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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】レーザ処理装置およびレーザ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20220714BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
H01L21/268 G
H01L21/20
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2018507038
(86)(22)【出願日】2017-10-10
(86)【国際出願番号】 JP2017036660
(87)【国際公開番号】W WO2018074283
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2016206095
(32)【優先日】2016-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】521476506
【氏名又は名称】JSWアクティナシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】鄭 石煥
(72)【発明者】
【氏名】町田 政志
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-108271(JP,A)
【文献】特開2006-253285(JP,A)
【文献】特開2005-074466(JP,A)
【文献】特開2007-288128(JP,A)
【文献】特開2008-311249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/268
H01L 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体に対し、レーザ光を相対的に走査しつつ照射するレーザ処理装置において、
前記被処理体および前記レーザ光の一方または両方を移動させる走査移動部と、
前記被処理体に前記レーザ光を照射するレーザ光照射部と、
前記被処理体において前記レーザ光が照射されている照射領域に対し、少なくとも第1のガスを放出するガス放出部と、を備え、
前記ガス放出部は、レーザ光照射中の前記被処理体と対面する位置に整流面を有し、さらに、前記走査方向の両側方側で、移動する前記被処理体に対し第3のガスを放出する第3ガス放出口およびガス側方吸引口の一方または両方が設けられており、
前記整流面には、前記第1のガスが放出される第1ガス放出口と、少なくとも走査方向において、前記第1ガス放出口の両外側で、レーザ光照射中の前記被処理体に対し第2のガスを放出する第2ガス放出口およびガス前後吸引口の一方または両方が設けられていることを特徴とするレーザ処理装置。
【請求項2】
被処理体に対し、レーザ光を相対的に走査しつつ照射するレーザ処理装置において、
前記被処理体および前記レーザ光の一方または両方を移動させる走査移動部と、
前記被処理体に前記レーザ光を照射するレーザ光照射部と、
前記被処理体において前記レーザ光が照射されている照射領域に対し、少なくとも第1のガスを放出するガス放出部と、を備え、
前記ガス放出部は、レーザ光照射中の前記被処理体と対面する位置に整流面を有し、
前記整流面には、前記第1のガスが放出される第1ガス放出口と、少なくとも走査方向において、前記第1ガス放出口の両外側で、レーザ光照射中の前記被処理体に対し第2のガスを放出する第2ガス放出口およびガス前後吸引口の一方または両方が設けられており、前記第1ガス放出口の両外側の一方または両方で、前記第2ガス放出口と前記ガス前後吸引口とを有し、前記ガス前後吸引口が前記第2ガス放出口の内側に位置していることを特徴とするレーザ処理装置。
【請求項3】
被処理体に対し、レーザ光を相対的に走査しつつ照射するレーザ処理装置において、
前記被処理体および前記レーザ光の一方または両方を移動させる走査移動部と、
前記被処理体に前記レーザ光を照射するレーザ光照射部と、
前記被処理体において前記レーザ光が照射されている照射領域に対し、少なくとも第1のガスを放出するガス放出部と、を備え、
前記ガス放出部には、レーザ光が透過して前記被処理体にレーザ光を照射し、かつ前記被処理体に向けて第1のガスを放出する第1ガス放出口を有するレーザ光照射局所シールボックスを有し、
前記レーザ光照射局所シールボックスの走査方向外側に、レーザ光照射中の前記被処理体と対面する位置に整流面が伸張しており、、
前記整流面には、少なくとも走査方向において、前記第1ガス放出口の両外側で、レーザ光照射中の前記被処理体に対し第2のガスを放出する第2ガス放出口およびガス前後吸引口の一方または両方が設けられていることを特徴とするレーザ処理装置。
【請求項4】
被処理体に対し、レーザ光を相対的に走査しつつ照射するレーザ処理装置において、
前記被処理体および前記レーザ光の一方または両方を移動させる走査移動部と、
前記被処理体に前記レーザ光を照射するレーザ光照射部と、
前記被処理体において前記レーザ光が照射されている照射領域に対し、少なくとも第1のガスを放出するガス放出部と、を備え、
前記ガス放出部は、レーザ光照射中の前記被処理体と対面する位置に整流面を有し、
前記整流面には、前記第1のガスが放出される第1ガス放出口と、少なくとも走査方向において、前記第1ガス放出口の両外側で、レーザ光照射中の前記被処理体に対し第2のガスを放出する第2ガス放出口およびガス前後吸引口の一方または両方が設けられており、
第2のガスは除電されて第2ガス放出口に供給されるものであることを特徴とするレーザ処理装置。
【請求項5】
第2のガスおよび第3のガスの一方または両方が除電されてガスの放出口に供給されるものであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項6】
前記第1ガス放出口は、前記照射領域が覆われる範囲に第1のガスが放出されるものであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項7】
