(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】III-VコアおよびII-VI合金の外殻をもつ量子ドット
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20220714BHJP
C09K 11/74 20060101ALI20220714BHJP
C09K 11/70 20060101ALI20220714BHJP
C09K 11/88 20060101ALI20220714BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20220714BHJP
C01B 25/08 20060101ALI20220714BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20220714BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20220714BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/74 ZNM
C09K11/70
C09K11/88
C09K11/08 G
C09K11/08 A
C01B25/08 A
B82Y20/00
B82Y40/00
(21)【出願番号】P 2019534081
(86)(22)【出願日】2017-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2017083599
(87)【国際公開番号】W WO2018114982
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-18
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520466799
【氏名又は名称】カスタムドット ベー.ヴェー.
【氏名又は名称原語表記】QustomDot B.V.
【住所又は居所原語表記】Technologiepark 82 box 14 B-9025 Ghent-Zwijnaarde,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ヘンス,ゼーヘル
(72)【発明者】
【氏名】テシエ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】デュポン,ドリアン
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/189531(WO,A1)
【文献】特開2011-252117(JP,A)
【文献】特表2013-539798(JP,A)
【文献】特表2008-544013(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208478(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/185933(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0134366(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C09K 11/74
C09K 11/70
C09K 11/88
C09K 11/08
C01B 25/08
B82Y 20/00
B82Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドット(1)であって、以下:
● 二元、三元、または四元III-V材料のコア(2)で以下:
〇 In、GaおよびAlからなる群から選択される、少なくとも1つの元素、および
〇 PおよびAsからなる群から選択される、少なくとも1つの元素、
で構成される、前記コア;
● 二元または三元II-VI材料の第一層(3)で以下:
〇 Zn、および
〇 SおよびSeからなる群から選択される、少なくとも1つの元素、
で構成される、前記
第一層;
および
● 三元または四元II-VI材料の外殻(4)で以下:
〇 Zn、
〇 Cd、および
〇 SおよびSeからなる群から選択される、少なくとも1つの元素、
で構成される、前記
外殻;
を含む、前記量子ドット(1)。
【請求項2】
外殻(4)におけるZnとCdの間の均衡が、外殻(4)の伝導帯がコア(2)の伝導帯よりも高いエネルギーであるようである、請求項1に記載の量子ドット(1)。
【請求項3】
Cdの原子数とZnの原子数およびCdの原子数の合計との比率が、0.001と1.0の
間である、請求項1または2に記載の量子ドット(1)。
【請求項4】
外殻(4)が、Zn、CdおよびSeの合金から作られる、請求項1~3のいずれか一項に記載の量子ドット(1)。
【請求項5】
コア(2)が、InPから作られ、および第一層(3)が、ZnSeから作られる、請求項1~4のいずれか一項に記載の量子ドット(1)。
【請求項6】
コア(2)が、InPから作られ、および第一層(3)が、ZnSから作られる、請求項1~4のいずれか一項に記載の量子ドット(1)。
【請求項7】
第一層(3)が、好ましくは0.2と0.8nmの間に含まれる、0.8nmまでの厚さを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の量子ドット(1)。
【請求項8】
チオール分子を含む配位子の層をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の量子ドット(1)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の量子ドット(1)を含む、ポリマーフィルム。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の量子ドット(1)または請求項9に記載のポリマーフィルムを含む、ダウンライト周波数を転換するための発光性のダウンコンバータ。
【請求項11】
量子ドット(1)を製造するための方法であって、以下:
(a)
● In、GaおよびAlからなる群から選択される、少なくとも1つの元素、および
● PおよびAsからなる群から選択される、少なくとも1つの元素、
で構成される、二元、三元または四元III-V材料のコアナノクリスタルを製造する;
(b)
● Zn、および
● SおよびSeからなる群から選択される、少なくとも1つの元素、
で構成される、二元または三元II-VI材料である第一層(3)をコアナノクリスタル上に形成する;
(c)
● Zn、
● Cd、および
● SおよびSeからなる群から選択される、少なくとも1つの元素、
で構成される、三元または四元II-VI材料である外殻(4)を第一層(3)上に形成する、
ステップを含む、前記方法。
【請求項12】
ステップ(a)が、InPコアナノクリスタルを製造し、およびステップ(b)が、InPコアナノクリスタル周辺にZnSeまたはZnSの第一層(3)を形成する、請求項11に記載の量子ドット(1)を製造するための方法。
【請求項13】
ステップ(a)が、Znを包含する化合物とInを包含する化合物およびPを包含する化合物を混合し、第一の混合物を生成することを含み、およびステップ(b)が、前記第一の混合物とSeまたはSを包含する化合物とを混合し、第二の混合物を生成することを含む、請求項
11または
12に記載の量子ドット(1)を製造するための方法。
【請求項14】
外殻(4)が、Zn、CdおよびSeの合金から作られ、およびステップ(c)が、Cdを包含する化合物、Znを包含する化合物およびSeを包含する化合物を、ステップ(b)で製造される溶液に添加することを含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の量子ドット(1)を製造するための方法。
【請求項15】
請求項11~14のいずれか一項に記載の量子ドット(1)を製造するための方法であって、ここでステップ(c)が、以下:
● Cdを包含する化合物およびZnを包含する化合物を、添加されるCdと添加されるZnを加えた添加されるCdとの間の原子比率を0.001と1.0の
間で、ステップ(b)で製造される溶液に添加すること、および
● Seを包含する化合物を添加すること、
を、この順番において含む、前記方法。
【請求項16】
ステップ(c)から、結果として得られる得られる溶液にチオール化合物を添加するステップ(d)をさらに含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の量子ドット(1)を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第一の側面によると、本発明は、量子ドットに関する。第二の側面によると、本発明は、量子ドットを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドットは、発光性のダウンコンバージョン、すなわち、より高い周波数をもつ光のより低い周波数をもつ光への変換に頼る適用を可能にする材料である。
CdSeのコアおよびCdSのシェルを含む量子ドットは、すでにダウンコンバージョンのために使用されてきた。かかる量子ドットの主な不利益は、Cdが数か国において使用制限をもつ有毒な重金属であることである。
【0003】
InPのコアおよびZnSまたはZnSeのシェルを含む量子ドットもまた、ダウンコンバージョンについてすでに使用されてきた。それらの量子ドットの問題は、紫および青、特におよそ450nmにおける吸光度が低いことであり、一方でこの波長の範囲は、特にディスプレイまたは照明への適用における光ポンプのために重要である。
文献US2013/273247 A1は、InAsのコア、CdSeの第一層、およびCdZnSの外殻を有する量子ドットを開示する。
【0004】
