(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】積層体、液体包装袋、ならびに液体入り包装袋およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20220714BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
B32B27/32 103
B32B27/32 E
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2018195968
(22)【出願日】2018-10-17
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】藤井 澄明
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅生
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-187436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(x0)~(x3)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(X)を含む中間層(B)と、シーラント層(C)とが積層され、前記中間層(B)の少なくとも一部と前記シーラント層(C)の少なくとも一部とが接触している積層体:
(x0)エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体である。
(x1)190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが1~50g/10分である。
(x2)密度が900~925kg/m
3である。
(x3)示差走査熱量計を用い、0℃から10℃/分の速度で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持し、10℃/分の速度で0℃まで降温し、0℃で10分間保持し、次いで10℃/分の速度で200℃まで昇温する際の2度目の昇温時において、観測される融解熱量の総量をΔH、0℃からT℃までの昇温で観測される融解熱量をΔH(T)としたとき、
0.30 ≦ ΔH(80)/ΔH ≦ 0.75
0.35 ≦ ΔH(100)/ΔH ≦ 0.85、かつ
0.40 ≦ ΔH(120)/ΔH ≦ 0.95
である。
【請求項2】
前記中間層(B)の、前記シーラント層(C)側とは反対の面に、さらに、基材層(A)が積層され、前記中間層(B)の少なくとも一部と前記基材層(A)の少なくとも一部とが接触しており、
前記シーラント層(C)が、下記要件(y0)~(y2)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(Y)を含む請求項1に記載の積層体:
(y0)エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体である。
(y1)190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが1~50g/10分である。
(y2)密度が880~920kg/m
3である。
【請求項3】
前記基材層(A)が、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン系樹脂およびアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むフィルムならびにその延伸物、金属箔、セラミック蒸着フィルム、紙、ならびに不織布からなる群から選ばれる少なくとも1種を基材として含む請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記基材層(A)が、前記基材の表面の少なくとも一部に、ポリウレタン、イソシアネート化合物、ポリエステル、ならびにポリオールとイソシアネート化合物との混合物および反応生成物からなる群から選ばれる1種以上の接着剤からなる接着剤層を含み、前記接着剤層を介して前記中間層(B)と接触している請求項2又は3に記載の積層体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体から形成された液体包装袋。
【請求項6】
請求項5に記載の液体包装袋と前記液体包装袋に収容された液体または粘体とからなる液体入り包装袋。
【請求項7】
請求項5に記載の液体包装袋に液体または粘体を充填して請求項6に記載の液体入り包装袋を製造する工程を含み、
前記液体入り包装袋は、長尺方向に複数の前記液体入り包装袋が連なってなるシートの状態で、かつ前記シートの長尺方向への送り速度を20m/分以上として製造される
液体入り包装袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、液体包装袋、ならびに液体入り包装袋およびその製造方法に関し、より詳細には多層包装フィルムに好ましく適用される積層体、該積層体から形成された液体包装袋、ならびに該液体包装袋を用いた液体入り包装袋およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体や粘体、不溶物を含む液体や粘体の包装には、基材上に中間層を介してシーラント層を積層した積層体からなる多層包装フィルムが用いられており、シーラント層を内側とした袋状物の開口部から液体等を充填し、開口部をヒートシールで閉じる液体包装袋が知られている。
