(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】ジェルネイル化粧用組成物、その使用方法、爪化粧用組成物及び爪化粧用樹脂
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20220714BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220714BHJP
A61Q 3/02 20060101ALI20220714BHJP
A45D 31/00 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
A61K8/81
C08F290/06
A61Q3/02
A45D31/00
(21)【出願番号】P 2019515559
(86)(22)【出願日】2017-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2017036202
(87)【国際公開番号】W WO2018056472
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2016185331
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000138082
【氏名又は名称】株式会社メニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 薫
(72)【発明者】
【氏名】馬場 雅樹
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1646004(KR,B1)
【文献】特開2002-322034(JP,A)
【文献】特開平08-092038(JP,A)
【文献】米国特許第04649045(US,A)
【文献】特開2007-269939(JP,A)
【文献】特開平05-255043(JP,A)
【文献】特開2013-043853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00- 90/00
C08F 283/00
C08F 290/00-290/14
C08F 299/00-299/08
A45D 8/00- 8/40
A45D 24/00- 31/00
A45D 42/00- 97/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪の表面に塗布されるように構成されたジェルネイル化粧用組成物であって、前記ジェルネイル化粧用組成物は、硬化したとき15g/m
2・hrより大きな水分蒸散率を有し、
少なくとも2つの重合性官能基を有するシリコーンマクロモノマーを含む基材を含み、
前記基材は、第1の構造を有する第1のシリコーンマクロモノマーと第2の構造を有する第2のシリコーンマクロモノマーとを含み、前記第2の構造の鎖長は、前記第1の構造の鎖長より長く、前記第2のシリコーンマクロモノマーは、前記第1のシリコーンマクロモノマー以上の重量比で含まれる、ジェルネイル化粧用組成物。
【請求項2】
前記基材は、第1の構造を有する第1のシリコーンマクロモノマーと第2の構造を有する第2のシリコーンマクロモノマーとを含み、
前記第2の構造の鎖長は、前記第1の構造の鎖長より長く、前記第2のシリコーンマクロモノマーは、前記第1のシリコーンマクロモノマー以上の重量比で含まれる、請求項
1に記載のジェルネイル化粧用組成物。
【請求項3】
爪の表面に塗布されるように構成されたジェルネイル化粧用組成物であって、前記ジェルネイル化粧用組成物は、硬化したとき15g/m
2・hrより大きな水分蒸散率を有し、
少なくとも2つの重合性官能基を有するシリコーンマクロモノマーを含む基材を含み、
前記シリコーンマクロモノマーは、重合開始剤及び着色剤及び顔料を除いた100重量部の前記基材の成分全体に対して10重量部以上から80重量部以下の範囲内で含ま
れ、
前記シリコーンマクロモノマーは、次の化学式
(R-A)
x
-B
による構造を有し、
Rは、重合性官能基であり、Aは、連結原子または基であり、Bは、シリコーン含有基であり、Xは、任意の整数であり、
前記シリコーンマクロモノマーは、前記シリコーン含有基としてのポリシロキサン構造と連結基としてのウレタン結合およびエーテル結合とを少なくとも含む、ジェルネイル化粧用組成物。
【請求項4】
爪の表面に塗布されるように構成されたジェルネイル化粧用組成物であって、前記ジェルネイル化粧用組成物は、硬化したとき15g/m
2・hrより大きな水分蒸散率を有し、
少なくとも2つの重合性官能基を有するシリコーンマクロモノマーを含む基材を含み、
前記シリコーンマクロモノマーは、重合開始剤及び着色剤及び顔料を除いた100重量部の前記基材の成分全体に対して10重量部以上から80重量部以下の範囲内で含ま
れ、
前記基材は、重合開始剤、を含み、
前記重合開始剤は、2種以上が前記基材に含まれる、ジェルネイル化粧用組成物。
【請求項5】
爪の表面に塗布されるように構成されたジェルネイル化粧用組成物であって、前記ジェルネイル化粧用組成物は、硬化したとき15g/m
2・hrより大きな水分蒸散率を有し、
少なくとも2つの重合性官能基を有するシリコーンマクロモノマーを含む基材を含み、
前記シリコーンマクロモノマーは、重合開始剤及び着色剤及び顔料を除いた100重量部の前記基材の成分全体に対して10重量部以上から80重量部以下の範囲内で含ま
れ、
前記基材は、アクリロイルモルホリン、N,N-ジエチルアクリルアミドおよび2-メトキシエチルアクリレートのうち少なくとも1種をさらに含む、ジェルネイル化粧用組成物。
【請求項6】
前記硬化したジェルネイル化粧用組成物の水分蒸散率は、28g/m
2・hrより大きい、請求項1~
5のいずれか1項に記載のジェルネイル化粧用組成物。
【請求項7】
前記ジェルネイル化粧用組成物は、硬化したとき25barrer以上の酸素透過係数を有する、請求項1~
6のいずれか1項に記載のジェルネイル化粧用組成物。
【請求項8】
前記シリコーンマクロモノマーは、次の化学式
(R-A)
x-B
による構造を有し;
Rは、重合性官能基であり、Aは、連結原子または基であり、Bは、シリコーン含有基であり、Xは、任意の整数である、請求項1
、2、4~
7のいずれか1項に記載のジェルネイル化粧用組成物。
【請求項9】
前記シリコーンマクロモノマーは、前記シリコーン含有基としてのポリシロキサン構造と連結基としてのウレタン結合およびエーテル結合とを少なくとも含む、請求項
8に記載のジェルネイル化粧用組成物。
【請求項10】
前記シリコーンマクロモノマーは、次の化学式による構造を有し、
R
1およびR
9は、末端重合性官能基であり;
R
2、R
4、R
6およびR
8は、
アルキレンオキシ基の構造を有する基であり;
R
3およびR
7は、それぞれ環状基であり;
R
5は、ポリシロキサン基である、
請求項1~
9のいずれか1項に記載のジェルネイル化粧用組成物。
【化1】
【請求項11】
前記シリコーンマクロモノマーは、次の化学式による構造を有し、
R
11、R
12およびR
13は、それぞれ水素、または3個以下の炭素原子を有するアルキル基であり;nは、10以上から60以下の数を表し
aおよびbは、それぞれ1から15の間である、
請求項1~
10のいずれか1項に記載のジェルネイル化粧用組成物。
【化2】
【請求項12】
前記シリコーンマクロモノマーは、少なくとも2種の化学的に異なるシリコーンマクロモノマーを含む、請求項
11に記載のジェルネイル化粧用組成物。
【請求項13】
a=b=1である第1のシリコーンマクロモノマーと;
a≧1かつb>1である第2のシリコーンマクロモノマーと;
を含み、
前記第2のシリコーンマクロモノマーに対する前記第1のシリコーンマクロモノマーの質量比は、10/90以上から50/50以下である、請求項
12に記載のジェルネイル化粧用組成物。
【請求項14】
前記基材は、重合開始剤、を含む、請求項1~
3、5~13のいずれか1項に記載のジェルネイル化粧用組成物。
【請求項15】
前記重合開始剤は、該重合開始剤及び着色剤及び顔料を除いた100重量部の前記基材に対して2重量部以上15重量部以下の範囲内で含まれる、請求項
14に記載のジェルネイル化粧用組成物。
【請求項16】
前記重合開始剤は、2種以上が前記基材に含まれる、請求項
14又は
15に記載のジェルネイル化粧用組成物。
【請求項17】
前記基材は、アクリロイルモルホリン、N,N-ジエチルアクリルアミドおよび2-メトキシエチルアクリレートのうち少なくとも1種をさらに含む、請求項1~
4、6~16のいずれか1項に記載のジェルネイル化粧用組成物。
【請求項18】
架橋剤であって、前記架橋剤は、二官能架橋剤、三官能架橋剤または四官能架橋剤のうち少なくとも1種を含む架橋剤をさらに含む、請求項1~