文献WO2013/058900 A1は、InPのコア、ZnSeSの第一層、およびZnSeSの外殻を有する量子ドットを開示する。
文献WO2013/148057 A1は、InPのコア、ZnSeSの第一層、およびZnSの外殻を有する量子ドットを開示する。
文献US2013/115455 A1は、InPのコア、ZnSeSの第一層、およびCdSの外殻を有する量子ドットを開示する。
【発明の概要】
【0005】
第一の側面によると、本発明の目的は、青色光の高い吸光度および高い光ルミネッセンス量子収率をもつ量子ドットを提供することである。
【0006】
この第一の側面によると、本発明は量子ドットで:
● 二元、三元または四元III-V材料のコアで以下:
〇 In、GaおよびAlからなる群から選択される、少なくとも1つの元素、および
〇 PおよびAsからなる群から選択される、少なくとも1つの元素、
で構成される前記コア;
● 二元または三元II-VI材料の第一層で以下:
〇 Zn、および
〇 SおよびSeからなる群から選択される、少なくとも1つの元素、
で構成される前記層;
● 三元または四元II-VI材料の外殻で以下:
〇 Zn、
〇 Cd、および
〇 SおよびSeからなる群から選択される、少なくとも1つの元素で構成される前記殻、
を含む、前記量子ドットを提供する。
【0007】
本発明者らは、少量のCdを外殻に導入することは、青、紫およびUV波長における量子ドットの吸光度を、強く増加させることを実証した。吸光度におけるこの増加のために必要とされるCdの量を比較的低く保つことができる。例としては、それが、量子ドットを含有する材料についての法規制限度を満たす程度に十分に低く保たれることができ、それは濃度で、0.01%のCdであることができる。
【0008】
放出される光の波長は、量子ドットの寸法および外殻の組成物を選択することにより、選ばれ得る。本発明者らは、放射される光がほぼ単色であり得ることを示し、それは電気光学の適用において特に興味深い。例としては、本発明による量子ドットを使用し、全体で白い色のスぺクトルを得るなどのために青色LEDバックライトの一部を、緑色または赤色の光に変換することが可能である。
【0009】
得られる内在的な光輝性の量子収率は、比較的高い:それは、およそ45%であり得る。そのうえ、本発明者らは、本発明による量子ドットを含有する材料が低い自己吸収を有し得ることを示した。これは、高い内在的な光輝性の量子収率が高い外的な光輝性の量子収率へ変換されることを指し示す。
低い自己吸収は、別の利点を有する:低い量の量子ドットは、高いダウンコンバージョンを得るのに十分である。
外殻は、量子ドットの第二層として考えられ得る。
【0010】
本発明の態様において、外殻におけるZnおよびCdの間の均衡は、外殻の伝導帯がコアの伝導体よりもより高いエネルギーであるようである。言い換えると、外殻とコアの間にまたがるバンドの位置(タイプ1)が、存在する。エネルギーバンドのかかる配置は、発光波長が長くなりすぎる、または発光ピークが広範囲になりすぎる、または例としてはディスプレイへの適用における光輝性の量子の収率が低くなりすぎるまたがるようなバンドの位置(タイプ2)よりも、より好ましい。
【0011】
本発明のある態様において、Cdの原子数とZnの原子数およびCdの原子数の合計との間の比率は、0.001と1.0の間であり、好ましくは0.02と0.2の間、より好ましくは0.025と0.133の間である。
それらの組成物は、量子ドットの集合体において、EDX(Energy-dispersive X-ray spectroscopy)測定により決定され得る。Cdの原子数とCdの原子数およびZnの原子数の合計との間の比率についての上限の0.2は、それが508nmの大きなバンドギャップと一致するため、特に興味深い。
【0012】
本発明のある態様において、外殻は、「(Cd,Zn)Se」という表記により指し示されるZn、CdおよびSeの合金から作られる。
本発明のある態様において、コアはInPから作られ、および第一層はZnSeから作られる。
好ましくは、量子ドットにおいて、Seの原子数とZnの原子数の間の比率は、0.5と1.5の間であり、より好ましくは0.9と1.1の間、さらにより好ましくはおよそ1である。この比率は、量子ドットの集合体において、EDX(Energy-dispersive X-ray spectroscopy)測定により決定され得る。
【0013】
本発明のある態様において、コアはInPから作られおよび第一層はZnSから作られる。
好ましくは、量子ドットにおいて、Sの原子数とZnの原子数の間の比率は、0.5と1.5の間であり、より好ましくは0.9と1.1の間であり、さらにより好ましくはおよそ1である。この比率は、量子ドットの集合体において、EDX(Energy-dispersive X-ray spectroscopy)測定により決定され得る。
【0014】
本発明のある態様において、第一層は、好ましくは0.2と0.8nmの間に含まれる、0.8nmまでの厚さを有する。
第一層は、CdSeのInPコアにおける成長を防ぐ。この効果を得、およびダウンコンバージョンのために良好な光学的性質を有するための第一層の最適な厚さは、この範囲内である。外殻は、好ましくは1と10nmの間に含まれる厚さを有する。外殻の体積とコアの体積の間の比率は、好ましくは10と50の間、より好ましくは20である。
【0015】
本発明のある態様において、量子ドットは、チオール分子を含む配位子シェルを含む。
好ましくは、配位子の層は、外殻を囲う。
本発明者らは、チオール分子を含む配位子の層が固体層中と同様に溶液中で量子ドットに光安定性を提供することを示した。この光安定性は、本発明による量子ドットを包含するデバイスに対して長い寿命を与える。
【0016】
本発明のある態様において、量子ドットは、5と30nmの間、好ましくは10と20nmの間、より好ましくは14と15nmの間または13と14nmの間の平均直径を有する。
この範囲内である平均直径を有する量子ドットは、ポンプ光に対応する波長での吸収係数が量子ドット放出に対応する波長での吸収係数を強く超過するため、ダウンコンバージョンのために良好な光学的性質を提供することができる。シェルの体積が増大する場合、およびしたがって量子ドットの体積、量子ドット当たりの吸収も同様に増大する。
【0017】
本発明はまた、本発明の任意の態様による量子ドットを含むポリマーフィルムにも関する。
本発明者らは、本発明による量子ドットが固体層であるポリマーフィルムにおいて埋め込まれるとき、それらの有利な性質を保つことを示した。
【0018】
本発明はまた、ダウンライト周波数を転換するための発光性のダウンコンバータにも関する。発光性のダウンコンバータは、本発明の任意の態様による量子ドットまたは本発明の任意の態様によるポリマーフィルムを含む。
本書面の枠内で、発光性のダウンコンバータは、より高い周波数をもつ光からより低い周波数をもつ光へ変換することができるデバイスである。本発明による量子ドットの性質は、特にダウンコンバージョンのために有利である。
【0019】
第二の側面によると、本発明は、以下:
(a)
● In、GaおよびAlからなる群から選択される、少なくとも1つの元素、
および
● PおよびAsからなる群から選択される、少なくとも1つの元素、
で構成される二元、三元、または四元III-V材料であるコアナノクリスタルを製造する;
【0020】
(b)
● Zn、および
● SおよびSeからなる群から選択される、少なくとも1つの元素、
で構成される二元または三元II-VI材料である第一層をコアナノクリスタル上に形成する;
および
(c)
● Zn、
● Cd、および
● SおよびSeからなる群から選択される、少なくとも1つの元素、
で構成される三元または四元II-VI材料である外殻を第一層上に形成する、
経時的なステップを含む、量子ドットを製造するための方法を提供する。
【0021】
プロセスは、好ましくは、複数の量子ドットで一緒に適用される。ステップ(a)で創り出されるコアナノクリスタルは、量子ドットのコアを形成する。
ステップ(a)は、任意の既知の方法により、または本書面において開示される模範的な方法の1つにより、実行され得る。
ステップ(a)および(b)は、InPのコアおよび記載される組成物の1つをもつシェルをもつ量子ドットを製造する、既知の方法により実行され得る。
【0022】
本発明は、本発明の態様による量子ドットを製造するための方法を包含するダウンコンバータを製造するための方法を、提供する。
本発明のある態様において、ステップ(a)は、InPコアのナノクリスタルを製造すること、およびステップ(b)は、InPコアナノクリスタルの周辺に、ZnSeまたはZnSの第一層を形成することである。
【0023】
本発明のある態様において、ステップ(a)は、Znを包含する化合物とInを包含する化合物およびPを包含する化合物とを混合し、第一の混合物を生成することを含み、およびステップ(b)は、前記第一の化合物をSeまたはSを包含する化合物と混合し、第二の混合物を生成することを含む。前記化合物がSeを包含する場合、それは、ZnSeの第一層を提供するだろう。前記化合物がSを包含する場合、それは、ZnSの第一層を提供するだろう。
【0024】
第一の混合物は、InPコアナノクリスタルを含む。好ましくは、ステップ(b)で添加されるCdは、全くない。
本発明のある態様において、外殻は、表記「(Cd,Zn)Se」により指し示されるZn、CdおよびSeの合金から作られ、およびステップ(c)は、Cdを包含する化合物、Znを包含する化合物およびSeを包含する化合物を、ステップ(b)で製造される溶液に添加することを含む。
【0025】
本発明のある態様において、ステップ(c)は、以下:
● Cdを包含する化合物およびZnを包含する化合物を、添加されるCdと、添加されるZnを加えた添加されるCdとの間の原子比率が0.001と1.0の間、好ましくは0.02と0.2の間、より好ましくは、0.025と0.133の間で、ステップ(b)で製造される溶液に添加すること、および
