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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】板材加工機及び板材加工方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 43/10 20060101AFI20220714BHJP
   B21D 43/00 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
B21D43/10 E
B21D43/00 W
B21D43/00 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018139452
(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2020015062
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 清敏
(72)【発明者】
【氏名】小栗 伸二
(72)【発明者】
【氏名】田中 篤哉
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-164977(JP,A)
【文献】特開2005-028432(JP,A)
【文献】特開2001-058225(JP,A)
【文献】特開平07-214205(JP,A)
【文献】特開2018-001258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/10
B21D 43/00
B21D 28/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工位置に対してX軸方向及びY軸方向へ移動可能なキャリッジと、
前記キャリッジをX軸方向及びY軸方向へ移動させるXY軸移動手段と、
前記キャリッジに設けられ、板材の端部を把持する少なくとも3つ以上の複数のクランプと、
前記キャリッジに対する複数の前記クランプの配置状態を示すクランプ配置情報と、板材の幅寸法とに基づいて、板材の原点セット後における複数の前記クランプの掴み換えの必要性の有無を判断する掴み換え判断部と、を備 え、
前記掴み換え判断部は、
前記クランプ配置情報と板材の幅寸法とに基づいて、加工時に使用する複数の前記クランプを選択するクランプ選択部と、
加工時に使用する複数の前記クランプと原点セット時に使用する複数の前記クランプが完全に一致する場合を除き、前記クランプ配置情報と板材の幅寸法とに基づいて、複数の前記クランプの掴み換え量を算出する掴み換え量算出部と、を有している ことを特徴とする板材加工機。
【請求項2】
前記掴み換え判断部は、板材の原点セット後における複数の前記クランプの掴み換えが必要であると判断した場合に、複数の前記クランプの掴み換え量を取得することを特徴とする請求項1に記載の板材加工機。
【請求項3】
前記クランプ配置情報を予め設定した状態の下で、板材の幅寸法と複数の前記クランプの掴み換え量との関係を示す掴み換え量テーブルを記憶するテーブル記憶部を備え、
前記掴み換え判断部は、複数の前記クランプの掴み換え量テーブルを参照しつつ、板材の幅寸法に基づいて、加工時に使用する複数の前記クランプと複数の前記クランプの掴み換え量を取得する ことを特徴とする請求項2に記載の板材加工機。
【請求項4】
板材をX軸方向及びY軸方向に移動不能に保持する板材保持手段と、
板材の原点セット後における複数の前記クランプの掴み換えが必要であると判断された場合に、板材をX軸方向及びY軸方向に移動不能に保持された後に、複数の前記クランプの掴み換え量に基づいて、複数の前記クランプの掴み換え動作を実行するように、前記XY軸移動手段を制御する掴み換え制御部と、を備えた ことを特徴とする請求項2に記載の板材加工機。
【請求項5】
板材加工機におけるキャリッジに対する複数のクランプの配置状態を示すクランプ配置情報と、板材の幅寸法とに基づいて、加工時に使用する複数の前記クランプを選択し、加工時に使用する複数の前記クランプと原点セット時に使用する複数の前記クランプが完全に一致する場合を除き、前記クランプ配置情報と板材の幅寸法とに基づいて、複数の前記クランプの掴み換え量を算出することで、板材の原点セット後における複数の前記クランプの掴み換えの必要性の有無を判断してから、板材に対して加工を行う板材加工方法。
【請求項6】
板材の原点セット後における複数の前記クランプの掴み換えが必要であると判断した場合に、取得された複数の前記クランプの掴み換え量に基づいて、複数の前記クランプの掴み換え動作を実行する請求項5に記載の板材加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材(板金)に対してパンチ加工等の加工を行う板材加工機等に関する。
【背景技術】
【0002】
パンチプレス又はレーザ加工機等の板材加工機は、板材を加工位置に対してX軸方向及びY軸方向に位置決めする板材位置決めユニットを備えている。そして、板材位置決めユニットの構成について簡単に説明すると、次の通りである。
【0003】
板材加工機における本体フレームには、キャリッジがX軸方向及びY軸方向へ移動可能に設けられている。キャリッジは、XY軸移動手段としてのX軸モータ及びY軸モータの駆動によりX軸方向及びY軸方向へ移動する。また、キャリッジには、板材の端部(Y軸方向側の端部)を把持する(掴む)複数のクランプが設けられている。