【0003】
包装袋はフィルムを3方乃至は4方をヒートシールして作製されることが多く、液体等を高速充填する場合に、ヒートシール部から液体が漏れ出すことがある。そのため、この高速充填性を高めた包装袋用の積層体が提案されている。
【0004】
特許文献1~3には、自動充填機での液体や粘体用の包装袋として用いたときに、低剪断速度時の粘度が高く、高剪断速度時の粘度が低い特定の材料、すなわち実際の充填時に近い温度で測定した高剪断速度と低剪断速度との比が特定の範囲にある樹脂組成物を使用する方法が開示されている。特に、基材とシーラント層との間の中間層に、エチレン・1-ヘキセン共重合体と高圧法低密度ポリエチレンとの組成物が使用されている。
【0005】
特許文献4には、基材フィルム上に、少なくとも一層のシーラント層を有する包装材料において、該シーラント層はエチレン・α-オレフィン共重合体と結晶核剤からなる中間層とエチレン・α-オレフィン共重合体からなる最内層とからなる包装材料が開示され、その中間層の融点は90~120℃、結晶化温度は80~110℃であり、その融点と結晶化温度の差は25℃以下が好ましいとされている。
【0006】
さらに、特許文献5では、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体と、高圧法低密度ポリエチレン(HPLD)とからなるポリエチレン樹脂組成物であって、特定の密度、MFR、o-ジクロロベンゼンに対する特定の溶出特性を有する組成物を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-139848号公報
【文献】特開2012-139849号公報
【文献】特開2012-139854号公報
【文献】特開平10-315409号公報
【文献】特開2007-204628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
内容物が充填された包装袋の開口部をヒートシールで閉じる際には、短時間でヒートシールが行われるため、シーラント層の温度が、シール部が癒着する温度に短時間に到達する必要がある。しかしながら、ヒートシールを短時間で行う場合には、シール部の温度にばらつきが生じ易く、ばらつきによる製品不良(外観が悪い、耐圧強度が低いなど)が発生し易い。このため、包装袋の充填可能温度領域(すなわち、内容物が充填された包装袋を良好にヒートシールすることのできるヒートシール温度の幅)は広いことが望まれる。
【0009】
しかしながら、従来の多層包装フィルムから形成された包装袋は充填可能温度領域が狭く、特に液体の高速充填時(すなわち、液体を充填した包装袋の開口部を高速でヒートシールする時)に、シール部温度ばらつきによる製品不良が多く発生していた。
【0010】
従来技術における上述の問題に鑑み、本発明は、充填可能温度領域が広い包装袋、およびこのような包装袋を形成可能な積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記多層包装フィルムの中間層に使用されるポリエチレン系樹脂として融点分布の広いポリエチレン系樹脂を使用することにより、ヒートシール時における中間層での吸熱量を減少させ、シーラント層への伝熱量を増やすことができ、これにより上記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
【0012】
本発明の要旨は、以下のとおりである。
【0013】
〔1〕
下記要件(x0)~(x3)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(X)を含む中間層(B)と、シーラント層(C)とが積層され、前記中間層(B)の少なくとも一部と前記シーラント層(C)の少なくとも一部とが接触している積層体:
(x0)エチレンと炭素数3~20とのα-オレフィンの共重合体である。
(x1)190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが1~50g/10分である。
(x2)密度が900~925kg/m3である。
(x3)示差走査熱量計を用い、0℃から10℃/分の速度で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持し、10℃/分の速度で0℃まで降温し、0℃で10分間保持し、次いで10℃/分の速度で200℃まで昇温する際の2度目の昇温時において、観測される融解熱量の総量をΔH、0℃からT℃までの昇温で観測される融解熱量をΔH(T)としたとき、
0.30 ≦ ΔH(80)/ΔH ≦ 0.75
0.35 ≦ ΔH(100)/ΔH ≦ 0.85、かつ
0.40 ≦ ΔH(120)/ΔH ≦ 0.95
である。
【0014】
〔2〕
前記中間層(B)の、前記シーラント層(C)側とは反対の面に、さらに、基材層(A)が積層され、前記中間層(B)の少なくとも一部と前記基材層(A)の少なくとも一部とが接触しており、
