(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】歩行型の苗移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20220714BHJP
【FI】
A01C11/02 342L
A01C11/02 342C
(21)【出願番号】P 2019140164
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2021-03-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石井 和彦
【合議体】
【審判長】住田 秀弘
【審判官】佐藤 美紗子
【審判官】有家 秀郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-135920(JP,A)
【文献】特開平5-91809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に設けられた走行輪を有する機体と、
前記機体に設けられ、圃場に苗を植え付ける苗植付装置と、
前記機体の高さ、および左右方向における前記機体の傾きを
前記圃場の凹凸に応じて調整する姿勢調整機構と、
前記圃場の凹凸を検知する複数の検知部材と、
前記複数の検知部材によって検知され
た前記圃場の凹凸を前記姿勢調整機構に伝達する伝達機構と
を備え、
前記伝達機構は、
前記複数の検知部材に連結され、前記複数の検知部材が検知する前記圃場の凹凸に応じて揺動する連結部材と、
前記姿勢調整機構へ前記連結部材の揺動
の伝達
が開始されるタイミングを
変更する
伝達開始変更機構と
を備え
、
前記伝達機構は、
前記連結部材の揺動が伝達開始位置以上になると前記連結部材の揺動を前記姿勢調整機構に伝達し、
前記伝達開始変更機構は、
前記伝達開始位置を変更する
ことを特徴とする
歩行型の苗移植機。
【請求項2】
前記
伝達開始変更機構は、
前記連結部材に形成された長穴に挿入される係合ピン
を備え、
前記長穴における前記係合ピンの位置を
変更し、前記伝達開始位置を変更可能である
ことを特徴とする請求項
1に記載の
歩行型の苗移植機。
【請求項3】
前記
伝達開始変更機構は、
前記姿勢調整機構に接続される本体部と、
前記係合ピンが取り付けられ、前記本体部に回動可能に支持されるロッドと、
前記ロッドに取り付けられ、前記ロッドと一体的に回動するハンドル部と
を備え、
前記係合ピンは、
前記ハンドル部を介して前記ロッドが回動されることによって、前記長穴における位置が変更される
ことを特徴とする請求項
2に記載の
歩行型の苗移植機。
【請求項4】
前記伝達機構は、
前記連結部材の揺動が前記伝達開始位置以上になると、前記係合ピンに前記連結部材が係合して前記ロッドが移動することによって、前記連結部材の揺動を前記姿勢調整機構に伝達する
ことを特徴とする請求項
3に記載の
歩行型の苗移植機。
【請求項5】
前記伝達機構は、
前記長穴における前記係合ピンの位置が基準位置から、前記長穴の一方の端部側に変更された場合には、前記長穴の一方の端部側に連結される検知部材における前記圃場の凸の検知が前記基準位置よりも敏感になり、前記長穴の他方の端部側に連結される検知部材における前記圃場の凸の検知が前記基準位置よりも鈍感になる
ことを特徴とする請求項
3または
4に記載の
歩行型の苗移植機。
【請求項6】
前記伝達機構は、
前記本体部に対する前記ロッドの回動を規制する回動ロック機構
を備えることを特徴とする請求項
3から
5のいずれか一つに記載の
歩行型の苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場の凹凸を検知した場合や、機体が左右方向に傾斜した場合に、機体が水平方向となるように姿勢を修正する苗移植機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記苗移植機は、主変速機構によって走行輪に駆動力が伝達される状態である場合には、姿勢を修正する機能が作用する。しかしながら、圃場の状態によっては、姿勢を修正する機能が作用することによって、操作性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、操作性を向上させる苗移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態の一態様に係る歩行型の苗移植機(1)は、左右に設けられた走行輪を有する機体(2)と、機体(2)に設けられ、圃場に苗を植え付ける苗植付装置(4)と、機体(2)の高さ、および左右方向における機体(2)の傾きを圃場の応答に応じて調整する姿勢調整機構(7)と、圃場の凹凸を検知する複数の検知部材(62)と、複数の検知部材(62)によって検知された圃場の凹凸を姿勢調整機構(7)に伝達する伝達機構(100)とを備え、伝達機構(100)は、複数の検知部材(62)に連結され、複数の検知部材(62)が検知する圃場の凹凸に応じて揺動する連結部材(101)と、姿勢調整機構(7)へ連結部材(101)の揺動の伝達が開始されるタイミングを変更する伝達開始変更機構(102)とを備え、伝達機構は、連結部材の揺動が伝達開始位置以上になると連結部材の揺動を姿勢調整機構に伝達し、伝達開始変更機構は、伝達開始位置を変更する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様によれば、操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る苗移植機の概略側面図である。