前記第2ガス放出口および前記ガス前後吸引口は、前記照射領域の幅方向形状を両側で超える形状を有していることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項8】
前記第3ガス放出口および前記ガス側方吸引口は、前記照射領域の走査方向における形状を両側で超える形状を有していることを特徴とする請求項1に記載のレーザ処理装置。
【請求項9】
前記第2ガス放出口が、第1ガス放出口を基準にして、下方外側に向けて第2のガスを放出する所定の放出角を有することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項10】
前記放出角が45度以上であることを特徴とする請求項9に記載のレーザ処理装置。
【請求項11】
前記整流面は、移動する被処理体との間の間隔が10mm以下であることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項12】
前記整流面は、第1ガス放出口を基準にして、走査方向において、照射面上のレーザ光の長さより10mm以上の長さで伸長していることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項13】
前記第2ガス放出口は、第1ガス放出口を基準にして、走査方向で1mm以上離れた位置に設けられていることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項14】
前記レーザ光は、前記被処理体に対する照射面上において、ラインビーム形状を有することを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項15】
前記被処理体が非単結晶半導体であり、前記レーザ処理装置は、前記非単結晶半導体を単結晶化するものであることを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項16】
前記整流面から放出されるガスが不活性ガスであることを特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項17】
被処理体に対し、レーザ光を相対的に走査しつつ照射するレーザ処理方法において、
照射位置にある前記被処理体と対面する位置に整流面を有し、
該整流面から、前記レーザ光が照射されている照射領域に対し、第1のガスを放出するとともに、少なくとも走査方向において、第1のガスが放出されている前記整流面の区域の両外側で、第2のガスの放出およびガスの吸引の一方または両方を行い、
前記第1のガスの放出の際に、第1のガスが放出されている前記整流面の区域の両側方側で、さらに第3のガスの放出およびガスの吸引の一方または両方を行うことを特徴とするレーザ処理方法。
【請求項18】
被処理体に対し、レーザ光を相対的に走査しつつ照射するレーザ処理方法において、
照射位置にある前記被処理体と対面する位置に整流面を有し、
該整流面から、前記レーザ光が照射されている照射領域に対し、第1のガスを放出するとともに、少なくとも走査方向において、第1のガスが放出されている前記整流面の区域の両外側で、第2のガスの放出およびガスの吸引を行い、
前記第2のガス放出位置の照射領域側の内側位置でガスの吸引を行うことを特徴とするレーザ処理方法。
【請求項19】
被処理体に対し、レーザ光を相対的に走査しつつ照射するレーザ処理方法において、
照射位置にある前記被処理体と対面する位置に整流面を有し、
該整流面から、前記レーザ光が照射されている照射領域に対し、第1のガスを放出するとともに、少なくとも走査方向において、第1のガスが放出されている前記整流面の区域の両外側で、第2のガスの放出およびガスの吸引の一方または両方を行い、
第2のガスは除電して放出することを特徴とするレーザ処理方法。
【請求項20】
第2のガスおよび第3のガスの一方または両方が除電して放出することを特徴とする請求項17または18に記載のレーザ処理方法。
【請求項21】
前記ガスの吸引は、前記第1のガスの放出量に合わせて吸引量が定められていることを特徴とする請求項17~20のいずれか1項に記載のレーザ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被処理体にレーザ光を照射して所望の処理を行うレーザ処理装置およびレーザ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上のシリコン半導体膜などにレーザ光を照射してアニール処理を行う装置では、基板上で、レーザ光が照射される領域を囲む局所ガス雰囲気を形成して処理を行う装置が知られている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
図12は、従来のレーザ処理装置の一例を示す図である。
この装置では、処理室100の天板下部にレーザ光照射局所シールボックス110が設けられており、レーザ光照射局所シールボックス110の上部天板にレーザ光導入窓101が設けられている。レーザ光照射局所シールボックス110の下面には、基板120の移動方向前後に伸びる整流板111が連続して形成されている。
レーザ光照射局所シールボックス110には、窒素ガスが導入され、レーザ光照射局所シールボックス110の下面に設けられたレーザ光透過孔112を通して窒素ガスが下方に放出される。
また、処理室100内には、基板を保持して図示左右方向に移動可能なステージ102が設置されている。処理室100の側方部には出入り口104が設けられており、出入り口104は、ゲートバルブ103の動作によって開閉される。
【0004】
処理に際しては、ゲートバルブ103によって出入り口104を開けて処理室100内に基板120を導入し、基板120の導入後、ゲートバルブ103で出入り口104を閉じる。基板120は、非単結晶半導体膜(図示しない)が形成されている。なお、出入り口104を開けた際には、外気が処理室100内に乱入する。
