイヤル23aのロックを外し、架設された電線E1の外径規格や断面積規格に合わせてダイヤル23aを回動させ被覆剥ぎ刃81の刃先角度を調節して、角度調節部23のダイヤル23aをロックする。このようにして、準備作業が完了する。この例によれば、ダイヤル21aおよびダイヤル23aが、いずれも装置1の正面側に配設されているので、架設された電線E1の外径規格や断面積規格に合わせた調整が容易にできる(図8参照)。
【0034】
準備作業の後、第1操作棒94(ジョイント付き操作棒)を装置1の連結部3に連結し、被覆剥ぎ部9をスライド部8が上側位置で受け部7が下側位置の状態として、架設された電線E1に、本体部5のフレーム2を挿入する(図10参照)。
【0035】
次に、第1操作棒94の回転力を第1ギヤ11に伝達させて、被覆剥ぎ部9を回転方向D1の方向に半回転させて、スライド部8が下側位置で受け部7が上側位置の状態とする。そして、フック付き操作棒によってスライド部8を押し上げて電線E1に近接させて、フック付き操作棒によって第2調節部22を電線E1の締まる側に回転させてスライド部8を受け部7にさらに近づけて、スライド部8と受け部7とで電線E1を把持する状態となるまで電線E1を締め付ける。スライド部8と受け部7とで電線E1を把持する状態のとき、電線E1の絶縁被覆に刃先81aが切り込む位置となる。
【0036】
そして、第1操作棒94の回転力を第1ギヤ11に伝達させて、被覆剥ぎ刃81が電線E1の絶縁被覆に切り込みを入れながら被覆剥ぎ部9を回転方向D1の方向に1回転以上回転させて、電線E1の絶縁被覆を剥ぎ取る。
【0037】
装置1によって電線E1の絶縁被覆を所定範囲で剥ぎ取って、第1操作棒94の回転力によってスライド部8が下側位置で受け部7が上側位置の状態とし、フック付き操作棒によって第2調節部22を電線E1の緩む側に2~3回転させてスライド部8を受け部7から少し離した状態として、被覆剥ぎ部9を回転方向D1の方向に1回転させて電線E1の絶縁被覆を切除する。
【0038】
装置1によって電線E1の絶縁被覆を剥ぎ取った後、第2調節部22を電線E1の緩む側に2~3回転させてスライド部8を受け部7から離した状態として、フック付き操作棒によって操作レバー52aを下に引いて第2ラチェット52を解除し、スライド部8を受け部7からさらに離した状態とし、架設された電線E1から本体部5を取り外す。このようにして、電線E1の絶縁被覆剥ぎ取り作業が完了する。
【0039】
本実施形態によれば、第1操作棒94(ジョイント付き操作棒)の操作によってスライド部8を所定回転させるとスライド部8が架設電線E1の下方位置となり、受け部7に近づく方向にスライド部8を押し上げるなどして摺動させて、第2調節部22によって受け部7とスライド部8とが電線E1を把持するとともに第1回転軸P1の軸心と電線E1の中心線とが一致して回転可能な状態となる。したがって、一つの被覆剥ぎ部9によって架設電線E1の外径が数十ミリメートルの範囲で調節可能となり、且つ、フック付き操作棒によってスライド部8を受け部7に近づく方向に押し上げてスライドさせる簡単な操作で架設電線E1の外径に合わせた位置合わせができる。
【0040】
[第2の実施形態]
続いて、本発明の第2の実施形態の電線被覆剥ぎ取り装置1について説明する。本実施形態は、本体部5および被覆剥ぎ部9の基本的な構成、及び、電線E1の外径に合わせた位置合わせ、並びに、被覆剥ぎ部9を回転方向D1の方向に回転させて電線E1の絶縁被覆を剥ぎ取る基本的な動作については、前述の第1の実施形態と同様である。
【0041】
第2の実施形態は、特に、受け部7に、電線E1の外周に当接可能なV溝形状の第1把持面7aが形成されており、第1把持面7aに所定間隔で突出して配設され、電線E1の絶縁被覆E1aを被覆剥ぎ刃81の刃先81aの側に送り出す送り部7bを備える点が、前述の第1の実施形態と相違する。また、第2の実施形態は、被覆剥ぎ刃81の刃先81aが切り込まれて剥ぎ取られた状態の絶縁被覆E1aの端部E1bを収納する籠部14を備える点が、前述の第1の実施形態と相違する。以下、これら相違点を中心に本実施形態について説明する。
【0042】
図11図14に示すように、電線被覆剥ぎ取り装置1は、受け部7の第1把持面7aが、V溝形状となっている(正面視で「V形状」を呈している)。そして、第1把持面7aの長手方向(第1回転軸P1-P1線方向)に所定間隔で送り部7bが突出して配設されている。板状の送り部7bは、正面視で、第1把持面7aのV形状と対応する「V形状」を呈している。図11に示すように、送り部7bは、第1回転軸P1-P1線に対して、奥側が手前側に比べて本体部5に近づくように所定角度で傾斜しており、本体部5および被覆剥ぎ部9が回転方向D1に回転すると、装置1が進行方向Y1に進行し、進行する際、送り部7bが、絶縁被覆E1aを被覆剥ぎ刃81の刃先81aの側に送り出す構成となっている。送り部7bは、雌ネジのネジ部の配置のように配設された送り出し機構となっている。
