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特許7105129油性インクジェットインクセット及び印刷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】油性インクジェットインクセット及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/36 20140101AFI20220714BHJP
   C09D 11/40 20140101ALI20220714BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220714BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
C09D11/36
C09D11/40
B41J2/01 501
B41M5/00 120
B41M5/00 100
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018143980
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020019872
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】守永 真利絵
(72)【発明者】
【氏名】志村 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】安藤 一行
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 光
(72)【発明者】
【氏名】大澤 信介
(72)【発明者】
【氏名】菅原 徳朗
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-184214(JP,A)
【文献】特開2007-154149(JP,A)
【文献】特開昭57-006790(JP,A)
【文献】特開2017-155179(JP,A)
【文献】特開2013-166813(JP,A)
【文献】特開2011-162757(JP,A)
【文献】特開2007-290394(JP,A)
【文献】特開2016-121225(JP,A)
【文献】特開2003-265085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-11/54
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材、及び非水系溶剤を含み、前記非水系溶剤は、炭素数4以上の側鎖を有し1分子中の炭素数が20以上である脂肪酸エステルを含む第1の油性インクと、色材、及び非水系溶剤を含み、20%留出温度が300℃以下である第2の油性インクとを備え
前記第2の油性インクは、沸点又は初留点が300℃以下である非水溶性有機溶剤をインク全量に対し20~98質量%で含み、
前記第1の油性インク及び前記第2の油性インクのいずれか一方のインクを記録媒体に吐出し、次いで他方のインクを前記一方のインクの印刷領域の部分又は全体に重ねて吐出する方法に用いる、油性インクジェットインクセット。
【請求項2】
前記第1の油性インクは、前記炭素数4以上の側鎖を有し1分子中の炭素数が20以上である脂肪酸エステルが非水系溶剤全量に対し10質量%以上である、請求項1に記載の油性インクジェットインクセット。
【請求項3】
前記第1の油性インクは、前記炭素数4以上の側鎖を有し1分子中の炭素数が20以上である脂肪酸エステルが非水系溶剤全量に対し40質量%以上である、請求項2に記載の油性インクジェットインクセット。
【請求項4】
前記第1の油性インクがブラックインクであり、前記第2の油性インクがカラーインクである、請求項1から3のいずれか1項に記載の油性インクジェットインクセット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の油性インクジェットインクセットを用いて印刷する方法であって、前記第1の油性インク及び前記第2の油性インクのいずれか一方のインクを記録媒体に吐出し、次いで他方のインクを前記一方のインクの印刷領域の部分又は全体に重ねて吐出する、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性インクジェットインクセット及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、流動性の高いインクジェットインクを微細なノズルから液滴として噴射し、ノズルに対向して置かれた記録媒体に画像を記録するものであり、低騒音で高速印字が可能であることから、近年急速に普及している。このようなインクジェット記録方式に用いられるインクとして、水を主溶媒として含有する水性インク、重合性モノマーを主成分として高い含有量で含有する紫外線硬化型インク(UVインク)、ワックスを主成分として高い含有量で含有するホットメルトインク(固体インク)とともに、非水系溶剤を主溶媒として含有する、いわゆる非水系インクが知られている。非水系インクは、主溶媒が揮発性有機溶剤であるソルベントインク(溶剤系インク)と、主溶媒が低揮発性あるいは不揮発性の有機溶剤である油性インク(オイル系インク)に分類できる。ソルベントインクは主に有機溶剤の蒸発によって記録媒体上で乾燥するのに対して、油性インクは記録媒体への浸透が主となって乾燥する。
【0003】
油性インクでは、用紙等の記録媒体に溶剤が浸透する際に、用紙の裏面にまで溶剤が浸透し、裏抜けが発生することがある。この裏抜けの発生は、油性インクに低揮発性の溶剤が多く含まれると、用紙の裏面まで浸透する溶剤量が増加してより問題になる。低揮発性の溶剤は、用紙の表面に留まって、油にじみの原因にもなる。
【0004】
特許文献1(特開2004-002666号公報)には、50%留出点が280℃以下の非極性有機溶剤を溶剤中に10重量%以上含み、50%留出点が300℃以上の極性有機溶剤を溶剤中に20重量%以上含む非水系インク組成物によって、裏抜け、油にじみの発生を少なくし、さらにノズルの目詰まりを少なくすることが提案されている。
【0005】
一方で、油性インクによって画像形成された印刷物を、ポリプロピレン(PP)製等のクリアファイルに挟み込み保管すると、クリアファイルが変形する問題がある。この一因としては、クリアファイルが印刷面と接すると、インク成分によってクリアファイルの片面が膨潤するためである。
特許文献2(特開2007-154149号公報)では、透明ファイルを膨潤させたり、大きく変形させることなく、高い吐出安定性を有するインクジェット用非水系インク組成物として、顔料と分散剤と非水系溶媒とを含有し、非水系溶媒の全重量の50%以上は、炭素数24以上36以下のエステル系溶媒であるインクを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-002666号公報
【文献】特開2007-154149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、1つのインクの中で、50%留出点の異なる複数の溶剤の配合量を制御することで、裏抜け、油にじみを改善することが提案されている。裏抜けを防止するために、高揮発性の溶剤量を多くすると、用紙にインクが十分に浸透しなくなり、表濃度が低下することがある。また、高揮発性の溶剤は、クリアファイル変形の原因にもなる。
