(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】植物におけるピコルナウイルス様粒子の産生
(51)【国際特許分類】
C12P 21/02 20060101AFI20220714BHJP
A01H 1/00 20060101ALI20220714BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220714BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220714BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20220714BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220714BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220714BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220714BHJP
C07K 16/16 20060101ALI20220714BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220714BHJP
C12N 15/82 20060101ALN20220714BHJP
【FI】
C12P21/02 C ZNA
A01H1/00 A
A61K31/7088
A61K35/76
A61K36/48
A61K48/00
A61P31/12
A61P37/04
C07K16/16
C12N5/10
C12N15/82 Z
(21)【出願番号】P 2018145886
(22)【出願日】2018-08-02
(62)【分割の表示】P 2015528819の分割
【原出願日】2013-08-29
【審査請求日】2018-08-23
【審判番号】
【審判請求日】2020-07-02
(32)【優先日】2012-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502121395
【氏名又は名称】メディカゴ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】マルク-アンドレ・ダウスト
(72)【発明者】
【氏名】ピエール-オリビア・ラボイエ
(72)【発明者】
【氏名】マノン・コーチャー
(72)【発明者】
【氏名】ルーシー・ポウリン
(72)【発明者】
【氏名】ルイ-フィリップ・ベジーナ
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】長井 啓子
【審判官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101695569(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102559615(CN,A)
【文献】Veterinary Immunology and Immunopathology,2008,vol.121,pp.83-90
【文献】World J Gastroenterol,2006,vol.12,pp.921-927
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
CAPlus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JST7580/JMEDPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物、植物の一部、または植物細胞においてエンテロウイルス様粒子(EVLP)を生成する方法であって、
a)該植物、植物の一部、または植物細胞において活性であり、エンテロウイルスポリタンパク質をコードする第1のヌクレオチド配列に作動可能に連結した、第1の調節領域を含む第1の核酸を、該植物、植物の一部、または植物細胞に導入するステップと、ここで、エンテロウイルスポリタンパク質はエンテロウイルス71 ポリタンパク質P1からなる、
b)該植物、植物の一部、または植物細胞において活性であり、1つまたは2つ以上のエンテロウイルス71
3CDプロテアーゼをコードする第2のヌクレオチド配列に作動可能に連結した、第2の調節領域を含む第2の核酸を、該植物、植物の一部、または植物細胞に導入するステップと、
c)該植物、植物の一部、または植物細胞を、該第1の核酸および該第2の核酸の一過性の発現を可能とする条件下でインキュベートし、エンテロウイルス71 ポリタンパク質P1および1つまたは2つ以上のエンテロウイルス71
3CDプロテアーゼを生成し、エンテロウイルス71 ポリタンパク質P1が構造タンパク質VP1、VP3およびVP0、または、VP1、VP2、VP3およびVP4にプロセシングされ、それにより、該EVLPを生成するステップと、および
d)該植物、植物の一部、または植物細胞を採取し、該EVLPを精製するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の核酸と前記第2の核酸の導入量の比が20:1から0.5:1の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の核酸と前記第2の核酸の導入量の比が8:1から2:1の間である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エンテロウイルス ポリタンパク質P1が、構造タンパク質VP1、VP2、VP3、VP4、またはその組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1の核酸および第2の核酸が、別々の核酸コンストラクト上である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1の核酸および第2の核酸が、同じ核酸コンストラクト上である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
植物、植物の一部、または植物細胞においてエンテロウイルス様粒子(EVLP)を生成する方法であって、
a)該植物、植物の一部、または植物細胞において活性であり、エンテロウイルスポリタンパク質をコードする第1のヌクレオチド配列に作動可能に連結した、第1の調節領域を含む第1の核酸と、該植物、植物の一部、または植物細胞において活性であり、1つまたは2つ以上のエンテロウイルス71
3CDプロテアーゼをコードする第2のヌクレオチド配列に作動可能に連結した、第2の調節領域を含む第2の核酸とを含む該植物、植物の一部、または植物細胞を提供するステップと、ここで、エンテロウイルスポリタンパク質はエンテロウイルス71 ポリタンパク質P1からなる、
b)該植物、植物の一部、または植物細胞を、該核酸の一過性の発現を可能とする条件下でインキュベートし、エンテロウイルス71 ポリタンパク質P1および1つまたは2つ以上のエンテロウイルス71
3CDプロテアーゼを生成し、エンテロウイルス71 ポリタンパク質P1が構造タンパク質VP1、VP3およびVP0、または、VP1、VP2、VP3およびVP4にプロセシングされ、それにより、該EVLPを生成するステップと、および
c)該植物、植物の一部、または植物細胞を採取し、該EVLPを精製するステップと
を含む方法。
【請求項8】
前記第1の核酸と前記第2の核酸の比が20:1から0.5:1の間である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の核酸と前記第2の核酸の導入量の比が8:1から2:1の間である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1の核酸および第2の核酸が、別々の核酸コンストラクト上である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
第1の核酸および第2の核酸が、同じ核酸コンストラクト上である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
請求項1または7に記載の方法によって生成される治療有効量のエンテロウイルス様粒子(EVLP)を含む植物抽出物であって、該EVLPはエンテロウイルス71構造タンパク質VP1、VP2、VP3およびVP4を含む、植物抽出物。
【請求項13】
被験体においてエンテロウイルス71に対する免疫応答を誘導することにおいて使用するための請求項12に記載の植物抽出物と、薬学的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項14】
被験体においてエンテロウイルス71感染に対する免疫を誘導することにおいて使用するための、請求項12に記載の植物抽出物。
【請求項15】
前記植物抽出物を被験体に、経口的に、皮内に、鼻腔内に、筋肉内に、腹腔内に、静脈内に、または皮下に投与する、請求項12に記載の植物抽出物。
【請求項16】
植物細胞において活性であり、エンテロウイルスポリタンパク質をコードする第1のヌクレオチド配列に作動可能に連結した、第1の調節領域を含む第1の核酸と、植物細胞において活性であり、1つまたは2つ以上のエンテロウイルス71
3CDプロテアーゼをコードする第2のヌクレオチド配列に作動可能に連結した、第2の調節領域を含む第2の核酸とを含む植物細胞であって、エンテロウイルスポリタンパク質はエンテロウイルス71 ポリタンパク質P1からなる、植物細胞。
【請求項17】
前記第1の核酸配列が、1つまたは2つ以上のコモウイルスエンハンサー、前記エンテロウイルスポリタンパク質をコードするヌクレオチド配列、および1つまたは2つ以上の増幅エレメントに作動可能に連結した前記第1の調節領域を含み、エンテロウイルスポリタンパク質はエンテロウイルス71 ポリタンパク質P1からなり、レプリカーゼをコードする第3の核酸を前記植物、植物の一部、または植物細胞に導入するステップをさらに含む、請求項1または7に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の核酸が、1つもしくは2つ以上の増幅エレメントまたは1つもしくは2つ以上のコモウイルスエンハンサーを含まない、請求項1または7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物においてピコルナウイルス構造タンパク質を生成することに関する。より詳細には、本発明は、植物においてピコルナウイルス構造タンパク質を含むウイルス様粒子を生成することにも関する。
【背景技術】
【0002】
ピコルナウイルスは、ヒトおよび動物において広範囲の臨床症状を引き起こす可能性がある、小さな、エンベロープを有さないプラス鎖RNAウイルスである。ピコルナウイルスは、配列相同性および酸感受性を含めたいくつかの性質に基づいて、ヒトおよび動物の多くの重要な病原体であるいくつかの属に分離される。
【0003】
ピコルナウイルスは裸のヌクレオカプシドを有する。カプシドは、60個のプロトマーがしっかりとパッキングされた正二十面体構造に配置されたものである。各プロトマーは、VP(ウイルスタンパク質)1、VP2、VP3およびVP4として公知の4つのポリペプチドからなる。VP2ポリペプチドおよびVP4ポリペプチドは、VP0として公知の1つの前駆体に由来し、この前駆体はウイルスのゲノムRNAが細胞内に内部移行した後に切断される。VP4はカプシドの内側に位置する。脱水の種類および程度に応じて、ウイルス粒子は直径およそ27~30nmである。
【0004】
ピコルナウイルスは、ポリタンパク質をコードする単一のORFで構成される7.1~8.9kbの単分節型(monopartite)直鎖ポリアデニル化ssRNA(+)ゲノムを有する。ウイルスのゲノムRNAは、その5’末端に、メチル化されたヌクレオチドキャップ構造の代わりにウイルスタンパク質(VPg)を有する。5’末端の長いUTRは、配列内リボソーム進入部位(IRES)を含有する。P1領域は構造ポリペプチドをコードする。P2領域およびP3領域は、複製に関連する非構造タンパク質をコードする。より短い3’UTRは(-)鎖合成において重要である。Lは、いくつかの属において存在する追加的なN末端リーダータンパク質であり、プロテアーゼであるか(アフトウイルス、エルボウイルス)、または他の機能を有するか(コブウイルス、カルジオウイルス)のいずれかであり得る。
【0005】
ビリオンRNAは感染性であり、ゲノムおよびウイルスのメッセンジャーRNAの両方としての機能を果たす。IRESは、ポリタンパク質の翻訳を導くことを可能にする。ポリタンパク質は、最初にウイルスプロテアーゼ(複数可)によって種々の前駆体および成熟タンパク質にプロセシングされて構造タンパク質、レプリカーゼ、VPg、および宿主細胞を改変し、最終的に細胞溶解を導くいくつかのタンパク質がもたらされる。
【0006】
エンテロウイルス71(EV71)は一本鎖RNAウイルスのPicornaviridae科のメンバーである。EV71は、エンベロープを有さないウイルスであり、そのカプシドは単一のウイルスの翻訳産物の断片として生成される多数のコートタンパク質で構成される。ウイルスのポリタンパク質の、構造成分および非構造成分へのプロセシングが
図1に示されている(先行技術)。ポリタンパク質遺伝子のP1領域は構造タンパク質をコードし、一方、P2領域およびP3領域はウイルスの非構造成分をコードする。ウイルスプロテアーゼ2Aによってポリタンパク質から構造タンパク質前駆体P1(
図1の1ABCD)が切断された後、P1前駆体がプロセシングされてカプシドタンパク質VP0、VP1(
図1の1D断片)およびVP3(
図1の1C断片)になる。P3領域によりコードされる3C成分およびその前駆体3CDは、P1前駆体のカプシドタンパク質へのプロセシングに関与するウイルスプロテアーゼである。VP0プロトマー、VP1プロトマーおよびVP3プロトマーが自然に集合して空のカプシドを構築し、空の粒子の構築後、その粒子内にウイルスRNAがパッケージングされると考えられている。空のカプシドとゲノムRNAが結びつくことにより、構造シフト、RNAの内部移行、VP0のVP2(
図1の1B断片)およびVP4(
図1の1A断片)への自己触媒的切断、ならびに安定な150Sビリオンへの成熟がもたらされる。切断されていないVP0前駆体を含有する空のカプシドがピコルナウイルス感染の間に共通して見いだされる。
【0007】
昆虫細胞におけるEV71 VLPの生成が、P1前駆体タンパク質を3CDプロテアーゼと同時発現することにより得られている(Huら、2003年、Biotechnology Letters 25巻:919~925頁)。P1および3CDを生成するための、単一のバキュロウイルスベクターの使用がChungら(2008年、Vaccine 26巻:1855~1862頁)によって記載されている。マウスにおける免疫原性試験により、精製されたEV71 VLPにより、致死用量のウイルスを用いた攻撃に対する保護が付与されることが示された。
【0008】
EV71由来のVP1タンパク質はトランスジェニックトマトの果実において生成されており、マウスにVP1を含有するトランスジェニック果実を与えることにより、VP1に特異的な糞便IgAおよび血清IgGの発生がもたらされた(Chenら、2006年、Vaccine 24巻:2944~2951頁)。
【0009】
口蹄疫ウイルス(FMDV)のP1前駆体タンパク質およびプロテアーゼ3Cがトランスジェニックアルファルファにおいて同時発現された(Dus Santosら、2005年、Vaccine 23巻:1838~1843頁)。アルファルファが、FMDV