【
図2】
図2は、操縦ハンドル付近を後方から見た概略を示す模式図である。
【
図3】
図3は、姿勢調整機構の概略を説明する模式図(その1)である。
【
図4】
図4は、姿勢調整機構の概略を説明する模式図(その2)である。
【
図5】
図5は、伝達機構の構成を示す平面図である。
【
図7】
図7は、伝達機構の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る苗移植機の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、かつ、容易なもの、或いは実質的に同一のものいわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0010】
なお、以下では前後、上下、左右の方向基準は、苗移植機1が苗を圃場に植え付ける場合に進む方向を前方とした前後方向、重力が作用する方向を下方とした上下方向、前後方向および上下方向に垂直な方向を左右方向とする。また、左右方向は、前進時における作業者の右手側を右方向とし、左手側を左方向とする。
【0011】
実施形態に係る苗移植機1について
図1を参照し説明する。
図1は、実施形態に係る苗移植機1の概略側面図である。苗移植機1は、作業者が苗移植機1の後方から苗移植機1の操縦ハンドル14を操作しながら、苗を圃場に植え付ける歩行型の苗移植機である。
【0012】
苗移植機1は、機体2と、苗載置台3と、苗植付装置4と、駆動力伝達機構5と、フロート6と、姿勢調整機構7と、制御装置(不図示)とを備える。
【0013】
機体2は、圃場を走行する左右一対の駆動輪としての走行輪10を備えている。機体2は、機体2に設けられたエンジン11と、前部フレーム12と、前部フレーム12の後端に固着され湾曲して斜め上方に延びる後部フレーム13と、後部フレーム13の後端に取り付けられ、作業者が把持可能な操縦ハンドル14とを備えている。苗移植機1において、エンジン11の駆動力は、機体2を前進させるために走行輪10を回転駆動するだけでなく、苗植付装置4などを駆動させるためにも使用される。また、エンジン11の駆動力は、姿勢調整機構7を作動させる油圧を生成する油圧ポンプの駆動にも使用される。
【0014】
走行輪10は、前部フレーム12に設けられた油圧昇降シリンダ70により、前部フレーム12、すなわち機体2に対して上下動され、機体2に対する上下方向の位置が変更される。油圧昇降シリンダ70は、各走行輪10に対応して一対設けられ、これら一対の油圧昇降シリンダ70は、左右方向に間隔をあけて配置されている。一対の油圧昇降シリンダ70のそれぞれに油を給排することで、機体2の高さを調整し、また、機体2の左右方向の傾きを調整することができる。
【0015】
エンジン11は、ディーゼル機関やガソリン機関等の熱機関であって、出力軸から駆動力を出力する。出力軸は、機体2の左側方から突出している。エンジン11は、機体2の左右方向における略中央で、且つ、前部フレーム12の前端部に配置されている。エンジン11は、リコイルスターター式のエンジンである。
【0016】
エンジン11の上方には、ボンネットカバー18が設けられている。ボンネットカバー18は、エンジン11の上方に設けられた燃料タンク19や制御装置を収容している。
【0017】
操縦ハンドル14は、機体2、すなわち歩行型の苗移植機1の走行方向を変更するためのものであり、作業者が把持し、操作可能である。また、操縦ハンドル14は、後部フレーム13に対して回動可能とし、後部フレーム13に対する操縦ハンドル14の位置を変更することができる。
【0018】
左右の操縦ハンドル14の間には、
図2に示すように、主変速レバー20、副変速レバー21、および昇降レバー22などが設けられる。
図2は、操縦ハンドル14付近を後方から見た概略を示す模式図である。
【0019】
主変速レバー20、副変速レバー21、および昇降レバー22は、左右方向に延びるレバー支持部23(
図1参照)に回動可能に取り付けられる。なお、副変速レバー21は、主変速レバー20、および昇降レバー22よりも下方に配置されてもよい。この場合、副変速レバー21は、主変速レバー20、および昇降レバー22が取り付けられるレバー支持部23とは異なるレバー支持部に取り付けられる。これにより、副変速レバー21と、主変速レバー20との握り間違いを抑制することができる。
【0020】
また、レバー支持部23は、操縦ハンドル14を回動可能に支持する部材や、後部フレーム13に、固定プレート24(
図1参照)を介して取り付けられる。これにより、レバー支持部23の剛性を向上させることができる。
【0021】
主変速レバー20は、走行輪10(
図1参照)への動力伝達を入り切りする主クラッチを操作するレバーである。主変速レバー20が、走行輪10への動力伝達を行う位置に操作されると、主クラッチが「入り状態」となり、エンジン11から走行輪10への動力伝達が行われる。すなわち、エンジン11から走行輪10への動力伝達状態が、「入り状態」となる。
【0022】
一方、主変速レバー20が、走行輪10への動力伝達を行わない位置に操作されると、主クラッチが「切り状態」となり、エンジン11から走行輪10への動力伝達が行われない。すなわち、エンジン11から走行輪10への動力伝達状態が、「切り状態」になる。
【0023】