17のいずれか1項に記載のジェルネイル化粧用組成物。
【請求項19】
前記ジェルネイル化粧用組成物は、回転粘度計を用いて20℃で測定して50mPa・sから38,000mPa・sの粘度を有する、請求項1~
18のいずれか1項に記載のジェルネイル化粧用組成物。
【請求項20】
前記シリコーンマクロモノマーは、重合開始剤及び着色剤及び顔料を除いた100重量部の前記基材に対して10重量部以上78重量部以下の範囲内で含まれる、請求項1~
19のいずれか1項に記載のジェルネイル化粧用組成物。
【請求項21】
前記シリコーンマクロモノマーは、重合開始剤及び着色剤及び顔料を除いた100重量部の前記基材に対して20重量部以上77重量部以下の範囲内で含まれる、請求項1~
20のいずれか1項に記載のジェルネイル化粧用組成物。
【請求項22】
請求項1~
21のいずれか1項のジェルネイル化粧用組成物を用いて硬化した爪化粧用組成物を爪の上に形成する方法であって、
爪化粧用組成物を爪の上に塗布するステップと;
前記爪化粧用組成物を主波長で80mW/cm
2以下の照度を有する光に3分未満曝露して前記爪化粧用組成物を硬化させるステップと;
を含む、方法。
【請求項23】
前記硬化した爪化粧用組成物は、25barrerより大きな酸素透過率を有する、請求項
22に記載の方法。
【請求項24】
前記硬化した爪化粧用組成物は、50barrerより大きな酸素透過率を有する、請求項
22又は
23に記載の方法。
【請求項25】
前記硬化した爪化粧用組成物は、75barrerより大きな酸素透過率を有する、請求項
22~
24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記硬化した爪化粧用組成物は、100barrerより大きな酸素透過率を有する、請求項
22~
25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
基材としてのシリコーンマクロモノマーによって重合したシリコーン単位を含み、
前記シリコーンマクロモノマーは、2つ以上の重合性官能基を有し、
前記基材は、第1の構造を有する第1のシリコーンマクロモノマーと第2の構造を有する第2のシリコーンマクロモノマーとを含み、前記第2の構造の鎖長は、前記第1の構造の鎖長より長く、前記第2のシリコーンマクロモノマーは、前記第1のシリコーンマクロモノマー以上の重量比で含まれ、
15g/m
2・hrより大きな水分蒸散率を有する、
爪の化粧のための爪化粧用樹脂。
【請求項28】
基材としてのシリコーンマクロモノマーによって重合したシリコーン単位を含み、
前記シリコーンマクロモノマーは、2つ以上の重合性官能基を有し、
前記シリコーンマクロモノマーは、重合開始剤及び着色剤及び顔料を除いた100重量部の前記基材の成分全体に対して10重量部以上から80重量部以下の範囲内で含まれ、
15g/m
2・hrより大きな水分蒸散率を有
し、
前記シリコーンマクロモノマーは、次の化学式
(R-A)
x
-B
による構造を有し、
Rは、重合性官能基であり、Aは、連結原子または基であり、Bは、シリコーン含有基であり、Xは、任意の整数であり、
前記シリコーンマクロモノマーは、前記シリコーン含有基としてのポリシロキサン構造と連結基としてのウレタン結合およびエーテル結合とを少なくとも含む、爪の化粧のための爪化粧用樹脂。
【請求項29】
基材としてのシリコーンマクロモノマーによって重合したシリコーン単位を含み、
前記シリコーンマクロモノマーは、2つ以上の重合性官能基を有し、
前記シリコーンマクロモノマーは、重合開始剤及び着色剤及び顔料を除いた100重量部の前記基材の成分全体に対して10重量部以上から80重量部以下の範囲内で含まれ、
15g/m
2・hrより大きな水分蒸散率を有
し、
前記基材は、重合開始剤、を含み、
前記重合開始剤は、2種以上が前記基材に含まれる、爪の化粧のための爪化粧用樹脂。
【請求項30】
基材としてのシリコーンマクロモノマーによって重合したシリコーン単位を含み、
前記シリコーンマクロモノマーは、2つ以上の重合性官能基を有し、
前記シリコーンマクロモノマーは、重合開始剤及び着色剤及び顔料を除いた100重量部の前記基材の成分全体に対して10重量部以上から80重量部以下の範囲内で含まれ、
15g/m
2・hrより大きな水分蒸散率を有
し、
前記基材は、アクリロイルモルホリン、N,N-ジエチルアクリルアミドおよび2-メトキシエチルアクリレートのうち少なくとも1種をさらに含む、爪の化粧のための爪化粧用樹脂。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、株式会社メニコンに譲渡された「爪化粧用組成物、その使用方法および爪化粧用樹脂」という名称の2016年9月23日出願の日本国特許出願第2016-185331号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、指爪化粧用組成物、その使用方法および指爪化粧用樹脂に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、爪化粧用樹脂は、マニキュアをする際に用いられる、ニトロセルロースおよび/またはアクリル樹脂が樹脂の主成分であるマニキュア液と、ジェルネイルとに分けられる。マニキュア液は、典型的には、ニトロセルロースおよび/またはアクリル樹脂を含む。これらの化粧用樹脂は、マニキュア液に用いられるときトルエン、酢酸ブチル、酢酸エチルまたは類似物などの有機溶媒に溶解される。結果として得られる溶液は、次に着色剤を受け入れてよく、結果として得られる溶液は、次に爪に塗布され、乾固させてよい。マニキュア液には、最終的な液中の溶媒の存在に起因して明らかに刺激性の臭いがある。さらに、安価ではあるが、従来のマニキュア液の耐久性は、いくぶんか限定される。典型的には、乾固したマニキュア液は、欠けたり剥がれる前に約3日から1週間しか持続しない。さらに、従来のマニキュア液を完全に除去するには、強力な化学物質、たとえばアセトンが典型的に用いられる。
【0004】
これに対して、ジェルネイルは、光硬化性材料、たとえばモノマー混合物で形成される。典型的に、ジェルネイルは、開始剤とウレタンオリゴマー、アクリルモノマーまたは類似物などの重合性成分との混合物を含む。この混合物は、爪に塗布され、続いて冷陰極蛍光ランプ(CCFL)または発光ダイオード(LED)を用いる紫外線硬化によって硬化させてよい。これら2種類の爪化粧用樹脂のうち、優れた仕上げ光沢性、爪への接着性、耐久性、臭気放出の少なさおよび比較的短い乾固または硬化時間を理由としてジェルネイルが近年注目されている。ジェルネイル用樹脂は、典型的には、ウレタンオリゴマー、疎水性モノマーまたは類似物に加えて、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルおよび架橋剤などとともに塗布される。このジェルネイル用組成物は、次に、光開始剤の存在下で硬化させ、それによって高い耐久性の硬質な樹脂を得てよい。ほとんどの場合、硬化したジェルネイルは、高い耐久性を示し、なんらかの構造的な劣化がある前に3週間以上持続することが多い。この耐久性は、多くの専門家、たとえばギタリストおよび野球選手によって追求される所望の強度を提供する。ジェルネイルは、多くの場合に、使用者の爪の上のベース層、カラー層(アートまたは絵を含んでよい)およびトップ層を含んでよい何層かで使用者の爪に塗布される。それらの耐久性に起因して、従来のジェルネイルは、典型的には、美容系の店においてサンディングによって除去された。
【0005】
爪はケラチンが変化したもので、薄板状の角化細胞が密着して成り立っている。爪の付け根、爪床部分には爪甲の形成が不十分で十分角質化していない部分があり、また、爪下の細胞は爪を通して水分を蒸発させるため、爪上に形成されるジェルネイル樹脂にも、酸素や水蒸気を透過する特性が必要と考えられる。さらに、伝統的なジェルネイル樹脂は酸素や水蒸気の透過性が低く、バクテリア、例えばこれはネイル樹脂の上下に存在する緑膿菌の清涼を促進する環境を生む可能性があり、爪の変色に繋がる可能性がある。
【0006】
先行技術マニキュア液樹脂組成物は、酸素透過性、すなわち酸素が爪表面へ通過することを可能にする材料の能力を実現する試みとして、シリコーン成分を含有することがある。しかしながら、先行技術マニキュア液は、低い酸素透過性および無視できるほどの透水性を示すと推定されるし、ジェルネイル用樹脂としての使用にとって望ましくない理由となるその他の性質を有することがある。たとえば、日本の特開2003-342128号は、高分子量線状シロキサンポリマーを含む組成物を記載している。高い酸素透過性を有するジェルネイル用組成物を得るこのポリマーとジェルネイル用組成物との混合物は、溶解不良および相分離を生じる結果となる。よって、均一な組成物は得ることが難しい。ジェルネイル用組成物として均一な溶解状態を得ることができる場合でも、この組成物は、爪に塗布され硬化させたとき濁り、または相分離が起こり、脆くかつ艶のない表面を生じる。