P1のゲノム領域(1A、1B、1C、1D)、2A、2BのN末端の最初の16アミノ酸残基、3B1、3B2、3B3、3Cの完全な配列および3DのN末端の最初の16アミノ酸残基を含む単一のベクターを用いて安定に形質転換された。トランスジェニック植物由来の粗タンパク質抽出物の免疫原性がBalb/cマウスへの腹腔内投与によって実証された。免疫したマウスは、致死的なFMDV攻撃からも保護された。抗原発現のレベルは実用的な目的のためには低かった。
アルゼンチン特許出願第AR078257号には、空のカプシドウイルスを発現しているトランスジェニック植物が開示されており、ここで、トランスジェニック植物は、自己触媒性2Aプロテアーゼに連結したP1前駆体ポリペプチドをコードするDNAコンストラクトをゲノム内に含む。DNAコンストラクトは、タンパク質断片3Dをコードする配列の断片に連結した3Cプロテアーゼをコードする配列に付着したタンパク質断片2Bをさらに含有してよい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Huら、2003年、Biotechnology Letters 25巻:919~925頁
【文献】Chungら、2008年、Vaccine 26巻:1855~1862頁
【文献】Chenら、2006年、Vaccine 24巻:2944~2951頁
【文献】Dus Santosら、2005年、Vaccine 23巻:1838~1843頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、植物においてピコルナウイルス構造タンパク質を生成することに関する。より詳細には、本発明は、植物においてピコルナウイルス構造タンパク質を含むウイルス様粒子を生成することにも関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、植物においてピコルナウイルス様粒子(PVLP)を生成する方法(A)であって、
a)1つまたは複数のピコルナウイルスポリタンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結した、植物において活性な第1の調節領域を含む第1の核酸を植物または植物の一部に導入するステップと、
b)植物において活性であり、1つまたは複数のプロテアーゼをコードする第2のヌクレオチド配列に作動可能に連結した第2の調節領域を含む第2の核酸を導入するステップと、
c)植物、植物の一部を、第1の核酸および第2の核酸の発現を可能とする条件下でインキュベートし、それにより、PVLPを生成するステップと
を含む方法(A)が提供される。
【0013】
本発明は、ピコルナウイルス様粒子(PVLP)を生成する方法(B)であって、
a)1つまたは複数のピコルナウイルスポリタンパク質をコードする第1のヌクレオチド配列に作動可能に連結した、植物において活性な第1の調節領域を含む第1の核酸と、1つまたは複数のプロテアーゼをコードする第2のヌクレオチド配列に作動可能に連結した、植物において活性な第2の調節領域を含む第2の核酸を含む植物、植物の一部、または植物細胞を提供するステップと、
b)植物、植物の一部、または植物細胞を、核酸の発現を可能とする条件下でインキュベートし、それにより、PVLPを生成するステップと
を含む方法(B)も提供する。
【0014】
植物において活性な第1の調節領域と植物において活性な第2の調節領域は同じであっても異なってもよい。
【0015】
さらに、方法(A)または方法(B)において、植物、植物の一部、または植物細胞に導入される第1の核酸と第2の核酸のパーセント比は、95%:5%から50%:50%の間、または約20:1から約0.5:1の間であってよい。
【0016】
本発明は、上記の方法(A)または方法(B)も含み、ここで、第1の核酸配列は、1つまたは2つ以上のコモウイルスエンハンサー、ポリタンパク質をコードするヌクレオチド配列、および1つまたは2つ以上のジェミニウイルス増幅エレメントと作動可能に連結した第1の調節領域を含み、ジェミニウイルスレプリカーゼをコードする第3の核酸を植物または植物の一部に導入する。1つまたは2つ以上のコモウイルスエンハンサーは、コモウイルスUTR、例えば、CPMV-HT 5’、3’UTRなどのササゲモザイクウイルス高翻訳性(hyperanslatable)(CPMV-HT)UTR、またはこれらの組合せなどであってよい。1つまたは2つ以上のジェミニウイルス増幅エレメントは、マメ黄萎病ウイルスの長い遺伝子間領域(BeYDV LIR)、およびBeYDVの短い遺伝子間領域(BeYDV SIR)から選択することができる。
【0017】
上記の方法(方法A)は、サイレンシングのサプレッサー、例えば、HcProまたはp19をコードする別の核酸配列を導入することも伴ってよい。
【0018】
上記の方法(方法B)は、サイレンシングのサプレッサー、例えば、HcProまたはp19をコードする別の核酸配列を含む植物、植物の一部、または植物細胞をさらに提供することも伴ってよい。
【0019】
本発明は、導入するステップ(ステップa)において、核酸を植物において一過性に発現させる上記の方法(A)も含む。あるいは、導入するステップ(ステップa)において、核酸を植物において安定に発現させる。
【0020】
上記の方法(A)および方法(B)は、植物を採取し、PVLPを精製するステップをさらに含んでよい。
【0021】
本発明は、免疫応答を誘導するための有効用量の前述のPVLPと、薬学的に許容される担体とを含む組成物を含む。
【0022】
本発明は、被験体においてピコルナウイルス感染に対する免疫を誘導する方法であって、前述のPVLPを被験体に投与することを含む方法も含む。PVLPは、被験体に、経口的に、皮内に、鼻腔内に、筋肉内に、腹腔内に、静脈内に、または皮下に投与することができる。
【0023】
本発明は、上記の方法(A)および/または方法(B)によって生成されるPVLPを含む植物体も提供する。植物体は、被験体においてピコルナウイルス感染に対する免疫を誘導することに使用することができる。植物体は、栄養補助食品として混合することもできる。
【0024】
この発明の概要に本発明の特徴が全て記載されているとは限らない。
【0025】
本発明のこれらおよび他の特徴は、添付の図面を参照した以下の説明からより明らかになる。
本発明は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
植物においてピコルナウイルス様粒子(PVLP)を生成する方法であって、
a)1つまたは複数のピコルナウイルスポリタンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結した、該植物において活性な第1の調節領域を含む第1の核酸を、該植物、該植物の一部、または植物細胞に導入するステップと、
b)該植物において活性であり、1つまたは複数のプロテアーゼをコードする第2のヌクレオチド配列に作動可能に連結した、第2の調節領域を含む第2の核酸を、該植物、該植物の一部、または植物細胞に導入するステップと、
c)該植物、該植物の一部、または植物細胞を、該第1の核酸および該第2の核酸の発現を可能とする条件下でインキュベートし、それにより、該PVLPを生成するステップと
を含む方法。
(項目2)
前記第1の核酸と前記第2の核酸の導入量の比が20:1から0.5:1の間である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記1つまたは複数のピコルナウイルスポリタンパク質がP1である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記1つまたは複数のピコルナウイルスポリタンパク質が、構造タンパク質VP0、VP1、VP2、VP3、VP4、またはその組合せを含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記ピコルナウイルスがアフトウイルス、アビヘパトウイルス、カルジオウイルス、エンテロウイルス、エルボウイルス、ヘパトウイルス、コブウイルス、パレコウイルス、サペロウイルス、セネカウイルス、テッショウウイルスおよびトゥレモウイルスの群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記ピコルナウイルスがエンテロウイルス71またはポリオウイルスである、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記プロテアーゼがピコルナウイルスプロテアーゼである、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記プロテアーゼが3CDプロテアーゼである、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記導入するステップ(ステップa)において、前記核酸を前記植物において一過性に発現させる、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記導入するステップ(ステップa)において、前記核酸を前記植物において安定に発現させる、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記植物を採取し、前記PVLPを精製するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目12)
植物、植物の一部または植物細胞においてピコルナウイルス様粒子(PVLP)を生成する方法であって、
a)1つまたは複数のピコルナウイルスポリタンパク質をコードする第1のヌクレオチド配列に作動可能に連結した、該植物において活性な第1の調節領域を含む第1の核酸と、1つまたは複数のプロテアーゼをコードする第2のヌクレオチド配列に作動可能に連結した、該植物において活性な第2の調節領域を含む第2の核酸とを含む植物、植物の一
部または植物細胞を提供するステップと、
b)該植物、該植物の一部または植物細胞を、該核酸の発現を可能とする条件下でインキュベートし、それにより、該PVLPを生成するステップと
を含む方法。
(項目13)
前記植物を採取し、前記PVLPを精製するステップをさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
項目1に記載の方法によって生成されるPVLP。
(項目15)
被験体において免疫応答を誘導するための治療有効量の項目14に記載のPVLPと、薬学的に許容される担体とを含む組成物。
(項目16)
項目14に記載のPVLPを投与することを含む、被験体においてピコルナウイルス感染に対する免疫を誘導する方法。
(項目17)
前記PVLPを被験体に、経口的に、皮内に、鼻腔内に、筋肉内に、腹腔内に、静脈内に、または皮下に投与する、項目16に記載の方法。
(項目18)
項目14に記載のPVLPを使用して調製したポリクローナル抗体。
(項目19)
前記第1の核酸配列が、1つまたは2つ以上のコモウイルスエンハンサー、前記ポリタンパク質をコードするヌクレオチド配列、および1つまたは2つ以上の増幅エレメントに作動可能に連結した前記第1の調節領域を含み、レプリカーゼをコードする第3の核酸を前記植物または前記植物の一部に導入する、項目1または12に記載の方法。
(項目20)
前記第2の核酸が、1つもしくは2つ以上の増幅エレメントまたは1つもしくは複数のコモウイルスエンハンサーを含まない、項目1または12に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、ピコルナウイルスゲノム(エンテロウイルス71)およびポリタンパク質プロセシング中間体の先行技術の表示を示す図である(ViralZoneウェブページより)。
【0027】
【
図2】
図2は、P1の発現および3CDによるプロセシングのウエスタンブロット分析を示す図である。上で識別された発現ベクターを用いて形質転換した植物由来のタンパク質抽出物10マイクログラムをローディングし、非還元条件下で電気泳動した。マウス抗VP1モノクローナル抗体を免疫検出のために使用した。比は、形質転換のために使用した細菌懸濁液中の、P1 Agrobacterium株(コンストラクト1300または1301、表1参照)の3CD Agrobacterium株(コンストラクト1310、1311または1315、表1参照)に対する割合を示す。P1およびVP1の予測位置が示されている。
【0028】
【
図3】
図3は、VP1の蓄積を最大にするための3CD発現戦略のスクリーニングを示す図である。上で識別された発現ベクターを用いて形質転換した植物由来のタンパク質抽出物5マイクログラムをローディングし、非還元条件下で電気泳動した。マウス抗VP1モノクローナル抗体を免疫検出のために使用した。比は、形質転換のために使用した細菌懸濁液中の、P1 Agrobacterium株(1301)の3CD Agrobacterium株(1310、1311、1312および1313)に対する割合を示す。
【0029】
【
図4】
図4は、EV71カプシド構築の評価を示す図である。(A)P1と3CDを同時発現している植物(コンストラクト1301+1310(4:0.5))由来のタンパク質抽出物のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分離からの溶出画分のクーマシー染色SDS-PAGEおよびウエスタンブロット分析を示す図である。クーマシー染色ゲルにおけるVP1に対応すると推定されるバンドが示されている。(B)SEC溶出画分12の陰性染色透過型電子顕微鏡検査を示す。棒は100nmを示す。
【0030】
【
図5】
図5は、精製されたEV71 PVLPの特徴付けを示す図である。(A)精製されたEV71 PVLPのクーマシー染色SDS-PAGEおよびウエスタンブロット分析を示す。クーマシー染色ゲルにおけるVP1に対応するバンドが示されている。分子量が他のEV71カプシドタンパク質に対応する他のバンドも同定されている。(B)精製されたEV71 PVLPの陰性染色透過型電子顕微鏡検査を示す。検査前に試料を1/100希釈した。棒は100nmを示す。
【0031】
【
図6】
図6は、電子顕微鏡によるロット479-23-018の特徴付けを示す図である。
【0032】
【
図7】
図7は、酵素補助法によって抽出し、HICによって処理し、選択したEV71 PVLPのクライオ電子顕微鏡分析を示す(ロット番号479-31-020)。
【0033】
【
図8】
図8は、加熱処理を伴う機械的な抽出方法(pH8.0)によって抽出したEV71 PVLPのクライオ電子顕微鏡分析を示す図である(ロット番号479-32-020)。
【
図9-1】
図9Aは、GenBank ID ADG57603で記載されるアミノ酸1549~2193(配列番号1)を含むEV71 HK08株由来の3CDを示す図である。
図9Bは、GenBank ID GQ279369で記載されるヌクレオチド5387~7321(配列番号2)を含むEV71 HK08株由来の3CDを示す図である。
図9Cは、GenBank ID ACI25378で記載されるアミノ酸1549~2193(配列番号3)を含むEV71 GDFS08株由来の3CDを示す図である。
図9Dは、GenBank ID FJ194964で記載されるヌクレオチド5387~7321(配列番号4)を含むEV71 GDFS08株由来の3CDを示す図である。
図9Eは、P1アミノ酸配列GenBank ID ADG57603(アミノ酸1~862)(配列番号5)を示す図である。
図9Fは、P1ヌクレオチド配列GenBank ID GQ279369(ヌクレオチド743~3328)(配列番号6)を示す図である。