● Seを包含する化合物を添加すること、
を、この順番において含む。
本発明のある態様において、方法は、ステップ(c)から結果として得られる溶液にチオール化合物を添加するステップ(d)をさらに含む。
言い換えると、本発明は、発光性のダウンコンバージョンのための光安定性のInPベースの量子ドットのシェルにより高められる吸収を提供することができる。
【0026】
本発明のある態様において、量子ドットは:
● In、GaおよびAlからなる群から選択される1つまたは数個のIII族元素、またはPおよびAsからなる群から選択される1つまたは数個のV族元素で構成される、二元、三元、または四元III-V材料のコア、
● ZnであるII族元素、ならびにSおよびSeからなる群から選択される1つまたは数個のVI族元素で構成される、二元または三元II-VI材料の第一層、および
● ZnおよびCdからなる群から選択される1つまたは数個のII族元素、ならびにSおよびSeからなる群から選択される1つまたは数個のVI族元素で構成される、三元または四元II-VI材料の外殻を含む。
【0027】
本発明のある態様において、量子ドットを製造することについて、以下:
(a)In、Ga、およびAlからなる群から選択される1つまたは数個のIII族元素、ならびにPおよびAsからなる群から選択される1つまたは数個のV族元素で構成される、二元、三元、または四元III-V材料のコアナノクリスタルを製造する、
【0028】
(b)ZnであるII群元素、ならびにSおよびSeからなる群から選択される1つまたは数個のVI族元素で構成される、二元または三元II-VI材料である第一層をコアナノクリスタル上に形成する、および
(c)ZnおよびCdからなる群から選択される1つまたは数個のII族元素、ならびにSおよびSeからなる群から選択されるまたは数個のVI族元素で構成される、三元または四元II-VI材料である外殻を第一層上に形成する、
ステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明のよりよい理解のために、例というやり方によって参照が、添付の図面に今作られるのである。ここで:
【
図1】-
図1は、本発明の第一の態様による量子ドットを図式化し、
【
図2】-
図2は、本発明の第二の態様による量子ドットを図式化し、
【
図3a】-
図3aは、コア/シェル構造におけるInPコアの第一の励起ピークで基準化される吸収率、ならびに本発明の態様による量子ドットについてのおよびCdなしの量子ドットについてのフォトルミネッセンスの、波長の関数としての実験プロットであり、
【0030】
【
図3b】-
図3bは、コア/シェル構造におけるInPコアの第一の励起ピークで基準化される吸収率、ならびに多様なInPコアサイズの本発明の態様による量子ドットについてのフォトルミネッセンスの、波長の関数としての実験プロットであり、
【
図4】-
図4は、エネルギーバンドならびに大部分のInP、ZnSeおよびCdSe材料のバンドの位置の図式的な提示であり、
【
図5】-
図5は、本発明の態様によるInP/Cd
0.06Zn
0.94Se量子ドットについての外部の量子効率の、吸光度の関数としての実験プロットであり、
【0031】
【
図6】-
図6は、本発明の態様によるInP/Cd
0.06Zn
0.94Se量子ドットについての、およびInP/ZnSe量子ドットについての、最大フォトルミネッセンスλ
maxの、波長の吸収の関数としての実験プロットであり、
【
図7】-
図7は、本発明の態様によるInP/Cd
0.06Zn
0.94Se量子ドットを埋め込む層の、およびInP/ZnSe量子ドットを埋め込む層についての、実験的な発光スペクトルであり、
【0032】
【
図8a】-
図8aは、青色LED光照射下における、オレイルアミンの配位子の層をもつInP/ZnSe量子ドットおよびドデカンチオールの配位子の層をもつInP/ZnSe量子ドットについての、実際の外部の量子効率と開始時間(t=0)における外部の量子効率の間の比率の、時間の関数としての実験プロットであり、
【
図8b】-
図8bは、青色LED光照射下における、オレイルアミンの配位子の層をもつInP/Cd
0.06Zn
0.94Se量子ドットおよびドデカンチオールの配位子の層をもつInP/Cd
0.06Zn
0.94Se量子ドットについての、実際の外部の量子効率と開始時間(t=0)における外部の量子効率の間の比率の、時間の関数としての実験プロットであり、
【0033】
【
図9】-
図9aは、Cdなしの量子ドットの透過型電子顕微鏡(TEM)画像であり、 -
図9bは、2.5%近くのCd/(Cd+Zn)の原子比率をもつ本発明の態様による、量子ドットの透過型電子顕微鏡(TEM)画像であり、 -
図9cは、5%近くのCd/(Cd+Zn)の原子比率をもつ本発明の態様による、量子ドットの透過型電子顕微鏡(TEM)画像であり、 -
図9dは、13.3%近くのCd/(Cd+Zn)の原子比率をもつ本発明の態様による、量子ドットの透過型電子顕微鏡(TEM)画像であり、
【0034】
【
図10】-
図10は、量子ドットのXRDパターンの実験のプロットであり、
【
図11a】-
図11aは、コア形成の間に増大される本発明による量子ドットについての吸光度スペクトルを説明し、
【
図11b】-
図11bは、シェル成長の間に増大される本発明による量子ドットについての吸光度スペクトルを説明し、
【
図12a】-
図12aは、コア形成の間に第一層においてCdを包含する量子ドットについての吸光度スペクトルを説明し、および
【
図12b】-
図12bは、シェル成長の間に第一層においてCdを包含する量子ドットについての吸光度スペクトルを説明する。
【0035】
本発明の態様の記載
本発明は、特定の態様に関して、およびある図面に関して記載されるものであるが、しかし本発明はそれらに限定されない。記載される図面は、図式的なものにすぎず、および非限定的である。図面において、いくつかの元素のサイズは、強調されてもよく、実例的な目的についての縮尺で描かれなくてもよい。
【0036】
さらにより、記載におけるおよび請求項における第一の、第二の、第三の等の用語は、類似の元素の間を判別するために使用され、および連続的なまたは経時的な順番を記載するために必ずしも使用されるものではない。用語は、適切な条件下において相互交換可能であり、および本発明の態様は、本明細書において記載される、または説明されるものと他の配列において作用することがある。
さらにより、多様な態様が「好ましい」と言及されるものの、本発明の範囲を限定するものとしてよりも、むしろそれにおいて本発明が実行されてもよい例示的なやり方として解されるべきである。
【0037】
特許請求の範囲において使用される、「含む」は、これ以降リストされる元素またはステップに制限されるものとして解釈されるべきではなく;別の元素またはステップを除外しない。言及されるように、記述される特徴、完全体、ステップまたは構成要素の存在を特定するとして解釈されることは必要とされるが、しかし1つ以上の他の特徴、完全体、ステップ、または構成要素、またはその群の存在または追加することを排除しない。したがって、表現「AおよびBを含むデバイス」の範囲は、構成要素AおよびBのみからなるデバイスに限定されるべきではなく、むしろ本発明に関して、デバイスの列挙される構成要素は、AおよびBのみであり、およびさらに請求項は、それらの構成要素の等価物を包含するとして解釈されるべきである。
【0038】
図において、同一のまたは似ている元素は、同じ番号により言及されてもよい。
本書面の枠内で、「内在的な光輝性の量子収率」(内在的なPLQY、またはIQE)は、量子ドットにより放出される光子の数と吸収される光子の数の間の比率である。
本書の枠内で「外部の光輝性の量子収率」(外部のPLQY、またはEQE)は、外部から回収され得る光子の数と量子ドットにより吸収される光子の数の間の比率である。
【0039】
本書面の枠内で、III-V化合物としてもまた称され得る、「III-V材料」は、周期表III族の元素で、および周期表V族の元素で構成される材料である。III-V材料の元素は、好ましくはIII-V材料が均一となるようなやり方で、材料の中で混合される。
【0040】
本書面の枠内で、II-VI化合物としてもまた称され得る、「II-V材料」は、周期表のII族の元素で、および周期表のVI族の元素で構成される材料である。II-VI材料の元素は、好ましくはII-VI材料が均一となるようなやり方で、材料の中で混合される。
【0041】
本書面の枠内で、二元化合物ともまた称され得る、「二元材料」は、2つの異なる元素で構成される材料である。
本書面の枠内で、三元化合物ともまた称され得る、「三元材料」は、3つの異なる元素で構成される材料である。
本書面の枠内で、四元化合物ともまた称され得る、「四元材料」は、4つの異なる元素で構成される材料である。
【0042】
図1は、本発明の第一の態様により、量子ドット1を図式化する。量子ドット1は、二元、三元、または四元III-V材料のコア2および三元または四元II-VI材料の外殻4を含む。
コア2のIII-V材料は、少なくとも1つのIII族元素で、および少なくとも1つのV族元素で構成される。より具体的に、コア2のIII-V材料は、In、Ga、Alまたはその混合物で、およびP、Asまたはその混合物で構成される。
【0043】
外殻4のII-VI材料は、少なくとも1つのII族元素で、および少なくとも1つのVI族元素で構成される。より具体的に、外殻4のII-VI材料は、Zn、Cdまたはその混合物で、およびS、Seまたはその混合物で構成される。 好ましくは、外殻4のII-VI材料は、ZnおよびCdの混合物で、およびS、Seまたはその混合物で構成される。
【0044】
好ましくは、コア2は、InPから作られ、および外殻4は、(Cd,Zn)Seと特筆され得るZnCdSeから作られる。それはCd、ZnおよびSeの合金である。量子ドット1は、コア2と外殻4の間の中間の層を含んでもよい。