【0008】
特許文献2では、高炭素数のエステル系溶剤の配合量を多くすることで、クリアファイルの変形を防止することが提案されている。高炭素数のエステル系溶剤は、比較的に低揮発性であり、印刷後に用紙の内部に浸透し、裏抜けが発生する原因になる。
また、高炭素数のエステル系溶媒は、比較的に高粘度であるため、このエステル系溶媒を用いたインクではインクジェットノズルからの吐出性能が十分に得られない問題がある。特許文献2では、インクを加熱して粘度を低減させて吐出させている。この場合でも、印刷後には、高炭素数で低揮発性のエステル系溶剤が用紙に留まり、さらに用紙内部に浸透していくため、裏抜けが問題になる。
【0009】
2種以上のインクを用いて、重ねて画像を形成することで、画像の表濃度を高める方法がある。例えば、ブラックインクとカラーインクとを重ねて印刷して、コンポジットブラックの画像を形成する方法がある。このようなインクセットにおいても、上記したクリアファイルの変形、表濃度の低下、裏抜けの発生が問題になる。
【0010】
本発明の一目的としては、印刷物による樹脂製品の変質を防止するとともに、印刷物の表濃度を高め、裏抜けを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態としては、色材、及び非水系溶剤を含み、前記非水系溶剤は、炭素数4以上の側鎖を有し1分子中の炭素数が20以上である脂肪酸エステルを含む第1のインクと、色材、及び非水系溶剤を含み、20%留出温度が300℃以下である第2の油性インクとを備える、油性インクジェットインクセットである。
本発明の他の実施形態としては、上記油性インクジェットインクセットを用いて印刷する方法であって、前記第1のインク及び前記第2のインクのいずれか一方のインクを記録媒体に吐出し、次いで他方のインクを前記一方のインクの印刷領域に重ねて吐出する、印刷方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、印刷物による樹脂製品の変質を防止するとともに、印刷物の表濃度を高め、裏抜けを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を一実施形態を用いて説明する。以下の実施形態における例示が本発明を限定することはない。
【0014】
一実施形態による油性インクジェットインク(以下、単にインクと称することがある。)としては、顔料、及び非水系溶剤を含み、非水系溶剤は、炭素数4以上の側鎖を有し1分子中の炭素数が20以上である脂肪酸エステルを含む第1のインクと、顔料、及び非水系溶剤を含み、20%留出温度が300℃以下である第2の油性インクとを備える、ことを特徴とする。
以下、炭素数4以上の側鎖を有し1分子中の炭素数が20以上である脂肪酸エステルを脂肪酸エステルEとも記す。
【0015】
これによれば、印刷物による樹脂製品の変質を防止するとともに、印刷物の表濃度を高め、裏抜けを防止することができる。
一実施形態によるインクセットでは、記録媒体に、第1のインク及び第2のインクのうち一方を吐出し、次いで他方を重ねて吐出することで、記録媒体上で一方のインクと他方のインクが重ね合わされて、印刷物の表濃度を高めることができるとともに、裏抜けを防止することができる。
さらに、このインクによれば、印刷物をポリプロピレン(PP)製等のクリアファイルで挟み込む場合に、クリアファイルの変形を防止することができる。クリアファイルは透明から半透明の樹脂製シートであり、また、着色された不透明の樹脂製シートであってもよい。
【0016】
クリアファイル、特にポリプロピレン(PP)製のクリアファイルを用いて、印刷物を挟み込む場合、印刷物のインク成分、特に非水系溶剤成分が揮発して、クリアファイルに接触すると、クリアファイルの内側の面が大きく変性し、クリアファイルの外側の面に対して膨潤ないし収縮して、クリアファイルが変形することがある。
これは、油性インクに揮発性溶剤が多く含まれる場合に、揮発性溶剤がクリアファイルの内側の面に接触するようになり、問題になりやすい。
また、油性インクに用いられる非水系溶剤のうち、石油系炭化水素溶剤の構造がクリアファイルのポリプロピレンと似ていると、起こりやすくなる。石油系炭化水素溶剤と同様に、脂肪酸エステル系溶剤、高級脂肪酸系溶剤、高級アルコール系溶剤等においても、ポリプロピレンと構造が似ていると、同様にクリアファイルの変形が発生することがある。
【0017】
一実施形態によるインクセットでは、第1のインクに、炭素数4以上の側鎖を有し1分子中の炭素数が20以上である脂肪酸エステルEが含まれることで、クリアファイルの変形を防止することができる。
この脂肪酸エステルEは、比較的に高炭素数であるため、低揮発性の溶剤であり、印刷後に印刷物からの揮発を抑制することができ、クリアファイルの変形を防止するように作用することができる。
さらに、この脂肪酸エステルEは、炭素数4以上の側鎖を有することで、分子構造が立体的となって嵩高くなり、ポリプロピレン等の直鎖構造の樹脂製品を変質させないようにし、クリアファイルの変形を防止するように作用することができる。
【0018】
この脂肪酸エステルEは、分子構造が立体的であるため、直鎖の非水系溶剤に比べて、表面張力が低くなる傾向がある。この脂肪酸エステルEを含む第1のインクが記録媒体上にドット状に吐出されると、記録媒体上で、低表面張力の脂肪酸エステルEが広がることで、ドット径が広がるようになり、印刷物の表濃度が高くなるように観察される。
また、脂肪酸エステルEは比較的に高分子量であるため、低揮発性の溶剤であり、印刷後に印刷物の表面から揮発しないで、その表面に留まるようになる。低揮発性の溶剤が印刷物表面に留まると、透き通しの現象によって、印刷物の表濃度が高くなるように観察される。
【0019】
クリアファイルの変形を防止するとともに、印刷物の表濃度を高めるために、脂肪酸エステルEを含む第1のインクのみを用いて印刷物を作製すると、印刷後に印刷物の表面から揮発する溶剤成分が少なくなって、透き通しの現象が過剰になり、印刷物の裏抜けが問題になることがある。
これに対して、20%留出温度が300℃以下である第2のインクを用いることで、印刷後に印刷物から非水系溶剤が揮発しやすくなり、第1のインク及び第2のインクを吐出後に、透き通しの現象をある程度抑制して、印刷物の裏抜けを防止することができる。
【0020】
記録媒体としての紙等の表面には微細な繊維状の凹凸があり、この凹凸部分に非水系溶剤が浸透し留まることで、光の拡散が抑制されて、印刷物の表濃度は高く観察されるようになる。この現象が透き通しである。一方で、透き通しの現象が過剰になると、印刷物の裏抜けが悪化するように観察される。
透き通しの観点からは、印刷物の表濃度と裏抜けは相反する効果となるが、第1のインクと第2のインクとを別々に記録媒体に吐出することで、印刷物の表濃度と裏抜けの両効果をバランスよく発揮させることができる。
【0021】
(インクセット)
インクセットは、第1のインクと第2のインクとを備える。
