(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B65H 37/04 20060101AFI20220714BHJP
B65H 31/34 20060101ALI20220714BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
B65H37/04 D
B65H31/34
G03G15/00 432
G03G15/00 434
(21)【出願番号】P 2018142187
(22)【出願日】2018-07-30
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】原 義志
【審査官】沖 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-054760(JP,A)
【文献】特開平02-276690(JP,A)
【文献】特開2008-030932(JP,A)
【文献】特開平08-164686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/00-31/40
B65H 37/00-37/06
B65H 39/00-39/16
G03G 15/00
B42C 3/00
B42C 5/00
G07D 11/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の用紙が載置される載置トレイと、
前記用紙の一方の端辺と向かい合う他方の端辺に対して、
それぞれ当接しながら移動可能に対向し、
前記一方の端辺と前記他方の端辺と
が垂直方向に対して同一方向にずれるように、前後いずれか同一方向に傾倒可能な整合板と、
前記整合板の移動と、前記整合板の傾倒により、所定の用紙ずれ量だけずらした用紙ずれが生じるよう前記複数の用紙を前記整合板で整合させる駆動部と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記複数の用紙の枚数と厚みとに基づいて、
前記整合板を傾倒させる傾倒角を算出する算出手段を有し、
前記駆動部は前記算出した傾倒角になるように前記整合板の傾倒を駆動させる
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記傾倒角をθ、前記枚数をm、前記厚みをd、前記用紙ずれ量をwとしたときに、下記(数式1)を用いて前記傾倒角を算出する
tanθ=w/(m×d) (数式1)
ことを特徴とする請求項2記載の印刷装置。
【請求項4】
印字済みの用紙を排紙する排紙部を有し、前記載置トレイにおける複数の用紙の載置は、前記排紙部の排紙によって行われ、
前記駆動部は、前記排紙部から1枚又は複数枚排紙させる毎に前記整合板の移動動作と、前記整合板の傾倒動作とを行うこと
を特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記複数の用紙は、前記一方の端辺から始まる所定の余白領域以外に画像が印字されたものであり、
前記複数の用紙を貫通するステープルの位置を決めることができるステープル部を、さらに備え、
前記ステープル部は前記所定のずれ量に基づいて、前記余白領域内で前記複数の用紙を貫通するステープルの位置を決める
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の用紙をステープルして用紙束を作製するステープル部を設けた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置において印刷された複数枚の用紙を四隅が直角に揃うようにステープルして用紙束を作製するステープル機能を有する印刷装置が知られている。
【0003】
このステープルされた用紙束は、ユーザにとって用紙束が開き易い、即ち、ページがめくり易い方が好ましい。
【0004】
そこで、特許文献1には、ステープル綴じ用のトレイへのシートの排出方向とシート上に形成された画像の向きとが平行か垂直かと、綴じ結果の開き方向が左右開きであるか上下開きであるかとの組合せに応じて、ステープルの綴じ角度や綴じ位置を基準状態から変更するシート処理装置に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたシート処理装置のように、ステープルの綴じ角度や綴じ位置を基準状態から変更したとしても、ステープルされた用紙束から用紙を1枚ずつめくり易くなるわけではない。
【0007】