【0004】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-1258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、加工対象である板材の幅寸法(X軸方向の寸法)は種々であり、キャリッジに対する複数のクランプの配置状態が板材の幅寸法に応じた適切な配置状態でない場合には、加工時の板材のオーバーハング量が大きくなる。その結果、板材の位置決め時に板材の振れが生じ易くなり、板材の加工精度の低下に繋がる。そのため、通常、板材の原点セットを行う前に、加工時の板材のオーバーハング量が小さくなるように、キャリッジに対する複数のクランプの配置状態を変更する段取り作業(クランプ配置の段取り作業)を行っている。
【0007】
しかしながら、クランプ配置の段取り作業には多くの時間を要するため、幅寸法の異なる種々の板材に対して加工を行う場合において、クランプ配置の段取り作業の回数が増えると、板材加工機の生産性の低下を招く。
【0008】
つまり、幅寸法の異なる種々の板材に対して加工を行う場合に、板材の加工精度を十分に確保しつつ、板材加工機の生産性を高めることが困難であるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成からなるパンチプレス等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1実施態様に係る板材加工機(板金加工機)は、加工位置に対してX軸方向及びY軸方向へ移動可能なキャリッジと、前記キャリッジをX軸方向及びY軸方向へ移動させるXY軸移動手段と、前記キャリッジに設けられ、板材の端部を把持する少なくとも3つ以上の複数のクランプと、前記キャリッジに対する複数の前記クランプの配置状態を示すクランプ配置情報と、板材の幅寸法とに基づいて、板材の原点セット後における複数の前記クランプの掴み換えの必要性の有無を判断する掴み換え判断部と、を備えている。
【0011】
本発明の第1実施態様では、前記掴み換え判断部は、板材の原点セット後における複数の前記クランプの掴み換えが必要であると判断した場合に、複数の前記クランプの掴み換え量を取得してもよい。
【0012】
本発明の第1実施態様では、前記掴み換え判断部は、前記クランプ配置情報と板材の幅寸法とに基づいて、加工時に使用する複数の前記クランプを選択するクランプ選択部と、加工時に使用する複数の前記クランプと原点セット時に使用する複数の前記クランプが完全に一致する場合を除き、前記クランプ配置情報と板材の幅寸法とに基づいて、複数の前記クランプの掴み換え量を算出する掴み換え量算出部と、を有してもよい。
【0013】
本発明の第1実施態様では、前記クランプ配置情報を予め設定した状態の下で、板材の幅寸法と複数の前記クランプの掴み換え量との関係を示す掴み換え量テーブルを記憶するテーブル記憶部を備え、前記掴み換え判断部は、複数の前記クランプの掴み換え量テーブルを参照しつつ、板材の幅寸法に基づいて、加工時に使用する複数の前記クランプと複数の前記クランプの掴み換え量を取得してもよい。
【0014】
本発明の第1実施態様では、板材をX軸方向及びY軸方向に移動不能に保持(押圧保持)する板材保持手段と、板材の原点セット後における複数の前記クランプの掴み換えが必要であると判断された場合に、板材をX軸方向及びY軸方向に移動不能に保持された後に、複数の前記クランプの掴み換え量に基づいて、複数の前記クランプの掴み換え動作を実行するように、前記XY軸移動手段を制御する掴み換え制御部と、を備えてもよい。
【0015】
本発明の第1実施態様によると、前記掴み換え判断部は、前記クランプ配置情報と板材の幅寸法とに基づいて、板材の原点セット後における複数の前記クランプの掴み換えの必要性の有無を判断する。そして、板材の原点セット後における複数の前記クランプの掴み換えが必要であると判断した場合に、板材の原点セットを行った後(直後)に、複数の前記クランプの掴み換え動作を実行する。これにより、幅寸法の異なる種々の板材を加工する場合に、前記キャリッジに対する複数の前記クランプの配置状態を変更する段取り作業を行うことなく、加工時の板材のオーバーハング量を小さくすることができる。
【0016】
本発明の第2実施態様に係る板材加工方法(板金加工方法)は、材加工機におけるキャリッジに対する複数のクランプの配置状態を示すクランプ配置情報と、板材の幅寸法とに基づいて、板材の原点セット後における複数の前記クランプの掴み換えの必要性の有無を判断してから、板材に対して加工を行うことである。
【0017】
本発明の第2実施態様では、板材の原点セット後における複数の前記クランプの掴み換えが必要であると判断した場合に、取得された複数の前記クランプの掴み換え量に基づいて、複数の前記クランプの掴み換え動作を実行してもよい。
【0018】