【発明の概要】
【0007】
一例示的実施形態によると、爪の表面に塗布され、爪の上に爪化粧用樹脂を形成するようにジェルネイル化粧用組成物が構成され、ジェルネイル化粧用組成物は、硬化して樹脂を形成したとき約15g/m2・hrより大きな水分蒸散率を有する。
【0008】
一例示的実施形態によると、ジェルネイル化粧用組成物は、爪の表面に塗布され、爪の上に爪化粧用樹脂を形成するように構成され、ジェルネイル化粧用組成物は、硬化して樹脂を形成したとき約28g/m2・hrより大きな水分蒸散率を有する。
【0009】
一例示的実施形態によると、ジェルネイル化粧用組成物は、爪の表面に塗布され、爪の上に硬化した爪化粧用樹脂を形成するように構成され、ジェルネイル化粧用組成物は、硬化して樹脂を形成したとき25barrer以上の爪化粧用樹脂の酸素透過係数を有する。
【0010】
別の例示的実施形態によると、ジェルネイル化粧用組成物は、少なくとも2つの重合性官能基を有するシリコーンマクロモノマーと、シリコーンマクロモノマーの重合を選択的に開始するように構成された重合開始剤とを含む基材を含む。
【0011】
一例示的実施形態によると、ジェルネイル化粧用組成物のシリコーンマクロモノマーは、次の化学式
(R-A)
x
-Bによる構造を有し;
式中、Rは、重合性官能基であり、Aは、連結原子または基であり、Bは、シリコーン含有基であり、Xは、任意の整数である。
【0012】
一例示的実施形態によると、シリコーンマクロモノマーは、シリコーン含有基としてのポリシロキサン構造と連結基としてのウレタン結合およびエーテル結合とを少なくとも含む。
【0013】
さらに別の例示的実施形態によると、基材は、第1の構造を有する第1のシリコーンマクロモノマーと第2の構造を有する第2のシリコーンマクロモノマーとを含み、第2の構造の鎖長は、第1の構造の鎖長より長く、第2のシリコーンマクロモノマーは、第1のシリコーンマクロモノマー以上の重量比で含まれる。
【0014】
さらに別の例示的実施形態によると、シリコーンマクロモノマーは、次の化学式による構造を有し、
式中、R1およびR9は、末端重合性官能基であり;R2、R4、R6およびR8は、アルキレンオキシ基の構造を有する基であり;R3およびR7は、それぞれ環状基であり;R5は、ポリシロキサン基である。
【0015】
【0016】
さらに別の例示的実施形態によると、ジェルネイル化粧用組成物のシリコーンマクロモノマーは、次の化学式による構造を有し、
式中、R11、R12およびR13は、それぞれ水素または3個以下の炭素原子を有するアルキル基であり、aおよびbは、それぞれ1から15の間である。
【0017】
【0018】
さらに別の例示的実施形態によると、シリコーンマクロモノマーは、少なくとも2種の化学的に異なるシリコーンマクロモノマーを含む。
【0019】
さらに別の例示的実施形態によると、ジェルネイル化粧用組成物は、a=b=1である第1のシリコーンマクロモノマーとa≧1かつb>1である第2のシリコーンマクロモノマーとを含み、第2のシリコーンマクロモノマーに対する第1のシリコーンマクロモノマーの質量比は、約10/90から約50/50である。
【0020】
さらに別の例示的実施形態によると、シリコーンマクロモノマーは、基材のうち約2重量パーセントから約80重量パーセント含まれる。
【0021】
さらに別の例示的実施形態によると、ジェルネイル化粧用組成物の重合開始剤は、基材のうち約2重量パーセントから約15重量パーセント含まれる。
【0022】
さらに別の例示的実施形態によると、基材は、アクリロイルモルホリン、N,N-ジエチルアクリルアミドおよび2-メトキシエチルアクリレートのうち少なくとも1種類をさらに含む。
【0023】
さらに別の例示的実施形態によると、ジェルネイル化粧用組成物は、架橋剤を含み、架橋剤は、二官能架橋剤、三官能架橋剤または四官能架橋剤のうち少なくとも1種類を含む。
【0024】
さらに別の例示的実施形態によると、ジェルネイル化粧用組成物は、回転粘度計を用いて20℃で測定して約50mPa・sから約38,000mPa・sの粘度を有する。
【0025】
さらに別の例示的実施形態によると、硬化した爪化粧用組成物は、光沢度計によって測定して20°で5以上または60°で25以上の表面光沢を有する。
【0026】
爪化粧用組成物を用いて爪の上に硬化した爪化粧用組成物を形成する例示的方法は、爪化粧用組成物を爪の上に塗るステップと、爪化粧用組成物を主波長で80mW/cm2以下の照度を有する光に約3分未満曝露して爪化粧用組成物を硬化させるステップとを含み、硬化した爪化粧用組成物は、約25g/m2・hrより大きな水分蒸散率を示す。
【0027】
さらに別の例示的実施形態によると、爪化粧用組成物を用いて爪の上に硬化した爪化粧用組成物を形成する方法は、硬化した爪化粧用組成物が、約25barrerより大きな酸素透過率を有する。
【0028】
さらに別の例示的実施形態によると、硬化した爪化粧用組成物は、約50barrerより大きな酸素透過率を有する。
【0029】
さらに別の例示的実施形態によると、硬化した爪化粧用組成物は、約75barrerより大きな酸素透過率を有する。
【0030】
さらに別の例示的実施形態によると、硬化した爪化粧用組成物は、約100barrerより大きな酸素透過率を有する。
【0031】
さらに別の例示的実施形態によると、爪化粧用組成物は、少なくとも2つの重合性官能基を有するシリコーンマクロモノマーと、シリコーンマクロモノマーの重合を選択的に開始するように構成された重合開始剤とを含む基材を含む。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書に記載される原理は、優れた酸素透過性および水分蒸散性を有する爪化粧用組成物および爪用樹脂、ならびにその使用方法を含む。爪化粧用組成物は、高い光沢度、均一性、硬度および耐久性も示す。本明細書において用いられる句「蒸散性」は、表面を通して蒸気またはガスを通過させるかまたは通路を与える能力と理解されることを意図する。本明細書に記載される爪化粧用組成物は、優れた被覆特性も有してよく、爪の表面に塗布されたとき良好な外観を提供してよい。本明細書に記載される爪化粧用組成物および爪用樹脂は、シリコーン含有マクロモノマーを含んでよい。いくつかの事例において、シリコーンマクロモノマーは、爪化粧用組成物用の基材として重合させてよい。いくつかの事例において、シリコーンマクロモノマーは、少なくとも2つの重合性官能基を含んでよく、いくつかの事例において、爪化粧用組成物は、シリコーンマクロモノマー用の重合開始剤を含んでよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される爪化粧用組成物を用いる方法は、爪化粧用組成物、たとえば本明細書に記載される樹脂を爪の上に塗布するステップと、硬化ステップとを含んでよい。硬化ステップは、爪化粧用組成物を主波長、たとえば365nmまたは405nmで80mW/cm2以下の照度を有する光に曝露するステップを含んでよい。曝露時間は、変動してよいが、一実施形態によると、硬化ステップは、爪化粧用組成物の一層につき約3分未満の曝露時間で行われてよい。
【0034】
シリコーンを含むいくつかの先行技術の爪化粧用組成物において、シリコーン成分は、酸素を溶解しうる。この溶存酸素は、重合阻害とも呼ばれる、硬化後の未重合成分の量の増加という結果を生じることがある。重合阻害は、樹脂表面の重合度を抑制し、それによって爪化粧用組成物の表面艶、または光沢度を減少させ、表面粘着性を生じさせることもある。本開示のいくつかの実施形態において、本明細書に記載される爪化粧用組成物のシリコーンマクロモノマーは、優れた耐久性と表面粘着性のない硬度とを有する良好な光沢の表面組織を提供する。
【0035】
いくつかの実施形態において、爪化粧用組成物は、少なくとも2つの重合性官能基を有するシリコーンマクロモノマーを基材として含んでよく、シリコーンマクロモノマーに対する重合開始剤を含んでもよい。いくつかの事例において、この爪化粧用組成物の少なくとも1つの成分のためにシリコーンマクロモノマーを用いると、爪化粧用組成物の酸素透過性および/または水分蒸散性を他のジェルネイル化粧用組成物と比較して増加させることができる。さらに、いくつかの事例において、重合性官能基を有するシリコーンマクロモノマーをその一成分として含む爪化粧用組成物は、組成物を硬化した後に得られる樹脂の酸素透過性および水分蒸散性を増加させることがあるだけでなく、硬化した爪化粧用組成物の弾性、柔軟性、機械的強度および耐久性を向上させることもある。いくつかの実施形態において、たとえば、重合性官能基がアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基または類似基であってよい。なお、本明細書において用いられるアクリロイル基を有するアクリレート基およびメタクリロイル基を有するメタクリレート基は、全体として(メタ)アクリレートと呼ばれる。