ユーザは用紙束の端を指でずらしながらページをめくるが、このとき、厚紙や薄紙等
用紙の種類によっては重なり合った複数の用紙を同時にめくってしまう場合があった。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、用紙を1枚ずつめくり易くする印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷装置の特徴は、
複数の用紙が載置される載置トレイと、
前記用紙の一方の端辺と向かい合う他方の端辺に対して、
それぞれ当接しながら移動可能に対向し、
前記一方の端辺と前記他方の端辺間に向かう方向に傾倒可能な整合板と、
前記整合板の移動と、前記整合板の傾倒により、所定の用紙ずれ量だけずらした用紙ずれが生じるよう前記複数の用紙を前記整合板で整合させる駆動部と、
を備えたことにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る印刷装置の特徴によれば、用紙を1枚ずつめくり易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る印刷装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図3】(a)は、整合部とステープル部5とを示した平面図であり、(b)は、整合部とステープル部とを示した排紙台側から見た側面図である。
【
図4】整合板をA1方向に傾倒する場合の傾斜角の算出を説明した説明図である。
【
図5】(a)は、
図4に示したA1方向に整合板を傾倒角θだけ傾倒させた例を示しており、(b)は、
図4に示したA2方向に整合板を傾倒角θだけ傾倒させた例を示している。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る印刷装置における処理手順を示したフローチャートである。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る印刷装置における整合部とステープル部とを示した平面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る印刷装置により作製された用紙束の例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一若しくは同等の部位や構成要素には、同一若しくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0013】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る印刷装置の概略構成図、
図2は、
図1に示す印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。以下の説明において、ユーザが位置する
図1の紙面表方向を前方とする。また、
図1に示すように、ユーザから見て、上下左右を上下左右方向とする。
【0015】
図1において太線で示す経路が、印刷媒体である用紙Pが搬送される搬送経路である。搬送経路のうち、実線で示す経路が通常経路RC、一点鎖線で示す経路が反転経路RR、破線で示す経路が排紙経路RD、二点鎖線で示す経路が給紙経路RSである。以下の説明における上流、下流は、搬送経路における上流、下流を意味する。
【0016】
図1、
図2に示すように、本発明の第1実施形態に係る印刷装置1は、給紙部2と、印刷部3と、排紙部4と、前記複数の用紙にステープルする位置を決め、また複数の用紙にステープルすることができるステープル部5と、制御部6と、各部を収納または保持する筐体7とを備える。またステープル部5は所定のずれ量に基づいて、余白領域内で前記複数の用紙を貫通するステープルの位置を決めることができる。複数の用紙とは、一方の端辺から始まる所定の余白領域以外に画像が印字されたものであり、ステープル部は所定のずれ量に基づいて、後述する余白領域内で複数の用紙を貫通するステープルの位置を決める。
【0017】
給紙部2は、印刷部3に用紙Pを給紙する。給紙部2は、搬送経路の最も上流側に配置されている。給紙部2は、給紙台11と、給紙ローラ12と、給紙ローラ12を駆動させるモータ(図示せず)とを備える。
【0018】
給紙台11は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。給紙台11は、一部が筐体7の外部に露出して設置されている。
【0019】