第1のインクは、色材、及び非水系溶剤を含み、非水系溶剤は、炭素数4以上の側鎖を有し1分子中の炭素数が20以上である脂肪酸エステルを含むことが好ましい。
第2のインクは、色材、及び非水系溶剤を含み、20%留出温度が300℃以下であることが好ましい。
また、一実施形態による印刷方法として、上記した油性インクジェットインクセットを用いて印刷する方法であって、第1のインク及び第2のインクのいずれか一方のインクを記録媒体に吐出し、次いで他方のインクを一方のインクの印刷領域に重ねて吐出する、印刷方法を提供することができる。
【0022】
インクの20%留出温度は、熱分析(TG)装置において、インクの温度を23℃から500℃まで15℃/分で昇温させたときのインク全体の質量減少率を100%とした場合の、インク全体の質量が20%減少したときの温度である。
【0023】
第1のインクと第2のインクとは、記録媒体上で互いに重なり合うようにして、印刷されることが好ましい。第1のインクと第2のインクとが記録媒体上で重なり合うことで、それぞれのインクの溶剤が記録媒体上で作用し、クリアファイルの変形をより防止し、また、表濃度及び裏抜けをより改善することができる。第1のインク及び第2のインクの一方の印刷領域の部分又は全体に他方のインクが重なり合うように印刷することが好ましい。
第1のインクと第2のインクとの吐出順序は特に制限されず、第1のインクに次いで第2のインクが吐出されてもよいし、その逆であってもよい。
【0024】
第1のインク及び第2のインクは、それぞれ独立的に、ブラックインクであってもよいし、カラーインクであってもよい。
第1のインク及び第2のインクの少なくとも一方はブラックインクであることが好ましい。さらに、第1のインク及び第2のインクの一方がブラックインクであり、他方がカラーインクであることが好ましい。さらには、第1のインクがブラックインクであり、第2のインクがカラーインクであることが好ましい。
カラーインクとしては、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク等が挙げられる。ブラックインクとカラーインクとを組み合わせて用いる場合は、ブラックとしての表濃度をより高めることができるため、カラーインクはシアンインクであることが好ましい。
【0025】
第1のインク及び第2のインクの吐出量は、それぞれ独立的に、2~50plが好ましく、5~40plがより好ましい。第1のインクの吐出量は、第2のインクの吐出量よりも多いことが好ましい。特に、第1のインクがブラックインクであり、第2のインクがカラーインクである場合は、第1のインクの吐出量は、第2のインクの吐出量よりも多いことが好ましい。
【0026】
例えば、第1のインク及び第2のインクを重ねて印刷して、コンポジットブラックの表濃度をより高めるためには、第1のインクがブラックインクであり、第2のインクがカラーインクであることが好ましい。この場合、ブラックインクである第1のインクの吐出量が多くなるため、第1のインクの脂肪酸エステルEの作用によって、クリアファイルの変形を防止するとともに、印刷物の表濃度をより高めることができる。そして、カラーインクである第2のインクによって、透き通しの現象を抑制して、印刷物の裏抜けの発生をバランスよく防止することができる。
【0027】
第1のインク及び第2のインクは、印刷装置を用いて、記録媒体に一方を吐出した後に他方を吐出し、印刷物を作製することができる。
第1のインク及び第2のインクは、ライン式インクジェットプリンタに好ましく用いることができる。ライン式インクジェットプリンタは、ライン型インクジェットヘッドを備え、ノズルが並んでいる主走査方向に直交する副走査方向に記録媒体を搬送して印刷を行うシステムである。記録媒体の搬送方向に対して、複数のライン型インクジェットヘッドを配列し、一方のライン型インクジェットヘッドに第1のインクを装填し、他方のライン型インクジェットヘッドに第2のインクを装填することで、記録媒体を1回搬送する間に、第1のインク及び第2のインクを連続して記録媒体に吐出して、印刷を行うことができる。
【0028】
インクセットは、第1のインクが1種又は2種以上含まれてもよく、第2のインクが1種又は2種以上含まれてもよい。第1のインクに2種以上のインクが含まれる場合は、互いに同じ色であっても異なる色であってもよい。第2のインクも同様である。
さらに、インクセットは、第1のインク及び第2のインクの他に、その他のインクを含むことができる。例えば、第1のインク及び第2のインクを用いてコンポジットブラックの画像を形成し、その他のインクを用いてカラー画像を形成することができる。
【0029】
(第1のインク)
第1のインクは、色材、及び非水系溶剤を含み、非水系溶剤は、炭素数4以上の側鎖を有し1分子中の炭素数が20以上である脂肪酸エステル(脂肪酸エステルE)を含むことが好ましい。
【0030】
第1のインクは、色材を含むことができる。色材としては、顔料、染料、又はこれらの組み合わせを用いることができる。
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料;及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、銅フタロシアニン顔料等の金属フタロシアニン顔料、及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの顔料は単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
顔料の平均粒子径としては、吐出安定性と保存安定性の観点から、300nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下であり、さらに好ましくは150nm以下である。
顔料は、インク全量に対し、通常0.01~20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から、1~15質量%であることが好ましい。
【0032】
インク中で顔料を安定して分散させるために、顔料とともに顔料分散剤を用いることができる。
顔料分散剤としては、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、ビニルピロリドンと長鎖アルケンとの共重合体、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリエステルポリアミン等が好ましく用いられる。
【0033】
顔料分散剤の市販品例としては、例えば、アイ・エス・ピー・ジャパン株式会社製「アンタロンV216(ビニルピロリドン・ヘキサデセン共重合体)、V220(ビニルピロリドン・エイコセン共重合体)」(いずれも商品名);日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース13940(ポリエステルアミン系)、16000、17000、18000(脂肪酸アミン系)、11200、24000、28000」(いずれも商品名);BASFジャパン株式会社製「エフカ400、401、402、403、450、451、453(変性ポリアクリレート)、46、47、48、49、4010、4055(変性ポリウレタン)」(いずれも商品名);楠本化成株式会社製「ディスパロンKS-860、KS-873N4(ポリエステルのアミン塩)」(いずれも商品名);第一工業製薬株式会社製「ディスコール202、206、OA-202、OA-600(多鎖型高分子非イオン系)」(いずれも商品名);ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK-2155、BYK-9076、9077」(いずれも商品名);クローダジャパン株式会社製「HypermerKD2、KD3、KD11、KD12」(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0034】