【0036】
いくつかの実施形態において、爪化粧用組成物に含まれてよいシリコーンマクロモノマーは、限定されない。たとえば、いくつかの事例において、シリコーンマクロモノマーは、下に提供される化学式1の構造を有してよい。化学式1において、Xは、任意の整数、たとえば4以下、または2以下であってよい。Rは、重合性官能基を表すか、または上記官能基のいずれかであってよい。Aは、連結単位を表し、または炭素鎖を含むものであってよい。Bは、Siを含有するシリコーン単位である。いくつかの実施形態において、シリコーンマクロモノマーは、シリコーン単位としてポリシロキサン構造を有してよい。このポリシロキサン構造として、たとえばポリジメチルシロキサン構造または類似構造を例とすることができる。シリコーンマクロモノマーは、分子中の連結単位としてウレタン結合またはエーテル結合を有してよい。いくつかの事例において、この構造は、樹脂が本明細書に記載される優れた酸素透過性水分蒸散性、弾性および耐久性を有することを可能にすることがある。いくつかの事例において、たとえば、シリコーンマクロモノマーは、ポリシロキサン構造、ウレタン結合およびエーテル結合を少なくとも含んでよい。
【0037】
【0038】
いくつかの実施形態において、シリコーンマクロモノマーは、化学式2の構造を有してよい。化学式2において、R1およびR9は、末端重合性官能基、たとえばアクリロイル基またはメタクリロイル基のどちらかを表してよく、同じであっても異なってもよい。いくつかの事例において、R2、R4、R6およびR8は、アルキレンオキシ基の構造を有する基を表してよく、これらのうち少なくとも2つは、同じであっても異なってもよい。いくつかの実施形態において、前述のR2、R4、R6およびR8は、アルキレンオキシ基の構造が予め定められた回数繰り返される構造を有してよい。たとえば、R2、R4、R6およびR8のうち任意の1つがアルキレンオキシ基、たとえばメチレンオキシ基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基および類似基であってよい。いくつかの事例において、このアルキレンオキシ基は、それに結合したアルキル基または類似基などの置換基をさらに有してよい。いくつかの実施形態において、R3およびR7は、環構造を有する基であってよく、同じであっても異なってもよい。いくつかの事例において、R3およびR7は、環構造としてシクロヘキサン構造を有してよく、または複数の置換基、たとえば1つ以上のアルキル基または類似基を有してよい。いくつかの実施形態において、アルキル基としてメチル基、エチル基、プロピル基または類似基を例とすることができる。いくつかの実施形態において、R5は、ポリシロキサン構造を有する基を表してよい。ポリシロキサン構造は、限定されない。それは、たとえばポリジメチルシロキサン構造であってよい。
【0039】
【化4】
(式中、R
1およびR
9は、アクリロイル基及びメタクリロイル基のどちらかを表し;
R
2、R
4、R
6及びR
8は、
アルキレンオキシ基の構造を含む基を表し、ここで、前述の
もののいずれかのうち少なくとも2つは、同じであっても異なってもよく;R
3および
R
7は、環構造を有する基を表し、同じであっても異なってもよく;R
5はポリシロキサ ン構造を有する基を表す。)
【0040】
いくつかの実施形態において、シリコーンマクロモノマーは、化学式3の構造を有してよい。化学式3において、R11~R13は、水素と3個以下の炭素原子を有するアルキル基とのうちいずれかを表してよく、同じであっても異なってもよい。さらに、化学式3において、aおよびbは、1と15との間からの数を表してよく、同じであっても異なってもよい。いくつかの事例において、nは、ポリシロキサン構造の繰り返し数を表してよく、約10から約60の間の数であってよい。いくつかの実施形態において、この繰り返し数nは、約10から約40であってよい。いくつかの事例において、シリコーンマクロモノマーは、化学式3の式を有してよく、式中a=b=1である。しかし、いくつかの実施形態において、a=1およびb=10である。化学式3のシリコーンマクロモノマーは、参照により全体として本明細書に組み込まれる日本特許出願第5604154号および国際公開第2015/092859号に詳しく説明されている。
【0041】
【0042】
いくつかの実施形態において、シリコーンマクロモノマーは、重合開始剤または着色剤もしくは顔料を除いて100重量部の基材の成分全体に対して2重量部以上から80重量部以下の範囲内;10重量部以上から78重量部以下の範囲内;20重量部以上から77重量部以下の範囲内であってよい。いくつかの実施形態において、2重量部以上の含有率は、シリコーンマクロモノマーを含まない爪化粧用組成物と比較して次第に高くなる酸素および/または水分蒸散性を得ることを可能にすることがある。いくつかの事例において、80重量部以下の含有率は、シリコーンマクロモノマーを含まない爪化粧用組成物と比較して、樹脂それ自体の明るさおよび脆さの減少をさらに抑制することと、樹脂形成の時点における重合抑制に起因して発生する残留部分の増加をさらに抑制することとを可能にすることがある。
【0043】
いくつかの実施形態において、シリコーンマクロモノマーは、個別に用いられても2種類以上を組み合わせて混合されてもよい。すなわち、いくつかの実施形態において、爪化粧用組成物は、第1の構造を有する第1のシリコーンマクロモノマーと、その一部が第1の構造と異なる第2の構造を有する第2のシリコーンマクロモノマーとを含有してよい。たとえば、いくつかの事例において、爪化粧用組成物は、第1の構造を有する第1のシリコーンマクロモノマーと、第2の構造を有する第2のシリコーンマクロモノマーとを含有してよく、第2の構造の鎖長は、第1の構造のものより長い。これらの事例において、第2のシリコーンマクロモノマーは、第1のシリコーンマクロモノマーと同じ質量比以上で含まれてよい。たとえば、いくつかの実施形態において、化学式3の構造を有する2種類以上の化合物がシリコーンマクロモノマーとして含まれてよい。いくつかの実施形態において、互いに異なる2種類以上の構造を有するシリコーンマクロモノマー化合物を含むことによって、爪化粧用組成物の粘度を調節し、それによって被覆性を向上させることが可能である。いくつかの実施形態において、2種類以上の化合物をそのように組み合わせることによって得られる樹脂は、シリコーンマクロモノマーを含まないジェルネイル化粧用組成物と比較して、脆さの低下とともに高い酸素および/または水分蒸散性ならびに高い光沢度を示すことがある。たとえば、a=b=1である化学式3の式を有する第1のシリコーンマクロモノマーと、a≧1およびb>1である化学式3の式を有する第2のシリコーンマクロモノマーとが、シリコーンマクロモノマーとして含まれてよい。いくつかの実施形態において、第1のシリコーンマクロモノマーは、1≦a≦4および/または1≦b≦4である化学式3の式を有してよく、第2のシリコーンマクロモノマーは、1≦a≦12および/または5≦b≦12であるか、または1≦a≦10および/または8≦b≦10である化学式3の式を有してよい。さらに、第1および第2のシリコーンマクロモノマーが化学式3の式を有するいくつかの実施形態において、繰り返し数の比(n1/n2)(式中、n1は、第1のシリコーンマクロモノマーの繰り返し数であり、n2は、第2のシリコーンマクロモノマーである)は、約1/3(20/60)、約1/2(20/40)または約1/1(40/40)であってよい。いくつかの事例において、たとえば、第2のシリコーンマクロモノマーBに対する第1のシリコーンマクロモノマーAの重量比A/Bは、10/90以上、15/85以上、20/80、または25/75であってよい。この重量比A/Bは、50/50以下、または45/55以下であってよい。爪化粧用組成物が2種類のシリコーンマクロモノマーを本明細書に記載されている比で含むいくつかの実施形態において、爪化粧用組成物は、優れた酸素および/または水分蒸散性、光沢度、強度および柔軟性のような特性を有することがある。シリコーンマクロモノマーが化学式3の式を有するいくつかの実施形態において、繰り返し数a、bおよびnは、1桁の数であってよい。しかし、上記のシリコーンマクロモノマーは、高分子量化合物であってよく、その結果いくつかの繰り返し数を有するシリコーンマクロモノマーを混合するのが普通である。これらの事例において、シリコーンマクロモノマーの繰り返し数a、bおよびnは、平均値であってよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、爪化粧用組成物は、シリコーンマクロモノマー以外の基本成分を含んでよい。そのような基本成分として、重合開始剤またはシリコーンマクロモノマーとの優れた相溶性を有する、極性基を持つモノマーが採用されてよい。いくつかの実施形態において、このモノマーは、得られる樹脂に光沢性、硬度および耐久性を付与することができ、より少ない水分吸収を有する樹脂を提供することができる。いくつかの実施形態において、そのようなモノマーは、たとえば、共重合モノマーであるアクリロイルモルホリン、N,N-ジエチルアクリルアミドおよび2-メトキシエチルアクリレートを含む(メタ)アクリレート化合物または(メタ)アクリルアミド化合物であってよい。いくつかの実施形態において、これらの共重合モノマーは、個別に用いることも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0045】
