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特許7105238抗PD-L1抗体に対するイディオタイプ抗体及びそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】抗PD-L1抗体に対するイディオタイプ抗体及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220714BHJP
   C07K 16/42 20060101ALI20220714BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220714BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20220714BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220714BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220714BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220714BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20220714BHJP
   G01N 33/561 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/42 ZNA
C12N5/10
C12N5/071
C12N1/21
C12P21/08
G01N33/53 N
G01N33/543 501H
G01N33/543 501A
G01N33/561
G01N33/53 U
【請求項の数】 44
(21)【出願番号】P 2019538318
(86)(22)【出願日】2018-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 US2018014099
(87)【国際公開番号】W WO2018136553
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】62/447,886
(32)【優先日】2017-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/452,934
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ホンゴ, ジョ-アン
(72)【発明者】
【氏名】イー, アンジー
(72)【発明者】
【氏名】タン, クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】ライ, ジョイス
(72)【発明者】
【氏名】アダムケービッチ, ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】バイオン, ジョン
【審査官】進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-523401(JP,A)
【文献】国際公開第2016/205551(WO,A2)
【文献】特表2015-518471(JP,A)
【文献】OncoImmunology, 2016, Vol.5, No.12, e1254856
【文献】Clin. Chem. Lab. Med., 2016, Vol.54, No.6, pp.1105-1109
【文献】Leukemia, 2015, Vol.29, p.2110-2113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
C07K 16/42
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗PD-L1抗体に特異的に結合する単離された抗イディオタイプ抗体であって、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含む重鎖可変領域と、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含み、
(a)HVR-H1が、アミノ酸配列SYDMS(配列番号35)を含み、
(b)HVR-H2が、アミノ酸配列YISSGGGSTYYPDTVKG(配列番号36)を含み、
(c)HVR-H3が、アミノ酸配列LVYYDYDDAMDY(配列番号34)を含み、
(d)HVR-L1が、アミノ酸配列SASSSVSYMH(配列番号14)を含み、
(e)HVR-L2が、アミノ酸配列STSNLAS(配列番号15)を含み、且つ
(f)HVR-L3が、アミノ酸配列QQRSSYPPTF(配列番号16)を含む、単離された抗イディオタイプ抗体。
【請求項2】
前記単離された抗イディオタイプ抗体が、配列番号54の配列を含む重鎖可変領域及び/または配列番号53の配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項に記載の単離された抗イディオタイプ抗体。
【請求項3】
抗PD-L1抗体に特異的に結合する単離された抗イディオタイプ抗体であって、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含む重鎖可変領域と、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含み、
(a)HVR-H1が、アミノ酸配列DYIML(配列番号43)を含み、
(b)HVR-H2が、アミノ酸配列NINPYYGSTSYNLKFKG(配列番号44)を含み、
(c)HVR-H3が、アミノ酸配列WGGNYEGWFAY(配列番号42)を含み、
(d)HVR-L1が、アミノ酸配列HASQGISSNIG(配列番号20)を含み、
(e)HVR-L2が、アミノ酸配列HGTNLED(配列番号21)を含み、且つ
(f)HVR-L3が、アミノ酸配列VQYAQFPLTF(配列番号22)を含む、単離された抗イディオタイプ抗体。
【請求項4】
前記単離された抗イディオタイプ抗体が、配列番号56の配列を含む重鎖可変領域及び/または配列番号55の配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項に記載の単離された抗イディオタイプ抗体。
【請求項5】
抗PD-L1抗体に特異的に結合する単離された抗イディオタイプ抗体であって、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含む重鎖可変領域と、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含み、
(a)HVR-H1が、アミノ酸配列SYDMS(配列番号51)を含み、
(b)HVR-H2が、アミノ酸配列YISSGGGSTYYPDTVKG(配列番号52)を含み、
(c)HVR-H3が、アミノ酸配列TIYYGYDDVMDY(配列番号50)を含み、
(d)HVR-L1が、アミノ酸配列SASSSVSYMH(配列番号26)を含み、
(e)HVR-L2が、アミノ酸配列STSNLAS(配列番号27)を含み、且つ
(f)HVR-L3が、アミノ酸配列QQRSGYPPTF(配列番号28)を含む、単離された抗イディオタイプ抗体。
【請求項6】
前記単離された抗イディオタイプ抗体が、配列番号58の配列を含む重鎖可変領域及び/または配列番号57の配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項に記載の単離された抗イディオタイプ抗体。
【請求項7】
前記単離された抗イディオタイプ抗体が、前記抗PD-L1抗体の少なくとも1つのHVRに特異的に結合する、請求項1~のいずれか1項に記載の単離された抗イディオタイプ抗体。
【請求項8】
前記単離された抗イディオタイプ抗体が、異種部分または検出可能な部分にコンジュゲートされる、請求項1~のいずれか1項に記載の単離された抗イディオタイプ抗体。
【請求項9】
前記検出可能な部分が、標識またはビオチンである、請求項に記載の単離された抗イディオタイプ抗体。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の抗イディオタイプ抗体を含む、組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の組成物を含む、キット。
【請求項12】
抗PD-L1抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体をコードする単離された核酸であって、前記抗イディオタイプ抗体が、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含む重鎖可変領域と、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含み、
(a)HVR-H1が、アミノ酸配列SYDMS(配列番号35)を含み、
(b)HVR-H2が、アミノ酸配列YISSGGGSTYYPDTVKG(配列番号36)を含み、
(c)HVR-H3が、アミノ酸配列LVYYDYDDAMDY(配列番号34)を含み、
(d)HVR-L1が、アミノ酸配列SASSSVSYMH(配列番号14)を含み、
(e)HVR-L2が、アミノ酸配列STSNLAS(配列番号15)を含み、且つ
(f)HVR-L3が、アミノ酸配列QQRSSYPPTF(配列番号16)を含む、単離された核酸。
【請求項13】
抗PD-L1抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体をコードする単離された核酸であって、前記抗イディオタイプ抗体が、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含む重鎖可変領域と、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含み、
(a)HVR-H1が、アミノ酸配列DYIML(配列番号43)を含み、
(b)HVR-H2が、アミノ酸配列NINPYYGSTSYNLKFKG(配列番号44)を含み、
(c)HVR-H3が、アミノ酸配列WGGNYEGWFAY(配列番号42)を含み、
(d)HVR-L1が、アミノ酸配列HASQGISSNIG(配列番号20)を含み、
(e)HVR-L2が、アミノ酸配列HGTNLED(配列番号21)を含み、且つ
