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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】誘導加熱調理装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20220714BHJP
【FI】
H05B6/12 333
H05B6/12 313
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018162932
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020035697
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000109325
【氏名又は名称】ツインバード工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】布施 一仁
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-323270(JP,A)
【文献】特開2009-087743(JP,A)
【文献】特開2012-230882(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0150597(US,A1)
【文献】実開昭56-021354(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱コイルを有する調理装置本体と、この調理装置本体から離れた位置でこの調理装置本体を操作可能な遠隔操作体とを有し、前記調理装置本体が赤外信号受信部を有し、前記遠隔操作体が赤外信号送信部を有する誘導加熱調理装置であって、
前記調理装置本体を所定の出力に設定した際に、前記誘導加熱コイルのコイル電流の周波数が赤外信号の周波数となった場合、及び赤外信号の周波数の逓倍となった場合、所定の出力よりも高い出力で且つ間欠運転させる制御手段を有することを特徴とする誘導加熱調理装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記誘導加熱コイルのコイル電流の周波数が赤外信号の周波数を含む所定の範囲になった場合、及び赤外信号の周波数の逓倍を含む所定の範囲になった場合、所定の出力よりも高い出力で且つ間欠運転させるものであることを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理装置。
【請求項3】
誘導加熱コイルを有する調理装置本体と、この調理装置本体から離れた位置でこの調理装置本体を操作可能な遠隔操作体とを有し、前記調理装置本体が赤外信号受信部を有し、前記遠隔操作体が赤外信号送信部を有する誘導加熱調理装置の制御方法であって、
前記調理装置本体を所定の出力に設定した際に、前記誘導加熱コイルのコイル電流の周波数が赤外信号の周波数となった場合、及び赤外信号の周波数の逓倍となった場合、所定の出力よりも高い出力で且つ間欠運転させることを特徴とする誘導加熱調理装置の制御方法。
【請求項4】
前記誘導加熱コイルのコイル電流の周波数が赤外信号の周波数を含む所定の範囲になった場合、及び赤外信号の周波数の逓倍を含む所定の範囲になった場合、所定の出力よりも高い出力で且つ間欠運転させることを特徴とする請求項4記載の誘導加熱調理装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食卓上に置いて使用される誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理装置としては、調理器本体の上面に操作パネルが設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。そして、このような加熱調理装置は、その天板上に鍋を置くことで、この鍋を加熱して鍋内の食品を加熱調理するようになっている。また、このような加熱調理装置は、使用する際、テーブルのほぼ中央に置かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-213469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような加熱調理装置では、前述した通り、前記操作パネルが前記調理器本体に設けられるので、その操作は、前記操作パネルに最も近い席にいる人が行うことになる。しかしながら、この人が一時的に席を外した場合、誰も前記加熱調理装置を操作しない状態となるので、調理が上手く行えなくなり、また危険であるという問題があった。更に、前記調理器本体を食卓のほぼ中央に置く場合、前記操作パネルを操作するために手を伸ばす必要がある。このため、食卓上に他の食器等が置かれている場合、操作しにくいという問題があった。
