(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】インピーダンス整合装置及びインピーダンス整合方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20220714BHJP
H03H 7/38 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H03H7/38 B
(21)【出願番号】P 2018245076
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】森井 龍哉
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-082332(JP,A)
【文献】国際公開第2018/062109(WO,A1)
【文献】特開2016-119671(JP,A)
【文献】特開2009-130881(JP,A)
【文献】特開2009-065023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00-1/54
H03H 7/38
H03H 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電源と負荷との間に設けられ、前記高周波電源の出力端又は該出力端と同等の箇所から前記負荷側を見たインピーダンスに関する情報を取得して、該高周波電源と負荷とのインピーダンスの整合を図るインピーダンス整合装置であって、
キャパシタ及び半導体スイッチの直列回路が複数並列に接続された可変キャパシタと、
取得した前記インピーダンスに関する情報を用いて前記負荷側のインピーダンス又は反射係数を算出する算出部と、
該算出部が算出したインピーダンス又は反射係数を用いて、前記可変キャパシタに含まれる前記半導体スイッチがとるべきオン/オフの状態を決定し、決定した状態に基づいて前記半導体スイッチをオン/オフする制御部と
を備え、
該制御部は、前記半導体スイッチの一部と他の一部とで、オン/オフ何れかに制御するタイミングを異ならせるインピーダンス整合装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記半導体スイッチ毎にオン/オフするタイミングを所定時間だけ異ならせる請求項1に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記半導体スイッチのオン/オフの状態を記憶し、
記憶したオン/オフの状態及び決定したオン/オフの状態に基づいて、オン/オフの状態を変化させるべき半導体スイッチを抽出し、
抽出した半導体スイッチの一部と他の一部とで、オン/オフするタイミングを異ならせる
請求項1又は請求項2に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項4】
前記可変キャパシタに含まれる前記キャパシタの一部又は全部は、キャパシタンスの大きさが段階的に異なっている請求項1から請求項3の何れか1項に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記キャパシタのキャパシタンスの大きさの降順又は昇順に、対応する半導体スイッチをオン/オフする請求項4に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項6】
高周波電源と負荷との間に設けられる可変キャパシタによって、前記高周波電源と負荷とのインピーダンスの整合を図るインピーダンス整合方法であって、
前記可変キャパシタは、キャパシタ及び半導体スイッチの直列回路が複数並列に接続されており、
前記高周波電源の出力端又は該出力端と同等の箇所から前記負荷側を見たインピーダンスに関する情報を取得し、
取得した前記インピーダンスに関する情報を用いて前記負荷側のインピーダンス又は反射係数を算出し、
算出したインピーダンス又は反射係数を用いて、前記可変キャパシタに含まれる前記半導体スイッチがとるべきオン/オフの状態を決定し、
決定した状態に基づいて前記半導体スイッチをオン/オフする場合、前記半導体スイッチの一部と他の一部とで、オン/オフ何れかに制御するタイミングを異ならせるインピーダンス整合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電源と負荷とのインピーダンスを整合させるインピーダンス整合装置及びインピーダンス整合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置等のインピーダンスが変動する負荷に対して高周波電源から電力を供給する場合、負荷に効率良く電力を供給するために、高周波電源の出力インピーダンスと、高周波電源から負荷側を見たインピーダンスとを整合させるインピーダンス整合装置が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のインピーダンス整合装置は、キャパシタとPIN(P-Intrinsic-N )ダイオードである半導体スイッチとの直列回路が複数並列に接続された可変キャパシタを含み、高周波電源と負荷との間に設けられている。特許文献1のインピーダンス整合装置は、制御器の制御信号で半導体スイッチを断続(オン/オフ)することにより、可変キャパシタのキャパシタンスを調整してインピーダンスを整合させるようになっている。
【0004】
PINダイオードのように両端の電極に直流電圧を印加して高周波信号のスイッチングを制御する半導体スイッチを用いる場合、高周波信号が印加される電極から直流電圧の印加回路を高周波的に分離するために、チョークコイル(インダクタ)が用いられる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-142285号公報
