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特許7105184インピーダンス整合装置及びインピーダンス整合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】インピーダンス整合装置及びインピーダンス整合方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20220714BHJP
   H03H 7/38 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H03H7/38 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018245077
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020107488
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】森井 龍哉
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-069823(JP,A)
【文献】特表2014-505983(JP,A)
【文献】特開2012-142285(JP,A)
【文献】特開平09-102763(JP,A)
【文献】特開2009-130881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00-1/54
H01L 21/3065
H03H 7/30-7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電源と負荷との間に設けられ、前記高周波電源の出力端又は該出力端と同等の箇所から前記負荷側を見たインピーダンスに関する情報を取得して、該高周波電源と負荷とのインピーダンスの整合を図るインピーダンス整合装置であって、
キャパシタ及び半導体スイッチの直列回路が複数並列に接続された第1キャパシタンス要素、又は、キャパシタ及び複数組み合わされた半導体スイッチが直列的に接続された第2キャパシタンス要素が、複数並列に接続されている可変キャパシタと、
取得した前記インピーダンスに関する情報を用いて前記負荷側のインピーダンス又は反射係数を算出する算出部と、
該算出部が算出したインピーダンス又は反射係数を用いて、前記第1キャパシタンス要素又は前記第2キャパシタンス要素がとるべきオン/オフの状態を決定し、決定した状態に基づいて前記半導体スイッチをオン/オフする制御部と
を備え、
該制御部は、前記第1キャパシタンス要素又は前記第2キャパシタンス要素について、複数の前記半導体スイッチのうち、オン/オフする半導体スイッチを所定の順序で巡回的に切り換えるインピーダンス整合装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1キャパシタンス要素又は前記第2キャパシタンス要素について、一の半導体スイッチをN回(Nは2以上の整数)オン/オフする毎に、オン/オフする半導体スイッチを巡回的に切り換える請求項1に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1キャパシタンス要素又は前記第2キャパシタンス要素について、一の半導体スイッチを所定時間の間だけオン/オフする毎に、オン/オフする半導体スイッチを巡回的に切り換える請求項1に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項4】
前記第1キャパシタンス要素は、複数の前記キャパシタのキャパシタンスが同等の大きさであり、
前記制御部は、前記第1キャパシタンス要素について、複数の前記半導体スイッチをオフに制御した状態で、一の半導体スイッチをオフからオンに制御した後にオンからオフに制御する
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項5】
前記第2キャパシタンス要素は、複数の前記半導体スイッチの全てが並列的に接続されているか、又は全てが直列的に接続されており、
前記制御部は、前記第2キャパシタンス要素について、
複数の前記半導体スイッチの全てが並列的に接続されている場合、複数の前記半導体スイッチをオフに制御した状態で、一の半導体スイッチをオフからオンに制御した後にオンからオフに制御し、
複数の前記半導体スイッチの全てが直列的に接続されている場合、複数の前記半導体スイッチをオンに制御した状態で、一の半導体スイッチをオンからオフに制御した後にオフからオンに制御する
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項6】
前記可変キャパシタに含まれる前記キャパシタの一部又は全部は、キャパシタンスの大きさが段階的に異なっている請求項1から請求項5の何れか1項に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項7】
前記第1キャパシタンス要素又は前記第2キャパシタンス要素の一部又は全部は、自身に含まれるキャパシタのキャパシタンスが大きいほど前記半導体スイッチの数が少ない請求項6に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項8】
高周波電源と負荷との間に設けられる可変キャパシタによって、前記高周波電源と負荷とのインピーダンスの整合を図るインピーダンス整合方法であって、
前記可変キャパシタは、キャパシタ及び半導体スイッチの直列回路が複数並列に接続された第1キャパシタンス要素、又は、キャパシタ及び複数組み合わされた半導体スイッチが直列的に接続された第2キャパシタンス要素が、複数並列に接続されており、
前記高周波電源の出力端又は該出力端と同等の箇所から前記負荷側を見たインピーダンスに関する情報を取得し、
取得した前記インピーダンスに関する情報を用いて前記負荷側のインピーダンス又は反射係数を算出し、
算出したインピーダンス又は反射係数を用いて、前記第1キャパシタンス要素又は前記第2キャパシタンス要素がとるべきオン/オフの状態を決定し、
決定した状態に基づいて前記半導体スイッチをオン/オフし、
前記第1キャパシタンス要素又は前記第2キャパシタンス要素について、複数の前記半導体スイッチのうち、オン/オフする半導体スイッチを所定の順序で巡回的に切り換えるインピーダンス整合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電源と負荷とのインピーダンスを整合させるインピーダンス整合装置及びインピーダンス整合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置等のインピーダンスが変動する負荷に対して高周波電源から電力を供給する場合、負荷に効率良く電力を供給するために、高周波電源の出力インピーダンスと、高周波電源から負荷側を見たインピーダンスとを整合させるインピーダンス整合装置が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のインピーダンス整合装置は、キャパシタとPIN(P-Intrinsic-N )ダイオードである半導体スイッチとの直列回路が複数並列に接続された可変キャパシタを含み、高周波電源と負荷との間に設けられている。特許文献1のインピーダンス整合装置は、制御器の制御信号で半導体スイッチを断続(オン/オフ)することにより、可変キャパシタのキャパシタンスを調整してインピーダンスを整合させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-142285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プラズマ処理装置のようにインピーダンスが頻繁に変動する負荷に対して高周波電力を供給する場合、負荷側のインピーダンスの変化に追従して可変キャパシタのキャパシタンスを逐次調整する必要があり、半導体スイッチをオン/オフする頻度が比較的高くなる。そしてこれに応じて、半導体スイッチのスイッチングロスによる温度上昇が大きくなるという問題があった。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、半導体スイッチのスイッチングロスによる温度上昇を抑制することが可能なインピーダンス整合装置及びインピーダンス整合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るインピーダンス整合装置は、高周波電源と負荷との間に設けられ、前記高周波電源の出力端又は該出力端と同等の箇所から前記負荷側を見たインピーダンスに関する情報を取得して、該高周波電源と負荷とのインピーダンスの整合を図るインピーダンス整合装置であって、キャパシタ及び半導体スイッチの直列回路が複数並列に接続された第1キャパシタンス要素、又は、キャパシタ及び複数組み合わされた半導体スイッチが直列的に接続された第2キャパシタンス要素が、複数並列に接続されている可変キャパシタと、取得した前記インピーダンスに関する情報を用いて前記負荷側のインピーダンス又は反射係数を算出する算出部と、該算出部が算出したインピーダンス又は反射係数を用いて、前記第1キャパシタンス要素又は前記第2キャパシタンス要素がとるべきオン/オフの状態を決定し、決定した状態に基づいて前記半導体スイッチをオン/オフする制御部とを備え、該制御部は、前記第1キャパシタンス要素又は前記第2キャパシタンス要素について、複数の前記半導体スイッチのうち、オン/オフする半導体スイッチを所定の順序で巡回的に切り換える。
