(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】二色成形物の製造方法および二色成形物
(51)【国際特許分類】
B29C 45/16 20060101AFI20220714BHJP
B29L 11/00 20060101ALN20220714BHJP
【FI】
B29C45/16
B29L11:00
(21)【出願番号】P 2018136458
(22)【出願日】2018-07-20
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 充
(72)【発明者】
【氏名】大塚 正輝
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/111242(WO,A1)
【文献】特開2012-218331(JP,A)
【文献】特開平09-108174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84,
B29L 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートから二次成形樹脂を充填することにより、一次成形物を構成する光学素子の側面と、前記光学素子の側方から
一つの方向に突出する突出部とを前記二次成形樹脂によって埋め込み、二次成形物を成形し、
前記二次成形物の成形は、前記光学素子の光軸方向から見た平面視において、前記突出部の突出方向を前記ゲートに向けて行い、
前記一次成形物および前記二次成形物からなる二色成形物は、光学デバイスの一部品を構成し、
前記二次成形物は、
前記一次成形物が埋め込まれ、前記光学素子とともに前記光学デバイスの外観を構成する外観部と、
前記ゲートが設けられ、前記光学デバイスの他部品が接続される接続部と、
前記一次成形物と重ならない位置において、前記外観部および前記接続部を貫通して形成される貫通孔と、
を有する、
二色成形物の製造方法。
【請求項2】
前記二次成形物の成形は、平面視において、前記接続部の外周面と前記貫通孔の内周面とが接近した薄肉部を避けた位置に設けられたゲートから、前記二次成形樹脂を注入する請求項1に記載の二色成形物の製造方法。
【請求項3】
前記二次成形物の成形の前に、前記突出部に設けられた一次成形用のゲートから一次成形樹脂を充填することにより、前記一次成形物を成形する請求項1または請求項2に記載の二色成形物の製造方法。
【請求項4】
前記外観部の直径に対する前記貫通孔の直径の比は、0.3~0.5である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の二色成形物の製造方法。
【請求項5】
光学素子と、前記光学素子を保持するように前記光学素子と一体に成形され、前記光学素子に隣接する位置に貫通孔を有する二次成形物と、からなる二色成形物の製造方法において、
前記光学素子と前記光学素子の光軸に直交する
一つの方向に突出する突出部とを有する一次成形物を成形する第一の工程と、
前記一次成形物の周囲に二次成形金型のゲートから二次成形樹脂を充填して前記一次成形物と前記二次成形樹脂とが一体となった二色成形物を形成する第二の工程と、
を有し、
前記二次成形樹脂が前記二次成形金型に充填される過程として流動する際に、前記一次成形物においては前記突出部が、最初に流動する前記二次成形樹脂に接触するように、前記突出部の突出方向と前記二次成形金型のゲートとが配置されている、
二色成形物の製造方法。
【請求項6】
光学デバイスの一部品を構成し、
光学素子、および、前記光学素子の側方から前記光学素子の光軸方向に直交する
一つの方向に突出する突出部を有する一次成形物と、
前記一次成形物が埋め込まれ、前記光学素子とともに前記光学デバイスの外観を構成する外観部、
二次成形樹脂を充填するゲートが設けられ、前記光学デバイスの他部品が接続される接続部、
前記一次成形物と重ならない位置において、前記外観部および前記接続部を貫通して形成される貫通孔、
を有する二次成形物と、
を備え、
前記突出部は、突出方向が、前記光学素子の光軸方向から見た平面視において、前記ゲートが設けられた方向に向いている、
二色成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二色成形物の製造方法および二色成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡等の光学デバイスにおいて、生産性向上を図るために、一次成形物である光学素子とそれを支える二次成形物であるワク構造を二色射出成形(二色成形)によって製造する技術が知られている。このような二色成形によって製造された光学デバイスは、例えば特許文献1に示すように、光学素子の側方に突出部(タブ)が設けられており、この突出部と、光学デバイスの外観を構成する二次成形物の表面との間に薄肉部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した薄肉部では、二色成形工程において二次成形樹脂を充填した際の流動抵抗の増加や、樹脂温度の低下が発生しやすい。また最近では、機能性向上のために、光学デバイスが細径化しており、それに伴い、光学デバイスに形成される孔(他の光学部品を挿入するための孔)の内径が相対的に大きくなっている。そのため、光学デバイスの体積が相対的に小さくなり、樹脂を充填しにくくなっている。
