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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】気液分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/00 20060101AFI20220714BHJP
   B04C 5/103 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
B01D19/00 102
B04C5/103
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018151079
(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2020025913
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】森 輝海
(72)【発明者】
【氏名】太田 晶久
(72)【発明者】
【氏名】吉田 太志
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-076107(JP,A)
【文献】特開平05-005579(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0251140(US,A1)
【文献】特開2003-047804(JP,A)
【文献】特開2002-273183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D19/00-19/04
B04C1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液入口が設けられた上流側空間と液出口が設けられた下流側空間に区画された内部空間を有し、前記上流側空間において液体に旋回流を生じさせる機構を備える旋回流タンクに装着され、前記内部空間を前記上流側空間と前記下流側空間に区画する仕切板であって、
前記仕切板の外周側の部分である第1の部分と、前記仕切板の内周側の部分である第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分の間の部分である第3の部分とを有し、
前記第3の部分は、前記上流側空間に面する第1の面と、前記下流側空間に面する第2の面を備え、
前記第3の部分には、前記第1の面と前記第2の面に連通する複数の貫通孔が設けられ
前記仕切板は、前記上流側空間及び前記下流側空間からみて円形状を有し、前記仕切板の中心から前記仕切板の外周までの距離を1としたときに、前記複数の貫通孔は、貫通孔の中心が0.3以上0.5以下の範囲内に設けられ、
前記第1の部分は、前記上流側空間に面する第3の面と、前記下流側空間に面する第4の面を備え、
前記第1の面は、前記第3の面に対して前記上流側空間に突出した面である
仕切板を備えた気液分離装置。
【請求項2】
液入口が設けられた上流側空間と液出口が設けられた下流側空間に区画された内部空間を有し、前記上流側空間において液体に旋回流を生じさせる機構を備える旋回流タンクに装着され、前記内部空間を前記上流側空間と前記下流側空間に区画する仕切板であって、
前記仕切板の外周側の部分である第1の部分と、前記仕切板の内周側の部分である第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分の間の部分である第3の部分とを有し、
前記第3の部分は、前記上流側空間に面する第1の面と、前記下流側空間に面する第2の面を備え、
前記第3の部分には、前記第1の面と前記第2の面に連通する複数の貫通孔が設けられ
前記仕切板は、前記上流側空間及び前記下流側空間からみて円形状を有し、前記仕切板の中心から前記仕切板の外周までの距離を1としたときに、前記複数の貫通孔は、貫通孔の中心が0.3以上0.5以下の範囲内に設けられ、
前記第2の部分は、前記上流側空間に面する第5の面と、前記下流側空間に面する第6の面を備え、
前記第1の面は、前記第5の面に対して前記上流側空間に突出した面である
仕切板を備えた気液分離装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の気液分離装置であって、
前記貫通孔の前記第1の面及び前記第2の面における直径に対する前記第1の面と前記第2の面の距離は、0.7以上である
気液分離装置。
【請求項4】
液入口が設けられた上流側空間と液出口が設けられた下流側空間に区画された内部空間を有し、前記上流側空間において液体に旋回流を生じさせる機構を備える旋回流タンクと、
前記旋回流タンクに装着され、前記内部空間を前記上流側空間と前記下流側空間に区画する仕切板であって、前記仕切板の外周側の部分である第1の部分と、前記仕切板の内周側の部分である第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分の間の部分である第3の部分とを有し、
前記第3の部分は、前記上流側空間に面する第1の面と、前記下流側空間に面する第2の面を備え、前記第3の部分には、前記第1の面と前記第2の面に連通する複数の貫通孔が設けられ