【0008】
本開示の一態様に係るインピーダンス整合方法は、高周波電源と負荷との間に設けられる可変キャパシタによって、前記高周波電源と負荷とのインピーダンスの整合を図るインピーダンス整合方法であって、前記可変キャパシタは、キャパシタ及び半導体スイッチの直列回路が複数並列に接続された第1キャパシタンス要素、又は、キャパシタ及び複数組み合わされた半導体スイッチが直列的に接続された第2キャパシタンス要素が、複数並列に接続されており、前記高周波電源の出力端又は該出力端と同等の箇所から前記負荷側を見たインピーダンスに関する情報を取得し、取得した前記インピーダンスに関する情報を用いて前記負荷側のインピーダンス又は反射係数を算出し、算出したインピーダンス又は反射係数を用いて、前記第1キャパシタンス要素又は前記第2キャパシタンス要素がとるべきオン/オフの状態を決定し、決定した状態に基づいて前記半導体スイッチをオン/オフし、前記第1キャパシタンス要素又は前記第2キャパシタンス要素について、複数の前記半導体スイッチのうち、オン/オフする半導体スイッチを所定の順序で巡回的に切り換える。
【0009】
本態様にあっては、キャパシタ及び半導体スイッチの直列回路が複数並列に接続された第1キャパシタンス要素、又は、キャパシタと複数組み合わされた半導体スイッチを含む回路とが直列的に接続された第2キャパシタンス要素が、複数並列に接続されて、高周波電源と負荷との間に設けられている。そして、高周波電源の出力端又は該出力端と同等の箇所から負荷側を見たインピーダンスに関する情報を外部から取得し、取得した情報を用いて現在の負荷側のインピーダンス又は反射係数を算出する。なお、高周波電源の出力端と同等の箇所とは、例えば、インピーダンス整合装置の入力端である。負荷側のインピーダンスを算出した場合は、調整後の負荷側のインピーダンスが高周波電源の出力インピーダンスに近づくように可変キャパシタのキャパシタンスを調整すべく、各第1キャパシタンス要素又は各第2キャパシタンス要素がとるべきオン/オフ状態を決定する。一方、反射係数を算出した場合は、実際の反射係数が0に近づくように可変キャパシタのキャパシタンスを調整すべく、各第1キャパシタンス要素又は各第2キャパシタンス要素がとるべきオン/オフ状態を決定する。その後、決定したオン/オフ状態に対応させるべく各半導体スイッチの実際のオン/オフ状態を新たにオン又はオフに調整する場合、各第1キャパシタンス要素又は各第2キャパシタンス要素に含まれる複数の半導体スイッチのうち、オン/オフする対象の半導体スイッチを巡回的に切り換える。これにより、スイッチングロスによる発熱が複数の半導体スイッチに分散されるため、個々の半導体スイッチの温度上昇が抑えられる。
【0010】
本発明の一態様に係るインピーダンス整合装置は、前記制御部は、前記第1キャパシタンス要素又は前記第2キャパシタンス要素について、一の半導体スイッチをN回(Nは2以上の整数)オン/オフする毎に、オン/オフする半導体スイッチを巡回的に切り換える。
【0011】
本態様にあっては、各第1キャパシタンス要素又は各第2キャパシタンス要素に含まれる複数の半導体スイッチのうち、1つの半導体スイッチを累計でN回オンからオフに又はオフからオンにした場合、オン/オフする対象の半導体スイッチを、同じ第1又は第2キャパシタンス要素に含まれる複数の半導体スイッチの中で巡回的に切り換える。これにより、複数の半導体スイッチの夫々がオン/オフされる頻度が、各第1キャパシタンス要素又は各第2キャパシタンス要素に含まれる半導体スイッチの数に応じて低減される。
【0012】
本発明の一態様に係るインピーダンス整合装置は、前記制御部は、前記第1キャパシタンス要素又は前記第2キャパシタンス要素について、一の半導体スイッチを所定時間の間だけオン/オフする毎に、オン/オフする半導体スイッチを巡回的に切り換える。
【0013】
本態様にあっては、各第1キャパシタンス要素又は各第2キャパシタンス要素に含まれる複数の半導体スイッチのうち、1つの半導体スイッチを所定時間の間オンからオフに又はオフからオンにした場合、オン/オフする対象の半導体スイッチを、同じ第1又は第2キャパシタンス要素に含まれる複数の半導体スイッチの中で巡回的に切り換える。これにより、各半導体スイッチの夫々がオン/オフされる頻度が、各第1キャパシタンス要素又は各第2キャパシタンス要素に含まれる半導体スイッチの数に応じて低減される。
【0014】
本発明の一態様に係るインピーダンス整合装置は、前記第1キャパシタンス要素は、複数の前記キャパシタのキャパシタンスが同等の大きさであり、前記制御部は、前記第1キャパシタンス要素について、複数の前記半導体スイッチをオフに制御した状態で、一の半導体スイッチをオフからオンに制御した後にオンからオフに制御する。
【0015】
本態様にあっては、キャパシタ及び半導体スイッチの直列回路が複数並列に接続された第1キャパシタンス要素に含まれる複数のキャパシタのキャパシタンスの大きさが同等であり、複数の半導体スイッチを全てオフにした状態で、1つの半導体スイッチをオフからオンにし、その後オンからオフにする。これにより、第1キャパシタンス要素を外部から見たキャパシタンスは、0になるか又は1つのキャパシタのキャパシタンスと同じ大きさになる。
【0016】
本発明の一態様に係るインピーダンス整合装置は、前記第2キャパシタンス要素は、複数の前記半導体スイッチの全てが並列的に接続されているか、又は全てが直列的に接続されており、前記制御部は、前記第2キャパシタンス要素について、複数の前記半導体スイッチの全てが並列的に接続されている場合、複数の前記半導体スイッチをオフに制御した状態で、一の半導体スイッチをオフからオンに制御した後にオンからオフに制御し、複数の前記半導体スイッチの全てが直列的に接続されている場合、複数の前記半導体スイッチをオンに制御した状態で、一の半導体スイッチをオンからオフに制御した後にオフからオンに制御する。
【0017】
本態様にあっては、キャパシタと、複数組み合わされた半導体スイッチを含む回路とが直列的に接続された第2キャパシタンス要素について、複数の半導体スイッチが、全て並列的に接続されているか又は全て直列的に接続されている。複数の半導体スイッチが全て並列的に接続されている場合は、これら全ての半導体スイッチをオフにした状態で、1つの半導体スイッチをオフからオンにし、その後オンからオフにする。また、複数の半導体スイッチが全て直列的に接続されている場合は、これら全ての半導体スイッチをオンにした状態で、1つの半導体スイッチをオンからオフにし、その後オフからオンにする。これにより、第2キャパシタンス要素を外部から見たキャパシタンスは、0になるか又は1つのキャパシタのキャパシタンスと同じ大きさになる。
【0018】
本発明の一態様に係るインピーダンス整合装置は、前記可変キャパシタに含まれる前記キャパシタの一部又は全部は、キャパシタンスの大きさが段階的に異なっている。
【0019】
本態様にあっては、可変キャパシタに含まれるキャパシタの少なくとも一部は、キャパシタンスの大きさが段階的に異なる。このため、並列的に接続されるキャパシタの組み合わせによるキャパシタンスの調整範囲を比較的大きくすることができる。
【0020】
本発明の一態様に係るインピーダンス整合装置は、前記第1キャパシタンス要素又は前記第2キャパシタンス要素の一部又は全部は、自身に含まれるキャパシタのキャパシタンスが大きいほど前記半導体スイッチの数が少ない。
【0021】
本態様にあっては、自身に含まれるキャパシタのキャパシタンスが大きく、可変キャパシタに組み入れられる頻度が低い第1キャパシタンス要素又は前記第2キャパシタンス要素の一部又は全部について、半導体スイッチの数が少ないため、トータルの半導体スイッチの数を必要最小限にすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、半導体スイッチのスイッチングロスによる温度上昇を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態1に係るインピーダンス整合装置の構成例を示すブロック図である。
図2】実施形態1に係るインピーダンス整合装置におけるキャパシタンス要素及び駆動回路の構成例を示す回路図である。
図3】実施形態1に係るインピーダンス整合装置の動作を示すタイミングチャートである。
図4】負荷側のインピーダンスを算出して平均化するFPGAの処理手順を示すフローチャートである。
図5】インピーダンスの整合演算を行うCPUの処理手順を示すフローチャートである。
図6】実施形態1に係るインピーダンス整合装置で半導体スイッチのオン/オフを切り換えるCPUの処理手順を示すフローチャートである。
図7】実施形態1に係るインピーダンス整合装置における半導体スイッチのオン/オフ動作を示すタイミングチャートである。
図8】実施形態1に係るインピーダンス整合装置における半導体スイッチのオン/オフ動作を示す他のタイミングチャートである。
図9】スイッチ切換のサブルーチンに係るCPUの処理手順を示すフローチャートである。
図10】オン/オフする対象の半導体スイッチを切り換えるCPUの処理手順を示すフローチャートである。
図11】実施形態2に係るインピーダンス整合装置におけるキャパシタンス要素及び駆動回路の構成例を示す回路図である。
