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特許7105224マンノシルエリスリトール脂質を含む美白用組成物
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  • 特許-マンノシルエリスリトール脂質を含む美白用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】マンノシルエリスリトール脂質を含む美白用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20220714BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
A61K8/60
A61Q19/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019513349
(86)(22)【出願日】2017-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 KR2017009369
(87)【国際公開番号】W WO2018048127
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】10-2016-0115380
(32)【優先日】2016-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ジェ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ユン キュン
(72)【発明者】
【氏名】ビン,ソン-ア
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン ファン
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-025706(JP,A)
【文献】特開2009-149566(JP,A)
【文献】津田愛子 ほか,B16メラノーマ細胞におけるメラニン産生抑制と抗酸化活性(Cellular Antioxidant Activity),J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn.,2010年,Vol.44, No.2,page.139-142
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンノシルエリスリトール脂質(Mannosylerythritol lipid:MEL)からなり、前記マンノシルエリスリトール脂質は、脂肪族アシル基に含まれた不飽和結合が水素化されたことを特徴とするメラニン生成抑制
【請求項2】
請求項1のメラニン生成抑制剤を含み、前記マンノシルエリスリトール脂質は、全体の組成物100重量%を基準として0.01ないし20重量%で含有され、美白成分としては前記マンノシルエリスリトール脂質のみを含有する化粧料組成物
【請求項3】
前記化粧料組成物は、柔軟化粧水、収れん化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、アイエッセンス、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、パウダー、ボディーローション、ボディークリーム、ボディーオイル、ボディーエッセンス、メーキャップベースまたはファンデーションの中で選択された1種で剤形化されたことを特徴とする請求項に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
請求項1のメラニン生成抑制剤を含み、前記マンノシルエリスリトール脂質は、全体の組成物100重量%を基準として0.01ないし20重量%で含有される皮膚外用剤組成物。
【請求項5】
前記皮膚外用剤組成物は、軟膏、ペースト、ローション、クリーム、ゲル、溶液、懸濁液、乳濁液、パッチまたはスプレーからなる群から選択される剤形であることを特徴とする請求項に記載の皮膚外用剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年09月08日付韓国特許出願第10-2016-0115380号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、マンノシルエリスリトール脂質(Mannosylerythritol lipid:MEL)を有効成分として含む美白用組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