【0005】
本出願人は、以上の問題を解決するため、遠隔操作体にて調理器本体を操作する加熱調理装置について特許出願した(特願2018-60099号)。この加熱調理装置は、調理装置本体と、この調理装置本体から離れた位置で操作可能な遠隔操作体とを有し、好ましくは、前記調理装置本体と遠隔操作体が無線接続されるものである。このように、前記調理装置本体を遠隔操作体にて操作できるようにすることで、食卓の席にいる誰もが簡単に加熱調理装置を操作することができる。
【0006】
しかしながら、このような調理装置は、以下のような新たな問題が生じた。即ち、加熱調理装置が誘導加熱調理装置であり、遠隔操作体の赤外信号送信部の赤外LEDから送信された赤外線信号を調理装置本体の赤外信号受信部の赤外センサで受信する場合、誘導加熱コイルに流れる電流の周波数が赤外信号の周波数と一致又は近似すると、誘導加熱コイルからの電気的ノイズが赤外センサに影響を及ぼし、遠隔操作が困難になった。具体的には、遠隔操作体によって操作可能な距離が短くなった。
【0007】
本発明は以上の問題点を解決し、遠隔操作体による操作を安定させることができる誘導加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の誘導加熱調理装置は、誘導加熱コイルを有する調理装置本体と、この調理装置本体から離れた位置でこの調理装置本体を操作可能な遠隔操作体とを有し、前記調理装置本体が赤外信号受信部を有し、前記遠隔操作体が赤外信号送信部を有する誘導加熱調理装置であって、前記調理装置本体を所定の出力に設定した際に、前記誘導加熱コイルのコイル電流の周波数が赤外信号の周波数となった場合、及び赤外信号の周波数の逓倍となった場合、所定の出力よりも高い出力で且つ間欠運転させる制御手段を有するものである。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載の誘導加熱調理装置は、請求項1において、前記制御手段が、前記誘導加熱コイルのコイル電流の周波数が赤外信号の周波数を含む所定の範囲になった場合、及び赤外信号の周波数の逓倍を含む所定の範囲になった場合、所定の出力よりも高い出力で且つ間欠運転させるものである。
【0010】
本発明の請求項4に記載の誘導加熱調理装置の制御方法は、誘導加熱コイルを有する調理装置本体と、この調理装置本体から離れた位置でこの調理装置本体を操作可能な遠隔操作体とを有し、前記調理装置本体が赤外信号受信部を有し、前記遠隔操作体が赤外信号送信部を有する誘導加熱調理装置の制御方法であって、前記調理装置本体を所定の出力に設定した際に、前記誘導加熱コイルのコイル電流の周波数が赤外信号の周波数となった場合、及び赤外信号の周波数の逓倍となった場合、所定の出力よりも高い出力で且つ間欠運転させるものである。
【0011】
また、本発明の請求項5に記載の誘導加熱調理装置の制御方法は、請求項4において、前記誘導加熱コイルのコイル電流の周波数が赤外信号の周波数を含む所定の範囲になった場合、及び赤外信号の周波数の逓倍を含む所定の範囲になった場合、所定の出力よりも高い出力で且つ間欠運転させるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載の加熱調理装置は、以上のように構成することにより、コイル電流の周波数と赤外信号の周波数を一致させないようにして、誘導加熱コイルからのノイズが前記赤外信号受信部の出力信号に悪影響を与え難いようにすることができる。また、前記制御手段が、前記誘導加熱コイルのコイル電流の周波数が赤外信号の周波数の逓倍となった場合にも、所定の出力よりも高い出力で且つ間欠運転させることで、誘導加熱コイルからのノイズが前記赤外信号受信部の出力信号に悪影響をより与え難いようにすることができる。