本発明の第2実施態様によると、前記クランプ配置情報と板材の幅寸法とに基づいて、板材の原点セット後における複数の前記クランプの掴み換えの必要性の有無を判断する。そして、板材の原点セット後における複数の前記クランプの掴み換えが必要であると判断した場合に、板材の原点セットを行った後(直後)に、複数の前記クランプの掴み換え動作を実行する。これにより、幅寸法の異なる種々の板材を加工する場合に、前記キャリッジに対する複数の前記クランプの配置状態を変更する段取り作業を行うことなく、加工時の板材のオーバーハング量を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、幅寸法の異なる種々の板材に対して加工を行う場合に、板材の加工精度を十分に確保しつつ、板材加工機の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、図2におけるI-I線に沿った図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るパンチプレスを示す模式的な左側面図である。
図3図3は、図1におけるIII部の拡大図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るパンチプレスの制御ブロック図である。
図5図5(a)(b)は、加工時に使用する複数のクランプ、及び複数のクランプの掴み換え動作を説明する模式的な平面図である。
図6図6(a)(b)は、加工時に使用する複数のクランプ、及び複数のクランプの掴み換え動作を説明する模式的な平面図である。
図7図7(a)(b)は、加工時に使用する複数のクランプ、及び複数のクランプの掴み換え動作を説明する模式的な平面図である。
図8図8は、本発明の実施形態の作用及び本発明の実施形態に係る板材加工方法を説明するフローチャート図である。
図9図9は、本発明の実施形態の作用を説明するフローチャート図である。
図10図10は、本発明の実施形態の変形例に係るパンチプレスの制御ブロック図である。
図11図11は、掴み換え量テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態及び本発明の実施形態の変形例について図面を参照して説明する。
【0022】
本願の明細書及び特許請求の範囲において、「設けられる」とは、直接的に設けられることの他に、別部材を介して間接的に設けられることを含む意である。「加工時の板材のオーバーハング量」とは、板材の端部を把持する複数のクランプのうち最も外側(X軸方向の両端側)にある両クランプの両外側領域においてクランプによって把持されていない部分のX軸方向寸法のことをいう。「及び/又はとは、2つのうちのいずれか一方と両方を含む意である。また、本発明の実施形態において、次のように定義する。「X軸方向」とは、図面に矢印等で示す水平方向の1つのことであり、左右方向とも言う。「Y軸方向」とは、図面に矢印等で示す水平方向の1つでかつX軸方向に直交する方向のことであり、前後方向とも言う。なお、図面中、「FF」は、前方向、「FR」は、後方向、「L」は、左方向、「R」は、右方向、「U」は、上方向、「D」は、下方向をそれぞれ指している。
【0023】
(本発明の実施形態)
図1から図3に示すように、本発明の実施形態に係るパンチプレス10は、板材(板金)Wに対して打ち抜き加工等のパンチ加工を行う板材加工機(板金加工機)である。また、パンチプレス10は、ブリッジ型の本体フレーム12を備えており、本体フレーム12は、そのX軸方向の両側(左右両側)に、Y軸方向に延びた支持フレーム14をそれぞれ有している。
【0024】
本体フレーム12には、板材Wをパスライン(支持高さ位置又は搬送高さ位置)PL上において支持するテーブルユニット(テーブル装置)16が設けられており、テーブルユニット16は、固定テーブル及び可動テーブル等で構成されている。具体的には、本体フレーム12の中央部には、センタ固定テーブル18が設けられており、各支持フレーム14には、可動テーブル20がY軸方向へ移動可能に設けられている。また、可動テーブル20の左側又は右側には、サイド固定テーブル22が設けられている。なお、センタ固定テーブル18、各可動テーブル20、及び各サイド固定テーブル22は、板材Wを支持するための多数のブラシ(図示省略)及び複数のフリーボールベアリング(図示省略)をそれぞれ有している。
【0025】
一方のサイド固定テーブル22の左側部分には、板材WをX軸方向の原点位置にセットするためのロケートピン24が設けられている。また、ロケートピン24は、板材WのX軸方向側の端面(左端面)を突当て可能な突当て面24fを有しており、突当て面24fは、Y軸方向に平行でかつX軸方向の原点位置に位置している。ロケートピン24は、パスラインPLに対して出没するように上下方向へ移動可能に構成されている。
【0026】
本体フレーム12には、板材WをX軸方向及びY軸方向に位置決めする板材位置決めユニット(板材位置決め機構)26が設けられている。そして、板材位置決めユニット26の具体的な構成は、次の通りである。
【0027】
本体フレーム12の下部には、X軸方向に延びたキャリッジベース28がY軸方向へ移動可能に設けられている。キャリッジベース28は、一対の可動テーブル20の前部に一体的に連結されている。また、本体フレーム12の上部の前側部分には、キャリッジベース28を一対の可動テーブル20と一体的にY軸方向へ移動させるためのY軸モータ30が設けられている。本体フレーム12の上部には、Y軸方向に延びたY軸ボールネジ32が回転可能に設けられている。Y軸ボールネジ32の一端部は、Y軸モータ30の出力軸(図示省略)に連動連結されている。キャリッジベース28の適宜位置には、Y軸ボールネジ32に螺合したナット部材34が設けられている。