【文献】特開2010-103123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の可変キャパシタに含まれる各PINダイオードを夫々に対応するチョークコイルで制御器から高周波的に分離する場合、各チョークコイルの配置によっては、互いに電磁結合してPINダイオードの電極にノイズが重畳される。特に、複数のPINダイオードを同時にオン/オフ何れかに制御した場合、PINダイオードのオン/オフ動作が不安定になる現象が観測されることがある。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高周波信号をスイッチングする半導体スイッチのノイズに起因する不安定なオン/オフ動作を防止することが可能なインピーダンス整合装置及びインピーダンス整合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るインピーダンス整合装置は、高周波電源と負荷との間に設けられ、前記高周波電源の出力端又は該出力端と同等の箇所から前記負荷側を見たインピーダンスに関する情報を取得して、該高周波電源と負荷とのインピーダンスの整合を図るインピーダンス整合装置であって、キャパシタ及び半導体スイッチの直列回路が複数並列に接続された可変キャパシタと、取得した前記インピーダンスに関する情報を用いて前記負荷側のインピーダンス又は反射係数を算出する算出部と、該算出部が算出したインピーダンス又は反射係数を用いて、前記可変キャパシタに含まれる前記半導体スイッチがとるべきオン/オフの状態を決定し、決定した状態に基づいて前記半導体スイッチをオン/オフする制御部とを備え、該制御部は、前記半導体スイッチの一部と他の一部とで、オン/オフ何れかに制御するタイミングを異ならせる。
【0009】
本開示の一態様に係るインピーダンス整合方法は、高周波電源と負荷との間に設けられる可変キャパシタによって、前記高周波電源と負荷とのインピーダンスの整合を図るインピーダンス整合方法であって、前記可変キャパシタは、キャパシタ及び半導体スイッチの直列回路が複数並列に接続されており、前記高周波電源の出力端又は該出力端と同等の箇所から前記負荷側を見たインピーダンスに関する情報を取得し、取得した前記インピーダンスに関する情報を用いて前記負荷側のインピーダンス又は反射係数を算出し、算出したインピーダンス又は反射係数を用いて、前記可変キャパシタに含まれる前記半導体スイッチがとるべきオン/オフの状態を決定し、決定した状態に基づいて前記半導体スイッチをオン/オフする場合、前記半導体スイッチの一部と他の一部とで、オン/オフ何れかに制御するタイミングを異ならせる。
【0010】
本態様にあっては、キャパシタ及び半導体スイッチの直列回路が複数並列に接続された可変キャパシタが高周波電源と負荷との間に設けられており、高周波電源の出力端又は該出力端と同等の箇所から負荷側を見たインピーダンス又は反射係数に関する情報を外部から取得し、取得した情報を用いて現在の負荷側のインピーダンス又は反射係数を算出する。なお、高周波電源の出力端と同等の箇所とは、例えば、インピーダンス整合装置の入力端である。負荷側のインピーダンスを算出した場合は、調整後の負荷側のインピーダンスが高周波電源の出力インピーダンスに近づくように可変キャパシタのキャパシタンスを調整すべく、各半導体スイッチがとるべきオン/オフ状態を決定する。一方、反射係数を算出した場合は、実際の反射係数が0に近づくように可変キャパシタのキャパシタンスを調整すべく、各半導体スイッチがとるべきオン/オフ状態を決定する。その後、決定したオン/オフ状態に一致させるべく各半導体スイッチの実際のオン/オフ状態を新たにオン又はオフに調整する場合、全ての半導体スイッチの一部と他の一部とで、オン/オフ何れかに制御するタイミングに時間差を設ける。これにより、例えば装置内における配置関係に起因してオン/オフの制御時に不安定な動作に至る可能性がある半導体スイッチ同士で、オン/オフ何れかに制御されるタイミングが一致しないようになる。
【0011】
本発明の一態様に係るインピーダンス整合装置は、前記制御部は、前記半導体スイッチ毎にオン/オフするタイミングを所定時間だけ異ならせる。
【0012】
本態様にあっては、全ての半導体スイッチについて、オン/オフ何れかに制御するタイミングに順次所定の時間差を設ける。これにより、どの2つの半導体スイッチについても同時にオン/オフに制御されることがなく、制御が干渉し合うことが防止される。
【0013】
本発明の一態様に係るインピーダンス整合装置は、前記制御部は、前記半導体スイッチのオン/オフの状態を記憶し、記憶したオン/オフの状態及び決定したオン/オフの状態に基づいて、オン/オフの状態を変化させるべき半導体スイッチを抽出し、抽出した半導体スイッチの一部と他の一部とで、オン/オフするタイミングを異ならせる。
【0014】
本態様にあっては、各半導体スイッチの現在のオン/オフ状態を記憶しておき、記憶したオン/オフ状態と決定したオン/オフ状態とを比較することによって、オン/オフ状態を変化させるべき半導体スイッチを抽出する。そして、抽出した半導体スイッチの一部と他の一部とで、オン/オフ何れかに制御するタイミングに時間差を設ける。これにより、オン/オフ状態が変化する半導体スイッチのみについて、オン/オフの制御に時間差が設けられるため、オン/オフ状態が変化する半導体スイッチが少ない場合は、状態の変更に要する総時間が短縮される。
【0015】
本発明の一態様に係るインピーダンス整合装置は、前記可変キャパシタに含まれる前記キャパシタの一部又は全部は、キャパシタンスの大きさが段階的に異なっている。
【0016】
本態様にあっては、可変キャパシタに含まれるキャパシタの少なくとも一部は、キャパシタンスの大きさが段階的に異なる。このため、並列的に接続されるキャパシタの組み合わせによるキャパシタンスの調整範囲を比較的大きくすることができる。
【0017】
本発明の一態様に係るインピーダンス整合装置は、前記制御部は、前記キャパシタのキャパシタンスの大きさの降順又は昇順に、対応する半導体スイッチをオン/オフする。
【0018】
本態様にあっては、可変キャパシタに含まれるキャパシタのうち、キャパシタンスの大きさが大きいものから対応する半導体スイッチをオン/オフに制御するか、又はキャパシタンスの大きさが小さいものから対応する半導体スイッチをオン/オフに制御する。キャパシタンスが大きいものから対応する半導体スイッチをオン/オフに制御した場合は、可変キャパシタのキャパシタンスの大きさが目標のキャパシタンスに向けて収束するように調整される。キャパシタンスが小さいものから対応する半導体スイッチをオン/オフに制御した場合は、目標のキャパシタンスの変動が小さい領域にて、可変キャパシタのキャパシタンスの大きさが目標のキャパシタンスに向けて速やかに調整される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高周波信号をスイッチングする半導体スイッチのノイズに起因する不安定なオン/オフ動作を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態1に係るインピーダンス整合装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態1に係るインピーダンス整合装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図4】負荷側のインピーダンスを算出して平均化するFPGAの処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】インピーダンスの整合演算を行うCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態1に係るインピーダンス整合装置で半導体スイッチのオン/オフを切り換えるCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態2に係るインピーダンス整合装置における駆動回路の配置例を模式的に示す説明図である。