基板120は、ステージ102で保持され、ステージ102とともに処理室100内を所定の速度で移動し、レーザ光透過孔112を通してレーザ光130が基板120に照射される。基板120では、レーザ光130の照射により、非単結晶の半導体膜が単結晶化される。レーザ光130の照射に際しては、レーザ光照射局所シールボックス110のレーザ光透過孔112から窒素ガスが放出され、レーザ光の照射領域を囲むように局所ガス雰囲気を形成して外気の影響をできるだけ排除している。処理済みの基板120を取り出す際には、ゲートバルブ103によって出入り口を開けて基板120を処理室100外に取り出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-217124号公報
【文献】特許第5408678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に記載したように、従来技術では、基板に対するレーザ光の照射位置には、レーザ光軸に沿ってガスが基板に向かって噴出されている。しかし、レーザ光照射位置にガス流を噴射すると、レーザ光照射位置周辺において乱流が生じる。
乱流を防ぐために、噴射するガス流を層流とする改良がなされているが、基板へのガス流衝突による乱流発生は避けられない。また、ガス流速を遅くし乱流を穏やかにすることも試みられているが、本来の目的である均一な雰囲気を形成することが困難になる。乱流が生じるとガス圧力や温度の乱れが発生する。その結果レーザに対する光屈折率の変化が生じレーザ光照射位置におけるレーザ強度が不均一となってレーザ光照射処理を均一に行えなくなる。また、レーザ光照射により、半導体膜(例えばSi膜)からは構成元素(例えばSi)の蒸気または微粒子が発生すると、レーザ光の光路上の光屈折率の変化をもたらしたり、レーザを遮ったりする。乱流が生じている状態や流速が著しく小さい状態では、前述の蒸気や微粒子などの被照射物から発生する物質をレーザ光路上から排出することが困難である。この課題は、本発明のガス吸引口に対応するものである。
さらに、レーザ光の照射位置周辺において、基板の搬入・搬出する際に安定化された雰囲気が外部のガス流により乱れる問題がある。この課題は、本発明の第2または第3ガスの放出口に対応するものである。
【0007】
この発明は、上記のような従来のものの課題を解決するためになされたもので、ガス流の乱流を防止して、均一な雰囲気を任意のガス種により維持させることを可能にするレーザ処理装置およびレーザ処理方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明のレーザ処理装置のうち、第1の形態の本発明は、
被処理体に対し、レーザ光を相対的に走査しつつ照射するレーザ処理装置において、
前記被処理体および前記レーザ光の一方または両方を移動させる走査移動部と、
前記被処理体に前記レーザ光を照射するレーザ光照射部と、
前記被処理体において前記レーザ光が照射されている照射領域に対し、少なくとも第1のガスを放出するガス放出部と、を備え、
前記ガス放出部は、レーザ光照射中の前記被処理体と対面する位置に整流面を有し、さらに、前記走査方向の両側方側で、移動する前記被処理体に対し第3のガスを放出する第3ガス放出口およびガス側方吸引口の一方または両方が設けられており、
前記整流面には、前記第1のガスが放出される第1ガス放出口と、少なくとも走査方向において、前記第1ガス放出口の両外側で、レーザ光照射中の前記被処理体に対し第2のガスを放出する第2ガス放出口およびガス前後吸引口の一方または両方が設けられていることを特徴とする。
他の形態のレーザ処理装置の発明は、被処理体に対し、レーザ光を相対的に走査しつつ照射するレーザ処理装置において、
前記被処理体および前記レーザ光の一方または両方を移動させる走査移動部と、
前記被処理体に前記レーザ光を照射するレーザ光照射部と、
前記被処理体において前記レーザ光が照射されている照射領域に対し、少なくとも第1のガスを放出するガス放出部と、を備え、
前記ガス放出部は、レーザ光照射中の前記被処理体と対面する位置に整流面を有し、
前記整流面には、前記第1のガスが放出される第1ガス放出口と、少なくとも走査方向において、前記第1ガス放出口の両外側で、レーザ光照射中の前記被処理体に対し第2のガスを放出する第2ガス放出口およびガス前後吸引口の一方または両方が設けられており、前記第1ガス放出口の両外側の一方または両方で、前記第2ガス放出口と前記ガス前後吸引口とを有し、前記ガス前後吸引口が前記第2ガス放出口の内側に位置している
他の形態のレーザ処理装置の発明は、被処理体に対し、レーザ光を相対的に走査しつつ照射するレーザ処理装置において、
前記被処理体および前記レーザ光の一方または両方を移動させる走査移動部と、
前記被処理体に前記レーザ光を照射するレーザ光照射部と、
前記被処理体において前記レーザ光が照射されている照射領域に対し、少なくとも第1のガスを放出するガス放出部と、を備え、
前記ガス放出部には、レーザ光が透過して前記被処理体にレーザ光を照射し、かつ前記被処理体に向けて第1のガスを放出する第1ガス放出口を有するレーザ光照射局所シールボックスを有し、
前記レーザ光照射局所シールボックスの走査方向外側に、レーザ光照射中の前記被処理体と対面する位置に整流面が伸張しており、、
前記整流面には、少なくとも走査方向において、前記第1ガス放出口の両外側で、レーザ光照射中の前記被処理体に対し第2のガスを放出する第2ガス放出口およびガス前後吸引口の一方または両方が設けられていることを特徴とする。
他の形態のレーザ処理装置の発明は、被処理体に対し、レーザ光を相対的に走査しつつ照射するレーザ処理装置において、
前記被処理体および前記レーザ光の一方または両方を移動させる走査移動部と、
前記被処理体に前記レーザ光を照射するレーザ光照射部と、
前記被処理体において前記レーザ光が照射されている照射領域に対し、少なくとも第1のガスを放出するガス放出部と、を備え、
前記ガス放出部は、レーザ光照射中の前記被処理体と対面する位置に整流面を有し、
前記整流面には、前記第1のガスが放出される第1ガス放出口と、少なくとも走査方向において、前記第1ガス放出口の両外側で、レーザ光照射中の前記被処理体に対し第2のガスを放出する第2ガス放出口およびガス前後吸引口の一方または両方が設けられており、