(f)HVR-L3が、アミノ酸配列VQYAQFPLTF(配列番号22)を含む、単離された核酸。
【請求項14】
抗PD-L1抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体をコードする単離された核酸であって、前記抗イディオタイプ抗体が、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含む重鎖可変領域と、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含み、
(a)HVR-H1が、アミノ酸配列SYDMS(配列番号51)を含み、
(b)HVR-H2が、アミノ酸配列YISSGGGSTYYPDTVKG(配列番号52)を含み、
(c)HVR-H3が、アミノ酸配列TIYYGYDDVMDY(配列番号50)を含み、
(d)HVR-L1が、アミノ酸配列SASSSVSYMH(配列番号26)を含み、
(e)HVR-L2が、アミノ酸配列STSNLAS(配列番号27)を含み、且つ
(f)HVR-L3が、アミノ酸配列QQRSGYPPTF(配列番号28)を含む、単離された核酸。
【請求項15】
請求項1~のいずれか1項に記載の抗イディオタイプ抗体をコードする、単離された核酸。
【請求項16】
請求項1215のいずれか1項に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項17】
請求項16に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項18】
真核生物細胞である、請求項17に記載の宿主細胞。
【請求項19】
哺乳動物細胞である、請求項18に記載の宿主細胞。
【請求項20】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項19に記載の宿主細胞。
【請求項21】
原核生物である、請求項17に記載の宿主細胞。
【請求項22】
E.coliである、請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項23】
抗イディオタイプ抗体を作製するためのプロセスであって、前記抗イディオタイプ抗体をコードする前記ベクターの発現に適している条件下で、請求項1722のいずれか1項に記載の宿主細胞を培養することと、前記抗イディオタイプ抗体を回収することと、を含む、プロセス。
【請求項24】
対象から単離された生体試料中の抗PD-L1抗体を検出するための方法であって、
(a)前記生体試料を、請求項10に記載の組成物である捕捉剤と接触させ、それによって、免疫複合体を形成することと、
(b)(a)からの前記免疫複合体を、前記抗PD-L1抗体に結合する検出可能な抗体と接触させることと、
(c)前記検出可能な抗体を検出することによって前記組成物に結合した前記抗PD-L1抗体のレベルを測定することと、を含む、方法。
【請求項25】
対象から単離された生体試料中の抗PD-L1抗体を検出するための方法であって、
(a)前記生体試料を、前記試料中に存在する前記抗PD-L1抗体に結合する請求項1~のいずれか1項に記載の抗イディオタイプ抗体である捕捉剤と接触させ、それによって、免疫複合体を形成することと、
(b)(a)からの前記免疫複合体を、前記抗PD-L1抗体に結合する検出可能な抗体と接触させることと、
(c)前記検出可能な抗体を検出することによって、前記抗イディオタイプ抗体に結合した前記抗PD-L1抗体のレベルを測定することと、を含む、方法。
【請求項26】
前記抗イディオタイプ抗体が、固体支持体に固定化され、前記方法が、前記生体試料を、前記抗PD-L1抗体に結合した前記固定化した抗イディオタイプ抗体から分離させるステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記固定化した抗イディオタイプ抗体が、ビオチンにコンジュゲートされ、ストレプトアビジンでコーティングされたマイクロタイタープレートに結合している、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記検出可能な抗体が、ヒトまたはヒト化抗体に結合する非ヒト種からの抗体である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記検出可能な抗体が、直接検出可能であるか、または西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされるか、または蛍光測定もしくは比色測定試薬によって検出される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記生体試料が、ヒト対象から単離され、請求項2429のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記ヒト対象が、
(a)
(i)アミノ酸配列RASQDVSTAVA(配列番号1)を含むHVR-L1、
(ii)アミノ酸配列SASFLYS(配列番号2)を含むHVR-L2、及び
(iii)アミノ酸配列QQYLYHPAT(配列番号3)を含むHVR-L3を含む、軽鎖可変領域と、
(b)
(i)アミノ酸配列GFTFSDSWIH(配列番号4)を含むHVR-H1、
(ii)アミノ酸配列AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号5)を含むHVR-H2、及び
(iii)アミノ酸配列RHWPGGFDY(配列番号6)を含むHVR-H3を含む、重鎖可変領域と、を含む、抗PD-L1抗体で治療されたことがある、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記方法が、前記抗PD-L1抗体の既知のレベルと比較して、前記抗PD-L1抗体のレベルを判定するために標準曲線を使用することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記生体試料が、血液、血漿、または血清である、請求項2432のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
生体試料中の抗PD-L1抗体を特異的に検出するための免疫学的測定キットであって、
(a)請求項1~のいずれか1項に記載の抗イディオタイプ抗体または請求項10に記載の組成物と、
(b)前記抗PD-L1抗体に結合する検出可能な抗体と、
(c)前記抗PD-L1抗体を検出するための取扱説明書と、を含む、免疫学的測定キット。
【請求項35】
前記キットが、前記抗PD-L1抗体を検出するための免疫学的測定において有用である、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
対象から単離された生体試料中の抗PD-L1抗体を検出するための方法であって、
(a)前記生体試料を、抗イディオタイプ抗体前記抗PD-L1抗体に結合し、複合体を形成することを可能にする条件下で、請求項1~のいずれか1項に記載の抗イディオタイプ抗体または請求項10に記載の組成物と接触させることと、
(b)前記抗イディオタイプ抗体と接触させた試料を、前記抗イディオタイプ抗体と接触させたことがない試料と比較するために、免疫固定電気泳動によって前記試料を分析することと、
(c)前記生体試料中の前記抗PD-L1抗体の存在を検出することであって、前記抗イディオタイプ抗体と接触させた試料と、前記抗イディオタイプ抗体と接触させたことがない試料との間の泳動の違いが、前記生体試料中の前記抗PD-L1抗体の存在を示す、前記検出することと、を含む、方法。
【請求項37】
対象から単離された生体試料中のM-タンパク質を検出するための方法であって、
(a)前記生体試料を、抗イディオタイプ抗体抗PDL1抗体に結合し、複合体を形成することを可能にする条件下で、請求項1~のいずれか1項に記載の抗イディオタイプ抗体または請求項10に記載の組成物と接触させることと、
(b)前記抗イディオタイプ抗体と接触させた試料を、前記抗イディオタイプ抗体と接触させたことがない試料と比較するために、免疫固定電気泳動によって前記試料を分析することと、
(c)前記生体試料中の前記M-タンパク質の存在を検出することと、を含む、方法。
【請求項38】
ステップ(b)が、前記M-タンパク質からの前記抗PD-L1抗体及び前記抗イディオタイプ抗体の複合体の分離をもたらす、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ステップ(c)の前に、バンドの泳動が、前記抗イディオタイプ抗体の添加によって影響を受けるかどうかを判定することによって、バンドがM-タンパク質であるかどうかを判定するステップをさらに含む、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記生体試料が、血液、尿、または血清である、請求項3639のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
対象における抗PD-L1抗体治療の有効性をモニタリングするための方法であって、
(a)生体試料を、抗イディオタイプ抗体前記抗PD-L1抗体に結合し、複合体を形成することを可能にする条件下で、請求項1~のいずれか1項に記載の抗イディオタイプ抗体または請求項10に記載の組成物と接触させることであって、前記生体試料が前記対象から単離された生体試料であり、前記対象が、多発性骨髄腫に罹患しており、前記抗PD-L1抗体で治療されたことがある、前記接触させることと、
(b)前記抗イディオタイプ抗体と接触させた前記試料を、前記抗イディオタイプ抗体と接触させたことがない前記試料と比較するために、免疫固定電気泳動によって前記試料を分析することと、
(c)前記生体試料中の前記抗PD-L1抗体の存在を検出することであって、前記抗イディオタイプ抗体と接触させた前記試料と、前記抗イディオタイプ抗体と接触させたことがない前記試料との間の泳動の違いが、前記生体試料中の前記抗PD-L1抗体の存在を示す、前記検出することと、
(d)前記生体試料中のM-タンパク質のレベルを検出することであって、前記生体試料中の前記M-タンパク質のレベルが、前記抗PD-L1抗体治療の有効性を示す、前記検出することと、を含む、方法。
【請求項42】