【
図8】実施形態2に係るインピーダンス整合装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図9】実施形態2に係るインピーダンス整合装置で半導体スイッチのオン/オフを切り換えるCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るインピーダンス整合装置100の構成例を示すブロック図である。インピーダンス整合装置100は、高周波電力を出力する高周波電源5及び高周波電力を消費する負荷7の間に設けられている。高周波電源5及びインピーダンス整合装置100の間には、高周波電力を通過させると共に高周波電圧等のパラメータを検出する高周波検出部6が接続されている。即ち、高周波検出部6は、高周波電源5の出力端と、インピーダンス整合装置100の入力端との間に介在してある。高周波検出部6がインピーダンス整合装置100に含まれていてもよい。
【0022】
高周波電源5は、例えば2MHz、13.56MHz、27MHz、60MHz等の工業用のRF帯(Radio Frequency)の高周波電力を出力する交流電源であり、出力インピーダンスは、例えば50Ω等の規定の値に設定されている。高周波電源5は、インバータ回路(図示せず)を含み、該インバータ回路をスイッチング制御することにより、高周波の交流電力を生成する。
【0023】
高周波検出部6は、高周波電源5の出力端又は当該出力端と同等の箇所であるインピーダンス整合装置1の入力端から負荷7側を見た(以下、単に負荷7側を見た、又は負荷7側のと言う)インピーダンスを算出するためのパラメータ又は負荷7側を見た反射係数を算出するためのパラメータ(インピーダンスに関する情報に相当)を検出する。負荷7側を見たインピーダンスは、負荷7のインピーダンスと、インピーダンス整合装置100との合成インピーダンスである。具体的には、高周波検出部6は、自身の位置における高周波電圧と、高周波電流と、高周波電圧と高周波電流との位相差とをパラメータとして検出する。又は、高周波検出部6は、負荷7に向かう高周波の進行波電力(又は進行波電圧)と負荷7から反射されて戻ってくる反射波電力(又は反射波電圧)とをパラメータとして検出する。これらの検出されたパラメータを用いて、後述する算出部2が周知の方法によって負荷7側のインピーダンス又は反射係数を算出する。
【0024】
負荷7は、高周波電源5から供給される高周波電力を用いて各種処理を行うものであり、例えば、プラズマ処理装置及び非接触電力伝送装置が挙げられる。プラズマ処理装置では、プラズマエッチング、プラズマCVD等の製造プロセスの進行に伴い、プラズマの状態が時々刻々と変化する。これにより、負荷7のインピーダンスが変動する。
【0025】
インピーダンス整合装置100は、キャパシタンスが可変の可変キャパシタ1と、高周波検出部6から上記パラメータを取得して、負荷7側のインピーダンス又は反射係数を算出する算出部2と、該算出部2が算出したインピーダンス又は反射係数を用いて、可変キャパシタ1のキャパシタンスを制御する制御部3とを備える。インピーダンス整合装置100は、更に、可変キャパシタ1が有する後述の半導体スイッチをオン/オフに設定するスイッチ状態設定部4を備え、制御部3がスイッチ状態設定部4を介して可変キャパシタ1のキャパシタンスを制御するようになっている。
【0026】
インピーダンス整合装置100では、高周波検出部6へ延伸する伝送路101と、インダクタL1側の一端が負荷7に接続されたキャパシタC1及びインダクタL1の直列回路とが縦続接続されている。可変キャパシタ1は、実質的に2端子の回路であり、一端が伝送路101に、他端が接地電位に接続されている。即ち、可変キャパシタ1とキャパシタC1及びインダクタL1の直列回路とは、L型の整合回路を構成する。キャパシタC1を他の可変キャパシタ1と置き換えてもよい。
【0027】
ここでは、上記の整合回路がL型である場合について説明したが、逆L型であってもよいし、T型又はπ型であってもよい。更に、キャパシタC1及びインダクタL1の直列回路は、インピーダンス整合装置100の外側(即ち、インピーダンス整合装置100及び負荷7の間)に接続されていてもよい。以下では、高周波検出部6から伝送路101に高周波電力が入力される部位を入力部と言う。また、インダクタL1から負荷7に高周波電力が出力される部位を出力部と言う。
【0028】
可変キャパシタ1は、一端同士が伝送路101に接続されたキャパシタ11,12,・・18と、各アノードがキャパシタ11,12,・・18夫々の他端に接続されたPINダイオードである半導体スイッチ21,22,・・28と、駆動回路31,32,・・38とを有する。半導体スイッチ21,22,・・28の他端であるカソードは、接地電位に接続されている。駆動回路31,32,・・38夫々の出力端子Out(後述の
図2参照)は、キャパシタ11,12,・・18と半導体スイッチ21,22,・・28との接続点に各別に接続されている。キャパシタ11,12,・・18の数、半導体スイッチ21,22,・・28の数及び駆動回路31,32,・・38の数は8つに限定されない。
【0029】
図2は、駆動回路31の構成例を示す回路図である。他の駆動回路32,33,・・38についても同様である。駆動回路31は、ドレインがプラス電源V+に接続されたNチャネル型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor :以下トランジスタと言う)QHと、ソースがマイナス電源V-に接続されたNチャネル型のトランジスタQLとを有する。トランジスタQHのソース及びトランジスタQHのドレインの間には、抵抗器R及びスピードアップコンデンサSCの並列回路が接続されている。トランジスタQH及びQLは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor )等の他のスイッチング素子であってもよい。
【0030】