副変速レバー21は、主変速レバー20よりも左側に配置される。副変速レバー21は、機体2の走行モードを、移動速モード、作業速モード、中立モード、および後進モードに変更するレバーである。副変速レバー21は、上下方向に操作可能である。副変速レバー21が上端から下端に操作されることで、機体2の走行モードは、移動速モード、作業速モード、中立モード、および後進モードの順に切り替わる。
【0024】
なお、作業速モードは、圃場で作業を行う場合、すなわち、苗の植え付けを行う場合に使用されるモードである。移動速モードは、圃場で作業を行わない場合に、作業速モードよりも早い速度で前進移動可能となるモードである。
【0025】
昇降レバー22は、走行輪10と機体2との相対的な位置を変更し、圃場に対する機体2の高さを調整するレバーである。
【0026】
なお、操縦ハンドル14の近傍には、振り子77(
図3参照)の傾きを調整する傾き調整レバー25(
図3参照)などが配置される。
【0027】
副変速レバー21には、
図1に示すように、ロッド取付プレート200などを介して第1ロッド201が連結される。第1ロッド201は、上下方向に延び、第1ロッド201の上端は、ロッド取付プレート200に連結される。第1ロッド201の下端には、ジョイントボール202を介して第2ロッド203が連結される。なお、第1ロッド201は、ジョイントボール202が曲がることを抑制するために屈曲している。また、第1ロッド201の端にダブルナットを設け、第1ロッド201の長さを調整可能としてもよい。
【0028】
第2ロッド203は、前後方向に延びるように形成される第2ロッド203は、他の部材、例えば、苗取り調整レバーとの干渉を回避するために、2つのロッドを上下方向に並べて接続して構成してもよい。また、2つのロッドのうち、下方のロッドの前方の端をツブシ加工することで固定プレート204に固定してもよい。
【0029】
第2ロッド203の前方の端には、溝アームプレート205が接合され、溝アームプレート205にシャフト部206が挿入され、シャフト部206などを介して第3ロッド207が連結される。
【0030】
第3ロッド207は、後述する主伝動ケース50に連結され、走行輪10へ伝達される回転を、前進高速状態、前進低速状態、中立状態、および後進状態に切り替える。すなわち、走行モードが、移動速モード、作業速モード、中立モード、および後進モードに切り替えられる。
【0031】
苗載置台3は、機体2の左右方向において仕切られた植付条数分の苗載面3aを有しており、それぞれの苗載面3aに土付きのマット状苗を積載することが可能になっている。苗載置台3は、後部フレーム13の前部に左右方向に移動可能に支持され、駆動力伝達機構5からの駆動力により左右に往復移動する。
【0032】
また、苗載置台3は、延長部3bを有し、延長部3bを斜め後方に引き上げて、後部フレーム13に取り付けられた固定部3cに固定することで、長いマット状苗を安定して載置することができる。
【0033】
また、機体2の上方には、予備苗のせ台30が設けられ、予備のマット状苗を載置することができる。なお、予備苗のせ台30は、後端が高くなるように形成される。すなわち、予備苗のせ台30は、水平方向に対して、前端が低くなるように傾斜して配置される。予備苗のせ台30の前端には、センターマスコット31が取り付けられる。
【0034】
苗植付装置4は、所謂ロータリ式の苗植付機構であって、苗の植付範囲を複数の区画あるいは複数の列で、苗を圃場に植え付けることができる。苗植付装置4は、苗載置台3に載せられた苗を圃場に植え付ける植付機構41を複数備えている。
【0035】
植付機構41は、機体2の後部でかつ苗載置台3の前方に設けられ、苗載置台3に積載された苗を圃場に植え付ける。
【0036】
駆動力伝達機構5は、エンジン11の後ろ側に設けられた主伝動ケース50と、主伝動ケース50の左右各々に設けられた走行伝動ケースと、駆動力を苗植付装置4へ伝達する植付伝動機構52とを備える。
【0037】
主伝動ケース50は、前部フレーム12の前端部に取り付けられている。主伝動ケース50は、エンジン11からの駆動力が伝動される。
【0038】
主伝動ケース50には、エンジン11から走行輪10や、苗植付装置4などへの駆動力の伝動を断つことができる主クラッチと、駆動力を走行輪10への伝動経路と苗植付装置4などへの伝動経路とに分岐する動力分岐部とが設けられる。また、主伝動ケース50には、苗植付装置4への伝動経路上において苗植付装置4への伝動を断つことができる植付クラッチが設けられる。
【0039】
また、主伝動ケース50には、走行輪10へ伝達される回転を、前進高速状態、植付作業用の前進低速状態、中立状態、および後進状態に切り替えて変速できる変速部と、左右の走行輪10への伝動を非伝動状態に切り替えることができる左右各々のサイドクラッチが設けられる。
【0040】
走行伝動ケースは、主伝動ケース50の走行用伝動軸を収容する。走行用伝動軸は、走行伝動ケースから左右外側に突出する車軸に駆動力を伝達する。
【0041】
走行伝動ケースから突出する車軸は、前端に位置する走行用伝動軸周りに上下方向へ回動可能に設けられ、油圧昇降シリンダ70によって上下方向に回動されることで、走行輪10を上下動させる。これにより走行輪10と機体2と相対的な位置が変化し、機体2の高さ、または傾きが調整される。
【0042】
フロート6は、機体2の下部に設けられ、機体2の移動と共に圃場の表面に接触して圃場の表面上を滑走して整地する。フロート6は、機体2の左右方向の中央に設けられた一つのセンターフロート61と、該センターフロート61の左右両側にそれぞれ設けられた一対のサイドフロート62(検知部材)とを備える。