第2のガスは除電されて第2ガス放出口に供給されるものであることを特徴とする。
他の形態のレーザ処理装置の発明は、前記形態の発明において、第2のガスおよび第3のガスの一方または両方が除電されてガスの放出口に供給されるものであることを特徴とする。
【0009】
さらに、他の形態のレーザ処理装置の発明は、前記形態の本発明において、
前記第1ガス放出口は、前記照射領域が覆われる範囲に第1のガスが放出されるものであることを特徴とする。
【0010】
さらに、他の形態のレーザ処理装置の発明は、前記形態の本発明において、前記第2ガス放出口および前記ガス前後吸引口は、前記照射領域の幅方向形状を両側で超える形状を有していることを特徴とする。
【0012】
さらに、他の形態のレーザ処理装置の発明は、前記形態の本発明において、前記第3ガス放出口および前記ガス側方吸引口は、前記照射領域の走査方向における形状を両側で超える形状を有していることを特徴とする。
【0014】
さらに、他の形態のレーザ処理装置の発明は、前記形態の本発明において、前記第2ガス放出口が、第1ガス放出口を基準にして、下方外側に向けて第2のガスを放出する所定の放出角を有することを特徴とする。
【0015】
さらに、他の形態のレーザ処理装置の発明は、前記形態の本発明において、前記放出角が45度以上であることを特徴とする。
【0016】
さらに、他の形態のレーザ処理装置の発明は、前記形態の本発明において、前記整流面は、移動する被処理体との間の間隔が10mm以下であることを特徴とする。
【0017】
さらに、他の形態のレーザ処理装置の発明は、前記形態の本発明において、前記整流面は、前記第1放出口を基準にして、走査方向において、照射面上のレーザ光の長さより10mm以上の長さで伸長していることを特徴とする。
【0018】
さらに、他の形態のレーザ処理装置の発明は、前記形態の本発明において、前記第2ガス放出口は、第1ガス放出口を基準にして、走査方向で1mm以上離れた位置に設けられていることを特徴とする。
【0019】
さらに、他の形態のレーザ処理装置の発明は、前記形態の本発明において、前記レーザ光は、前記被処理体に対する照射面上において、ラインビーム形状を有することを特徴とする。
【0020】
さらに、他の形態のレーザ処理装置の発明は、前記形態の本発明において、前記被処理体が非単結晶半導体であり、前記レーザ処理装置は、前記非単結晶半導体を結晶化するものであることを特徴とする。
【0022】
さらに、他の形態のレーザ処理装置の発明は、前記形態の本発明において、前記整流面から放出されるガスが不活性ガスであることを特徴とする。
【0023】
さらに、他の形態のレーザ処理装置の発明は、前記形態の本発明において、前記第3のガスが不活性ガスであることを特徴とする。
【0024】
本発明のレーザ処理方法のうち、第1の形態の本発明は、処理体に対し、レーザ光を相対的に走査しつつ照射するレーザ処理方法において、
照射位置にある前記被処理体と対面する位置に整流面を有し、
該整流面から、前記レーザ光が照射されている照射領域に対し、第1のガスを放出するとともに、少なくとも走査方向において、第1のガスが放出されている前記整流面の区域の両外側で、第2のガスの放出およびガスの吸引の一方または両方を行い
前記第1のガスの放出の際に、第1のガスが放出されている前記整流面の区域の両側方側で、さらに第3のガスの放出およびガスの吸引の一方または両方を行うことを特徴とする。
他の形態のレーザ処理方法の発明は、被処理体に対し、レーザ光を相対的に走査しつつ照射するレーザ処理方法において、
照射位置にある前記被処理体と対面する位置に整流面を有し、
該整流面から、前記レーザ光が照射されている照射領域に対し、第1のガスを放出するとともに、少なくとも走査方向において、第1のガスが放出されている前記整流面の区域の両外側で、第2のガスの放出およびガスの吸引を行い、
前記第2のガス放出位置の照射領域側の内側位置でガスの吸引を行うことを特徴とする。
他の形態のレーザ処理方法の発明は、被処理体に対し、レーザ光を相対的に走査しつつ照射するレーザ処理方法において、
照射位置にある前記被処理体と対面する位置に整流面を有し、
該整流面から、前記レーザ光が照射されている照射領域に対し、第1のガスを放出するとともに、少なくとも走査方向において、第1のガスが放出されている前記整流面の区域の両外側で、第2のガスの放出およびガスの吸引の一方または両方を行い、
第2のガスは除電して放出することを特徴とする。
他の形態のレーザ処理方法の発明は、前記形態の発明において、第2のガスおよび第3のガスの一方または両方が除電して放出することを特徴とする。
【0025】
他の形態のレーザ処理方法の発明は、前記形態の本発明において、前記第1のガスの放出の際に、第1のガスが放出されている前記整流面の区域の両側方側で、さらに第3のガスの放出およびガスの吸引の一方または両方を行うことを特徴とする。
【0026】
他の形態のレーザ処理方法の発明は、前記形態の本発明において、前記ガスの吸引は、前記第1のガスの放出量に合わせて吸引量が定められていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
すなわち、本発明によれば、被処理体における、少なくともレーザ光の照射領域付近に、ガスによる局所雰囲気を形成でき、かつガスの流れを安定させて乱流が生ずるのを回避することができ、安定した雰囲気でレーザ光照射による処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態のレーザ処理装置の概略を示す正面図である。
図2】同じく、レーザ光照射局所シールボックス周辺の構成を示す拡大した正面図である。
図3】同じく、レーザ光照射局所シールボックスの底面を示す図である。
図4】本発明の他の一実施形態のレーザ処理装置の概略を示す正面図である。
図5】同じく、レーザ光照射局所シールボックス周辺の構成を示す拡大した正面図である。
図6】同じく、レーザ光照射局所シールボックスの底面を示す図である。
図7】本発明のさらに他の実施形態のレーザ処理装置の概略を示す正面図である。