図9Gは、ヒトエンテロウイルスC血清型PV-1由来のPVgp1ポリタンパク質ヌクレオチド配列(ゲノムについてはGenBank ID NC_002058、ポリタンパク質についてはNP_041277:ヌクレオチド5438~7369)(配列番号7)を示す図である。
図9Hは、ポリオウイルス由来のポリタンパク質のアミノ酸配列(GenBank ID NP_041277からのアミノ酸1566~2209)(配列番号8)を示す図である。
図9Iは、PVgp1ポリタンパク質[ヒトエンテロウイルスC]のヌクレオチド配列(GenBank ID NC_002058からのヌクレオチド743~3385)(配列番号9)を示す図である。
図9Jは、ポリタンパク質のアミノ酸配列[ヒトエンテロウイルスC]GenBank ID NP_041277(GenBank ID NP_041277からのアミノ酸1~881)(配列番号10)を示す図である。
【
図9-2】
図9Aは、GenBank ID ADG57603で記載されるアミノ酸1549~2193(配列番号1)を含むEV71 HK08株由来の3CDを示す図である。
図9Bは、GenBank ID GQ279369で記載されるヌクレオチド5387~7321(配列番号2)を含むEV71 HK08株由来の3CDを示す図である。
図9Cは、GenBank ID ACI25378で記載されるアミノ酸1549~2193(配列番号3)を含むEV71 GDFS08株由来の3CDを示す図である。
図9Dは、GenBank ID FJ194964で記載されるヌクレオチド5387~7321(配列番号4)を含むEV71 GDFS08株由来の3CDを示す図である。
図9Eは、P1アミノ酸配列GenBank ID ADG57603(アミノ酸1~862)(配列番号5)を示す図である。
図9Fは、P1ヌクレオチド配列GenBank ID GQ279369(ヌクレオチド743~3328)(配列番号6)を示す図である。
図9Gは、ヒトエンテロウイルスC血清型PV-1由来のPVgp1ポリタンパク質ヌクレオチド配列(ゲノムについてはGenBank ID NC_002058、ポリタンパク質についてはNP_041277:ヌクレオチド5438~7369)(配列番号7)を示す図である。
図9Hは、ポリオウイルス由来のポリタンパク質のアミノ酸配列(GenBank ID NP_041277からのアミノ酸1566~2209)(配列番号8)を示す図である。
図9Iは、PVgp1ポリタンパク質[ヒトエンテロウイルスC]のヌクレオチド配列(GenBank ID NC_002058からのヌクレオチド743~3385)(配列番号9)を示す図である。
図9Jは、ポリタンパク質のアミノ酸配列[ヒトエンテロウイルスC]GenBank ID NP_041277(GenBank ID NP_041277からのアミノ酸1~881)(配列番号10)を示す図である。
【
図9-3】
図9Aは、GenBank ID ADG57603で記載されるアミノ酸1549~2193(配列番号1)を含むEV71 HK08株由来の3CDを示す図である。
図9Bは、GenBank ID GQ279369で記載されるヌクレオチド5387~7321(配列番号2)を含むEV71 HK08株由来の3CDを示す図である。
図9Cは、GenBank ID ACI25378で記載されるアミノ酸1549~2193(配列番号3)を含むEV71 GDFS08株由来の3CDを示す図である。
図9Dは、GenBank ID FJ194964で記載されるヌクレオチド5387~7321(配列番号4)を含むEV71 GDFS08株由来の3CDを示す図である。
図9Eは、P1アミノ酸配列GenBank ID ADG57603(アミノ酸1~862)(配列番号5)を示す図である。
図9Fは、P1ヌクレオチド配列GenBank ID GQ279369(ヌクレオチド743~3328)(配列番号6)を示す図である。
図9Gは、ヒトエンテロウイルスC血清型PV-1由来のPVgp1ポリタンパク質ヌクレオチド配列(ゲノムについてはGenBank ID NC_002058、ポリタンパク質についてはNP_041277:ヌクレオチド5438~7369)(配列番号7)を示す図である。
図9Hは、ポリオウイルス由来のポリタンパク質のアミノ酸配列(GenBank ID NP_041277からのアミノ酸1566~2209)(配列番号8)を示す図である。
図9Iは、PVgp1ポリタンパク質[ヒトエンテロウイルスC]のヌクレオチド配列(GenBank ID NC_002058からのヌクレオチド743~3385)(配列番号9)を示す図である。
図9Jは、ポリタンパク質のアミノ酸配列[ヒトエンテロウイルスC]GenBank ID NP_041277(GenBank ID NP_041277からのアミノ酸1~881)(配列番号10)を示す図である。
【
図9-4】
図9Aは、GenBank ID ADG57603で記載されるアミノ酸1549~2193(配列番号1)を含むEV71 HK08株由来の3CDを示す図である。
図9Bは、GenBank ID GQ279369で記載されるヌクレオチド5387~7321(配列番号2)を含むEV71 HK08株由来の3CDを示す図である。
図9Cは、GenBank ID ACI25378で記載されるアミノ酸1549~2193(配列番号3)を含むEV71 GDFS08株由来の3CDを示す図である。
図9Dは、GenBank ID FJ194964で記載されるヌクレオチド5387~7321(配列番号4)を含むEV71 GDFS08株由来の3CDを示す図である。
図9Eは、P1アミノ酸配列GenBank ID ADG57603(アミノ酸1~862)(配列番号5)を示す図である。
図9Fは、P1ヌクレオチド配列GenBank ID GQ279369(ヌクレオチド743~3328)(配列番号6)を示す図である。
図9Gは、ヒトエンテロウイルスC血清型PV-1由来のPVgp1ポリタンパク質ヌクレオチド配列(ゲノムについてはGenBank ID NC_002058、ポリタンパク質についてはNP_041277:ヌクレオチド5438~7369)(配列番号7)を示す図である。
図9Hは、ポリオウイルス由来のポリタンパク質のアミノ酸配列(GenBank ID NP_041277からのアミノ酸1566~2209)(配列番号8)を示す図である。
図9Iは、PVgp1ポリタンパク質[ヒトエンテロウイルスC]のヌクレオチド配列(GenBank ID NC_002058からのヌクレオチド743~3385)(配列番号9)を示す図である。
図9Jは、ポリタンパク質のアミノ酸配列[ヒトエンテロウイルスC]GenBank ID NP_041277(GenBank ID NP_041277からのアミノ酸1~881)(配列番号10)を示す図である。
【
図9-5】
図9Aは、GenBank ID ADG57603で記載されるアミノ酸1549~2193(配列番号1)を含むEV71 HK08株由来の3CDを示す図である。
図9Bは、GenBank ID GQ279369で記載されるヌクレオチド5387~7321(配列番号2)を含むEV71 HK08株由来の3CDを示す図である。
図9Cは、GenBank ID ACI25378で記載されるアミノ酸1549~2193(配列番号3)を含むEV71 GDFS08株由来の3CDを示す図である。
図9Dは、GenBank ID FJ194964で記載されるヌクレオチド5387~7321(配列番号4)を含むEV71 GDFS08株由来の3CDを示す図である。
図9Eは、P1アミノ酸配列GenBank ID ADG57603(アミノ酸1~862)(配列番号5)を示す図である。
図9Fは、P1ヌクレオチド配列GenBank ID GQ279369(ヌクレオチド743~3328)(配列番号6)を示す図である。
図9Gは、ヒトエンテロウイルスC血清型PV-1由来のPVgp1ポリタンパク質ヌクレオチド配列(ゲノムについてはGenBank ID NC_002058、ポリタンパク質についてはNP_041277:ヌクレオチド5438~7369)(配列番号7)を示す図である。
図9Hは、ポリオウイルス由来のポリタンパク質のアミノ酸配列(GenBank ID NP_041277からのアミノ酸1566~2209)(配列番号8)を示す図である。
図9Iは、PVgp1ポリタンパク質[ヒトエンテロウイルスC]のヌクレオチド配列(GenBank ID NC_002058からのヌクレオチド743~3385)(配列番号9)を示す図である。
図9Jは、ポリタンパク質のアミノ酸配列[ヒトエンテロウイルスC]GenBank ID NP_041277(GenBank ID NP_041277からのアミノ酸1~881)(配列番号10)を示す図である。
【
図9-6】
図9Aは、GenBank ID ADG57603で記載されるアミノ酸1549~2193(配列番号1)を含むEV71 HK08株由来の3CDを示す図である。
図9Bは、GenBank ID GQ279369で記載されるヌクレオチド5387~7321(配列番号2)を含むEV71 HK08株由来の3CDを示す図である。
図9Cは、GenBank ID ACI25378で記載されるアミノ酸1549~2193(配列番号3)を含むEV71 GDFS08株由来の3CDを示す図である。
図9Dは、GenBank ID FJ194964で記載されるヌクレオチド5387~7321(配列番号4)を含むEV71 GDFS08株由来の3CDを示す図である。
図9Eは、P1アミノ酸配列GenBank ID ADG57603(アミノ酸1~862)(配列番号5)を示す図である。
図9Fは、P1ヌクレオチド配列GenBank ID GQ279369(ヌクレオチド743~3328)(配列番号6)を示す図である。
図9Gは、ヒトエンテロウイルスC血清型PV-1由来のPVgp1ポリタンパク質ヌクレオチド配列(ゲノムについてはGenBank ID NC_002058、ポリタンパク質についてはNP_041277:ヌクレオチド5438~7369)(配列番号7)を示す図である。
図9Hは、ポリオウイルス由来のポリタンパク質のアミノ酸配列(GenBank ID NP_041277からのアミノ酸1566~2209)(配列番号8)を示す図である。
図9Iは、PVgp1ポリタンパク質[ヒトエンテロウイルスC]のヌクレオチド配列(GenBank ID NC_002058からのヌクレオチド743~3385)(配列番号9)を示す図である。
図9Jは、ポリタンパク質のアミノ酸配列[ヒトエンテロウイルスC]GenBank ID NP_041277(GenBank ID NP_041277からのアミノ酸1~881)(配列番号10)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の説明は好ましい実施形態に関するものである。
【0035】
本発明は、1つまたは複数のピコルナウイルス構造タンパク質(すなわち、ピコルナウイルス様タンパク質、またはPVLP)を含むウイルス様粒子(VLP)、および植物または植物の一部においてPVLPを生成する方法に関する。したがって、PVLPは、1つまたは2つ以上のピコルナウイルス構造タンパク質を含んでよい。例えば、PVLPは、1つまたは2つ以上のエンテロウイルス構造タンパク質を含んでよい。
【0036】
ピコルナウイルスは、アフトウイルス、アビヘパトウイルス、カルジオウイルス、エンテロウイルス、エルボウイルス、ヘパトウイルス、コブウイルス、パレコウイルス、サペロウイルス、セネカウイルス、テッショウウイルスおよびトゥレモウイルスの群から選択することができる。非限定的な例では、ピコルナウイルスは、エンテロウイルス、例えば、エンテロウイルス71(EV71)またはヒトエンテロウイルスC(ポリオウイルスとしても公知である)であってよい。
【0037】
本発明は、一部において、植物においてVLP、例えば、PVLPまたはエンテロウイルス様粒子を生成する方法を提供する。方法は、1つまたは複数のピコルナウイルスポリタンパク質をコードする第1のヌクレオチド配列に作動可能に連結した、植物において活性な第1の調節領域を含む第1の核酸を植物または植物の一部に導入するステップと、プロテアーゼをコードする第2のヌクレオチド配列に作動可能に連結した、植物において活性な第2の調節領域を含む第2の核酸を導入するステップとを含んでよい。その後、植物または植物の一部を、核酸の発現を可能とする条件下でインキュベートし、それにより、PVLPを生成する。
【0038】
「ウイルス様粒子」(VLP)、または「ウイルス様粒子」または「VLP」という用語は、自己集合し、また、1つまたは2つ以上の構造タンパク質、例えば、1つもしくは2つ以上のピコルナウイルス構造タンパク質、または1つもしくは2つ以上のエンテロウイルス構造タンパク質、またはこれらの組合せ、例えば、これだけに限定されないが、VP0、VP1、VP2、VP3、VP4構造タンパク質、またはこれらの組合せを含む構造を指す。VLPは、一般に、感染症で生成されるビリオンと形態学的に、および抗原性が類似しているが、複製するために十分な遺伝情報を欠き、したがって非感染性である。VLPは、植物宿主細胞を含めた適切な宿主細胞において生成することができる。宿主細胞から抽出した後、適切な条件下で単離し、さらに精製する際に、VLPは、インタクトな構造として精製することができる。
【0039】
「ピコルナウイルス様粒子」(PVLP)という用語は、1つまたは2つ以上のピコルナウイルス構造タンパク質を含むVLPまたはVLPを指す。この用語または「エンテロウイルス様粒子」とは、1つまたは2つ以上のエンテロウイルス構造タンパク質を含む1つまたは複数のVLPを指す。ピコルナウイルス構造タンパク質の例としては、これだけに限定されないが、VP0、VP1、VP2、VP3、VP4構造タンパク質、またはこれらの組合せを挙げることができる。エンテロウイルス構造タンパク質の例は、これだけに限定されないが、VP0、VP1、VP2、VP3、VP4構造タンパク質、またはこれらの組合せを挙げることができる。
【0040】
ポリタンパク質とは、タンパク質分解処理すると1つまたは複数のタンパク質がもたらされる、1つまたは2つ以上のタンパク質またはタンパク質前駆体を含むタンパク質を意味する。例えば、ポリタンパク質は、1つまたは2つ以上の構造タンパク質を含んでよい。1つまたは複数のタンパク質、例えば、ポリペプチドにおける構造タンパク質は、例えば、プロテアーゼ切断部位のような切断部位によって分離することができる。「ポリタンパク質」の非限定的な例は、「P1領域」とも称される構造タンパク質前駆体P1である。P1領域は、「構造タンパク質」または「コートタンパク質」、例えば、VP0、VP1、VP2、VP3、VP4またはこれらの組合せを生じるピコルナウイルスポリタンパク質の一部と定義される。本発明に従って使用することができるピコルナウイルスP1、またはP1の断片の非限定的な例としては、エンテロウイルス、例えば、エンテロウイルス71由来のP1が挙げられる。
【0041】
限定するものとみなされないP1領域の例は、アミノ酸1~862(配列番号5)を含むGenBank ID ADG57603で記載されるアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも約90~100%の配列類似性、それに対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%などのこれらの範囲内のいかなるパーセント類似性も含めた配列類似性を有する配列である。さらに、P1領域をコードするヌクレオチド配列の非限定的な例は、ヌクレオチド743~3328(配列番号6)を含むGenBank ID GQ279369で記載されるまたはそれに対して少なくとも約90~100%の配列類似性、それに対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%などのこれらの範囲内のいかなるパーセント類似性も含めた配列類似性を有する配列である。