【0043】
センターフロート61、およびサイドフロート62は、苗移植機1の側面視において、後部フレーム13の同じ位置に配置された各々の左右方向の回動軸63回りに上下に回動自在に支持され、前部が圃場の表面に合わせて上下動する構成となっている。
【0044】
制御装置は、苗移植機1を構成する上述した構成要素をそれぞれ制御するものである。制御装置は、一例として、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)を有する構成とすることができる。制御装置には、スイッチや、センサなど接続される。制御装置は、例えば、エンジン11を制御するエンジン制御等を実行している。
【0045】
次に、姿勢調整機構7について
図3、および
図4を参照し説明する。
図3は、姿勢調整機構7の概略を説明する模式図(その1)である。
図4は、姿勢調整機構7の概略を説明する模式図(その2)である。なお、
図3、および
図4では、一対の油圧昇降シリンダ70の一方における機構を説明するが、もう一方における機構も同様である。
【0046】
姿勢調整機構7は、エンジン11(
図1参照)と走行輪10(
図1参照)との間に配置される。姿勢調整機構7は、第1油圧バルブ71、第2油圧バルブ72、および第3油圧バルブ73によって油圧昇降シリンダ70へ油を給排し、油圧昇降シリンダ70によって走行輪10を上下動させる。これにより、圃場に対する機体2(
図1参照)の高さや、傾きが調整される。すなわち、姿勢調整機構7は、機体2の高さを調整する高さ調整機能と、機体2の傾きを調整する傾き調整機能とを有する。
【0047】
第1油圧バルブ71は、センターフロート61の角度に応じて油圧昇降シリンダ70へ油の給排を行うバルブである。すなわち、第1油圧バルブ71は、センターフロート61によって検知される圃場の凹凸に応じて、機体2の高さを調整するためのバルブである。
【0048】
第1油圧バルブ71は、走行輪10への動力伝達を入り切りする主クラッチが「入り状態」である場合には、油圧昇降シリンダ70へ油の給排を行う「調整状態」となる。姿勢調整機構7は、主クラッチが「入り状態」である場合には、高さ調整機能をONにし、センターフロート61によって検知される圃場の凹凸に対し、機体2の高さを調整する。
【0049】
また、第1油圧バルブ71は、主クラッチが「切り状態」である場合には、油圧昇降シリンダ70へ油の給排を行わない「停止状態」となる。姿勢調整機構7は、主クラッチが「切り状態」である場合には、高さ調整機能をOFFにし、センターフロート61によって検知される圃場の凹凸に対し、機体2の高さを調整しない。具体的には、姿勢調整機構7では、主クラッチが「切り状態」である場合には、ワイヤー74によって第1油圧バルブ71が動かないように規制される。
【0050】
ワイヤー74は、主クラッチの入り切りを変更する主変速レバー20に接続されている。すなわち、姿勢調整機構7は、主変速レバー20の操作に応じて、高さ調整機能をON、OFFにすることができる。なお、ワイヤー74は、主クラッチを入り切りするために他の部材と連結されている。
【0051】
なお、姿勢調整機構7は、主変速レバー20が操作されて主クラッチが「入り状態」となる前に「調整状態」となる。すなわち、動力伝達状態が「入り状態」となる前に、高さ調整機能がONとなる。また、姿勢調整機構7は、主変速レバー20が操作されて主クラッチが「切り状態」となる前に「停止状態」となる。すなわち、動力伝達状態が「切り状態」となる前に、高さ調整機能がOFFとなる。
【0052】
また、第1油圧バルブ71は、主クラッチが「入り状態」である場合であっても、副変速レバー21が操作されて走行モードが後進モードとなった場合には、副変速レバー21の操作に応じて「停止状態」となる。すなわち、姿勢調整機構7では、主クラッチが「入り状態」である場合であっても、副変速レバー21が操作されて走行モードが後進モードとなった場合には、副変速レバー21の操作に応じて、高さ調整機能がOFFになる。
【0053】
また、主クラッチが「切り状態」である場合には、第1油圧バルブ71とセンターフロート61との間に設けられたスプリング75によってセンターフロート61の角度の変化が吸収される。
【0054】
第2油圧バルブ72は、昇降レバー22の操作に応じて油圧昇降シリンダ70へ油の給排を行うバルブである。第2油圧バルブ72は、昇降レバー22とワイヤー76を介して接続される。
【0055】
昇降レバー22は、例えば、車高を「下降」、「上昇」および「固定」と変更することができる。第2油圧バルブ72は、昇降レバー22の位置に応じて油圧昇降シリンダ70へ油の給排を行う。
【0056】
なお、主クラッチが「入り状態」である場合には、センターフロート61の角度の変化による第1油圧バルブ71への油の給排が優先される。例えば、車高が「下降」となるように昇降レバー22が操作されている場合であっても、センターフロート61によって圃場の凸が検知された場合には、センターフロート61の角度に応じて機体2の高さが調整される。
【0057】
ワイヤー76の第2油圧バルブ72側には、スプリング76aが設けられる。スプリング76aは、第1油圧バルブ71における油の給排が優先される弾性力が作用するように取り付けられる。なお、姿勢調整機構7における高さ調整の優先度は、主変速レバー20、センターフロート61、昇降レバー22の順に低くなる。
【0058】