【0005】
このような理由から、従来の二色成形物の製造方法では、二次成形工程において、一次成形物で分流した二次成形樹脂の流れが前記した薄肉部の位置で合流し、薄肉部に深いウェルドラインが形成されることにより、二色成形物の外観品質、強度および耐薬品性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、外観品質、強度および耐薬品性の低下を抑制することができる二色成形物の製造方法および二色成形物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る二色成形物の製造方法は、ゲートから二次成形樹脂を充填することにより、一次成形物を構成する光学素子の側面と、前記光学素子の側方から突出する突出部とを前記二次成形樹脂によって埋め込み、二次成形物を成形し、前記二次成形物の成形は、平面視において、前記突出部の突出方向を前記ゲートに向けて行い、前記一次成形物および前記二次成形物からなる二色成形物は、光学デバイスの一部品を構成し、前記二次成形物は、前記一次成形物が埋め込まれ、前記光学素子とともに前記光学デバイスの外観を構成する外観部と、前記ゲートが設けられ、前記光学デバイスの他部品が接続される接続部と、前記一次成形物と重ならない位置において、前記外観部および前記接続部を貫通して形成される貫通孔と、を有する。
【0008】
また、本発明に係る二色成形物の製造方法は、上記発明において、前記二次成形物の成形は、平面視において、前記接続部の外周面と前記貫通孔の内周面とが接近した薄肉部を避けた位置に設けられたゲートから、前記二次成形樹脂を注入してもよい。
【0009】
また、本発明に係る二色成形物の製造方法は、上記発明において、前記二次成形物の成形の前に、前記突出部に設けられた一次成形用のゲートから一次成形樹脂を充填することにより、前記一次成形物を成形してもよい。
【0010】
また、本発明に係る二色成形物の製造方法は、上記発明において、前記外観部の直径に対する前記貫通孔の直径の比は、0.3~0.5であってもよい。
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る二色成形物は、光学デバイスの一部品を構成し、光学素子、および、前記光学素子の光学素子の側方から突出する突出部を有する一次成形物と、前記一次成形物が埋め込まれ、前記光学素子とともに前記光学デバイスの外観を構成する外観部と、二次成形樹脂を充填するゲートが設けられ、前記光学デバイスの他部品が接続される接続部と、前記一次成形物と重ならない位置において、前記外観部および前記接続部を貫通して形成される貫通孔と、を有する二次成形物と、を備え、前記突出部は、突出方向が前記ゲートに向いている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、突出部の突出方向をゲートに向けて二次成形を行うことにより、他の部分よりも先に、突出部と二次成形物の表面との間の薄肉部に二次成形樹脂が充填される。これにより、一次成形物で分流した二次成形樹脂の流れが、薄肉部以外の領域で合流し、当該薄肉部を避けてウェルドラインが形成される。従って、外観品質、強度および耐薬品性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る二色成形物の製造方法で製造した一次成形物の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態1に係る二色成形物の製造方法で製造した二色成形物の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態1に係る二色成形物の製造方法で製造した二色成形物の一例を示す平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態1に係る二色成形物の製造方法で製造した二色成形物の一例を示す図であり、