【0042】
限定するものとみなされないP1領域の別の例は、アミノ酸1566~2209を含むGenBank ID NP_041277で記載されるアミノ酸配列(配列番号8)またはそれに対して少なくとも約90~100%の配列類似性、それに対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%などのこれらの範囲内のいかなるパーセント類似性も含めた配列類似性を有する配列である。さらに、P1領域をコードするヌクレオチド配列の非限定的な例は、ヌクレオチド5438~7369(配列番号7)を含むGenBank ID NC_002058で記載される、またはそれに対して少なくとも約90~100%の配列類似性、それに対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%などのこれらの範囲内のいかなるパーセント類似性も含めた配列類似性を有する配列である。限定するものとみなされない別の例では、P1領域は、アミノ酸1~881を含むGenBank ID NP_041277で記載されるアミノ酸配列(配列番号10)、またはそれに対して少なくとも約90~100%の配列類似性、それに対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%などのこれらの範囲内のいかなるパーセント類似性も含めた配列類似性を有する配列である。さらに、P1領域をコードするヌクレオチド配列の非限定的な例は、ヌクレオチド743~3385(配列番号9)を含むGenBank ID NC_002058で記載される、またはそれに対して少なくとも約90~100%の配列類似性、それに対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%などのこれらの範囲内のいかなるパーセント類似性も含めた配列類似性を有する配列である。
【0043】
「ピコルナウイルスポリタンパク質」とは、任意の天然に存在するまたはバリアントピコルナウイルス株または分離株、例えば、エンテロウイルスポリタンパク質に存在する、ピコルナウイルスから単離されたピコルナウイルスポリタンパク質の全部または一部を指す。同様に、「ピコルナウイルス構造タンパク質」とは、任意の天然に存在するまたはバリアントピコルナウイルス株または分離株に存在する、ピコルナウイルスから単離されたピコルナウイルス構造タンパク質、例えば、エンテロウイルス構造タンパク質、例えば、ポリオウイルスまたはエンテロウイルス71から得たものの全部または一部を指し得る。したがって、「ピコルナウイルスポリタンパク質」および「ピコルナウイルス構造タンパク質」などの用語は、ウイルスの生活環の間に突然変異によって生じるまたは選択圧(例えば、薬物療法、宿主細胞トロピズムまたは感染性の増大など)に応答して生じる、ピコルナウイルスポリタンパク質、ピコルナウイルス構造タンパク質、またはこれらの組合せの天然に存在するバリアントを含む。「ピコルナウイルスポリタンパク質」という用語は「エンテロウイルスポリタンパク質」をさらに含み、「エンテロウイルス構造タンパク質」などは、ウイルスの生活環の間に突然変異によって生じるまたは選択圧(例えば、薬物療法、宿主細胞トロピズムまたは感染性の増大など)に応答して生じるエンテロウイルスポリタンパク質、エンテロウイルス構造タンパク質、またはこれらの組合せの天然に存在するバリアントを含む。「ピコルナウイルスポリタンパク質」という用語は「ポリオウイルスポリタンパク質」も含み得、「ポリオウイルス構造タンパク質」などは、ウイルスの生活環の間に突然変異によって生じるまたは選択圧(例えば、薬物療法、宿主細胞トロピズムまたは感染性の増大など)に応答して生じるポリオウイルスポリタンパク質、ポリオウイルス構造タンパク質、またはこれらの組合せの天然に存在するバリアントを含む。当業者には理解される通り、ピコルナウイルス、エンテロウイルスもしくはポリオウイルスのポリタンパク質、またはピコルナウイルス、エンテロウイルスもしくはポリオウイルスの構造タンパク質のネイティブなものおよびバリアントは、組換え技法を使用して生成することもできる。
【0044】
ポリタンパク質は、1つまたは複数の構造タンパク質、例えば、カプシドタンパク質を含んでよい。ピコルナウイルス構造タンパク質またはカプシドタンパク質の非限定的な例は、ピコルナウイルスタンパク質VP0、VP1、VP2、VP3およびVP4ならびにVP0、VP1、VP2、VP3およびVP4の断片である。本発明に従って使用することができるVP0、VP1、VP2、VP3およびVP4、またはVP0、VP1、VP2、VP3およびVP4タンパク質の断片の非限定的な例としては、エンテロウイルス、例えば、ポリオウイルスまたはエンテロウイルス71に由来するVP0、VP1、VP2、VP3およびVP4タンパク質が挙げられる。さらに、ポリタンパク質構造タンパク質、またはこれらの組合せは、例えば、エンテロウイルス71 HK08株またはGDFS08株であってよい。別の非限定的な例では、ポリタンパク質構造タンパク質またはこれらの組合せは、ポリオウイルスとしても公知であるヒトエンテロウイルスCに由来するものであってよい。
【0045】
アミノ酸配列の類似性または同一性は、BLAST(基本局所アラインメント検索ツール)2.0アルゴリズムを使用するBLASTPプログラムおよびTBLASTNプログラムを使用することによって計算することができる。アミノ酸配列の類似性または同一性を計算するための技法は当業者には周知であり、BLASTアルゴリズムの使用はALTSCHULら(1990年、J Mol. Biol. 215巻:403~410頁)およびALTSCHULら(1997年、Nucleic Acids Res. 25巻:3389~3402頁)に記載されている。
【0046】
本発明では、ピコルナウイルス、エンテロウイルス(ポリオウイルスを含める)のVLPを、植物、植物の一部または植物細胞において、ピコルナウイルス、エンテロウイルスまたはポリオウイルスのポリタンパク質、例えば、これだけに限定されないが、P1をコードする核酸(第1の核酸)と、プロテアーゼ、例えば、ピコルナウイルス、エンテロウイルスまたはポリオウイルスのプロテアーゼ、例えばこれだけに限定されないが、3CDなどをコードする第2の核酸を同時発現させ、それにより、VLPを生成することによって生成する。
【0047】
限定するものとみなされないプロテアーゼの例は、GenBank ID ADG57603で記載されるアミノ酸1549~2193(配列番号1)を含むEV71 HK08株由来のアミノ酸配列である。GenBank ID GQ279369、ヌクレオチド5387~ヌクレオチド7321で記載されるヌクレオチド配列(配列番号2)、または配列番号2に対して少なくとも約90~100%の配列類似性、それに対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%などの、この範囲内の任意のパーセント類似性を含めた配列類似性を有する配列。別の非限定的な例は、GenBank ID ACI25378で記載されるアミノ酸1549~2193(配列番号3)を含むEV71 GDFS08株からのアミノ酸配列である。GenBank ID FJ194964、ヌクレオチド5387~ヌクレオチド7321で記載されるヌクレオチド配列(配列番号4)を使用してアミノ酸配列を生成することができる。さらに、配列番号4に対して約90~100%の配列類似性、それに対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%などの、この範囲内の任意のパーセント類似性を含めた配列類似性を有する配列。
【0048】
第1の核酸と第2の核酸は、植物に同じステップで導入することもでき、植物に逐次的に導入することもできる。
【0049】
配列
本発明で使用することができる配列の非限定的な例としては、以下が挙げられる:
【0050】
アフトウイルス、アビヘパトウイルス、カルジオウイルス、エンテロウイルス、エルボウイルス、ヘパトウイルス、コブウイルス、パレコウイルス、サペロウイルス、セネカウイルス、テッショウウイルスおよびトゥレモウイルスに由来するP1配列を使用して、P1ポリタンパクを生成することができる。非限定的な例では、P1ポリタンパク質をコードする配列は、エンテロウイルス、例えば、エンテロウイルス71またはヒトエンテロウイルスC(ポリオウイルスとしても公知である)に由来するものであってよい。
【0051】
本明細書に記載の通り使用するためのプロテアーゼをコードするために使用することができる配列のさらに非限定的な例としては、例えば、アフトウイルス、アビヘパトウイルス、カルジオウイルス、エンテロウイルス、エルボウイルス、ヘパトウイルス、コブウイルス、パレコウイルス、サペロウイルス、セネカウイルス、テッショウウイルスおよびトゥレモウイルスから得たプロテアーゼ3CDの配列が挙げられる。非限定的な例では、3CDプロテアーゼをコードする配列は、エンテロウイルス、例えば、エンテロウイルス71またはポリオウイルス(ヒトエンテロウイルスCとしても公知である)に由来するものであってよい。
【0052】
ポリタンパク質およびプロテアーゼを植物または植物の一部に導入し、同時発現させることにより、生成されるVLPの収率を調節することができることが見いだされている。ポリタンパク質とプロテアーゼは、別々の核酸コンストラクト上でもたらされ、同時発現させることもでき、必要に応じて下記の通りVLPの生成を最適化するために、同じコンストラクト上でもたらされるが各配列を示差的に発現させることもできる。
【0053】
「同時発現させる」とは、2つ、または3つ以上のヌクレオチド配列を植物内で、植物の同じ組織内で、および植物の同じ細胞内でほぼ同時に発現させることを意味する。さらに、2つ、または3つ以上のヌクレオチド配列を、例えば、小胞体、ゴルジ装置、アポプラスト、細胞質ゾル、ミトコンドリア、葉緑体、ペルオキシソーム(peroxysome)などの同じ細胞区画内で発現させることが必要な場合がある。ヌクレオチド配列を正確に同時に発現させる必要はない。その代わり、2つ以上のヌクレオチド配列を、コード産物が相互作用する機会があるように発現させる。例えば、ポリタンパク質の構造タンパク質への切断が起こり得るように、ポリタンパク質を発現させる期間の前またはその間にプロテアーゼを発現させることができる。2つまたは3つ以上のヌクレオチド配列は、一過性発現系を使用して同時発現させることができ、その場合、2つ以上の配列をほぼ同時に、両方の配列が発現される条件下で植物内に導入する。2つまたは3つ以上の配列は異なるコンストラクト上に存在してよく、同時発現にはコンストラクトのそれぞれを植物、植物の一部または植物細胞に導入することが必要であり、または2つまたは3つ以上の配列は、植物、植物の一部または植物細胞に導入された1つのコンストラクト上に存在してもよい。
【0054】
あるいは、ヌクレオチド配列のうちの1つ、例えば、プロテアーゼをコードする配列を含む植物を、ポリタンパク質をコードする追加的な配列を用いて一過性にまたは安定に形質転換することができる。この場合、プロテアーゼをコードする配列を、所望の組織内で、所望の発育段階の間に発現させることもでき、誘導性プロモーターを使用してその発現を誘導することもでき、かつ、ポリタンパク質をコードする追加的な配列を同様の条件下、同じ組織で発現させて、ヌクレオチド配列の同時発現が確実になるようにすることができる。さらに、ポリタンパク質をコードする配列を、プロテアーゼをコードする追加的な配列を用いて一過性にまたは安定に形質転換することができる。この場合、ポリタンパク質をコードする配列は、所望の組織内で、所望の発育段階の間に発現させることもでき、誘導性プロモーターを使用してその発現を誘導することもでき、かつ、プロテアーゼをコードする追加的な配列を同様の条件下、同じ組織で発現させて、ヌクレオチド配列の同時発現が確実になるようにすることができる。
【0055】
図2および
図3において見ることができる通り、植物、植物の一部または植物細胞におけるVLP蓄積のレベルは、植物、植物の一部または植物細胞に浸潤させるポリタンパク質を含有するAgrobacteriumとプロテアーゼを含有するAgrobacteriumの比に影響される。ポリタンパク質を含有するAgrobacteriumとプロテアーゼを含有するAgrobacteriumの比は、例えば、約20:1から約0.5:1まで(ポリタンパク質:プロテアーゼ)にわたってもよく、その間の任意の量、例えば、約20:1、18:1、16:1、14:1、12:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、0.5:1(ポリタンパク質:プロテアーゼ)、またはその間の任意の量であってもよい。
【0056】
ポリタンパク質とプロテアーゼの比は、例えば、第1の核酸を含有するAgrobacteriumと第2の核酸を含有するAgrobacteriumを異なる比で植物、植物の一部または植物細胞に導入することによって変動させることができる。あるいは、ポリタンパク質およびプロテアーゼが同じコンストラクト上に存在し、したがって同じAgrobacteriumに導入される場合、所望のポリタンパク質とプロテアーゼの比が得られるように、適切なプロモーターを使用してこれらを植物、植物の一部または植物細胞において示差的に発現させることができる。
【0057】
したがって、本発明は、第1の核酸と第2の核酸の比を調節することによってPVLP生成の収率を上昇させるための方法も提供する。
【0058】
一実施形態では、プロテアーゼを含有するAgrobacteriumの百分率は、浸潤させる総Agrobacteriumの0.5%から50%の間、またはその間の任意の量であってよい。例えば、プロテアーゼを含有するAgrobacteriumのパーセント比は、0、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%または50%またはその間の任意の量であってよい。
【0059】
ポリタンパク質を含有するAgrobacteriumとプロテアーゼを含有するAgrobacteriumの百分率比は、浸潤させる総Agrobacteriumの95%:5%~40%:60%、またはその間の任意の量であってよい。例えば、浸潤させるAgrobacteriumの総量中のポリタンパク質を含有するAgrobacteriumの百分率は、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%または51%であってよい。例えば、ポリタンパク質を含有するAgrobacteriumとプロテアーゼを含有するAgrobacteriumの百分率比は、50%:50%から95%:5%の間、またはその間の任意のパーセント比であってもよく、ポリタンパク質を含有するAgrobacteriumとプロテアーゼを含有するAgrobacteriumの百分率比は、50%:50%、55%:45%、60%:40%、65%:35%、70%:30%、75%:25%、80%:20%、85%:15%、90%:10%、95%:5%、またはその間の任意の百分率比であってもよい。
【0060】
第1のヌクレオチド配列および第2のヌクレオチド配列を植物細胞内で発現させることによりVLPを形成し、VLPを、例えば、ウイルスタンパク質、例えば、これだけに限定されないが、VP0、VP1、VP2、VP3および/またはVP4を含めたピコルナウイルス構造タンパク質などに結合することができる抗体を生成するために使用することができる。VLPを被験体に投与すると、免疫応答が誘導され得る。
【0061】