前記シーラント層(C)が、下記要件(y0)~(y2)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(Y)を含む前記〔1〕の積層体:
(y0)エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体である。
(y1)190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが1~50g/10分である。
(y2)密度が880~920kg/m3である。
【0015】
〔3〕
前記基材層(A)が、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン系樹脂およびアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むフィルムならびにその延伸物、金属箔、セラミック蒸着フィルム、紙、ならびに不織布からなる群から選ばれる少なくとも1種を基材として含む前記〔2〕の積層体。
【0016】
〔4〕
前記基材層(A)が、前記基材の表面の少なくとも一部に、ポリウレタン、イソシアネート化合物、ポリエステル、ならびにポリオールとイソシアネート化合物との混合物および反応生成物からなる群から選ばれる1種以上の接着剤からなる接着剤層を含み、前記接着剤層を介して前記中間層(B)と接触している前記〔2〕又は〔3〕の積層体。
【0017】
〔5〕
前記〔1〕~〔4〕のいずれかの積層体から形成された液体包装袋。
【0018】
〔6〕
前記〔5〕の液体包装袋と前記液体包装袋に収容された液体または粘体とからなる液体入り包装袋。
【0019】
〔7〕
前記〔5〕の液体包装袋に液体または粘体を充填して前記〔6〕の液体入り包装袋を製造する工程を含み、
前記液体入り包装袋は、長尺方向に複数の前記液体入り包装袋が連なってなるシートの状態で、かつ前記シートの長尺方向への送り速度を20m/分以上として製造される
液体入り包装袋の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る積層体によれば、充填可能温度領域が広い包装袋を形成することができる。その結果、包装袋への内容物充填時のシール部温度のばらつきに対する許容が広がるため製品(たとえば、液体入り包装袋)の不良率を低減することができる。
【0021】
本発明に係る液体包装袋は、充填可能温度領域が広く、このため液体の高速充填性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0023】
[積層体]
本発明に係る積層体は、中間層(B)とシーラント層(C)とが積層されてなり、前記中間層(B)の少なくとも一部と前記シーラント層(C)の少なくとも一部とが接触していることを特徴としている。
【0024】
本発明に係る積層体は、さらに任意に基材層(A)が、シーラント層(C)が形成される面と反対の面の中間層(B)上に積層されることで、多層包装フィルムとして使用することができる。ただし、本発明の積層体の用途は、多層包装フィルムのみに限定されるものではない。
【0025】
本発明に係る積層体が多層包装フィルムとして使用される場合、中間層(B)は、基材層(A)とシーラント層(C)との間の全ての領域に亘って形成されていてもよく、多層包装フィルムを袋状とする場合であれば、中間層(B)は、ヒートシールする部分近傍の一部にのみ形成されていてもよい。
【0026】
<基材層(A)>
基材層(A)は、基材を含み、任意に後述する接着剤層をさらに含む。
【0027】
基材層(A)を構成する基材は、多層包装フィルムの一外面となり、比較的大きな剛性、強度を有する。基材としては、具体的には、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、およびアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂を含んでなるフィルム(その延伸物であってもよい。)、金属蒸着フィルム、無機酸化物蒸着フィルム等のセラミック蒸着フィルム、金属箔、紙、および不織布からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの基材は2種以上を積層して用いてもよい。
【0028】
金属箔は、材質や厚さなどによって特に限定されず、厚さ5~50μmのアルミニウム箔、錫箔、鉛箔、亜鉛メッキした薄層鋼板、電気分解法によりイオン化金属を薄膜にしたもの、アイアンフォイル等が用いられる。
【0029】
また、金属蒸着フィルムについても、材質や厚さなどによって特に限定されず、蒸着金属としてはアルミニウムや亜鉛等が挙げられ、蒸着金属層の厚さは、通常0.01~0.2μm程度である。蒸着の方法も特に限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等周知の方法が用いられる。
【0030】