【0028】
キャリッジベース28には、キャリッジ36がX軸方向へ移動可能に設けられている。また、キャリッジベース28の右端側には、キャリッジ36をX軸方向へ移動させるためのX軸モータ38が設けられている。キャリッジベース28の内部には、X軸方向に延びたX軸ボールネジ40が回転可能に設けられている。X軸ボールネジ40の一端部は、X軸モータ38の出力軸(図示省略)に連動連結されている。キャリッジ36の適宜位置には、X軸ボールネジ40に螺合したナット部材42が設けられている。
【0029】
ここで、キャリッジ36は、加工位置PPに対してX軸方向及びY軸方向へ移動可能である。X軸モータ38及びY軸モータ30は、キャリッジ36をX軸方向及びY軸方向へ移動させるXY軸移動手段に相当する。
【0030】
図3に示すように、キャリッジ36の前側には、板材WのY軸方向側の端部(前端部)を把持する(掴む)4つのクランプ44(441~414)がX軸方向に位置調節可能に設けられている。キャリッジ36の左端側の第1クランプ441から、キャリッジ36の右端側の第4クランプ444までの間に、第2クランプ442、第3クランプ443が順次位置している。
【0031】
各クランプ44(441~414)は、下部クランプ爪48と、上部クランプ爪50とを開閉することにより、板材Wの端部の把持解除及び把持を行うことができる。また、板材WをX軸方向の原点位置にセット(位置決め)するために、各クランプ44は、板材WのY軸方向側の端面(前端面)を突当て可能な突当て部材54を有している。板材Wの原点セットを行う際には、板材Wを前述のロケートピン24と各クランプ44の突当て部材54に突当てることにより、板材WをX軸方向及びY軸方向の原点位置に位置決めすることができる。なお、本発明の実施形態では、クランプ44の個数は4つであるが、3つ以上であれば、4つでなくもよい。
【0032】
図1及び図2に示すように、本体フレーム12のX軸方向の両側部(左側部及び右側部)には、板材Wを上方向から保持(押圧保持)する板材保持ユニット(板材保持機構)56がそれぞれ設けられている。各板材保持ユニット56は、本体フレーム12のX軸方向の側部に設けられた保持シリンダ58を有している。各板材保持ユニット56は、各保持シリンダ58における昇降可能(上下方向へ移動可能)な作動ロッド60の先端部に設けられた保持パッド62を有している。なお、センタ固定テーブル18における各保持パッド62の垂直下方(真下)には、各保持パッド62と協働して板材Wを挟持する支持パッド64が設けられている。
【0033】
ここで、一対の板材保持ユニット56は、板材Wをセンタ固定テーブル18に対してX軸方向及びY軸方向に移動不能に保持(押圧保持)する板材保持手段に相当する。
【0034】
本体フレーム12の上部の後側部分には、複数のパンチ金型66を保持する上部タレット68が回転可能に設けられている。また、本体フレーム12の下部の後側部分には、複数のダイ金型70を保持する下部タレット72が回転可能に設けられている。任意のパンチ金型66及び任意のダイ金型70は、上部タレット68及び下部タレット72の回転により加工位置PPに割り出し可能である。更に、本体フレーム12の後側部分の上部には、加工位置PPに割り出したパンチ金型66を上方向から押圧(打圧)するストライカ74が昇降可能(上下方向へ移動可能)に設けられている。
【0035】
前述の構成により、板材Wの端部を複数のクランプ44によって把持した状態で、X軸モータ38及び/又はY軸モータ30の駆動によりキャリッジ36をX軸方向及び/又はY軸方向へ移動させる。すると、板材WをX軸方向及び/又はY軸方向へ移動させて、加工位置PPに対して位置決めする。そして、板材Wを加工位置PPに対して位置決めしつつ、加工位置PPに割り出したパンチ金型66をストライカ74によって上方向から押圧する。これにより、パンチ金型66とダイ金型70の協働により板材Wに対してパンチ加工を行うことができる。
【0036】
図4から図7(a)(b)に示すように、パンチプレス10は、加工プログラムを作成するプログラム作成装置76を備えている。プログラム作成装置76は、CPUとメモリを有したコンピュータによって構成されている。プログラム作成装置76は、タッチパネル、キーボード、及びマウス等からなる入力部78を備えている。入力部78は、オペレータの入力操作に基づいて、キャリッジ36に対する複数のクランプ44(441~414)の配置状態を示すクランプ配置情報、及び板材Wの幅寸法(X軸方向の寸法)Kを入力する。なお、プログラム作成装置76をパンチプレス10と一体的に設けてもよく、パンチプレス10と別に設け、作成した加工プログラムをネットワークや媒体を介して後述のNC装置86に受け渡してもい。
【0037】
ここで、クランプ配置情報は、例えば、キャリッジ36の左端(ロケートピン24に突き当てる板材Wの左端面と同じX軸方向の位置)から第1クランプ441の中心までの距離CLaと、各クランプ(中心)間距離として第1クランプ441の中心から第2クランプ442の中心までの距離CLbと、第2クランプ442の中心から第3クランプ443の中心までの距離CLcと、第3クランプ443の中心から第4クランプ444の中心までの距離CLdとを含んでいる。プログラム作成装置76は、クランプ配置情報に基づいて、更に各クランプ(中心)間距離として第1クランプ441の中心から第3クランプ443の中心までの距離CLe、及び第1クランプ441の中心から第4クランプ444の中心までの距離CLfを演算する。