前記仕切板は、前記上流側空間及び前記下流側空間からみて円形状を有し、前記仕切板の中心から前記仕切板の外周までの距離を1としたときに、前記複数の貫通孔は、貫通孔の中心が0.3以上0.5以下の範囲内に設けられ、
前記第1の部分は、前記上流側空間に面する第3の面と、前記下流側空間に面する第4の面を備え、
前記第1の面は、前記第3の面に対して前記上流側空間に突出した面である仕切板と
を具備する気液分離装置。
【請求項5】
液入口が設けられた上流側空間と液出口が設けられた下流側空間に区画された内部空間を有し、前記上流側空間において液体に旋回流を生じさせる機構を備える旋回流タンクと、
前記旋回流タンクに装着され、前記内部空間を前記上流側空間と前記下流側空間に区画する仕切板であって、前記仕切板の外周側の部分である第1の部分と、前記仕切板の内周側の部分である第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分の間の部分である第3の部分とを有し、
前記第3の部分は、前記上流側空間に面する第1の面と、前記下流側空間に面する第2の面を備え、前記第3の部分には、前記第1の面と前記第2の面に連通する複数の貫通孔が設けられ
前記仕切板は、前記上流側空間及び前記下流側空間からみて円形状を有し、前記仕切板の中心から前記仕切板の外周までの距離を1としたときに、前記複数の貫通孔は、貫通孔の中心が0.3以上0.5以下の範囲内に設けられ、
前記第2の部分は、前記上流側空間に面する第5の面と、前記下流側空間に面する第6の面を備え、
前記第1の面は、前記第5の面に対して前記上流側空間に突出した面である仕切板と
を具備する気液分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡を含有する液体から気泡を分離する気液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体から気泡を除去することが可能な気液分離装置は、化学プラントや食品加工等の多くの分野で利用されている。気液分離装置の構造として、液体に旋回流を生じさせ、遠心力を利用して液体と気泡を分離するものがある。
【0003】
例えば特許文献1には、洗浄槽と仕切りを備える洗浄装置が開示されている。洗浄槽内に供給された洗浄液は仕切りによって形成される流路を通過することによって旋回流を生じ、洗浄液に含まれる微細気泡によって被洗浄物が洗浄される。気泡は旋回流によって旋回流の中央部を上昇し、洗浄槽から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-36815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、簡易的な構造で液体と気泡を分離することが可能な気液分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本技術に係る気液分離装置は仕切板を備える。上記仕切板は、液入口が設けられた上流側空間と液出口が設けられた下流側空間に区画された内部空間を有し、上記上流側空間において液体に旋回流を生じさせる機構を備える旋回流タンクに装着され、上記内部空間を上記上流側空間と上記下流側空間に区画する仕切板であって、上記仕切板の外周側の部分である第1の部分と、上記仕切板の内周側の部分である第2の部分と、上記第1の部分と上記第2の部分の間の部分である第3の部分とを有する。
上記第3の部分は、上記上流側空間に面する第1の面と、上記下流側空間に面する第2の面を備える。
上記第3の部分には、上記第1の面と上記第2の面に連通する複数の貫通孔が設けられている。
【0007】
この構成によれば、旋回流タンクの上流側空間で旋回流が形成されると、液体に含まれる気泡は旋回流タンクの外周領域に沿って移動する。さらに旋回流が継続すると、液体に含まれる気泡は遠心力差で旋回流の内周領域に移動する。このため、仕切板の外周側の部分である第1の部分と、内周側の部分である第2の部分の間に位置する第3の部分に貫通孔を設けることにより、気泡は貫通孔を通過せず、液体のみが貫通孔を通過する。これにより、液体のみが上流側空間から下流側空間に移動し、液出口から排出される。即ち、液体から気泡を除去することが可能となる。
【0008】
上記仕切板は、上記上流側空間及び上記下流側空間からみて円形状を有し、上記仕切板の中心から上記仕切板の外周までの距離を1としたときに、上記複数の貫通孔は、貫通孔の中心が0.3以上0.5以下の範囲内に設けられていてもよい。
【0009】
上記第1の部分は、上記上流側空間に面する第3の面と、上記下流側空間に面する第4の面を備え、
上記第1の面は、上記第3の面に対して上記上流側空間に突出した面であってもよい。
【0010】
上記第2の部分は、上記上流側空間に面する第5の面と、上記下流側空間に面する第6の面を備え、
上記第1の面は、上記第5の面に対して上記上流側空間に突出した面であってもよい。
【0011】
上記貫通孔の上記第1の面及び上記第2の面における直径に対する上記第1の面と上記第2の面の距離は、0.7以上であってもよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本技術に係る気液分離装置は、旋回流タンクと、仕切板とを具備する。