いくつかの実施形態において、爪化粧用組成物は、基材として架橋剤をさらに含んでよい。架橋剤を加えると、硬化後の樹脂に増加した硬度および光沢度を付与することがある。さらに、架橋剤が基材であるいくつかの実施形態において、架橋剤は、樹脂の含水率および水吸収を低下させることがあり、樹脂それ自体の耐久性を増加させることがある。架橋剤の例は、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよび類似物などの二官能架橋剤;トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリントリアクリレートおよび類似物などの三官能架橋剤;ペンタエリスリトールテトラアクリレートおよび類似物などの四官能架橋剤を含み;これらの架橋剤は、個別に用いることも2種以上を組み合わせて用いることもできる。いくつかの実施形態において、架橋剤(単数または複数)は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレートまたはペンタエリスリトールテトラアクリレートであってよい。爪化粧用組成物において架橋剤を用いると、爪化粧用組成物の粘度を調節する能力が可能になることがあり、さらに、樹脂の外観を均一に透明に、硬くすることができ、優れた表面光沢を付与することができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、爪化粧用組成物中に含有される重合開始剤は、ラジカル光重合開始剤および/またはカチオン重合開始剤を含んでよい。いくつかの実施形態において、重合開始剤の例は、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドおよび類似物などのアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤を含んでよい。いくつかの事例において、重合開始剤の例は、メチルオルトベンゾイルベンゾエート、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテルおよび類似物などのベンゾイン系光重合開始剤を含んでよい。いくつかの実施形態において、重合開始剤の例は、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(HMPPO)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(イルガキュア651)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュア2959)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184)および類似物などのアルキルフェノン系光重合開始剤を含んでよい。いくつかの実施形態において、重合開始剤の例は、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントンおよび類似物などのチオキサントン系光重合開始剤を含んでよい。いくつかの実施形態において、これらの光重合開始剤は、個別に用いられても2種類以上を組み合わせて用いられてもよい。さらに、いくつかの事例において、光重合開始剤と共に光増感剤も用いられてよい。いくつかの実施形態において、重合開始剤は、100重量部の基材に対して1.5重量部以上から20重量部以下の範囲、2重量部以上から15重量部以下の範囲、2重量部以上から10重量部以下の範囲で爪化粧用組成物中に含まれてよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、爪化粧用組成物に染料、顔料または類似物などの着色剤がさらに加えられてよい。しかし、爪化粧用組成物に着色剤だけを適用すると、思わしくない相溶性という結果を生じることがあり、そのため均一な爪化粧用組成物を得ることが難しい。したがって、いくつかの実施形態において、着色組成物であって、用いられる着色剤がシリコーン樹脂または類似物などのバインダーとともに塗装される着色組成物が、爪化粧用組成物中に含まれてよい。着色剤は、当分野において公知であるかまたは将来発見される任意の適当な材料であってよい。いくつかの実施形態において、着色剤は、100重量部の基材に対して3重量部以上から30重量部以下の範囲;または5重量部以上から20重量部以下の範囲で爪化粧用組成物中に含まれてよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、爪化粧用組成物は、有機溶媒を実質的に含まなくてよい。本明細書において用いられる「を実質的に含まない」は、重合性成分の不純物として含有される有機溶媒を指してよく、組成物成分として約1%質量未満の量で爪化粧用組成物中に見いだされてよい。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、爪化粧用組成物の粘度を調節するために加えられる有機化合物であり、重合性反応基を持たなくてよい。有機溶媒の例は、アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N-メチル-2-ピロリドン、ジメトキシエタン、および類似物を含んでよい。
【0049】
いくつかの実施形態において、爪化粧用組成物は、比較的中程度の粘度を有してよい。いくつかの実施形態において、爪化粧用組成物の粘度は、回転粘度計によって20℃で測定して50(mPa・s)以上から38,000(mPa・s)以下の範囲内、50(mPa・s)以上から30,000(mPa・s)以下の範囲内、または50(mPa・s)以上から26,000(mPa・s)以下の範囲内であってよい。爪化粧用組成物の粘度が38,000(mPa・s)以下、または30,000(mPa・s)以下であるいくつかの実施形態において、粘度は、爪への組成物の塗布の時点における気泡またはムラの発生を抑制することがある。粘度が50(mPa・s)以上のことがあるいくつかの実施形態において、粘度は、液体のしたたり落ちの発生を抑制し、顕著かつ望ましい厚さの塗膜を爪の上に形成することを可能にできる。
【0050】
いくつかの実施形態において、爪化粧用組成物を用いる方法は、本明細書に記載される爪化粧用組成物を爪の上に塗布する塗布ステップと、硬化ステップとを含む。いくつかの実施形態において、硬化ステップは、爪化粧用組成物を硬化させるために爪化粧用組成物を主波長で80mW/cm2以下の照度を有する光に1層につき約3分未満の露光時間で曝露することを含んでよい。
【0051】
いくつかの実施形態において、塗布ステップは、たとえばブラシまたは塗布ブラシを用いて、爪化粧用組成物を爪の上に塗布することを含んでよい。いくつかの実施形態において、爪化粧用組成物は、爪の上に2層以上で、たとえば基層、装飾層および保護層として塗布されてもよい。2層以上の爪化粧用組成物を塗布するいくつかの事例において、爪化粧用組成物は、各層が塗布された後に硬化させてよい。したがって、いくつかの実施形態において、爪化粧用組成物を用いる方法は、塗布および硬化ステップの繰り返しを複数含んでよい。いくつかの実施形態において、層の厚さは、組成物の粘度に応じて適切に設定されてよい。たとえば、100μm以上から1000μm以下の範囲で設定されてよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、硬化ステップは、一般的にジェルネイルを硬化させる際に用いるために市販されている重合ランプを用いてよい。いくつかの実施形態において、硬化ステップにおいて爪化粧用組成物を照射するために用いられる光は、爪化粧用組成物中に含まれる開始剤の所望の波長として、発光スペクトル中で最も強い照度を有する波長を有してよい。いくつかの実施形態において、365nmまたは405nmの主波長を有する紫外線ランプまたはLEDランプが硬化ステップにおいて用いられてよい。いくつかの実施形態において、曝露された爪に対するランプからの紫外光および熱の影響と硬化プロセスに伴う重合熱の影響とを考慮して、主波長における照度は、約80mW/cm2以下、約40mW/cm2以下、約15mW/cm2以下または約10mW/cm2以下であってよい。いくつかの実施形態において、美容系の店または家庭において費やされる時間を考慮して、照射時間は、1層の爪化粧用組成物を爪の上で硬化させるために、約3分未満、または2分未満に設定されてよい。