図12】実施形態3に係るインピーダンス整合装置におけるキャパシタンス要素及び駆動回路の構成例を示す回路図である。
図13】実施形態3に係るインピーダンス整合装置における半導体スイッチのオン/オフ動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るインピーダンス整合装置100の構成例を示すブロック図である。インピーダンス整合装置100は、高周波電力を出力する高周波電源5及び高周波電力を消費する負荷7の間に設けられている。高周波電源5及びインピーダンス整合装置100の間には、高周波電力を通過させると共に高周波電圧等のパラメータを検出する高周波検出部6が接続されている。即ち、高周波検出部6は、高周波電源5の出力端と、インピーダンス整合装置100の入力端との間に介在してある。高周波検出部6がインピーダンス整合装置100に含まれていてもよい。
【0025】
高周波電源5は、例えば2MHz、13.56MHz、27MHz、60MHz等の工業用のRF帯(Radio Frequency)の高周波電力を出力する交流電源であり、出力インピーダンスは、例えば50Ω等の規定の値に設定されている。高周波電源5は、インバータ回路(図示せず)を含み、該インバータ回路をスイッチング制御することにより、高周波の交流電力を生成する。
【0026】
高周波検出部6は、高周波電源5の出力端又は当該出力端と同等の箇所であるインピーダンス整合装置1の入力端から負荷7側を見た(以下、単に負荷7側を見た、又は負荷7側のと言う)インピーダンスを算出するためのパラメータ又は負荷7側を見た反射係数を算出するためのパラメータ(インピーダンスに関する情報に相当)を検出する。負荷7側を見たインピーダンスは、負荷7のインピーダンスと、インピーダンス整合装置100との合成インピーダンスである。具体的には、高周波検出部6は、自身の位置における高周波電圧と、高周波電流と、高周波電圧と高周波電流との位相差とをパラメータとして検出する。又は、高周波検出部6は、負荷7に向かう高周波の進行波電力(又は進行波電圧)と負荷7から反射されて戻ってくる反射波電力(又は反射波電圧)とをパラメータとして検出する。これらの検出されたパラメータを用いて、後述する算出部2が周知の方法によって負荷7側のインピーダンス又は反射係数を算出する。
【0027】
負荷7は、高周波電源5から供給される高周波電力を用いて各種処理を行うものであり、例えば、プラズマ処理装置及び非接触電力伝送装置が挙げられる。プラズマ処理装置では、プラズマエッチング、プラズマCVD等の製造プロセスの進行に伴い、プラズマの状態が時々刻々と変化する。これにより、負荷7のインピーダンスが変動する。
【0028】
インピーダンス整合装置100は、キャパシタンスが可変の可変キャパシタ1と、高周波検出部6から上記パラメータを取得して、負荷7側のインピーダンス又は反射係数を算出する算出部2と、該算出部2が算出したインピーダンス又は反射係数を用いて、可変キャパシタ1のキャパシタンスを制御する制御部3とを備える。インピーダンス整合装置100は、更に、可変キャパシタ1が有する後述の半導体スイッチをオン/オフに設定するスイッチ状態設定部4を備え、制御部3がスイッチ状態設定部4を介して可変キャパシタ1のキャパシタンスを制御するようになっている。
【0029】
インピーダンス整合装置100では、高周波検出部6へ延伸する伝送路101と、インダクタL1側の一端が負荷7に接続されたキャパシタC1及びインダクタL1の直列回路とが縦続接続されている。可変キャパシタ1は、実質的に2端子の回路であり、一端が伝送路101に、他端が接地電位に接続されている。即ち、可変キャパシタ1とキャパシタC1及びインダクタL1の直列回路とは、L型の整合回路を構成する。キャパシタC1を他の可変キャパシタ1と置き換えてもよい。
【0030】
ここでは、上記の整合回路がL型である場合について説明したが、逆L型であってもよいし、T型又はπ型であってもよい。更に、キャパシタC1及びインダクタL1の直列回路は、インピーダンス整合装置100の外側(即ち、インピーダンス整合装置100及び負荷7の間)に接続されていてもよい。以下では、高周波検出部6から伝送路101に高周波電力が入力される部位を入力部と言う。また、インダクタL1から負荷7に高周波電力が出力される部位を出力部と言う。
【0031】
可変キャパシタ1は、一端同士が伝送路101に接続されたキャパシタンス要素(第1キャパシタンス要素に相当)31,32,・・38と、該キャパシタンス要素31,32,・・38夫々に含まれる半導体スイッチを駆動する駆動回路41,42,・・48とを有する。キャパシタンス要素31,32,・・38の他端同士は、接地電位に接続されている。キャパシタンス要素31,32,・・38の数及び駆動回路41,42,・・48の数は8つに限定されない。
【0032】
図2は、実施形態1に係るインピーダンス整合装置100におけるキャパシタンス要素31及び駆動回路41の構成例を示す回路図である。キャパシタンス要素31は、一端が伝送路101に接続されたキャパシタ11a及びカソードが接地電位に接続された半導体スイッチ21aの直列回路と、一端が伝送路101に接続されたキャパシタ11b及びカソードが接地電位に接続された半導体スイッチ21bの直列回路とが並列に接続されている。半導体スイッチ21a及び21bは、例えばPINダイオードである。キャパシタ11a及び11bは、キャパシタンスが同等の大きさである。ここでいう同等とは、大きさの違いが、例えば±20%又はそれ以下であることを言う。この違いは、半導体スイッチ21a及び21bの何れかがオンの場合に、キャパシタンス要素31の外部から見たキャパシタンスの偏差となって現れる。従って、この偏差が許容される範囲内で、キャパシタ11a及び11bのキャパシタンスの大きさに違いがあってもよい。
【0033】
他のキャパシタンス要素32,33,・・38夫々の構成については、内部にキャパシタ12a及び12b,13a及び13b,・・18a及び18bが含まれる点と、半導体スイッチ22a及び22b,23a及び23b,・・28a及び28bが含まれる点とを除いて上記と同様である。1つのキャパシタンス要素に含まれるキャパシタの数及び半導体スイッチの数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0034】
駆動回路41は、構成が同一の駆動回路41a及び41bを含む。他の駆動回路42,43,・・48についても同様である。駆動回路41aは、ドレインがプラス電源V+に接続されたNチャネル型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor :以下トランジスタと言う)QHと、ソースがマイナス電源V-に接続されたNチャネル型のトランジスタQLとを有する。トランジスタQHのソース及びトランジスタQHのドレインの間には、抵抗器R及びスピードアップコンデンサSCの並列回路が接続されている。トランジスタQH及びQLは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor )等の他のスイッチング素子であってもよい。
【0035】
駆動回路41aは、更に、トランジスタQLのドレイン及び接地電位の間に接続されたキャパシタFCと、トランジスタQLのドレイン及び出力端子Outの間に接続されたインダクタFLとを含むL型のフィルタFを有する。トランジスタQHのゲート及びトランジスタQLのゲートには、スイッチ状態設定部4からハイレベル及びロウレベルの相補的な駆動信号が印加される。ハイレベルの駆動信号の電圧は、例えばプラス電源V+の電圧と同等であればよい。ロウレベルの駆動信号の電圧は、例えばマイナス電源V-の電圧と同等であればよい。
【0036】
トランジスタQLのゲートにロウレベル(Lowレベル)の駆動信号が印加され、トランジスタQHのゲートにハイレベル(Highレベル)の駆動信号が印加された場合、トランジスタQLがオフとなり、トランジスタQHがオンとなる。これにより、プラス電源V+からトランジスタQH、抵抗器R及びスピードアップコンデンサSC、並びにフィルタFに含まれるインダクタFLを介して半導体スイッチ21aに順方向電流が流れ、半導体スイッチ21aがオン状態となる。この結果、キャパシタ11aのキャパシタンスが可変キャパシタ1全体のキャパシタンスに含まれることとなり、キャパシタ11aが可変キャパシタ1に組み入れられる。
【0037】
一方、トランジスタQHのゲートにロウレベルの駆動信号が印加され、トランジスタQLのゲートにハイレベルの駆動信号が印加された場合、トランジスタQHがオフとなり、トランジスタQLがオンとなる。これにより、マイナス電源V-からトランジスタQL及びインダクタFLを介して半導体スイッチ21aのアノードに逆方向の電圧が印加され、半導体スイッチ21aがオフ状態となる。この結果、キャパシタ11aのキャパシタンスが可変キャパシタ1全体のキャパシタンスに含まれなくなる。以上のようにして、可変キャパシタ1のキャパシタンスが調整される。
【0038】
駆動回路41bによる半導体スイッチ21bへの電圧の印加についても上記と同様である。半導体スイッチ21a及び21bは、両方が同時にオン状態になることがないように制御される。具体的には、半導体スイッチ21a及び21bは、両方がオフである状態を基本とし、何れか一方がオフからオンに又はオンからオフに制御される。これにより、キャパシタ11a及び11bの何れか一方について、可変キャパシタ1への組み入れが制御される。以下、本実施形態1では、半導体スイッチ21a及び21bのうち、オンに制御される方を半導体スイッチ21という(他の半導体スイッチ22,23,・・28についても同様)。また、キャパシタ11a及び11bのうち、半導体スイッチ21によって伝送路101及び接地電位間に接続される方をキャパシタ11と言う(他のキャパシタ12,13,・・18についても同様)。