ステップ(b)が、前記M-タンパク質からの前記抗PD-L1抗体及び前記抗イディオタイプ抗体の複合体の分離をもたらす、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ステップ(d)の前に、バンドの泳動が、前記抗イディオタイプ抗体の添加によって影響を受けるかどうかを判定することによって、バンドがM-タンパク質であるかどうかを判定するステップをさらに含む、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記生体試料が、血液、尿、または血清である、請求項4143のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年1月18日に出願された米国特許出願第62/447,886号及び2017年1月31日に出願された米国特許出願第62/452,934号の優先利益を主張するものであり、この各々の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出内容が、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:コンピュータ可読形態(CRF)の配列表(ファイル名:146392038540SEQLIST.txt、記録日:2018年1月16日、サイズ:40KB)。
【0003】
本発明は、抗PD-L1イディオタイプ抗体及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
T細胞機能障害またはアネルギーが、阻害性受容体であるプログラム死1ポリペプチド(PD-1)の発現の持続及び誘導と同時に生じることが発見された。結果として、PD-1、ならびにPD-1との相互作用によりシグナル伝達する他の分子、例えば、プログラム死リガンド1(PD-Ll)の治療標的は、極めて興味深い分野である。PD-L1シグナル伝達の阻害は、がん(例えば、腫瘍免疫)の治療のためにT細胞免疫を増強する手段として実証されている。抗PD-1または抗PD-L1抗体を使用する治療法が、開発されており、異なるタイプのがんを治療するために使用されている。例えば、米国特許第8,217,149号を参照のこと。
【0005】
PD-L1(例えば、内因性免疫グロブリン)を対象とするまたは対象としない他の抗体をまた検出することなく、生体試料及び/または臨床試料中のPD-L1に治療的モノクローナル抗体を検出することが当該技術分野で必要である。本発明は、ある特定の抗PD-L1抗体を特異的に検出する抗イディオタイプ抗体を提供する。これらの抗体は、例えば、薬物動態(PK)及び薬力学的研究において、患者における治療的抗PD-L1抗体の定量化及びモニタリングのために有用である。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本発明は、抗PD-L1抗体に特異的に結合する単離された抗イディオタイプ抗体を提供する。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、
(a)
(i)アミノ酸配列RASQDVSTAVA(配列番号1)を含むHVR-L1、
(ii)アミノ酸配列SASFLYS(配列番号2)を含むHVR-L2、及び
(iii)アミノ酸配列QQYLYHPAT(配列番号3)を含むHVR-L3を含む、軽鎖可変領域と、
(b)
(i)アミノ酸配列GFTFSDSWIH(配列番号4)を含むHVR-H1、
(ii)アミノ酸配列AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号5)を含むHVR-H2、及び
(iii)アミノ酸配列RHWPGGFDY(配列番号6)を含むHVR-H3を含む、重鎖可変領域と、を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域及び/または配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域及び/または配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、単離された抗イディオタイプ抗体は、配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号31のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)、及び/または配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、単離された抗イディオタイプ抗体は、配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号33のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、単離された抗イディオタイプ抗体は、配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、単離された抗イディオタイプ抗体は、配列番号54の配列を含む重鎖可変領域及び/または配列番号53の配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、単離された抗イディオティック抗体は、配列番号60の配列を含む重鎖及び/または配列番号59の配列を含む軽鎖を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、単離された抗イディオタイプ抗体は、配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、単離された抗イディオタイプ抗体は、配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号41のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号42のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、単離された抗イディオタイプ抗体は、配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号44のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号42のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、単離された抗イディオタイプ抗体は、配列番号56の配列を含む重鎖可変領域、及び/または配列番号55の配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、単離された抗イディオティック抗体は、配列番号62の配列を含む重鎖及び/または配列番号61の配列を含む軽鎖を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、単離された抗イディオタイプ抗体は、配列番号45のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号46のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号47のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、単離された抗イディオタイプ抗体は、配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、単離された抗イディオタイプ抗体は、配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号52のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、単離された抗イディオタイプ抗体は、配列番号58の配列を含む重鎖可変領域、及び/または配列番号57の配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、単離された抗イディオティック抗体は、配列番号64の配列を含む重鎖、及び/または配列番号63の配列を含む軽鎖を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、単離された抗イディオタイプ抗体は、抗PD-L1抗体の少なくとも1つのHVRに特異的に結合する。
【0025】
いくつかの実施形態において、単離された抗イディオタイプ抗体は、異種部分または検出可能な部分にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態において、検出可能な部分は、標識またはビオチンである。
【0026】
別の態様では、本発明は、本明細書に提供される、抗イディオタイプ抗体を含む組成物を提供する。
【0027】
別の態様では、本発明は、本明細書に提供される組成物を含むキットを提供する。
【0028】
別の態様では、本発明は、抗PD-L1抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体をコードする単離された核酸を提供し、抗イディオタイプ抗体は、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含む重鎖可変領域と、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含み、
(a)HVR-H1が、アミノ酸配列SYDMS(配列番号35)を含み、
(b)HVR-H2が、アミノ酸配列YISSGGGSTYYPDTVKG(配列番号36)を含み、
(c)HVR-H3が、アミノ酸配列LVYYDYDDAMDY(配列番号34)を含み、
(d)HVR-L1が、アミノ酸配列SASSSVSYMH(配列番号14)を含み、
(e)HVR-L2が、アミノ酸配列STSNLAS(配列番号15)を含み、
(f)HVR-L3が、アミノ酸配列QQRSSYPPTF(配列番号16)を含む。
【0029】
別の態様では、本発明は、抗PD-L1抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体をコードする単離された核酸を提供し、抗イディオタイプ抗体は、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含む重鎖可変領域と、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含み、
(a)HVR-H1が、アミノ酸配列DYIML(配列番号43)を含み、
(b)HVR-H2が、アミノ酸配列NINPYYGSTSYNLKFKG(配列番号44)を含み、