図3のA-A線断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態2に係る二色成形物の製造方法で製造した二色成形物の一例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態2に係る二色成形物の製造方法で製造した二色成形物の一例を示す平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態3に係る二色成形物の製造方法で製造した二色成形物の一例を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態3に係る二色成形物の製造方法で製造した二色成形物の一例を示す平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態4に係る二色成形物の製造方法で製造した二色成形物の一例を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施の形態4に係る二色成形物の製造方法で製造した二色成形物の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る二色成形物の製造方法および二色成形物の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、以下の実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものも含まれる。
【0015】
[二色成形物の製造方法]
まず、本発明の実施形態に係る二色成形物の製造方法の概要について説明する。二色成形物の製造方法では、例えば内視鏡等の光学デバイスの一部品を構成する二色成形物を製造する。二色成形物の製造方法では、一次成形物を成形する一次成形工程と、一次成形物を埋め込みつつ二次成形物を成形する二次成形工程と、を順に行うことにより、一次成形物および二次成形部とからなる二色成形物を製造する。なお、例えば一次成形物を別途調達して用いる場合は、一次成形工程は不要であり、二次成形工程のみを行って二色成形物を製造することもできる。
【0016】
一次成形工程では、例えばPC(ポリカーボネート)等の透明樹脂からなる一次成形樹脂を、二色成形金型における一次成形物用のキャビティに充填することにより一次成形物を成形する。また、一次成形工程では、例えばPC(ポリカーボネート)等に不透明な着色をした着色樹脂からなる二次成形樹脂を、二色成形金型における二次成形物用のキャビティに充填することにより二次成形物を成形する。なお、以下の説明では、一次成形工程および二次成形工程で用いる二色成形金型の構成についての説明は省略し、成形の結果物である一次成形物、二次成形物および二色成形物の構成に基づいて、各工程の説明を行う。二色成形金型については、後記する一次成形物および二次成形物を成形可能なものを適宜選択して用いればよい。
【0017】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る二色成形物の製造方法について、
図1~
図4を参照しながら説明する。本実施の形態に係る二色成形物の製造方法の一次成形工程では、一次成形用のゲートG1から一次成形樹脂を充填することにより、例えば
図1に示すような一次成形物1を成形する。
【0018】
一次成形物1は、光学素子11と、光学素子11の側方から突出する突出部(タブ)12と、を有している。また、光学素子11および突出部12の内部には、両者を連通する穴部13が形成されている(
図4参照)。この穴部13には、二次成形工程の際に二色成形金型(図示省略)のピンが挿入される。これにより、当該ピンによって一次成形物1を支持しながら、二次成形が行われる。
【0019】
光学素子11は、円柱状に形成されている。また、光学素子11は、突出部12の上面に配置されており、突出部12の側面12aと連続しない側面11aと、突出部12の側面12aと連続する側面11bを有している。突出部12は、所定厚さを有する楕円状に形成されている。突出部12の上面には、一次成形用のゲートG1が設けられる。このゲートG1は、一次成形工程で一次成形樹脂を充填する際に設けられ、二次成形工程を行う前に除去(ゲート処理)される。なお、突出部12は、後記するように、その突出方向がゲートG2に向いている(
図3参照)。
【0020】
本実施の形態に係る二色成形物の製造方法の二次成形工程では、二次成形用のゲートG2から二次成形樹脂を充填することにより、光学素子11の側面11a,11bおよび突出部12を二次成形樹脂によって埋め込み、例えば
図2~
図4に示すような二次成形物2を成形する。二次成形物2は、外観部21と、接続部22と、貫通孔23a,23b,24,25と、を有している。
【0021】
外観部21は、一次成形物1の光学素子11とともに、光学デバイスの一部品である二色成形物3の外観を構成する。外観部21は、円柱状に形成されており、
図4に示すように、二次成形工程の際に二色成形金型(図示省略)のピンが挿入される穴部27が形成されている。また、外観部21には、同径の貫通孔23a,23bが形成されている。これらの貫通孔23a,23bには、それぞれ一次成形物1が埋め込まれている。
【0022】
接続部22には、光学デバイスの他部品が接続される。接続部22は、円筒状に形成されており、
図4に示すように、内部に穴部26が形成されている。また、接続部22の側面には、二次成形用のゲートG2が設けられる。このゲートG2は、二次成形工程で二次成形樹脂を充填する際に設けられ、二次成形工程の完了後、すなわち二色成形物3の製造後に除去(ゲート処理)される。
【0023】
ゲートG2は、