給紙ローラ12は、給紙台11から用紙Pを1枚ずつ取り出し、給紙経路RSに沿って印刷部3へ向けて搬送する。
【0020】
印刷部3は、給紙された用紙Pを搬送しつつ印刷を行い、印刷された用紙Pを排紙部4へ搬送する。印刷部3は、レジスト部21と、ベルト搬送部22と、インクジェットヘッド部23と、上面搬送部24と、反転部25とを備える。
【0021】
レジスト部21は、給紙部2または反転部25から搬送されてきた用紙Pをベルト搬送部22へと送り出す。レジスト部21は、レジストローラ対26と、レジストローラ対26を駆動させるモータ(図示せず)とを備える。
【0022】
レジストローラ対26は、給紙部2または反転部25から搬送されてきた用紙Pを一旦止めた後、用紙Pをニップしつつ印刷部3へ搬送する。レジストローラ対26は、給紙経路RSと反転経路RRとの合流地点の近傍の通常経路RC上に配置されている。
【0023】
ベルト搬送部22は、レジストローラ対26から搬送されてきた用紙Pをベルト上に吸着保持して上面搬送部24へ搬送する。ベルト搬送部22は、レジストローラ対26の下流側に配置されている。ベルト搬送部22は、図示しないモータにより駆動される。
【0024】
インクジェットヘッド部23は、用紙Pの搬送方向と略直交する方向(前後方向)に複数のノズルが配列されたライン型の複数のインクジェットヘッド(図示せず)を有する。インクジェットヘッド部23は、ベルト搬送部22の上方に配置されている。インクジェットヘッド部23は、ベルト搬送部22により搬送される用紙Pにインクジェットヘッドからインクを吐出して画像を形成する。
【0025】
上面搬送部24は、ベルト搬送部22から搬送されてきた用紙Pを右方向から左方向へとUターンするように搬送する。上面搬送部24は、複数の上面搬送ローラ対27と、複数の上面搬送ローラ対27を駆動させる複数のモータ(図示せず)とを備える。
【0026】
上面搬送ローラ対27は、用紙Pをニップしつつ搬送する。上面搬送ローラ対27は、ベルト搬送部22と反転部25との間の通常経路RCに沿って配置されている。
【0027】
反転部25は、片面印刷済みの用紙Pを反転させてレジストローラ対26へ搬送する。反転部25は、反転ローラ対31と、スイッチバックローラ対32と、再給紙ローラ対33と、切替ゲート34と、反転ローラ対31を駆動させるモータ(図示せず)と、スイッチバックローラ対32を駆動させるモータ(図示せず)と、再給紙ローラ対33を駆動させるモータ(図示せず)とを備える。
【0028】
反転ローラ対31は、後述の切替部36により反転経路RRへ導かれた用紙Pをニップしつつスイッチバックローラ対32へ搬送する。反転ローラ対31は、反転経路RRの上流域に沿って配置されている。
【0029】
スイッチバックローラ対32は、反転ローラ対31により搬送されてきた用紙Pをスイッチバックして再給紙ローラ対33へ搬送する。スイッチバックローラ対32は、反転経路RRに沿って、反転ローラ対31と再給紙ローラ対33との間に配置されている。スイッチバックローラ対32は、用紙Pのスイッチバックを行うため正逆転可能に構成されている。
【0030】
再給紙ローラ対33は、スイッチバックローラ対32によりスイッチバックされた用紙Pをレジストローラ対26へ搬送する。再給紙ローラ対33は、反転経路RRに沿って、スイッチバックローラ対32とレジストローラ対26との間に配置されている。
【0031】
切替ゲート34は、反転ローラ対31により搬送されてきた用紙Pをスイッチバックローラ対32へとガイドする。また、切替ゲート34は、スイッチバックローラ対32によってスイッチバックされた用紙Pを再給紙ローラ対33へとガイドする。
【0032】
排紙部4は、印刷済みの用紙Pを排紙する。排紙部4は、上面搬送部24の下流側に配置されている。排紙部4は、切替部36と、第1排紙ローラ対37と、第2排紙ローラ対38と、排紙台39と、整合部40とを備える。
【0033】
切替部36は、用紙Pの搬送経路を排紙経路RDと反転経路RRとの間で切り替える。切替部36は、排紙経路RDと反転経路RRとの分岐点に配置されている。
【0034】
第1排紙ローラ対37は、切替部36により反転経路RRへ導かれた用紙Pを第2排紙ローラ対38へ搬送する。第1排紙ローラ対37は、切替部36の下流側に配置されている。
【0035】
第2排紙ローラ対38は、第1排紙ローラ対37から搬送されてきた用紙Pを排紙台39へ排紙する。また、第2排紙ローラ対38は、ステープル機能が用いられる場合は、ステープル部5で作製された用紙束を排紙台39へ排紙する。第2排紙ローラ対38は、第1排紙ローラ対37の下流側に配置されている。