図8】同じく、レーザ光照射局所シールボックス周辺の構成を示す拡大した正面図である。
図9】同じく、レーザ光照射局所シールボックスの底面を示す図である。
図10】本発明のさらに他の実施形態のレーザ処理装置に設けられたレーザ光照射局所シールボックスを示す図である。
図11】本発明のさらに他の実施形態のレーザ処理装置に設けられたレーザ光照射局所シールボックスを示す図である。
図12】従来のレーザ処理装置の概略を示す正面図であって、基板導入時と基板設置後のレーザ光処理時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施形態1)
以下に、本発明の一実施形態を図1~3に基づいて説明する。
レーザ処理装置1は、処理室2と処理室2外に設置されたレーザ光源3とを有しており、レーザ光源3から出力されたレーザ光50を、光学系4を通して処理室2に導波することができる。光学系4には、アテニュエータ、レンズ、ミラーなどを備えており、本願発明としてはその構成が特に限定されるものではない。
【0030】
処理室2内には、図1で左右方向に移動可能なステージ5を有しており、該ステージ5によって基板120を保持することができる。ステージ5は、基板120の設置面から移動方向前後にステージ整流板5A、5Bが設けられている。ステージ整流板5A、5Bは、設置面に基板120を設置した際に、ステージ整流板5A、5Bの高さが基板120の高さに略一致するように基板120に取り付けられている。より望ましくは、前記高さが互いに一致するか、ステージ整流板5A、5Bの高さが基板120の高さよりも僅かに高いものとすることができる。ステージ整流板5A、5Bの長さは、ステージ整流板5Aにおいて、ステージ5が基板搬送初期位置に移動してもレーザ光透過孔11から外れない長さ、ステージ整流板5Bで、ステージ5がドアバルブ6反対側終点まで動いてもレーザ光透過孔11から外れない長さとするのが望ましく、さらには、上記各位置で、走査方向において、ステージ整流板5A、5Bが、少なくともレーザ光透過孔11の長さ全体に至る位置まで伸長しているのが一層望ましい。
なお、この実施形態では、レーザ光の相対的な走査は、ステージによって被処理体を移動させることにより行うが、本発明としてはレーザ光側を移動させるものであってもよく、また、レーザ光と被処理体の両方を移動させるものであってもよい。
【0031】
基板120には、表面側に図示しない非単結晶半導体膜が形成されている。この実施形態では、基板120は、本発明の被処理体に相当する。ステージ5は、被処理体移動装置に相当するが、被処理体移動装置は、ステージに限定されるものではなく、例えば、被処理体をガス浮上させて移動させるようなものでもよく、本発明としては移動装置の構成、移動方法は特に限定されない。
また、処理室2の側方には、基板120を出入りさせる出入り口7を有し、出入り口7の開閉はドアバルブ6の動作によって行う。
【0032】
また、処理室2は、光学系4から出射されたレーザ光50を処理室2外から処理室2内に導入するレーザ光導入窓8を天板位置に有している。
レーザ光導入窓8の下方側の処理室2内には、レーザ光照射局所シールボックス10が設けられており、レーザ光照射局所シールボックス10の下面に設けられたレーザ光透過孔11を通して、レーザ光50が下方側に照射される。レーザ光50は、光学系4によって光学系4から出射される際にはラインビーム形状を有しており、レーザ光透過孔11は、レーザ光50が透過する長孔形状を有している。この際に、レーザ光50の短軸または長軸の端部をレーザ光透過孔11で遮蔽するようにしてもよい。
【0033】
また、レーザ光照射局所シールボックス10には、ガス導入孔12が形成されており、レーザ光照射局所シールボックス10外からガス導入孔12を通してレーザ光照射局所シールボックス10内に窒素ガスを供給することができる。
レーザ光照射局所シールボックス10の下面には、ステージ5の移動方向において、レーザ光照射局所シールボックス10の両側壁を超えた整流板13が伸長しており、該整流板13に、レーザ光透過孔11が形成されている。レーザ光照射局所シールボックス10は、本発明のガス放出部を兼用し、レーザ光透過孔11は、第1ガス放出口を兼用する。レーザ光透過孔11とは別に第1ガス放出口を設けたものであってもよい。
【0034】
整流板13の下面は、ステージ5によって移動する基板120と対面し、かつ沿った整流面を有している。整流面は、ステージ5によって移動する基板120と10mm以下の間隔を有しているのが望ましい。
整流板13には、ステージ5の移動方向において、レーザ光照射局所シールボックス10の両外側にそれぞれガス前後吸引口15を有している。ガス前後吸引口15は、レーザ光透過孔11に沿った長孔形状を有しており、レーザ光透過孔11の長尺方向両端をそれぞれ超える形状を有している。また、ガス前後吸引口15はレーザ光透過孔11に近い位置に設けることが望ましい。
【0035】
次に、レーザ処理装置1における動作について説明する。
処理の開始に伴って、ドアバルブ6を動作させて出入り口7を開口し、処理室2外から基板120を処理室2内に導入し、ステージ5上に設置する。基板120の導入に際しては、基板120を処理室2内に収めると直ちにドアバルブ6によって出入り口7を閉鎖する。
基板120の導入とともに、ガス導入孔12からレーザ光照射局所シールボックス10内に窒素ガスを導入する。窒素ガスは、本発明の第1のガスに相当する。窒素ガスは、レーザ光透過孔11から下方側に向けて窒素ガスを放出する。また、ガス前後吸引口15では、図示しないポンプなどを介してガスの吸引がなされる。ガスの吸引量は、レーザ光透過孔11から放出されるガス量に見合う量に設定するのが望ましい。これによりレーザ光透過孔11から放出するガスの殆どがガス前後吸引口15から吸引されて、安定したガスの流れが形成される。なお、ガス前後吸引口15とレーザ光透過孔11との距離は、あまりに小さいと、十分なガスの流れが形成されず、前記距離があまりに大きいと、ガス流の安定化が難しくなる。
【0036】
一方、ステージ5は、基板120を載置して、図1で右方向に所定速度で移動する。