第3油圧バルブ73は、機体2のローリング、すなわち左右方向の傾きを調整するためのバルブである。第3油圧バルブ73は、左右のサイドフロート62の角度に応じて油圧昇降シリンダ70へ油の給排を行うバルブである。第3油圧バルブ73は、左右のサイドフロート62のいずれかが圃場の凹凸を検知した場合に、圃場の凹凸に合わせて油圧昇降シリンダ70へ油を給排する。
【0059】
また、第3油圧バルブ73には、振り子77が設けられる。第3油圧バルブ73は、振り子77の傾きに応じて油圧昇降シリンダ70への油の給排を行う。第3油圧バルブ73は、例えば、サイドフロート62が浮いている場合や、圃場が柔らかい場合など、サイドフロート62によって圃場の凹凸を検知できない場合に、振り子77の傾きに応じて油圧昇降シリンダ70への油の給排を行うことができる。
【0060】
第3油圧バルブ73は、主クラッチが「入り状態」、および「切り状態」に関わらず、サイドフロート62の角度、および振り子77の傾きに応じて油圧昇降シリンダ70へ油の給排を行う。すなわち、姿勢調整機構7では、主クラッチが「入り状態」、および「切り状態」に関わらず、傾き調整機能がONになる。
【0061】
なお、振り子77の傾きは、傾き調整レバー25の操作に応じて調整ケーブル78を介して固定することができる。すなわち、姿勢調整機構7では、傾き調整レバー25の操作に応じて、傾き調整機能をOFFにすることができる。
【0062】
なお、振り子77の傾きが固定された場合には、第3油圧バルブ73とサイドフロート62との間に設けられたスプリング79によってサイドフロート62の角度の変化が吸収される。
【0063】
苗移植機1は、サイドフロート62によって検知される圃場の凹凸を第3油圧バルブ73に伝達する伝達機構100を備える。伝達機構100は、サイドフロート62によって検知される圃場の凹凸を姿勢調整機構7に伝達する。
【0064】
伝達機構100について、
図5~
図7を参照し説明する。
図5は、伝達機構100の構成を示す平面図である。
図6は、伝達機構100を後方から見た図である。
図7は、伝達機構100の一部を示す断面図である。
【0065】
伝達機構100は、連結部材101と、調整機構102と、表示板103と、回動ロック機構104とを備える。
【0066】
連結部材101は、機体2(
図1参照)に回動可能に支持される。連結部材101は、リンク機構105a(
図1参照)を介して右側のサイドフロート62に連結する第1アーム101aと、リンク機構105b(
図1参照)を介して左側のサイドフロート62に連結する第2アーム101bとを備える。また、連結部材101には、長穴101cが形成される。長穴101cは、例えば、連結部材101が回動する軸を中心に円弧状に形成される。
【0067】
調整機構102は、支持部110(本体部)と、ロッド111と、係合部112と、ハンドル部113とを備える。
【0068】
支持部110は、支持アーム120と、ガイドカラー121とを備える。支持アーム120は、平面視において略U字状に形成される。具体的には、支持アーム120は、向かい合うように形成された2つの側壁120a、120bと、2つの側壁120a、120bの端部を繋ぐ底壁120cとを有する。
【0069】
支持アーム120の底壁120cには、連結ピン122が取り付けられる。連結ピン122は、底壁120cに直交するように取り付けられる。連結ピン122には、第3油圧バルブ73のスプールに接続される調整アーム部123が取り付けられる。すなわち、支持部110は、姿勢調整機構7に接続される。
【0070】
また、連結ピン122は、表示板103の取付部103aに形成される挿入孔に挿入される。調整アーム部123は、機体2に回動可能に支持される。なお、調整アーム部123には、振り子77が連結される。
【0071】
調整機構102は、調整アーム部123を介して機体2に支持される。これにより、調整機構102の倒れを防止することができ、ガタつきの発生を抑制することができる。そのため、調整機構102の操作性を向上させることができる。
【0072】
また、支持アーム120の底壁120cには、取付ボルト124が取り付けられる。取付ボルト124は、表示板103の取付部103aに形成された取付孔に挿入され、ナット125が螺合される。すなわち、取付ボルト124は、ナット125とともに表示板103の取付部103aを挟持し、表示板103を保持する。
【0073】
支持アーム120の一方の側壁120aには、ロッド111が挿入される挿入孔120dが形成される。支持アーム120の一方の側壁120aは、ロッド111を支持し、ロッド111の倒れや、ガタつきが発生することを抑制する。また、一方の側壁120aには、挿入孔120dと連通する切欠溝120eが形成される。切欠溝120eは、底壁120cとは反対側の端部から挿入孔120dまで形成される。
【0074】
支持アーム120の他方の側壁120bには、ロッド111が挿入される挿入孔120fが形成される。また他方の側壁120bには、取付ボルト126が取り付けられる。取付ボルト126には、ロックレバー140の係合アーム140aが係合され、ナット127が螺合される。取付ボルト126は、ナット127とともにロックレバー140の係合アーム140aを挟持し、ロックレバー140を保持する。
【0075】
ガイドカラー121は、支持アーム120の他方の側壁120bに取り付けられる。ガイドカラー121は、筒状に形成され、ロッド111が挿入される。ガイドカラー121は、支持アーム120の他方の側壁120bに形成された挿入孔120fと連通するように他方の側壁120bに取り付けられる。