(c)HVR-H3が、アミノ酸配列WGGNYEGWFAY(配列番号42)を含み、
(d)HVR-L1が、アミノ酸配列HASQGISSNIG(配列番号20)を含み、
(e)HVR-L2が、アミノ酸配列HGTNLED(配列番号21)を含み、
(f)HVR-L3が、アミノ酸配列VQYAQFPLTF(配列番号22)を含む。
【0030】
別の態様では、本発明は、抗PD-L1抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体をコードする単離された核酸を提供し、抗イディオタイプ抗体は、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含む重鎖可変領域と、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含み、
(a)HVR-H1が、アミノ酸配列SYDMS(配列番号51)を含み、
(b)HVR-H2が、アミノ酸配列YISSGGGSTYYPDTVKG(配列番号52)を含み、
(c)HVR-H3が、アミノ酸配列TIYYGYDDVMDY(配列番号50)を含み、
(d)HVR-L1が、アミノ酸配列SASSSVSYMH(配列番号26)を含み、
(e)HVR-L2が、アミノ酸配列STSNLAS(配列番号27)を含み、
(f)HVR-L3が、アミノ酸配列QQRSGYPPTF(配列番号28)を含む。
【0031】
別の態様では、本発明は、本明細書に提供される、抗イディオタイプ抗体をコードする単離された核酸を提供する。
【0032】
別の態様では、本発明は、本明細書に提供される、核酸を含むベクターを提供する。
【0033】
別の態様では、本発明は、本明細書に提供される、ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0034】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、真核生物である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、哺乳類細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0035】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、原核生物である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、E.coliである。
【0036】
別の態様では、本発明は、抗イディオタイプ抗体をコードするベクターの発現に適している条件下で、本明細書に提供される宿主細胞を培養することと、抗イディオタイプ抗体を回収することと、を含む、抗イディオタイプ抗体を作製するためのプロセスを提供する。
【0037】
別の態様では、本発明は、
(a)生体試料を、本明細書に提供される抗イディオタイプ抗体を含む組成物である捕捉剤と接触させ、それによって、免疫複合体を形成することと、
(b)(a)からの免疫複合体を、抗PD-L1抗体に結合する検出可能な抗体と接触させることと、
(c)検出可能な抗体を検出することによって組成物に結合した抗PD-L1抗体のレベルを測定することと、を含む、生体試料中の抗PD-L1抗体を検出するための方法を提供する。
【0038】
別の態様では、本発明は、
(a)生体試料を、試料中に存在する抗PD-L1抗体と結合する本明細書に提供される抗イディオタイプ抗体である捕捉剤と接触させ、それによって、免疫複合体を形成することと、
(b)(a)からの免疫複合体を、抗PD-L1抗体に結合する検出可能な抗体と接触させることと、
(c)検出可能な抗体を検出することによって、抗イディオタイプ抗体に結合した抗PD-L1抗体のレベルを測定することと、を含む、生体試料中の抗PD-L1抗体を検出するための方法を提供する。
【0039】
いくつかの実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、固体支持体に固定化され、本方法は、生体試料を、抗PD-L1抗体に結合した固定化した抗イディオタイプ抗体から分離させるステップをさらに含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、固定化した抗イディオタイプ抗体は、ビオチンにコンジュゲートされ、ストレプトアビジンでコーティングされたマイクロタイタープレートに結合している。
【0041】
いくつかの実施形態において、検出可能な抗体は、ヒトまたはヒト化抗体に結合する非ヒト種からの抗体である。
【0042】
いくつかの実施形態において、検出可能な抗体は、直接検出可能であるか、または西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされるか、または蛍光もしくは熱量測定試薬によって検出される。
【0043】
いくつかの実施形態において、生体試料は、ヒト対象から単離される。
【0044】
いくつかの実施形態において、ヒト対象は、
(a)
(i)アミノ酸配列RASQDVSTAVA(配列番号1)を含むHVR-L1、
(ii)アミノ酸配列SASFLYS(配列番号2)を含むHVR-L2、
(iii)アミノ酸配列QQYLYHPAT(配列番号3)を含むHVR-L3を含む、軽鎖可変領域と、
(b)
(i)アミノ酸配列GFTFSDSWIH(配列番号4)を含むHVR-H1、
(ii)アミノ酸配列AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号5)を含むHVR-H2、
(iii)アミノ酸配列RHWPGGFDY(配列番号6)を含むHVR-H3を含む、重鎖可変領域と、を含む、抗PD-L1抗体で治療されたことがある。
【0045】
いくつかの実施形態において、本方法は、抗PD-L1抗体の既知のレベルと比較して、抗PD-L1抗体のレベルを判定するために標準曲線を使用することをさらに含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、生体試料は、血液、血漿、または血清である。
【0047】
別の態様では、本発明は、
(a)本明細書に提供される抗イディオタイプ抗体または本明細書に提供される組成物と、
(b)抗PD-L1抗体に結合する検出可能な抗体と、
(c)抗PD-L1抗体を検出するための取扱説明書と、を含む、生体試料中の抗PD-L1抗体を特異的に検出するための免疫学的測定キットを提供する。いくつかの実施形態において、このキットは、抗PD-L1抗体を検出するための免疫学的測定において有用である。
【0048】
別の態様では、本発明は、
(a)生体試料を、抗イディオタイプ抗体を抗PD-L1抗体に結合し、複合体を形成することを可能にする条件下で、本明細書に提供される抗イディオタイプ抗体または本明細書に提供される組成物と接触させることと、
(b)抗イディオタイプ抗体と接触させた試料を、抗イディオタイプ抗体と接触させたことがない試料と比較するために、免疫固定電気泳動によって試料を分析することと、
(c)生体試料中の抗PD-L1抗体の存在を検出することであって、抗イディオタイプ抗体と接触させた試料と、抗イディオタイプ抗体と接触させたことがない試料との間の泳動の違いが、生体試料中の抗PD-L1抗体の存在を示す、検出することと、を含む、生体試料中の抗PD-L1抗体を検出するための方法を提供する。
【0049】
別の態様では、本発明は、
(a)生体試料を、抗イディオタイプ抗体を抗PDL1抗体に結合し、複合体を形成することを可能にする条件下で、本明細書に提供される抗イディオタイプ抗体または本明細書に提供される組成物と接触させることと、
(b)抗イディオタイプ抗体と接触させた試料を、抗イディオタイプ抗体と接触させたことがない試料と比較するために、免疫固定電気泳動によって試料を分析することと、
(c)生体試料中のM-タンパク質の存在を検出することと、を含む、生体試料中のM-タンパク質を検出するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、ステップ(b)は、M-タンパク質からの抗PD-L1抗体及び抗イディオタイプ抗体の複合体の分離をもたらす。いくつかの実施形態において、ステップ(c)の前に、本方法は、バンドの泳動が、抗イディオタイプ抗体の添加によって影響を受けるかどうかを判定することによって、バンドがM-タンパク質であるかどうかを判定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、生体試料は、血液、尿、または血清である。
【0050】
別の態様では、本発明は、対象における抗PD-L1抗体治療の有効性をモニタリングするための方法であって、
(a)生体試料を、抗イディオタイプ抗体を抗PD-L1抗体に結合し、複合体を形成することを可能にする条件下で、本明細書に提供される抗イディオタイプ抗体をまたは本明細書に提供される組成物と接触させることであって、生体試料が対象からの生体試料であり、対象が、多発性骨髄腫に罹患しており、抗PD-L1抗体で治療されたことがある、接触させることと、
(b)抗イディオタイプ抗体と接触させた試料を、抗イディオタイプ抗体と接触させたことがない試料と比較するために、免疫固定電気泳動によって試料を分析することと、
(c)生体試料中の抗PD-L1抗体の存在を検出することであって、抗イディオタイプ抗体と接触させた試料と、抗イディオタイプ抗体と接触させたことがない試料との間の泳動の違いが、生体試料中の抗PD-L1抗体の存在を示す、検出することと、
(d)生体試料中のM-タンパク質のレベルを検出することであって、生体試料中のM-タンパク質のレベルが、抗PD-L1抗体治療の有効性を示す、検出することと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、ステップ(b)は、M-タンパク質からの抗PD-L1抗体及び抗イディオタイプ抗体の複合体の分離をもたらす。いくつかの実施形態において、ステップ(d)の前に、本方法は、バンドの泳動が、抗イディオタイプ抗体の添加によって影響を受けるかどうかを判定することによって、バンドがM-タンパク質であるかどうかを判定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、生体試料は、血液、尿、または血清である。
【0051】