【0036】
ここで、第2排紙ローラ対38では、モータにより回転駆動されるローラである上側のローラと、上側のローラに従動回転する下側ローラとが、接離可能に構成されている。また、第2排紙ローラ対38は、正逆転可能に構成されている。これにより、第2排紙ローラ対38は、第1排紙ローラ対37を抜けた用紙Pをステープル部5へ送る。第2排紙ローラ対38とステープル部5との間には、用紙Pを整合する整合部40が設けられている。
【0037】
整合部40は、ステープル部5でステープルされる用紙Pを載置する載置トレイ41と、この載置トレイ41に対して傾倒可能に配置された整合板43と、整合板43を傾倒させるモータ(図示せず)と、ステープル部5へと搬送される用紙Pを検出するセンサ44とを備える。
【0038】
載置トレイ41に載置された用紙Pは、整合板43により所定の用紙ずれが生じるように整合された状態で、ステープル部5でステープルされる。第2排紙ローラ対38は、ステープルされた用紙束をニップして排紙台39へと排紙する。
前記整合板43は、前記用紙の一方の端辺と向かい合う他方の端辺に対して、それぞれ当接しながら移動可能に対向し、前記モータ(駆動部)で、前記一方の端辺と前記他方の端辺間に向かう方向に傾倒可能であり、前記整合板43の移動と、前記整合板43の傾倒により、所定の用紙ずれ量だけずらした用紙ずれが生じるよう前記複数の用紙を前記整合板43で整合させる。
【0039】
排紙台39は、第2排紙ローラ対38により排紙された用紙Pが積載されるものである。ステープル機能が用いられる場合は、ステープル部5で作製された用紙束が排紙台39に積載される。排紙台39は、第2排紙ローラ対38の下流側に配置されている。排紙台39は、下流側(左側)ほど高くなるように傾斜している。
【0040】
ステープル部5は、第2排紙ローラ対38から送られる印刷された複数枚の用紙Pを部単位でステープルして用紙束を作製する。ステープル部5は、用紙束におけるステープルによる針の位置(ステープル位置)を変更可能に構成されている。
【0041】
制御部6は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。制御部6は、図示しないネットワークを介して接続されたコンピュータから印刷ジョブを受信し、受信した印刷ジョブに基づいて印刷装置1の各部の動作を制御する。印刷ジョブには、1部当たりの印刷枚数、部数、用紙ずれ量、用紙の厚みを含む印刷条件データと、画像データとが含まれている。用紙ずれ量Wの設定は、印刷ジョブが生成される際に、ユーザ入力に基づいて設定される。入力の設定は、例えば0.05mm~5.0mmのように紙1枚毎の用紙ずれ量を数値データとして入力されるようにしてもよいし、「短」、「中」、「長」のように、予め用紙ずれ量Wの合算した数値の目安であるいずれが選択されることにより、対応する数値データに置き換えて設定されるようにしてもよい。また、用紙の厚みは、印刷ジョブが生成される際に、ユーザ入力に基づいて設定される。入力の設定は、数値データとして入力されるようにしてもよいし、用紙の種類が選択されることにより、選択された用紙種類に対応する厚みを設定されるようにしてもよい。
【0042】
制御部6は、載置トレイ41に載置された複数の用紙Pの枚数と厚みとに基づいて、整合板43を傾倒させる傾倒角を算出し、算出した傾倒角になるように整合板43を傾倒させる算出手段を有している。
【0043】
図3(a)は、整合部40とステープル部5とを示した平面図であり、
図3(b)は、整合部40とステープル部5とを示した排紙台39側から見た側面図である。
【0044】
図3(a),(b)に示すように、載置トレイ41は、
図1にも示したように第2排紙ローラ対38から用紙Pが搬送されてくる位置に配置されており、用紙Pの最大サイズに応じた大きさを有している。
【0045】
整合板43は、一対の整合板43A,43Bで構成されており、それぞれ、
図3に示すように載置トレイ41上に用紙Pの搬送方向(
図3上、左右方向)に対し直交する横方向(
図3上、前後方向)に用紙Pの幅(前後方向の長さ)に応じ所定間隔を空けて対向するように配置されている。
【0046】
整合板43A,43Bは、載置される用紙の幅に基づいて、モータ45A,45Bの駆動により用紙幅方向(
図3上、前後方向)に待機位置WTから整合位置AJまで移動できるように設けられている。
【0047】