量子ドット1は、ZnS、ZnSeからまたはZn、SおよびSeの合金から作られる第一層3を含むこともまた可能である。Zn、SおよびSeの合金は、Zn(S,Se)と書かれ得る。
【0045】
図2は、本発明の第二の態様による量子ドット1を図式化する。量子ドット1は、二元、三元または四元III-V材料のコア2、二元または三元II-VI材料の第一層3および三元または四元II-VI材料の外殻4を含む。
コア2のIII-V材料は、少なくとも1つのIII族元素で、および少なくとも1つのV族元素で構成される。より具体的に、コア2のIII-V材料は、In、Ga、Alまたはその混合物で、およびP、Asまたはその混合物で構成される。
【0046】
第一層3のII-VI材料は、少なくとも1つのII族元素で、および少なくとも1つのVI族元素で構成される。より具体的に、第一層3のII-VI材料は、Znで、およびS、SeまたはSおよびSeの混合物で構成される。
外殻4のII-VI材料は、少なくとも1つのII族元素および少なくとも1つのVI族元素で構成される。より具体的に、外殻4のII-VI材料は、Zn、Cdまたはその混合物で、およびS、Seまたはその混合物で構成される。好ましくは、外殻4のII-VI材料がZnおよびCdの混合物で、およびS、Seまたはその混合物で構成される。
【0047】
好ましくは、コア2は、InPから作られ、第一層3は、ZnSeまたはZnSから作られ、および外殻4は、ZnCdSeから作られる。第一層3は、好ましくは、0.8nmまで、より好ましくは、0.2と0.8nmの間に含まれる厚さを有する。
本発明の第一の態様の量子ドット1と第二の態様の量子ドット1の間における相違点は、ZnSeまたはZnSの第一層3の存在である。第一層3は、量子ドットの製造の間有益であるが、しかしそれは、外殻4およびコア2の間の電荷担体のトンネル効果により、速い移動を得るのに十分に薄いバリアを創り出すため、量子ドットの光学的性質において、有意な効果を有すると予測されない。
【0048】
本書面において、量子ドット1は、本発明の第一の態様による量子ドット、本発明の第二の態様による量子ドット、または両方の混合の量子ドットであってもよい。たとえ本書面において提示される実験的なデータが、本発明の第二の態様による量子ドット1に関するとしても、本発明者らは、第一層3が外殻4とコア2の間のトンネル効果をほとんど修正しない程度に十分に薄いため、類似のデータが本発明の第一の態様による量子ドットで得られ得ることを予測する。
【0049】
本書面において、標記「InP/CdXZn1-XSe」は、InPから作られるコア1、および量子ドット1におけるCdの原子数と量子ドット1におけるZnおよびCdの原子の総数の間の比率がXに等しい、Zn、CdおよびSeの合金から作られる外殻4をもつ量子ドットを指し示す。Xは、好ましくは全体の量子ドット1におけるEDX測定によって決定される。表記InP/CdXZn1-XSeは、本発明による第一の態様による量子ドット1および本発明の第二の態様による量子ドット1を包括する。
【0050】
コア2、第一層3および外殻4は、固体層である。
本発明による量子ドット1は、好ましくはコロイドの量子ドットとして合成される。
本発明のある態様において、量子ドットは、5と30nmの間、好ましくは10と20nmの間、より好ましくは14と15nmの間または13と14nmの間の平均直径を有する。外殻4は、好ましくは1と10nmの間に含まれる厚さ41を有する。
【0051】
図3aは、波長30の関数としての、本態様による量子ドットおよびCdなしの量子ドットについての、波長30の関数としての、吸光度10(実線)およびフォトルミネッセンス20(点線)の実験のプロットである。吸光度は、コア/シェル構造におけるInPコアの第一の励起ピークで基準化される。
【0052】
X=0をもつ吸光度曲線は、11として参照される。X=0.025をもつ吸光度曲線は、12として参照される。X=0.05をもつ吸光度曲線は、13として参照される。X=0.133をもつ吸光度曲線は、14として参照される。紫および青における吸光度は、赤における吸光度と比較されると、増大するXに伴って、すなわち、外殻4におけるCdの量に伴って、強く増大することが明らかにみられる。
【0053】
X=0をもつフォトルミネッセンス曲線は、21として参照される。X=0.025をもつフォトルミネッセンス曲線は、22として参照される。X=0.05をもつフォトルミネッセンス曲線は、23として参照される。X=0.133をもつフォトルミネッセンス曲線は、24として参照される。明らかに、紫/青の光子吸収が、緑、黄、オレンジおよび赤における放出を引き起こすとみられる。発光波長は、量子ドット1(
図3bを参照)のサイズおよび/または形状を変化することにより、実際に調整できる。
【0054】
図3bは、本発明の態様による量子ドット1についての、波長30の関数としての、吸光度10(実線)およびフォトルミネッセンス20(点線)の実験プロットである。Xは、すべての曲線について0.025に等しく、およびコア2の直径は、変化される。吸光度は、コア/シェル構造におけるInPコアの第一の励起ピークで基準化される。
【0055】
2.8nmに等しいコア直径をもつ吸光度曲線は、32として参照される。3nmに等しいコア直径をもつ吸光度曲線は、33として参照される。3.2nmに等しいコア直径をもつ吸光度曲線は、34として参照される。吸光度曲線は、ほとんどコアのサイズに依らないとみられる。
2.8nmに等しいコア直径をもつフォトルミネッセンス曲線は、42として参照される。3nmに等しいコア直径をもつフォトルミネッセンス曲線は、43として参照される。3.2nmに等しいコア直径をもつフォトルミネッセンス曲線は、44として参照される。フォトルミネッセンスは、コアのサイズの増大に伴って、より高い波長へ向かう遷移を示す。
【0056】
図3aにおいて見てわかる、外殻4において増大するCd含有量に伴う発光波長の進歩的な赤色遷移は、
図4で説明されるように、コア/シェル伝導帯オフセットの縮小という理由によるかもしれない。したがって、吸収および放出は、外殻4の厚さ41、外殻4におけるCd含有量およびコア2のサイズ次第であると予測される。したがって、例としては、有害物質指定の制限を順守するためにできる限り少ない量でカドミウムを使用する一方、正確な発光波長を達成するために、1つまたは数個のそれらのパラメーターを調節することを選ぶことは可能である。
【0057】
InPの伝導帯301は、ZnCdSeの外殻4の伝導帯302よりもより低いエネルギーにあり、およびInPの価電子帯303は、InPの価電子帯304よりもより高いエネルギーにあることから、
図4は、ZnCdSeの外殻4とInPのコア2の間にまたがるギャップ(タイプ1)があることもまた示す。
【0058】
図5は、本発明によるInP/Cd
0.06Zn
0.94Se量子ドットについての内在的なフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)50の、吸収率の関数60としての実験のプロットである。
図5は、InP/ZnSe量子ドットについて対応する曲線もまた示す。材料は、青色LEDにより励起された。点線51は、溶液の中におけるInP/Cd
0.06Zn
0.94Se量子ドット1についての45%に等しい内在的なPLQYを指し示す。点線61は、溶液の中におけるInP/ZnSe量子ドット1についての60%に等しい内在的なPLQYを指し示す。InP/Cd
0.06Zn
0.94Se量子ドットは、より低い内在的なPLQYを補償し得るInP/ZnSe量子ドットよりも、より低い自己吸収を引き起こすことが、下記に明らかであろう。
【0059】
図5によると、Cdを混ぜることは、PLQYの減少という結果になる。この減少は、Cdの添加という理由によって高められる、シェルにおける電子波関数の非局在化に関連付けられるかもしれない。おそらくこの減少は、さらなるシェルの成長により、避けられ得る。
【0060】
実線52、62は、本書面において下に説明される方法により、固体層中に埋め込まれる量子ドットに対応する。実験的に、固体層中の量子ドットの濃度は、吸収率を変化するという目的で変化される。固体層中に埋め込まれるInP/Cd0.06Zn0.94Se量子ドット1についての外部のPLQY52は、45%に非常に近く、および吸収率によって、すなわち、量子ドット1の濃度によってほとんど変化しない。固体層中に埋め込まれるInP/ZnSe量子ドットについての外部のPLQY62は、溶液の中においてよりもより低く、および吸収率によって、すなわち、量子ドットの濃度によって減少する。
【0061】
図6は、本発明によるInP/Cd
0.06Zn
0.94Se量子ドットについての、およびInP/ZnSe量子ドットについての、最大フォトルミネッセンスの波長λ
max70の、吸収率の関数60としての実験プロットである。点線71は、溶液の中におけるInP/Cd
0.06Zn
0.94Se量子ドット1についての631nmに等しい最大フォトルミネッセンスの波長を指し示す。点線81は、溶液の中におけるInP/ZnSe量子ドットについての629nmに等しい最大フォトルミネッセンスの波長を指し示す。
【0062】
実線72は、本書面において下に説明される方法によって固体層中に埋め込まれるInP/Cd0.06Zn0.94Se量子ドット1に対応する。実線82は、同じ方法により、固体層中に埋め込まれるInP/ZnSe量子ドットに対応する。InP/Cd0.06Zn0.94SeおよびInP/ZnSe量子ドットについての、溶液の中における最大フォトルミネッセンスの波長は、固体層中に埋め込まれる量子ドットについてよりもより低い。固体層中に埋め込まれるInP/Cd0.06Zn0.94SeおよびInP/ZnSe量子ドットについての、最大フォトルミネッセンスの波長は、吸収率に伴って、すなわち、量子ドット1の濃度に伴って増大する。