【0076】
ガイドカラー121の先端、具体的には、他方の側壁120bとは反対側の先端には、ナット128が取り付けられる。
【0077】
ロッド111は、支持アーム120の側壁120a、120bに形成された挿入孔120d、120f、およびガイドカラー121に挿入される。ロッド111は、一方の端部に係合部112が取り付けられ、他方の端部にハンドル部113が取り付けられる。ロッド111は、ハンドル部113と一体的に回動する。
【0078】
ロッド111には、ガイドカラー121の先端に取り付けられたナット128に形成された雌ねじに対応する雄ねじが形成される。ロッド111は、回動することによって、ガイドカラー121に対し、ロッド111の軸方向に移動する。すなわち、ロッド111が回動することによって、支持部110に対する、ロッド111の相対的な位置がロッド111の軸方向に変更される。
【0079】
ロッド111は、ガイドカラー121の先端に取り付けられたナット128によって保持される。そのため、雄ねじの長さを短くすることができ、さらに、ロッド111の倒れを防止することができる。
【0080】
また、ロッド111には、後述する係合ピン131の位置を示すインジケータ溝111aが形成される。なお、ロッド111に、係合ピン131の位置を示すOリングを設けてもよい。
【0081】
係合部112は、カラー130と、係合ピン131とを備える。カラー130は、筒状であり、ロッド111が挿入される。カラー130は、ロッド111に対し回動可能である。カラー130は、ロッド111の軸方向の両端に配置されたナット132によって挟持される。ナット132は、ロッド111に固定され、ロッド111と一体的に回動し、またロッド111と一体的にロッド111の軸方向に移動する。従って、カラー130は、ナット132によってロッド111の軸方向における移動が規制され、ロッド111と一体的にロッド111の軸方向に移動する。
【0082】
係合ピン131は、カラー130から突出するように形成される。具体的には、係合ピン131は、カラー130に直交するように形成される。係合ピン131は、連結部材101の長穴101cに挿入される。係合ピン131は、長穴101cにおける位置を変更可能となるように長穴101cに挿入される。
【0083】
係合部112は、ロッド111が回動し、ロッド111の軸方向に移動する場合に、ロッド111とともには回動せず、ロッド111の軸方向にのみ移動する。
【0084】
なお、以下において、サイドフロート62による圃場の凹凸が検知されていない場合、具体的には、機体2が水平の圃場などに置かれている場合の長穴101cにおける係合ピン131の位置を基準位置と定義する。基準位置では、係合ピン131は、長穴101cの中央に位置する。すなわち、基準位置では、係合ピン131から、長穴101cの周方向における両端までの長さが等しい。
【0085】
ハンドル部113は、作業者が把持し、回動できるように設けられる。例えば、ハンドル部113には、
図8に示すように、基準位置に対する係合ピン131の位置を変更する方向を示す表示ラベル113aが貼り付けられる。
図8は、ハンドル部113の一例を示す図である。これにより、作業者は、ハンドル部113の操作、すなわち、ハンドル部113の回動方向を容易に判断することができる。
【0086】
表示板103は、取付部103aによって支持部110の支持アーム120に支持される。具体的には、表示板103は、取付部103aによって、連結ピン122、および取付ボルト124を介して支持アーム120に支持され、固定される。これにより、表示板103が支持アーム120に対し、回転することが防止される。
【0087】
表示板103は、ロッド111の上方に設けられる。表示板103には、ロッド111に形成されたインジケータ溝111aの位置を作業者が視認可能な孔103bが形成される。表示板103には、基準位置におけるインジケータ溝111aの位置、すなわち、基準位置における係合ピン131の位置が示される。また、表示板103には、基準位置に対する係合ピン131の移動方向が示される。また、表示板103には、機体2の走行軌跡の修正方向と機体2が示されてもよい。これにより、作業者は、ハンドル部113による係合ピン131の位置や、操作方向を容易に判断することができる。
【0088】
回動ロック機構104は、ロックレバー140と、ロックプレート141とを備える。
【0089】
ロックレバー140は、支持アーム120の側壁102bに取り付けられる取付ボルト126に係合する係合アーム140aと、係合アーム140aに対して回動可能に取り付けられるロックアーム140bとを備える。
【0090】
ロックアーム140bは、回動することによって支持アーム120の側壁120aに形成される切欠溝120eに挿入され、また、切欠溝120eから取り出される。ロックアーム140bは、切欠溝120eに挿入されることによって、上下方向の移動が規制される。
【0091】
ロックアーム140bは、側面視において、ロッド111と重なるように設けられる。具体的には、ロックアーム140bは、表示板103の下方であり、ロッド111に対し、後方に設けられる。これにより、作業者が一方の手によってハンドル部113を操作し、他方の手によってロックアーム140bを操作することができる。
【0092】
係合アーム140aとは反対側のロックアーム140bの端部には、作業者が指をかけることができるように折返し部140cが形成される。
【0093】