上記旋回流タンクは、液入口が設けられた上流側空間と液出口が設けられた下流側空間に区画された内部空間を有し、上記上流側空間において液体に旋回流を生じさせる機構を備える。
上記仕切板は、上記旋回流タンクに装着され、上記内部空間を上記上流側空間と上記下流側空間に区画する仕切板であって、上記仕切板の外周側の部分である第1の部分と、上記仕切板の内周側の部分である第2の部分と、上記第1の部分と上記第2の部分の間の部分である第3の部分とを有し、
上記第3の部分は、上記上流側空間に面する第1の面と、上記下流側空間に面する第2の面を備え、上記第3の部分には、上記第1の面と上記第2の面に連通する複数の貫通孔が設けられている。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本技術によれば、簡易的な構造で液体と気泡を分離することが可能な気液分離装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る気液分離装置の斜視図である。
図2】同気液分離装置の断面図である。
図3】同気液分離装置が備える仕切板の斜視図である。
図4】同気液分離装置が備える仕切板の断面図である。
図5】同気液分離装置が備える仕切板の平面図である。
図6】同気液分離装置が備える仕切板の一部の断面図である。
図7】同気液分離装置の動作を示す模式図である。
図8】同気液分離装置の動作を示す模式図である。
図9】同気液分離装置が備える仕切板の貫通孔位置と気体流出率の関係を示すグラフである。
図10】同気液分離装置の各部サイズの例を示す表である。
図11】同気液分離装置と比較例の気体流出率の時間推移を示すグラフである。
図12】同気液分離装置と比較例の気体流出率の平均値を示すグラフである。
図13】同気液分離装置が備える仕切板の他の構成を示す断面図である。
図14】同気液分離装置が備える仕切板の他の構成を示す断面図である。
図15】同気液分離装置が備える仕切板の他の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る気液分離装置について説明する。以下の説明において鉛直方向をZ方向とし、水平方向に沿った互いに直交する二方向をX方向及びZ方向とする。
【0016】
[気液分離装置の構成]
図1は、本実施形態に係る気液分離装置100の斜視図であり、図2は気液分離装置100の断面図である。これらの図に示すように、気液分離装置100は、旋回流タンク101及び仕切板102を備える。
【0017】
旋回流タンク101は液体を収容可能なタンクである。旋回流タンク101には、液入口103及び液出口104が設けられている。旋回流タンク101は、X-Y平面での断面が円形状となる、Z方向を中心とする円筒形状とすることができる。
【0018】
旋回流タンク101の深さ(Z方向)は1000mm以下が好適である。旋回流タンク101の容量は特に限定されないが、1~100L程度が好適である。また、旋回流タンク101の置換時間、即ち旋回流タンク101に収容された液体が入れ替わるのに要する時間は30秒以上が好適である。
【0019】
液入口103は、旋回流タンク101の内部空間に連通する開口であり、旋回流タンク101の鉛直上方に設けられ、液体を旋回流タンク101内に流入させる。液入口103には液入口配管105が接続されている。
【0020】
液入口配管105は、旋回流タンク101の外周の接線方向に延伸しており、液入口103から旋回流タンク101に流入する液体が旋回流(図7参照)を形成するように構成されている。液入口配管105の配管サイズは、管内流速が1.0~1.5m/sとなるものが好適であり、例えば8A~25A(JIS G 3459)を利用することができる。
【0021】
液出口104は、旋回流タンク101に連通する開口であり、旋回流タンク101の鉛直下方に設けられ、液体を旋回流タンク101内から排出させる。液出口には液出口配管106が接続されている。液出口配管106の配管サイズは、液入口配管105と同等のものが好適である。
【0022】
仕切板102は、旋回流タンク101の内部に、外周が旋回流タンク101の内周に一致するように装着され、旋回流タンク101の内部空間を2つの空間に区画する。図2に示すように、旋回流タンク101の内部空間のうち、仕切板102より鉛直上方側であって、液入口103側の空間を上流側空間101aとし、仕切板102より鉛直下方側であって、液出口104側の空間を下流側空間101bとする。
【0023】
図3は、仕切板102の斜視図であり、図4は仕切板102の断面図である。図5は仕切板102の平面図である。これらの図に示すように仕切板102は、凹凸が設けられた円板形状を有し、第1の部分111、第2の部分112及び第3の部分113を備える。
【0024】
第1の部分111は、仕切板102の外周側の環状の部分であり、第2の部分112は、仕切板102の内周側の円板状の部分である。第3の部分113は、第1の部分111と第2の部分112の間の環状の部分である。
【0025】