【0063】
図5および6は、本発明による量子ドット1が、自己吸収の縮小の結果、固体層中に埋め込まれるとき、それらの光学的特質を保つことがあることを指し示す。
図7は、0.9mgのInP/Cd
0.06Zn
0.94Se量子ドット91を埋め込んでいる層、および3.4mgのInP/ZnSe量子ドット92を埋め込んでいる層の実験的な発光スペクトルである。それは、層の励起のために使用された青色LED93の発光スペクトルもまた示す。PLQYにおける最初の差-60%対45%にもかかわらず、InP/Cd
0.06Zn
0.94Se量子ドットは、InP/ZnSe量子ドットのような類似の色変換を提供することができるとみられる。
【0064】
InP/Cd
0.06Zn
0.94Se量子ドットについての濃度に伴う内在的なPLQYの安定性(
図5で見てわかる)、および濃度による最大フォトルミネッセンスの波長におけるわずかな増大(
図6で見てわかる)は、Cdを混ぜることの結果、450nmにおいて高められる吸収に則して、InP/ZnSe量子ドットに関して縮小される自己吸収の典型的なフィンガープリント(fingerprints)である。この縮小される自己吸収は、InP/Cd
0.06Zn
0.94Se量子ドット91についての発光スペクトルとInP/ZnSe量子ドット92についての発光スペクトルの間の類似性を説明する可能性がある(
図7)。
【0065】
図7は、InP/ZnSe量子ドットの約4分の1のInP/Cd
0.06,Zn
0.94Se量子ドットが、同一のポンプおよび発光波長で同じダウンコンバージョンに達するのに必要とされることもまた示す。これは、合金シェルの結果、吸収を高めることに直接的に関連付けられる。
【0066】
本発明による量子ドット1は、好ましくは、少なくとも部分的に配位子の層によって包括される。本発明のある態様において、配位子の層は、オレイルアミン化合物から作られる。本発明のさらなる態様において、配位子の層は、チオール化合物、例としては、ドデカンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオールなどを含む。本発明の別の態様において、配位子の層は、オレイルアミン化合物およびチオール化合物を含む。
【0067】
図8aは、青色LED光照射下における、オレイルアミンの配位子の層をもつInP/ZnSe量子ドット101およびドデカンチオールの配位子の層をもつInP/ZnSe量子ドット102についての、実際のEQEとt=0におけるEQEの間の比率の、時間の関数としての実験プロットである。
図8bは、青色LED光照射下における、オレイルアミンの配位子の層をもつInP/Cd
0.06Zn
0.94Se量子ドット103およびドデカンチオールの配位子の層をもつInP/Cd
0.06Zn
0.94Se量子ドット104についての、実際のEQEとt=0におけるEQEの間の比率の、時間の関数としての実験プロットである。
【0068】
図8aおよび8bから、ドデカンチオールの配位子の層をもつ量子ドット102、104は、オレイルアミンの配位子の層をもつ量子ドット101、103より、さらにより安定なPLQYを提供するとみられる。言い換えると、本発明者らは、チオール化合物が量子ドット溶液の中に添加されるとき、量子ドットが、保存の後および長時間の紫外線曝露後、それらのEQEを数か月維持することを見出した。
そのうえ本発明者らは、本書面において下に説明される方法により、量子ドットが固体層に埋め込まれるとき、チオール化合物の結果として安定性における改善が存在することを示した。
【0069】
本発明の第一の態様による量子ドット1は、以下:
(a)量子ドット1のコア2になるものであるInPコアナノクリスタルを製造する、および
(b)InPのコアナノクリスタル上に、Zn、CdおよびSeの合金から作られるシェル4を形成する、
3つのステップを含むプロセスにより製造され得る。
【0070】
本発明の第二の態様による量子ドット1は、以下:
(a)量子ドット1のコア2になるものであるInPナノコアクリスタルを製造する、
(b)InPコアナノクリスタル上にZnSeの第一層3を形成する、および
(c)第一層3の上にZn、CdおよびSeの合金から作られるシェル4を形成する、
3つのステップを含むプロセスにより製造され得る。
【0071】
ステップ(a)は、任意の既知の方法によりまたは本書面において開示される、例示的な方法の1つにより実行され得る。
ステップ(a)および(b)は、InPのコアおよびZnSeのシェルをもつ量子ドットを製造する、任意の既知の方法により実行され得る。
【0072】
本発明のある態様において、ステップ(a)は、Znを包含する化合物を、Inを包含する化合物とPを包含す化合物とともに混合し、InPコアナノクリスタルを含む第一の混合物を生じることを含み、およびステップ(b)は、前記第一の混合物を、Seを包含する化合物とともに混合し、InPにおけるZnSeの成長に対して好適な第二の混合物を生じることを含む。好ましくは、第一の混合物は、カドミウムを全く含まない。より好ましくは、第二の混合物は、カドミウムを全く含まない。
【0073】
本発明のある態様において、ステップ(c)は、Cdを包含する化合物、Znを包含する化合物およびSeを包含する化合物を第二の混合物に添加することを含む。好ましくは、Cdを包含する化合物とZnを包含する化合物を、第二の混合物に添加される前に一緒に混合し、第三の混合物を形成し、およびSeを包含する化合物を、第三の混合物に添加する。
【0074】
この方法は、例としては、以下の手法において実行され得る。
(a)インジウムの原材料として80mg(0.225mol)の臭化インジウム(III)、および亜鉛の原材料として150mg(1.1mmol)の塩化亜鉛(II)を、2.5mL(7.6mmol)の配位子溶媒である低純度オレイルアミン(OLA)の中で混合する。反応混合物を、120℃で1時間の間、攪拌および脱気し、次いで不活性雰囲気下で180℃に急速に加熱する。180℃に到達すると、体積0.26mL(0.95mmol)のトリス(ジエチルアミノ)ホスフィン(亜リン酸:インジウム=4.2:1)を、急速に上記の混合物に注入する。亜リン酸前駆物質の注入後、InPコアナノクリスタルの合成を続行する。
【0075】
(b)20分において、0.45mLの2.24Mの化学量論のトリオクチルホスフィン-Se(TOP-Se)を注入する。
(c)140分において、8mLのオクタデセン(ODE)と2mLのOLAとともに混合される0.08g(0.3mmol)の(酢酸)2Cd二水和物および1.71g(2.71mmol)の(ステアリン酸)2Znの混合物(Cd対Cd+Znの分率=7.3%)を注入する。次いで、温度を180℃から320℃まで上げ、および1.4mLのTOP-Seを温度上昇の間、1滴ずつ注入する。
240分において、反応を止めおよび温度を冷却する。
【0076】
InPコアナノクリスタル上の第一層3の存在は、シェル4の形成のために有利である。ZnSeの第一層3なしの場合、ZnCdSeシェル4が、InPコアナノクリスタル上に成長しなければならなかっただろう。本発明者らは、ZnCdSeの成長のための溶液が、InPコアナノクリスタルと接触するとき、CdSeの形成が、ZnCdSeの形成よりもより好ましいということを見出した。彼らは、この課題をZnCdSe外殻4の成長の前にZnSeの第一層3をInPコアナノクリスタル上に成長させることにより乗り越えた。しかしながら、発光性のダウンコンバージョンのために良好な光学的性質を提供する、InPコアおよび外部のZnCdSeをもつ量子ドット1をもたらす、この課題への他の解決方法があるかもしれない。
【0077】
本書面において記載されるすべての製造方法において、文献WO2016146719 A1において記載されるように、量子ドットのサイズは、ステップ(a)におけるハロゲン化インジウム(Cl、Br、I)を変えることにより変化され得る。
本書面において記載されるすべての製造方法において、脱気することは、任意である。
【0078】
本書面において記載されるすべての製造方法において、臭化インジウム(III)は、塩化インジウム(III)またはヨウ化インジウム(III)により置き換えられ得る。
本書面において記載されるすべての製造方法において、塩化亜鉛(II)は、臭化亜鉛(II)またはヨウ化亜鉛(II)により置き換えられ得る。
【0079】
本書面において記載されるすべての製造方法において、異なるリン化前駆物質:(アミン)3Pタイプ:トリス(ジメチルアミノ)3ホスフィン、トリス(ジプロピルアミノ)3ホスフィン、トリス(ジエチルアミノ)3ホスフィン、トリス(ジブチルアミノ)3ホスフィン、トリス(ジオクチルアミノ)3ホスフィン、トリス(ブチルアミノ)3ホスフィン、トリス(オクチルアミノ)3ホスフィン、トリス(ドデシルアミノ)3ホスフィン、トリス(オレイルアミノ)3ホスフィンが使用され得る。
【0080】
本書面において記載されるすべての製造方法において、酢酸カドミウムを、ステアリン酸カドミウム、オレイン酸カドミウム・・・により、置き換えられ得る。
本書面において記載されるすべての製造方法において、ステアリン酸亜鉛を、酢酸亜鉛、オレイン酸亜鉛・・・により交換し得る。
本書面において記載されるすべての製造方法において、オクタデセンを、エイコサン、ドコサン・・・により、交換し得る。
【0081】
製造方法のための材料は、例としては以下:塩化インジウム(III)(99.999%)、臭化インジウム(III)(99.999%)、(99.998%)、塩化亜鉛(II)(≧98%)、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン(97%)、セレニウム粉末100メッシュ(99.99%)、ステアリン酸亜鉛(低純度のグレード(technical grade)、65%)および酢酸カドミウム二水和物(試薬グレード(reagent grade)、98%)、トリオクチルホスフィン(>97%)、オレイルアミン(80~90%)およびオクタデセン(低純度(technical)90%)であり得る。