ステージ5に取り付けられたステージ整流板5Aがガスの流れ位置に達すると、下方側のガスの流れが抑制されて、レーザ光透過孔11からガス前後吸引口15に至るガスの流れが一層安定化する。また、レーザ光源3では、レーザ光50が出力され、光学系4でエネルギー調整、ビーム成形、ビーム状のエネルギー強度の均一化などがなされ、ラインビーム形状にして光学系4から出射される。ラインビーム形状としたレーザ光50は、レーザ光導入窓8を通してレーザ光照射局所シールボックス10内に導入され、レーザ光透過孔11を通して下方側に照射される。
【0037】
基板120は、ステージ5で移動しつつレーザ光透過孔11の下方側にレーザ光50が照射される。ステージ5が移動することで、レーザ光50は、基板120に対し相対的な走査がなされる。この際には、基板120上において、レーザ光の照射領域50Aは窒素ガスで覆われるとともに、窒素が安定して流れる局所雰囲気が形成されて良好なレーザ処理がなされる。また、基板120がレーザ光透過孔11を通過した後、レーザ光透過孔11の下方側にはステージ整流板5Bがしばらく位置し、レーザ光透過孔11から前方側のガス前後吸引口15に至るガスの流れがより安定した状態になり、結晶化がより良好になされる。
この実施形態では、非単結晶の半導体膜(例えば非晶質シリコン膜や多結晶シリコン膜など)が形成されており、レーザ光の照射により単結晶化された半導体膜が得られる。したがって、この実施形態では、レーザ光処理装置は、レーザ光結晶化装置といえる。
処理後は、ドアバルブ6によって出入り口7を開けて処理済みの基板120を処理室外に搬出することができる。
なお、この実施形態では、第1ガス放出口に対し、移動方向において前後にガス前後吸引口を有するものとして説明したが、さらに、これに加えて第1ガス放出口の側方のガス側方吸引口を備えるものとしてもよい。
【0038】
(実施形態2)
次に、他の実施形態のレーザ処理装置1Aを図4図6に基づいて説明する。
なお、この実施形態2で、前記実施形態と同様の構成を有するものについては同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
この実施形態2においても処理室2には、レーザ光照射局所シールボックス10を有しており、レーザ光照射局所シールボックス10の下面には整流板13を有している。また、整流板13には、レーザ光透過孔11を有している。この実施形態でも、整流板13の下面側の整流面は、ステージ5で移動する基板120と10mm以下の間隔になるように設定されている。
【0039】
実施形態2では、整流板13には、ステージ5の移動方向において、レーザ光照射局所シールボックス10の両外側にそれぞれ第2のガスを放出する第2ガス放出口16を有し、レーザ光照射局所シールボックス10の両側方側にそれぞれ第3のガスを放出する第3ガス放出口17を有している。
第2ガス放出口16は、レーザ光透過孔11に沿った長孔形状を有しており、レーザ光透過孔11の長尺両端をそれぞれ超える形状を有している。また、第2ガス放出口16の中心がレーザ光照射局所シールボックス10の端に設けることが望ましい。
【0040】
また、第2ガス放出口16は、レーザ光透過孔11を基準にして、外側に放出する放出角θを有するのが望ましい。放出角θは、鉛直方向を0度として、45度以上の角度を有するのが望ましい。これにより、外側に向けてガスを放出することができる。
また、第3ガス放出口17は、レーザ光透過孔11の側方に沿った長孔形状を有しており、レーザ光透過孔11の短尺両端をそれぞれ超える形状を有している。さらには、第2ガス放出口16の近傍にまで伸長しているのが望ましい。なお、この実施形態では、第2ガス放出口16と第3ガス放出口17とは非連続なものとして説明しているが、これらが連続した形状とすることも可能である。
また、第1のガス、第2のガス、第3のガスは、同じ種類でもよく、異なる種類であってもよい。また、同種のガスであって、純度が異なるものであってもよい。例えば、第1のガスに純度の高い不活性ガス(窒素など)を使用し、第2のガス、第3のガスに相対的に純度の低い不活性ガス(窒素など)を使用するものであってもよい。第2のガス、第3のガスは、除電した後に、レーザ光照射局所シールボックス10に供給するのが望ましい(以下も同様である)。また、第2のガスと第3のガスの放出量は特に限定されるものではないが、第2のガスの放出量を第3のガスの放出量よりも多くするのが望ましい。
【0041】
次に、レーザ処理装置1Aにおける動作について説明する。
前記実施形態と同様に、基板120を導入するとともに、ガス導入孔12からレーザ光照射局所シールボックス10内に窒素ガスを導入する。窒素ガスは、レーザ光透過孔11から下方側に向けて放出される。また、第2ガス放出口16および第3ガス放出口17から、第2のガスおよび第3のガスが放出される。これにより、レーザ光透過孔11から放出するガスによって形成される局所雰囲気内に雰囲気外からの影響が及ぶのを低減することができる。
【0042】
特に、基板120を処理室2内に導入した際に、外気が乱入するが、第2のガスおよび第3のガスの放出によって、外気乱入による影響を効果的に排除して安定した局所雰囲気を維持することができる。
また、第2ガス放出口16からは、外側に向けた放出角θでガスが放出されるので、雰囲気外からの影響をより確実に排除することができる。なお、第3ガス放出口17においても同様に外側に向けた放出角(>0度)を設けてガスを放出するようにしてもよい。
【0043】
(実施形態3)
次に、他の実施形態のレーザ処理装置1Bを図7図9に基づいて説明する。
なお、この実施形態3で前記実施形態1、2と同様の構成を有するものについては同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
この実施形態においても処理室2には、レーザ光照射局所シールボックス10を有しており、整流板13を有している。整流板13には、レーザ光透過孔11を有している。この実施形態でも、整流板13の下面側の整流面は、ステージ5で移動する基板120と10mm以下の間隔になるように設定されている。
【0044】