例えば、B4サイズ(257×364mm)では、待機位置WTは、整合板43A,43Bの内側面間の距離がB4サイズの用紙Pの幅である257mmに例えば±5mmを加算した267mmとなる位置で離間しており、整合位置AJは、整合板43A,43Bの内側面間の距離が257mmで用紙と当接する位置である。すなわち、整合板43A,43Bが、搬送されてきた用紙Pを整合板43A,43Bで受けると共に、待機位置WTと整合位置AJとの間で用紙幅方向にスライド移動することで、載置された用紙Pを幅方向に当接するように狭めて、整合することができる。
【0048】
また、一対の整合板43A,43Bは、複数の用紙Pが載置トレイ41に載置した後、モータ45A,45Bの駆動により載置トレイ41に対する垂直方向からA1方向またはA2方向に傾倒し、整合することもできる。これにより、載置トレイ41に載置された複数の用紙Pに所定の用紙ずれ量wが生じる。この用紙ずれ量wは、1部に相当する枚数の用紙Pが載置トレイ41に載置されたときにおける最上位の用紙Pの端部から最下位の用紙Pの端部の前後方向の距離である。
【0049】
制御部6は、1部に相当する枚数の用紙Pが載置トレイ41に載置されたときに用紙ずれ量wが所定の長さとなるように一対の整合板43A,43Bの傾倒角を算出する。
【0050】
図4は、整合板43BをA1方向に傾倒する場合の傾斜角の算出を説明した説明図である。ここでは、整合板43Bを例に挙げて模式的に示して説明するが、整合板43Aについても同一の傾倒角となるので、説明を省略する。また、整合板43A,43BをA2方向に傾倒する場合においても同様に算出することができる。
【0051】
載置トレイ41に載置された1部に相当する枚数の用紙Pの高さをhとすると、整合板43BのA1方向への傾倒角θは、以下の(数式1)で表される。
【0052】
tanθ=w/h=w/(m×d) (数式1)
高さhは、印刷ジョブの印刷条件データに含まれる1部当たりの印刷枚数mに用紙の厚みdを乗算することにより算出される。用紙ずれ量wは、印刷ジョブの印刷条件データに含まれている。
【0053】
そこで、制御部6は、印刷ジョブの印刷条件データに含まれた印刷枚数mと厚みdと用紙ずれ量wとに基づいて、整合板43Bを傾倒させる傾倒角θを算出する。そして、制御部6は、算出した傾倒角θとなるように、図示しないモータを制御して整合板43Bを傾倒させる。
【0054】
そして、制御部6は、
図3及び
図4に示すように、ステープル部5を制御して、整合板43Bが傾倒された状態で、載置トレイ41に載置された用紙Pを、用紙Pの端部を基準点K(0,0)としたときのステープル位置(x,y)で、用紙束が全て貫通するようにステープル針101をステープル止めする。ステープル位置yは、前後方向における、載置された最上位の用紙Pの端部からステープル幅wsだけ離れた位置に設けられている。ステープル位置xは、左右方向において固定値で、用紙Pの印字面に重ならない余白の位置である。ここで、用紙ずれ量wがステープル幅wsを超えると、載置された複数の用紙Pのうち一部の用紙Pしかステープルされないことになる。そのため、用紙ずれ量wはステープル幅wsを超えない範囲で設定される。
【0055】
このように、整合板43BをA1方向に傾倒角θだけ傾倒させることにより、用紙ずれ量wだけずれた状態でステープルすることができるので、ユーザにとってページを1枚ずつめくり易い用紙束を作製することができる。
【0056】
図5(a),(b)は、作製された用紙束の例を示している。
図5(a)は、
図4に示したA1方向に整合板43Bを傾倒角θだけ傾倒させた例を示しており、
図5(b)は、
図4に示したA2方向に整合板43Bを傾倒角θだけ傾倒させた例を示している。
【0057】
また
図5(a)に示すように、用紙束は、用紙Pの幅方向に用紙ずれ量wだけ用紙ずれした状態の位置で用紙束が全て貫通するようにステープル針101によりステープル止めされている。用紙ずれ量wはステープル幅wsを超えないように設定されているので、ステープル針101は、用紙ずれ量wより用紙Pの幅方向に内側にステープルされている。これにより、載置された複数の用紙Pの全てをステープルすることができる。
【0058】
図5(b)に示した例も同様に、A2方向に整合板43Bを傾倒角θだけ傾倒させた場合においても、用紙ずれ量wはステープル幅wsを超えないように設定されているので、ステープル針102は、用紙ずれ量wより用紙Pの幅方向に内側にステープルされている。
【0059】
このように、用紙束は、用紙ずれ量wだけずれた状態でステープルされているので、ユーザは用紙ずれが生じた箇所を指でずらしながらページを1枚ずつめくることができる。