【0038】
なお、入力部78が第1クランプ441の中心から第3クランプ443の中心までの距離CLe、及び第1クランプ441の中心から第4クランプ444の中心までの距離CLfを入力してもよい。また、キャリッジ36の左端から各クランプ44中心までの距離をそれぞれ入力して、各クランプ(中心)間距離をそれぞれ演算するようにしてもよい。更に、クランプ配置情報は、入力部78の入力操作に代えて、例えばキャリッジ36に対するクランプ取付位置をセンサ等で検出することで自動的に入力してもよい。
【0039】
プログラム作成装置76は、掴み換え判断部80を備えており、掴み換え判断部80は、板材Wの原点セット後における複数のクランプ44の掴み換えの必要性の有無を判断する。掴み換え判断部80は、板材Wを把持するクランプ44の個数を決定し、更にクランプ44を選定のうえ、原点セット時における複数のクランプ44の把持位置からの掴み換え量を演算(取得)する。掴み換え判断部80は、クランプ配置情報と板材Wの幅寸法Kとに基づいて、加工時(パンチ加工時)の板材Wのオーバーハング量λを小さくするための複数のクランプ44の掴み換え量(把持位置の変更量)δを演算により取得する。また、掴み換え判断部80は、クランプ選択部82と掴み換え量算出部84を含む。そして、クランプ選択部82及び掴み換え量算出部84の内容は、次の通りである。
【0040】
クランプ選択部82は、入力されたクランプ配置情報と板材Wの幅寸法Kとに基づいて、加工時に使用するクランプ44の個数を決定する。
【0041】
具体的には、クランプ選択部82は、条件式としてK<CLa+CLe+Vの場合には、加工時に使用するクランプ44の個数を2つに決定する(図5(a)(b)及び図6(a)参照)。クランプ選択部82は、条件式としてCLa+CLf+V>K≧CLa+CLe+Vの場合には、加工時に使用するクランプ44の個数を3つに決定する(図6(b)(b)及び図7(a)参照)。クランプ選択部82は、条件式としてK≧CLa+CLf+Vの場合には、加工時に使用するクランプ44の個数を4つ(クランプ44の総数)に決定する(図7(b)参照)。ここで、Vは、クランプ44の把持部(上部クランプ爪50)の幅寸法である。なお、これらの条件式は、パンチプレス10の大きさ、パンチプレス10で加工可能な板材Wの大きさ、及びクランプ44の個数等を考慮して、予めプログラム作成装置76のメモリに記憶されている。
【0042】
クランプ選択部82は、前工程(クランプ数決定)処理の結果、加工時に使用するクランプ44の個数が4つである場合には、加工時に使用する複数のクランプ44として全てのクランプ441~444を選択する(図7(b)参照)。この場合には、掴み換え判断部80は、加工時に使用する複数のクランプ44と原点セット時に使用する複数のクランプ44が完全に一致して、複数のクランプ44の掴み換えが不要であると判断する。
【0043】
クランプ選択部82は、前工程(クランプ数決定)処理の結果、加工時に使用するクランプ44の個数が4つでない場合に、クランプ配置情報と板材Wの幅寸法とに基づいて、加工時の板材のオーバーハング量を小さくするために加工時に使用する、複数のクランプ44のうちいずれかを選択する。
【0044】
前工程で加工時に使用するクランプ44の個数を2つに決定した場合には、クランプ選択部82によるクランプの選択方法としては、以下の3つの何れに該当するかを判断することになる。
【0045】
クランプ選択部82は、第1に、条件式K-(CLa+CLb)<(K-CLc)/2≦(K-CLd)/2 に該当すると判断した場合には、加工時に使用する複数のクランプ44として、第1クランプ441と第2クランプ442 を選択する(図5(a)参照)。この場合には、掴み換え判断部80は、加工時に使用する複数のクランプ44と原点セット時に使用する複数のクランプ44が完全に一致して、複数のクランプ44の掴み換えが不要であると判断する。
【0046】
クランプ選択部82は、第2に、条件式(K-CLd)/2 <K-(CLa+CLb)≦(K-CLc)/2 に該当して、複数のクランプ44の掴み換えの必要があると判断した場合には、加工時に使用する複数のクランプ44として、第3クランプ443と第4クランプ444 を選択する(図5(b)参照)。クランプ選択部82は、第3に、条件式(K-CLc)/2<K-(CLa+CLb)≦(K-CLd)/2 に該当して、複数のクランプ44の掴み換えの必要があると判断した場合には、加工時に使用する複数のクランプ44として、第2クランプ442と第3クランプ443 を選択する(図6(a)参照)。
【0047】
前工程で加工時に使用するクランプ44の個数を3つに決定した場合には、クランプ選択部82によるクランプの選択方法としては、以下の2つの何れに該当するかを判断することになる。
【0048】
クランプ選択部82は、第1に、条件式K-(CLa+CLe)≦(K-CLc-CLd)/2 に該当すると判断した場合には、加工時に使用する複数のクランプ44として、第1クランプ441と第2クランプ442 と第3クランプ443 を選択する(図6(b)参照)。この場合には、 掴み換え判断部80は、加工時に使用する複数のクランプ44と原点セット時に使用する複数のクランプ44が完全に一致して、複数のクランプ44の掴み換えが不要であると判断する。
【0049】