この実施形態3では、整流板13には、ステージ5の移動方向において、レーザ光照射局所シールボックス10の両外側にそれぞれガス前後吸引口18が設けられており、その外側に、さらに第2ガス放出口16がそれぞれ形成されている。また、レーザ光照射局所シールボックス10の両側方側にそれぞれ第3のガスを放出する第3ガス放出口17を有している。
ガス前後吸引口18および第2ガス放出口16は、レーザ光透過孔11に沿った長孔形状を有しており、レーザ光透過孔11の長尺両端をそれぞれ超える形状を有している。また、ガス前後吸引口18がレーザ光透過孔11と第2ガス放出口16もしくは第3のガスを放出する第3ガス放出口17に近接した方が望ましい。また、第2ガス放出口16は、レーザ光照射局所シールボックス10外壁に近接して設けることが望ましい。
【0045】
また、第2ガス放出口16は、レーザ光透過孔11を基準にして、外側に放出する放出角θ1を有している。放出角θ1は、45度以上とするのが望ましい。
第3ガス放出口17は、レーザ光透過孔11の側方に沿った長孔形状を有しており、レーザ光透過孔11の短尺両端をそれぞれ超える形状を有している。さらには、第2ガス放出口16の近傍にまで伸長しているのが望ましい。
また、第1のガス、第2のガス、第3のガスは、同じ種類でもよく、異なる種類であってもよい。また、同種のガスであって、純度が異なるものであってもよい。例えば、第1のガスに純度の高い不活性ガス(窒素など)を使用し、第2のガス、第3のガスに相対的に純度の低い不活性ガス(窒素など)を使用するものであってもよい。
【0046】
次に、レーザ処理装置1Bにおける動作について説明する。
前記実施形態と同様に、基板120を導入するとともに、ガス導入孔12からレーザ光照射局所シールボックス10内に窒素ガスを導入する。窒素ガスは、レーザ光透過孔11から下方側に向けて放出される。また、第2ガス放出口16および第3ガス放出口17から、第2のガスおよび第3のガスが放出される。さらに、ガス前後吸引口18では、ガスの吸引がなされる。
基板120の導入とともに、ガス導入孔12からレーザ光照射局所シールボックス10内に窒素ガスを導入する。窒素ガスは、レーザ光透過孔11から下方側に向けて放出される。また、ガス前後吸引口18では、ガスの吸引がなされ、レーザ光透過孔11から放出されるガスがガス前後吸引口18から吸引され、安定したガスの流れが形成される。
【0047】
また、第2ガス放出口16および第3ガス放出口17から、第2のガスおよび第3のガスが放出される。これにより、レーザ光透過孔11から放出されてガス前後吸引口18に流れる窒素ガスによって形成される局所雰囲気内に雰囲気外からの影響が及ぶのを低減することができ、局所雰囲気の安定化が特に効果的になる。
【0048】
特に、基板120を処理室2内に導入した際に、外気が乱入するが、これによる影響を効果的に排除して安定した局所雰囲気を維持することができる。
また、第2ガス放出口16からは、外側に向けた放出角θ1でガスが放出されるので、雰囲気外からの影響をより確実に排除することができる。なお、第3ガス放出口17においても同様に外側に向けた放出角(>0度)を設けるようにしてもよい。
さらに、第3ガス放出口17とレーザ光透過孔11との間に、ガス側方吸引口を設けるようにしてもよい。
【0049】
(第4実施形態)
次に、他の実施形態4を図10に基づいて説明する。
この実施形態は、レーザ光照射局所シールボックスの形状を変更したものであり、レーザ光照射局所シールボックス20の下面を整流面としている。整流面は、移動する基板120と10mm以下の間隔を有している。
レーザ光照射局所シールボックス20は、下面中央に長尺形状のレーザ光透過孔22を有し、前記移動方向において、レーザ光透過孔22の両外側にガス前後吸引口23を有している。ガス前後吸引口23は、レーザ光照射局所シールボックス20の壁部を通る通路によってレーザ光照射局所シールボックス20に設けられたガス吸引孔23Aに連通しており、ガス吸引孔23Aには図示しないポンプなどに接続される。ガス前後吸引口23は、レーザ光透過孔22に沿った長孔形状を有しており、レーザ光透過孔22の長尺両端をそれぞれ超える形状を有している。また、ガス前後吸引口23はレーザ光透過孔22に近い位置に設けることが望ましい。
【0050】
さらに、ガス前後吸引口23の両外側に、第2ガス放出口24がそれぞれ形成されている。第2ガス放出口24は、レーザ光照射局所シールボックス20の下壁部を通る通路によってレーザ光照射局所シールボックス20に設けられたガス供給孔24Aに連通しており、ガス供給孔24Aには図示しないガス供給部などに接続されている。
また、図示していないが、レーザ光透過孔22の両側方側に第3のガスを放出する第3ガス放出口を有している。
第2ガス放出口24は、レーザ光透過孔22に沿った長孔形状を有しており、レーザ光透過孔22の長尺両端をそれぞれ超える形状を有している。また、第2ガス放出口24はレーザ光透過孔22からガス前後吸引口23より遠い位置に設けることが望ましい。さらに第3ガス放出口は、レーザ光透過孔22の側面に沿った長孔形状を有しており、レーザ光透過孔22の短尺両端をそれぞれ超える形状を有している。
【0051】
この実施形態では、ガス導入孔21からレーザ光照射局所シールボックス20内に窒素ガスを導入する。窒素ガスは、レーザ光透過孔22から下方側に向けて放出される。また、第2ガス放出口24および第3ガス放出口から、第2のガスおよび第3のガスが放出される。さらに、ガス前後吸引口23では、ガスの吸引がなされる。
レーザ光透過孔11から放出されたガスは、ガス前後吸引口23で吸引され、安定したガスの流れが形成される。
【0052】
また、第2ガス放出口24および第3ガス放出口から、第2のガスおよび第3のガスが放出される。これにより、レーザ光透過孔22から放出されてガス前後吸引口23に流れる窒素ガスによって形成される局所雰囲気内に雰囲気外からの影響が及ぶのを低減することができる。
また、第2ガス放出口24からは、下方にガスが放出され、雰囲気外からの影響を排除する。
【0053】
(第5実施形態)
次に、他の実施形態5を図11に基づいて説明する。
なお、前記各実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