【0039】
本実施形態1では、可変キャパシタ1に含まれるキャパシタ11,12,・・18の一部又は全部のキャパシタンスが、段階的に大きくなるようにしてある。より具体的には、キャパシタ11のキャパシタンスをCminとした場合、キャパシタ11,12,・・18のキャパシタンスが、Cmin×2i-1 (i=1,2,・・8)で表されるようにすることが好ましい。このようにすることにより、可変キャパシタ1のキャパシタンスを、Cmin刻みで28 通りの大きさに設定することができる。
【0040】
また、キャパシタンス要素31,32,・・38夫々に含まれるキャパシタ11a及び11b,12a及び12b,・・18a及び18bの数と、半導体スイッチ21a及び21b,22a及び22b,・・28a及び28bの数とは、一定数(ここでは2つ)に限定されない。例えば、キャパシタンスが大きいキャパシタを含むキャパシタンス要素については、可変キャパシタ1に組み入れられる頻度が小さいため、キャパシタの数及び半導体スイッチの数を図2に示したように2つにし、キャパシタンスが小さいキャパシタを含むキャパシタンス要素については、キャパシタの数及び半導体スイッチの数を3つにしてもよい。キャパシタンス要素31,32,・・38の一部又は全部について、上述のとおり、キャパシタの大きさに応じてキャパシタの数及び半導体スイッチの数を変えてもよいし変えなくてもよい。
【0041】
図1に戻って、算出部2は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array )を含んでなり、高周波検出部6から、負荷7側のインピーダンスを算出するためのパラメータ又は負荷7側の反射係数を算出するためのパラメータを取得する。算出部2は、取得したこれらのパラメータを用いて、負荷7側のインピーダンス又は反射係数を算出して平均化し、平均化したインピーダンス又は反射係数を制御部3に向けて出力する。
【0042】
制御部3は、不図示のCPU(Central Processing Unit )を有し、予めROM(Read Only Memory )に記憶された制御プログラムに従って各部の動作を制御すると共に、入出力、演算、時間の計測等の処理を行う。CPUによる各処理の手順を定めたコンピュータプログラムを、不図示の手段を用いて予めRAM(Random Access Memory )にロードし、ロードされたコンピュータプログラムをCPUで実行するようにしてもよいし、制御部3をマイクロコンピュータ又は専用のハードウェア回路で構成してもよい。
【0043】
制御部3は、算出部2で算出された負荷7側のインピーダンス又は反射係数を取り込む。負荷7側のインピーダンスを取り込んだ場合、制御部3は、負荷7側のインピーダンスを高周波電源5の出力インピーダンスに整合させるべく、可変キャパシタ1のキャパシタ11,12,・・18の組み合わせを決定する。一方、負荷7側の反射係数を取り込んだ場合、制御部3は、入力部における反射係数を0に近づけるべく、可変キャパシタ1のキャパシタ11,12,・・18の組み合わせを決定する。反射係数の大きさが、許容範囲内になれば整合したと見做す。このような制御により、高周波電源5から負荷7に効率よく電力が供給される。以下では、算出部2にて負荷7側のインピーダンスを算出し、算出されたインピーダンスを用いて、制御部3が可変キャパシタ1のキャパシタンスを算出してキャパシタ11,12,・・18の組み合わせを決定するものとして説明する。決定されたキャパシタ11,12,・・18の組み合わせは、半導体スイッチ21,22,・・28がとるべきオン/オフ状態(以下、キャパシタンス要素31,32,・・38がとるべきオン/オフ状態とも言う)に対応している。
【0044】
スイッチ状態設定部4は、制御部3が決定したキャパシタ11,12,・・18の組み合わせ、即ちキャパシタンス要素31,32,・・38がとるべきオン/オフ状態に応じて、制御部3から半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフ状態が設定される。スイッチ状態設定部4に半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフ状態が設定された場合、対応する駆動回路41,42,・・48夫々に対して、上述の相補的な駆動信号が印加される。これにより、可変キャパシタ1の半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフ状態が新たに制御される。そして、可変キャパシタ1のキャパシタンスは、制御部3が算出したキャパシタンスに調整される。
【0045】
次に、インピーダンス整合装置100全体の動作の流れについて説明する。図3は、実施形態1に係るインピーダンス整合装置100の動作を示すタイミングチャートである。図3に示す4つのタイミングチャートは、何れも同一の時間軸(t)を横軸にしてあり、上段から順に、半導体スイッチ21,22,・・28の設定、負荷7側のインピーダンスの算出・平均化、インピーダンス更新フラグのセット/クリア、及びインピーダンスの整合演算夫々を行うタイミングを模式的に示す。以下では、B1,B2,・・B7夫々が、半導体スイッチ21,22,・・28のビット番号を表すものとする。
【0046】
本実施形態1に係るインピーダンス整合装置100では、図3の全体に示すシーケンスが、例えば1msに1回ずつ周期的に出現するが、シーケンスの周期が1msに限定されるものではない。この1msの間に、可変キャパシタ1のキャパシタンスが1回算出され、算出されたキャパシタンスに基づいて、半導体スイッチ21,22,・・28の各ビットがオン又はオフに設定される。図3に示すタイミングチャートに対応する動作のうち、インピーダンスの算出・平均化及びインピーダンス更新フラグのセット/クリアは、算出部2に含まれるFPGA(以下、単にFPGAと言う)が実行し、その他2つのタイミングチャートに対応する動作は、制御部3が有するCPU(以下、単にCPUと言う)が実行する。
【0047】
時刻t0からt1にわたって行われる半導体スイッチ21,22,・・28の設定は、時刻t0の1ms前に始まる1つ前の周期で決定されたオン/オフ状態に合わせてCPUが時間T1の間に実行するものである。ここでは、最上位ビットである半導体スイッチ28からビット番号の降順に半導体スイッチ21,22,・・28が設定されるが、最下位ビットである半導体スイッチ21からビット番号の昇順に設定されてもよい。CPUは、FPGAに対してマスク信号を与えており、時刻t1の直前に実行した半導体スイッチ21(B1に対応)の設定が完了したときにマスク信号をオフにする。
【0048】
一方のFPGAは、CPUから与えられるマスク信号をセンスしており、マスク信号がオフになったときから、負荷7側のインピーダンスの算出・平均化を開始するまでの間に時間T2だけインターバルを設ける。時間T2の長さは、例えば30μsである。このインターバルは、時刻t1の直前に実行された半導体スイッチ21の設定によって、負荷7側のインピーダンスが安定化するまで待機する時間である。
【0049】
時刻t2で上記のインターバルが終了した場合、FPGAは、時間T3の間に高周波検出部6から負荷7側のインピーダンスを算出するためのパラメータを複数回にわたって取得し、取得する毎に負荷7側のインピーダンスを算出して平均化する。時間T3の長さは、例えば15μsである。時刻t3で最初の算出・平均化が終了した場合、FPGAは、CPUが時刻t0より前にクリアしたインピーダンスの更新フラグを1にセットする。以後、時刻t3及びt4夫々から始まる時間T3の間に、FPGAは負荷7側のインピーダンスの算出・平均化を繰り返す。この算出・平均化は、CPUによってマスク信号がオンされるまで繰り返される。
【0050】
他方のCPUは、FPGAによってセットされるインピーダンスの更新フラグをセンスしており、更新フラグが0にクリアされている間は、整合演算を行わない。時刻t5でインピーダンス更新フラグが1にセットされているのをセンスした場合、CPUは、インピーダンスの整合演算を行い、整合演算が終了した時刻t6にインピーダンス更新フラグを0にクリアすると共に、FPGAに与えるマスク信号をオンにする。ここでの整合演算とは、FPGAから平均化された負荷7側のインピーダンスを取り込み、負荷7側のインピーダンスを高周波電源5の出力インピーダンスに整合させるべく、可変キャパシタ1のキャパシタンスを算出して、キャパシタンス要素31,32,・・38がとるべきオン/オフ状態を決定する処理である。
【0051】
以下では、上述した算出部2及び制御部3の動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。半導体スイッチ21,22,・・28の切り換えの詳細については後述する。図4は、負荷7側のインピーダンスを算出して平均化するFPGAの処理手順を示すフローチャートである。図5は、インピーダンスの整合演算を行うCPUの処理手順を示すフローチャートである。図6は、実施形態1に係るインピーダンス整合装置100で半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフを切り換えるCPUの処理手順を示すフローチャートである。図4の処理は、例えば1msより十分短い間隔をおいて開始され、FPGAによって実行される。図5及び図6の処理は、例えば1ms毎に同時的に起動され、不図示のROMに予め格納されているコンピュータプログラムに従ってCPUにより実行される。