顔料分散剤は、上記顔料を十分にインク中に分散可能な量であれば足り、適宜設定できる。例えば、質量比で、顔料1に対し顔料分散剤を0.1~5で配合することができ、好ましくは0.1~1である。また、顔料分散剤は、インク全量に対し、0.01~15質量%で配合することができ、好ましくは0.1~10質量%である。
【0035】
染料としては、当該技術分野で一般に用いられているものを任意に使用することができる。油性インクでは、染料は、インクの非水系溶剤に親和性を示すことで、貯蔵安定性がより良好となるため、油溶性染料を用いることが好ましい。
油溶性染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料等を挙げることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
染料は、インク全量に対し、通常0.01~20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から、1~15質量%であることが好ましい。
【0036】
非水系溶剤は、炭素数4以上の側鎖を有し1分子中の炭素数が20以上である脂肪酸エステル(脂肪酸エステルE)を含むことができる。
【0037】
脂肪酸エステルEの一例には、下記一般式(1)で表される化合物が含まれる。
-COO-R 一般式(1)
一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立的にアルキル基であり、R及びRのうち少なくとも一方のアルキル基は炭素数が4以上の側鎖を有する分岐アルキル基である。
及びRのうち一方が直鎖アルキル基であり、R及びRのうち他方が分岐アルキル基であってもよい。また、R及びRの両方が分岐アルキル基であってもよい。
【0038】
ここで、R及びRの主鎖は、それぞれエステル結合部「-COO-」に結合する炭素原子から数えて最も炭素数が多くなる炭素鎖である。このR及びRの主鎖から分岐する炭素鎖を側鎖とする。R及び/又はRが側鎖を有する場合、それぞれの側鎖は直鎖状でも分岐状でもよい。
また、R及びRにおいて、それぞれエステル結合部に結合する炭素原子から数えて最も炭素数が多くなる炭素鎖が複数存在する場合、側鎖の炭素数が最も多くなるものを主鎖とする。
また、R及びRにおいて、それぞれエステル結合部に結合する炭素原子から数えて最も炭素数が多くなる炭素鎖が複数存在し、複数の炭素鎖に含まれる側鎖の炭素数が同じである場合、側鎖の数が最も少なくなるものを主鎖とする。
【0039】
脂肪酸エステルEにおいて、1つの側鎖の炭素数は4~12が好ましく、4~10がより好ましく、4~8がさらに好ましい。
1つの側鎖は、直鎖アルキル基、又は、さらに分岐し側鎖を有している分岐アルキル基であってもよい。側鎖の炭素鎖が長いことで、脂肪酸エステルEがより嵩高くなるため、脂肪酸エステルEの主鎖に結合する側鎖は直鎖アルキル基が好ましい。
【0040】
脂肪酸エステルEは、1分子中に側鎖を1個又は2個以上有していてもよい。
脂肪酸エステルEに2個以上の側鎖が含まれる場合、少なくとも1個の側鎖の炭素数が4以上であれば、残りの側鎖に炭素数が3以下の側鎖が含まれてもよい。
脂肪酸エステルEに2個以上の側鎖が含まれる場合、1分子中の側鎖の炭素数の合計は、5~20が好ましく、6~12がより好まししい。
【0041】
脂肪酸エステルEにおいて、炭素数4以上の側鎖としては、例えば、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等を挙げることができる。
好ましくは、n-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基である。
【0042】
一般式(1)において、Rが炭素数4以上の側鎖を有する場合、Rの主鎖の炭素数は、6以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましい。
この場合、Rの主鎖の炭素数は、16以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましい。
が炭素数4以上の側鎖を有する場合、Rの全体の炭素数は、9~30が好ましく、10~24がより好ましく、10~20がさらに好ましい。
が炭素数4以上の側鎖を有する場合、Rの主鎖の炭素数、Rの全体の炭素数は、上記Rの場合と同様である。
【0043】
が直鎖状である場合、又は炭素数3以下の側鎖を有する場合は、Rの全体の炭素数は、1~30が好ましく、6~20がより好ましく、8~18がさらに好ましい。
が直鎖状である場合、又は炭素数3以下の側鎖を有する場合は、Rの全体の炭素数は、上記Rの場合と同様である。
及びRの側鎖の炭素数及び主鎖の炭素数は、互いの主鎖の長さ、側鎖の炭素数、脂肪酸エステルE全体の炭素数に応じて調節されるものである。
【0044】
脂肪酸エステルEの1分子中の炭素数は、20以上であることが好ましく、21以上がより好ましい。これによって、脂肪酸エステルEが比較的に低揮発性となり、さらに脂肪酸エステルEが適当な長さの側鎖を備えることで嵩高くなり、クリアファイルへのインク成分の吸収をより抑制することができる。また、嵩高い脂肪酸エステルは低表面張力であるため、透き通しによって表濃度をより高めることができる。
また、脂肪酸エステルEの1分子中の炭素数は、40以下であることが好ましく、30以下がより好ましく、28以下がさらに好ましい。脂肪酸エステルEは高炭素数になると高粘度となることがあるため、脂肪酸エステルEの炭素数がこの範囲であることで、インクを低粘度化して、吐出性能をより改善することができる。
【0045】
脂肪酸エステルEの具体例としては、例えば、ネオペンタン酸2-オクチルドデシル、ヘキサン酸2-ヘキシルデシル、ヘプタン酸2-ヘキシルデシル、オクタン酸2-ブチルオクチル、オクタン酸1-ヘキシルオクチル、オクタン酸2-ヘキシルデシル、2-エチルヘキサン酸2-ヘキシルデシル、ノナン酸2-ブチルオクチル、ノナン酸1-ヘキシルオクチル、デカン酸1-ブチルヘキシル、デカン酸2-ブチルオクチル、ラウリン酸2-ヘキシルデシル、デカン酸2-オクチルドデシル、2-ブチルオクタン酸オクチル、2-ブチルオクタン酸2-エチルヘキシル、2-ブチルオクタン酸ノニル、2-ブチルオクタン酸デシル、2-ブチルオクタン酸1-ブチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、2-ヘキシルデカン酸ヘキシル等を挙げることができる。
これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