この実施形態では、実施形態4と同様に、レーザ光照射局所シールボックス20Aの下面を整流面としている。整流面は、移動する基板120と10mm以下の間隔を有している。
レーザ光照射局所シールボックス20Aは、下面中央に長尺形状のレーザ光透過孔22を有し、前記移動方向において、レーザ光透過孔22の両外側にガス前後吸引口23を有している。ガス前後吸引口23は、レーザ光照射局所シールボックス20の壁部を通る通路によってレーザ光照射局所シールボックス20Aに設けられたガス吸引孔23Aに連通しており、ガス吸引孔23Aには図示しないポンプなどに接続される。ガス前後吸引口23は、レーザ光透過孔22に沿った長孔形状を有しており、レーザ光透過孔22の長尺両端をそれぞれ超える形状を有している。
【0054】
さらに、ガス前後吸引口23の両外側に、第2ガス放出口25がそれぞれ形成されている。第2ガス放出口25は、レーザ光照射局所シールボックス20Aの下壁部を通る通路によってレーザ光照射局所シールボックス20Aに設けられたガス供給孔25Aに連通しており、ガス供給孔25Aには図示しないガス供給部などに接続されている。
また、図示していないが、レーザ光透過孔22の両側方側に第3のガスを放出する第3ガス放出口を有している。
第2ガス放出口25は、レーザ光透過孔22に沿った長孔形状を有しており、レーザ光透過孔22の長尺両端をそれぞれ超える形状を有している。また、第2ガス放出口25はレーザ光透過孔22からガス前後吸引口23より遠い位置に設けることが望ましい。さらに第3ガス放出口は、レーザ光透過孔22の側面に沿った長孔形状を有しており、レーザ光透過孔22の短尺両端をそれぞれ超える形状を有している。
なお、第2ガス放出口25は、レーザ光透過孔22を基準にして、基板120の移動方向において外側に傾斜した放出角を有しており、該放出角は45度以上が望ましい。
【0055】
ガス導入孔21からレーザ光照射局所シールボックス20A内に窒素ガスを導入すると、窒素ガスは、レーザ光透過孔22から下方側に向けて放出される。また、第2ガス放出口25および第3ガス放出口から、第2のガスおよび第3のガスが放出される。さらに、ガス前後吸引口23では、ガスの吸引がなされる。
レーザ光透過孔22から放出されたガスは、ガス前後吸引口23で吸引され、安定したガスの流れが形成される。
【0056】
また、第2ガス放出口25および第3ガス放出口から、第2のガスおよび第3のガスが放出される。これにより、レーザ光透過孔22から放出されてガス前後吸引口23に流れる窒素ガスによって形成される局所雰囲気内に雰囲気外からの影響が及ぶのを低減する。
また、第2ガス放出口25からは、外側に向けた放出角でガスが放出されるので、雰囲気外からの影響をより確実に排除することができる。なお、第3ガス放出口においても同様に外側に向けた放出角(>0度)を設けるようにしてもよい。
【0057】
上記各実施形態では、以下の効果が得られる。
1.レーザ光照射位置からガスを基板に向けて噴射しないので任意のガスによる層流を乱す要因がなくなる。
2.層流を形成させる整流板を折り曲げることなく長く設計できるので、より整った整流を形成できる。
3.蒸気や微粒子などの被照射物から発生する物質を一方向に向かって排出するため迅速にレーザの光路上から取り除くことができる。
4.蒸気や微粒子などの被照射物から発生する物質が多い場合には、流速を上げることで対応できる
5.外部からのパーティクルの除去
6.安定化時間の短縮
7.静電気の除去
【0058】
すなわち、上記各実施形態によれば、被処理体と、被処理体と平行に設置した整流面との間に任意のガスを流すことにより、任意のガスによる均一な流速と圧力分布を形成することができる。さらに、このガス流により、蒸気や微粒子などの被処理体から発生する物質をレーザ光の光路上から排出することにより、均一な照射雰囲気を実現するとともに、整流面にガスの噴出部を設けることで実現した安定雰囲気を乱すことなく、外部のガス流が照射位置に入るのを防ぐことができる。
【0059】
なお、各実施形態では、被処理体として基板について説明したが、本発明としては、被処理体が基板に限定されるものではない。また、本願発明では、レーザ処理装置を、非単結晶を結晶化させるものとして説明したが、レーザ処理装置の処理内容がこれに限定されるものではなく、メタル基板やプラスティック基板などのフレキシブル基板などに用いることもできる。
【実施例1】
【0060】
以下に、本発明の実施例について説明する。
実施例では以下の条件で試験を行った。

a(アモルファス)-Si膜厚
50nm
エキシマレーザ Vyper/波長308nm、600Hz
ビームサイズ 750mm × 0.4mm
照射エネルギー密度 370mJcm-2
ビームスティープネス 70μm
【0061】
ガス投入部Bはレーザ光照射位置の周辺に設置されていて、ガス吸入部の排気の速度は照射雰囲気を不活性ガス雰囲気にするためにシールボックス内に流す不活性ガスの流量に合わせて調整した。
上記により、レーザ光の照射領域周辺では、安定した局所雰囲気が形成され、基板の入れ替え時に酸素濃度が上がらないことにより、安定するまでの時間が掛からず、生産性を向上することができた。
【0062】
以上、本発明について、上記各実施形態および実施例に基づいて説明を行ったが、本発明の範囲を逸脱しない限りは、各実施形態に対する適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 レーザ処理装置
1A レーザ処理装置
1B レーザ処理装置
2 処理室
3 レーザ光源
4 光学系
5 ステージ
6 ドアバルブ
7 出入り口
8 レーザ光導入窓
10 レーザ光照射局所シールボックス
11 レーザ光透過孔
12 ガス導入孔
13 整流板
15 ガス前後吸引口
16 第2ガス放出口
17 第3ガス放出口
18 ガス前後吸引口
20 レーザ光照射局所シールボックス
22 レーザ光透過孔
23 ガス前後吸引口
24 第2ガス放出口
25 第2ガス放出口
50 レーザ光
50A 照射領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12