【0052】
図4及び図5では、インピーダンス更新フラグを単に更新フラグと記載する。更新フラグの初期値は0である。図4及び図6では、マスク信号を単にマスクと記載する。マスク信号の初期値はオンである。図4における初回フラグは、インピーダンスを算出及び平均化する処理の初回であることを示すフラグである。図6におけるjは、半導体スイッチ21,22,・・28のうち変化するビット数を記憶するためのものであり、kは、処理中のビット番号を記憶するためのものである。
【0053】
図4の処理が開始された場合、FPGAは、マスク信号がオンであるか否かを判定し(S11)、オンである場合(S11:YES)、マスク信号がオフとなるまで待機する。マスク信号がオフとなってマスクが外された場合(S11:NO)、FPGAは、初回フラグを1にセットし(S12)、不図示のタイマによる計時を開始する(S13)。その後、FPGAは、タイマの計時により時間T2が経過したか否かを判定し(S14)、経過していない場合(S14:NO)、時間T2が経過するまで待機する。この時間T2は上述のインターバルであり、例えば30μsの長さである。
【0054】
時間T2のインターバルが経過した場合(S14:YES)、FPGAは、タイマによる計時を開始しておき(S15)、高周波検出部6からインピーダンスに関する情報、即ち負荷7側のインピーダンスを算出するためのパラメータを取得する(S16)。次いで、FPGAは、取得したパラメータを用いて負荷7側のインピーダンスを算出し(S17)、算出したインピーダンスを逐次平均化する(S18)。インピーダンスの1回の算出は、例えば100ns以下の時間内に終了する。その後、FPGAは、タイマの計時により時間T3が経過したか否かを判定し(S19)、経過していない場合(S19:NO)、ステップS16に処理を移す。この時間T3は、例えば15μsの長さである。
【0055】
時間T3が経過した場合(S19:YES)、FPGAは、平均化した負荷7側のインピーダンス(より具体的には、インピーダンスを示すデータ)をCPUに向けて出力する(S20)。その後、FPGAは、初回フラグが1にセットされているか否かを判定し(S21)、1にセットされている場合(S21:YES)、即ち、最初にインピーダンスの算出及び平均化を終えた場合、FPGAは、インピーダンス更新フラグを1にセットする(S22)と共に、初回フラグを0にクリアする(S23)。
【0056】
ステップS23の処理を終えた場合、又はステップS21で初回フラグが1にセットされていなかった場合(S21:NO)、FPGAは、マスク信号がオンであるか否かを判定し(S24)、依然としてオンではない場合(S24:NO)、負荷7側のインピーダンスの算出及び平均化を繰り返すために、ステップS15に処理を移す。一方、マスク信号がオンとなって再びマスクされた場合(S24:YES)、FPGAは、図4の処理を終了する。
【0057】
なお、ステップS16で反射係数を算出するためのパラメータを取得し、ステップS17で負荷7側を見た反射係数を算出し、ステップS18で反射係数を平均化し、ステップS20で平均化した反射係数を出力するようにしてもよい。
【0058】
図5の処理が起動された場合、CPUは、インピーダンス更新フラグが1にセットされているか否かを判定し(S31)、1にセットされていない場合(S31:NO)、1にセットされるまで待機する。これに対し、インピーダンス更新フラグが1にセットされている場合(S31:YES)、CPUは、算出部2から平均化されたインピーダンスを取り込み(S32)、負荷7側のインピーダンスを高周波電源5の出力インピーダンスに整合させるべく、可変キャパシタ1のキャパシタンスを算出する(S33)。次いで、CPUは、可変キャパシタ1のキャパシタンスが算出したキャパシタンスとなるように、キャパシタンス要素31,32,・・38がとるべきオン/オフ状態、即ち半導体スイッチ21,22,・・28がとるべきオン/オフ状態を決定する(S34)。その後、CPUは、更新フラグを0にクリアし(S35)、マスク信号をオンにして(S36)図5の処理を終了する。
【0059】
なお、図4に示す処理によって反射係数が出力される場合は、図5のステップS32で平均化された反射係数を取り込み、S33では負荷7側を見た反射係数を0に近づけるべく、可変キャパシタ1のキャパシタンスを算出すればよい。
【0060】
図6の処理が起動された場合、CPUは、1周期前の処理で不図示のRAMに記憶した半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフ状態を読み出し(S41)、図5のステップS34で決定したオン/オフ状態と比較する(S42)。次いで、CPUは、比較結果に基づいて、オンからオフに又はオフからオンに変化するビットを抽出する(S43)と共に、変化するビット数をjに代入する(S44)。更に、CPUは、jが0であるか否か、即ち変化するビットが無いか否かを判定し(S45)、jが0である場合(S45:YES)、マスク信号をオフするために後述するステップS53に処理を移す。一方、jが0ではない場合(S45:NO)、CPUは、kを8に初期化する(S46)。
【0061】
その後、CPUは、半導体スイッチ21,22,・・28のうちのk番目のビットであるBkが、オンからオフに又はオフからオンに変化するビットであるか否かを判定する(S47)。Bkが変化するビットではない場合(S47:NO)、CPUは、変化するビットをサーチするために、後述するステップS51に処理を移す。一方、Bkが変化するビットである場合(S47:YES)、CPUは、Bkに対応するk番目の半導体スイッチについて実際にオン/オフを切り換えるために、後述するスイッチ切換に係るサブルーチンを呼び出して実行する(S48)。
【0062】
スイッチ切換に係るサブルーチンからリターンした場合、CPUは、jを1だけデクリメントし(S49)、jが0であるか否か、即ち変化する残りのビット数が0であるか否かを判定する(S50)。jが0ではない場合(S50:NO)、CPUは、kを1だけデクリメントした(S51)後、変化するビットを更にサーチするために、ステップS47に処理を移す。
【0063】
ステップS50でjが0である場合(S50:YES)、即ち変化する残りのビット数が0となった場合、CPUは、切り換え後の半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフ状態を記憶し(S52)、更にマスク信号をオフして(S53)図6の処理を終了する。ここで記憶したオン/オフ状態は、次の1周期におけるステップS41で読み出されることとなる。なお、ステップS52で記憶した切り換え後のオン/オフ状態は、図5のステップS34で決定したオン/オフ状態と一致する。
【0064】
上述の図6に示すフローチャートでは、半導体スイッチ21,22,・・28のうち、オンからオフに又はオフからオンに変化するビットを抽出し、抽出したビットのみについて半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフを切り換えたが、これに限定されるものではない。例えば、半導体スイッチ21,22,・・28の各ビットが変化するか否かに関わらず、全てのビットについて半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフを新たに設定してもよい。
【0065】
具体的には、図6に示す各ステップのうち、S41-43、S45及びS47を削除し(次の番号のステップに移るようにする)、ステップS44でjに8(総ビット数)を代入し、ステップS48のスイッチ切換に係るサブルーチンでBkに対応するk番目の半導体スイッチについてオン/オフを新たに設定すればよい。
【0066】
次に、半導体スイッチ21をオン/オフする方法、即ち半導体スイッチ21a及び21bの何れか一方をオン/オフする方法について説明する。図7は、実施形態1に係るインピーダンス整合装置100における半導体スイッチ21a及び21bのオン/オフ動作を示すタイミングチャートである。図7に示す6つのタイミングチャートは、何れも同一の時間軸(t)を横軸にしてあり、上段から順に、インピーダンスの更新周期、インピーダンスの整合演算、第1スイッチのオン/オフ回数及びオン/オフ状態、並びに第2スイッチのオン/オフ回数及びオン/オフ状態を模式的に示す。但し、第1スイッチ及び第2スイッチ夫々は、半導体スイッチ21a及び21bを表す(半導体スイッチ22a及び22b,・・半導体スイッチ28a及び28bを表す場合についても同様)。
【0067】
インピーダンスの更新周期は、1サイクルが例えば1msであり、図3の全体に示すシーケンスが出現する周期に相当する。インピーダンスの整合演算は、図3の最下段に示す整合演算に相当し、インピーダンスの更新周期に対応する時間内に実行される複数回の演算を図7では代表的に「演」と表してある。第1スイッチ又は第2スイッチのオン/オフ回数は、インピーダンスの更新に応じて第1スイッチ又は第2スイッチがオンからオフに又はオフからオンに制御された累計回数を表す。そして、その累計回数のカウントアップに応じて第1スイッチ又は第2スイッチのオン/オフ状態が図7に示すように変化する。