駆動回路31は、更に、トランジスタQLのドレイン及び接地電位の間に接続されたキャパシタFCと、トランジスタQLのドレイン及び出力端子Outの間に接続されたインダクタFLとを含むL型のフィルタFを有する。トランジスタQHのゲート及びトランジスタQLのゲートには、スイッチ状態設定部4からハイレベル及びロウレベルの相補的な駆動信号が印加される。ハイレベルの駆動信号の電圧は、例えばプラス電源V+の電圧と同等であればよい。ロウレベルの駆動信号の電圧は、例えばマイナス電源V-の電圧と同等であればよい。
【0031】
トランジスタQLのゲートにロウレベル(Lowレベル)の駆動信号が印加され、トランジスタQHのゲートにハイレベル(Highレベル)の駆動信号が印加された場合、トランジスタQLがオフとなり、トランジスタQHがオンとなる。これにより、プラス電源V+からトランジスタQH、抵抗器R及びスピードアップコンデンサSC、並びにフィルタFに含まれるインダクタFLを介して半導体スイッチ21に順方向電流が流れ、半導体スイッチ21がオン状態となる。この結果、キャパシタ11のキャパシタンスが、可変キャパシタ1全体のキャパシタンスに含まれることとなる。
【0032】
一方、トランジスタQHのゲートにロウレベルの駆動信号が印加され、トランジスタQLのゲートにハイレベルの駆動信号が印加された場合、トランジスタQHがオフとなり、トランジスタQLがオンとなる。これにより、マイナス電源V-からトランジスタQL及びインダクタFLを介して半導体スイッチ21のアノードに逆方向の電圧が印加され、半導体スイッチ21がオフ状態となる。この結果、キャパシタ11のキャパシタンスが、可変キャパシタ1全体のキャパシタンスに含まれなくなる。以上のようにして、可変キャパシタ1のキャパシタンスが調整される。
【0033】
図1に戻って、本実施形態1では、キャパシタ11,12,・・18の一部又は全部のキャパシタンスが、段階的に大きくなるようにしてある。より具体的には、キャパシタ11のキャパシタンスをCminとした場合、キャパシタ11,12,・・18のキャパシタンスが、Cmin×2
i-1 (i=1,2,・・8)で表されるようにすることが好ましい。このようにすることにより、可変キャパシタ1のキャパシタンスを、Cmin刻みで2
8 通りの大きさに設定することができる。
【0034】
算出部2は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array )を含んでなり、高周波検出部6から、負荷7側のインピーダンスを算出するためのパラメータ又は負荷7側の反射係数を算出するためのパラメータを取得する。算出部2は、取得したこれらのパラメータを用いて、負荷7側のインピーダンス又は反射係数を算出して平均化し、平均化したインピーダンス又は反射係数を制御部3に向けて出力する。
【0035】
制御部3は、不図示のCPU(Central Processing Unit )を有し、予めROM(Read Only Memory )に記憶された制御プログラムに従って各部の動作を制御すると共に、入出力、演算、時間の計測等の処理を行う。CPUによる各処理の手順を定めたコンピュータプログラムを、不図示の手段を用いて予めRAM(Random Access Memory )にロードし、ロードされたコンピュータプログラムをCPUで実行するようにしてもよいし、制御部3をマイクロコンピュータ又は専用のハードウェア回路で構成してもよい。
【0036】
制御部3は、算出部2で算出された負荷7側のインピーダンス又は反射係数を取り込む。負荷7側のインピーダンスを取り込んだ場合、制御部3は、負荷7側のインピーダンスを高周波電源5の出力インピーダンスに整合させるべく、可変キャパシタ1のキャパシタ11,12,・・18の組み合わせを決定する。一方、負荷7側の反射係数を取り込んだ場合、制御部3は、入力部における反射係数を0に近づけるべく、可変キャパシタ1のキャパシタ11,12,・・18の組み合わせを決定する。反射係数の大きさが、許容範囲内になれば整合したと見做す。このような制御により、高周波電源5から負荷7に効率よく電力が供給される。以下では、算出部2にて負荷7側のインピーダンスを算出し、算出されたインピーダンスを用いて、制御部3が可変キャパシタ1のキャパシタンスを算出してキャパシタ11,12,・・18の組み合わせを決定するものとして説明する。決定されたキャパシタ11,12,・・18の組み合わせは、半導体スイッチ21,22,・・28がとるべきオン/オフ状態に対応している。
【0037】
スイッチ状態設定部4は、制御部3が決定したキャパシタ11,12,・・18の組み合わせ、即ち半導体スイッチ21,22,・・28がとるべきオン/オフ状態に応じて、制御部3から半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフ状態が設定される。スイッチ状態設定部4に半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフ状態が設定された場合、対応する駆動回路31,32,・・38夫々に対して、上述の相補的な駆動信号が印加される。これにより、可変キャパシタ1の半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフ状態が新たに制御される。そして、可変キャパシタ1のキャパシタンスは、制御部3が算出したキャパシタンスに調整される。
【0038】
次に、インピーダンス整合装置100全体の動作の流れについて説明する。
図3は、実施形態1に係るインピーダンス整合装置100の動作を示すタイミングチャートである。
図3に示す4つのタイミングチャートは、何れも同一の時間軸(t)を横軸にしてあり、上段から順に、半導体スイッチ21,22,・・28の設定、負荷7側のインピーダンスの算出・平均化、インピーダンス更新フラグのセット/クリア、及びインピーダンスの整合演算夫々を行うタイミングを模式的に示す。図中のB1~B7は、半導体スイッチ21,22,・・28のビット番号を表す。
【0039】
本実施形態1に係るインピーダンス整合装置100では、
図3の全体に示すシーケンスが、例えば1msに1回ずつ周期的に出現するが、シーケンスの周期が1msに限定されるものではない。この1msの間に、可変キャパシタ1のキャパシタンスが1回算出され、算出されたキャパシタンスに基づいて、半導体スイッチ21,22,・・28の各ビットがオン又はオフに設定される。
図3に示すタイミングチャートに対応する動作のうち、インピーダンスの算出・平均化及びインピーダンス更新フラグのセット/クリアは、算出部2に含まれるFPGA(以下、単にFPGAと言う)が実行し、その他2つのタイミングチャートに対応する動作は、制御部3が有するCPU(以下、単にCPUと言う)が実行する。