ロックプレート141は、ロッド111に取り付けられ、ロッド111に固定される。ロックプレート141は、ロッド111と一体的に回動し、ロッド111と一体的にロッド111の軸方向に移動する。ロックプレート141には、複数の係合溝141aが形成される。複数の係合溝141aは、所定間隔を設けてロッド111の周方向に沿って形成される。
【0094】
回動ロック機構104では、ロックアーム140bが支持アーム120の側壁120aに形成される切欠溝120e、およびロックプレート141に形成される係合溝141aに挿入されることによって、ロッド111の回動を規制する。
【0095】
上記伝達機構100のうち、係合部112や、ガイドカラー121に取り付けられたナット128などは、ボンネット内に設けられる。これにより、泥水などの付着を抑制することができ、ロッド111の回動荷重が増加することを抑制することができる。
【0096】
次に、伝達機構100の作用について説明する。
【0097】
伝達機構100は、係合ピン131が基準位置にある場合には、長穴101cに挿入された係合ピン131の両側に隙間が形成される。このような状態から、圃場の凹凸により機体2が左右方向に傾くと、サイドフロート62が圃場の凹凸を検知し、連結部材101が揺動する。
【0098】
そして、連結部材101と係合ピン131とが接触する伝達開始位置になり、さらに連結部材101が揺動すると、係合ピン131に連結部材101が係合し、連結部材101の揺動に応じて係合ピン131が連結部材101とともに、揺動する。係合ピン131は、ロッド111に対し回動可能に取り付けられ、かつロッド111の軸方向においてはナット132によって挟持されている。
【0099】
そのため、係合部112、およびロッド111は、連結部材101の揺動に応じて揺動する。また、ロッド111は、雄ねじによってガイドカラー121に取り付けられたナット128に螺合する。そのため、支持部110が連結部材101の揺動に応じて揺動する。これにより、調整アーム部123が回動し、第3油圧バルブ73のスプールが操作され、連結部材101の揺動が姿勢調整機構7に伝達される。すなわち、伝達機構100は、係合ピン131が連結部材101と接触する伝達開始位置以上になると、連結部材101の揺動を姿勢調整機構7に伝達する。
【0100】
また、伝達機構100は、ハンドル部113が作業者によって回動された場合には、ハンドル部113の回動によってロッド111が回動する。ロッド111が回動すると、ロッド111は、ロッド111に回動方向に応じてロッド111の軸方向に沿って移動し、ガイドカラー121、および支持部110に対する相対的な位置が変更される。
【0101】
なお、基準位置では、ガイドカラー121に取り付けられたナット128の雌ねじにロッド111の雄ねじが螺合されており、ハンドル部113が「A」方向、および「B」方向に回動された場合であっても、ナット128の雌ねじとロッド111の雄ねじとの螺合が外れることはない。また、ロッド111の雄ねじは、ハンドル部113が「A」方向、および「B」方向に最大回動角度、回動された場合でもナット128の雌ねじから外れないように設けられる。
【0102】
ハンドル部113が「A」方向に最大回動角度よりも大きく回動された場合には、ロッド111に固定されたナット132と、ガイドカラー121に取り付けられたナット128とが当接し、「A」方向へのさらなる回動が規制される。また、ハンドル部113が「B」方向に最大回動角度よりも大きく回動された場合には、ロッド111に固定されたロックプレート141と、支持アーム120の一方の側壁120aとが当接し、「B」方向へのさらなる回動が規制される。
【0103】
ロッド111が、ロッド111の軸方向へ移動することによって、ロッド111に取り付けられたナット132に挟持された係合部112も、ロッド111の軸方向に移動する。なお、係合部112は、ロッド111に対し回動可能に取り付けられている。そのため、ロッド111が回動されて、ロッド111の軸方向に移動すると、係合部112の係合ピン131は、ロッド111に対し回動しつつ、連結部材101の長穴101cに沿って移動し、長穴101cにおける位置が変更される。
【0104】
基準位置から、ハンドル部113が「A」方向に回動された場合には、係合ピン131は、長穴101c内で支持部110側、すなわち第1アーム101a側に向けて移動する。そのため、基準位置から、ハンドル部113が「A」方向に回動された場合には、係合ピン131と、支持部110側の長穴101cの端との距離が、基準位置における係合ピン131と、支持部110側の長穴101cの端との距離よりも短くなる。
【0105】
一方、基準位置から、ハンドル部113が「A」方向に回動された場合には、係合ピン131と、支持部110とは反対側の長穴101cの端との距離が、基準位置の場合よりも長くなる。
【0106】
このような状態で、右側のサイドフロート62によって圃場の凸が検知された場合には、係合ピン131は、基準位置よりも小さい揺動で伝達開始位置となり、圃場の凸の検知が基準位置よりも敏感となる。すなわち、基準位置よりも早いタイミングで伝達開始位置となり、基準位置よりも早いタイミングで連結部材101の揺動が姿勢調整機構7に伝達される。換言すると、基準位置よりも小さい連結部材101の揺動量によって、姿勢調整機構7による傾き調整機能が作用する。
【0107】