【0013】
なお、前記制御手段が、前記誘導加熱コイルのコイル電流の周波数が赤外信号の周波数を含む所定の範囲になった場合、及び赤外信号の周波数の逓倍を含む所定の範囲になった場合、所定の出力よりも高い出力で且つ間欠運転させることで、誘導加熱コイルからのノイズが前記赤外信号受信部の出力信号に悪影響をより与え難いようにすることができる。
【0014】
また、本発明の請求項に記載の加熱調理装置は、以上のように構成することにより、コイル電流の周波数と赤外信号の周波数を一致させないようにして、誘導加熱コイルからのノイズが前記赤外信号受信部の出力信号に悪影響を与え難いようにすることができる。また、前記誘導加熱コイルのコイル電流の周波数が赤外信号の周波数の逓倍となった場合にも、所定の出力よりも高い出力で且つ間欠運転させることで、誘導加熱コイルからのノイズが前記赤外信号受信部の出力信号に悪影響をより与え難いようにすることができる。
【0015】
なお、前記誘導加熱コイルのコイル電流の周波数が赤外信号の周波数を含む所定の範囲になった場合、及び赤外信号の周波数の逓倍を含む所定の範囲になった場合、所定の出力よりも高い出力で且つ間欠運転させることで、誘導加熱コイルからのノイズが前記赤外信号受信部の出力信号に悪影響をより与え難いようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一の実施形態を示す加熱調理装置の斜視図である。
図2】同、調理装置本体の側面図である。
図3】同、調理装置本体の平面図である。
図4】同、遠隔操作体の拡大正面図である。
図5】同、遠隔操作体の拡大平面図である。
図6】同、電気回路の概略図である。
図7】同、使用状態の説明図である。
図8】同、制御のフローチャートである。
図9】同、コイル電流と赤外信号の周波数が一致しない場合の説明図である。
図10】同、コイル電流と赤外信号の周波数が一致した場合の制御の説明図である。
図11】同、コイル電流と赤外信号の周波数が一致した場合の他の制御の説明図である。
図12】同、コイル電流が赤外信号の周波数の逓倍となった場合の制御の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第一の実施形態について、図1乃至図12に基づいて説明する。1は本発明の加熱調理装置である。この加熱調理装置1は、調理装置本体2と遠隔操作体3とを有して構成される。なお、前記加熱調理装置1は誘導加熱調理器である。
【0018】
前記調理装置本体2は、短円筒状の上外殻体4と、皿状の下外殻体5と、前記上外殻体4上に設けられる円盤状の天板6とを有する。なお、前記天板6の下方には、加熱源としての誘導加熱コイル7及び表示手段としてのLEDアレイ8が収容される。このLEDアレイ8から放射された光は、前記天板6を透過して視認される。そして、前記天板6上には、図示しない誘導加熱調理器対応の鍋を載置して加熱することが可能である。また、前記上外殻体4の側面と下外殻体5の側面には、それぞれ切欠部9,10が設けられ、これらの切欠部9,10で囲まれる部位に電源接続部11が設けられる。この電源接続部11には、図示しない電源コードのマグネットプラグが着脱可能に接続される。そして、前記下外殻体5の側部には、主スイッチ操作部12と出力調節スイッチ操作部13とが設けられる。更に、前記下外殻体5の側部には、赤外信号受信部14の受光窓15が複数(本実施形態では3箇所)設けられる。これらの受光窓15は、側面視で表れる。また、これらの受光窓15は、前記調理装置本体2の垂直中心線回りに、等角度間隔(本実施形態では120度間隔)で設けられる。
【0019】
前記遠隔操作体3は、全体として短円筒状である。この遠隔操作体3は、短円筒状の本体部16と、この本体部16に被せられる操作部17とを有して構成される。なお、この操作部17は、前記本体部16に対し水平方向に回動可能で且つ垂直方向に移動可能に設けられる。また、前記本体部16には、前記操作部17の水平方向の回動量及び下方への押圧を検知する手段(図示せず)が設けられる。更に、前記操作部17の下端は、前記本体部16の下端よりも高い。従って、前記本体部16の下部は、外部に露出する。そして、前記本体部16の露出する下部側面には、赤外信号送信部18の放光窓19が複数(本実施形態では3箇所)設けられる。これらの放光窓19は、側面視で表れる。また、これらの放光窓19は、前記遠隔操作体3の垂直中心線回りに、等角度間隔(本実施形態では120度間隔)で設けられる。なお、前記各放光窓19の内側には、それぞれ図示しない赤外LEDが設けられる。即ち、本実施形態の場合、前記赤外LEDは、前記各放光窓19と同じく三箇所に設けられる。なお、一箇所当たりの前記赤外LEDの数は、一つであっても複数であっても良い。