【0082】
例示的なステップ(a)、すなわち量子ドットのコア2になるであろうInPコアナノクリスタルの合成は、以下である。インジウムの原材料として50mg(0.225mol)の塩化インジウム(III)および亜鉛の原材料として150mg(1.1mmol)の塩化亜鉛(II)を、2.5mL(7.5mmol)の低純度オレイルアミン(OLA)の中で混合する。反応混合物を、120℃で1時間の間、攪拌および脱気し、ならびに次いで不活性雰囲気下で180℃に加熱する。
【0083】
180℃に到達すると、体積0.23mL(0.8mmol)のトリス(ジエチルアミノ)ホスフィンを、上記の混合物の中で急速に注入し、およびInPコアナノクリスタルの合成を続行する。反応は30分の間、起こる。反応の終わりにおいて、温度を冷却する。InPコアナノクリスタルを次いでエタノールの中に沈殿させ、およびトルエンの中で懸濁する。この合成は、3.2nmの直径(560nmで第一の励起子吸収ピーク)をもつInPコアナノクリスタルを提供する。
【0084】
この合成は、塩化インジウム(III)を臭化インジウム(III)に置き換えることにより、3.0nmの直径(540nmで第一の励起子吸収ピーク)をもつInPコアナノクリスタルを提供するように、変更され得る。
【0085】
ステップ(a)および(b)についての第一の例示的な方法、すなわちコア2および第一層3から作られる構造の合成は、以下である。3.2nmのInPコアナノクリスタルの製造を、180℃において実行する。温度を冷却することの代わりに、20分において、0.45mLの過飽和(sursaturated)TOP-Se(2.24M)を注入する。140分において、2g(3mmol)の(ステアリン酸)2Zn、8mLのオクタデセン(ODE)、2mLのOLAの混合物を注入する。
【0086】
次いで、温度を180℃から320℃まで上げ、および1.4mLのTOP-Seを温度上昇の間、1滴ずつ注入する。240分において反応を止め、および温度を冷却する。InP/ZnSe構造を一度エタノールの中に沈殿させ、およびトルエンの中で懸濁する。コア2および第一層3から作られるこの構造は、629nmで放出することを見出した。
【0087】
ステップ(a)および(b)についての第二の例示的な方法、すなわちコア2および第一層3から作られる構造の合成は、以下である。3.2nmのInPコアナノクリスタルの製造を、180℃において実行する。温度を冷却することの代わりに、20分において、0.5mLの過飽和(sursaturated)TOP-S(2.24M)を注入する。次いで、温度を180℃から320℃まで上げる。50分において反応を止め、および温度を冷却する。InP/ZnSe構造を一度エタノールの中に沈殿させ、およびトルエンの中で懸濁する。コア2および第一層3から作られるこの構造は、610nmで放出することを見出した。
【0088】
ステップ(a)、(b)および(c)についての第一の例示的な方法は以下である。3.0nmのInPコアナノクリスタルの製造を、180℃において実行する。温度を冷却することの代わりに、20分において、0.45mLの化学量論のTOP-S(2.24M)を注入する。140分において、8mLのODEと2mLのOLAとともに混合した、0.08g(0.3mmol)の(酢酸)2Cd二水和物および1.71g(2.71mmol)の(ステアリン酸)2Znの混合物(Cd対Cd+Znの分率=0.073)を注入する。
【0089】
次いで、温度を180℃から320℃まで上げ、および1.4mLのTOP-Seを温度上昇の間、1滴ずつ注入する。240分において反応を止め、および温度を冷却する。次いで、InP/Cd0.06Zn0.94Se量子ドット1を、一度エタノールの中に沈殿させ、およびトルエンの中で懸濁する。それらの量子ドット1は、631nmで放出し、および6%近くのCd/(Cd+Zn)の原子比率を有する。
【0090】
ステップ(a)、(b)および(c)についての第二の例示的な方法は以下である。3.2nmのInPコアナノクリスタルの製造を、180℃において実行する。温度を冷却することの代わりに、20分において、0.45mLの化学量論のTOP-Se(2.24M)を注入する。140分において、8mLのODEと2mLのOLAとともに混合した、0.035g(0.13mmol)の(酢酸)2Cd二水和物および1.794g(2.84mmol)の(ステアリン酸)2Znの混合物(Cd対Cd+Znの分率=0.032)を注入する。
【0091】
次いで、温度を180℃から320℃まで上げ、および1.4mLのTOP-Seを温度上昇の間、1滴ずつ注入する。240分において、反応を止め、温度を冷却する。次いで、InP/Cd0.025Zn0.975Se量子ドット1を、一度エタノールの中に沈殿させ、およびトルエンの中で懸濁する。それらの量子ドット1は、634nmで放出し、および2.5%近くのCd/(Cd+Zn)の原子比率を有する。
【0092】
ステップ(a)、(b)および(c)についての第三の例示的な方法は以下である。3.2nmのInPコアナノクリスタルの製造を、180℃において実行する。温度を冷却することの代わりに、20分において、0.45mLの化学量論のTOP-Se(2.24M)を注入する。140分において、8mLのODEと2mLのOLAとともに混合した、0.069g(0.26mmol)の(酢酸)2Cd二水和物および1.706g(2.70mmol)の(ステアリン酸)2Znの混合物(Cd対Cd+Znの分率=0.064)を注入する。
【0093】
次いで、温度を180℃から320℃まで上げ、および1.4mLのTOP-Seを温度上昇の間、1滴ずつ注入する。240分において、反応を止め、および温度を冷却する。次いで、InP/Cd0.05Zn0.95Se量子ドット1を一度エタノールの中に沈殿させ、およびトルエンの中で懸濁する。それらの量子ドット1は、644nmで放出し、および5%近くのCd/(Cd+Zn)の原子比率を有する。
【0094】
ステップ(a)、(b)および(c)についての第四の例示的な方法は、以下である。3.2nmのInPコアナノクリスタルの製造を、180℃において実行する。温度を冷却することの代わりに、20分において、0.45mLの化学量論のTOP-Se(2.24M)を注入する。140分において、8mLのODEと2mLのOLAとともに混合した、0.15g(0.56mmol)の(酢酸)2Cd二水和物および1.52g(2.4mmol)の(ステアリン酸)2Znの混合物(Cd対Cd+Znの分率=0.138)を注入する。
【0095】
次いで、温度を180℃から320℃まで上げ、および1.4mLのTOP-Seを温度上昇の間、1滴ずつ注入する。240分において、反応を止め、および温度を冷却する。次いで、InP/Cd0.133Zn0.867Se量子ドット1を一度エタノールの中に沈殿させ、およびトルエンの中で懸濁する。それらの量子ドット1は、644nmで放出し、および13.3%近くのCd/(Cd+Zn)の原子比率を有する。
【0096】
上記の方法により製造した量子ドット1を、EDXにより特徴づけた。この特徴づけの結果は、下の表において明らかになる。
【表1】
【0097】
InP/ZnSe構造および上記の方法により製造した量子ドット1の直径を、特徴づけた。この特徴づけの結果は、下の表において明らかになる。
【表2】
【0098】
図9aは、Cdなしの量子ドットの透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
図9bは、2.5%近くのCd/(Cd+Zn)の原子比率をもつ量子ドット1のTEM画像である。
図9cは、5%近くのCd/(Cd+Zn)の原子比率をもつ量子ドット1のTEM画像である。
図9dは、13.3%近くのCd/(Cd+Zn)の原子比率をもつ量子ドット1のTEM画像である。
【0099】
図10は、量子ドットのXRD(X線回析)パターンの実験プロットである。曲線111は、13.3%近くのCd/(Cd+Zn)の原子比率をもつ量子ドット1に対応する。曲線112は、5%近くのCd/(Cd+Zn)の原子比率をもつ量子ドット1に対応する。曲線113は、2.5%近くのCd/(Cd+Zn)の原子比率をもつ量子ドット1に対応する。曲線114は、Cdなしの量子ドットに対応する。線115の基準ピークは、CdSeウルツ鉱に対応する。線116の基準ピークは、ZnSeウルツ鉱に対応する。線117の基準ピークは、ZnSe立方体(正X面体)に対応する。
【0100】
ステップ(c)の後、チオール化合物を添加するステップ(d)を、実行し得る。チオール化合物は、例としては、ドデカンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオールなどであり得る。例示的な方法によると、2mLのドデカンチオール(DDT)を160℃においてステップ(c)で生じる溶液に添加する。これは、反応混合物をクエンチする。結果として得られる量子ドットをエタノールの中に3回沈殿させ、およびトルエンの中で懸濁する。後で、超過量のDDTを添加する。
【0101】
量子ドット1を固体層中に埋め込む例示的な方法は、以下である。本例において、固体層はポリマーフィルムである。量子ドット1を含有する固体層を、量子ドットを0.5mLのトルエン中の80mgクレイトンFG1901Xを含有する溶液と共に混合し、攪拌し、および直径18mmの円形のガラス基質上に流し、蒸発し薄い固体を形成することにより調製した。溶媒の蒸発の後、透明量子ドットの遠隔のリン酸層を得る。かかる固体層は、例としては、本発明の態様による発光性のダウンコンバータにおいて使用し得る。
【0102】