【0053】
いくつかの実施形態において、爪の表面に塗布される爪化粧用樹脂は、少なくとも2種の本明細書に記載されている重合性官能基を有する基材としてのシリコーンマクロモノマーによって重合したシリコーン単位を含有する。いくつかの実施形態において、爪化粧用樹脂は、たとえばジェルネイルであってよく、本明細書における爪化粧用組成物は、爪化粧用樹脂を形成するために上記に記載された使用方法によって硬化されてよい。いくつかの実施形態において、硬化後、爪化粧用樹脂は、ムラがなく均一な外観、十分な光沢、優れた硬度および非脆弱性ならびに樹脂が数週間身に付けられることを可能にする耐久性という特性を有することがある。
【0054】
爪床部分の十分角質化していない部分の細胞への影響や、爪下の細胞からの爪を通しての水分蒸発を考慮すると、爪化粧用樹脂は、酸素透過性や水分透過性に優れた樹脂であることが好ましい。いくつかの実施形態において爪化粧用樹脂の酸素透過率は、25barrer以上、30barrer以上、50barrer以上、100barrer以上、150barrer以上、200barrer以上または250barrer以上である。
【0055】
爪化粧用樹脂の、透湿性とも呼ばれる水分蒸散性は、たとえば爪床中で起こる生体プロセスに起因して爪化粧用樹脂を通って水分または水蒸気が通過する能力を指す。高い水分蒸散性は、爪および爪床からの水分の自然蒸発除去を可能にし、そのことが爪の健康を維持し、ジェルネイルと関連する一般的な問題を予防することができるから望ましい。水分蒸散性は、敬虔なイスラム教信者にとっても望ましい。爪化粧用組成物が多孔性でなければ、イスラム教信者は、水が信者のすべての部分に触れなければならないウドゥ(wudu)または洗い浄め-祈りの前に身体の部分を洗うイスラム教の手順-の邪魔になるから、身に付けることができない。水分蒸散性は、単位時間(時間)あたり爪化粧用樹脂の表面(m2)を通って通過する水の量(g)で測定される。いくつかの実施形態において、爪化粧用樹脂の水分蒸散性は、意外に高いことがあり、いくつかの事例において典型的なマニキュア液の水分蒸散性より高いことさえある。いくつかの実施形態において、爪化粧用樹脂は、15g/m2・hr以上、20g/m2・hr以上、25g/m2・hr以上、26g/m2・hr以上、27g/m2・hr以上、28g/m2・hr以上、29g/m2・hr以上、30g/m2・hr以上の水分蒸散性を有することがある。いくつかの実施形態において、水分蒸散性は、35g/m2・hr以上となることがある。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている爪化粧用組成物およびそれから形成された爪化粧用樹脂は、有用な硬度、耐久性およびジェルネイルに典型的な美的特性を提供する一方で、予期せぬ高い酸素透過性および水分蒸散性を提供する。本明細書に記載されているこれらの高い酸素透過性および水分蒸散性の値は、爪化粧用樹脂が爪に塗布されている間、爪および爪床を健康な状態に維持できる可能性があり、グリーンネイル症候群(シュードモナス爪感染)の形成を阻害するかまたは抑制する可能性がある。
【0056】
いくつかの事例において、爪の細胞の健康を保護することを考慮して、爪化粧用樹脂はある程度の水分を保持することが望ましい。しかし、爪化粧用樹脂中の高すぎる含水率は、樹脂それ自体の柔軟性を増加させることがあり、たとえば、樹脂は、意図に反して塗布直後に剥がれるか、または水を用いる作業時に思わしくない耐久性を有することがある。よって、いくつかの実施形態において、硬化した爪化粧用樹脂の含水率は、3重量%以上から20重量%以下の範囲;または3重量%以上から18重量%以下の範囲であってよい。
【0057】
いくつかの事例において、爪化粧用樹脂は、爪の細胞の健康を保護するために樹脂中に残留する低分子化合物を減らすことが望ましい。いくつかの実施形態において、硬化した樹脂が有機溶媒(アセトン)中に一夜浸漬された後に溶解している成分の量である抽出率(残留率)(重量%)は、比較的小さな値である。一般に、硬化後、爪化粧用樹脂の表面に残存する未重合成分は、有機溶媒または有機溶媒の水溶液で拭き取られ除去されてよい。しかし、高い抽出率を有する爪化粧用樹脂では、拭き取りによって除去される未重合成分の量は顕著である。したがって、爪化粧用樹脂全体の近似的な硬度は、爪化粧用樹脂からの抽出量を評価することによって評価されてよく、高い抽出率ほど低い硬度値を示す。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される爪化粧用樹脂は、シリコーンマクロモノマーを含有しない他の同様な爪化粧用樹脂より実質的に高い硬度を有してよい。
【0058】
爪化粧用樹脂は、典型的には美感を目的として用いられるので、いつくかの実施形態において、本明細書に記載される爪化粧用樹脂は、優れた光学的性質と光沢度計で測定できる限度まで高い表面光沢度でよい。硬化後、いずれの未重合成分も、有機溶媒または有機溶媒の水溶液で拭き取られ除去されてよく、光沢度計によって測定した表面光沢度は、樹脂に対して20°の測定角で5以上、60°で25以上であってよい。いくつかの実施形態において、表面光沢度は、約100近くであってよい。
【実施例】
【0059】
本開示の爪化粧用組成物および爪化粧用樹脂をどのように調製するかについての具体的な例を、本明細書において実施例として下記に記載する。そのような例は、本開示の理解を助けようとするものであり、決して本開示の範囲を限定するものではない。実験例1~20および23~39は、実施例であり、実験例21、22および40~45は、比較例である。本開示は、以下の実施例に限定されず、さまざまな実施形態は、本開示の技術範囲に属する限り、実施することができると直ちに理解しなければならない。
【0060】
本明細書に記載されている実施例のシリコーンマクロモノマーは、下記に提示する化学式4、5または6のうち1つ以上の構造を有してよい。これらの事例において、nは、10以上から60以下の数である。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
実験例中に用いた化合物の略語を下記に示す。マクロモノマーは、高分子量化合物であり、繰り返し数a、bおよびnは、平均値を表す。
【0065】
基材
・シリコーンマクロモノマー
SiDA-A:化学式4のnが約60のシリコーンマクロモノマー
SiDA-B:化学式4のnが約40のシリコーンマクロモノマー
SiDA-C:化学式4のnが約20のシリコーンマクロモノマー
SiDA-D:化学式4のnが約10のシリコーンマクロモノマー
SiDA-E:化学式5のnが約40のシリコーンマクロモノマー
SiDA-F:化学式6のnが約60のシリコーンマクロモノマー
・共重合モノマー
ACMO:アクリロイルモルホリン
DEAA:N,N-ジエチルアクリルアミド
2-MTA:2-メトキシエチルアクリレート
・架橋剤
EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
TAIC:トリアリルイソシアヌレート
PETA:ペンタエリスリトールテトラアクリレート
【0066】
重合開始剤
TPO:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
IRG651(イルガキュア651:2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン
TRIS:トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート
SiST:トリス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン
【0067】
下表1~4に示す配合比を使用し、各成分は、実験例1~20および本明細書に記載する爪化粧用組成物を調製するために10~50mLの範囲の容量を有する褐色ガラスバイアル瓶に秤取し、十分に混合した。固体成分である重合開始剤を混合時に均一に溶解する目的で、調製は、シリコーンマクロモノマーを除くすべての成分を混合し、次に続いてシリコーンマクロモノマーを混合することによって行った。有機溶媒は加えなかった。実験例21においては株式会社モガブルック(MOGA BROOK Co.,LTD.)の市販製品であるカルジェル(Calgel)を開始剤として使用し、実験例22においては株式会社ネイルセレクト(Nail Select Co.,Ltd.)の市販製品であるパラジェル(Para gel)を使用した。