本明細書に記載される様々な実施形態の特性のうちの1つ、いくつか、または全てが組み合わされて、本発明の他の実施形態を形成することができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】抗イディオタイプ抗体105D11(配列番号54)、43B5(配列番号56)、及び48C1(配列番号58)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列整列を示す。重鎖接触CDR、Chothia CDR、及びKabat CDR配列を示す。
図2】抗イディオタイプ抗体105D11(配列番号53)、43B5(配列番号55)、及び48C1(配列番号57)の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列整列を示す。軽鎖接触CDR、Chothia CDR、及びKabat CDR配列を示す。
図3】抗PDL1抗体Fab及び抗体YW167B.43(フレームワーク対照Fab)への抗体105D11の結合におけるSPRを生成した結合動態(k、k、及びK)を示す。
図4】抗PDL1抗体Fab及び抗体YW167B.43(フレームワーク対照Fab)への抗体43B5の結合におけるSPRを生成した結合動態(k、k、及びK)を示す。
図5】抗PDL1抗体Fab及び抗体YW167B.43(フレームワーク対照Fab)への抗体48C1の結合におけるSPRを生成した結合動態(k、k、及びK)を示す。
図6】Sebia免疫固定電気泳動(IFE)アッセイにおける抗イディオタイプ抗体のスクリーニングを示す。
図7】IFEアッセイにおける高解像度で検出された多発性骨髄腫患者の血清におけるIgA/IgカッパMタンパク質のスパイクを示す(パネル1、レーンA及びレーンK)。患者「MM5」血清は、1500μg/mlでスパイクしたアテゾリズマブ抗イディオタイプマウスmABクローン48C1のみ(パネル2)、1500μg/ml中でスパイクされたアテゾリズマブのみ(パネル3、レーンG及びレーンK)、及びそれぞれ、1500μg/mlで一緒に添加されたアテゾリズマブ+アテゾリズマブ抗イディオタイプクローン48C1(パネル4)の条件下で2時間予めインキュベートされた。
図8】IFEアッセイにおけるアテゾリズマブの移動性を変化させる抗イディオタイプ抗体の能力におけるアテゾリズマブ血清濃度の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
I.定義
別途の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.,J.Wiley & Sons(New York,N.Y.1994)、及びMarch,Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure 4th ed.,John Wiley & Sons(New York,N.Y.1992)は、本出願で使用される用語の多くに関する一般的指針を当業者に提供する。特許出願及び刊行物を含む、本明細書に引用される全ての参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0054】
本明細書を解釈する目的において、以下の定義が適用され、適当な場合はいつでも、単数形で使用される用語は複数形も含み、その逆も同様である。本明細書において使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためのものであり、制限することを意図しないことを理解されたい。以下に記載されるいずれかの定義が、参照により本明細書に組み込まれるいずれかの文献と矛盾する場合には、以下に記載される定義が優先する。
【0055】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との単一結合部位の間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。別途指示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は一般に、解離定数(K)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載の方法を含む当技術分野で既知の一般的な方法によって測定され得る。結合親和性を測定するための具体的な例証的かつ例示的な実施形態は本明細書に記載される。
【0056】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広義に使用され、それらが所望の抗原結合活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントを含むが、これらに限定されない様々な抗体構造を包含する。
【0057】
「抗体断片」は、無傷抗体が結合する抗原に結合する無傷抗体の一部分を含む、無傷抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)と、ダイアボディと、線状抗体と、単鎖抗体分子(たとえば、scFv)と、抗体断片から形成される多特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。抗体のパパイン消化は、各々、単一の抗原結合部位を持つ、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、及び容易に結晶化する能力を反映する名称を持つ、残った「Fc」断片を産生する。ペプシン処理は、F(ab’)断片をもたらし、これは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができる。
【0058】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、同一である、及び/または同じエピトープに結合するが、例えば、天然に存在する変異を含有するか、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる可能なバリアント抗体を除いて、かかるバリアントは一般に、少量で存在する。異なる決定基(エピトープ)に対して指向された異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組み換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない、様々な技法により作製され得、モノクローナル抗体を作製するためのかかる方法及び他の例示的な方法が、本明細書に記載される。
【0059】
「ネイキッド抗体」は、異種部分(例えば、細胞傷害性部分)または放射標識にコンジュゲートされていない抗体を指す。ネイキッド抗体は、薬学的製剤中に存在し得る。
【0060】
「天然抗体」は、異なる構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合されている2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変重ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、その後に3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)が続く。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変軽ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)を有し、その後に定常軽(CL)ドメインが続く。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプのうちの1つに割り当てられ得る。
【0061】
抗体の「クラス」は、その重鎖が所有する定常ドメインまたは定常領域のタイプを指す。5つの主要なクラスの抗体、つまり、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、及びIgAにさらに分類され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0062】
「抗PD-L1抗体」、「抗PD-L1」、「PD-L1抗体」、または「PD-L1に結合する抗体」という用語は、抗体がPD-L1を標的とする上で診断剤及び/または治療剤として有用になるように、十分な親和性を有するPD-L1に結合することができる抗体を指す。一実施形態において、無関係の非PD-L1タンパク質への抗PD-L1抗体の結合の程度は、例えば放射免疫アッセイ(RIA)により測定されたときに、PD-L1への結合の約抗体の約10%未満である。ある特定の実施形態において、PD-L1に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(K)を有する。ある特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は、異なる種由来のPD-L1の間で保存されているPD-L1のエピトープに結合する。
【0063】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞により産生された抗体、またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的に排除する。
【0064】
「キメラ」抗体という用語は、重鎖及び/または軽鎖の一部が特定の源または種に由来し、一方で重鎖及び/または軽鎖の残りが異なる源または種に由来する抗体を指す。
【0065】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループに由来する。一般に、配列の下位集団は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1-3にあるような下位集団である。一実施形態において、VLについては、下位群は、Kabat et al.,(上記参照)における下位群カッパIである。一実施形態において、VHについては、下位群は、Kabat et al.,(上記参照)における下位群IIIである。