クランプ選択部82は、第2に、条件式(K-CLc-CLd)/2 <K-(CLa+CLe)に該当して、複数のクランプ44の掴み換えの必要があると判断した場合には、加工時に使用する複数のクランプ44として、第2クランプ442 と第3クランプ443 と第4クランプ444を選択する(図7(a)参照)。
【0050】
更に、掴み換え量算出部84は、加工時に使用する複数のクランプ44と原点セット時に使用する複数のクランプ44が完全に一致する場合を除き、クランプ配置情報と板材Wの幅寸法とに基づいて、複数のクランプ44の掴み換え量(把持位置の変更量)δを算出する。換言すれば、掴み換え判断部80は、板材Wの原点セット後における複数のクランプ44の掴み換えの必要があると判断した場合に、原点セット時に使用する複数のクランプ44から、加工時に使用する複数のクランプ44に掴み換える掴み換え量δを算出する。
【0051】
具体的には、掴み換え量算出部84は、加工時に使用する複数のクランプ44として、第3クランプ443と第4クランプ444 の2つが選択された場合には、掴み換え量δ=CLa+CLb+CLc+CLd/2-K/2の式により複数のクランプ44の掴み換え量δを算出する(図5(b)参照)。また、掴み換え量算出部84は、加工時に使用する複数のクランプ44として、第2クランプ442と第3クランプ443 の2つが選択された場合には、掴み換え量δ=CLa+CLb+CLc/2-K/2の式により複数のクランプ44の掴み換え量δを算出する(図6(a)参照)。更に、掴み換え量算出部84は、加工時に使用する複数のクランプ44として、第2クランプ442と第3クランプ443と第4クランプ444 の2つが選択された場合には、掴み換え量δ=CLa+CLb+CLc/2+CLd/2-K/2の式により複数のクランプ44の掴み換え量δを算出する(図7(a)参照)。
【0052】
つまり、 掴み換え判断部80は、加工時に使用する複数のクランプ44と原点セット時に使用する複数のクランプ44が完全に一致する場合を除き、クランプ配置情報と板材Wの幅寸法Kとに基づいて、複数のクランプ44の掴み換え量δを演算により取得する。また、掴み換え判断部80は、加工時に使用する複数のクランプ44と原点セット時に使用する複数のクランプ44が完全に一致する場合には、複数のクランプ44の掴み換え量δとしてゼロ"0"を取得する。そして、プログラム作成装置76は、複数のクランプ44の掴み換え量δを加えた加工プログラムをNCデータに変換する。
【0053】
パンチプレス10は、プログラム作成装置76から出力された加工プログラムに基づいて、板材位置決めユニット26(X軸モータ38、Y軸モータ30、各クランプシリンダ52)、及び板材保持ユニット56(各保持シリンダ58)を制御するNC装置86を備えている。NC装置86は、CPUとメモリを有したコンピュータによって構成されている。
【0054】
NC装置86は、掴み換え制御部88としての機能を有している。掴み換え制御部88は、掴み換え量δがゼロ"0"でない場合には、板材WをX軸方向及びY軸方向に原点セットした直後に、複数のクランプ44の掴み換え動作を実行する。掴み換え制御部88は、X軸モータ38及びY軸モータ30を制御して、板材Wを板材保持ユニット56にて保持可能な位置に位置決めする。その後、掴み換え制御部88は、各保持シリンダ58を制御して、板材Wをセンタ固定テーブル18に対してX軸方向及びY軸方向に移動不能に保持(押圧保持)する。更に、掴み換え制御部88は、複数のクランプ44による板材Wの把持状態を解除して、掴み換え量δに基づいてX軸モータ38、Y軸モータ30を制御し、キャリッジ36(複数のクランプ44)を移動させる。最後に、複数のクランプ44による板材Wの把持を行うことで、複数のクランプ44の掴み換え動作が完了する。
【0055】
続いて、本発明の実施形態に係る板材加工方法を含め、本発明の実施形態の作用について説明する。本発明の実施形態に係る板材加工方法は、板材Wに対してパンチ加工を行うための方法である。
【0056】
クランプ選択部82は、クランプ配置情報と板材Wの幅寸法Kとに基づいて、加工時に使用するクランプ44の個数を演算により決定する(図8におけるステップS101)。そして、クランプ選択部82は、加工時に使用するクランプ44の個数が4つであると演算(決定)した場合(図8におけるステップS102のYesの場合)には、加工時に使用する複数のクランプ44として全てのクランプ441~444を選択する(図8におけるステップS103)。更に、掴み換え判断部80は、複数のクランプ44の掴み換え量δとしてゼロ"0"を取得して、複数のクランプ44の掴み換えが不要であると判断する(図8におけるステップS104)。
【0057】
クランプ選択部82は、加工時に使用するクランプ44の個数が2つであると演算(決定)した場合(図8におけるステップS102のNoの場合でかつステップS105のYesの場合)には、クランプ配置情報と板材Wの幅寸法Kとに基づいて、2つのクランプ44を演算により選択する(図8におけるステップS106)。そして、加工時に使用する複数のクランプ44と原点セット時に使用する複数のクランプ44が完全に一致しない場合(図8におけるステップS107のNoの場合)には、掴み換え量算出部84は、クランプ配置情報と板材Wの幅寸法Kとに基づいて、複数のクランプ44の掴み換え量δを算出する(図8におけるステップS108)。換言すれば、掴み換え判断部80は、複数のクランプ44の掴み換えの必要があると判断した場合に、複数のクランプ44の掴み換え量δを算出する。