セラミック蒸着フィルムにおいて、蒸着されるセラミックとしては、例えば、一般式SiOx(0.5≦x≦2)で表されるケイ素酸化物のほか、ガラス、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化錫等の金属酸化物、蛍石、フッ化セレン等の金属フッ化物が挙げられる。金属酸化物には、微量の金属や、他の金属酸化物、金属水酸化物が含まれていてもよい。蒸着は、フィルムの少なくとも片面に、上記の種々の蒸着方法を適用することによっても行うことができる。蒸着フィルムの厚さは、通常、10~50μm程度である。また、被蒸着フィルムとしては、特に制限はなく、延伸ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム等の透明フィルムが挙げられる。
【0031】
また、基材層(A)において、前記基材の表面の少なくとも一部にポリウレタン、イソシアネート化合物、ポリエステル、ならびにポリオールとイソシアネート化合物との混合物および反応生成物からなる群から選ばれる1種以上の接着剤からなる接着剤層を積層して、この接着剤層を介して基材層(A)と中間層(B)とを接触させることにより、基材層(A)と中間層(B)との接着性を向上させることが好ましい。
【0032】
このように、基材層(A)には、樹脂層および/または金属層および/または紙層が用いられる。
【0033】
<中間層(B)>
中間層(B)は、下記(x0)~(x3)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(X)(以下「共重合体(X)」ともいう)を含む材料から形成されている。
【0034】
要件(x0):
要件(x0)は、エチレン・α-オレフィン共重合体(X)がエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体であるというものである。
【0035】
前記α-オレフィンは、好ましくは炭素数4~8のα-オレフィンであり、前記α-オレフィンの例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテンおよび1-デセンが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
エチレン・α-オレフィン共重合体(X)中のα-オレフィン由来の構造単位の割合、およびα-オレフィンの種類は、要件(x1)~(x3)が満たされるように適宜調整される。
【0037】
要件(x1):
要件(x1)は、JIS K7210-1に準拠して190℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレートが、1~50g/10分であり、好ましくは3~30g/10分であり、更に好ましくは4~20g/10分の範囲にあるというものである。メルトフローレートが上記範囲にあることで、中間層形成時の押出加工性が向上する。
【0038】
要件(x2):
要件(x2)は、JIS K7112に準拠して測定される密度が900~925kg/m3であり、好ましくは910~925kg/m3であるというものである。
【0039】
要件(x3):
一般に、低密度ポリエチレンの融解ピークは30℃付近から複数のピークを有する吸熱ピークが見られ、高密度ポリエチレンに比較してブロードである。通常、融解ピークの最も大きなピーク温度が融点である。DSC測定は、以下の実施例に示す条件にて実施される。すなわち要件(x3)は、示差走査熱量計を用い、エチレン・α-オレフィン共重合体(X)を0℃から10℃/分の速度で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持し、10℃/分の速度で0℃まで降温し、0℃で10分間保持し、次いで10℃/分の速度で200℃まで昇温する際の2度目の昇温時において、観測される融解熱量の総量をΔH、0℃からT℃までの昇温で観測される融解熱量をΔH(T)とすると、下式:
0.30 ≦ ΔH(80)/ΔH ≦ 0.75
0.35 ≦ ΔH(100)/ΔH ≦ 0.85、かつ
0.40 ≦ ΔH(120)/ΔH ≦ 0.95
が満たされるというものである。好ましくは
0.31 ≦ ΔH(80)/ΔH ≦ 0.60
0.40 ≦ ΔH(100)/ΔH ≦ 0.75、かつ
0.50 ≦ ΔH(120)/ΔH ≦ 0.90
である。
【0040】
多層包装フィルムからなる包装袋に内容物を充填する際は、非常に短時間でヒートシールが行われており、シーラント層の温度がシールバーの温度に到達する前にシール部の癒着が起こっていないと充填ができない。そこで、中間層の伝熱性が良好であれば、シールバーの温度が低くても、シーラント層の温度が短時間で上昇するため充填可能となる。つまり、充填可能な温度領域が広くなる。中間層の伝熱性を良好にするためには、シーラント層の樹脂の融点で溶融する中間層の樹脂の成分量を少なくする必要がある。
【0041】
ところが、そうするために中間層用の樹脂として、シーラント層用の樹脂よりも融点が高く、融点分布が狭い樹脂を使用する場合、中間層の樹脂密度が高くなってしまい、中間層の剛性が高くなりすぎて、充填時に包装袋にシワが発生したり、包装袋の半折部のシール不良が発生したりしてしまうため、充填不良が発生する。
【0042】
そこで、本発明の積層体においては、中間層(B)用のポリエチレン系樹脂として、要件(x3)を満たす、すなわち広い融点分布を有するエチレン・α-オレフィン共重合体(X)を使用している。このため、中間層の剛性をあまり上げずにヒートシール時の中間層での吸熱量を減少させ、シーラント層への伝熱量を増やし、以って充填可能な温度領域を広くすることが可能となる。