皮膚は物理的及び化学的紫外線防御因子を備え、様々な光化学反応による皮膚障害を最小限に防ぐための作用メカニズムを有する。皮膚の角質層は、紫外線を反射及び拡散させることによってエネルギーを減殺させ、なお、メラニン色素、SOD(Superoxide Dismutase;スーパーオキシドディスムターゼ)、それ以外の抗酸化成分などは、皮膚内部へ浸透した紫外線を吸収して、そのエネルギーを減殺させたり、紫外線が二次的に発生させる活性酸素を消去することで皮膚に対する障害を防御する。
【0004】
しかし、前記のような防御因子の能力を超える多量の紫外線を生体が受け取るようになったり、歳を取るにつれ、その能力が低下する場合、いろいろな皮膚障害が生じる。
【0005】
皮膚には、貪食細胞(Macrophage;マクロファージ)、ランゲルハンス細胞(Langerhans cells)など、生体系で免疫を担当している様々な細胞が存在する。紫外線の照射により、このような細胞は数が減少するだけでなく、機能的にも障害を受けるようになる。皮膚の色を決める要因の中で最も大きい部分を占めるのが、皮膚中のメラニンの分布状態及び量である。メラニン(Melanin)は、メラノサイト(Melanocyte)という細胞で生成されるが、このメラノサイトにはチロシナーゼ(Tyrosinase)などの酵素が存在し、これらが一緒に作用して、生体内で常に存在する、チロシン(Tyrosine)というアミノ酸を基質として重合化・酸化反応することにより、黒褐色の色素であるメラニンを形成するようになる。このように形成されたメラニンは、メラノサイトの樹状突起を通じて、ケラチノサイト(Keratinocyte)という表皮細胞へ移動する。ここで、メラニンは、核の周りに帽子のような構造を形成して、紫外線から遺伝子を保護し、フリーラジカル(Free radical)を取り除いて細胞内のタンパク質を保護するなど、重要な役目をする。
【0006】
このようなメラニンを分解する酵素は生体内には存在せず、ケラチノサイトが老化して本来の機能を果たし、表皮から離れる時、一緒に皮膚から除去される。しかし、メラニンが必要以上に多く生じると染み、そばかす、ほくろ等のような過色素沈着症を誘発して美容上良くない結果をもたらす。
【0007】
メラニン生産に影響を及ぼす因子は幾つか知られているが、紫外線によるメラニン生産の亢進、そしてこれによる色素沈着が化粧品分野でとても重要である。色素沈着を予防する目的で美白化粧品に配合される薬剤の基本的なメカニズムは、チロシナーゼ(Tyrosinase)作用抑制、チロシナーゼ生成抑制、メラニン生成中間体の抑制、既存メラニンの還元及び光酸化抑制、メラニン排泄の促進、及び紫外線カットなどがある。
【0008】
紫外線に露出する環境の中でも白い皮膚を持とうとする欲求のため、皮膚色素異常症状と過色素沈着などの予防と改善に対するニーズがさらに増えており、そのために、過度なメラニン生成を抑制する美白製品の開発が必要となったのであり、これまでに、多くの努力がなされた。その具体的な例を挙げるならば、コウジ酸(Kojic acid)、アルブチン(Arbutin)などといったチロシナーゼ活性を阻害する抑制剤、ヒドロキノン(Hydroquinone)、ビタミンA、ビタミンC及びこれらの誘導体などがある。しかし、これらは、美白効果の不十分さ剤形内での安定性及び皮膚に対する安全性などの問題により、使用が制限されている。これに対し、皮膚美白に対して効能が高く、かつ、剤形化が容易であって、皮膚に安全である、天然物来由の原料に対する研究が活発に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国登録特許公報第1225267号「バイオ界面活性剤を含むスキンケア化粧料及び皮膚粗さ改善剤」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、既存の多くの美白効能成分が報告されているものの、低い溶解度によって美白効果を具現するための十分な量を剤形に適用し難いか、十分な量を適用しても、これを剤形化するために追加の成分の使用が不可避であるため、剤形を適用することに制約が存在したり、剤形の使用感に影響を及ぼす場合が多かった。これによって剤形化のための追加の成分を使用せずとも剤形化し易い、美白効能成分に対するニーズが高い状況である。そこで、本発明者は、微生物発酵から得られるバイオ界面活性剤に関する研究を進める中で、マンノシルエリスリトール脂質(Mannosylerythritol lipid:MEL)が、美白に卓越な効能を示すだけでなく、追加成分なしにも剤形化が非常に容易であることを確認し、本発明を完成することとなった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、皮膚美白に対する効能が高くて剤形化が容易であり、皮膚に安全な美白用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、マンノシルエリスリトール脂質(Mannosyl erythritol lipid:MEL)を有効成分として含む美白用組成物を提供する。