【0020】
前記調理装置本体2の電気回路の概要について説明する。この電気回路は、図6に示すように、交流電源20が整流回路20Aに接続され、この整流回路20Aの両極間に加熱源駆動回路としての誘導加熱駆動回路21を介して前記誘導加熱コイル7が接続された構造である。そして、この誘導加熱コイル7は、前記誘導加熱駆動回路21によって駆動制御される。そして、前記誘導加熱コイル7と並列に、電源回路22と制御手段としてのマイクロコンピュータ23が接続される。なお、前記電源回路22とマイクロコンピュータ23との間には、スイッチSW1とダイオードDの直列回路が設けられる。前記スイッチSW1は自己復帰型であり、前記主スイッチ操作部12を押すことにより操作される。また、前記スイッチSW1とダイオードDの直列回路は、前記マイクロコンピュータ23の電源入力部PWに接続される。更に、前記スイッチSW1とダイオードDの間から分岐したラインが、前記マイクロコンピュータ23の入力部Xに接続される。更に、前記スイッチSW1とダイオードDの直列回路と並列に、スイッチング素子としての電界効果トランジスタ(以下FET)24,25の直列回路が接続される。また、前記マイクロコンピュータ23は、その出力部AがコンデンサCを介して平滑手段としての積分回路26に接続され、更にこの積分回路26が前記FET24のゲートに接続される。一方、前記マイクロコンピュータ23は、その出力部Bが前記FET25のゲートに接続される。また、前記マイクロコンピュータ23は前記誘導加熱駆動回路21に接続され、この誘導加熱駆動回路21を制御可能に構成される。また、前記マイクロコンピュータ23には、赤外センサ27,28,29が接続される。なお、前記赤外センサ27は、前記受光窓15Aの内側に、前記赤外センサ28は、前記受光窓15Bの内側に、前記赤外センサ29は、前記受光窓15Cの内側に配置される。また、前記マイクロコンピュータ23には、スイッチSW2が接続される。なお、前記スイッチSW2も自己復帰型であり、前記出力調節スイッチ操作部13を押すことにより操作される。更に、前記マイクロコンピュータ23には、前記LEDアレイ8が接続される。
【0021】
このような回路構成とすることで、前記交流電源20から誘導加熱コイル7へ大電力が供給されるものの、前記スイッチSW1は比較的小容量のスイッチとすることができる。これは、前記スイッチSW1を流れる電流が、前記マイクロコンピュータ23を起動させるのに十分な値であれば良いためである。
【0022】
なお、前記誘導加熱コイル7の出力は、前記出力調節スイッチ操作部13又は前記遠隔操作体3の操作部17の操作により、段階的に設定可能である。本実施形態では五段階(最小値OP1~最大値OP5)で設定可能であるが、段階数は任意である。
【0023】
次に、本実施形態の作用について説明する。まず使用者は、図示しない誘導加熱調理器対応の鍋を前記天板6に載置し、図示しない電源コードのマグネットプラグを前記電源接続部11に接続すると共に、電源プラグを前記交流電源20に接続する。この状態では、前記誘導加熱コイル7へは電流が流れず、また、前記マイクロコンピュータ23も起動しない。そして、前記主スイッチ操作部12を押すと、前記スイッチSW1が「オン」になる。このように、前記スイッチSW1が「オン」になると、前記電源回路22からスイッチSW1及びダイオードDを経て前記マイクロコンピュータ23の電源入力部PWへ電力が供給され、前記マイクロコンピュータ23が起動する。同時に、前記スイッチSW1を流れた電流が前記入力部Xに供給されたことを前記マイクロコンピュータ23が検知する。そして、このマイクロコンピュータ23は、前記入力部Xに電流が供給されたことを検知すると、前記出力部Aから前記積分回路26へ間欠電流を供給する。なお、この出力部Aから供給される電流は間欠電流なので、前記コンデンサCを通過して前記積分回路26へ供給される。この間欠電流は、前記積分回路26で平滑化されて直流電流となり、前記FET24のゲートへ供給される。