図3に示すような平面視において、接続部22の外周面と貫通孔24,25の内周面とが接近した薄肉部(同図のB部参照)を避けた位置に設けられる。これにより、二次成形の際に、一次成形物1の突出部12と二次成形物2の表面2aとの間の薄肉部(
図4のD部参照)の領域に二次成形樹脂を充填しやすくなる。また、ゲートG2は、
図4に示すように、薄肉部(同図のD部参照)が、二次成形工程における二次成形樹脂の流れ(同図の矢印C参照)の上流側となる位置に設けられる。
【0024】
貫通孔24,25は、
図3および
図4に示すように、一次成形物1と重ならない位置において、外観部21および接続部22を貫通して形成されている。これらの貫通孔24,25には、光学デバイスの他部品(例えば鉗子、送気・送水チューブ、映像ケーブル等)が挿入される。
【0025】
ここで、
図3に示すような平面視において、例えば外観部21の直径は4.9mm、貫通孔23a,23bの直径d1は1.0mm、貫通孔24の直径d2は1.5mm、貫通孔25の直径d3は2.4mm、である。従って、二色成形物3において、外観部21の直径に対する貫通孔24,25の直径d2,d3の比は、0.3~0.5となる。また、
図4に示すような断面視において、例えば二次成形物2の高さh1は7.65mm、外観部21の高さh2は2.2mmである。
【0026】
本実施の形態に係る二色成形物の製造方法の二次成形工程では、一次成形物1の突出部12の突出方向を二次成形用のゲートG2に向けて二次成形物2の成形を行う。ここで、「突出部12の突出方向を二次成形用のゲートG2に向けて」とは、
図3に示すように、ゲートG2が設けられた方向DGに対して垂直、かつ一次成形物1の光学素子11の中心を通る直線Lよりも、ゲートG2の側に突出部12の突出方向を向けた状態のことを示している。本実施の形態に係る二色成形物の製造方法の二次成形工程では、同図に示すように、二つの一次成形物1のそれぞれの突出部12の突出方向を、二次成形用のゲートG2に向けて二次成形を行う。
【0027】
本実施の形態に係る二色成形物の製造方法では、
図4に示すように、一次成形物1の突出部12と二次成形物2の表面2aとの間に薄肉部(同図のD部参照)が形成されるものの、突出部12の突出方向を二次成形用のゲートG2に向けて二次成形を行うことにより、同図の矢印Cに示すように、他の部分よりも先に、薄肉部の領域に二次成形樹脂が充填される。そして、薄肉部の領域において、二次成形樹脂が光学素子11の側面11aに衝突し、二次成形樹脂の流れが二つに分割される。
【0028】
一次成形物1(光学素子11の側面11a)で分流した二次成形樹脂の流れは、光学素子11を回り込み、薄肉部以外の領域、すなわち光学素子11の側面11bの側で合流する。これにより、
図3に示すように、薄肉部を避けてウェルドラインWLが形成されるため、二色成形物3の外観品質、強度および耐薬品性の低下を抑制することができる。
【0029】
このように、本実施の形態に係る二色成形物の製造方法によれば、予め設定されている貫通孔23a,23b,24,25の直径および位置の制約や、二次性成形用のゲートG2の位置の制約等を満たしつつ、ゲートG2に対する突出部12の向きを最適に調整することにより、二次成形樹脂の流れを制御し、他の部分よりも強度の低い薄肉部以外の領域で二次成形樹脂を合流させることができる。
【0030】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る二色成形物の製造方法について、
図5および
図6を参照しながら説明する。本実施の形態に係る二色成形物の製造方法の一次成形工程では、実施の形態1と同様の方法により、
図1に示した一次成形物1を成形する。一方、二次成形工程では、一次成形物1の突出部12の突出方向を実施の形態1とは異なる方向に向け、二次成形用のゲートG2から二次成形樹脂を充填することにより、外観部21A、接続部22および貫通孔23a,23b,24A,25を有する二次成形物2Aを成形する。
【0031】
二次成形物2Aでは、
図6に示すように、上側の一次成形物1(貫通孔23a)の近傍に貫通孔24Aが配置されている。貫通孔23a,24Aがこのような位置関係である場合、二次成形工程では、貫通孔23aに配置される一次成形物1の突出部12を、貫通孔24Aと貫通孔25との間に配置し、下側の一次成形物1(貫通孔23b)の近傍に設けた二次成形用のゲートG2から二次成形樹脂を充填することにより、二次成形物2Aの成形を行う。
【0032】
これにより、他の部分よりも先に、一次成形物1の突出部12と二次成形物2Aの表面2aとの間の薄肉部に二次成形樹脂が充填され、一次成形物1によって分流した二次成形樹脂の流れが、薄肉部以外の領域で合流し、当該薄肉部を避けてウェルドラインWLが形成される。すなわち
図6に示すように、一次成形物1の突出部12の突出方向をそれぞれ異なる方向に向けた場合であっても、薄肉部を避けてウェルドラインWLが形成されることになる。従って、二色成形物3Aの外観品質、強度および耐薬品性の低下を抑制することができる。
【0033】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る二色成形物の製造方法について、