【0040】
時刻t0からt8にわたって行われる半導体スイッチ21,22,・・28の設定は、時刻t0の1ms前に始まる1つ前の周期で決定されたオン/オフ状態に合わせてCPUが時間T1毎に実行するものである。ここでは、最上位ビットである半導体スイッチ28からビット番号の降順に半導体スイッチ21,22,・・28が設定されるが、最下位ビットである半導体スイッチ21からビット番号の昇順に設定されてもよい。半導体スイッチ21,22,・・28の設定は、夫々時間T1の間の初期に行われる。時間T1の長さは、例えば最短で4μsである。CPUは、FPGAに対してマスク信号を与えており、時刻t7で実行した半導体スイッチ21(B1に対応)の設定が完了したときにマスク信号をオフにする。
【0041】
一方のFPGAは、CPUから与えられるマスク信号をセンスしており、マスク信号がオフになったときから、負荷7側のインピーダンスの算出・平均化を開始するまでの間に時間T2だけインターバルを設ける。時間T2の長さは、例えば30μsである。このインターバルは、時刻t7の直後に実行された半導体スイッチ21の設定によって、負荷7側のインピーダンスが安定化するまで待機する時間である。
【0042】
時刻t9で上記のインターバルが終了した場合、FPGAは、時間T3の間に高周波検出部6から負荷7側のインピーダンスを算出するためのパラメータを複数回にわたって取得し、取得する毎に負荷7側のインピーダンスを算出して平均化する。時間T3の長さは、例えば15μsである。時刻t10で最初の算出・平均化が終了した場合、FPGAは、CPUが時刻t0より前にクリアしたインピーダンスの更新フラグを1にセットする。以後、時刻t10及びt11夫々から始まる時間T3の間に、FPGAは負荷7側のインピーダンスの算出・平均化を繰り返す。この算出・平均化は、CPUによってマスク信号がオンされるまで繰り返される。
【0043】
他方のCPUは、FPGAによってセットされるインピーダンスの更新フラグをセンスしており、更新フラグが0にクリアされている間は、整合演算を行わない。時刻t12でインピーダンス更新フラグが1にセットされているのをセンスした場合、CPUは、インピーダンスの整合演算を行い、整合演算が終了した時刻t13にインピーダンス更新フラグを0にクリアすると共に、FPGAに与えるマスク信号をオンにする。ここでの整合演算とは、FPGAから平均化された負荷7側のインピーダンスを取り込み、負荷7側のインピーダンスを高周波電源5の出力インピーダンスに整合させるべく、可変キャパシタ1のキャパシタンスを算出して、半導体スイッチ21,22,・・28がとるべきオン/オフ状態を決定する処理である。
【0044】
以下では、上述した算出部2及び制御部3の動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。
図4は、負荷7側のインピーダンスを算出して平均化するFPGAの処理手順を示すフローチャートである。
図5は、インピーダンスの整合演算を行うCPUの処理手順を示すフローチャートである。
図6は、実施形態1に係るインピーダンス整合装置100で半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフを切り換えるCPUの処理手順を示すフローチャートである。
図4の処理は、例えば1msより十分短い間隔をおいて開始され、FPGAによって実行される。
図5及び
図6の処理は、例えば1ms毎に同時的に起動され、不図示のROMに予め格納されているコンピュータプログラムに従ってCPUにより実行される。
【0045】
図4及び
図5では、インピーダンス更新フラグを単に更新フラグと記載する。更新フラグの初期値は0である。
図4及び
図6では、マスク信号を単にマスクと記載する。マスク信号の初期値はオンである。
図5及び
図6では、半導体スイッチを単にスイッチと記載する。
図4における初回フラグは、インピーダンスを算出及び平均化する処理の初回であることを示すフラグである。
図6におけるjは、半導体スイッチ21,22,・・28のうち変化するビット数を記憶するためのものであり、kは、処理中のビット番号を記憶するためのものである。
【0046】
図4の処理が開始された場合、FPGAは、マスク信号がオンであるか否かを判定し(S11)、オンである場合(S11:YES)、マスク信号がオフとなるまで待機する。マスク信号がオフとなってマスクが外された場合(S11:NO)、FPGAは、初回フラグを1にセットし(S12)、不図示のタイマによる計時を開始する(S13)。その後、FPGAは、タイマの計時により時間T2が経過したか否かを判定し(S14)、経過していない場合(S14:NO)、時間T2が経過するまで待機する。この時間T2は上述のインターバルであり、例えば30μsの長さである。
【0047】
時間T2のインターバルが経過した場合(S14:YES)、FPGAは、タイマによる計時を開始しておき(S15)、高周波検出部6からインピーダンスに関する情報、即ち負荷7側のインピーダンスを算出するためのパラメータを取得する(S16)。次いで、FPGAは、取得したパラメータを用いて負荷7側のインピーダンスを算出し(S17)、算出したインピーダンスを逐次平均化する(S18)。インピーダンスの1回の算出は、例えば100ns以下の時間内に終了する。その後、FPGAは、タイマの計時により時間T3が経過したか否かを判定し(S19)、経過していない場合(S19:NO)、ステップS16に処理を移す。この時間T3は、例えば15μsの長さである。
【0048】
時間T3が経過した場合(S19:YES)、FPGAは、平均化した負荷7側のインピーダンス(より具体的には、インピーダンスを示すデータ)をCPUに向けて出力する(S20)。その後、FPGAは、初回フラグが1にセットされているか否かを判定し(S21)、1にセットされている場合(S21:YES)、即ち、最初にインピーダンスの算出及び平均化を終えた場合、FPGAは、インピーダンス更新フラグを1にセットする(S22)と共に、初回フラグを0にクリアする(S23)。
【0049】
ステップS23の処理を終えた場合、又はステップS21で初回フラグが1にセットされていなかった場合(S21:NO)、FPGAは、マスク信号がオンであるか否かを判定し(S24)、依然としてオンではない場合(S24:NO)、負荷7側のインピーダンスの算出及び平均化を繰り返すために、ステップS15に処理を移す。一方、マスク信号がオンとなって再びマスクされた場合(S24:YES)、FPGAは、