【0068】
下に提示する表5~6に示す配合比を使用し、各成分は、実験例23~39の爪化粧用組成物を調製するために10~50mLの範囲の容量を有する褐色ガラスバイアル瓶に秤取し、十分に混合した。固体成分である重合開始剤を混合時に均一に溶解する目的で、調製は、シリコーンマクロモノマーを除くすべての成分を混合し、次に続いてシリコーンマクロモノマーを混合することによって行った。有機溶媒は加えなかった。下に提示する表7に示すように、実験例21および22の成分を主成分として用いる配合比との比較のために、各成分は、実験例40~45の爪化粧用組成物を調製するために10~50mLの範囲の容量を有する褐色ガラスバイアル瓶に秤取し、十分に混合した。
【0069】
手順
爪化粧用組成物は、その特性を評価するために、混合後に硬化させた。爪化粧用組成物は、ポリプロピレン(PP)製のプレートまたはアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)製のネイルチップの上にジェルネイル用の市販のブラシを用いて塗布し、続いて硬化させるために光を照射した。実験例1~11においては、ジェルネイル化粧用樹脂を得るために、4個の9W-紫外線ランプ(365nm)を備えた有限会社ドウユウ(DOUYU,Ltd.)から市販されている爪硬化装置を用いて2分間照射を行った。ウシオ電機株式会社(Ushio,Inc.)から市販されているUIT-101、UVD-365PDルミノメーターで測定したこの照射装置の照度は、約1.9mW/cm2であることを見いだした。実験例12~14においては、硬化のために有限会社ドウユウのネイルガーデン(Nail Garden)から市販されているCCFL-LEDランプ(36W、N-218)を使用した。この照射装置において、365nmの波長における照度は、約1.9mW/cm2であり、405nmの波長における照度は、ともにウシオ電機株式会社から市販されている製品であるUIT-150CCFLランプの直下で約8mW/cm2、UVD-S405LEDランプの直下で27mW/cm2であった。これらの装置の標準硬化時間は、60秒に設定した。実験例15~20においては、スイーツ株式会社(Sweets Co.,Ltd.)によって製造された市販LEDランプ(12V-6W、6UVT、S/N 0008767)を使用して硬化を行った。この照射装置において、LEDランプの直下で、365nmの波長における照度は、約0.7mW/cm2であり、405nmの波長における照度は、約31mW/cm2であった。これらの装置の標準硬化時間は、30秒に設定した。実験例23~45においては、18W-LEDランプ(405nm)を備える爪硬化装置(パラジェル(Paragel)LEDパラライト(Paralite)IV)を用いた1分間の照射が、爪化粧用樹脂を与えた。この照射装置において、365nmで測定した照度は、約0.1mW/cm2(ウシオ電機株式会社によって製造されたルミノメーターUIT-101、UVD-365PD)であり、405nmの波長における照度は、約12mW/cm2(ウシオ電機株式会社によって製造されたルミノメーターUIT-150、UVD-S405)である。
【0070】
照射後、表面に残る未重合成分は、2-プロパノールの50%水溶液に含浸しておいた吸収紙(ティッシュペーパー)で除去した。
【0071】
被覆性
爪化粧用組成物の特性としてのネイルチップへの被覆性を、以下の評価基準に基づいて確認および評価した。好ましい粘度、優れた被覆性、および容易に形成されかつ均一な塗膜を有す試料は、「AA」と評点した。好ましい粘度、良好な被覆性、および均一な塗膜を有する試料は、「A」と評点した。若干高い流動性、比較的良好な塗布性、および形成された均一な塗膜を有する試料は、「B」と評点した。気泡もしくはダマを発生する高い粘度、または顕著な滴下の原因となる低い粘度を有する試料は、[C]と評点した。
【0072】
粘度
20℃で粘度を測定するために東機産業株式会社(Toki Sangyo,Co.,Ltd.)によって製造されたE-型回転粘度計(TVE-20H)を使用した。
【0073】
硬化後の外観
光照射を行い、未重合成分を除去した後の透明性、曇度およびムラの観点での外観を、以下の評価基準に基づいて評価した。曇りがなく透明であり、ムラのない均一な外観を有する試料は、「A」と評点した。若干ムラがあり、鈍さおよび濁りがある試料は、「B」と評点した。不均一な外観を有するかまたは透明性がなく、白い濁りがある試料は、「C」と評点した。
【0074】
光沢/目視検査
得られた爪化粧用樹脂は、目視検査によって確認し、その光沢度を、以下の評価基準に基づいて評価した。樹脂全体にわたって優れた光沢を有する試料は、「AA」;樹脂全体にわたって良好な光沢を有する試料は、「A」;樹脂の一部でムラがあり、光沢のない試料は、「B」;樹脂全体にわたって光沢がない鈍い外観を示す試料は、「C」と評点した。
【0075】
硬度および脆さ
爪化粧用樹脂の性質は、目視検査によって確認し、硬度および脆さは、以下の評価基準に基づいて評価した。極めて高い硬度を有し、圧力を加えた後でも亀裂またはかけらのない試料は、「AA」と評点し、高い硬度を有し、圧力を加えた後でも亀裂またはかけらのないものは、「A」と評点し、良好な硬度を有するが硬化後に圧力を加えた後に樹脂の一部分で亀裂またはかけらが発生したものは、「B」、弱い硬度を有するものまたは容易に亀裂するかもしくは欠ける樹脂は、「C」と評点した。
【0076】
耐久性
組成物を爪に塗布し、硬化させた後、2週間が過ぎた後の外観を確認し、以下の評価基準に基づいて耐久性を評点した。外観および完全なコーティングを少なくとも2週間維持する試料は、「A」;2週間後にキューティクル部の一部分からおよび爪の先端において樹脂が剥がれるかまたは離れるものは、「B」;2週間後にキューティクル部の一部および爪の先端において亀裂するかまたは欠けた樹脂を有するものは、「C」と評点した。
【0077】
抽出率
抽出率値は、式(W1-W2)/W1×100(%)によって取得した。式中、W1は、硬化させるために爪化粧用組成物を光で照射した後に、2-プロパノールで拭いておいた4枚の樹脂の重量を表し、W2は、室温で30mLのアセトン中に一夜(約16時間)浸漬し、取り出し、続いて乾燥機中105℃で約3時間乾燥し、次にデシケータ中で約30分間冷却しておいた樹脂の重量を表す。
【0078】
含水率
含水率は、方程式(W3-W4)/W3×100(%)によって取得した。式中、W3は、硬化させるために爪化粧用組成物を光で照射した後に、2-プロパノールで拭いておいた4枚の樹脂の重量を表し、W4は、30mLの蒸留水中に浸漬し、20℃に設定した恒温水槽中にそのまま一夜(約16時間)静置し、取り出し、続いて乾燥機中105℃で約3時間乾燥し、デシケータ中で約30分間冷却した樹脂の重量を表す。
【0079】
酸素透過係数
評価における使用のための約0.3mmの厚さを有する爪甲を調製するために、PPプレートを簡便に作製するための型で閉じたシステム中で爪化粧用組成物を硬化させた。2-プロパノールによる拭き取りは、行わなかった。レーダーデベロップメントカンパニー(Rehder Development Company)によって製造されたGTG(GAS to GAS)アナライザーを用いて測定を行った。測定時間は、35℃の温度で2分間であり、取得した測定値を変換してDk値を得た。Dk値とは、酸素透過係数[(cm2/sec)・(mlO2/(mL×mmHg))]の値を指し、酸素透過係数値に1011を乗じることによって得る。
【0080】
光沢
光を照射することによって爪化粧用組成物を硬化させた後に、2-プロパノール水溶液(505)を用いて2枚の樹脂を拭いた。次に20°および60°における測定値を決定するためにコニカミノルタによって製造されたISO2813、ISO7668、ASTM D523、ASTM D2457、DIN67 530、JIS Z8741、GM-268Plusに対応する光沢度計を用いて光沢を測定した。
【0081】
結果および考察
実験例1~11中の組成物の硬化後の原材料の配合比(重量%)、被覆性および外観を評価した後に得た結果を下表1および2にまとめる。原材料の配合比(重量%)、被覆性、硬化後の外観、光沢、硬度および脆さ、耐久性、抽出率、含水量および酸素透過係数を評価した後に得た結果を下表3および4にまとめる。実験例1~20に記載する爪化粧用組成物は、表1~4から分るように、優れた被覆性および硬化性を有する。シリコーンマクロモノマーは、好ましくは2重量部以上から80重量部以下の範囲、特に好ましくは50重量部以上から75重量部以下の範囲で含有されると推測できる。特に、10以上から40以下のシリコーン単位の繰り返し数nを有するシリコーンマクロモノマーを用いた爪化粧用組成物は、硬化後に美しい外観および良好な光沢を示す。基材は、好ましくは、シリコーンマクロモノマーに加えて、共重合モノマーであるアクリロイルモルホリン、N,N-ジエチルアクリルアミド、2-メトキシエチルアクリレート、およびエチレングリコールジメタクリレートのうち少なくとも1種を含有する。重合開始剤および架橋剤は、100重量部の基材に対して好ましくは1.0重量部以上から20重量部以下の範囲、2重量部以上から10重量部以下の範囲で含まれると推測される。