図5に示すように第1の部分111の外周の直径を径Dとする。径Dは、旋回流タンク101の内径に一致する。第3の部分113の外周の直径を径D1とすると、径D1は0.65D以上0.7D以下が好適である。また、第2の部分112の外周の直径を径D2とすると、径D2は、0.2D以上0.4D以下が好適である。
【0026】
図4に示すように、第3の部分113は、上流側空間101aに面する第1の面113aと、下流側空間101bに面する第2の面113bを有する。
【0027】
第1の部分111は、上流側空間101aに面する第3の面111aと、下流側空間101bに面する第4の面111bを有する。
【0028】
第2の部分112は、上流側空間101aに面する第5の面112aと、下流側空間101bに面する第6の面112bを有する。
【0029】
以下、図4に示すように第2の面113bに沿った面を基準面Lとする。図6は、各面の高さを示す断面図である。
【0030】
同図に示すように第1の面113aは、第3の面111a及び第5の面112aに対して上流側空間101a側に突出した面であり、即ち、第3の面111a及び第5の面112aは第1の面113aより基準面Lからの高さが低い面である。第3の面111a及び第5の面112aは同一平面上の面であってもよく、基準面Lからの高さが異なる面であってもよい。
【0031】
図6に示すように、第3の面111aに対する第1の面113aの高さを高さT1とすると、高さT1は5mm以上が好適である。また、第5の面112aに対する第1の面113aの高さを高さT2とすると、高さT2は7mm以上が好適である。
【0032】
第2の面113b、第4の面111b及び第6の面112bは同一平面上の面であってもよく、基準面Lからの高さが異なる面であってもよい。
【0033】
第3の部分113には、第1の面113aと第2の面113bに連通する複数の貫通孔114が設けられている。
【0034】
図5に示すように、貫通孔114の直径を径Hとする。また、図6に示すように貫通孔114の深さ、即ち第1の面113aと第2の面113bの距離を深さSとする。
【0035】
貫通孔114の径H及び貫通孔114の数は、後述するように貫通孔114を通過する液体の流速(以下、貫通流速)が0.15m/s以下となるように設定する。ただし、貫通孔114の径Hは10mm以上が好適である。貫通孔114の数は2つ以上であればよい。貫通孔114のアスペクト比(深さS/径H)は0.7以上が好適である。
【0036】
貫通孔114の形成位置は、P.C.D(Pitch Circle Diameter:貫通孔114の中心を通過する円の直径)で表される。図5において貫通孔114のP.C.Dを径D3として示す。貫通孔114のP.C.Dについては後述する。
【0037】
[気液分離装置の動作]
気液分離装置100の動作について説明する。図7及び図8は、気液分離装置100の動作を示す模式図である。
【0038】
液入口103から旋回流タンク101の内部空間に気泡を含有す液体を供給すると、図7において矢印で示すように、上流側空間101a内で旋回流が生じる。液体は、旋回流を形成しながら貫通孔114を通過して下流側空間101bに流入し、液出口104から排出される。図7及び図8において、旋回流を形成する液体の液面Eを示す。
【0039】
気泡は、上流側空間101aの外周を流れる旋回流に沿って上流側空間101aの外周領域(図中A)に移動する。仕切板102の外周側の部分である第1の部分111には貫通孔が設けられておらず、また、第1の面113aが第3の面111aに対して突出しているため、気泡の貫通孔114への移動が妨げられ、気泡は貫通孔114を通過しない。
【0040】
液入口103からの液体の供給が継続し、旋回流の流速が大きくなると、図8に示すように、気泡は遠心力差によって上流側空間101aの内周領域(図中B)に移動する。仕切板102の内周側の部分である第2の部分112には貫通孔が設けられておらず、また、第1の面113aが第5の面112aに対して突出しているため、気泡の貫通孔114への移動が妨げられ、気泡は貫通孔114を通過しない。
【0041】
このように、液入口103から旋回流タンク101の内部空間に気泡を含有す液体が供給されると、液体は、上流側空間101aから貫通孔114を介して下流側空間101bに流入し、液出口104から排出される。第3の部分113に複数の貫通孔114が設けられていることにより、上流側空間101a内の旋回流が下流側空間101bに伝搬することが防止されている。
【0042】
気泡は第1の部分111又は第2の部分112によって上流側空間101aに留まり、液出口104からほとんど排出されない。これにより、気液分離装置100によって液体から気泡が除去され、気液分離がなされる。
【0043】
なお、上述のように貫通孔114のアスペクト比(深さS/径H)は0.7以上が好適である。これは、貫通孔114のアスペクト比が0.7未満であり、即ち径Hに対して深さSが小さいと、上流側空間101a内の旋回渦が下流側空間101bに伝搬し、気泡が貫通孔114を通過しやすくなるためである。
【0044】
なお、気液分離装置100によって気液分離が可能な液体は典型的には水であるが、気液分離装置100は他にも水と同等の性質を有する液体の気液分離に用いることが可能である。