脂肪酸エステルEは、これに限定されないが、以下の方法によって製造することができる。
脂肪酸エステルEは、脂肪酸とアルコールとを反応させて得ることができる。原料の脂肪酸及びアルコールのうち少なくとも一方に炭素数4以上の側鎖を有するものを用いる。また、脂肪酸エステルEのアルコール部分に側鎖を導入するために、炭素数9以上で5位以上の位置に水酸基を有する2級アルコールを用いることができる。
反応温度は、脂肪酸及びアルコールの種類に応じて80~230℃の範囲で調節することができる。反応時間は、脂肪酸及びアルコールの種類や、原料の使用量に応じて1~48時間の範囲で調節することができる。エステル化反応に際して生成する水分を除去することが好ましい。
脂肪酸とアルコールとは、モル比で1:1で反応させることが好ましい。
反応に際して、濃硫酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒を適量で用いてもよい。
【0047】
原料となる炭素数4以上の側鎖を有する脂肪酸としては、例えば、2-ブチルオクタン酸、2-ヘキシルデカン酸、2-オクチルドデカン酸等を挙げることができる。
原料となる直鎖脂肪酸又は炭素数3以下の側鎖を有する脂肪酸としては、例えば、酢酸、ブタン酸、ペンタン酸、ネオペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸等を挙げることができる。
【0048】
原料となる炭素数4以上の側鎖を有するアルコールとしては、例えば、2-ブチル-1-オクタノール、2-ヘキシル-1-デカノール、2-オクチル-1-ドデカノール等を挙げることができる。
原料となるヒドロキシ基が5位以上の2級アルコールとしては、例えば、5-デカノール、7-テトラデカノール等を挙げることができる。
【0049】
原料となる直鎖アルコール又は炭素数3以下の側鎖を有するアルコールとしては、例えば、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、1-ドデカノール等を挙げることができる。
【0050】
第1のインクにおいて、非水系溶剤全量に対し、脂肪酸エステルEの量の割合は、10~100質量%が好ましい。
この割合は、10質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。さらに、その他の非水系溶剤の配合によって本発明の効果が阻害されないように、この割合は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
第1のインクにおいて、脂肪酸エステルEは、インク全量に対し、5~98質量%で配合することが好ましく、10~90質量%がより好ましい。
【0051】
第1のインクには、上記した脂肪酸エステルE以外に、その他の非水系溶剤が含まれてもよい。
その他の非水系溶剤としては、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤のいずれも使用できる。なお、一実施形態において、非水系溶剤には、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合しない非水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
【0052】
非極性有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤等の石油系炭化水素溶剤を好ましく挙げることができる。
脂肪族炭化水素溶剤及び脂環式炭化水素溶剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系等の非水系溶剤を挙げることができる。市販品としては、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、カクタスノルマルパラフィンN-10、カクタスノルマルパラフィンN-11、カクタスノルマルパラフィンN-12、カクタスノルマルパラフィンN-13、カクタスノルマルパラフィンN-14、カクタスノルマルパラフィンN-15H、カクタスノルマルパラフィンYHNP、カクタスノルマルパラフィンSHNP、アイソゾール300、アイソゾール400、テクリーンN-16、テクリーンN-20、テクリーンN-22、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号、ナフテゾール160、ナフテゾール200、ナフテゾール220(いずれもJXTGエネルギー株式会社製);アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD40、エクソールD60、エクソールD80、エクソールD95、エクソールD110、エクソールD130(いずれもエクソンモービル社製);モレスコホワイトP-40、モレスコホワイトP-60、モレスコホワイトP-70、モレスコホワイトP-80、モレスコホワイトP-100、モレスコホワイトP-120、モレスコホワイトP-150、モレスコホワイトP-200、モレスコホワイトP-260、モレスコホワイトP-350P(いずれも株式会社MORESCO製)等を好ましく挙げることができる。
芳香族炭化水素溶剤としては、グレードアルケンL、グレードアルケン200P(いずれもJXTGエネルギー株式会社製)、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、ソルベッソ200ND(いずれもエクソンモービル社製)等を好ましく挙げることができる。
石油系炭化水素溶剤の蒸留初留点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることが一層好ましい。蒸留初留点はJIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定することができる。
【0053】
極性有機溶剤としては、脂肪酸エステルE以外のその他の脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等を好ましく挙げることができる。
その他の脂肪酸エステル系溶剤としては、例えば、全体の炭素数が12以上、好ましくは16~30であって、ヘキサン酸ドデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、パルミチン酸ヘキシル、ヘキサン酸ヘキシル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、大豆油メチル、トール油メチル等の直鎖アルキル基を有する溶剤;2-エチルヘキサン酸ドデシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、ラウリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソオクチル、オレイン酸イソプロピル、リノール酸イソブチル、ステアリン酸イソオクチル、大豆油イソブチル、トール油イソブチル、パルミチン酸イソステアリル(炭素数34)等の1分子中の側鎖の炭素数が3以下である溶剤等が挙げられる。
【0054】