同時に、前記マイクロコンピュータ23の出力部Bから前記FET25のゲートへ直流電流が供給される。そして、このように前記各FET24,25のゲートにそれぞれ電流が供給されることで、これらFET24,25が同時に「オン」になり、前記電源回路22から前記各FET24,25の直列回路を経て前記マイクロコンピュータ23の電源入力部PWに電力が供給される。なお、前記スイッチSW1は、前述した通り自己復帰型スイッチなので、使用者が前記主スイッチ操作部12から手を離すと「オフ」になる。しかしながら、前記FET24,25の直列回路に電流が流れることで、前記マイクロコンピュータ23に電流が供給され続ける。そして、このマイクロコンピュータ23に電流が供給され続けることで、前記各FET24,25のゲートへ電流が供給され続ける。従って、前記マイクロコンピュータ23が作動し続ける。なお、前記FET24,25の直列回路を流れる電流は、前記ダイオードDによって妨げられるので、前記入力部Xには流れない。
【0024】
このように、前記マイクロコンピュータ23が作動した後、使用者は前記出力調節スイッチ操作部13を押圧して前記スイッチSW2の「オン」する。この操作によって、前記マイクロコンピュータ23が前記誘導加熱駆動回路21を制御し、この誘導加熱駆動回路21が前記誘導加熱コイル7を駆動制御する。即ち、前記誘導加熱駆動回路21によって前記誘導加熱コイル7へ交流電流が供給される。なお、前記スイッチSW2を「オン」にした時点での前記誘導加熱コイル7の設定出力は、最小値OP1である。そして、前記出力調節スイッチ操作部13の押圧による前記スイッチSW2の「オン」を前記マイクロコンピュータ23が検知する毎に、このマイクロコンピュータ23は、前記誘導加熱駆動回路21によって、前記誘導加熱コイル7の出力を段階的(最小値OP1~最大値OP5)に制御する。また、前記マイクロコンピュータ23は、前記スイッチSW2の「オン」を検知する毎に、前記LEDアレイ8における発光させるLED数を制御する。この際、前記LEDアレイ8における発光させるLED数は、前記誘導加熱コイル7の出力と対応する。従って、現在の前記誘導加熱コイル7の出力を、前記LEDアレイ8の発光しているLED数で知ることができる。そして、前記LEDアレイ8のLEDから放射される光は、前記天板6を透過して視認される。
【0025】
なお、前記調理装置本体2の制御は、前記遠隔操作体3を操作することによっても行うことができる。(但し、前記マイクロコンピュータ23の起動から加熱開始までの操作だけは、前記調理装置本体2の主スイッチ操作部12及び出力調節スイッチ操作部13によって行われる。)前記遠隔操作体3は、食卓T上に置いた状態で操作される。即ち、前記遠隔操作体3を食卓T上に置いた状態で、前記操作部17を下方に押し下げると、前記誘導加熱コイル7への通電が遮断する。なお、前記操作部17をもう一度下方に押し下げても、前記誘導加熱コイル7への通電は再開しない。また、前記操作部17を右回りに回動させると、前記誘導加熱コイル7の出力が上昇し、前記操作部17を左回りに回動させると、前記誘導加熱コイル7の出力が低下する。
【0026】
そして、このような操作による制御信号は、前記赤外信号送信部18の図示しない三箇所の前記赤外LEDから赤外信号Sとして送信され、前記放光窓19,19,19から放出される。即ち、前記赤外信号Sは、前記遠隔操作体3から三方向に送信される。なお、前記赤外LEDは、比較的広い照射角度(具体的には約120度)を有する。従って、前記赤外信号Sは、前記遠隔操作体3の周囲の広い範囲に送信される。
【0027】
一方、前記調理装置本体2の赤外センサ27,28,29も、比較的広い検知角度(具体的には約140度)を有する。従って、前記赤外センサ27,28,29によって、前記調理装置本体2の周囲のあらゆる方向から、前記赤外信号Sを受信することができる。例えば、図7に示すように、前記食卓T上の位置P1に置かれた前記遠隔操作体3の放光窓19Aから放出された前記赤外信号Sは、前記調理装置本体2の受光窓15Aを通って前記赤外センサ27が受信する。一方、前記食卓T上の位置P2に置かれた前記遠隔操作体3の放光窓19Bから放出された前記赤外信号Sは、前記調理装置本体2の受光窓15Cを通って前記赤外センサ29が受信する。