【0045】
[貫通孔の位置について]
第3の部分113における貫通孔114の位置について説明する。図9は、貫通孔114の位置と気泡の流出率の関係を示すシミュレーション結果のグラフである。横軸の貫通孔位置は、仕切板102の中心から外周までの距離を1とした場合の、仕切板102の半径方向における貫通孔114の中心の位置であり、仕切板102の直径(図5中、径D)に対する貫通孔114のP.C.D(図5中、径D3)の比率に一致する。
【0046】
縦軸は、気泡の流出率であり、液入口103から流入した気泡の全量が液出口104から排出された場合の流出率を1とする。
【0047】
同図に示すように、貫通孔114の中心が0.2以上0.5以下の範囲内に位置する場合、気泡の流出率は小さい。一方、貫通孔114の中心の位置が0.5を超えると、気泡の流出率は大きくなる。これは、貫通孔114が仕切板102の外周側に位置すると、上流側空間101a(図7参照)の外周領域Aに集められた気泡が貫通孔114を通過しやすくなるためである。
【0048】
また、貫通孔114の中心の位置が0.2を未満であると、気泡の流出率は大きくなる。これは、貫通孔114が仕切板102の外周側に位置すると、上流側空間101a(図8参照)の内周領域Bに集められた気泡が貫通孔114を通過しやすくなるためである。
【0049】
このため、仕切板102の中心から外周までの距離を1とした場合に仕切板102の半径方向における貫通孔114の中心の位置は0.3以上0.5以下の範囲内が好適である。
【0050】
[気液分離装置のサイズ例]
図10は、気液分離装置100の各部サイズの一例を示す表である。同図に示すように、旋回流タンク101の容量が5L、旋回流タンク101に供給する液体の流量(供給流量)が10L/minの場合、旋回流タンク101内の液体が置換されるタンク置換時間は30秒となる。
【0051】
また、液入口配管105及び液出口配管106のサイズを10Aとすると、管内流速は1.08m/sとなり旋回流の角速度は16.7rad/sとなる。
【0052】
仕切板102の貫通孔114の径Hを12mm、貫通孔114の数を10、貫通孔114の深さSを10mmとすると、貫通孔114を通過する液体の流速(貫通流速)は0.15m/sとなる。
【0053】
[実施例と比較例の比較結果について]
本発明の実施例と比較例の比較結果について説明する。実施例は気液分離装置100であり、比較例は気液分離装置100から仕切板102を除いた構成である。
【0054】
図11は、気体流出率の時間推移を示すグラフである。気体流出率は、0.02体積%の割合で気泡を混入させた液体を液入口から継続して旋回流タンクに供給した場合に、液出口から排出される液体に含まれる気泡の割合を示す。
【0055】
図12は、図11に示す気体流出率の、旋回流タンク内の液体が置換されるまでの平均値を示すグラフである。同図に示すように、実施例では比較例に対して気体流出率が小さく、液体から気泡を除去することが可能である。
【0056】
[変形例]
仕切板102の構成は上述のものに限られない。図13乃至図15は、仕切板102の他の構成を示す断面図である。
【0057】
図13に示すように、第5の面112aは、第1の面113aと同一平面上に位置し、即ち、第2の部分112と第3の部分113は、基準面Lからの高さが同一であってもよい。
【0058】
また、図14に示すように、第3の面111aは、第1の面113aと同一平面上に位置し、即ち、第1の部分111と第3の部分113は、基準面Lからの高さが同一であってもよい。
【0059】
さらに、図15に示すように、第5の面112a及び第3の面111aは第1の面113aと同一平面上に位置し、即ち、第1の部分111、第2の部分112及び第3の部分113は、基準面Lからの高さが同一であってもよい。
【0060】
図13乃至図15のいずれの構成であっても、貫通孔114を通過する気泡を抑制することは可能である。しかしながら、第1の面113aが第3の面111a及び第5の面112aより突出した構成(図4参照)では内周側と外周側からの貫通孔114への気泡の流入を効果的に防止できるため、最も高い効果が得られる。
【0061】
また、気液分離装置100では、上述のように液入口配管105が旋回流タンク101の外周の接線方向に延伸するように設けられることによって上流側空間101a内の液体に旋回流を生じさせるものにしたが、この構成に限られない。例えば上流側空間101aの内部に撹拌翼を設け、撹拌翼を回転させることによって旋回流を生じさせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
101…旋回流タンク
101a…上流側空間
101b…下流側空間
102…仕切板
103…液入口
104…液出口
105…液入口配管
106…液出口配管
111…第1の部分
111a…第3の面
111b…第4の面
112…第2の部分
112a…第5の面
112b…第6の面
112a…面
113…第3の部分
113a…第1の面
113b…第2の面
114…貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15