高級アルコール系溶剤としては、1分子中の炭素数が6以上、好ましくは12~20の高級アルコール系溶剤を好ましく用いることができ、例えば、1-オクタデカノール、イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソエイコシルアルコール、デシルテトラデカノール等の1級アルコール;2-エチル-1,3-ヘキサンジオール等の2級アルコール等が挙げられる。
高級脂肪酸系溶剤としては、例えば、ラウリン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の1分子中の炭素数が12以上、好ましくは14~20の高級脂肪酸系溶剤等が挙げられる。
【0055】
さらに、その他の非水系溶剤としてシリコーンオイルを挙げることができる。
シリコーンオイルとしては、例えば、鎖状シリコーンオイル、環状シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等を用いることができる。
鎖状シリコーンオイルは、ケイ素数が2~30の鎖状ポリシロキサンであることが好ましくい。鎖状シリコーンオイルのケイ素数は、より好ましくは2~20であり、さらに好ましくは3~10である。
鎖状シリコーンオイルとしては、例えば、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ヘキサデカメチルヘプタシロキサン、ドコサメチルデカシロキサン等の直鎖ジメチルシリコーンオイル、メチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、テトラキス(トリメチルシロキシ)シラン等の分岐ジメチルシリコーンオイル等が挙げられる。
環状シリコーンオイルとしては、ケイ素数が5~9の環状ポリシロキサンであることが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン、オクタデカメチルシクロノナシロキサン等の環状ジメチルシリコーンオイルを好ましく用いることができる。
【0056】
変性シリコーンオイルとしては、鎖状又は環状のジメチルシリコーンオイルの一部のケイ素原子に各種有機基を導入したシリコーンオイルを用いることができる。変性シリコーンオイルとしては、すべてのケイ素原子が炭素原子またはシロキサン結合の酸素原子のいずれかとのみ結合していることが好ましい。変性シリコーンオイルとしては、非反応性シリコーンオイルであることが好ましい。変性シリコーンオイルとしては、その構成原子がケイ素原子、炭素原子、酸素原子、水素原子のみからなることが好ましい。変性シリコーンオイルとしては、例えば、鎖状又は環状のジメチルシリコーンオイルに含まれる少なくとも1つのメチル基が、アルキル基、カルボン酸エステル結合含有基、芳香環含有基、及びエーテル結合含有基からなる群から選択される1種以上によって置換された化合物を用いることができる。
また、変性シリコーンオイルとしては、例えば、鎖状又は環状のジメチルシリコーンオイルに含まれる、少なくとも1つのケイ素原子にアルキレン基を介してさらに別の鎖状又は環状のジメチルシリコーンオイルのケイ素原子が結合する化合物を用いることができる。この場合、アルキレン基を介して結合する鎖状又は環状のジメチルシリコーンオイルに含まれる、少なくとも1つのメチル基は、アルキル基、カルボン酸エステル結合含有基、芳香環含有基、及びエーテル結合含有基からなる群から選択される1種以上によって置換されていてもよい。
変性シリコーンとしては、例えば、アルキル変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイルやアラルキル変性シリコーンオイル等のアリール変性シリコーンオイル、カルボン酸エステル変性シリコーンオイル、アルキレン変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル等が挙げられる。
変性シリコーンオイルとしては、ケイ素数が2~20であることが好ましく、2~10がより好ましく、2~6がさらに好ましく、3~6が一層好ましい。
【0057】
脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等の極性有機溶剤、シリコーンオイルの沸点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。なお、沸点が250℃以上の非水系溶剤には、沸点を示さない非水系溶剤も含まれる。
【0058】
これらの非水系溶剤は、単独で使用してもよく、単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて用いることができる。
第1のインクにおいて、その他の非水系溶剤を配合する場合は、上記したその他の非水系溶剤の中から、沸点又は初留点が300℃超過の非水系溶剤を好ましく用いることができる。
【0059】
(第2のインク)
第2のインクは、色材、及び非水系溶剤を含み、20%留出温度が300℃以下であることが好ましい。
特に説明のない限り、第2のインクにおいて、色材、及び非水系溶剤等の各種成分は、それぞれ上記した第1のインクと共通する成分を用いることができるため、その説明を省略する。
【0060】
第2のインクにおいて、非水系溶剤は、上記した第1のインクで説明した非水系溶剤の中から1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
例えば、第2のインクにおいて、非水系溶剤の種類、量、2種以上を用いる場合は組み合わせ、配合割合等を適宜選択することで、第2のインクの20%留出温度を300℃以下にすることができる。
【0061】
第2のインクの20%留出温度を300℃以下にする観点からは、第2のインクは、沸点又は初留点が300℃以下の非水系溶剤を少なくとも1種含むことが好ましい。
石油系炭化水素溶剤には、複数種類の溶剤成分が含まれる混合溶剤がある。この混合溶剤の場合、初留点から乾点まで温度範囲があるが、乾点が300℃超過であっても初留点が300℃以下である溶剤を好ましく用いることができる。さらに、初留点及び乾点がともに300℃以下である溶剤を用いることがより好ましい。
【0062】
脂肪酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤を含む極性溶剤、シリコーンオイルは、単一成分であるため、初留点と沸点が一致する溶剤であり、沸点が300℃以下である溶剤を好ましく用いることができる。なお、2種以上の溶剤を単離できないで提供される混合溶剤の場合は、沸点に幅がある場合もある。この場合は、沸点の幅の上限値が300℃以下であることが好ましい。
【0063】
第2のインクにおいて、非水系溶剤全量に対し、沸点又は初留点が300℃以下である非水系溶剤の量の割合は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。第2のインクにおいて、高揮発性溶剤の配合量を多くすることで、記録媒体表面から溶剤が揮発するようになり、透き通しの現象を抑制して、印刷物の裏抜けを防止することができる。
さらに、第2のインクにおいて低揮発性溶剤の配合量を制限する観点から、この割合は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