以下の方法を、前記層を特徴づけるために使用した。層効率測定を統合する球(152mm、スぺクトラロンコーティング済み)の内側で実行した。試料の励起を青色LED(446.5nmのλmax、19.2nmのFWHMおよび37Im/WのLER)によって、および外に出る光の検出をスぺクトログラフ(Princeton Instruments Acton SP2358)に取り付けられるCCDカメラ(Princeton Instruments ProEM 16002)によって行った。
【0103】
試料と統合する球の検出ポートの間に、隔壁を据え付ける。内部および外部の量子効率を、2つの測定の取り組みによって決定した。量子ドットの層を、励起のために下中央部において青色LEDを含有し、高さ20mmをもつ円柱状の白テフロン混合チャンバーの中に円形の層を導入することにより分析した。測定を20mAの定電流で実施し、29.3%の輻射効率に対応するRE7.26lm/Wの光を発する効能を産出した。
【0104】
図11は、以下のやり方において増大される、量子ドットについての吸光度スペクトルを説明する。インジウムの原材料として50mg(0.225mmol)のInCl
3、および亜鉛の原材料として150mg(1.1mmol)のZnCl
2を、2.5mL(7.5mmol)の低純度オレイルアミン(OLA)中に混合する。反応混合物を、120℃で1時間の間、攪拌および脱気し、ならびに次いで不活性雰囲気下で180℃に加熱する。180℃に到達すると、0.23mL(0.8mmol)の体積のトリス(ジエチルアミノ)ホスフィンを急速に上記の混合物に注入し、およびInPナノクリスタルの合成を続行する。
【0105】
20分後、0.45mLの化学量論のTOP-Se(2.24M)を注入する。140分において、8mLのODEと2mLのOLAとともに混合した0.035g(0.13mmol)の(酢酸)2Cd二水和物および1.794g(2.84mmol)の(ステアリン酸)2Znの混合物(Cd対Cd+Znの分率=0.032)を注入する。次いで、温度を180℃から320℃まで上げ、1.4mLのTOP-Seを温度上昇の間、1滴ずつ注入する。240分において、反応を止め、および温度を冷却する。InP/Cd0.025Zn0.975Se量子ドットを、次いで一度エタノールの中に沈殿させ、およびトルエンの中で懸濁する。
この実施要綱は、コア形成の後のおよびシェル成長段階の前の中間のZnSeシェルの成長を導く。
【0106】
図11aは、コア形成に対応する。バンドエッジの特徴の吸光度最大A
1S-1Sに比較して、スペクトルを基準化した。曲線501は5分に対応し、曲線502は10分に対応し、および曲線503は20分に対応する。
図11bは、シェルの成長に対応する。挿入のグラフは、バンドエッジ変遷における拡大である。曲線601は20分(ZnSe第一層の前)に対応し、曲線602は73分(ZnSe第一層の後)に対応し、および曲線603は330分(シェルの成長の後)に対応する。吸収スペクトルは、合成の間の輪郭のはっきりした第一の励起の変遷を示す。
【0107】
図12は、第一層にCdを包含する量子ドットについての吸光度スペクトルを説明する。実施要綱は、150mg(1.1mmol)のZnCl
2を、22mg(0.11mmol)のCdCl
2および135mg(0.99mmol)のZnCl
2により置き換えることを除いては、
図11についてのとおりと同じである。この実施要綱は、コア形成の後のおよびシェル成長段階の前の中間のCdZnSeシェルの形成を導く。
【0108】
図12aは、コア形成に対応する。
図12bはシェルの成長に対応する。バンドエッジの特徴の吸光度最大A
1S-1Sに関してスペクトルを基準化した。曲線511は5分に対応し、曲線512は10分に対応し、および曲線513は20分に対応する。曲線611は20分(CdZnSe第一層の前)に対応し、曲線612は120分(CdZnSe第一層の後)に対応し、および曲線613は316分(シェルの成長の後)に対応する。
【0109】
図11および12を比較すると、最初のInPコア合成の間にCdCl
2を混合することは、望まれない赤色遷移および第一の励起の変遷を広げることを誘発する。第一の励起の変遷の広がりは、シェルの成長の段階の間に増大し、および明白な励起の特徴は、合成の終わりにおいて存在しない。
【0110】
たとえ上記の記載がInPから作られるコア2に関して作成されたとしても、本発明による量子ドット1は、以下:In、Ga、Alまたはそれらの混合物から選択される、少なくとも1つのIII族元素を含み、および以下:P、Asまたはそれらの混合物から選択される、少なくとも1つのV族元素を含む任意の二元、三元または四元III-Vコアから構成され得る。
【0111】
たとえ上記の記載が、ZnSeから作られる第一層3に関して主に作成されたとしても、本発明による量子ドット1は、Znである1つのII族、および以下:S、Seまたはそれらの混合物から選択される少なくとも1つのVI族元素を含む、任意の二元または三元II-VI材料の第一層3を有し得る。
【0112】
たとえ上記の記載が、ZnCdSeから作られる外殻4に関して主に作成されたとしても、本発明による量子ドット1は、以下:Zn、Cdまたはそれらの混合物から選択される少なくとも1つのII族元素、および以下:S、Seまたはそれらの混合物から選択される少なくとも1つのVI族元素を含む、任意の三元または四元II-VI材料の外殻4を有し得る。
【0113】
例としては、量子ドットは、以下:
● InPのコア2、ZnSの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● InPのコア2、ZnSeの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● InPのコア2、GaPの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● InPのコア2、AlPの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● InPのコア2、Zn(S,Se)の第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● InPのコア2、(Al,Ga)Pの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● (In,Ga)Pのコア2、ZnSeの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● (In,Ga)Pのコア2、ZnSの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
【0114】
● (In,Ga)Pのコア2、GaPの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● (In,Ga)Pのコア2、AlPの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● (In,Ga)Pのコア2、Zn(S,Se)の第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● (In,Ga)Pのコア2、(Al,Ga)Pの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● (In,Al)Pのコア2、ZnSeの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● (In,Al)Pのコア2、ZnSの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● (In,Al)Pのコア2、GaPの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● (In,Al)Pのコア2、AlPの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
【0115】
● (In,Al)Pのコア2、Zn(S,Se)の第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● (In,Al)Pのコア2、(Al,Ga)Pの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● In(As,P)のコア2、ZnSeの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● In(As,P)のコア2、ZnSの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● In(As,P)のコア2、GaPの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● In(As,P)のコア2、AlPの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● In(As,P)のコア2、Zn(S,Se)の第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● In(As,P)のコア2、(Al,Ga)Pの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
【0116】
● GaAsのコア2、ZnSeの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● GaAsのコア2、ZnSの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● GaAsのコア2、GaPの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● GaAsのコア2、AlPの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● GaAsのコア2、Zn(Se,S)の第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● GaAsのコア2、(Al,Ga)Pの第一層3、およびZnCdSの外殻4、