図4の処理を終了する。
【0050】
なお、ステップS16で反射係数を算出するためのパラメータを取得し、ステップS17で負荷側を見た反射係数を算出し、ステップS18で反射係数を平均化し、ステップS20で平均化した反射係数を出力するようにしてもよい。
【0051】
図5の処理が起動された場合、CPUは、インピーダンス更新フラグが1にセットされているか否かを判定し(S31)、1にセットされていない場合(S31:NO)、1にセットされるまで待機する。これに対し、インピーダンス更新フラグが1にセットされている場合(S31:YES)、CPUは、算出部2から平均化されたインピーダンスを取り込み(S32)、負荷7側のインピーダンスを高周波電源5の出力インピーダンスに整合させるべく、可変キャパシタ1のキャパシタンスを算出する(S33)。次いで、CPUは、可変キャパシタ1のキャパシタンスが算出したキャパシタンスとなるように、半導体スイッチ21,22,・・28がとるべきオン/オフ状態を決定する(S34)。その後、CPUは、更新フラグを0にクリアし(S35)、マスク信号をオンにして(S36)
図5の処理を終了する。
【0052】
なお、
図4に示す処理によって反射係数が出力される場合は、
図5のステップS32で平均化された反射係数を取り込み、S33では負荷7側を見た反射係数を0に近づけるべく、可変キャパシタ1のキャパシタンスを算出すればよい。
【0053】
図6の処理が起動された場合、CPUは、1周期前の処理で不図示のRAMに記憶した半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフ状態を読み出し(S41)、
図5のステップS34で決定したオン/オフ状態と比較する(S42)。次いで、CPUは、比較結果に基づいて、オンからオフに又はオフからオンに変化するビットを抽出する(S43)と共に、変化するビット数をjに代入する(S44)。更に、CPUは、jが0であるか否か、即ち変化するビットが無いか否かを判定し(S45)、jが0である場合(S45:YES)、マスク信号をオフするために後述するステップS55に処理を移す。一方、jが0ではない場合(S45:NO)、CPUは、kを8に初期化する(S46)。
【0054】
その後、CPUは、半導体スイッチ21,22,・・28のうちのk番目のビットであるBkが、オンからオフに又はオフからオンに変化するビットであるか否かを判定する(S47)。Bkが変化するビットではない場合(S47:NO)、CPUは、変化するビットをサーチするために、後述するステップS53に処理を移す。一方、Bkが変化するビットである場合(S47:YES)、CPUは、不図示のタイマによる計時を開始しておき(S48)、Bkに対応するk番目の半導体スイッチについて実際にオン/オフを切り換える(S49)。
【0055】
その後、CPUは、jを1だけデクリメントし(S50)、jが0であるか否か、即ち変化する残りのビット数が0であるか否かを判定する(S51)。jが0ではない場合(S51:NO)、CPUは、タイマの計時により時間T1が経過したか否かを判定し(S52)、経過していない場合(S52:NO)、時間T1が経過するまで待機する。この時間T1は、前述のとおり最短で4μsであり、半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフ状態を1ビットずつ制御する場合の時間差となる。時間T1が経過した場合(S52:YES)、CPUは、kを1だけデクリメントした(S53)後、変化するビットを更にサーチするために、ステップS47に処理を移す。
【0056】
ステップS51でjが0である場合(S51:YES)、即ち変化する残りのビット数が0となった場合、CPUは、切り換え後の半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフ状態を記憶し(S54)、更にマスク信号をオフして(S55)
図6の処理を終了する。ここで記憶したオン/オフ状態は、次の1周期におけるステップS41で読み出されることとなる。なお、ステップS54で記憶した切り換え後のオン/オフ状態は、
図5のステップS34で決定したオン/オフ状態と一致する。
【0057】
上述の
図6に示すフローチャートでは、半導体スイッチ21,22,・・28のうち、オンからオフに又はオフからオンに変化するビットを抽出し、抽出したビットのみについて半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフを切り換えたが、これに限定されるものではない。例えば、半導体スイッチ21,22,・・28の各ビットが変化するか否かに関わらず、全てのビットについて半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフを新たに設定してもよい。
【0058】
具体的には、
図6に示す各ステップのうち、S41-43、S45及びS47を削除し(次の番号のステップに移るようにする)、ステップS44でjに8(総ビット数)を代入し、ステップS49でBkに対応するk番目の半導体スイッチについてオン/オフを新たに設定すればよい。
【0059】
以上のように本実施形態1によれば、キャパシタ11及び半導体スイッチ21の直列回路と、キャパシタ12及び半導体スイッチ22の直列回路と、・・キャパシタ18及び半導体スイッチ28の直列回路とが並列に接続された可変キャパシタ1が高周波電源5と負荷7との間に設けられている。そして、高周波電源5の出力端又はインピーダンス整合装置の入力端から負荷7側を見たインピーダンスに関するパラメータを高周波検出部6から取得し(ステップS16)、取得したパラメータを用いて、現在の負荷7側のインピーダンス又は反射係数を算出する(ステップS17)。負荷7側のインピーダンスを算出した場合は、調整後の負荷7側のインピーダンスが高周波電源5の出力インピーダンスに近づくように可変キャパシタ1のキャパシタンスを調整すべく、半導体スイッチ21,22,・・28がとるべきオン/オフ状態を決定する(ステップS34)。一方、反射係数を算出した場合は、実際の反射係数が0に近づくように可変キャパシタ1のキャパシタンスを調整すべく、半導体スイッチ21,22,・・28がとるべきオン/オフ状態を決定する。その後、決定したオン/オフ状態に一致させるべく半導体スイッチ21,22,・・28の実際のオン/オフ状態を新たにオン又はオフに調整する場合(ステップS49)、全ての半導体スイッチ21,22,・・28の隣り合うビット同士(一部と他の一部に相当)で、オン/オフ何れかに制御するタイミングについて時間差を設ける(ステップS52)。これにより、例えばインピーダンス整合装置100内における各インダクタFLの配置関係に起因してオン/オフの制御時に不安定な動作に至る可能性がある半導体スイッチ21,22,・・28同士で、オン/オフ何れかに制御されるタイミングが一致しないようになる。従って、高周波信号をスイッチングする半導体スイッチ21,22,・・28のノイズに起因する不安定なオン/オフ動作を防止することが可能となる。