【0058】
一方、加工時に使用する複数のクランプ44と原点セット時に使用する複数のクランプ44が完全に一致する場合(図8におけるステップS107のYesの場合)には、掴み換え判断部80は、複数のクランプ44の掴み換え量δとしてゼロ"0"を取得して、複数のクランプ44の掴み換えが不要であると判断する(図8におけるステップS109)。
【0059】
クランプ選択部82は、加工時に使用するクランプ44の個数が3つであると演算(決定)した場合(図8におけるステップS102のNoの場合でかつステップS105のNoの場合)には、クランプ配置情報と板材Wの幅寸法Kとに基づいて、3つのクランプ44を選択する(図8におけるステップS110)。そして、加工時に使用する複数のクランプ44と原点セット時に使用する複数のクランプ44が完全に一致しない場合(図8におけるステップS111のNoの場合)には、掴み換え量算出部84は、クランプ配置情報と板材Wの幅寸法Kとに基づいて、複数のクランプ44の掴み換え量δを算出する(図8におけるステップS112)。換言すれば、掴み換え判断部80は、複数のクランプ44の掴み換えの必要があると判断した場合に、複数のクランプ44の掴み換え量δを算出する。
【0060】
一方、加工時に使用する複数のクランプ44と原点セット時に使用する複数のクランプ44が完全に一致する場合(図8におけるステップS111のYesの場合)には、掴み換え判断部80は、複数のクランプ44の掴み換え量δとしてゼロ"0"を取得して、複数のクランプ44の掴み換えが不要であると判断する(図8におけるステップS113)。
【0061】
図8におけるステップS104,S108,S109,S112,S113の終了後に、プログラム作成装置76は、複数のクランプ44の掴み換え量δを加えた加工プログラムをNCデータに変換する(図8におけるステップS114)。そして、プログラム作成装置76は、加工プログラムをNC装置86に出力する(図8におけるステップS115)。
【0062】
その後、Y軸モータ30の駆動によりキャリッジベース28を、X軸モータ38の駆動によりキャリッジ36をそれぞれ移動させて、原点位置側に位置させる。次に、板材WのX軸方向側の端面をロケートピン24に突き当てると共に、板材WのY軸方向側の端面を突当て部材54に突き当てる。そして、複数のクランプ44によって板材WのY軸方向側の端部を把持する(掴む)。これにより、板材WをX軸方向及びY軸方向の原点位置に位置させる(原点セットする)ことができる(図9におけるステップS201)。
【0063】
板材Wの原点セットを行った後に、パンチプレス10のプログラム運転を開始する(図9におけるステップS202)。次に、掴み換え制御部88は、複数のクランプ44の掴み換え量δがゼロ"0"でない場合(図9におけるステップS203のNoの場合)には、X軸モータ38及びY軸モータ30を制御して板材Wを板材保持ユニット56側の下方位置に位置決めする(図9におけるステップS204)。そして、掴み換え制御部88は、各保持シリンダ58を制御して板材Wをセンタ固定テーブル18に対してX軸方向及びY軸方向に移動不能に保持(押圧保持)する(図9におけるステップS205)。更に、掴み換え制御部88は、複数のクランプ44の掴み換え量δに基づいてX軸モータ38及びY軸モータ30等を制御することにより、複数のクランプ44の掴み換え動作を実行する(図9におけるステップS206)。
【0064】
なお、図5(b)、図6(a)、図7(a)は、掴み換え動作の前と掴み換え動作後の板材Wとクランプの関係を示しており、2点鎖線で示す板材Wは、原点位置にセットされた際のクランプ44との関係を表し、実線で示す板材Wは、掴み換え動作完了後のクランプ44との位置関係を表している。また、図5(a)、図6(b)、図7(b)は、掴み換え量ゼロ"0"(掴み換え不要)の場合に、実線で示す板材Wは、原点位置にセットされた際のクランプ44との位置関係を表している。
【0065】
図9におけるステップS206の終了後又は図9におけるステップS203のYesの場合に、前述のように、板材Wに対してパンチ加工を行う(図9におけるステップS207)。
【0066】
要するに、前述のように、掴み換え判断部80は、クランプ配置情報と板材Wの幅寸法Kとに基づいて、複数のクランプ44の掴み換え量δを取得する。そして、掴み換え制御部88は、複数のクランプ44の掴み換え量δがゼロ"0"でない場合に、板材Wの原点セットを行った直後に、複数のクランプ44の掴み換え量δに基づいて、複数のクランプ44の掴み換え動作を実行する。これにより、幅寸法Kの異なる種々の板材Wをパンチ加工する前にその都度オーバーハング量λを小さくするために、キャリッジ36に対する複数のクランプ44の位置(配置状態)を板材Wの大きさを考慮して変更する段取り作業を行う必要がない。よって、容易に板材Wのオーバーハング量λを小さくしつつ、パンチ加工を行うことができる。
【0067】
従って、本発明の実施形態によれば、幅寸法Kの異なる種々の板材Wに対してパンチ加工を行う場合に、板材Wの加工精度を十分に確保しつつ、パンチプレス10の生産性を高めることができる。
【0068】
(本発明の実施形態の変形例)