【0068】
図7に示す例では、第1スイッチ又は第2スイッチのオン/オフ回数が4になる時(4は図示せず)に、オン/オフする対象のスイッチが巡回的に切り換わる。具体的には、時刻t11で第2スイッチがオンからオフに制御されてオン/オフ回数が3から4になる時に、オン/オフする対象のスイッチが第2スイッチから第1スイッチに巡回的に切り換わる。この時点では、第1スイッチの状態に変化はない。オン/オフする対象のスイッチではなくなった第2スイッチはオフの状態が維持される。その後、インピーダンスが更新されて半導体スイッチ21のオン/オフを切り換える必要が生じる都度、第1スイッチがオフからオンに又はオンからオフに制御され、その都度第1スイッチのオン/オフ回数がカウントアップされる。
【0069】
時刻t12では、第1スイッチがオンからオフに制御されてオン/オフ回数が3から4になる時に、オン/オフする対象のスイッチが第1スイッチから第2スイッチに巡回的に切り換わる。この時点では、第2スイッチの状態に変化はない。オン/オフする対象のスイッチではなくなった第1スイッチはオフの状態が維持される。その後、インピーダンスが更新されて半導体スイッチ21のオン/オフを切り換える必要が生じる都度、第2スイッチがオフからオンに又はオンからオフに制御され、その都度第2スイッチのオン/オフ回数がカウントアップされる。以下同様に、オン/オフする対象のスイッチが、時刻t13にて第1スイッチに巡回的に切り換わり、時刻t14にて第1スイッチから第2スイッチに巡回的に切り換わる。
【0070】
図7に示す例では、第1スイッチ又は第2スイッチのオン/オフ回数が4になる時にオン/オフする対象のスイッチを切り換えたが、この回数「4」が2、6、8等の偶数である場合は、単にオン/オフの回数が減少又は増加するだけであり、図7と同様のタイミングチャートに表される。一方、上記の回数「4」が3、5等の奇数で有る場合は、図7に示すものとは異なるタイミングチャートで表される。
【0071】
図8は、実施形態1に係るインピーダンス整合装置100における半導体スイッチ21a及び21bのオン/オフ動作を示す他のタイミングチャートである。図8に示すタイミングチャートは、図7に示す場合と比較して、第1スイッチ又は第2スイッチのオン/オフ回数が3になる時にオン/オフする対象のスイッチを切り換える点に違いがある。インピーダンスの更新周期及びインピーダンスの整合演算については図7に示す場合と同様であるため、図に関するその他の詳細な説明を省略する。
【0072】
例として、時刻t21で第2スイッチをオフからオンに制御するためにオン/オフ回数が2から3になる時(3は図示せず)に、オン/オフする対象のスイッチが第2スイッチから第1スイッチに巡回的に切り換わる。この時点で第2スイッチをオンにすると、以後第1スイッチのオン/オフが無効になるため、時刻t21では第2スイッチをオンにせずに第1スイッチをオンにする。従って、第1スイッチのオン/オフ回数が0ではなく1になる。その後、インピーダンスが更新されて半導体スイッチ21のオン/オフを切り換える必要が生じる都度、第1スイッチがオンからオフに又はオフからオンに制御され、その都度第1スイッチのオン/オフ回数がカウントアップされる。但し、図8に示す例では、オン/オフする対象のスイッチを第2スイッチに切り換えるまでの間に、第1スイッチがオフからオンに制御されることはない。
【0073】
時刻t22では、第1スイッチをオフからオンに制御するためにオン/オフ回数が2から3になる時にオン/オフする対象のスイッチが第1スイッチから第2スイッチに巡回的に切り換わる。この時点で第1スイッチをオンにすると、以後第2スイッチのオン/オフが無効になるため、時刻t22では第1スイッチをオンにせずに第2スイッチをオンにする。従って、第2スイッチのオン/オフ回数が0ではなく1になる。その後、インピーダンスが更新されて半導体スイッチ21のオン/オフを切り換える必要が生じる都度、第2スイッチがオンからオフに又はオフからオンに制御され、その都度第2スイッチのオン/オフ回数がカウントアップされる。以下同様に、オン/オフする対象のスイッチが、時刻t23にて第2スイッチから第1スイッチに巡回的に切り換わる。
【0074】
以下では、図7及び図8に示す制御部3の動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。図9は、スイッチ切換のサブルーチンに係るCPUの処理手順を示すフローチャートである。図9に示すサブルーチンは、インピーダンスの更新周期の1サイクルの間に、図6に示すメインルーチンにおけるステップS48にてビット毎に最大で計8回呼び出される。図中のTk、Xk、Nk及びSkにおけるk(k=1,2,・・8)は、図6で導入した処理中のビット番号に対応している。
【0075】
Tkは各ビット番号に対応するタイマである。このタイマは、1つの半導体スイッチについてオン/オフを制御し続ける上限の時間(図9では所定時間)を計時するものである。この上限の時間をビット後に変更してもよい。Xkは各ビット番号に対応する切換カウンタ、即ちオン/オフ回数をカウントするカウンタである。Nkは各ビット番号に対応するオン/オフ回数の上限値であり、図7及び図8夫々の例では4及び3である。この上限値は2以上の整数であり、ビット毎に変更してもよい。Skは、オン/オフを制御している半導体スイッチの通番をビット番号毎に巡回的に計数するものである。本実施形態1では、ビット毎に半導体スイッチを2個用いるため、Skの計数値は0,1,0,1,・・と巡回的に変化する。例えばビット毎に半導体スイッチを3個用いた場合、Skの計数値は0,1,2,0,1,2・・と巡回的に変化するが、2,1,0,2,1,0・・と変化させてもよい。図9では、半導体スイッチを単にスイッチと記載する。
【0076】
図9のサブルーチンが呼び出された場合、CPUは、タイマTkの計時により所定時間を経過したか否かを判定し(S61)、経過していない場合(S61:NO)、切換カウンタXkをインクリメントする(S62)。その後、CPUは、XkがNkになったか否かを判定し(S63)、Nkになった場合(S63:YES)、Xkを0に初期化し(S64)、更にスイッチ番号Skに応じた半導体スイッチがオンであるか否かを判定する(S65)。この判定は、対象の半導体スイッチに係るタイミングが、図7及び図8の何れの場合に対応するかを判定するためのものである。例えば、k=1の場合、図7の時刻t11及びt12の間でこのサブルーチンが呼び出された場合は、Sk=0であり、第1スイッチである半導体スイッチ21aがオンであるか否かが判定される。
【0077】
Skに応じた半導体スイッチがオンである場合(S65:YES)、即ち図7に示すタイミングに対応する場合、CPUは、Skに応じた半導体スイッチをオフする(S66)と共に、Skを巡回的にインクリメントする(S67)。これにより、オン/オフする対象の半導体スイッチが巡回的に切り換わる。次いで、CPUは、タイマTkによる計時を開始した(S68)後、呼び出されたメインルーチンにリターンする。
【0078】
ステップS65でSkに応じた半導体スイッチがオンではない場合(S65:NO)、即ち図8に示すタイミングに対応する場合、CPUは、Skに応じた半導体スイッチをオンせずに、Skを巡回的にインクリメントする(S69)。これにより、オン/オフする対象の半導体スイッチが巡回的に切り換わる。次いで、CPUは、、新たなSkに応じた半導体スイッチをオンする(S70)と共に、オン/オフ回数を計数する切換カウンタXkをインクリメントする(S71)。その後、CPUは、タイマTkによる計時を開始するために、ステップS68に処理を移す。
【0079】
一方、ステップS63でXkがNkではない場合、即ち、オン/オフする対象の半導体スイッチを切り換えない場合、CPUは、スイッチ番号Skに応じた半導体スイッチをオンからオフに又はオフからオンに切り換えた(S72)後に、呼び出されたメインルーチンにリターンする。
【0080】
上述の図9に示すサブルーチンでタイマTkの計時により所定時間を経過したか否かを判定するのは、図6に示すメインルーチンから呼び出された場合に限られていた。即ち、Bkが変化するビットではない状態が継続する場合、タイマTkの計時により所定時間を経過したか否かを判定する機会がない状態が、長時間にわたって継続することがある。このような場合であっても、タイマTkによる割込処理、又は該割込処理から起動される処理にて、タイマTkの計時により所定時間を経過したか否かを判定することができる。この場合の処理手順について、以下に説明する。
【0081】
図10は、オン/オフする対象の半導体スイッチを切り換えるCPUの処理手順を示すフローチャートである。図10の処理が開始又は起動された場合、CPUは、オン/オフ回数をカウントする切換カウンタXkを0に初期化する(S81)と共に、スイッチ番号Skに応じた半導体スイッチがオフであるか否かを判定する(S82)。この判定は、対象の半導体スイッチに係るタイミングが、図7及び図8の何れの場合に対応するかを判定するためのものである(図9のステップS65参照)。
【0082】
Skに応じた半導体スイッチがオンである場合(S82:YES)、即ち図7に示すタイミングに対応する場合、CPUは、Skに応じた半導体スイッチを強制的にオフする(S83)と共に、Skを巡回的にインクリメントする(S84)。これにより、オン/オフする対象の半導体スイッチが巡回的に切り換わる。次いで、CPUは、新たなSkに応じた半導体スイッチをオンする(S85)と共に、オン/オフ回数を計数する切換カウンタXkをインクリメントする(S86)。その後、CPUは、タイマTkによる計時を開始した(S87)後、図10の処理を終了する。