【0060】
<作用>
図6は、本発明の第1実施形態に係る印刷装置1における処理手順を示したフローチャートである。
【0061】
制御部6は、印刷ジョブを受信すると(ステップS101;YES)、印刷ジョブの印刷条件データから、印刷枚数、部数、用紙ずれ量、用紙の厚みを取得する(ステップS103)。
【0062】
制御部6は、一対の整合板43A,43Bを待機位置WTに移動させ(ステップS105)、各搬送経路上の搬送ローラの回転を開始するなど用紙Pの搬送準備を行う(ステップS107)。
【0063】
次に、制御部6は、印刷ジョブの印刷条件データに含まれた印刷枚数mと厚みdと用紙ずれ量wとに基づいて、上述した(数式1)を用いて整合板43Bを傾倒させる傾倒角θを算出する(ステップS109)。
【0064】
そして、制御部6は、算出した傾倒角θとなるように、図示しないモータを制御して一対の整合板43A,43Bを傾倒させた後(ステップS111)、給紙部2から用紙Pの給紙を開始し、各搬送経路上で用紙Pを搬送する(ステップS113)。
【0065】
次に、制御部6は、印刷ジョブに基づいて最終部のステープルが終了したか否かを判定する(ステップS115)。
【0066】
最終部のステープルが終了したと判定された場合(ステップS115;YES)、搬送を停止し、印刷動作を終了する(ステップS117)。
【0067】
最終部のステープルが終了していないと判定された場合(ステップS115;NO)、制御部6は、印刷・ステープル動作を継続する必要がある。
【0068】
そこで、センサ44が搬送経路RDを搬送されてくる用紙Pを検知すると(ステップS121)、制御部6は、検出された用紙Pが印刷している部の中で最終用紙か否かを判定する(ステップS123)。
【0069】
最終用紙ではないと判定された場合(ステップS123;NO)、制御部6は、1回のみ整合動作を行う。(ステップS125)。
ここで、整合動作とは、一対の整合板43A,43Bを待機位置WTから整合位置AJへ平行移動し、前記一対の整合板43A,43Bを傾倒すると共に、傾倒後の整合板43A,43Bに用紙Pを1枚づつ搬送し、少なくとも2枚以上の用紙Pからなる用紙束になった際、当該用紙Pを段揃えできる用紙ずれ量Wを設ける動作をいう。1回の整合動作で、複数の用紙Pを幅方向に整合させることができる。
【0070】
そして、制御部6は、一対の整合板43A,43Bが傾倒した状態で待機位置WTから、整合位置AJへスライド移動する(ステップS127)。
【0071】
一方、最終用紙であると判定された場合(ステップS123;YES)、この最終用紙を含めて載置トレイ41に載置された複数の用紙Pを用紙束として整合した上でステープルする必要がある。
【0072】
そこで、制御部6は、複数回の整合動作を行う(ステップS131)。具体的には、一対の整合板43A,43Bを傾倒した状態で待機位置WTから整合位置AJへスライド移動する動作を複数回繰り返し実行する。なお、用紙1枚ごとに、一対の整合板43A,43Bを待機位置WTから整合位置AJへ移動し、傾倒したまま用紙Pに用紙ずれ量Wである段を設けるよう、複数回にわたり整合動作を行ってもよい。
【0073】
その後、制御部6は、ステープル部5を制御して、載置トレイ41に載置された用紙Pをステープル位置でステープルする(ステップS133)。これにより、部単位で整合された用紙束を作製することができる。
【0074】
ステープルされると、制御部6の指示に基づいて、第2排紙ローラ対38が、ステープルされた用紙束をニップして排紙台39へと排紙する(ステップS135)。
【0075】
そして、制御部6は、一対の整合板43A,43Bを整合位置AJから待機位置WTへスライド移動する(ステップS137)。
【0076】
このように、本発明の第1実施形態に係る印刷装置1によれば、制御部6が、載置トレイ41に載置された複数の用紙Pに所定の用紙ずれが生じるように一対の整合板43A,43Bを傾倒させた状態で複数の用紙Pを整合させるので、所定の用紙ずれが生じた状態でステープルされて用紙束が作製されることになる。これにより、ユーザは用紙ずれが生じた箇所を指でずらしながらページをめくることで、簡単に用紙を1枚ずつめくることができる。
【0077】
なお、本発明の第1実施形態に係る印刷装置1では、
図6のフローチャートに示したように、用紙Pの搬送準備(ステップS107)を行った後に、傾倒角θを算出し(ステップS109)、一対の整合板43A,43Bを傾倒させて(ステップS111)、用紙Pを搬送した(ステップS113)が、これに限らない。