図10に示すように、本発明の実施形態の変形例おいては、プログラム作成装置76は、テーブル記憶部90としての機能を有している。また、プログラム作成装置76は、クランプ選択部82と掴み換え量算出部84を含む掴み換え判断部80(図4参照)としての機能に代えて、他の掴み換え判断部92としての機能を有している。そして、テーブル記憶部90及び掴み換え判断部92の内容は、次の通りである。
【0069】
図11に示すように、テーブル記憶部90は、クランプ配置情報を予め設定した状態の下で、板材Wの幅寸法(X軸方向の寸法)Kの範囲と複数のクランプ44の掴み換え量δとの関係を示す掴み換え量テーブルを記憶する。更に、掴み換えテーブルは、板材Wの幅寸法に応じて、加工時(パンチ加工時)に使用する複数のクランプ44の情報も含む。掴み換え量テーブル中における複数のクランプ44の掴み換え量δがゼロ"0"は、加工時に使用する複数のクランプ44と原点セット時に使用する複数のクランプ44が完全に一致して、複数のクランプ44の掴み換えが不要であることを示している。
【0070】
ここで、予め設定したクランプ情報は、例えば、次のようになる。キャリッジ36の右端から第1クランプ441の中心までの距離CLaは、100mmであり、クランプ441の中心から第2クランプ442の中心までの距離CLbは、500mである。クランプ442の中心からクランプ443の中心までの距離CLcは、1000mであり、クランプ443の中心からクランプ444の中心までの距離CLdは、700mmである。クランプ441の中心からクランプ443の中心までの距離CLeは、1500mであり、クランプ441の中心からクランプ444の中心までの距離CLfは、2200mmである。クランプ44の把持部(上部クランプ爪50)の幅寸法Vは、50mmである。
【0071】
なお、図11の掴み換え量テーブルに示す各条件や演算式は、前述のクランプ情報の対応する例である。パンチプレス10の大きさやクランプ44の個数や取付位置等が異なる場合は、それぞれ予め条件式や演算式を決定し、掴み換え量テーブルに記憶しておくことになる。
【0072】
掴み換え判断部92は、掴み換え量テーブルを参照しつつ、入力された板材Wの幅寸法Kに基づいて、複数のクランプ44の掴み換え量δを取得する。換言すれば、掴み換え判断部92は、掴み換え量テーブルを参照しつつ、入力された板材Wの幅寸法Kに基づいて、板材の幅寸法の何れかの範囲に該当するかを判断し、複数のクランプ44の掴み換えの必要性の有無を判断する。そして、掴み換え判断部92は、複数のクランプ44の掴み換えが必要であると判断した場合は、複数のクランプ44の掴み換え量δを演算により取得する。
【0073】
そして、本発明の実施形態の変形例において、図9におけるステップS101~S113の処理に代えて、掴み換え判断部92は、掴み換え量テーブルを参照しつつ、入力された板材Wの幅寸法Kに基づいて、複数のクランプ44の掴み換え量δを取得する。
【0074】
本発明の実施形態の変形例においても、前述の本発明の実施形態と同様の作用及び効果を奏するものである。
【0075】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限るものではなく、例えば、次のように種々の態様で実施可能である。
【0076】
掴み換え量判断部82が板材Wの寸法及びクランプ配置情報に基づき掴み換えの必要性の有無を判断した時点で、その結果を作業者に知らせるようにプログラム作成装置76やNC装置86の画面に表示させてもよい。そして、作業者はその表示を基づいて複数のクランプ44の位置(配置状態)を変更することも可能である。
【0077】
プログラム作成装置76の代わりに、NC装置86が掴み換え判断部80としての機能を有してもよい。プログラム作成装置76の代わりに、NC装置86がテーブル記憶部90としての機能及び掴み換え判断部92としての機能を有してもよい。また、パンチプレス10に適用した技術的思想をレーザ加工機(図示省略)等の他の板材加工機に適用してもよい。
【0078】
そして、本発明に包含される権利範囲は、前述の実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0079】
10 パンチプレス
12 本体フレーム
14 支持フレーム
16 テーブルユニット
18 センタ固定テーブル
20 可動テーブル
22 サイド固定テーブル
24 ロケートピン
24f 突当て面
26 板材位置決めユニット
28 キャリッジベース
30 Y軸モータ(XY軸移動手段)
32 Y軸ボールネジ
34 ナット部材
36 キャリッジ
38 X軸モータ
40 X軸ボールネジ
42 ナット部材
44 クランプ
441 クランプ
442 クランプ
443 クランプ
444 クランプ
48 下部クランプ爪
50 上部クランプ爪
54 突当て部材
54f 突当て面
56 板材保持ユニット
58 保持シリンダ
60 作動ロッド
62 保持パッド
64 支持パッド
66 パンチ金型
68 上部タレット
70 ダイ金型
72 下部タレット
74 ストライカ
76 プログラム作成装置
78 入力部
80 掴み換え判断部
82 クランプ選択部
84 掴み換え量算出部
86 NC装置
88 掴み換え制御部
90 テーブル記憶部
92 掴み換え判断部
PP 加工位置
PL パスライン
W 板材(板金)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11