【0043】
図11の例では、送り部7bが所定間隔で3つ配設されている。なお、本実施形態は、上記の構成に限定されず、送り部7bは、2つ配設される場合や、4つ以上配設される場合がある。
【0044】
受け部7は、一例として、第1把持面7aを有する主要部がアルミニウムからなり、送り部7bは、鋼材やステンレス材等の硬質金属やセラミックスからなる。図11の例では、受け部7は、複数の部品が組み合わさって形成されており、組立と分解が可能な構成となっている。これによれば、送り部7bの摩耗等による交換等のメンテナンス性が向上する。また、鋼材やステンレス材等を加工する場合に比べて受け部7を加工しやすくなっている。
【0045】
本実施形態によれば、絶縁被覆E1aを所定長さに亘って剥ぎ取る際に、本体部5および被覆剥ぎ部9を回転方向D1に複数回転させる場合においても、送り部7bが、絶縁被覆E1aを刃先81aの側に送り出すので、作業者のスキルに頼らなくとも、安定した剥ぎ取り作業が可能となる。
【0046】
本実施形態は、保持部6の側で、外部から操作可能な位置に、ロック部21bを備えている。図12図13の例では、ロック部21bはカムレバーである。これにより、絶縁被覆剥ぎ取り操作時にダイヤル21aに緩みが生じることを防止できる。また、カムレバーの位置により、ロック状態が一目でわかるので、ロック忘れが防止できる。
【0047】
図11図14に示すように、装置1における被覆剥ぎ部9は、被覆剥ぎ刃81の刃先81aが切り込まれて剥ぎ取られた状態の絶縁被覆E1aの端部E1bを収納する籠部14を備えている。籠部14は、開口14aを被覆剥ぎ刃81の刃先81aの側に向けた位置でスライド部8に配設されており、籠部14の鍔部14bが、ボルトやネジ等の固定部材でスライド部8に取り付けられている。籠部14は、カップ形状を呈しており、この例では、籠部14の開口14aは、籠部14の内側の底部よりも径が大きくなっている。
【0048】
籠部14は、一例として、鋼材やステンレス材等の金属線からなるメッシュや、鋼板やステンレス板等からなるパンチングメタルや、透明または半透明の樹脂材等からなる。これによって、籠部14に収納された状態の絶縁被覆E1aの端部E1bを外部から視認できるとともに、装置1の軽量化が図られる。
【0049】
第2調節部22は、第1回転軸P1と直交する第3回転軸P3を軸心として回動可能に、第2操作棒95と係止可能に配設される第1フック22bを備える。第1フック22bは、ハーフリング形状となっており、第3回転軸P3の軸上に、第2操作棒95の先端部の第2磁石96aと吸着し合う第1磁石22aが配設されている。第2調節部22は、例えばアイナットである。この例によれば、作業者は、先端にフックが付いた第2操作棒95(ドライブフックと称される)を用いて、装置1から離れた位置で第2調節部22を回転させて調整することができる。
【0050】
図14に示すように、架設された電線E1の絶縁被覆E1aを所定長さで剥ぎ取る際に、本体部5および被覆剥ぎ部9を回転方向D1に回転させると、絶縁被覆E1aに刃先81aが切り込み、刃先81aが切り込んだ状態で、送り部7bが、絶縁被覆E1aを刃先81aの側に送り出して、電線E1の芯線E1cを露出させつつ、装置1が進行方向Y1の方向に進行し、送り部7bによって刃先81aの側に送り出された絶縁被覆E1aの端部E1bが籠部14に収納される。籠部14に収納された端部E1bは、剥ぎ取られた絶縁被覆の弾性力によって、籠部14の内周面を押しながら籠部14の内周面に沿って籠部14の底部に向かう。
【0051】
本実施形態によれば、剥ぎ取られた絶縁被覆E1aの端部E1bが、籠部14の内周面を押しながら籠部14の内周面に沿って籠部14の底部に向かうので、剥ぎ取られた絶縁被覆E1aが脱落することを防止でき、より安全な状態で、安定した剥ぎ取り作業が可能となる。
【0052】
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。例えば、上述の実施形態では、電線被覆剥ぎ取り装置1は、フレーム2の外側で第1ギヤ11と共回り可能に保持部6が連結固定される構成を説明したが、この構成に限定されない。例えば、被覆剥ぎ部9のプレート部をフレーム2の外側で第1ギヤ11と共回り可能に連結固定することが可能である。
【0053】
(被覆剥ぎ刃)
続いて、被覆剥ぎ刃81について説明する。図15は、被覆剥ぎ刃81の例を示す概略の斜視図である。被覆剥ぎ刃81は、硬質工具の1種であり、鋼材やステンレス材等からなる。被覆剥ぎ刃81は、刃先81aと本体部81bとからなり、ブロック形状の本体部81bに貫通穴81cが形成される。被覆剥ぎ刃81は、貫通穴81cにボルト等の固定部材が通され、装置1のスライド部8に固定されて使用される。
【0054】