● InPのコア2、ZnSの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● InPのコア2、ZnSeの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
【0117】
● InPのコア2、GaPの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● InPのコア2、AlPの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● InPのコア2、Zn(S,Se)の第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● InPのコア2、(Al,Ga)Pの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● (In,Ga)Pのコア2、ZnSeの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● (In,Ga)Pのコア2、ZnSの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● (In,Ga)Pのコア2、GaPの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● (In,Ga)Pのコア2、AlPの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
【0118】
● (In,Ga)Pのコア2、Zn(S,Se)の第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● (In,Ga)Pのコア2、(Al,Ga)Pの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● (In,Al)Pのコア2、ZnSeの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● (In,Al)Pのコア2、ZnSの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● (In,Al)Pのコア2、GaPの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● (In,Al)Pのコア2、AlPの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● (In,Al)Pのコア2、Zn(S,Se)の第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● (In,Al)Pのコア2、(Al,Ga)Pの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
【0119】
● In(As,P)のコア2、ZnSeの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● In(As,P)のコア2、ZnSの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● In(As,P)のコア2、GaPの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● In(As,P)のコア2、AlPの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● In(As,P)のコア2、Zn(S,Se)の第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● In(As,P)のコア2、(Al,Ga)Pの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● GaAsのコア2、ZnSeの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● GaAsのコア2、ZnSの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
【0120】
● GaAsのコア2、GaPの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● GaAsのコア2、AlPの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● GaAsのコア2、Zn(Se,S)の第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● GaAsのコア2、(Al,Ga)Pの第一層3、およびZnCdSeの外殻4、
● InPのコア2、ZnSの第一層3、およびZnCdSeSSの外殻4、
● InPのコア2、ZnSeの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● InPのコア2、GaPの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● InPのコア2、AlPの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
【0121】
● InPのコア2、Zn(S,Se)の第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● InPのコア2、(Al,Ga)Pの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● (In,Ga)Pのコア2、ZnSeの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● (In,Ga)Pのコア2、ZnSの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● (In,Ga)Pのコア2、GaPの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● (In,Ga)Pのコア2、AlPの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● (In,Ga)Pのコア2、Zn(S,Se)の第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● (In,Ga)Pのコア2、(Al,Ga)Pの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
【0122】
● (In,Al)Pのコア2、ZnSeの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● (In,Al)Pのコア2、ZnSの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● (In,Al)Pのコア2、GaPの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● (In,Al)Pのコア2、AlPの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● (In,Al)Pのコア2、Zn(S,Se)の第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● (In,Al)Pのコア2、(Al,Ga)Pの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● In(As,P)のコア2、ZnSeの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● In(As,P)のコア2、ZnSの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● In(As,P)のコア2、GaPの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
【0123】
● In(As,P)のコア2、AlPの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● In(As,P)のコア2、Zn(S,Se)の第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● In(As,P)のコア2、(Al,Ga)Pの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● GaAsのコア2、ZnSeの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● GaAsのコア2、ZnSの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● GaAsのコア2、GaPの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● GaAsのコア2、AlPの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
● GaAsのコア2、Zn(Se,S)の第一層3、およびZnCdSeSの外殻4、
【0124】
またはGaAsのコア2、(Al,Ga)Pの第一層3、およびZnCdSeSの外殻4
を有し得る。
本発明は、特定の態様に関して上記に記載したものの、また他の態様も可能であることが、容易に理解されるだろう。