【0060】
また、実施形態1によれば、全ての半導体スイッチ21,22,・・28について、オン/オフ何れかに制御するタイミングに順次時間T1の時間差を設ける(ステップS52)。従って、どの2つの半導体スイッチについても同時にオン/オフに制御されることがないため、制御が干渉し合うのを防止することができる。
【0061】
更に、実施形態1によれば、半導体スイッチ21,22,・・28の現在のオン/オフ状態を記憶しておき(ステップS54)、記憶したオン/オフ状態と決定したオン/オフ状態とを比較することによって(ステップS42)、オン/オフ状態を変化させるべき半導体スイッチを抽出する(ステップS43)。そして、抽出した半導体スイッチの一部と他の一部とで、オン/オフ何れかに制御するタイミングに時間差を設ける(ステップS52)。これにより、オン/オフ状態が変化する半導体スイッチのみについて、オン/オフの制御に時間差が設けられるため、オン/オフ状態が変化する半導体スイッチが少ない場合は、状態の変更に要する総時を短縮することができる。
【0062】
更に、実施形態1によれば、可変キャパシタ1に含まれるキャパシタ11,12,・・18の少なくとも一部は、キャパシタンスの大きさが段階的に異なる。従って、並列的に接続されるキャパシタ11,12,・・18の組み合わせによるキャパシタンスの調整範囲を比較的大きくすることができる。
【0063】
更に、実施形態1によれば、可変キャパシタ1に含まれるキャパシタ11,12,・・18のうち、キャパシタンスの大きさが最も大きい最上位ビットから半導体スイッチ21,22,・・28をオン/オフに制御するか、又はキャパシタンスの大きさが最も小さい最下位ビットから半導体スイッチ21,22,・・28をオン/オフに制御する。最上位ビットから半導体スイッチ21,22,・・28をオン/オフに制御した場合は、可変キャパシタ1のキャパシタンスの大きさが目標のキャパシタンスに向けて収束するように調整することができる。最下位ビットから半導体スイッチ21,22,・・28をオン/オフに制御した場合は、目標のキャパシタンスの変動が小さい領域にて、可変キャパシタ1のキャパシタンスの大きさを目標のキャパシタンスに向けて速やかに調整することができる。
【0064】
(実施形態2)
実施形態1は、最上位ビット又は最下位ビットから時間T1の時間差で半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフを順次切り換え又は設定する形態であるのに対し、実施形態2は、奇数ビットと偶数ビットに分けて半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフを切り換え又は設定する形態である。実施形態2に係るインピーダンス整合装置のブロック構成は、実施形態1の場合と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0065】
図7は、実施形態2に係るインピーダンス整合装置100における駆動回路31,32,・・38の配置例を模式的に示す説明図である。ビット番号がB1からB4までの半導体スイッチ21,22,23,24夫々を駆動する駆動回路31,32,33,34は、ビット番号の昇順に縦一列に配置されている。また、ビット番号がB5からB8までの半導体スイッチ25,26,27,28夫々を駆動する駆動回路35,36,37,38は、ビット番号の昇順に縦一列に配置されている。これら二列の駆動回路31,32,33,34及び駆動回路35,36,37,38は、略平行に配置されている。
【0066】
上記のような配置の場合、隣り合うビット番号(B1とB2、B2とB3、B3とB4、B5とB6、B6とB7、B7とB8)に対応する駆動回路の間で、インダクタFL,FL同士が干渉する場合がある。なお、配置された列(B1-B4の列とB5-B8の列)が異なる駆動回路の間では、インダクタFL,FL同士が干渉しないものとしてよい。そこで、本実施形態2では、奇数ビットの半導体スイッチ21,23,25,27と偶数ビットの半導体スイッチ22,24,26,28とを時間T1の時間差でオン/オフに切り換え又は設定する。
【0067】
図8は、実施形態2に係るインピーダンス整合装置100の動作を示すタイミングチャートである。
図8に示す4つのタイミングチャートは、何れも同一の時間軸(t)を横軸にしてあり、上段から順に、半導体スイッチ21,22,・・28の設定、負荷7側のインピーダンスの算出・平均化、インピーダンス更新フラグのセット/クリア、及びインピーダンスの整合演算夫々を行うタイミングを模式的に示す。
図8に示すタイミングチャートに対応する動作を実行する主体(算出部2のFPGA及び制御部3のCPU)は、実施形態1の場合と同様である。
【0068】
時刻t20からt22にわたって行われる半導体スイッチ21,22,・・28の設定は、時刻t20の1ms前に始まる1つ前の周期で決定されたオン/オフ状態に合わせてCPUが時間T1毎に実行するものである。ここでは、奇数ビットの半導体スイッチ21,23,25,27が先に、偶数ビットの半導体スイッチ22,24,26,28が後に設定されるが、偶数ビットの半導体スイッチ22,24,26,28が先に設定されてもよい。また、全ての半導体スイッチ21,22,・・28を任意の2つ以上のグループに分けておき、時間T1毎に順次グループ単位で半導体スイッチが設定されるようにしてもよい。
【0069】
CPUは、時刻t21で実行した偶数ビットの半導体スイッチ22,24,26,28の設定が完了したときにマスク信号をオフにする。一方のFPGAは、マスク信号がオフになったときから、負荷7側のインピーダンスの算出・平均化を開始するまでの間に時間T2だけインターバルを設ける。時刻t23で上記のインターバルが終了した場合、FPGAは、時間T3の間に高周波検出部6から負荷7側のインピーダンスを算出するためのパラメータを複数回にわたって取得し、取得する毎に負荷7側のインピーダンスを算出して平均化する。時刻t24で最初の算出・平均化が終了した場合、FPGAは、CPUが時刻t20より前にクリアしたインピーダンスの更新フラグを1にセットする。
【0070】