下にさらに記載されている通り、ポリタンパク質とプロテアーゼの比を、例えば、ポリタンパク質とプロテアーゼを示差的に発現させることによってさらに変動させることができる。発現は、例えば、ポリタンパク質、プロテアーゼ、またはタンパク質とプロテアーゼの両方の複製、転写、翻訳、またはこれらの組合せを調節することによって変動させることができる。例えば、上記の通り浸潤させるポリタンパク質を含有するAgrobacteriumとプロテアーゼを含有するAgrobacteriumの比を変動させることに加えて、プロモーター、増幅エレメント、エンハンサーまたはこれらの組合せを含めた種々の調節エレメントを使用することができる。調節エレメントの第1のセットまたは組合せを使用して第1の核酸の複製、転写またはこれらの組合せを調節することができ、調節エレメントの第2のセットまたは組合せを使用して、第2の核酸の複製、転写またはこれらの組合せを調節することができる。調節エレメントの第1のセットまたは組合せは調節エレメントの第2のセットまたは組合せとは異なり、第1の核酸と第2の核酸の示差的な発現を可能として、in vivoにおけるポリタンパク質:プロテアーゼの比を調節することを可能とするものである。例えば、限定するものとみなされない、調節エレメントの1つのセットまたは組合せ、例えば第1のセットは、増幅エレメント、例えば、BeYDVから得たエレメントを含んでよく、一方、調節エレメントの他のセットまたは組合せ、例えば、第2のセットには増幅エレメント、例えば、BeYDVから得た増幅エレメントが存在しなくてよい。あるいは、第2のセットは、増幅エレメント(例えば、BeYDVから得たエレメント)を含んでよく、一方、調節エレメントの第1のセットまたは組合せには増幅エレメント(例えば、BeYDVから得たエレメント)が存在しなくてよい。同様に、プロモーターの強度が調節エレメントの第1のセットまたは組合せと第2のセットまたは組合せの間で異なってもよく、プロモーターの一方が誘導性であり他方が構成的であってもよく、したがって、in vivoにおいてポリタンパク質とプロテアーゼの間の示差的な発現が実現される。
【0062】
サイズ
VLPの出現は、任意の適切な方法、例えば、ショ糖勾配、またはサイズ排除クロマトグラフィーを使用して検出することができる。VLPを構造およびサイズについて、例えば、電子顕微鏡によって、またはサイズ排除クロマトグラフィーによって評価することができる。
【0063】
サイズ排除クロマトグラフィーに関しては、抽出緩衝液中の凍結粉砕した植物性材料の試料をホモジナイズすること(Polytron)によって植物組織から総可溶性タンパク質を抽出し、不溶性材料を遠心分離によって除去することができる。PEG補助沈殿による濃縮も有益であり得る。VLPは、WO2011/035422(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている方法を使用してプロトプラストまたはプロトプラスト画分を調製することによって生成することもできる。可溶性タンパク質を数量化し、抽出物を、Sephacryl(商標)カラム、例えば、Sephacryl(商標)S500カラムを通過させる。Blue Dextran2000を較正標準として使用することができる。
【0064】
細胞の細片は、遠心分離によって排除することができる。次いで、遠心分離された抽出物を濾過することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、そのような1つまたは複数の濾過ステップにより、さらに精製する前に懸濁液中の固体を除去し、バイオバーデンを低下させ、抽出物を安定化し調整することができると考えられる。それらのサイズに起因して、PVLPは、接線流濾過(TFF)を使用してさらに精製することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、TFFにより、細胞壁の解重合のために使用した酵素を含めた、清澄化された抽出物中に見いだされる低分子量の可溶性タンパク質が効率的かつ選択的に排除される。さらに、TFFステップによりVLPの濃縮も起こり、クロマトグラフィーのために調製物中の緩衝液を交換することが可能になる。TFFステップの後に、いくつかのクロマトグラフィーステップ、例えば、陰イオン交換、陽イオン交換、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)および/または偽アフィニティー(pseudo-affinity)を続けることができる。追加的なTFFステップをクロマトグラフステップの後に加えることができる。クロマトグラフィーおよび/またはTFFの後、画分を免疫ブロットによってさらに分析して、画分のタンパク質相補体を決定することができる。
【0065】
分離された画分は、例えば、上清であってもよく(遠心分離、沈渣、または沈殿を行った場合)、濾液であってもよく(濾過した場合)、タンパク質、または、例えば、高次VLP、高分子量VLP、粒子VLP、または完全なVLPなどの超構造(suprastructure)タンパク質に富んでいる。分離された画分を、例えば、追加的な遠心分離ステップ、沈殿、クロマトグラフィーステップ(例えば、サイズ排除、イオン交換、アフィニティークロマトグラフィー)、接線流濾過、またはこれらの組合せによって、タンパク質、超構造タンパク質または高次の粒子の単離、精製、濃縮またはこれらの組合せを行うためにさらに処理することができる。精製されたタンパク質、超構造タンパク質または高次の粒子、例えば、VLPなどの存在は、例えば、ネイティブなまたはSDS-PAGE、適切な検出用抗体を使用したウエスタン分析、キャピラリー電気泳動、電子顕微鏡、または当業者には明らかであると思われる任意の他の方法によって確認することができる。
【0066】
図4Aには、PVLPを含む植物抽出物のサイズ排除クロマトグラフィー分析の溶出プロファイルの例が示されている。この場合、VLPを含むエンテロウイルスEV71カプシドが画分9~およそ14に溶出し、画分12でピークに達する。
【0067】
VLPは、任意の適切な方法、例えば、化学的または生化学的抽出を使用して精製または抽出することができる。VLPは、乾燥、熱、pH、界面活性物質および界面活性剤に対して比較的感受性が高い可能性がある。したがって、収率を最大にし、VLP画分の細胞タンパク質によるコンタミネーションを最小限にし、タンパク質またはVLPの完全性を維持する方法、および細胞壁を緩めてタンパク質、またはVLPを放出させる方法を使用することが有用であり得る。例えば、プロトプラストおよび/またはスフェロプラストを生成する方法を使用して(例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO2011/035422を参照されたい)、本明細書に記載のVLPを得ることができる。例えばSDSまたはトリトンX-100のような界面活性剤または界面活性物質の使用を最小限にするまたは排除することが、VLP抽出の収率を改善するために有益であり得る。次いで、VLPを構造およびサイズについて、例えば、電子顕微鏡によって、または上記の通りサイズ排除クロマトグラフィーによって評価し、分析用超遠心に供することができる。
【0068】
上で定義されているPVLPのサイズ(すなわち、直径)は、例えば、動的光散乱(DLS)技法または電子顕微鏡(EM)技法によって測定することができ、通常、20nmから50nmの間、またはその間の任意のサイズである。例えば、インタクトなPVLP構造のサイズは、約25nmから約35nmまでの範囲、またはその間の任意のサイズ、または20nm、21nm、22nm、23nm、24nm、25nm、26nm、27nm、28nm、29nm、30nm、31nm、32nm、33nm、34nm、35nm、36nm、37nm、38nm、39nm、40nm、41nm、42nm、43nm、44nm、45nm、46nm、47nm、48nm、49nm、50nm、またはその間の任意のサイズであってよい。
【0069】
PVLPは、植物の総タンパク質含有量の約40%に対応する、植物の新鮮重1キログラム当たり2gまでの量で合成することができる。例えば、本明細書に記載の通り、合成されるVLPの量は、新鮮重1キログラム当たり10mgから2.0gの間、またはその間の任意の量、例えば、新鮮重1キログラム当たり10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900または2000mgなど、またはその間の任意の量であってよい。
【0070】
宿主
本発明の1つまたは2つ以上の遺伝子コンストラクトを、本発明のヌクレオチド配列、またはコンストラクト、またはベクターによって形質転換する任意の適切な植物宿主または植物の一部、例えば、1枚もしくは複数枚の葉、幹と1枚もしくは複数枚の葉、または根において発現させることができる。適切な宿主の例としては、これだけに限定されないが、アルファルファ、キャノーラ、Brassica種、トウモロコシ、Nicotiana種、ジャガイモ、チョウセンニンジン、エンドウマメ、エンバク、イネ、ダイズ、コムギ、オオムギ、サンフラワー、綿などを含めた農作物が挙げられる。
【0071】
本発明の1つまたは複数の遺伝子コンストラクトは、3’非翻訳(untranslated)領域をさらに含んでよい。3’非翻訳(untranslated)領域とは、mRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響を及ぼすことができるポリアデニル化シグナルおよび任意の他の調節シグナルを含有するDNAセグメントを含む遺伝子の部分を指す。ポリアデニル化シグナルは、通常、mRNA前駆体の3’末端を追跡するポリアデニル酸の付加に影響を及ぼすことを特徴とする。ポリアデニル化シグナルは、一般に、変動が珍しくないにもかかわらず、標準形態5’AATAAA-3’に対する相同性が存在することによって認識される。適切な3’領域の非限定的な例は、ノパリンシンターゼ(NOS)遺伝子などのAgrobacterium腫瘍誘導性(Ti)プラスミド遺伝子、ダイズ貯蔵タンパク質遺伝子などの植物遺伝子、リブロース-1,5-二リン酸カルボキシラーゼ(ribulose-I, 5-bisphosphate carboxylase)遺伝子の小サブユニット(ssRUBISCO;US4,962,028;参照により本明細書に組み込まれる)、US7,125,978(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているプラストシアニン発現の調節に使用するプロモーターのポリアデニル化シグナルを含有する3’転写非翻訳(nontranslated)領域である。
【0072】
本発明の遺伝子コンストラクトの1つまたは複数は、必要に応じて、翻訳エンハンサーまたは転写エンハンサーのいずれかの別のエンハンサーも含んでよい。エンハンサーは、転写される配列の5’側に位置しても3’側に位置してもよい。エンハンサー領域は当業者に周知であり、ATG開始コドン、近接する配列などを含んでよい。開始コドンが存在する場合、それは、転写された配列の正確な翻訳をもたらすために、コード配列の読み枠と同相にあってよい(「インフレーム」)。
【0073】
本発明のコンストラクトは、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、直接DNA形質転換、微量注入、電気穿孔などを使用して植物細胞に導入することができる。そのような技法の総説に関しては、例えば、WeissbachおよびWeissbach、Methods for Plant Molecular Biology、Academy Press、New York VIII、421~463頁(1988年);GeiersonおよびCorey、Plant Molecular Biology、第2版(1988年);ならびにMikiおよびIyer、Fundamentals of Gene Transfer in Plants. In Plant Metabolism、第2版、DT. Dennis、DH Turpin、DD Lefebrve、DB Layzell(編)、Addison Wesly、Langmans Ltd. London、561~579頁(1997年)を参照されたい。他の方法としては、直接DNA取り込み、リポソームの使用、例えばプロトプラストを使用した電気穿孔、微量注入、微粒子銃またはウィスカー(whisker)、および減圧浸潤(vacuum infiltration)が挙げられる。例えば、Bilangら(Gene100巻:247~250頁(1991年)、Scheidら(Mol. Gen. Genet. 228巻:104~112頁、1991年)、Guercheら(Plant Science 52巻:111~116頁、1987年)、Neuhauseら(Theor. Appl Genet. 75巻:30~36頁、1987年)、Kleinら、Nature 327巻:70~73頁(1987年);Howellら(Science 208巻:1265頁、1980年)、Horschら(Science 227巻:1229~1231頁、1985年)、DeBlockら、Plant Physiology 91巻:694~701頁、1989年)、Methods for Plant Molecular Biology(WeissbachおよびWeissbach編、Academic Press Inc.、1988年)、Methods in Plant Molecular Biology(SchulerおよびZielinski編、Academic Press Inc.、1989年)、LiuおよびLomonossoff(J Virol Meth、105巻:343~348頁、2002年)、米国特許第4,945,050号;同第5,036,006号;ならびに同第5,100,792号、1995年5月10日出願の米国特許出願第08/438,666号、および1992年9月25日出願の同第07/951,715号(全てがこれによって参照により組み込まれる)を参照されたい。
【0074】
一過性発現
理論に束縛されることを望むものではないが、異なるピコルナウイルス構造タンパク質、ピコルナウイルスポリタンパク質および/またはプロテアーゼのタンパク質濃度および比がPVLPの構築効率に対して重要であり得る。したがって、植物におけるタンパク質の濃度およびVLPの全体的な構築効率を操作するためには、感染症の多重度および時間が重要であり得る。
【0075】
本発明のコンストラクトは、植物、植物の一部、または植物細胞において一過性に発現させることができる。Agrobacterium tumefaciensの浸潤によって植物、植物の一部、または植物細胞に導入した組換えポリタンパク質の染色体外(epichromosomal)発現に依拠する一過性発現系を使用して、種々の細胞区画または亜区画にターゲティングしたピコルナウイルス構造タンパク質、ピコルナウイルスポリタンパク質および/またはプロテアーゼを発現させることができる。一過性発現系は、高スピードの生成を可能にする。さらに、組換えAgrobacteriumを植物に浸潤させた後、数日以内に大量のタンパク質を得ることができる(Rybicki、2010年;Fischerら、1999年)。長い遺伝子配列を発現させること、および同じ細胞において2つ以上の遺伝子を同時に発現させることも可能であり、これは、多量体タンパク質の効率的な構築を可能にする(Lombardiら、2009年)。
【0076】