ここで、マンノシルエリスリトール脂質は、水素添加反応を通じて水素化したものを使ってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるMELを含む美白用組成物は、皮膚メラニン細胞の形成を抑制し、全体的な皮膚のトーンを改善させて皮膚がきれいになり、薄黒いのが改善されて明るくなる美白効能を与える。また、MEL自体がバイオ界面活性剤であるため、剤形化が容易であり、効能成分を剤形化するための特別な追加の成分を使わずに、様々な剤形に高含量で適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明によるMELのメラニン生成抑制効果を示すデータである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0016】
本発明におけるマンノシルエリスリトール脂質(Mannosylerythritol lipid、以下、「MEL」という)は、マンノース、糖アルコール及び脂肪酸から構成される糖脂質である。
【0017】
バイオ界面活性剤として知られているMELは、マンノシルエリスリトール(Mannosyl erythritol)という糖に脂肪酸が結合された糖脂質系物質で、最小表面張力は29dyne/cmであり、臨界ミセル濃度(CMC)は15μM(10mg/l)であって、既存の、使われている化学合成の界面活性剤とほぼ類似の表面活性を示す。その他にも高い界面張力低下能、乳化能、pH・熱安定性などを示す。このような特性を有するMELは、ラメラ構造を容易に形成するので、剤形化し易い。
【0018】
本発明のMELは、植物性オイルを微生物で発酵させて得られるのであり、使用可能な微生物としては、カンジダ属(Candida sp.)、トルロプシス属(Torulopsis sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、バシラス属(Bacillus sp.)、アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)、アシネトバクター属(Acinetobacter sp.)、ウスチラゴ属(Ustilago sp.)、ロドコッカス属(Rhodococcus sp.)などがある。
【0019】
また、本発明の美白用組成物としてMELは、下記化学式1で表される:
【0020】
【化1】
【0021】
(前記化学式1において、
及びRは、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立にC2ないしC24の脂肪族アシル基で、R及びRは互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立にアセチル基または水素である)。
【0022】
より好ましくは、R及びRは、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立にC6ないしC18の脂肪族アシル基であってもよい。
【0023】
前記化学式1において、R=R=Acで、R=R=AcであればMEL-Aに、R=R=Acで、R=H、R=AcであればMEL-Bに、R=R=Acで、R=Ac、R=HであればMEL-Cに、R=R=Acで、R=H、R=HであればMEL-Dに分類される。本発明で適用できるMELとしては、MEL-A、MEL-B、MEL-C、またはMEL-Dのいずれか1種を単独で用いてもよいが、2種以上のMELを併用してもよい。
【0024】
本発明において、MELの製造方法は特に制限されないが、微生物を利用した発酵方法を任意に選択すれば良い。例えば、MEL(MEL-A、MEL-B、MEL-C、MEL-D)の培養生産は、常法にしたがってPseudozyma antarctica NBRC10736によって生産することができ、微生物としてはPseudozyma antarctica、Pseudozyma sp.などを使用してもよい。どの微生物でも容易にMEL混合物が得られることは周知の事実である。MEL混合物を様々な精製方法を通じてMEL-A、MEL-B、MEL-C及びMEL-Dを高純度で分離または精製することができる。MELを生産する能力を有する微生物は特に限定されず、目的によって適宜使用してもよい。
【0025】
または、MELに水素を添加して-(CH-に含まれた不飽和結合を水素化したMELを美白用組成物として使用してもよい。このような水素化されたMELは、成分が安定化され、剤形化する時、酸化が防止され、変臭を抑制する効果がある。より具体的に、水素化反応はMELを単独または適切な有機溶媒に溶かした後、触媒及び水素を用いて反応させる。ここで使われる有機溶媒としては様々な有機溶媒が使われてもよいが、好ましくは、エチルアセテートとエタノールなどが適切である。ここで使われる触媒としては、水素化反応に用いられる様々な触媒が使用可能であるが、好ましくは、Pd/C、PtOなどが適切である。ここで使われる水素は、1~100atmの圧力条件で反応し、好ましくは、1~5atmが適切である。