【0043】
要件(x3)として規定されるH(80)/ΔH、ΔH(100)/ΔHおよびΔH(120)/ΔHの値は、たとえば主成分として使用する樹脂に、それよりも融点の高い樹脂、または融点の低い樹脂を更にブレンドすることによって、調整することができる。
【0044】
共重合体(X)は、メタロセン系やチタン系、クロム系およびフェノキシイミン系等のオレフィン重合用触媒を用いて調製することができる。この共重合体(X)は、直鎖状あるいは分岐状低密度ポリエチレンであってもよい。特にメタロセン系オレフィン重合用触媒を用いて調製すると分子量分布の狭い重合体が得られるために低分子量かつ低密度の成分の生成が少なく、本発明に関する用途には有効である。
【0045】
メタロセン系触媒は、通常、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも1個有する周期律表第IVB族の遷移金属化合物からなるメタロセン触媒成分(a1)、有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)、微粒子状担体(c)、および必要に応じて有機アルミニウム化合物触媒成分(d)、イオン化イオン性化合物触媒成分(e)から形成される。
【0046】
このような共重合体(X)は、たとえば特開平6-9724号公報、特開平6-136195号公報、特開平6-136196号公報、特開平6-207057号公報等に記載されているメタロセン触媒成分を含む、いわゆるメタロセン系オレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンと炭素原子数3~20のα-オレフィンとを共重合させることによって製造することができる。
【0047】
共重合体(X)は、1種の共重合体であってもよく、または2種以上の共重合体の混合物であってもよい。混合物の場合、混合物が上記要件(x0)~(x3)を満たせばよく、混合前の各重合体は上記各要件を満たしていなくてもよい。
【0048】
共重合体(X)として、市販されているエチレン・α-オレフィン共重合体から、上記(x0)~(x3)を満たすものを選択してもよい。
【0049】
<シーラント層(C)>
シーラント層(C)としては、多層包装フィルムに使用される従来公知のシーラント層を用いることができるが、下記要件(y0)~(y2)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(Y)を含む材料から形成されたシーラント層を使用することが好ましい。
【0050】
要件(y0):
要件(y0)は、エチレン・α-オレフィン共重合体(Y)がエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体を含むというものである。
【0051】
前記炭素数3~20のα-オレフィンの例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
エチレン・α-オレフィン共重合体(Y)中のα-オレフィン由来の構造単位の割合、およびα-オレフィンの種類は、要件(y1)~(y2)が満たされるように適宜調整される。
【0053】
要件(y1):
要件(y1)は、エチレン・α-オレフィン共重合体(Y)の190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが1~50g/10分、好ましくは2~40g/10分、より好ましくは4~30g/10分であるというものである。メルトフローレートがこの範囲にあると、ヒートシール層形成時の押出加工性が良好である。
【0054】
要件(y2):
要件(y2)は、エチレン・α-オレフィン共重合体(Y)の密度が880~920kg/m3であるというものである。前記密度は、好ましくは902~910kg/m3である。密度がこの範囲にあると本発明に係る積層体から形成された包装袋に液体充填を行う際に良好な充填性が得られる。
【0055】
なお、より低温でのヒートシール性を考慮すると、シーラント層(C)を構成するエチレン・α-オレフィン共重合体(Y)は、中間層(B)を構成するエチレン・α-オレフィン共重合体(X)よりも低い融点(すなわち、要件(x3)に関して採用される示差走査熱量計による2度目の昇温時における融解ピーク温度)を有することが好ましい。
【0056】
エチレン・α-オレフィン共重合体(Y)は、メタロセン系、チタン系、クロム系またはフェノキシイミン系等のオレフィン重合用触媒を用いて調製することができる。エチレン・α-オレフィン共重合体(Y)は、直鎖状あるいは分岐状低密度ポリエチレンであってもよい。特にメタロセン系オレフィン重合用触媒を用いて調整すると分子量分布の狭い重合体が得られるために低分子量かつ低密度の成分の生成が少なく、本発明に関する用途には有効である。
【0057】
メタロセン系触媒は、通常、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも1個有する周期律表第IVB族の遷移金属化合物からなるメタロセン触媒成分(a1)、有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)、微粒子状担体(c)、および必要に応じて有機アルミニウム化合物触媒成分(d)、イオン化イオン性化合物触媒成分(e)から形成される。