第2のインクにおいて、沸点又は初留点が300℃以下である非水系溶剤は、インク全量に対し、20~98質量%が好ましく、30~95質量%がより好ましく、50~90質量%がさらに好ましい。
【0064】
炭素数4以上の側鎖を有し1分子中の炭素数が20以上である脂肪酸エステル(脂肪酸エステルE)は、比較的に高沸点溶剤であるため、第2のインクにおいて、その配合量が制限されることが好ましい。
第2のインクにおいて、非水系溶剤全量に対し、脂肪酸エステルEの量の割合は、80質量%未満が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、10質量%未満が一層好ましい。第2のインクに、脂肪酸エステルEは含まれなくてもよい。
【0065】
第2のインクにおいて、脂肪酸エステルEは、インク全量に対し、0~80質量%で配合することが好ましく、0~60質量%がより好ましく、0~50質量%がさらに好ましく、10質量%未満が一層好ましい。
【0066】
第2のインクの溶剤が第1のインクの溶剤よりも高揮発性であることで、第1のインクと第2のインクとを重ねて印刷する際に、第1のインクによってクリアファイルの変形を防止し、表濃度を改善するとともに、第2のインクの溶剤が揮発しやすくなることで、透き通しの現象を抑制して、印刷物の裏抜けをより防止することができる。
【0067】
インクセットにおいて、第1のインクに含まれる非水系溶剤の全量に対し、第1のインクに含まれる脂肪酸エステルEの量の割合は、第2のインクに含まれる非水系溶剤の全量に対し、第2のインクに含まれる脂肪酸エステルEの量の割合よりも多いことが好ましい。
脂肪酸エステルEはクリアファイルの変形及び表濃度を改善するように作用するが、高炭素数で低表面張力であるため、透き通しの現象が過剰になって裏抜けを抑制しにくい問題がある。第2のインクへの脂肪酸エステルEの配合量を制限することで、透き通しの現象をバランスよく抑制して、印刷物の裏抜けをより防止することができる。
【0068】
第1のインク及び第2のインクには、それぞれ上記各成分に加えて、本発明の効果を損なわない限り、各種添加剤が含まれていてよい。添加剤としては、ノズルの目詰まり防止剤、酸化防止剤、導電率調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤等を適宜添加することができる。これらの種類は、特に限定されることはなく、当該分野で使用されているものを用いることができる。
【0069】
第1のインク及び第2のインクは、それぞれ色材及び非水系溶剤を含む各成分を混合することで作製することができる。好ましくは、各成分を一括ないし分割して混合及び撹拌してインクを作製することができる。具体的には、ビーズミル等の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等のろ過機を通すことにより調製できる。
【0070】
第1のインク及び第2のインクは、それぞれ油性インクジェットインクとして好ましく提供することができる。
油性インクジェットインクとしての粘度は、インクジェット記録システムの吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において5~30mPa・sであることが好ましく、5~15mPa・sであることがより好ましく、8~13mPa・sが一層好ましい。
【0071】
油性インクジェットインクを用いた印刷方法としては、特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式のものであってもよい。インクジェット記録装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから一実施形態によるインクを吐出させ、吐出されたインク液滴を記録媒体に付着させるようにすることが好ましい。
【0072】
一実施形態において、記録媒体は、特に限定されるものではなく、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙、布、無機質シート、フィルム、OHPシート等、これらを基材として裏面に粘着層を設けた粘着シート等を用いることができる。これらの中でも、インクの浸透性の観点から、普通紙、コート紙等の印刷用紙を好ましく用いることができる。
【0073】
ここで、普通紙とは、通常の紙の上にインクの受容層やフィルム層等が形成されていない紙である。普通紙の一例としては、上質紙、中質紙、PPC用紙、更紙、再生紙等を挙げることができる。普通紙は、数μm~数十μmの太さの紙繊維が数十から数百μmの空隙を形成しているため、インクが浸透しやすい紙となっている。
【0074】
また、コート紙としては、マット紙、光沢紙、半光沢紙等のインクジェット用コート紙や、いわゆる塗工印刷用紙を好ましく用いることができる。ここで、塗工印刷用紙とは、従来から凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等で使用されている印刷用紙であって、上質紙や中質紙の表面にクレーや炭酸カルシウム等の無機顔料と、澱粉等のバインダーを含む塗料により塗工層を設けた印刷用紙である。塗工印刷用紙は、塗料の塗工量や塗工方法により、微塗工紙、上質軽量コート紙、中質軽量コート紙、上質コート紙、中質コート紙、アート紙、キャストコート紙等に分類される。
【実施例
【0075】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
【0076】
「脂肪酸エステルの合成」
合成した脂肪酸エステルの合成処方を表1に示す。
表1に示す処方にしたがって、脂肪酸とアルコールを四つ口フラスコに入れて混合撹拌し均一な溶液を得た。四つ口フラスコにディーンスターク装置を装着し、仕込んだ原材料が反応して水が発生したら取り除けるようにした。均一な溶液が入っている四つ口フラスコにさらに触媒として硫酸を適量加え、系全体を加熱した。加熱温度は脂肪酸及びアルコールの種類に応じて80℃~230℃に設定した。加熱反応時間は1~48時間に設定した。反応後、未反応の原材料や不純物を取り除くため、得られた溶液を減圧蒸留し、脂肪酸エステルを得た。
脂肪酸とアルコールとは、モル比で1:1となるように混合した。
脂肪酸及びアルコールは、東京化成工業株式会社及びSIGMA-ALDRICH社から入手することができる。
【0077】
また、市販品として以下の脂肪酸エステルを用いた。
2-エチルヘキサン酸2-ヘキシルデシル:高級アルコール工業株式会社製「ICEH」。
ネオペンタン酸2-オクチルドデシル:日光ケミカルズ株式会社「Elefac I-205」。
ミリスチン酸2-ヘキシルデシル:高級アルコール工業株式会社製「ICM-R」。
ヘキサン酸ヘキシル:東京化成工業株式会社。
【0078】
表2に、脂肪酸エステルについて、1分子中の炭素数、1分子中の側鎖のうち炭素数が最大になる側鎖の炭素数(側鎖の最大炭素数)、R-COO-Rで表される構造式において、Rの炭素数、側鎖数、各側鎖の炭素数、Rの炭素数、側鎖数、各側鎖の炭素数を示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
「インクの作製」