図7および
図8を参照しながら説明する。本実施の形態に係る二色成形物の製造方法の一次成形工程では、実施の形態1と同様の方法により、
図1に示した一次成形物1を成形する。一方、二次成形工程では、一次成形物1の突出部12の突出方向を実施の形態1,2とは異なる方向に向け、かつ二か所に設けた二次成形用のゲートG21,G22から二次成形樹脂を充填することにより、外観部21B、接続部22および貫通孔23a,23b,24B,25Bを有する二次成形物2Bを成形する。
【0034】
二次成形物2Bでは、
図8に示すように、実施の形態1(
図3参照)と比較して、貫通孔24B,25Bの径が拡大している。この場合、二次成形樹脂の充填性が悪化するため、接続部22の位置に二つの二次成形用のゲートG21,G22を設け、二か所から二次成形樹脂を充填する。
【0035】
また、貫通孔24B,25Bの径が大きい場合、二次成形工程では、貫通孔23a,23bにそれぞれ配置される一次成形物1の突出部12の突出方向を、外側に向ける。これは、
図8に示すように、外観部21Aの面積に対する貫通孔24B,25Bの割合が大きく、突出部12を配置できる領域が限られているためである。また、二次成形工程では、貫通孔23aに配置された上側の一次成形物1の突出部12の突出方向を、ゲートG21に向け、貫通孔23bに配置された下側の一次成形物1の突出部12の突出方向を、ゲートG22に向ける。そして、二つの二次成形用のゲートG21,G22から二次成形樹脂を充填することにより、二次成形物2Bの成形を行う。
【0036】
これにより、他の部分よりも先に、一次成形物1の突出部12と二次成形物2Bの表面2aとの間の薄肉部に二次成形樹脂が充填され、一次成形物1によって分流した二次成形樹脂の流れが、薄肉部以外の領域で合流し、当該薄肉部を避けてウェルドラインWLが形成される。すなわち
図8に示すように、二次成形樹脂の充填性を確保するために二つの二次成形用のゲートG21,G22を設けた場合であっても、薄肉部を避けてウェルドラインWLが形成されることになる。従って、二色成形物3Bの外観品質、強度および耐薬品性の低下を抑制することができる。
【0037】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4に係る二色成形物の製造方法について、
図9および
図10を参照しながら説明する。本実施の形態に係る二色成形物の製造方法の一次成形工程では、実施の形態1と同様の方法により、
図1に示した一次成形物1を成形する。一方、二次成形工程では、一次成形物1の突出部12の突出方向を、実施の形態1~3とは異なる方向に向け、かつ二か所に設けた二次成形用のゲートG21,G22から二次成形樹脂を充填することにより、外観部21C、接続部22Cおよび貫通孔23a,23b,24B,25Bを有する二次成形物2Bを成形する。
【0038】
二次成形物2Cでは、
図8に示すように、実施の形態1(
図3参照)と比較して、貫通孔24B,25Bの径が拡大している。また、二次成形物2Cでは、接続部22Cの側面に組立用形状28が設けられており、ゲートG21,G22を配置する位置が制限されている。
【0039】
このように貫通孔24B,25Bの径が大きく、かつ組立用形状28によりゲートG21,G22を配置する位置が制限されている場合、二次成形工程では、組立用形状28を避けてゲートG21,G22を配置し、かつ貫通孔23aに配置された上側の一次成形物1の突出部12の突出方向をゲートG21に向け、貫通孔23bに配置された下側の一次成形物1の突出部12の突出方向をゲートG22に向ける。そして、二つの二次成形用のゲートG21,G22から二次成形樹脂を充填することにより、二次成形物2Bの成形を行う。
【0040】
これにより、他の部分よりも先に、一次成形物1の突出部12と二次成形物2Cの表面2aとの間の薄肉部に二次成形樹脂が充填され、一次成形物1によって分流した二次成形樹脂の流れが、薄肉部以外の領域で合流し、当該薄肉部を避けてウェルドラインWLが形成される。すなわち
図10に示すように、ゲートG21,G22を配置する位置が制限されている場合であっても、薄肉部を避けてウェルドラインWLが形成されることになる。従って、二色成形物3Cの外観品質、強度および耐薬品性の低下を抑制することができる。
【0041】
以上、本発明に係る二色成形物の製造方法および二色成形物について、発明を実施するための形態により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1 一次成形物
11 光学素子
11a,11b 側面
12 突出部
12a 側面
13 穴部
2,2A,2B,2C 二次成形物
2a 表面
21,21A,21B,21C 外観部
22,22C 接続部
23a,23b,24,24A,24B,25,25B 貫通孔
26,27 穴部
28 組立用形状
3,3A,3B,3C 二色成形物
d1,d2,d3 直径
G1,G2,G21,G22 ゲート
h1,h2 高さ
WL ウェルドライン