しかし、一過性発現の間、転写後遺伝子サイレンシングにより植物における異種タンパク質の発現が限定される可能性がある。サイレンシングのサプレッサー、例えば、これだけに限定されないが、トマト黄化壊疽ウイルス由来のNssの同時発現を使用して、導入遺伝子mRNAの特異的な分解を打ち消すことができる(Brignetiら、1998年)。代替のサイレンシングのサプレッサー、例えば、これだけに限定されないが、HcPro、TEV-p1/HC-Pro(タバコエッチ病ウイルス-p1/HC-Pro)、BYV-p21、トマトブッシースタントウイルスのp19(TBSV p19)、トマトクリンクルウイルス(Tomato crinkle virus)のカプシドタンパク質(TCV-CP)、キュウリモザイクウイルスの2b;CMV-2b)、ジャガイモXウイルスのp25(PVX-p25)、ジャガイモMウイルスのp11(PVM-p11)、ジャガイモSウイルスのp11(PVS-p11)、ブルーベリースコーチウイルス(Blueberry scorch virus)のp16、(BScV-p16)、カンキツトリステザウイルス(Citrus tristexa virus)のp23(CTV-p23)、ブドウ葉巻病関連ウイルス-2(Grapevine leafroll-associated virus-2)のp24、(GLRaV-2 p24)、ブドウAウイルスのp10(GVA-p10)、ブドウBウイルスのp14(GVB-p14)、ハナウド潜在ウイルス(Heracleum latent virus)のp10(HLV-p10)、またはニンニク共通潜在ウイルス(Garlic common latent virus)のp16(GCLV-p16)が当技術分野で周知であり、本明細書に記載の通り使用することができる(Chibaら、2006年、Virology 346巻:7~14頁;参照により本明細書に組み込まれる)。したがって、サイレンシングのサプレッサー、例えば、HcPro、TEV-p1/HC-Pro、BYV-p21、TBSV p19、TCV-CP、CMV-2b、PVX-p25、PVM-p11、PVS-p11、BScV-p16、CTV-p23、GLRaV-2 p24、GBV-p14、HLV-p10、GCLV-p16またはGVA-p10を、1つまたは複数のピコルナウイルス構造タンパク質、ピコルナウイルスポリタンパク質および/またはプロテアーゼと同時発現させて、植物、植物の一部または植物細胞における高レベルのタンパク質生成をさらに確実にすることができる。
【0077】
本発明は、追加的な(第3の)ヌクレオチド配列を植物において発現させ、その追加的な(第3の)ヌクレオチド配列がサイレンシングのサプレッサーをコードし、植物において活性な追加的な(第3の)調節領域に作動可能に連結している上記の方法も提供する。サイレンシングのサプレッサーをコードするヌクレオチド配列は、例えば、Nss、HcPro、TEV-p1/HC-Pro、BYV-p21、TBSV p19、TCV-CP、CMV-2b、PVX-p25、PVM-p11、PVS-p11、BScV-p16、CTV-p23、GLRaV-2 p24、GBV-p14、HLV-p10、GCLV-p16またはGVA-p10であってよい。
【0078】
下記の通り、一過性発現方法を使用して、本発明のコンストラクトを発現させることができる(参照により本明細書に組み込まれるLiuおよびLomonossoff、2002年、Journal of Virological Methods、105巻:343~348頁を参照されたい)。あるいは、参照により本明細書に組み込まれるKapilaら、1997年に記載されている真空に基づく一過性発現方法を使用することができる。これらの方法としては、例えば、これだけに限定されないが、Agro-接種またはAgro-浸潤、シリンジ浸潤の方法を挙げることができる。しかし、他の一過性の方法も上記の通り使用することができる。Agro-接種、Agro-浸潤、またはシリンジ浸潤を用いて、所望の核酸を含むAgrobacteriaの混合物を組織、例えば葉の細胞間の空間、植物の空気中にある部分(幹、葉および花を含めた)、他の植物の一部(幹、根、花)、または植物全体に進入させる。上皮を渡ってAgrobacteriaが感染した後、t-DNAコピーが細胞内に移入される。t-DNAがエピソームとして転写され、mRNAが翻訳され、それにより、感染細胞における対象のタンパク質の生成がもたらされるが、t-DNAが核の内側を通過するのは一過性である。
【0079】
本発明の核酸または1つまたは2つ以上の遺伝子コンストラクトを含有するトランスジェニック植物、植物の細胞または種子も本発明の一部とみなされる。植物細胞から植物全体を再生する方法も当技術分野で公知である。一般に、形質転換された植物細胞を抗生物質などの選択剤を含有してよい適切な培地で培養し、選択マーカーを使用して、安定に形質転換された植物細胞の同定を容易にする。安定に形質転換された植物細胞の同定を補助するために、本発明のコンストラクトをさらに操作して植物選択マーカーを含めることができる。有用な選択マーカーとしては、例えば、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシンなどの抗生物質などの化学物質、または除草剤、例えば、ホスフィノトリシン(phosphinothrycin)、グリホサート、クロロスルフロン(chlorosulfuron)などに対する耐性をもたらす酵素が挙げられる。同様に、色の変化によって同定可能な化合物の生成をもたらす酵素、例えば、GUS(ベータグルクロニダーゼ)など、または発光によって同定可能な化合物の生成をもたらす酵素、例えば、ルシフェラーゼまたはGFPなどを使用することができる。カルスが形成されたら、公知の方法に従って適切な植物ホルモンを使用することによって苗条形成を促進し、植物を再生させるために苗条を発根培地に移すことができる。次いで、その植物を使用して、種子から、または栄養繁殖技法を使用して反復的発生を確立することができる。トランスジェニック植物は、組織培養物を使用せずに作出することもできる。
【0080】
増幅エレメント
ポリタンパク質とプロテアーゼの比は、例えば、ポリタンパク質およびプロテアーゼの発現を駆動するために使用する核酸配列に種々の調節エレメント、または調節エレメントの組合せを使用することによって変動させることができる。例えば、調節エレメントの第1のセットまたは組合せを使用して第1の核酸の複製、転写またはこれらの組合せを調節することができ、調節エレメントの第2のセットまたは組合せを使用して、第2の核酸の複製、転写またはこれらの組合せを調節することができ、したがって、第1の核酸の発現と第2の核酸の発現の差異が実現され、それにより、in vivoにおけるポリタンパク質:プロテアーゼの比が調節される。例えば、限定するものとみなされない調節エレメントの第1のセットまたは組合せは、増幅エレメント、例えば、BeYDVから得たエレメントを含んでよく、一方、調節エレメントの第2のセットまたは組合せには増幅エレメントが存在しなくてよい。あるいは、第2のセットは、増幅エレメント、例えば、BeYDVから得たエレメントを含んでよく、一方、調節エレメントの第1のセットまたは組合せには増幅エレメントが存在しなくてよい。
【0081】
「発現カセット」とは、宿主細胞において対象の核酸を転写するための適切なプロモーターまたは他の調節エレメントの制御下にあり、それに作動可能に(operably(or operatively))連結している対象の核酸を含むヌクレオチド配列を指す。
【0082】
本明細書に記載の発現系は、二分節型(bipartite)ウイルス、または二分節型ゲノムを有するウイルスに基づく発現カセットを含んでよい。例えば、二分節型ウイルスは、Comoviridae科のウイルスであってよい。Comoviridae科の属としては、コモウイルス(Comovirus)、ネポウイルス(Nepovirus)、ファバウイルス(Fabavirus)、チェラウイルス(Cheravirus)およびサドワウイルス(Sadwavirus)が挙げられる。コモウイルス(Comovirus)としては、ササゲモザイクウイルス(CPMV)、ササゲ重症モザイクウイルス(Cowpea severe mosaic virus)(CPSMV)、カボチャモザイクウイルス(SqMV)、ムラサキツメクサ斑紋ウイルス(RCMV)、マメさや斑紋ウイルス(BPMV)、カブ輪斑ウイルス(TuRSV)、ソラマメ真性モザイクウイルス(BBtMV)、ソラマメステインウイルス(BBSV)、ダイコンモザイクウイルス(RaMV)が挙げられる。本発明の種々の態様に対して有用であり得るエンハンサーエレメントを含むコモウイルスRNA-2配列の例としては、これだけに限定されないが、CPMV RNA-2(GenBank受託番号NC_003550)、RCMV RNA-2(GenBank受託番号NC_003738)、BPMV RNA-2(GenBank受託番号NC_003495)、CPSMV RNA-2(GenBank受託番号NC_003544)、SqMV RNA-2(GenBank受託番号NC_003800)、TuRSV RNA-2(GenBank受託番号NC_013219.1)、BBtMV RNA-2(GenBank受託番号GU810904)、BBSV RNA2(GenBank受託番号FJ028650)、RaMV(GenBank受託番号NC_003800)が挙げられる。
【0083】
二分節型コモウイルスのRNAゲノムのセグメントは、RNA-1およびRNA-2と称される。RNA-1は複製に関与するタンパク質をコードし、一方、RNA-2は細胞間移行に必要なタンパク質および2つのカプシドタンパク質をコードする。CPMV、CPSMV、SqMV、RCMV、またはBPMVを含めた、任意の適切なコモウイルスに基づくカセットを使用することができ、例えば、発現カセットはCPMVに基づくものであってよい。
【0084】
発現系は、ジェミニウイルス由来の増幅エレメント、例えば、マメ黄萎病ウイルス(BeYDV)由来の増幅エレメントも含んでよい。BeYDVは、双子葉植物に適応するマストレウイルス(Mastrevirus)属に属する。BeYDVは、一本鎖環状DNAゲノムを有する単分節型であり、ローリングサークル機構によって非常に高いコピー数を複製することができる。BeYDV由来のDNAレプリコンベクター系は、植物においてタンパク質を急速に高収率で生成するために使用されている。
【0085】
本明細書で使用される場合、「増幅エレメント」という句は、ジェミニウイルスゲノムの1つまたは複数の長い遺伝子間領域(LIR)の少なくとも一部分を含む核酸セグメントを指す。本明細書で使用される場合、「長い遺伝子間領域」とは、ジェミニウイルスRepタンパク質による除去および複製を媒介することができるrep結合部位を含有する、長い遺伝子間領域の領域を指す。いくつかの態様では、1つまたは複数のLIRを含む核酸セグメントは、ジェミニウイルスゲノムの短い遺伝子間領域(SIR)をさらに含んでよい。本明細書で使用される場合、「短い遺伝子間領域」とは、相補鎖(マストレウイルス(Mastrevirus)の短いIR(SIR))を指す。任意の適切なジェミニウイルス由来の増幅エレメントを本発明で使用することができる。例えば、WO2000/20557;WO2010/025285;Zhang X.ら(2005年、Biotechnology and Bioengineering、93巻、271~279頁)、Huang Z.ら(2009年、Biotechnology and Bioengineering、103巻、706~714頁)、Huang Z.ら(2009年、Biotechnology and Bioengineering、106巻、9~17頁);参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0086】
調節エレメント
本発明は、上記の通り、植物において作動可能な調節エレメントに作動可能に連結したポリタンパク質、例えば、1つまたは複数のピコルナウイルスタンパク質など、またはプロテアーゼ、例えば、これだけに限定されないが、ピコルナウイルスプロテアーゼをコードする核酸を含む遺伝子コンストラクトをさらに対象とする。
【0087】
本出願では「調節領域」、「調節エレメント」または「プロモーター」という用語の使用は、常にではないが一般には遺伝子のタンパク質コード領域の上流にあり、DNAまたはRNAのいずれかで構成されてもよく、DNAとRNAの両方で構成されてもよい核酸の一部を反映するものとする。調節領域が活性であり、対象の遺伝子と作動可能な関係にある、または対象の遺伝子に作動可能に連結している場合、これにより、対象の遺伝子の発現がもたらされ得る。調節エレメントは、器官特異性を媒介すること、または発生遺伝子もしくは時間的遺伝子の活性化を制御することができ得る。「調節領域」は、プロモーターエレメント、基底のプロモーター活性を示すコアプロモーターエレメント、外部刺激に応答して誘導できるエレメント、プロモーター活性を媒介するエレメント、例えば、負の調節エレメントまたは転写エンハンサーなどを含んでよい。「調節領域」とは、本明細書で使用される場合、転写後に活性なエレメント、例えば、遺伝子発現を調節する調節エレメント、例えば、翻訳エンハンサーおよび転写エンハンサー、翻訳サプレッサーおよび転写サプレッサー、上流活性化配列、ならびにmRNA不安定性決定因子なども含んでよい。これらの後者のエレメントのいくつかはコード領域の近位に位置してよい。
【0088】
植物細胞において作動可能であり、本発明に従って使用することができる調節エレメントの例としては、これだけに限定されないが、プラストシアニン調節領域(US7,125,978;参照により本明細書に組み込まれる)、またはリブロース1,5-二リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼの調節領域(RuBisCO;US4,962,028;参照により本明細書に組み込まれる)、クロロフィルa/b結合性タンパク質(CAB;Leutwilerら;1986年;参照により本明細書に組み込まれる)、ST-LS1(光化学系IIの酸素発生複合体に関連し、参照により本明細書に組み込まれるStockhausら1987年、1989年に記載されている)が挙げられる。
【0089】
本開示に関しては、「調節エレメント」または「調節領域」という用語は、一般には、常にではないが通常は、RNAポリメラーゼおよび/または特定の部位で転写が開始されるために必要な他の因子の認識をもたらすことによってコード領域の発現を制御する構造遺伝子のコード配列の上流(5’)にあるDNAの配列を指す。しかし、配列のイントロン内、または3’に位置する他のヌクレオチド配列が、対象のコード領域の発現の調節に寄与し得ることが理解されるべきである。RNAポリメラーゼまたは特定の部位における開始を確実にするための他の転写因子の認識をもたらす調節エレメントの例は、プロモーターエレメントである。全てではないが大部分の真核生物プロモーターエレメントは、通常は転写開始部位のおよそ25塩基対上流に位置する、アデノシンヌクレオチドとチミジンヌクレオチドの塩基対で構成される保存された核酸配列であるTATAボックスを含有する。プロモーターエレメントは、転写の開始に関与する基底のプロモーターエレメント、および遺伝子発現を改変する他の調節エレメント(上で列挙した)を含む。
【0090】
発生的に調節される調節領域、誘導性調節領域または構成的調節領域を含めたいくつかの種類の調節領域が存在する。発生的に調節される、またはその制御下にある遺伝子の示差的な発現を制御する調節領域は、特定の器官または器官の組織内で、その器官または組織の発生の間の特定の期間に活性化される。しかし、発生的に調節される調節領域の中には、特定の器官または組織内で特定の発生段階において優先的に活性になるものもあり、それらは、発生的に調節される様式でも活性であり得、植物内の他の器官または組織において基底のレベルでも同様に活性であり得る。組織特異的な調節領域、例えば、種子特異的(see-specific)調節領域の例としては、ナピン(napin)プロモーター、およびクルシフェリンプロモーターが挙げられる(Raskら、1998年、J.