【0078】
例えば、用紙Pの搬送準備(ステップS107)を行った後に、ステップS109~S111の処理を実行することなく、一対の整合板43A,43Bを載置トレイ41に対して垂直方向(上方)に起立させ、ステップS123において最終用紙ではないと判定された場合に(NO)、ステップS109~S111の処理を実行するようにしてもよい。
【0079】
また、ステップS109~S111の処理は、ステップS131において複数回の整合動作を行った後に実行するようにしてもよい。
【0080】
この場合、用紙Pの搬送準備(ステップS107)の直後にステップS109~S111の処理を実行する場合と比較して、載置トレイ41への用紙Pの排出時には一対の整合板43A,43Bは垂直方向(上方)に起立しているので、用紙Pが一対の整合板43A,43Bに衝突する恐れがない。
【0081】
一方、用紙Pの搬送準備(ステップS107)の直後にステップS109~S111の処理を実行する場合、一対の整合板43A,43Bが傾倒した状態で、用紙Pが載置トレイ41へ排出されるので、より適切に整合される。
【0082】
なお、本発明の第1実施形態に係る印刷装置1では、
図4に示したように、制御部6は、ステープル部5を制御して、整合板43Bが傾倒された状態で、載置された最上位の用紙Pの端部からステープル幅wsだけ離れた位置をステープル位置としてステープルされる例について説明した。
【0083】
本発明の第1実施形態では、用紙ずれ量wはステープル幅wsを超えないように設定されているので、ステープルwsは固定値としたが、この値を用紙ずれ量wに応じて変更するようにしてもよい。
【0084】
例えば、
図4に示した、前後方向における最下位の用紙Pの端部から用紙Pの内側(前方向)に、余白領域sだけずれた位置をステープル位置としてもよい。ここでは、余白領域sは予め固定値として設定されており、前後方向における最下位の用紙Pの端部から画像が印字された印字領域の端部までの領域である。この余白領域sと用紙ずれ量wとの和がステープルwsとなる。
【0085】
この場合、余白領域sは固定値であるので、常に、最上位の用紙Pの端部から余白領域sだけ内側にずれた位置にステープルされることになる。そのため、よりユーザにとってめくり易い用紙束を作製することができる。
【0086】
ただし、ステープルの位置は、余白領域sだけずれた位置ではなくこの余白領域s内としてもよい。
【0087】
なお、印刷条件データに、用紙ずれ量の代わりに、一枚当たりの用紙ずれ量を含むようにしてしてもよい。この場合、一枚当たりの用紙ずれ量に1部当たりの印刷枚数を乗算することにより、高さhを算出することができる。
【0088】
<第2実施形態>
本発明の第1実施形態に係る印刷装置1では、一対の整合板43A,43Bが
図3上の前後方向に対向するように配置されている例を挙げて説明したが、
図3上の用紙Pの搬送方向(左右方向)にさらに整合板43を設けるようにしてもよい。
【0089】
図7は、本発明の第2実施形態に係る印刷装置1における整合部40Aとステープル部5とを示した平面図である。本発明の第2実施形態に係る印刷装置1が備える構成のうち、整合部40A以外は、本発明の第1実施形態に係る印刷装置1が備える構成と同一であるので、説明を省略する。
【0090】
整合部40Aは、載置トレイ41と、この載置トレイ41に対して傾倒可能に配置された整合板43Aと、整合板43Aを傾倒させるモータ(図示せず)と、ステープル部5へと搬送される用紙Pを検出するセンサ44とを備える。
【0091】
整合板43Aは、一対の整合板43A,43Bに加え、一対の整合板43C,43Dを備えている。一対の整合板43C,43Dは、それぞれ、
図7に示すように載置トレイ41上に用紙Pの搬送方向(
図3上、左右方向)に対して用紙Pの長さ(左右方向の長さ)に応じ所定間隔を空けて対向するように配置されている。
【0092】
一対の整合板43C,43Dは、載置される用紙の長さに基づいて、搬送方向(
図7上、左右方向)に待機位置WTと整合位置AJとでスライド移動するように設けられている。一対の整合板43C,43Dは、一対の整合板43A,43Bと同様に、待機位置WTと整合位置AJとでスライド移動することにより、載置された用紙Pを搬送方向に整合することができる。
【0093】
また、一対の整合板43C,43Dは、一対の整合板43A,43Bと同様に、載置トレイ41に対する垂直方向からA1方向またはA2方向に傾倒する。これにより、載置トレイ41に載置された複数の用紙Pに所定の用紙ずれ量wが生じる。この用紙ずれ量wは、1部に相当する枚数の用紙Pが載置トレイ41に載置されたときにおける最上位の用紙Pの端部から最下位の用紙Pの端部の前後方向の距離である。