被覆剥ぎ刃81の刃先81aは、円錐台形状を軸線方向に半分に割ったような外観形状を呈しており、軸線方向にザグリが彫り込まれて形成されている。これにより、絶縁被覆E1aに切り込みを入れながら、剥ぎ取られた絶縁被覆E1aを、刃先81aから本体部81bの後部側に送り出しやすい構造となっている。
【0055】
(第2操作棒)
続いて、第2操作棒95について説明する。図16は、第2操作棒95の例を示す概略の部分断面図である。第2操作棒95は、操作部99とトルク伝動部98と筒部97と先端部96とが、第4回転軸P4-P4線を軸心として一体的に連結された構造となっている。作業者が、例えば、片方の手で筒部97を持った状態で、もう一方の手で操作部99を回転方向C2に回転させると、トルク伝動部98を介して先端部96が同じ回転方向C2に回転する。
【0056】
トルク伝動部98は、操作部99からのトルクを第4回転軸P4の軸方向に伝達するに際し、伝達トルクの上限を制限するトルクリミッタ98aがギヤボディ98bに内蔵されている。この構成によれば、トルクリミッタ98aが第2操作棒95に配設されているので、作業者の力加減にばらつきがあったとしても、作業者によらず、一定の締付力で、装置1における第2調節部22を締め付けることができるので電線E1の絶縁被覆E1aの厚さ方向の剥ぎ取り量のばらつきをなくすことができる。つまり、第2操作棒95に配設されているトルクリミッタ98aによって被覆剥ぎ刃81の刃先81aが絶縁被覆E1aに切り込む切り込み量が調節可能な構成となっている。
【0057】
操作部99および外側筒97aは少なくとも外周部に絶縁性を有しており、先端部96と絶縁されている。操作部99は、シャフト部98fおよび軸受98eを介してトルクリミッタ98aに連結されている。トルクリミッタ98aは、軸受98eおよびシャフト部98fを介して内側筒97bに連結されている。シャフト部98fと内側筒97bとにはスプリングピン98gが嵌挿している。ギヤボディ98bは継手98cを介して外側筒97aに連結されている。そして、操作時の滑り止め用のラバー97cが外側筒97aの外周に所定範囲に亘って取り付けられている。
【0058】
先端部96は、第4回転軸P4―P4線を軸心としたシャフト部96dを備え、軸受98eおよびシャフト部98fは内側筒97bに連結されている。シャフト部98fと内側筒97bとにはスプリングピン98gが嵌挿している。先端ボディ96fは外側筒97aに連結されている。シャフト部96dには、ハーフリング形状の第2フック96bが配設されている。先端ボディ96fには、鉤形状の第3フック96cが配設されている。第2フック96bは、第4回転軸P4の軸上に、装置1における第1フック22bの第1磁石22aと吸着し合う第2磁石96aが配設されている。この構成によれば、作業者は、先端に第2フック96bおよび第2磁石96aが付いた第2操作棒95を用いて、第2磁石96aと第1磁石22aとを吸着させ合うことで、装置1から離れた位置で第2調節部22を回転させて調整することが簡便にできる。
【0059】
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。例えば、上述の例では、トルクリミッタ98aが配設された第2操作棒95の構成を説明したが、この構成に限定されない。例えば、先端部96およびトルクリミッタ98aを着脱可能なアタッチメントとして、既存の第1操作棒94の先端部に取り付けて使用することが可能である。これにより、一つの操作棒で装置1のすべての操作を行うことができ、操作棒の軽量化が図れる。
【符号の説明】
【0060】
1 電線被覆剥ぎ取り装置
2 フレーム
3 連結部
4 ギヤボックス
5 本体部
6 保持部
7 受け部
7a 第1把持面
7b 送り部
8 スライド部
8a 第2把持面
9 被覆剥ぎ部
11 第1ギヤ
12 第2ギヤ
13 第3ギヤ
14 籠部
21 第1調節部
22 第2調節部
22a 第1磁石
22b 第1フック
23 角度調節部
25 支持板
31 シャフト
32 ギヤ
41 シャフト
42 ギヤ
43 圧縮ばね
51 第1ラチェット
52 第2ラチェット
52a 操作レバー
61 押え部
71 プレート部
81 被覆剥ぎ刃
81a 刃先
82 結合部
83 押え板
91 支持部
92 連結ボルト
93 圧縮ばね
94 第1操作棒
95 第2操作棒
96 先端部
96a 第2磁石
96b 第2フック
96c 第3フック
96d シャフト
96e 軸受
97 筒部
97a 外側筒
97b 内側筒
98 トルク伝動部
98a トルクリミッタ
98b ギヤボディ
98c 継手
98d シャフト
98e 軸受
98f シャフト
99 操作部
E1 電線(架設された電線)
E1a 絶縁被覆
E1b 端部
E1c 芯線
P1 第1回転軸
P2 第2回転軸
P3 第3回転軸
P4 第4回転軸
U1 切り欠き
V1 収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16