第1のインク及び第2のインクの処方を表3及び表4に示す。脂肪酸エステルについて、1分子中の炭素数(C数)、1分子中の側鎖のうち炭素数が最大になる側鎖の炭素数(側鎖の最大C数)を表中に示す。
各表に示す配合量にしたがって、顔料、顔料分散剤、及び溶剤を混合し、ビーズミル「ダイノーミルKDL-A」(株式会社シンマルエンタープライゼス製)により滞留時間15分間の条件で、十分に顔料を分散した。続いて、メンブレンフィルターで粗大粒子を除去し、インクを得た。
【0082】
第1のインクについて、溶剤全量に対し脂肪酸エステルEの割合(質量%)を表中に示す。第2のインクについて、20%留出温度(℃)を表中に示す。
第2のインクの20%留出温度は、熱分析(TG)装置において、インクの温度を23℃から500℃まで15℃/分で昇温させたときのインク全体の質量減少率を100%とした場合の、インク全体の質量が20%減少したときの温度から求めた。
熱分析装置としてTHERMO PLUS EVO2 差動型示差熱天秤 TG8121(株式会社リガク)を用い、セルとして、アルミニウム製液体試料パンおよび試料蓋(株式会社リガク製Item No.8580)を用いた。測定サンプルは、試料蓋に細い針を使用してピンホール(実測値でφ150~160μm)を開け、試料パンにサンプルを約10mg入れて、サンプルシーラー(株式会社リガク製Item No.8395D1)を用いて圧接してシールすることで作製した。
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
その他の成分は、以下の通りである。
(顔料)
カーボンブラック1:旭カーボン株式会社製「SUNBLACK X25」。
カーボンブラック2:エボニックジャパン株式会社製「Special Black 350」。
銅フタロシアニンブルー:ブルー系顔料、DIC株式会社製「FASTOGEN Blue LA5380」。
溶性アゾレーキ顔料:マゼンタ系顔料、DIC株式会社製「SYMULER BRILLIANT CARMINE 6B401」。
不溶性アゾ顔料:イエロー系顔料、DIC株式会社製「SYMULER FAST YELLOW 4GO」。
(顔料分散剤)
ソルスパース18000:日本ルーブリゾール株式会社製、有効成分100質量%。
BYK-9076:ビックケミー・ジャパン株式会社製、有効成分100質量%。
DISPERBYK-2155:ビックケミー・ジャパン株式会社製、有効成分100質量%。
【0087】
(その他溶剤)
1-オクタデカノール:アルコール系溶剤、東京化成工業株式会社製。
2-エチル-1,3-ヘキサンジオール:アルコール系溶剤、東京化成工業株式会社製。
ジメチルシリコーン:シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製「KF-96L-2cs」。
エクソールD110:石油系炭化水素溶剤、エクソンモービル社製。
【0088】
「評価」
上記第1のインク及び第2のインクを、表5に示す組み合わせでインクセットとして用意した。このインクセットを用いて、以下の方法により評価を行った。これらの評価結果を表5に示す。
【0089】
(クリアファイルの変形)
ライン式インクジェットプリンタ「オルフィスFW5230」(理想科学工業株式会社製)に、表5に示すインクセットの組み合わせで2種のインクをそれぞれインクジェットカートリッジに装填し、普通紙「理想用紙薄口」(理想科学工業株式会社製)に、第1のインクに次いで第2のインクを重ね合わせて吐出することで、1枚のベタ画像を片面印刷し、印刷物を得た。
この印刷物を、厚さ0.2mmのPP(ポリプロピレン)製クリアファイルに挟み、室温で1週間放置した。放置後、平らな面にクリアファイルを置いた。平面にクリアファイルを置いた状態で、クリアファイルが変形しているかを確認し、変形している場合は、クリアファイルが平面から持ち上がった状態で、平面からの最大高さを変形量として測定した。
なお、「オルフィスFW5230」は、ライン型インクジェットヘッドを使用し、主走査方向(ノズルが並んでいる方向)に直交する副走査方向に用紙を搬送して印刷を行うシステムである。
A:クリアファイルの変形量が3cm未満である。
B:クリアファイルの変形量が3cm以上5cm未満である。
C:クリアファイルの変形量が5cm以上である。
【0090】
(表濃度)
上記クリアファイルの変形の評価と同様にして印刷物を得た。
印刷物の表面のOD値を、ビデオジェット・エックスライト株式会社製の測色計「X-rite eXact」を用いて測定し、以下の基準でコンポジットブラックの表濃度を評価した。
A:表面OD値が1.12以上。
B:表面OD値が1.07以上1.12未満。
C:表面OD値が1.07未満。
【0091】
(裏抜け)
上記クリアファイルの変形の評価と同様にして印刷物を得た。
印刷物の裏面のOD値と未印刷の用紙(紙白)のOD値とを、ビデオジェット・エックスライト株式会社製の測色計「X-rite eXact」を用いて測定し、裏面OD値と紙白のOD値の差から、以下の基準でコンポジットブラックの裏抜けを評価した。
A:OD値の差が0.05未満。
B:OD値の差が0.05以上0.07未満。
C:OD値の差が0.07以上。
【0092】
表中に示す通り、各実施例のインクでは、クリアファイルの変形を防止することができ、コンポジットブラックの表濃度を高めることができ、裏抜けを防止することができた。特に詳述しないが、各実施例のインクの粘度も適正であった。
【0093】
実施例1~9では、第1のインクに各種脂肪酸エステルを用いており、良好な結果が得られた。
実施例1~9から、第1のインクの脂肪酸エステルの1分子中の炭素数が21以上で、クリアファイルの変形がより防止されることがわかる。
実施例1~9から、第1のインクの脂肪酸エステルの1分子中の炭素数が23以下で、裏抜けがより防止されることがわかる。
実施例10から、第1のインクの顔料及び顔料分散剤の種類によらず、良好な結果が得られることがわかる。
【0094】
実施例11、12では、第1のインクにおいて、実施例1と共通する脂肪酸エステルとともに、その他の溶剤を用いており、いずれも良好な結果が得られた。また、実施例1では、第1のインクにおいて、炭素数4以上の側鎖を有し1分子中の炭素数が20以上である脂肪酸エステルの配合量が多く、表濃度がより高かった。
実施例13、14では、第2のインクにおいて、実施例1に対し溶剤処方を変更しており、いずれも良好な結果が得られた。
実施例15、16では、第2のインクにマゼンタインク、イエローインクを用いており、良好な結果が得られた。実施例1と比較すると、コンポジットブラックの表濃度の観点からは、第2のインクにシアンインクを用いる方が好ましいことがわかる。
【0095】
比較例1では、第1のインクにおいて、脂肪酸エステルの側鎖の炭素数が2であり、クリアファイルの変形が発生した。
比較例2では、第1のインクにおいて、脂肪酸エステルの1分子中の炭素数が18であり、クリアファイルの変形が発生し、さらに表濃度が低下した。
比較例3では、第2のインクにおいて、20%留出温度が300℃超過であるため、裏抜けが発生した。
【0096】
比較例4では、第1のインクからインクK1を用いて、ブラックインクのみで印刷を行った。その他の印刷条件は実施例1と同様とした。ブラックインクK1の単色のみの印刷では、表濃度及び裏抜けの効果が十分に得られなかった。