【0058】
エチレン・α-オレフィン共重合体(Y)は、たとえば特開平6-9724号公報、特開平6-136195号公報、特開平6-136196号公報、特開平6-207057号公報等に記載されているメタロセン触媒成分を含むメタロセン系オレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンと炭素原子数3~20のα-オレフィンとを共重合させることによって製造することができる。
【0059】
エチレン・α-オレフィン共重合体(Y)は、1種の共重合体であってもよく、または2種以上の共重合体のエチレン・α-オレフィン共重合体の混合物、またはエチレン・α-オレフィン共重合体の1種以上と他のポリエチレンの1種以上との混合物であってもよい。混合物の場合、混合物が上記要件(y0)~(y2)を満たせばよく、混合前の各重合体は上記各要件を満たしていなくてもよい。
【0060】
エチレン・α-オレフィン共重合体(Y)として、市販されているエチレン・α-オレフィン共重合体から、上記(y0)~(y2)を満たすものを用いてもよい。
【0061】
中間層(B)またはラミネート層(C)を構成する樹脂(樹脂組成物)には、必要に応じて、従来公知のアンチブロッキング剤、防曇剤、静電防止剤、酸化防止剤、耐候安定剤、熱安定剤、滑剤などの添加剤が、本発明の目的を損なわない範囲で配合されていてもよい。
【0062】
中間層(B)またはラミネート層(C)が前記共重合体および添加剤を含む樹脂組成物から形成される場合、樹脂組成物は、エチレン・α-オレフィン共重合体(X)またはエチレン・α-オレフィン共重合体(Y)を上記添加剤とともに、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダーおよび押出機等の混合装置を用いて、常温~250℃で混合することにより得られる。この際窒素シ-ルや真空シ-ルを実施することで、エチレン・α-オレフィン共重合体の劣化に由来するゲルの発生を防ぐことができる。
【0063】
<積層体の製造>
たとえば前記基材層(A)に、前記中間層(B)および前記シーラント層(C)を、溶融状態で接触させて積層することで、基材層(A)と中間層(B)および前記シーラント層(C)との接着性に優れた本発明に係る積層体を得ることができる。溶融状態での前記中間層(B)の接触は、基材層(A)に中間層(B)を溶融押出成形することにより行うことができる。また、本発明の積層体は、前記基材層(A)に、前記中間層(B)および前記シーラント層(C)に使用される樹脂材料を別々に、あるいは同時に溶融押出して成形して製造することができる。
【0064】
中間層(B)およびシーラント層(C)の成形温度は、150~320℃であることが好ましく、この範囲であれば、基材層(A)と中間層(B)、および中間層(B)とシーラント層(C)との接着性が良好である。
【0065】
また、基材層(A)に中間層(B)を溶融押出成形する際には、基材層(A)として、前記基材の中間層(B)が押出成形される面にアンカーコート処理を行い、かつアンカーコート処理された基材を上記成形温度範囲において酸化雰囲気(例えば、酸素、特にオゾンを含有させた気体(空気等))に接触(以下「オゾン処理」という)させたものを使用することが、接着性の点から好ましい。
【0066】
アンカーコート処理は、ポリウレタン、イソシアネート化合物、もしくはそれらの混合物および反応生成物、ポリエステル、またはポリオールとイソシアネート化合物との混合物および反応生成物、あるいはそれら溶液等の公知のアンカーコート剤、接着剤等を基材表面に塗布することによりなされる。
【0067】
本発明の積層体を多層包装フィルムとして使用する場合、任意の基材層(A)、中間層(B)、シーラント層(C)の各層がそれぞれ1層の合計2層(任意に3層)構成が多層包装フィルムとしての基本構成となる。基材層(A)、中間層(B)及びシーラント層(C)の各層は単層でもよいが、場合によっては前記各層を複数の層で構成することができる。例えば、ポリエステルフィルムとセラミック蒸着ポリエステルフィルムをドライラミネートした2層フィルムを基材層(A)として使用することができる。2層フィルムから成る基材層(A)に、中間層(B)を1層及びシーラント層(C)を1層積層する場合は、合計4層の積層体となる。又、例えば、ポリエステルフィルムとアルミ箔とをドライラミネートし、更にアルミ箔面にポリエステルフィルムをドライラミネートした合計3層のフィルムを基材層(A)として使用する場合は5層構成となる。
【0068】
中間層(B)及びシーラント層(C)は、通常単層(1層のみ)で使用される。本発明では、中間層(B)の少なくとも一部とシーラント層(C)の少なくとも一部とが接触していれば、他の部分で両者の間に他の層が存在していてもよい。
【0069】
また、基材層(A)の少なくとも一部と、中間層(B)およびシーラント層(C)を含む積層体の少なくとも一部とが接触していればよく、特に本発明に係る積層体がヒートシールに供される場合であれば、ヒートシールされる部分で基材層(A)/中間層(B)/シーラント層(C)の積層構造であればよい。