【0083】
一方、ステップS82でSkに応じた半導体スイッチがオンではない場合(S82:NO)、即ち図8に示すタイミングに対応する場合、CPUは、Skに応じた半導体スイッチをオンせずに、Skを巡回的にインクリメントする(S88)。これにより、オン/オフする対象の半導体スイッチが巡回的に切り換わる。即ち、この場合は、単に、オン/オフする対象の半導体スイッチが切り換わるだけである。その後、CPUは、タイマTkによる計時を開始するために、ステップS87に処理を移す。
【0084】
以上のように本実施形態1によれば、キャパシタ11a及び半導体スイッチ21aの直列回路と、キャパシタ11b及び半導体スイッチ21bの直列回路とが2つ並列に接続されたキャパシタンス要素31と、同様に構成されたキャパシタ12a,12b及び半導体スイッチ22a,22bを含むキャパシタンス要素32と、・・キャパシタンス要素38とが8つ並列に接続されて、高周波電源5と負荷7との間に設けられている。そして、高周波電源5の出力端又はインピーダンス整合装置の入力端から負荷7側を見たインピーダンスに関するパラメータを高周波検出部6から取得し(ステップS16)、取得したパラメータを用いて、現在の負荷7側のインピーダンス又は反射係数を算出する(ステップS17)。負荷7側のインピーダンスを算出した場合は、調整後の負荷7側のインピーダンスが高周波電源5の出力インピーダンスに近づくように可変キャパシタ1のキャパシタンスを調整すべく、キャパシタンス要素31,32,・・38がとるべきオン/オフ状態を決定する(ステップS34)。一方、反射係数を算出した場合は、実際の反射係数が0に近づくように可変キャパシタ1のキャパシタンスを調整すべく、キャパシタンス要素31,32,・・38がとるべきオン/オフ状態を決定する。その後、決定したオン/オフ状態に対応させるべく半導体スイッチ21a又は21b,22a又は22b,・・28a又は28bの夫々について実際のオン/オフ状態を新たにオン又はオフに調整する場合(ステップS49から呼び出すサブルーチン)、キャパシタンス要素31,32,・・38夫々に含まれる半導体スイッチ21a及び21b,22a及び22b,・・28a及び28bのうち、オン/オフする対象の半導体スイッチを巡回的に切り換える。これにより、スイッチングロスによる発熱が半導体スイッチ21a及び21b,22a及び22b,・・28a及び28bに夫々分散されるため、個々の半導体スイッチの温度上昇が抑えられる。従って、半導体スイッチ21a及び21b,22a及び22b,・・28a及び28bのスイッチングロスによる温度上昇を抑制することが可能となる。
【0085】
また、実施形態1によれば、キャパシタンス要素31,32,・・38夫々に含まれる複数(2つ)の半導体スイッチ21a及び21b,22a及び22b,・・28a及び28bのうち、1つの半導体スイッチ21a又は21b,22a又は22b,・・28a又は28bを夫々累計でN回(Nは2以上の整数)オンからオフに又はオフからオンにした場合、オン/オフする対象の半導体スイッチを、同じキャパシタンス要素31,32,・・38夫々に含まれる複数(2つ)の半導体スイッチの中で巡回的に切り換える。従って、複数(2つ)の半導体スイッチ21a及び21b,22a及び22b,・・28a及び28bの夫々がオン/オフされる頻度を、キャパシタンス要素31,32,・・38夫々に含まれる半導体スイッチの数に応じて低減することができる。
【0086】
更に、実施形態1によれば、キャパシタンス要素31,32,・・38夫々に含まれる複数(2つ)の半導体スイッチ21a及び21b,22a及び22b,・・28a及び28bのうち、1つの半導体スイッチ21a又は21b,22a又は22b,・・28a又は28bを夫々所定時間の間オンからオフに又はオフからオンにした場合、オン/オフする対象の半導体スイッチを、同じキャパシタンス要素31,32,・・38夫々に含まれる複数(2つ)の半導体スイッチの中で巡回的に切り換える。従って、複数(2つ)の半導体スイッチ21a及び21b,22a及び22b,・・28a及び28bの夫々がオン/オフされる頻度を、キャパシタンス要素31,32,・・38夫々に含まれる半導体スイッチの数に応じて低減することができる。
【0087】
更に、実施形態1によれば、キャパシタンス要素31,32,・・38夫々に含まれるキャパシタ11a及び11b,12a及び12b,・・18a及び18bのキャパシタンスの大きさが同等である。制御部3は、複数(2つ)の半導体スイッチ21a及び21b,22a及び22b,・・28a及び28bの夫々について両方をオフにした状態で、1つの半導体スイッチ21a又は21b,22a又は22b,・・28a又は28bを夫々オフからオンにし、その後オンからオフにする。従って、キャパシタンス要素31,32,・・38夫々を外部から見たキャパシタンスを、0にするか又はキャパシタ11a,12a,・・18aのキャパシタンスと同じ大きさにすることができる。
【0088】
更に、実施形態1によれば、可変キャパシタ1に含まれるキャパシタ11a及び11b,12a及び12b,・・18a及び18bの少なくとも一部は、キャパシタンスの大きさが段階的に異なる。従って、並列的に接続されるキャパシタ11a又は11b,12a又は12b,・・18a又は18bの組み合わせによるキャパシタンスの調整範囲を比較的大きくすることができる。
【0089】
更に、実施形態1によれば、自身に含まれるキャパシタのキャパシタンスが大きく、可変キャパシタ1に組み入れられる頻度が低いキャパシタンス要素の一部又は全部について、半導体スイッチの数を少なくして、トータルの半導体スイッチの数を必要最小限にすることができる。
【0090】
(実施形態2)
実施形態1は、キャパシタ及び半導体スイッチの直列回路が2つ並列に接続されたキャパシタンス要素(第1キャパシタンス要素に相当)が8つ並列に接続されている形態であるのに対し、実施形態2は、キャパシタ及び並列的に接続された2つの半導体スイッチが直列的に接続されたキャパシタンス要素(第2キャパシタンス要素に相当)が8つ並列に接続されている形態である。実施形態2に係るインピーダンス整合装置のブロック構成は、実施形態1の場合と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0091】
図11は、実施形態2に係るインピーダンス整合装置100におけるキャパシタンス要素31及び駆動回路41の構成例を示す回路図である。キャパシタンス要素31は、一端が伝送路101に接続されたキャパシタ11と、カソードが接地電位に接続されたPINダイオードである半導体スイッチ21a及び21bとを含む。半導体スイッチ21a及び21b夫々のアノードは、キャパシタC2a及びC2bを介してキャパシタ11の他端に接続されている。キャパシタC2a及びC2bのキャパシタンスは、キャパシタC2a及びC2b夫々とキャパシタ11との合成キャパシタンスがキャパシタ11のキャパシタンスに限りなく近くなるようにするため、キャパシタ11のキャパシタンスより十分大きい。キャパシタC2a及びC2b夫々は、半導体スイッチ21a及び21bに印加される電圧の直流分をカットするものであるため、何れか一方を導線に置き換えてもよい。
【0092】
他のキャパシタンス要素32,33,・・38夫々の構成については、内部にキャパシタ12,13,・・18が含まれる点と、半導体スイッチ22a及び22b,23a及び23b,・・28a及び28bが含まれる点とを除いて上記と同様である。1つのキャパシタンス要素に含まれる半導体スイッチの数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。また、キャパシタンス要素31,32,・・38夫々に含まれる半導体スイッチ21a及び21b,22a及び22b,・・28a及び28bの数は、一定数(ここでは2つ)に限定されない。駆動回路41の構成、及び他の駆動回路42,43,・・48の構成は、その動作内容を含めて実施形態1の場合と同様である。
【0093】
上述の構成において、実施形態1の場合と同様に、半導体スイッチ21a及び21bは、両方が同時にオン状態になることがないように制御される。具体的には、半導体スイッチ21a及び21bは、両方がオフである状態を基本とし、何れか一方がオフからオンに又はオンからオフに制御される。これにより、キャパシタ11a及び11bの何れか一方について、可変キャパシタ1への組み入れが制御される。従って、スイッチ状態設定部4を介して駆動回路41を制御する制御部3の動作は、実施形態1の場合と全く同じであり、図3から図10までを用いて説明した内容がそのまま本実施形態2に適用される。
【0094】
以上のように本実施形態2によれば、キャパシタ11及び並列的に接続された2つの半導体スイッチ21a,21bが直列的に接続されたキャパシタンス要素31と、同様に構成されたキャパシタ12及び半導体スイッチ22a,22bを含むキャパシタンス要素32と、・・キャパシタンス要素38とが8つ並列に接続されている。制御部3は、複数(2つ)の半導体スイッチ21a及び21b,22a及び22b,・・28a及び28bの夫々について両方をオフにした状態で、1つの半導体スイッチ21a又は21b,22a又は22b,・・28a又は28bを夫々オフからオンにし、その後オンからオフにする。従って、キャパシタンス要素31,32,・・38夫々を外部から見たキャパシタンスを、0にするか又はキャパシタ11,12,・・18のキャパシタンスと同じ大きさにすることができる。