【0066】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基及びヒトFRからのアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、及び典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、そのHVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のものに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含み得る。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化型」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0067】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VH及びVL)は一般に、類似の構造を有し、各ドメインが4つの保存フレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む。(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照されたい)。単一のVHドメインまたはVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、VHドメインまたはVLドメインを使用して抗原に結合する抗体から単離されて、それぞれ相補的VLドメインまたはVHドメインのライブラリをスクリーニングすることができる。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993)、Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)を参照されたい。
【0068】
本明細書で使用される「超可変領域」または「HVR」という用語は、配列が高度に変化する、及び/または構造的に規定されたループ(「超可変ループ」)を形成する、抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般に、天然4本鎖抗体は、6つのHVRを含み、このうち3つがVH(H1、H2、H3)にあり、3つがVL(L1、L2、L3)にある。HVRは一般に、超可変ループ及び/または「相補性決定領域」(CDR)からのアミノ酸残基を含み、後者は、最も高い配列可変性を有する、及び/または抗原認識に関与する。例示的な超可変ループは、アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)において生じる。(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3)は、アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35B(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)に生じる。(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)。)VH内のCDR1を除いて、CDRは一般に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。CDRはまた、抗原と接触する残基である「特異性決定残基」または「SDR」も含む。SDRは、短縮-CDR、またはa-CDRと呼ばれるCDRの領域内に収容される。例示的なa-CDR(a-CDR-L1、a-CDR-L2、a-CDR-L3、a-CDR-H1、a-CDR-H2、及びa-CDR-H3)は、アミノ酸残基31~34(L1)、50~55(L2)、89~96(L3)、31~35B(H1)、50~58(H2)、及び95~102(H3)に生じる。(Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照のこと。)本明細書で別途示されない限り、可変ドメイン中のHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、Kabat et al.,(上記参照)に従って本明細書において番号付けされる。
【0069】
「検出」という用語は、標的分子の質的測定及び量的測定の両方を含むために本明細書で最も広義に使用される。一態様では、本明細書に記載の検出する方法は、生体試料中の目的とする抗体の単なる存在を特定するのに使用される。別の態様では、本方法は、試料中の目的とする抗体が検出可能なレベルで存在するかどうかを試験するために使用される。さらに別の態様では、本方法は、試料中の目的とする抗体の量を定量化するために使用される。
【0070】
「生体試料」という用語は、目的とする抗体を含有し得る任意の生物学的物質を指す。試料は、全血または全血成分、例えば、赤血球、白血球、血小板、血清、及び血漿など、腹水、硝子体液(itreous fluid)、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、唾液、痰、涙液、汗、粘液、脳脊髄液、及び目的とする抗体を含有し得る人体の他の構成要素などの生物学的液体であり得る。様々な実施形態において、試料は、任意の動物からの身体試料である。いくつかの実施形態において、試料は、哺乳動物からの試料である。いくつかの実施形態において、試料は、ヒト対象からの試料である。いくつかの実施形態において、生体試料は、臨床患者または治療的抗PD-L1抗体(複数可)で治療された患者からの生体試料である。ある特定の実施形態において、生体試料は、血清または血漿である。ある特定の実施形態において、生体試料は、臨床患者からの血清である。
【0071】
「捕捉剤」という用語は、好適な条件下で、捕捉試薬及び目的とする標的物(例えば、抗体)の複合体が試料の残りから分離され得るように、目的とする標的物(例えば、抗体)に結合し、かつ生体試料中の目的とする標的物(例えば、抗体)に結合し、捕捉することができる、試薬(例えば、抗体)またはかかる試薬の混合物を指す。例えば、捕捉試薬は、好適な条件下で、捕捉試薬及び目的とする抗体の複合体が試料の残りから分離され得るように、目的とするイディオタイプの抗体に結合し、かつ生体試料中の目的とする抗体に結合し、捕捉することができる、抗イディオタイプ抗体またはかかる抗体の混合物であり得る。ある特定の実施形態において、捕捉試薬は、固定化されるか、または固定化可能である。
【0072】
本明細書に使用される、「抗イディオタイプ抗体」は、同種抗体、この場合は、目的とする抗体のVH及び/またはVLドメインに結合する抗体である。典型的には、かかる抗イディオタイプ抗体は、目的とする抗体を有するマウスなどの哺乳動物に免疫付与し、ハイブリドーマライブラリーを産生し、ハイブリドーマに由来する抗体のパネルから選択することによって、捕捉試薬または検出可能な抗体に対して、アッセイにおけるクリーンなシグナルを得るような抗体に調製される。ある特定の実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、固定化されるか、または固定化可能である。いくつかの実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、モノクローナル抗体であり、例えば、マウスまたはラット抗体などの齧歯動物抗体であり得る。
【0073】
本明細書で使用される、「抗PD-L1イディオタイプ抗体」は、抗PD-L1抗体の検出に有用であるのに十分な特異性及び親和性を有する抗PD-L1モノクローナル抗体に特異的に結合するものである。
【0074】
「検出可能な抗体」という用語は、目的とする抗体に結合し、検出手段によって増幅される標識を通して直接的に、または例えば、標識される別の抗体を通して間接的にかのいずれかで検出することができる、抗体を指す。いくつかの実施形態において、検出可能な抗体は、ヒト抗体に結合する非ヒト種からの抗体である。いくつかの実施形態において、検出可能な抗体は、抗イディオタイプ抗体または目的とするイディオタイプの抗体に結合するような抗体の混合物である。直接標識の場合、抗体は、典型的には、いくつかの手段によって検出可能な部分にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態において、検出可能な抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされる。
【0075】
「検出手段」という用語は、本明細書におけるアッセイで後に読み取られるシグナル報告により検出可能な抗体の存在を検出するために使用される部分または技法を指す。それは、マイクロタイタープレート上で捕捉される標識などの固定化標識を増幅する試薬を含む。
【0076】
「Fab」断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)もまた含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端への数個の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書における表記である。F(ab’)抗体断片は、元来、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生されたものであった。抗体断片の他の化学的結合もまた知られている。
【0077】
本明細書の「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域及び変異型Fc領域を含む。ある特定の実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端に及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在することもあれば、しないこともある。本明細書において別途明記されない限り、Fc領域または定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載される、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。
【0078】
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。したがって、HVR及びFR配列は一般に、VH(またはVL)において以下の配列、FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4で出現する。
【0079】