同時に、前記放光窓19Cから放出された前記赤外信号Sは、前記調理装置本体2の受光窓15Bを通って前記赤外センサ28が受信する。即ち、この例の場合、二系統の赤外信号Sの授受が行われる。なお、前記調理装置本体2と遠隔操作体3の位置関係によっては、一箇所の前記赤外LEDが送信した赤外信号Sを二つの前記赤外センサによって受信したり、二箇所の前記赤外LEDが送信した赤外信号Sを一つの前記赤外センサによって受信したりする場合もあり得る。即ち、何れかの前記赤外LEDが送信した赤外信号Sを、何れかの前記赤外センサ27,28,29によって受信することで、前記遠隔操作体3による調理装置本体2の制御が可能となる。そして、前記遠隔操作体3から三方向に送信される前記赤外信号Sは、全て同じ命令信号であるから、複数の前記赤外センサ27,28,29で受信したとしても命令に矛盾が生じない。なお、図7は、一つの調理装置本体2に対し二つの遠隔操作体3を設けたものではない。一つの調理装置本体2に対し、一つの遠隔操作体3を、前記食卓T上の位置P1に置いた場合と位置P2に置いた場合とを、一つの図面で同時に表したものである。
【0028】
なお、前記遠隔操作体3を食卓T上に置いた状態で、前記操作部17を下方に押し下げるか、又は前記主スイッチ操作部12を押して前記スイッチSW1を「オン」にすると、前記マイクロコンピュータ23は、前記誘導加熱コイル7の通電を遮断させた後、自身の動作を停止させる。前記遠隔操作体3の操作によって前記誘導加熱コイル7の通電を遮断する場合、前記赤外センサ27,28,29が停止命令の赤外信号Sを受信すると、前記マイクロンピュータ23は、前記誘導加熱駆動回路21によって前記誘導加熱コイル7の通電を停止させた後、前記出力部A,Bからの電流供給を停止する。一方、前記主スイッチ操作部12の操作によって前記誘導加熱コイル7の通電を遮断する場合、前記電源回路22から前記スイッチSW1を経て前記入力部Xに電流が供給されたことを検知すると、前記マイクロコンピュータ23は、前記誘導加熱駆動回路21によって前記誘導加熱コイル7の通電を停止させた後、前記出力部A,Bからの電流供給を停止する。これによって、前記FET24,25のゲートへの電流供給が遮断されるので、これらのFET24,25が何れも「オフ」となり、前記電源回路22から前記FET24,25の直列回路を経て前記マイクロコンピュータ23の電源入力部PWへ供給される電力も遮断される。これによって、前記マイクロコンピュータ23が停止する。このように、このマイクロコンピュータ23が停止すると、前記誘導加熱駆動回路21を制御して前記誘導加熱コイル7へ電流を供給することができなくなる。従って、不使用時における前記マイクロコンピュータ23の誤動作によって、前記誘導加熱コイル7に意図せず電流が供給される虞を減ずることができる。これによって、前記加熱調理装置1の安全性を高めることができる。なお、前記マイクロコンピュータ23は、前記誘導加熱コイル7による加熱中に所定時間(例えば30分間)操作がないと判断すると、前記誘導加熱駆動回路21によって前記誘導加熱コイル7の通電を停止させた後、前記出力部A,Bからの電流供給を停止する。これによって、前記マイクロコンピュータ23が停止する。
【0029】
なお、前記FET24,25が直列に接続されることで、何れか一方のFET24又は25が短絡モードで故障したとしても、他方のFET25又は24のゲートへの給電を停止することで、前記マイクロコンピュータ23を停止させることができる。従って、前記マイクロコンピュータ23を停止させることができなくなるという虞を減ずることができる。また、前記マイクロコンピュータ23が故障すると、このマイクロコンピュータ23の出力部Aから間欠電流を出力できなくなる。仮に、出力部Aから一切の電流が供給できなくなってしまった場合、前記FET24のゲートに電流が供給されない。従って、前記FET24は「オフ」のままであり、前記スイッチSW1が「オフ」になると前記マイクロコンピュータ23も停止する。逆に、前記出力部Aから供給される電流が直流電流となってしまった場合、この直流電流は前記コンデンサCを通過できないので、やはり前記FET24のゲートに電流が供給されない。従って、前記FET24は「オフ」のままであり、前記スイッチSW1が「オフ」になると前記マイクロコンピュータ23も停止する。このため、前記マイクロコンピュータ23が故障した状態では、前記誘導加熱コイル7に電流を供給することができないようにすることができる。