【0095】
(実施形態3)
実施形態2は、キャパシタ及び並列的に接続された2つの半導体スイッチが直列的に接続されたキャパシタンス要素が8つ並列に接続されている形態であるのに対し、実施形態3は、キャパシタ及び直列的に接続された2つの半導体スイッチが直列的に接続されたキャパシタンス要素(第2キャパシタンス要素に相当)が8つ並列に接続されている形態である。実施形態3に係るインピーダンス整合装置のブロック構成は、実施形態1の場合と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0096】
図12は、実施形態3に係るインピーダンス整合装置100におけるキャパシタンス要素31及び駆動回路41の構成例を示す回路図である。キャパシタンス要素31は、一端が伝送路101に接続されたキャパシタ11と、キャパシタC2を介して直列的に接続されたPINダイオードである半導体スイッチ21a及び21bとを含む。半導体スイッチ21aのアノードは、キャパシタ11の他端に接続されている。半導体スイッチ21bのカソードは、接地電位に接続されている。半導体スイッチ21aのカソード及びキャパシタC2の接続点は、交流分をカットするためのチョークコイルであるインダクタL2を介して接地電位に接続されている。キャパシタC2のキャパシタンスは、キャパシタ11との合成キャパシタンスがキャパシタ11のキャパシタンスに限りなく近くなるようにするため、キャパシタ11のキャパシタンスより十分大きい。
【0097】
他のキャパシタンス要素32,33,・・38夫々の構成については、内部にキャパシタ12,13,・・18が含まれる点と、半導体スイッチ22a及び22b,23a及び23b,・・28a及び28bが含まれる点とを除いて上記と同様である。1つのキャパシタンス要素に含まれる半導体スイッチの数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。また、キャパシタンス要素31,32,・・38夫々に含まれる半導体スイッチ21a及び21b,22a及び22b,・・28a及び28bの数は、一定数(ここでは2つ)に限定されない。駆動回路41の構成、及び他の駆動回路42,43,・・48の構成は、その動作内容を含めて実施形態1の場合と同様である。
【0098】
上述の構成において、実施形態1及び2の場合とは異なり、半導体スイッチ21a及び21bは、両方が同時にオフ状態になることがないように制御される。具体的には、半導体スイッチ21a及び21bは、両方がオンである状態を基本とし、何れか一方がオンからオフに又はオフからオンに制御される。これにより、キャパシタ11の可変キャパシタ1への組み入れが制御される。スイッチ状態設定部4を介して駆動回路41を制御する制御部3の動作は、スイッチ切換に係るサブルーチンを実行する直前(図6のステップS48の直前)まで実施形態1の場合と全く同じであり、図3から図6までを用いて説明した内容がそのまま本実施形態2に適用される。
【0099】
図13は、実施形態3に係るインピーダンス整合装置100における半導体スイッチ21a及び21bのオン/オフ動作を示すタイミングチャートである。図13に示すタイミングチャートは、実施形態1の図7に示す場合と比較して、第1スイッチ及び第2スイッチのオン/オフ状態の変化態様に違いがある。インピーダンスの更新周期、インピーダンスの整合演算、並びに第1スイッチ及び第2スイッチのオン/オフ回数については図7に示す場合と同様であるため、図に関するその他の詳細な説明を省略する。
【0100】
図13に示す例では、第1スイッチ又は第2スイッチのオン/オフ回数が4になる時(4は図示せず)に、オン/オフする対象のスイッチが巡回的に切り換わる。具体的には、時刻t11で第2スイッチがオフからオンに制御されてオン/オフ回数が3から4になる時に、オン/オフする対象のスイッチが第2スイッチから第1スイッチに巡回的に切り換わる。この時点では、第1スイッチの状態に変化はない。オン/オフする対象のスイッチではなくなった第2スイッチはオンの状態が維持される。その後、インピーダンスが更新されて半導体スイッチ21のオン/オフを切り換える必要が生じる都度、第1スイッチがオンからオフに又はオフからオンに制御され、その都度第1スイッチのオン/オフ回数がカウントアップされる。
【0101】
時刻t12では、第1スイッチがオフからオンに制御されてオン/オフ回数が3から4になる時に、オン/オフする対象のスイッチが第1スイッチから第2スイッチに巡回的に切り換わる。この時点では、第2スイッチの状態に変化はない。オン/オフする対象のスイッチではなくなった第1スイッチはオンの状態が維持される。その後、インピーダンスが更新されて半導体スイッチ21のオン/オフを切り換える必要が生じる都度、第2スイッチがオンからオフに又はオフからオンに制御され、その都度第2スイッチのオン/オフ回数がカウントアップされる。以下同様に、オン/オフする対象のスイッチが、時刻t13にて第1スイッチに巡回的に切り換わり、時刻t14にて第1スイッチから第2スイッチに巡回的に切り換わる。
【0102】
図13における第1スイッチ及び第2スイッチのオン/オフ状態の変化態様を、実施形態1の図7に例示したものと比較すれば、図7におけるオンからオフへの変化及びオフからオンへの変化の夫々が、図13ではオフからオンへの変化及びオンからオフへの変化に置き換わっていると言える。換言すれば、実施形態1の図9及び図10に示す処理中の「オン」を「オフ」に、「オフ」を「オン」に置き換えることにより、図9及び図10に示す処理が本実施形態3にも適用できる。
【0103】
より具体的に、図9では、ステップS65にて「スイッチ番号Skに応じた半導体スイッチがオフであるか否かを判定」し、ステップS66にて「Skに応じた半導体スイッチをオン」し、ステップS70にて「新たなSkに応じた半導体スイッチをオフ」する。また、図10では、ステップS82にて「スイッチ番号Skに応じた半導体スイッチがオフであるか否かを判定」し、ステップS83にて「Skに応じた半導体スイッチをオン」し、ステップS85にて「新たなSkに応じた半導体スイッチをオフ」する。
【0104】
以上のように本実施形態3によれば、キャパシタ11及び直列的に接続された2つの半導体スイッチ21a,21bが直列に接続されたキャパシタンス要素31と、同様に構成されたキャパシタ12及び半導体スイッチ22a,22bを含むキャパシタンス要素32と、・・キャパシタンス要素38とが8つ並列に接続されている。制御部3は、複数(2つ)の半導体スイッチ21a及び21b,22a及び22b,・・28a及び28bの夫々について両方をオンにした状態で、1つの半導体スイッチ21a又は21b,22a又は22b,・・28a又は28bを夫々オンからオフにし、その後オフからオンにする。従って、キャパシタンス要素31,32,・・38夫々を外部から見たキャパシタンスを、0にするか又はキャパシタ11,12,・・18のキャパシタンスと同じ大きさにすることができる。
【0105】
なお、実施形態2にあっては、1つのキャパシタ及び並列的に接続された複数の半導体スイッチを直列的に接続して1つのキャパシタンス要素とし、実施形態3にあっては、1つのキャパシタ及び直列的に接続された複数の半導体スイッチを直列的に接続して1つのキャパシタンス要素としたが、これらを組み合わせてもよい。具体的には、並列的に接続された複数の半導体スイッチと、直列的に接続された複数の半導体スイッチとの並列回路を、1つのキャパシタと直列的に接続して1つのキャパシタンス要素としてもよい。この場合、例えば、並列的に接続された複数の半導体スイッチのうちで、オン/オフする半導体スイッチを巡回的に切り換え、この巡回的な切り換えが一巡した場合、次は直列的に接続された複数の半導体スイッチのうちで、オン/オフする半導体スイッチを巡回的に切り換え、これらを繰り返せばよい。
【0106】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、各実施形態で記載されている技術的特徴は、お互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0107】
100 インピーダンス整合装置
101 伝送路
1 可変キャパシタ
C1、C2、C2a、C2b キャパシタ
L1、L2 インダクタ
11、12、13、14、15、16、17、18 キャパシタ
11a、12a、13a、14a、15a、16a、17a、18a キャパシタ
11b、12b、13b、14b、15b、16b、17b、18b キャパシタ
21a、22a、23a、24a、25a、26a、27a、28a 半導体スイッチ
21b、22b、23b、24b、25b、26b、27b、28b 半導体スイッチ
31、32、33、34、35、36、37、38 キャパシタンス要素
41、42、43、44、45、46、47、48 駆動回路
QH、QL トランジスタ
R 抵抗器
SC スピードアップコンデンサ
F フィルタ
FC キャパシタ
FL インダクタ
2 算出部
3 制御部
4 スイッチ状態設定部
5 高周波電源
6 高周波検出部
7 負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13