他方のCPUは、時刻t25から始まる演算周期の開始時点でインピーダンス更新フラグが1にセットされていた場合、インピーダンスの整合演算を行い、半導体スイッチ21,22,・・28がとるべきオン/オフ状態を決定して演算が終了した時刻t26にインピーダンス更新フラグを0にクリアする。上記以外のその他のタイミングについては、実施形態1の
図3に示す場合と同様である。
【0071】
以下では、上述した算出部2及び制御部3の動作のうち、半導体スイッチ21,22,・・28の設定を行う制御部3の動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。算出部2の動作及びインピーダンスの整合演算を行う制御部3の動作については、実施形態1の場合と同様であるため、ここでの説明を省略する。
図9は、実施形態2に係るインピーダンス整合装置100で半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフを切り換えるCPUの処理手順を示すフローチャートである。
図9の処理は、例えば1ms毎に起動され、制御部3のCPUにより実行される。
【0072】
図9の処理が起動された場合、CPUは、1周期前の処理で不図示のRAMに記憶した半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフ状態を読み出し(S61)、インピーダンスの整合演算にて時刻t26の直前に決定したオン/オフ状態と比較する(S62)。CPUは、更に、比較結果に基づいて、オンからオフに又はオフからオンに変化するビットを抽出する(S63)。
【0073】
その後、CPUは、半導体スイッチ21,22,・・28の奇数ビットの何れかに、オンからオフへ又はオフからオンへの変化が有るか否かを判定する(S64)。変化が有る場合(S64:YES)、CPUは、タイマによる計時を開始しておき(S65)、変化する奇数ビットの半導体スイッチについて実際にオン/オフを切り換える(S66)。
【0074】
その後、CPUは、半導体スイッチ21,22,・・28の偶数ビットの何れかに、オンからオフへ又はオフからオンへの変化が有るか否かを判定する(S67)。変化が有る場合(S67:YES)、CPUは、タイマの計時により時間T1が経過したか否かを判定し(S68)、経過していない場合(S68:NO)、時間T1が経過するまで待機する。この時間T1は、前述のとおり最短で4μsであり、半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフ状態を奇数ビットと偶数ビットとに分けて制御する場合の時間差となる。
【0075】
時間T1が経過した場合(S68:YES)、CPUは、変化する偶数ビットの半導体スイッチについて実際にオン/オフを切り換える(S69)。このステップS69の処理を終えた場合、又はステップS67で偶数ビットの何れにも変化が無い場合(S67:NO)、CPUは、切り換え後の半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフ状態を記憶し(S70)、更にマスク信号をオフして(S71)
図9の処理を終了する。ここで記憶したオン/オフ状態は、次の1周期におけるステップS61で読み出されることとなる。
【0076】
ステップS64で奇数ビットの何れにも変化が無い場合(S64:NO)、CPUは、半導体スイッチ21,22,・・28の偶数ビットの何れかに、オンからオフへ又はオフからオンへの変化が有るか否かを判定する(S72)。変化が有る場合(S67:YES)、CPUは、変化する偶数ビットの半導体スイッチについてオン/オフを切り換えるために、ステップS69に処理を移す。一方、遇すビットの何れにも変化が無い場合(S72:NO)、CPUは、マスク信号をオフするためにステップS71に処理を移す。
【0077】
上述の
図9に示すフローチャートでは、半導体スイッチ21,22,・・28のうち、オンからオフに又はオフからオンに変化するビットを抽出し、抽出したビットのみについて半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフを切り換えたが、これに限定されるものではない。例えば、半導体スイッチ21,22,・・28の各ビットが変化するか否かに関わらず、全ての奇数ビット及び偶数ビットについて半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフを新たに設定してもよい。
【0078】
具体的には、
図9に示す各ステップのうち、S61-64、S67及びS72を削除し(次の番号のステップに移るようにする)、ステップS66で奇数ビットの半導体スイッチ21,23,25,27についてオン/オフを新たに設定し、ステップS69で偶数ビットの半導体スイッチ22,24,26,28についてオン/オフを新たに設定すればよい。
【0079】
以上のように本実施形態2によれば、決定したオン/オフ状態に一致させるべく半導体スイッチ21,22,・・28の実際のオン/オフ状態を新たにオン又はオフに調整する場合(ステップS66,S69)、奇数ビットの半導体スイッチ21,23,25,27と偶数ビットの半導体スイッチ22,24,26,28(一部と他の一部に相当)とで、オン/オフ何れかに制御するタイミングについて時間差を設ける(ステップS68)。これにより、例えばインピーダンス整合装置100内における各インダクタFLの配置関係に起因してオン/オフの制御時に不安定な動作に至る可能性がある半導体スイッチ21,23,25,27と半導体スイッチ22,24,26,28とで、オン/オフ何れかに制御されるタイミングが一致しないようになる。従って、高周波信号をスイッチングする半導体スイッチ21,22,・・28のノイズに起因する不安定なオン/オフ動作を防止することが可能となる。
【0080】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、各実施形態で記載されている技術的特徴は、お互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0081】
100 インピーダンス整合装置
101 伝送路
1 可変キャパシタ
C1 キャパシタ
L1 インダクタ
11、12、13、14、15、16、17、18 キャパシタ
21、22、23、24、25、26、27、28 半導体スイッチ
31、32、33、34、35、36、37、38 駆動回路
QH、QL トランジスタ
R 抵抗器
SC スピードアップコンデンサ
F フィルタ
FC キャパシタ
FL インダクタ
2 算出部
3 制御部
4 スイッチ状態設定部
5 高周波電源
6 高周波検出部
7 負荷