【0026】
美白用組成物中におけるMELの添加量は、対象となる化粧料または外用剤の種類によって異なるため一律に規定することはできないが、各種の化粧料または外用剤に対して通常0.001ないし50重量%が好ましく、0.01ないし20重量%がより好ましく、0.05ないし5重量%が特に好ましい。ここで、化粧料または外用剤に添加する前記MELの使用形態は任意である。例えば、MELを培養液からの抽出物そのままで、または精製した高純度品、または水に懸濁したり、ポリオールまたはオイルなどに溶かされた溶液の形で使うこともできる。
【0027】
本発明によるMELを含む美白用組成物は、好ましくは、化粧料または皮膚外用剤の組成物であり、有効成分として、ポリフェノール誘導体、コウジ酸及びその誘導体、ナイアシンアミド及び3,4,5-トリメトキシフェニル系のエステル化合物からなる群から選択された1種以上を、組成物の総重量に対してそれぞれ0.1~3.0重量%でさらに含んでもよい。前記物質は、チロシナーゼの活性を抑制したり、メラノサイトからケラチノサイトへのメラニンの移動を邪魔するなどのメカニズムを通して美白効果が立証された成分である。
【0028】
本発明で示すMELは、ポリオール油溶性基剤、または油溶性成分に溶解させて化粧料に配合することもでき、リポソームの形態で化粧料、特に化粧水、保湿液などの水系化粧料に配合されてもよい。
【0029】
また、本発明の化粧料としては、従来公知された界面活性剤、防腐剤、香料、保湿剤、塩類、溶媒、樹脂、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫回避剤、生理活性成分も本発明の目的を損なわない範囲で使うことができる。
【0030】
界面活性剤は、MELとは別に添加されるものであって、MELの可溶化に役立つ素材として、好ましくは、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、セテアレス、セテス、グリセレス、ラウレス、オレス、ポリソルベート、ステアレス、アミノ酸-脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンステアレートの中から選択される1種であってもよいが、これに制限されない。
【0031】
本発明による美白用化粧料組成物は、その剤形において特に限定されることはない。例えば、柔軟化粧水、収れん化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、アイエッセンス、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、パウダー、ボディーローション、ボディークリーム、ボディーオイル、ボディーエッセンス、メーキャップベースまたはファンデーションなどとして剤形化されてもよく、美白用化粧料、または、軟膏及びパッチ(patch)などの医薬品として剤形化されてもよい。
【0032】
また、本発明で提示するMELは、皮膚外用剤組成物に適用可能である。前記美白用組成物を皮膚外用剤組成物として使う場合、皮膚科学分野で許容可能な担体、媒質または基剤を含んで剤形化されてもよい。さらに、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤及びゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型または非イオン型乳化剤、充填剤、キレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性活性剤、親油性活性剤、脂質小嚢または皮膚用外用剤で通常使われる任意の他の成分といった皮膚科学分野で通常使われる補助剤を含んでもよい。また、前記成分は、皮膚科学分野で一般に使われる量で導入されてもよい。
【0033】
前記皮膚外用剤組成物はこれに制限されないが、軟膏、ペースト、ローション、クリーム、ゲル、溶液、懸濁液、乳濁液、パッチ(貼付材)またはスプレーからなる群から選択される剤形を有しても良い。
【0034】
前記皮膚外用剤組成物において、本発明による皮膚抗酸化組成物の有効量は、前記皮膚外用剤組成物の構成、剤形の種類、使用者の年齢、体重、健康状態、性別、投与時間、投与経路及び投与方法などによって異なる。一例として、本発明の皮膚抗酸化組成物の含量は、全体の皮膚外用剤組成物100重量%を基準として0.0001ないし10重量%、好ましくは、0.0001ないし1重量%で含んでもよい。もし、本発明の皮膚抗酸化組成物を0.0001重量%未満で含む場合、十分な抗酸化効果を期待することができず、10重量%を超えて含む場合、かゆみ、じんま疹、アレルギーなどの副作用が発生しうる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、実施例を通じて本発明をより詳しく説明する。これらの実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨にしたがい、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは、当業界で通常の知識を有する者に自明であろう。