一方、左側のサイドフロート62によって圃場の凸が検知された場合には、係合ピン131は、基準位置よりも大きい揺動で伝達開始位置となり、圃場の凸の検知が基準位置よりも鈍感となる。すなわち、基準位置よりも遅いタイミングで伝達開始位置となり、基準位置よりも遅いタイミングで連結部材101の揺動が姿勢調整機構7に伝達される。換言すると、基準位置よりも大きい連結部材101の揺動量によって、姿勢調整機構7による傾き調整機能が作用する。
【0108】
このように、伝達機構100は、ハンドル部113が回動されることによって、長穴101cにおける係合ピン131の位置を変更し、伝達開始位置を変更する。
【0109】
なお、基準位置に対する「A」方向、または「B」方向への回動量、すなわち、基準位置に対する伝達開始位置の変更位置は、表示板103に設けた孔103bにおいて、ロッド111に設けたインジケータ溝111aの位置により確認することができる。そのため、作業者は、伝達開始位置を容易に確認することができる。
【0110】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0111】
苗移植機1は、機体2の高さ、および左右方向における機体2の傾きを調整する姿勢調整機構7と、圃場の凹凸を検知する複数のサイドフロート62と、サイドフロート62によって検知される圃場の凹凸を姿勢調整機構7に伝達する伝達機構100とを備える。伝達機構100は、複数のサイドフロート62に連結され、複数のサイドフロート62が検知する圃場の凹凸に応じて揺動する連結部材101を備える。また、伝達機構100は、姿勢調整機構7へ連結部材101の揺動が伝達されるタイミングを調整する調整機構102を備える。
【0112】
これにより、苗移植機1は、調整機構102によって姿勢調整機構7による傾き調整機能が作用するタイミングを変更することができる。例えば、圃場が傾いている場合に、圃場の凹凸に応じて姿勢調整機構7による傾き調整機能が作用すると、機体2がさらに傾き、操作性が低下することがある。苗移植機1は、このような場合に、調整機構102によって姿勢調整機構7によって機体2の傾きが調整されるタイミングを変更し、操作性を向上させることができる。
【0113】
また、伝達機構100は、連結部材101の揺動が伝達開始位置以上になると連結部材101の揺動を姿勢調整機構7に伝達する。調整機構102は、伝達開始位置を変更する。
【0114】
これにより、苗移植機1は、姿勢調整機構7によって傾き調整機能が作用するタイミングを早くしたり、遅くしたりすることができる。例えば、苗移植機1は、左右方向の一方の方向に対し、姿勢調整機構7による傾き調整機能が作用することを抑制することができる。そのため、作業者は、苗移植機1を安定して走行させることができる。
【0115】
また、調整機構102は、連結部材101に形成された長穴101cに挿入される係合ピン131を備え、長穴101cにおける係合ピン131の位置を変更可能である。
【0116】
これにより、苗移植機1は、係合ピン131の位置を変更することによって、伝達開始位置を変更することができ、伝達開始位置の変更が容易となる。
【0117】
また、調整機構102は、姿勢調整機構7に接続される支持部110と、係合ピン131が取り付けられ、支持部110に回動可能に支持されるロッド111と、ロッド111に取り付けられ、ロッド111と一体的に回動するハンドル部113とを備える。係合ピン131は、ハンドル部113を介してロッド111が回動されることによって、長穴101cにおける位置が変更される。
【0118】
これにより、作業者は、ハンドル部113を回動することによって、伝達開始位置を変更することができ、操作性を向上させることができる。
【0119】
また、伝達機構100は、連結部材101の揺動が伝達開始位置以上になると、係合ピン131に連結部材101が係合してロッド111が移動することによって、連結部材101の揺動を姿勢調整機構7に伝達する。
【0120】
これにより、苗移植機1は、連結部材101の揺動に応じて姿勢調整機構7による傾き調整機能を作用させることができる。そのため、作業者は、苗移植機1を安定して走行させることができる。
【0121】
また、伝達機構100では、長穴101cにおける係合ピン131の位置が基準位置から、長穴101cの一方の端部側、例えば、右側に変更された場合には、右側のサイドフロート62における圃場の凸の検知が基準位置よりも敏感になる。また、左側のサイドフロート62における圃場の凸の検知が基準位置よりも鈍感になる。
【0122】
これにより、苗移植機1は、圃場の凹凸の検知を左右のサイドフロート62毎に調整することができる。そのため、作業者は、圃場の状態に応じて姿勢調整機構7による傾き調整機能が作用するタイミングを調整することができ、苗移植機1を安定して走行させることができる。
【0123】
また、伝達機構100は、支持部110に対するロッド111の回動を規制する回動ロック機構104を備える。
【0124】
これにより、長穴101cにおける係合ピン131の位置が、作業者が設定した位置からずれることを抑制することができる。そのため、作業者は、苗移植機1を安定した走行させることができる。
【0125】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 苗移植機
2 機体
3 苗載置台
4 苗植付装置
6 フロート
7 姿勢調整機構
10 走行輪
62 サイドフロート(検知部材)
100 伝達機構
101 連結部材
102 調整機構
101c 長穴
104 回動ロック機構
110 支持部(本体部)
111 ロッド
113 ハンドル部
131 係合ピン