【0070】
他の部分で基材層(A)と中間層(B)との間に他の層が存在していてもよく、中間層(B)を介することなく基材層(A)とシーラント層(C)とが接触する部分があってもよい。他の層としては、中間層(B)及びシーラント層(C)に使用される樹脂以外のオレフィン系重合体からなる層、空気層などが挙げられる。
【0071】
オゾン処理は、エアギャップ内で、ノズルまたはスリット状の吹出口からオゾン含有させた気体(空気等)を、中間層(B)の基材層(A)と接着する面、または基材層(A)の中間層(B)と接着する面に向けるか、両者の圧着部に向けて吹き付けることによって行われる。なお、100m/分以上の速度で押出ラミネートする場合は、上記両者の圧着部に向けて吹き付けることが好ましい。オゾンを含有させた気体中のオゾンの濃度は、1g/m3以上が好ましく、さらに好ましくは3g/m3以上である。また、吹き付ける量は、中間層(B)の幅(押出方向に垂直な方向の長さ)に対して0.03リットル/(分・cm)以上が好ましく、さらに好ましくは0.1リットル/(分・cm)以上である。
【0072】
ラミネート速度は、生産性の点から一般的には100~150m/分である。また、公知の押出ラミネーターのエアーギヤップは、通常100~150mmが一般的である。本発明における積層体は、成形後ただちにエージング処理をすることが接着性の点から好ましい。エージングは、積層体を、その成形後12時間以内に、温度23~45℃、好ましくは35~45℃で、湿度0~50%の雰囲気下に、12~24時間静置することで行われる。
【0073】
このようにして得られる積層体においては、基材層(A)の厚さが10~50μm、中間層(B)の厚さが10~50μm、シーラント層(C)の厚さが5~100μmであることが一般的である。
【0074】
[液体包装袋および液体入り包装袋、ならびにこれらの製造方法]
本発明の積層体は、液体又は粘体を充填する液体包装袋の材料として特に有用である。
【0075】
本発明の液体包装袋は、本発明の積層体から形成されたものであり、より具体的には、上記の任意の基材層(A)/中間層(B)/シーラント層(C)の順に積層された積層体(多層包装フィルム)の1片をシーラント層(C)が向き合うように折り曲げ、または2片をシーラント層(C)が向き合うように重ね合わせ、あるいは本発明の積層体(多層包装フィルム)と他のフィルムとをシーラント層(C)と他のフィルムとが向き合うように重ね合わせ、ヒートシール(例えば、二方シール、三方シールまたは四方シール)して袋状としたものである。ヒートシールは、従来公知のヒートシール機を使用し、常法により行うことができる。袋の形状は、一般的には矩形であるが、任意の形状とすることができる。
【0076】
また、本発明の液体入り包装袋は、本発明の液体包装袋と前記液体包装袋に収容された液体または粘体とからなる。なお、本発明においては、収容物が粘体である場合も、便宜的に、液体包装袋、液体入り包装袋と称すものとする。
【0077】
液体または粘体の例としては、食品および医薬品が挙げられる。また、液体または粘体の中には、顆粒を含むドレッシングのように、固形物が含まれていてもよい。
【0078】
ヒートシールは、シーラント層(C)の溶融温度以上の温度で行い、液体包装袋に充填する液体または粘体の量に応じてヒートシール幅を適宜設定すれば良い。また、液体または粘体を袋から取り出しやすくするために、注ぎ口となる部分を残してヒートシールすることができる。
【0079】
本発明の液体入り包装袋は、本発明の液体包装袋に液体または粘体を充填する工程を経て製造することができ、たとえば、液体・粘体自動充填機を使用して、長尺方向に複数の前記液体入り包装袋が連なってなるシートとして製造することができる。本発明の液体入り包装袋は、充填可能温度領域が広い本発明の液体包装袋を使用しているため、上述のシートとして製造する場合に高速で、すなわち前記シートの長尺方向への送り速度を20m/分以上、好ましくは25m/分以上として製造することができる。上限値は、充填機の能力等にもよるが、たとえば30m/分であってもよい。
【実施例】
【0080】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0081】
(中間層用共重合体)
中間層の材料として、表1に示すエチレン・α-オレフィン共重合体を用意した。
【0082】
【0083】
[実施例1]
積層体フィルムを、以下のように押出ラミネート加工法により作製した。
【0084】
まず、幅500mm、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(東洋紡製、「ハーデン(登録商標) ONY#15」)上に、ポリウレタン系アンカーコート剤(三井化学(株)製、ポリオール成分:「タケラック(登録商標)A-3210」、イソシアネート成分:「タケネート(登録商標)A-3075」)をグラビアロールにて塗工し、アンカーコート剤が塗工された基材を得た。
【0085】