【0082】
表4に示すように、実験例21の樹脂は、LED光源を用いる硬化によって十分な硬度または美しい外観を有さず、低い酸素透過性も有した。さらに、実験例22の樹脂は、19重量%以上を占める大きな可溶性成分、および低い酸素透過性も有した。他方、実験例12~20に記載した組成物を硬化した後に得た爪化粧用樹脂は、表3および4に示すように、優れた透明性、硬度および光沢度、重合した成分の少量の抽出および高い酸素透過性を有した。詳しくは、実験例12~20に記載した爪化粧用樹脂は、18重量%以下の抽出率、3重量%以上から20重量%以下の範囲の含水率および25barrer以上の酸素透過係数を示した。一般に、低い酸素透過性を有する樹脂が爪の上に形成されると、爪と樹脂との間で緑膿菌が増殖し、爪が緑色に変化する原因となるグリーンネイル症候群を引き起す。実験例1~20から分かるように、高い酸素透過性および高い水分蒸散性を有する爪化粧用樹脂は、このグリーンネイル症候群の発生を抑制できると推測される。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
爪化粧用組成物の粘度および被覆性を確認し、これらに加えて、組成物を硬化させた爪化粧用樹脂の硬化後の外観、光沢、硬度、脆さ、耐久性、抽出率、含水率、酸素透過性および水分蒸散性も評価した。
【0091】
表5~7は、実験例23~45に記載した原材料の配合比(重量%)、被覆性、硬化後の外観、光沢、硬度および脆さ、耐久性、光沢、含水率および酸素透過係数を評価した結果を要約する。実験例23~38に記載されている爪化粧用組成物は、表5および6に示すように、実験例1~20のものと類似の優れた被覆性および硬度を有することを見いだした。低分子量架橋剤は、好ましくは、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)およびペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)のうち少なくとも1種を含有することを見いだした。さらに、実験例23~39に記載した組成物を硬化した後に得た爪化粧用樹脂は、優れた透明性、硬度および光沢、重合した部分の少量の抽出および高い酸素透過性を有した。詳しくは、実験例23~39に記載した爪化粧用樹脂は、20°の測定角で5以上および60°の測定角で25以上の光沢度、3重量%以上から20重量%以下の範囲の含水率および25barrer以上の酸素透過係数を有した。実験例15~17、23~32、および34~38に記載した爪化粧用樹脂は、異なる鎖長を有する2つのタイプのシリコーンマクロモノマーを含有し、長い鎖長を有するマクロモノマーBに対する短い鎖長を有するマクロモノマーAの重量比は、10/90以上から50/50以下の範囲;または約15/85、または約20/80である。この結果に基づいて、異なる構造を有する2種の型のシリコーンマクロモノマーを特定の範囲内で含有すると好ましいことを見いだした。小さな繰り返し数nを有する1種類のシリコーンマクロモノマーSiDA-Cを含有する、実験例31に記載した組成物において、組成物は、低い粘度および若干減少した被覆性を有した。他方、高い繰り返し数nを有する1種類のシリコーンマクロモノマーSiDA-Fを含有する実験例39に記載した組成物において、組成物は、比較的低い被覆性を有したが高い粘度を有した。実験例39に記載した組成物は、低下した被覆性、およびさらには比較的低い酸素透過性を有したが優れた光沢および硬度を有し、その結果、爪化粧用樹脂としての機能は、好ましかった。
【0092】
実験例21または22の組成物を別のシリコーンマクロモノマーと混合することによって得た組成物であった実験例40~45において、表7に示すように、組成物は、白濁を示すかまたは混合することができなかった。実験例40および41に記載した濁った組成物も、低い被覆性、硬化後の樹脂の思わしくない外観、低い光沢および硬度を有し、その結果、これらの組成物は、爪化粧用樹脂として用いることができない。十分に混合されなかった実験例42~45に記載した組成物は、樹脂評価に付さなかった。
【0093】
このように、実験例に対応する爪化粧用組成物は、優れた被覆性および硬度を有し、これらの組成物を硬化させることによって得た爪化粧用樹脂は、爪に塗布されたとき優れた透明性、硬度、光沢および耐久性を有する。これらの組成物は、市販製品のものと同じ可溶成分および含水率を有するが、高い酸素透過性は、爪化粧用樹脂の劣化の減少および圧迫感およびグリーンネイル症候群の発生の抑制に寄与することがある。
【0094】
水分蒸散性比較試験
爪化粧用樹脂の水分蒸散性は、デルフィンテクノロジーズインク(Delfin Technologies Inc.)によって製造されたバポメーター(VapoMeter)を用いて評価した。本明細書に記載したいくつかの実施形態による爪化粧用組成物の試料を取得し、PP平板の上で評価した。市販のジェルネイルおよびマニキュア液の試料も調製し、試験に付した。ジェルネイルの場合は18W-LEDランプ(405nm)を備えたパラジェル「LEDパラライトIV」硬化装置を適用し、照射時間を1分に設定した。マニキュア液の場合は、試料を調製するために2ラウンドのコーティングと乾燥とを行った。試料は、水分蒸散性の測定の前に少なくとも24時間蒸留水中に浸漬した。
【0095】
試料は、表面に付着した水を除去した直後に調製し、ペーパークロスの上に置き、室温無風で測定した。水分蒸散性は、標準ネイルアダプタ(φ5mm)を通して表面にバポメーターを押圧することによって測定した。測定は、各材料について2回行い、平均値を計算し、整数として表示した。上記の方法を用いてジェルネイルおよびマニキュア液の酸素透過性も測定した。下に提示する表8は、本開示によって調製した爪化粧用樹脂、ならびに市販ジェルネイルおよびマニキュア液の測定の結果を示す。
【0096】
【0097】
表8において分かるように、シリコーンマクロモノマーを含み、本開示によって調製した実験例30および35は、他のすべての市販ジェルネイル試料より顕著に高い酸素透過率値を有することを見いだした。さらに、実験例30および35は、他のすべての市販ジェルネイル試料より高い水分蒸散率値を有することを見いだした。驚くべきことに、実験例30および35の水分蒸散性は、非常に高い酸素透過率および水分蒸散率を有すると一般に見なされているマニキュア液試料さえ上回ることを見いだした。したがって、本開示によって調製した試料の意外に高い酸素透過性および水分蒸散性は、爪化粧用樹脂の劣化の減少に寄与し、爪の健康を増加させ、グリーンネイル症候群という結果を生じる細菌成長の可能性を低下させることがある。
【0098】
上表8に示したように、本調合物は、特に他のジェルネイル試料と比較したとき増加した水分蒸散性と、全体として増加した酸素透過性とを提供する。詳しくは、本調合物は、好ましくは28g/m2・hrより大きな、いくつかの実施形態において15g/m2・hrより大きな水分蒸散率と、好ましくは100barrerより大きな、75barrerより大きな、いくつかの実施形態において50barrerより大きな、他の実施態様において25barrerより大きな、さらに他の実施形態において21barrerより大きな酸素透過率とを提供する。
【0099】
特に断らない限り、明細書(請求項以外)中で用いられている、すべての数または語句、たとえば寸法、物理的性質等を表すものは、すべての事例において、用語「近似的に」で修飾されると理解される。少なくとも、かつ請求項への均等論の適用を限定する試みとしてではなく、用語「近似的に」で修飾される本明細書または請求項に記載される各数値パラメータは、少なくとも記載される有意な桁の数を考慮し、かつ通常の丸め技法を適用することによって解釈するべきである。
【0100】
さらに、本明細書に開示されているすべての範囲は、いずれかおよびすべての部分範囲またはその中に包含されるいずれかおよびすべての個別の値を記載する請求項のための裏付けを包含し、提供すると理解するべきである。たとえば、記載される1から10の範囲は、最小値1と最大値10との間の、および/または最小値1と最大値10とを含むいずれかのおよびすべての部分範囲または個別値;すなわち、1以上の最小値で始まりかつ10以下の最大値で終るすべての部分範囲(たとえば、5.5から10、2.34から3.56など)または1から10のいずれかの値(たとえば、3、5.8、9.9994など)を含み、かつそれらを記載する請求項のための裏付けを提供すると見なすべきである。