Plant Physiol. 152巻:595~599頁;Bilodeauら、1994年、Plant Cell 14巻:125~130頁)。葉特異的プロモーターの例としてはプラストシアニンプロモーターが挙げられる(参照により本明細書に組み込まれるUS7,125,978を参照されたい)。
【0091】
誘導性調節領域は、誘導因子に応答して、1つまたは複数のDNA配列または遺伝子の転写を直接または間接的に活性化することができるものである。誘導因子の不在下ではDNA配列または遺伝子は転写されない。一般には、誘導性調節領域に特異的に結合して転写を活性化するタンパク質因子が不活性な形態で存在してよく、これはその後、誘導因子によって活性型に直接または間接的に変換される。しかし、タンパク質因子は存在しなくてもよい。誘導因子は、化学薬剤、例えば、タンパク質、代謝産物、成長調節因子、除草剤もしくはフェノール化合物など、または熱、低温、塩、または毒性要素によって直接課される生理的ストレスもしくはウイルスなどの病原体もしくは疾患因子の作用によって間接的に課される生理的ストレスであってよい。誘導性調節領域を含有する植物細胞を、誘導因子を細胞または植物に外部から適用することによって、例えば、噴霧、散水、加熱または同様の方法などによって誘導因子に曝露させることができる。誘導性調節エレメントは、植物遺伝子または非植物遺伝子のいずれかに由来するものであってよい(例えば、Gatz, C.およびLenk, LR.P.、1998年、Trends Plant
Sci. 3巻、352~358頁;参照により組み込まれる)。潜在的な誘導性プロモーターの例としては、これだけに限定されないが、テトラサイクリン誘導性プロモーター(Gatz, C.,1997年、Ann. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol. 48巻、89~108頁;参照により組み込まれる)、ステロイド誘導性プロモーター(Aoyama. T.およびChua, N.H.、1997年、Plant 1.2巻、397~404頁;参照により組み込まれる)およびエタノール誘導性プロモーター(Salter, M.G.ら、1998年、Plant 10urnal 16巻、127~132頁;Caddick, M.X.ら、1998年、Nature Biotech. 16巻、177~180頁、参照により組み込まれる)サイトカイニン誘導性のIB6遺伝子およびCKI 1遺伝子(Brandstatter, I.およびK.ieber、1.1巻、1998年、Plant
Cell 10巻、1009~1019頁;Kakimoto, T.、1996年、Science 274巻、982~985頁;参照により組み込まれる)ならびにオーキシン誘導性エレメント、DR5(Ulmasov, T.ら、1997年、Plant
Cell 9巻、1963~1971頁;参照により組み込まれる)が挙げられる。
【0092】
構成的調節領域は、植物の種々の部分全体にわたって、かつ植物の発生全体にわたって継続的に遺伝子の発現を導くものである。公知の構成的調節エレメントの例としては、CaMV 35S転写物に関連するプロモーター(Odellら、1985年、Nature、313巻:810~812頁)、イネアクチン1に関連するプロモーター(Zhangら、1991年、Plant Cell、3巻:1155~1165頁)、アクチン2に関連するプロモーター(Anら、1996年、Plant J.、10巻:107~121頁)、またはtms2遺伝子に関連するプロモーター(U.S.5,428巻,147頁、参照により本明細書に組み込まれる)、およびトリオースリン酸イソメラーゼ1遺伝子に関連するプロモーター(Xuら、1994年、Plant Physiol. 106巻:459~467頁)、トウモロコシユビキチン1遺伝子に関連するプロモーター(Cornejoら、1993年、Plant Mol. Biol. 29巻:637~646頁)、Arabidopsisユビキチン1および6遺伝子に関連するプロモーター(Holtorfら、1995年、Plant Mol. Biol. 29巻:637~646頁)、ならびにタバコ翻訳開始因子4A遺伝子に関連するプロモーター(Mandelら、1995年、Plant Mol. Biol. 29巻:995~1004頁)が挙げられる。
【0093】
「構成的な」という用語は、本明細書で使用される場合、必ずしも、構成的調節領域の制御下にある遺伝子が全ての細胞型において同じレベルで発現されることを示すものではなく、遺伝子が、存在量の変動が多くの場合に観察されるとしても、広範囲の細胞型において発現されることを示すものである。構成的調節エレメントを他の配列とカップリングして、それが作動可能に連結したヌクレオチド配列の転写および/または翻訳をさらに増強することができる。例えば、CPMV-HT系はササゲモザイクウイルス(CPMV)の非翻訳(untranslated)領域に由来し、関連するコード配列の翻訳を増強することが実証されている。「ネイティブな」とは、核酸またはアミノ酸配列が天然に存在すること、または「野生型」であることを意味する。「作動可能に連結した」とは、特定の配列、例えば、調節エレメントと対象のコード領域が直接または間接的に相互作用して、意図された機能、例えば、遺伝子発現の媒介または調節などがなされることを意味する。作動可能に連結した配列の相互作用は、例えば、作動可能に連結した配列と相互作用するタンパク質によって媒介され得る。
【0094】
ポリタンパク質とプロテアーゼの比は、例えば、調節エレメント、増幅エレメントおよび/またはエンハンサーを使用することによってさらに変動させることができる。例えば、第1の核酸は調節エレメント、増幅エレメントおよび/またはエンハンサーを含んでよい。第2の核酸は、調節エレメント、増幅エレメントおよび/またはエンハンサーの同じ組合せを含んでも含まなくてもよい。
【0095】
例えば、異なるプロモーターを使用して、in vivoにおけるポリタンパク質とプロテアーゼの間の示差的な発現を駆動することができる。例えば、調節エレメントの第1のセットもしくは組合せは誘導性プロモーターを含んでよく、一方で、調節エレメントの第2のセットもしくは組合せ内のプロモーターは構成的なものであってよい、または、調節エレメントの第2のセットもしくは組合せは誘導性プロモーターを含んでよく、一方で、調節エレメントの第1のセットもしくは組合せ内のプロモーターは構成的なものであってよい。プロモーターの強度が調節エレメントの第1のセットまたは組合せと第2のセットまたは組合せの間で異なってもよく、したがって、in vivoにおいてポリタンパク質とプロテアーゼの間の示差的な発現が実現される。
【0096】
本発明を以下の実施例においてさらに例示する。
【実施例】
【0097】
(実施例1)
EV71の発現
遺伝子合成
EV71構造タンパク質P1をコードするDNAセグメントおよびプロテアーゼ3CDをコードするDNAセグメントを使用した。P1および3CDの候補配列はGenBankにおいて入手可能である。これらの配列の非限定的な例は以下のものである:
・P1アミノ酸配列:アミノ酸配列GenBank ID ADG57603(アミノ酸1~862)(配列番号5);ヌクレオチド配列:GenBank ID GQ279369(ヌクレオチド743~3328)(配列番号6);
・3CD(HK08株):アミノ酸配列:GenBank ID ADG57603(アミノ酸1549~2193)(配列番号1);ヌクレオチド配列:GenBank ID GQ279369(ヌクレオチド5386~7321)(配列番号2);
・3CD(GDFS08株):アミノ酸配列 GenBank ID ACI25378(アミノ酸1549~2193)(配列番号3);ヌクレオチド配列:GenBank ID FJ194964(ヌクレオチド5387~7321)(配列番号4)。
【0098】
2種のP1遺伝子を合成した。第1のP1遺伝子は野生型配列を使用して生成し、第2のP1遺伝子は、当技術分野で公知の標準の方法を使用して決定した最適化配列(ヒトコドンを使用)に基づいた。2種の3CD遺伝子をそれらの野生型配列に基づいて合成した。3種の野生型遺伝子をInvitrogen(商標)(以前はGeneArt(登録商標))によって合成し、DNA2.0によって最適化P1遺伝子を最適化し、合成した。
【0099】
分子クローニング
合成された遺伝子を、植物発現ベクターにクローニングした。選択されたベクター成分は、ササゲモザイクウイルス(CPMV)に基づくカセットに由来する転写調節エレメントおよび翻訳調節エレメントまたはアルファルファプラストシアニン遺伝子を含む。どちらの調節エレメントも、組換えタンパク質を高発現させるための我々のプラットフォームにおいて首尾よく使用されている。本発明者らの植物発現ベクターに組み込むことができる別の特徴はマメ黄萎病ジェミニウイルス(BeYDV)由来のDNA増幅エレメントである。これにより、いくつかの候補についてタンパク質の発現が大きく増大した。したがって、各遺伝子コンストラクトを、DNA増幅エレメントを伴ってまたは伴わずに、発現ベクターにクローニングした。表1には、本プロジェクトのために構築された植物発現カセットが提示されている。
【表1】
【0100】
発現の分析-最良の組換え遺伝子コンストラクトの選択
各発現カセットをプラスミドベクターにクローニングし、次いでそれをAgrobacterium tumefaciensに移入した。DNAコンストラクトの移動性DNAコピーの植物細胞への移入を導くトランスジェニックAgrobacterium種菌の減圧浸潤によって一過性発現を開始した。多数の成分の一過性発現(同時発現)をAgrobacterium種菌の混合物を浸潤させること(同時浸潤)によって実施した。植物に導入される1つの成分は構造的なもの(P1)であり、かつ、第2の成分である3CDプロテアーゼの基質であるので、2つの成分の発現レベルを調節した。これは、強度が変動し得る異なるプロモーター、DNA増幅系を使用することによって、浸潤時の各種菌(P1および3CD)の相対的な存在量を変動させることによって、またはこれらを組合せて実施した。
【0101】
発現ベクター1300~1308を、P1を単独で発現するそれらの能力について、およびベクター1310~1318と組み合わせて、タンパク質分解断片VP1~4を高レベルで生成するそれらの能力についてスクリーニングした。抗VP1抗体のみが入手可能であったので(Abnova、MAB1255-M05)、タンパク質分解断片の蓄積をVP1の蓄積およびプロセシングされていないP1の消失によってモニターした。
図2に示されている通り、P1単独の発現(ベクター番号1300)により、プロセシングされていない構造タンパク質の分子量に対応する見かけの分子量(98kDa)を有するVP1含有生成物の蓄積が導かれ、これにより、植物プロテアーゼはP1を切断してウイルスカプシドタンパク質を生じることができないことが示された。しかし、P1を3CDと同時発現させた場合(ベクター番号1300+1310および1300+1315)、98kDaのシグナルは完全に消失し、VP1の分子量(33.5kDa)に対応する新しい生成物が検出される。この結果により、ウイルスプロテアーゼが植物において生成され、高度に活性であること、および、ウイルスプロテアーゼにより、植物細胞において同時に生成されたその基質が認識され、切断されて、EV71カプシドタンパク質が生じることが示される。
【0102】
得られた結果により、植物におけるVP1蓄積のレベルは、P1タンパク質を含有するAgrobacteriumと3CDプロテアーゼを含有するAgrobacteriumの比に影響され、3CDプロテアーゼを含有するAgrobacteriumの割合が低いほど高い蓄積が得られることが示された(
図2:1300+1315(4:2)、1300+1315(4:1)および1300+1315(4:0.5)を比較されたい)。3CDの起源がHK08対GDFS08のいずれであるかも、植物におけるVP1の蓄積レベルに影響を及ぼす(
図2:1300+1310(4:0.5)対1300+1315(4:0.5))。最後に、DNA増幅エレメントを含む発現ベクターから最も高いVP1蓄積レベルが得られることが観察された(
図2:1301+1311(4:2))。
【0103】
以下の実験では、P1をCPMV-HT+BeYDV(1301)の制御下で維持しながら、種々の3CD発現カセットを浸潤時に種々の希釈度で用いて同時形質転換した。形質転換された植物由来の粗タンパク質抽出物に対する抗VP1モノクローナル抗体を使用したウエスタンブロット分析により、様々なP1とプロテアーゼの比およびコンストラクト成分にわたってVP1蓄積が観察されることが示された。最も高いVP1蓄積のレベルがもたらされたベクターの組合せは、1301+1310であり、細菌懸濁液中のAgrobacterium株濃度の比は4:0.5(構造タンパク質:プロテアーゼ)であった(
図3)。
【0104】
VLP形成の分析
VLPへのVP1の組み入れを、濃縮した抽出物のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して評価した。粗製の清澄化された抽出物から、高速遠心分離(75000×g、20分)によってコロイド粒子を濃縮した。ペレットを洗浄し、1/6体積の再懸濁緩衝液(50mMのPBS、pH7.4、150mMのNaCl)に再懸濁し、Sephacryl S-500ゲル濾過カラムにローディングした。カラムを、再懸濁緩衝液を用いて溶出し、溶出画分をSDS-PAGEおよびウエスタンブロット法によって特徴付けた。
【0105】
1301+1310(4:0.5)を用いて一過性に形質転換した植物由来のタンパク質抽出物をSEC分離に供し、溶出画分をクーマシー染色SDS-PAGEおよび抗VP1ウエスタンブロットによって分析した。
図4Aに示されている結果により、カラムから溶出した宿主タンパク質の大部分は後半の画分にあり、画分16でピークに達するが、一方、VP1に特異的なシグナルは前の画分に見いだされ、画分12でピークに達し、そこで見いだされる宿主タンパク質は非常に少ないことが示されている。VP1は比較的小さなタンパク質であり、高分子量の構造に組み入れられていなければ、大多数の宿主タンパク質と一緒にカラムから溶出することが予測される。したがって、VP1について観察された溶出プロファイルにより、VP1が高分子量の構造に組み込まれていたことが強力に示される。ウエスタンブロットとクーマシー染色ゲルの組合せによっても、
図4Aのクーマシー染色SDS-PAGEにおいて矢印によって同定された豊富なタンパク質がVP1であり得ることが示唆された。
【0106】
この実験の溶出画分12の試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)による分析のためにInstitut Armand-Frappier(IAF、Laval、Quebec)に送付した。試料を、3%リンタングステン酸を用いて陰性染色した後に検査した。
図4Bには、EV71に感染しているVero細胞培養物に見いだされる空のEV71粒子(Liuら、PLoS ONE 6巻、e20005頁)とサイズおよび外観が同一である30nmの球状粒子が溶出画分12において観察されることが示されている。この結果により、VP1が組み込まれる高分子量の構造が真性のEV71 VLPであることが示されている。
【0107】
部分的な精製