【0094】
なお、一対の整合板43C,43Dは、載置トレイ41に排出される用紙Pが接触しないように、用紙Pの排出中は、載置トレイ41に対する垂直方向からA1方向またはA2方向に傾倒する傾倒角θが90°(載置トレイ41と平行)となるように制御されている。
【0095】
図8は、本発明の第2実施形態に係る印刷装置1により作製された用紙束の例を示している。
【0096】
図8に示すように、作製された用紙束は、用紙Pの幅方向に用紙ずれ量w(w1)だけ用紙ずれしており、さらに、用紙Pの長さ方向に用紙ずれ量w(w2)だけ用紙ずれしている。そして、用紙ずれした状態でステープル針103によりステープル止めされている。
【0097】
このように、本発明の第2実施形態に係る印刷装置1では、用紙Pの幅方向および長さ方向に、用紙ずれ量wだけ用紙ずれしているので、ユーザは、ユーザは用紙ずれが生じた角を指でずらしながらページをめくることで、簡単に用紙を1枚ずつめくることができる。特に、単語カードのように小さなサイズの用紙Pがステープルされた用紙束を作製する際に有効となる。
【0098】
また、本発明の第1~2実施形態では、ライン単位で印刷を行なうインクジェット方式の印刷装置を例に挙げて説明したが、これに限らず、シリアルインクジェット方式、レーザ方式、又は孔版印刷方式等の用紙を搬送して印刷しステープルする印刷装置であればどのような方式の印刷装置でもよい。
【0099】
(付記)
本出願は、以下の発明を開示する。
【0100】
(付記1)
複数の用紙が載置される載置トレイと、
前記用紙の一方の端辺と向かい合う他方の端辺に対して、
それぞれ当接しながら移動可能に対向し、
前記一方の端辺と前記他方の端辺間に向かう方向に傾倒可能な整合板と、
前記整合板の移動と、前記整合板の傾倒により、所定の用紙ずれ量だけずらした用紙ずれが生じるよう前記複数の用紙を前記整合板で整合させる駆動部と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【0101】
これにより、所定の用紙ずれが生じた状態でステープルされて用紙束が作製されることになる。そのため、ユーザは用紙ずれが生じた箇所を指でずらしながらページをめくることで、簡単に用紙を1枚ずつめくることができる。
【0102】
また、用紙ずれが生じた位置に ステープルすることで綴じモレを防止することができ、載置された複数の用紙全て貫通しステープルすることができる。
【0103】
(付記2)
前記複数の用紙の枚数と厚みとに基づいて、
前記整合板を傾倒させる傾倒角を算出する算出手段を有し、
前記駆動部は前記算出した傾倒角になるように前記整合板の傾倒を駆動させる
ことを特徴とする(付記1)記載の印刷装置。
【0104】
これにより、所定の用紙ずれが生じるような傾倒角を適切に算出することができる。
【0105】
(付記3)
印字済みの用紙を排紙する排紙部を有し、前記載置トレイにおける複数の用紙の載置は、前記排紙部の排紙によって行われ、
前記駆動部は、前記排紙部から1枚又は複数枚排紙させる毎に前記整合板の移動動作と、前記整合板の傾倒動作とを行うこと
を特徴とする(付記1)又は(付記2)に記載の印刷装置。
【0106】
これにより、より正確に所定の用紙ずれが生じるように用紙を整合させることができる。
【0107】
(付記4)
前記複数の用紙は、前記一方の端辺から始まる所定の余白領域以外に画像が印字されたものであり、
前記複数の用紙を貫通するステープルの位置を決めることができるステープル部を、さらに備え、
前記ステープル部は前記所定のずれ量に基づいて、前記余白領域内で前記複数の用紙を貫通するステープルの位置を決める
ことを特徴とする(付記1)乃至(付記3)に記載の印刷装置。
【0108】
これにより、画像が印字された印字部分にステープルされることを防止しつつ、確実に複数の用紙(用紙束)をステープルできる。
【符号の説明】
【0109】
1 印刷装置
2 給紙部
3 印刷部
4 排紙部
5 ステープル部
6 制御部
31 反転ローラ対
32 スイッチバックローラ対
33 再給紙ローラ対
34 切替ゲート
36 切替部
37 第1排紙ローラ対
38 第2排紙ローラ対
39 排紙台
40,40A 整合部
41 載置トレイ
43(43A,43B,43C,43D) 整合板
44 センサ
45(45A,45B) モータ(駆動部)