【0030】
加熱調理時における前記誘導加熱コイル7の通電制御について説明する。前記天板6に誘導加熱調理器対応の鍋が載置された状態で、且つ前記マイクロコンピュータ23の作動中に前記出力調節スイッチ操作部13が押されると、前記誘導加熱駆動回路21により前記誘導加熱コイル7に交流電流(コイル電流)が流れる。なお、このコイル電流の周波数は、前記誘導加熱コイル7の出力と鍋の種類によって変動する。即ち、前記誘導加熱コイル7の出力が同じであっても、鍋の種類によってコイル電流の周波数は異なる。また、同じ鍋を用いても、前記誘導加熱コイル7の出力が異なれば、コイル電流の周波数は異なる。鍋が同じ場合、前記誘導加熱コイル7の出力が高ければコイル電流の周波数が低く、前記誘導加熱コイル7の出力が低ければコイル電流の周波数が高い。なお、コイル電流の周波数は、20~100kHzと規定されている。即ち、換言すると、前記誘導加熱コイル7から、20~100kHzのノイズが発生すると言える。一方、前記遠隔操作手段3から送信される赤外信号の周波数は、38kHzと規定されている。
【0031】
図8に示すように、前記出力調節スイッチ操作部13又は前記遠隔操作体3の操作部17を操作することにより、設定出力OPxが設定される。同時に、実出力OPyも自動的に設定される。なお、初期段階において、OPx=OPyである。そして、前記誘導加熱駆動回路21が、前記誘導加熱コイル7に、出力OPxに対応する交流電流を流すと、コイル電流の周波数が変動してFとなる。例えば、図9に示すように、設定出力OPxが最大出力OP5の場合、コイル電流の周波数FはF5kHzとなる。この周波数F5kHzが、赤外信号の周波数38kHz及びこれを中心とした±4kHzの回避周波数範囲外であれば、前記マイクロコンピュータ23によって制御される前記誘導加熱駆動回路21は、コイル電流の周波数をF5kHzのままとする。この場合、実出力OPyは変動せず、OPx=OPyのままなので、前記マイクロコンピュータ23によって制御される前記誘導加熱駆動回路21は、設定通りの出力OPxでの加熱制御を行う。
【0032】
一方、図10及び図11は、設定出力OPxがOP3でコイル電流の周波数FがF3kHzとなり、且つ、この周波数F3kHzが、前述した回避周波数範囲内となった場合である。この場合、前記調理装置本体2と遠隔操作手段3との距離が長ければ、この遠隔操作手段3によって前記調理装置本体2を操作できなくなる虞がある。これは、前記調理装置本体2と遠隔操作手段3との距離が長いと、前記赤外センサ27,28,29が受信する赤外信号のレベルが相対的に低下することで、前記赤外センサ27,28,29におけるアナログ部分の信号のレベルも相対的に低下するため、SN比が悪化するばかりでなく、ノイズの周波数が信号の周波数と近似するため、信号とノイズの区別が付きにくくなるためである。
【0033】
この場合、前記マイクロコンピュータ23によって制御される前記誘導加熱駆動回路21は、出力を一段階上げて実出力OPyをOP4とする。そして、この実出力OPy=OP4におけるコイル電流の周波数F=F4kHzを測定する。そして、この周波数F4kHzが、前述した回避周波数範囲を外れると、前記マイクロコンピュータ23によって制御される前記誘導加熱駆動回路21は、前記誘導加熱コイル7の出力を、実出力OPy=OP4の間欠出力とすることで、擬似的に設定出力OPx=OP3とする。即ち、前記マイクロコンピュータ23によって制御される前記誘導加熱駆動回路21は、実出力OPy=OP4で、全体のOP3/OP4をオン、全体の(OP4-OP3)/OP4をオフとするオン-オフ制御を行う。
【0034】
なお、図11に示すように、周波数F4kHzが回避周波数範囲内のままであれば、前記マイクロコンピュータ23によって制御される前記誘導加熱駆動回路21は、前記誘導加熱コイル7の出力を更に一段階上げて、実出力OPy=OP5とする。そして、この実出力OPy=OP5におけるコイル電流の周波数F=F5kHzを測定する。そして、この周波数F5kHzが、前述した回避周波数範囲を外れると、前記マイクロコンピュータ23によって制御される前記誘導加熱駆動回路21は、前記誘導加熱コイル7の出力を、実出力OPy=OP5の間欠出力とすることで、擬似的に設定出力OPx=OP3とする。即ち、前記マイクロコンピュータ23によって制御される前記誘導加熱駆動回路21は、実出力OPy=OP5で、全体のOP3/OP5をオン、全体の(OP5-OP3)/OP5をオフとするオン-オフ制御を行う。