形質転換された植物バイオマスからエンベロープを有するVLP(直径140nm)を精製するためにVLP精製法であるVLP Expressスクリーニングプラットフォームを開発した。当該方法では、細胞外の内容物および細胞質ゾルの内容物を放出させるために細胞壁の酵素による消化を使用し、得られた抽出物を深層濾過および精密濾過に供した後に、16000gで6時間遠心分離してVLPをペレット化する。ペレットを1/60体積の再懸濁溶液(100mMのNa/KPO4、pH7.4、150mMのNaCl、0.01%Tween-80)に再懸濁し、滅菌濾過する(0.2μm)。
【0108】
VLP Express精製法を、30nmのエンベロープを有さないEV71 VLPを濃縮するその能力について試験した。精製法を発現ベクター1301+1310(4:0.5)を用いて形質転換した植物に適用した。生じた生成物を、クーマシー染色SDS-PAGEおよび抗VP1ウエスタンブロット(
図5A)によって分析した。精製生成物のクーマシー染色SDS-PAGE分析により、分子量がEV71コートタンパク質に対応するタンパク質が存在することが示された(矢印によって示されている、
図5A、右側のパネル)。VP1の同一性をウエスタンブロットによって確認した(
図5A、左側のパネル)。他のカプシドタンパク質については、同定は、推定分子量;VP0については37.5kDa、およびVP3について26.5kDaに基づいた。ウイルス粒子の形成においてVP4とVP2の間の切断はウイルスRNAが内部移行した後にのみ起こるので、VP4およびVP2は切断されていないVP0の形態で見いだされることが予測された。精製された生成物の透過型電子顕微鏡分析により、サイズおよび形状がEV71 VLPに対応する30nmの球状構造が豊富にあることが明らかになった(
図5B)。
【0109】
発現に関する結論
植物に基づく一過性発現プラットフォームのEV71 VLPを生成する能力を実証するために実施した試験により、以下の結論が導かれた:
・EV71 P1タンパク質および3CDタンパク質は当該系において効率的に生成される
・3CDは植物体において活性であり、P1がカプシドタンパク質に正確にプロセシングされる
・EV71カプシドタンパク質は集合してVLPを構築する
・EV71 VLPは抽出可能であり、植物バイオマスからインタクトに精製することができる
【0110】
(実施例2)
発現ポリオウイルス発現
遺伝子合成
ヒトエンテロウイルスC血清型PV-1由来のポリオウイルス(PV)構造タンパク質P1をコードするDNAセグメントおよびプロテアーゼ3CDをコードするDNAセグメントを使用することができる。P1および3CDの候補配列はGenBankにおいて入手可能である。これらの配列の非限定的な例は以下のものである:
P1:アミノ酸配列GenBank ID NP_041277(アミノ酸1~881)(配列番号10);ヌクレオチド配列:GenBank ID NC_002058(ヌクレオチド743~3385)(配列番号9);
3CD:アミノ酸配列GenBank ID NP_041277(アミノ酸1566~2209)(配列番号8);ヌクレオチド配列:GenBank ID NC_002058(ヌクレオチド5438~7369)(配列番号7)。
【0111】
2種のP1遺伝子を合成することができる。第1のP1遺伝子は野生型配列を使用して生成することができ、一方、第2のP1遺伝子は、当技術分野で公知の標準の方法を使用して決定した最適化配列(ヒトコドンを使用)に基づいてよい。3CD遺伝子はその野生型配列に基づいて合成することができる。どちらの野生型遺伝子(P1および3CD)もInvitrogen(商標)(以前はGeneArt(登録商標))によって合成することができ、DNA2.0によって最適化P1遺伝子を最適化し、合成する。
【0112】
分子クローニング
合成された遺伝子を植物発現ベクターにクローニングすることができる。選択されたベクター成分は、ササゲモザイクウイルス(CPMV)に基づくカセットに由来する転写調節エレメントおよび翻訳調節エレメントまたはアルファルファプラストシアニン遺伝子を含み、どちらの調節エレメントも組換えタンパク質を高発現させるために以前から首尾よく使用されている。マメ黄萎病ジェミニウイルス(BeYDV)由来のDNA増幅エレメントも植物発現ベクターに組み込むことができる。したがって、各遺伝子コンストラクトを、DNA増幅エレメントを伴って、または伴わずに発現ベクターにクローニングすることができる。表2には、構築することができる植物発現カセットが提示されている。
【0113】
【0114】
発現の分析-最良の組換え遺伝子コンストラクトの選択
各発現カセットをプラスミドベクターにクローニングすることができ、次いでそれをAgrobacterium tumefaciensに移入することができる。DNAコンストラクトの移動性DNAコピーの植物細胞への移入を導くトランスジェニックAgrobacterium種菌の減圧浸潤によって一過性発現を開始させることができる。多数の成分の一過性発現(同時発現)を、Agrobacterium種菌の混合物を浸潤させること(同時浸潤)によって実施することができる。植物に導入される1つの成分は構造的であり(P1)、かつ、第2の成分である3CDプロテアーゼの基質であるので、2つの成分の発現レベルを調節することができる。これは、異なるプロモーター、種々の強度のDNA増幅系を使用することによって、各種菌(P1および3CD)の浸潤時の相対的な存在量を変動させることによって、またはこれらを組合せて実施することができる。
【0115】
P1を伴う発現ベクターを、まずP1を単独で発現するそれらの能力について、および3CDベクターと組み合わせて、高レベルのタンパク質分解断片を生成するそれらの能力についてスクリーニングすることができる。タンパク質分解断片の蓄積を、プロセシングされていないP1の消失によってモニターすることができる。ウイルスプロテアーゼは植物において生成され、高度に活性であること、およびウイルスプロテアーゼにより、植物細胞において同時に生成されるその基質が認識され、切断されて、PVカプシドタンパク質が生じることが示されている。
【0116】
植物におけるタンパク質分解断片の蓄積のレベルは、P1タンパク質を含有するAgrobacteriumと3CDプロテアーゼを含有するAgrobacteriumの比の影響を受ける可能性があり、3CDプロテアーゼを含有するAgrobacteriumの割合が低いほど高い蓄積が得られる。P1のプロセシングおよびタンパク質分解断片の蓄積に対するDNA増幅エレメントの存在および種々の調節エレメントの使用に関する観察を行った。
【0117】
VLP形成の分析
VLPへのVP1の組み入れを、濃縮した抽出物のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて評価することができる。粗製の清澄化された抽出物から、高速遠心分離によってコロイド粒子を濃縮することができる。ペレットを洗浄し、1/6体積の再懸濁緩衝液に再懸濁し、ゲル濾過カラムにローディングすることができる。カラムを、再懸濁緩衝液を用いて溶出し、溶出画分をSDS-PAGEおよびウエスタンブロット法によって特徴付けることができる。
【0118】
一過性に形質転換した植物由来のタンパク質抽出物をSEC分離に供し、溶出画分をクーマシー染色SDS-PAGEによって分析することができる。結果により、カラムから溶出した宿主タンパク質の大部分は後半の画分にあり、一方、VP1に特異的なシグナルは前の画分において見いだすことができることが示され得る。VP1は比較的小さなタンパク質であり、高分子量の構造に組み入れられていなければ、大多数の宿主タンパク質と一緒にカラムから溶出することが予測される。したがって、VP1について観察された溶出プロファイルにより、VP1が高分子量の構造に組み込まれていたことが強力に示され得る。ウエスタンブロットとクーマシー染色ゲルの組合せによっても、クーマシー染色SDS-PAGEにおいて観察された豊富なタンパク質がVP1であり得ることが示唆され得る。
【0119】
この実験の試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)による分析のためにInstitut
Armand-Frappier(IAF、Laval、Quebec)に送付することができる。結果により、VP1が組み込まれる高分子量の構造が真性のPV VLPであることが示されている。
【0120】
部分的な精製
形質転換された植物バイオマスからエンベロープを有するVLP(直径140nm)を精製するためにVLP精製法であるVLPExpressスクリーニングプラットフォームを開発した。当該方法では、細胞外の内容物および細胞質ゾルの内容物を放出させるために細胞壁の酵素による消化を使用し、得られた抽出物を深層濾過および精密濾過に供した後に、遠心分離してVLPをペレット化する。ペレットを再懸濁溶液に再懸濁し、滅菌濾過する。
【0121】
VLPExpress精製法を、エンベロープを有さないPV VLPを濃縮するその能力について試験することができる。精製生成物のクーマシー染色SDS-PAGE分析により、分子量がPVコートタンパク質に対応するタンパク質が存在することが示され得る。カプシドタンパク質の同定は、それらの推定分子量に基づいてよい。
【0122】
(実施例3)
精製
タンパク質抽出を、WO2011/035422およびPCT/CA2012/050180(参照により本明細書に組み込まれる)に記載の機械的抽出技法または細胞壁の酵素による分解のいずれかを使用して実施した。酵素による抽出は、これにより、生成物の放出の増加がもたらされ、混入植物タンパク質の放出は最小限であり、生じた抽出物中の主要な混入物が細胞壁の破壊のために使用される酵素であり、適切なその後の下流のステップを使用して除去することができるという点で、機械的抽出よりも有利である。
【0123】
機械的抽出物または酵素による抽出物を遠心分離に供して、細胞の細片、Agrobacteria、DNAおよび大きな粒子を排除した。次いで、遠心分離された抽出物を、下流の処理の前に、懸濁液中の固体を除去するため、バイオバーデンを低下させるため、および抽出物を安定化し調整するために実施した濾過ステップを通過させた。濾液中のEV71 VLPの回収率は数量化アッセイが存在せず評価することができなかったが、ウエスタンブロット分析により、濾過ステップの間のVLPの損失は最小限であったことが示された。生じた清澄化された抽出物を、接線流濾過(TFF)を使用してさらに処理した、または適切なクロマトグラフィー媒体に直接ローディングした。
【0124】
VLPのサイズにより、細胞壁の解重合のために使用した酵素を含めた、清澄化された抽出物中に見いだされる可溶性タンパク質を効率的かつ選択的に排除するためにTFFを使用することが可能になる。TFFステップによりVLPの濃縮も起こり、クロマトグラフィーのために調製物中の緩衝液を交換することが可能になる。
【0125】
いくつかのクロマトグラフィー手法(陰イオン交換、陽イオン交換、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)および偽アフィニティー)、方式(結合またはフロースルー)ならびに緩衝駅の条件(pH5~pH8、伝導率10~80mS/cm)を、純度を増加させ混入DNAおよび内毒素を減少させながら、VLPの所望の特性を保護するその能力について評価した。ある特定の条件下で、フロースルー方式で使用したPOROS(登録商標)D(弱い陰イオン交換樹脂)により、濃縮されたEV71 VLPからのDNAおよび内毒素の最も効率的な除去がもたらされることが見いだされた。
【0126】
EV71 VLP精製プロセスにおいて、クロマトグラフィー後に第2のTFFステップを追加した。このTFFステップの役割は、生成物を所望の緩衝液中に濃縮し、製剤化することであった。この第2のTFFステップのための孔径および動作条件は、第1のTFFに関して同定されたパラメータに基づいて決定した。最後に、0.22μmで濾過した後、濃縮された、見たところでは純粋なEV71粒子を有する原薬を得た。生成物を、0.01%ポリソルベート80を含有するPBS中に製剤化した。
【0127】
VLPの特徴付け
EV71 VLPの第1のロットを、上記の適合させたプロセスを用いて生成し(ロット番号479-23-018)、生成物を十分に特徴付けた(表3、ロット番号479-23-018)。クーマシー染色ゲルのスキャンからのデンシトメトリーによって純度を決定し、ウエスタンブロット(抗VP1-VP2)で陽性シグナルが示され、質量分析によってさらに確認することができたバンドのみを生成物の一部とみなした。生成物品質プロファイル分析により、調製物が高度に純粋なEV71 VLPを含有することが示された。
【表3】
生成物を電子顕微鏡によってさらに分析することにより、精製されたEV71 VLPがインタクトであることが確認され(
図6A)、質量分析によるトリプシンマッピングにより、生成物の純度が確認された。
【0128】
(実施例4)
プロセスの改変
インタクトなVP1を有するVLPのHICによる精製
EV71 VLPを精製するためのクロマトグラフィーの手法の最初のスクリーニングの間に、HIC樹脂により、断片化されたVP1を含有する粒子からインタクトなVP1を含有するVLPを分離することができることが認められた。ある特定の条件下では、LMW VP1断片を含有する粒子は樹脂に強力に結合するが、インタクトな粒子はカラムを通って流れる。したがって、このHICステップをPOROS(登録商標)Dクロマトグラフィーの後に最終精製ステップとして挿入した。このプロセスによって精製されたEV71粒子はサイズが均一であり(光散乱)、ほぼ100%の純度であり、質量分析によって検出可能なタンパク質混入物はなかった。この生成物(ロット番号479-31-020)の生成物品質が表3の中央の列に示されている。
【0129】
改変された抽出手順
植物抽出物は、およそ5.2のpHで酸性化することによって、または加熱処理し、遠心分離によって凝固物を排除することによって清澄化することができる。機械的抽出ステップと遠心分離ステップの間に加熱処理を挿入した。60℃で10分の加熱処理(pH8.0)を使用して、EV71 VLPの溶解性に検出可能なレベルまでの影響を及ぼすことなく、可溶性タンパク質の90%超を排除した。VP1は、これらの条件下で抽出し、清澄化した際にインタクトなままであった。
【0130】
加熱処理に基づく清澄化と組み合わせたpH8.0での機械的抽出を、EV71 VLP精製プロセスのために、酵素による抽出の代わりに実行した。VLPロットがこのプロセスを用いて生成された(ロット番号479-32-020)。生成物の特性が表4に示されている(3列目)。得られた結果により、機械的抽出をタンパク質の熱に基づく清澄化と併せて使用することにより、以前に定義済みの下流のステップに十分に適合する効率的な一次回収ステップが示されることが示された。得られたプロセスは、高収率のものであり、それにより、98%純粋なEV71 VLP生成物が生じる。このプロセスで調製したEV71 VLPの光散乱プロファイルでは、高い均一性が示された。この生成物のCryo TEM分析により、粒子がEV71 VLPのサイズおよび形状を有することが確認された(
図8)。
【表4】
【0131】
全ての引用が本明細書に参照により組み込まれる。
【0132】
本発明が1つまたは複数の実施形態に関して記載されている。しかし、特許請求の範囲において定義されている本発明の範囲から逸脱することなくいくつかの変形および改変を行うことができることが当業者には明らかである。
【配列表】