【0036】
本特許上のマンノシルエリスリトール脂質(Mannosylerythritol lipid:MEL)は、外部の業者から購入して使用したのであり、MELの組成は、MEL-Bが約90%以上を占めている。
【0037】
<実験例1>美白効果確認
マンノシルエリスリトール脂質(以下、MEL)についての、メラニン色素生成細胞内でのメラニン生成抑制効果を測定した。細胞株と血清は、ATCCから購入したマウス由来のB16F10(黒色腫細胞)細胞株と、FBS(Cat No.30-2020)を使用した。細胞培養に必要なDMEM(Cat No.11995)と抗生剤-抗真菌剤試薬(Cat No.15240-062)はインビトロジェン(Invitrogen)(GIBCO)社から購入した。細胞株は、37℃、10% COの条件下で培養した。培養されたB16F10細胞を0.05%トリプシン(Trypsin)-EDTAでもって引き剥がし、48-培養容器(well plate)に再び同数(1×10cells/well)で接種した後、2日から3日連続でα-MSH(200mM)が含まれた培養液に、MELが1または5ppmが処理されるよう、フェノール不含(Phenol-free)DMEM培地に入れ替えた。陽性対照群としては、コウジ酸(kojic acid)を使用した。5日目後に1N NaOHを処理し、60℃で2時間反応させて細胞に含まれたメラニンを溶かし、405nmでの吸光度測定を通じてメラニン量を測定した。
【0038】
図面に示されたように、無処理培地で培養されたB16F10細胞のメラニン色素発現量を100%と見立てたとき、メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)が200nM添加された培地でのB16F10細胞のメラニン色素発現量は、約270%であった。α-MSHとコウジ酸100ppmを添加した培地でのB16F10細胞のメラニン色素発現量は、約110%でα-MSHによるメラニン色素の発現を抑制することを確認し、α-MSHと1ppmのMELを添加した培地では、約180%、α-MSHと5ppmのMELを添加した培地では、約90%の水準で、メラニン色素の発現を抑制することを確認した。MELは、コウジ酸の1/20以下の非常に低い濃度で美白効能を示すことを確認した。
【0039】
<実験例2>溶媒との相溶性の確認
1%のMELを、一般的な化粧品の剤形で多く使われている主要な成分と、加熱して撹拌した後、常温での時間の経過に伴って析出または分離が生じるかか否かを肉眼で観察し、以下の表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
(○:透明な溶液、△:不透明な溶液、X:分離または析出)
【0042】
前記表1にて1,3-BGは、1,3-ブチレングリコール(1,3-Butylene glycol)、Eutanol(登録商標)-Gはオクチルドデカノール(Octyl dodecanol)、CEHはセチルエチルヘキサノエート(Cetyl ethylhexanoate)、CSAはトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル(Caprylic-capric triglyceride)である。
【0043】
<実験例3>水添MELの原料臭改善の確認
MELと水添MELを適切な溶媒に0.5%で溶かした後、室温での特異臭と、3時間の湯せん加熱による変臭、そして日光保管条件での変臭に対する官能評価(sensory evaluation)を行った結果を下記表2に整理した。その結果、MELの変臭が水添によって改善されることを確認できた。
【0044】
【表2】
【0045】
(○:良好、△:若干の特異臭または変臭、X:特異臭及び変臭が酷い)
【0046】
<剤形例1>栄養クリームの製造
下記表3の組成にしたがって、通常の方法で本発明の美白用組成物を含む栄養クリームを製造した。
【0047】
【表3】
【0048】
<剤形例2>栄養化粧水の製造
下記表4の組成にしたがって、通常の方法で本発明の美白用組成物を含む栄養化粧水を製造した。
【0049】
【表4】
【0050】
<剤形例3>軟膏の製造
下記表5の組成にしたがって通常の方法で本発明の美白用組成物を含む軟膏を製造した。
【0051】
【表5】
【0052】
<剤形例4>ゲルの製造
下記表6の組成にしたがって通常の方法で本発明の美白用組成物を含むゲルを製造した。
【0053】
【表6】
図1