【0035】
更に、図12は、設定出力OPxがOP3でコイル電流の周波数FがF3´kHzとなり、且つ、この周波数F3´kHzが、前述した回避周波数範囲の逓倍、具体的には76±8kHzの範囲となった場合である。この場合も、前記調理装置本体2と遠隔操作手段3との距離が長いと、この遠隔操作手段3によって前記調理装置本体2を操作できなくなる虞がある。
【0036】
この場合も、前記マイクロコンピュータ23によって制御される前記誘導加熱駆動回路21は、出力を一段階上げて実出力OPyをOP4とする。そして、この実出力OPy=OP4におけるコイル電流の周波数F=F4´kHzを測定する。そして、この周波数F4´kHzが、前述した回避周波数範囲を外れると、前記マイクロコンピュータ23によって制御される前記誘導加熱駆動回路21は、前記誘導加熱コイル7の出力を、実出力OPy=OP4の間欠出力とすることで、擬似的に設定出力OPx=OP3とする。即ち、前記マイクロコンピュータ23によって制御される前記誘導加熱駆動回路21は、実出力OPy=OP4で、全体のOP3/OP4をオン、全体の(OP4-OP3)/OP4をオフとするオン-オフ制御を行う。
【0037】
このように、コイル電流の周波数Fが、赤外信号の周波数38kHz及びこれを中心とした±4kHzの回避周波数範囲、更にはその逓倍範囲である76kHz±8kHzとなった場合、実出力OPyを上げてコイル電流の周波数Fを下げると共に、設定出力OPxと実出力OPyの比に基づく間欠出力とすることで、擬似的に設定出力OPxで鍋を加熱することができると共に、離れた位置からでも前記遠隔操作手段3によって前記調理装置本体2を操作することができる。
【0038】
以上のように本発明は、誘導加熱コイル7を有する調理装置本体2と、この調理装置本体2から離れた位置でこの調理装置本体2を操作可能な遠隔操作体3とを有し、前記調理装置本体2が赤外信号受信部14を有し、前記遠隔操作体3が赤外信号送信部18を有する誘導加熱調理装置1であって、前記調理装置本体2を所定の設定出力OPxに設定した際に、前記誘導加熱コイル7のコイル電流の周波数Fが赤外信号の周波数38kHzとなった場合、設定出力OPxよりも高い実出力OPyで且つ間欠運転させる制御手段としてのマイクロコンピュータ23を有することで、コイル電流の周波数Fが赤外信号の周波数と一致しないようにして、前記誘導加熱コイル7からのノイズが前記赤外信号受信部14の赤外センサ27,28,29の出力信号に悪影響を与え難いようにすることができる。
【0039】
また本発明は、前記マイクロコンピュータ23が、前記誘導加熱コイル7のコイル電流の周波数Fが赤外信号の周波数38kHzを含む所定の範囲である34~42kHzの範囲になった場合、設定出力OPxよりも高い実出力OPyで且つ間欠運転させることで、誘導加熱コイル7からのノイズが前記赤外信号受信部14の赤外センサ27,28,29の出力信号に悪影響をより与え難いようにすることができる。
【0040】
更に本発明は、前記マイクロコンピュータ23が、前記誘導加熱コイル7のコイル電流の周波数Fが赤外信号の周波数38kHzの逓倍となった場合、設定出力OPxよりも高い実出力OPyで且つ間欠運転させることで、誘導加熱コイル7からのノイズが前記赤外信号受信部14の赤外センサ27,28,29の出力信号に悪影響をより与え難いようにすることができる。
【0041】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上記実施形態では、設定出力OPxも実出力OPyも五段階に設定されるが、実出力OPyの設定段階をより細かく(例えば10段階)しても良い。
【符号の説明】
【0042】
1 誘導加熱調理装置
2 調理装置本体
3 遠隔操作体
7 誘導加熱コイル
14 赤外信号受信部
15 受光窓(赤外信号受信部)
18 赤外信号送信部
19 放光窓(赤外信号送信部)
23 マイクロコンピュータ(制御手段)
27,28,29 赤外センサ(赤外信号受信部)
S 赤外信号
F コイル電流の周波数
OPx 設定出力
OPy 実出力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12