「完全長抗体」、「無傷抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書で、天然抗体構造と実質的に同様の構造を有するか、または本明細書に定義されるFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指すように同義に使用される。
【0080】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は、同義に使用され、外因性核酸が中に導入されている細胞を指し、かかる細胞の子孫を含む。宿主細胞には、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これらには、初代形質転換細胞及び継代の数に関わらずそれに由来する子孫が含まれる。子孫は、核酸含有量が親細胞と完全に同一ではない場合があるが、変異を含み得る。最初に形質転換された細胞についてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物活性を有する変異子孫が、本明細書に含まれる。
【0081】
「免疫コンジュゲート」は、細胞傷害性剤を含むが、これに限定されない1つ以上の異種分子(複数可)にコンジュゲートされる抗体である。
【0082】
「個体」または「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物には、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、個体または対象は、ヒトである。
【0083】
「単離された」抗体は、その天然環境の構成成分から分離された抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動法(IEF)、キャピラリー電気泳動法)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換もしくは逆相HPLC)によって決定される、95%または99%を超える純度に精製される。抗体の純度を評定するための方法の概説については、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B 848:79-87(2007)を参照されたい。
【0084】
「単離された」核酸は、その天然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、通常核酸分子を含有する細胞内に含有される核酸分子を含むが、その核酸分子が染色体外に、またはその天然染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0085】
「抗イディオタイプ抗体をコードする単離された核酸」とは、抗イディオタイプ抗体の重鎖及び軽鎖(またはそれらの断片)をコードする1つ以上の核酸分子を指し、単一のベクターまたは別個のベクター内のかかる核酸分子(複数可)を含み、かかる核酸分子(複数可)は、宿主細胞内の1つ以上の場所に存在する。
【0086】
「添付文書」という用語は、かかる治療製品の適応症、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌症、及び/またはその使用に関する警告についての情報を含有する、治療製品の商業用パッケージに通例含まれる指示書を指すために使用される。
【0087】
基準ポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、最大の配列同一性パーセントを達成するように、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後に、かついかなる保存的置換も配列同一性の一部とは見なさずに、候補配列内のアミノ酸残基が、基準ポリペプチド配列内のアミノ酸残基と同一であるパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するための整列は、当業者が備えている技能の範囲内の様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。当業者であれば、比較されている配列の完全長にわたって最大の整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.によって記述され、ソースコードは、ユーザ文書とともに米国著作権庁(Washington D.C.,20559)に提出されており、米国著作権番号TXU510087の下に登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaから公的に入手可能であるか、またはソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムで使用する場合はコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムにより設定されており、変動しない。
【0088】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況において、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対するある特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下、
100×分数X/Y
のように計算され、式中、Xは、配列整列プログラムALIGN-2によって、そのプログラムのAとBとの整列において完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBへのアミノ酸配列同一性%は、BのAへのアミノ酸配列同一性%とは等しくないことが理解されるだろう。別途具体的に述べられない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるようにALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる。
【0089】
「治療有効量」は、少なくとも特定の障害の測定可能な改善または予防をもたらすために必要な最小限の濃度である。治療有効量は、本明細書において、患者の病状、年齢、性別、及び体重、ならびに個体において所望の応答を引き起こすための抗体の能力などの因子によって変動し得る。治療有効量は、抗体の任意の毒性または有害な作用よりも治療的に有益な作用が上回ることでもある。
【0090】
抗PD-L1抗体の「シグネチャーペプチド」は、1つの抗体アイソタイプ中のみに存在するタンパク質分解ペプチド(例えば、トリプシンペプチド)を指す。
【0091】
「薬学的製剤」または「薬学的組成物」という用語は、内部に含まれる活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与され得る対象が受け入れられない程度に毒性のいかなる成分も含まない調製物を指す。
【0092】
「薬学的に許容される担体」または「有効量」は、対象にとって無毒である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝液、賦形剤、安定剤、または保存剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
本明細書で使用される場合、「治療」(及び「治療する」または「治療すること」などのその文法上の変形)とは、治療されている個体の自然経過を変更することを目的とした臨床介入を指し、予防のために、または臨床病理過程中のいずれかで行われ得る。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的病理学的帰結の縮小、疾患進行速度の減少、病状の回復または寛解、及び緩解または予後の改善が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の抗体を使用して、疾患の発達を遅延させるか、または疾患の進行を減速させる。
【0094】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、それが結合している別の核酸を運搬することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、及びそれが導入される宿主細胞のゲノム内に組み込まれたベクターを含む。ある特定のベクターは、それらが作動可能に結合している核酸の発現を誘導することができる。かかるベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。
【0095】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途指示されない限り、複数の対象を含む。
【0096】
本明細書で使用される「約」という用語は、当業者に容易に知られているそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
【0097】
本明細書に記載される本発明の態様及び実施形態は、態様及び実施形態「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0098】
II.組成物及び方法
一態様では、本発明は、抗PD-L1モノクローナル抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体を提供する。本発明の抗体は、例えば、生体試料、例えば、臨床試料中の抗PD-L1の検出及び/または定量化に有用である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、モノクローナル、キメラ、ヒト化、またはヒトである。
【0099】
A.抗PD-L1抗体
i.例示的な抗PD-L1抗体
ある特定の実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、(a)アミノ酸配列RASQDVSTAVA(配列番号1)を含むHVR-L1、アミノ酸配列SASFLYS(配列番号2)を含むHVR-L2、及びアミノ酸配列QQYLYHPAT(配列番号3)を含むHVR-L3を含む、軽鎖可変領域と、(b)アミノ酸配列GFTFSDSWIH(配列番号4)を含むHVR-H1、アミノ酸配列AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号5)を含むHVR-H2、及びアミノ酸配列RHWPGGFDY(配列番号6)を含むHVR-H3を含む、重鎖可変領域と、を含む、抗PD-L1抗体に結合する。