次に、口径60mmφの押出機のTダイスから押し出される樹脂の温度が295℃になるように設定した押出しラミネート装置を用い、冷却ロール表面温度30℃、ダイス幅500mm、ダイリップ開度0.9mmの条件下で、加工速度が80m/分の場合に被覆厚みが25μmになるように押出量を調整し、アンカーコート剤が塗工された基材へ、ラミネート部にてオゾン吹きつけを行いながら中間層材料としてPE-1を、引き取り速度80m/分、被覆厚さ25μmの条件下で押出して押出しラミネート加工を行い、中間層を形成した。
【0086】
さらに中間層の上に同じ押出ラミネート装置を用い、(株)プライムポリマー製 商品名「エボリュー(登録商標)P SP05156C」(MFR:12g/10分、密度:904kg/m3)を押出樹脂温度295℃、引き取り速度80m/分、被覆厚さ25μmの条件下で押出して押出ラミネート加工を行い、シーラント層を形成し、積層体を得た。積層体を40℃のオーブン内に入れて24時間のエージングを行い、その後積層体に幅が150mmになるようにスリットを入れることで、評価用の包装フィルムを得た。
【0087】
中間層用材料の物性、及び得られた包装フィルムの液体充填適性を、後述する方法で評価した。結果を表2に示す。
【0088】
[比較例1、2、3]
中間層用材料として、それぞれ、PE-2、PE-3,PE-4を使用した以外は実施例1と同様の方法により、評価用の包装フィルムを得た。
【0089】
中間層材料の物性、及び得られた包装フィルムの液体充填適性を、後述する方法で評価した。結果を表2に示す。
【0090】
<メルトフローレート(MFR)>
JIS K7210-1に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定した。
【0091】
<密度>
JIS K7112に準拠し、MFR測定時に得られるストランドを100℃で1時間熱処理し、更に室温で1時間放置した後に密度勾配管法で測定した。
【0092】
<融点ピーク、融解熱量、ΔH(T)/ΔH>
結晶融点はJIS K7121に従って、示差走査熱量計(DSC、パーキンエルマー社製(Diamond DSC))を用いて下記測定条件にて測定を行うことにより求めることができる。なお、下記測定条件で測定を行った際の、第3ステップにおける吸熱ピークの頂点を結晶融点(Tm)と定義した。吸熱ピークが複数ある場合はピークの高さが最大となる吸熱ピーク頂点を結晶融点(Tm)と定義する。
【0093】
《ΔH(T)/ΔH》
示差走査熱量計(DSC、パーキンエルマー社製(Diamond DSC))を用いて下記測定条件にて示差走査熱量測定を行った。
【0094】
(測定条件)
測定環境:窒素ガス雰囲気
サンプル量 : 5mg
サンプル形状 : プレスフィルム(230℃成形、厚み400μm)
サンプルパン : 底が平面のアルミ製サンプルパン
第1ステップ : 0℃より10℃/分の速度で200℃まで昇温し、10分間保持する。
【0095】
第2ステップ : 10℃/分の速度で0℃まで降温する。
【0096】
第3ステップ : 10℃/分の速度で200℃まで昇温する。
【0097】
第3ステップで得られる融解熱量の総量をΔH、0℃からT℃まで昇温した場合の融解熱量をΔH(T)と定義し、Tが80、100または120(℃)である場合のΔH(T)/ΔH、すなわちΔH(80)/ΔH、ΔH(100)/ΔHおよびΔH(120)/ΔHを算出した。
【0098】
<液体包装袋の充填方法及び液体充填適性評価>
高速自動充填包装機(大成ラミック株式会社製 DANGAN TYPE-III)を用いて、実施例等で製造された包装フィルムから、次の条件で包装袋を製造し、この中に液体を充填し、液体充填小袋を得た。
【0099】
シール温度:(縦シール温度)190℃、(横シール温度)140~185℃の範囲で5℃刻み(上限を185℃とした理由はナイロン基材自体の収縮が発生し外観不良となり評価範囲として不適合であるため。)
包装形態:三方シール
袋寸法:幅75mm×縦85mmピッチ
充填物:23℃の水
充填量:約24cc
充填速度:25m/分
得られた液体充填小袋の横シール部の外観観察および耐圧試験を行い、以下の基準で評価した。
【0100】
[シール部の外観:高温充填適性(最高耐発泡温度)の評価]
横シール温度の異なる各液体充填小袋について、以下の基準で横シール部の外観を評価した。横シール部に発泡またはポリ溜りが発生しない最高の横シール温度(最高耐発泡温度)は高い方が望ましい。
【0101】
○:ポリ溜り(シーラント層および中間層がこぶ状に盛り上がった状態)や発泡の発生なし
△:シール部液漏れあり
×:ポリ溜りや発泡多い
[耐圧性:低温充填適性(最低耐圧温度)の評価]
耐圧テスター(小松製作所製)にて、横シール温度の異なる各液体充填小袋に100kgの荷重を1分間掛け、以下の基準で液体充填小袋の耐圧性を評価した、破袋、又は水洩れの発生しない最低温度で評価した。最低耐圧温度は低い方が望ましい。
【0102】
○:異常なし
△:半折部より液漏れあり
×:横シールの後退発生
【0103】
【0104】
表2から明らかな通り、本発明に係る積層体は、中間層材料として本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(X)を使用しているため、充填可能温度領域が広く、優れた液体の高速充填性を示した。比較例1、2、3では、中間層材料として条件(x3)を満たさないことで、充填可能温度領域が実施例1に比較して狭くなった。