【0100】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、を含む。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、及び/または配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する重鎖可変領域を含む。
【0101】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖と、を含む。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を有する軽鎖に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する軽鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を有する重鎖に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する重鎖と、を含む。
【0102】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標))である。
【0103】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブのHVRを含む。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブの重鎖可変領域及び/または軽鎖可変領域を含む。
【0104】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、モノクローナル、キメラ、またはヒト化される。
抗PD-L1抗体軽鎖可変領域のアミノ酸配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号7)
抗PD-L1抗体重鎖可変領域のアミノ酸配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTK(配列番号8)
抗PD-L1抗体軽鎖のアミノ酸配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号9)
抗PD-L1抗体重鎖のアミノ酸配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号10)
【0105】
B.抗イディオタイプ抗体
i.例示的な抗イディオタイプ抗体
一態様では、本発明は、本明細書に記載される抗PD-L1抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体を提供する。いくつかの実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、抗PD-L1抗体を含み、抗PD-L1抗体は、(a)アミノ酸配列RASQDVSTAVA(配列番号1)を含むHVR-L1、アミノ酸配列SASFLYS(配列番号2)を含むHVR-L2、及びアミノ酸配列QQYLYHPAT(配列番号3)を含むHVR-L3を含む、軽鎖可変領域と、(b)アミノ酸配列GFTFSDSWIH(配列番号4)を含むHVR-H1、アミノ酸配列AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号5)を含むHVR-H2、及びアミノ酸配列RHWPGGFDY(配列番号6)を含むHVR-H3を含む、重鎖可変領域と、を含む。いくつかの実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、抗PD-L1抗体の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つのHVRに特異的に結合する。
【0106】
いくつかの実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、図1及び2に示される、抗体105D11の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVR(Kabat)を含む。いくつかの実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、図1及び2に示される、抗体105D11のVH及び/またはVLを含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、配列番号54のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。ある特定の実施形態において、配列番号54のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列は、参照配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、そのVH配列を含む抗PD-L1イディオタイプ抗体は、参照配列を含む抗イディオタイプ抗体と同じ抗PD-L1抗体に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態において、配列番号54において合計で1~10個のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失している。ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域内で(すなわち、FR内で)生じる。任意に、抗PD-L1イディオタイプ抗体は、配列番号54のVH配列を、その配列の翻訳後修飾を含めて、含む。特定の実施形態において、VHは、(a)配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0108】
別の態様では、抗PD-L1イディオタイプ抗体が提供され、この抗体は、配列番号53のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態において、配列番号53のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL配列は、参照配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、そのVL配列を含む抗PD-L1イディオタイプ抗体は、参照配列を含む抗イディオタイプ抗体と同じ抗PD-L1抗体に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号53において合計で1~10個のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失している。ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域で(すなわち、FR内で)生じる。任意に、抗PD-L1イディオタイプ抗体は、配列番号53のVL配列を、その配列の翻訳後修飾を含めて、含む。特定の実施形態において、VLは、(a)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0109】
別の態様では、抗PD-L1イディオタイプ抗体が提供され、この抗体は、上記に提供される実施形態のいずれかにあるようなVH、及び上記に提供される実施形態のいずれかにあるようなVLを含む。一実施形態において、抗体は、配列番号54のVH配列及び配列番号53のVL配列を含み、これにはそれらの配列の翻訳後修飾が含まれる。
【0110】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1イディオタイプ抗体が提供され、この抗体は、配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号31のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVHと、配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLと、を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号33のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVHと、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLと、を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVHと、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLと、を含む。
【0111】
別の態様では、抗イディオタイプ抗体は、図1及び2に示される、抗体43B5の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVR(Kabat)を含む。いくつかの実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、図1及び2に示される、抗体43B5のVH及び/またはVLを含む。
【0112】
別の態様では、抗PD-L1イディオタイプ抗体は、配列番号56のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する、重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。ある特定の実施形態において、配列番号56のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列は、参照配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、そのVH配列を含む抗PD-L1イディオタイプ抗体は、参照配列を含む抗イディオタイプ抗体と同じ抗PD-L1抗体に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号56において合計で1~10個のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失している。ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域内で(すなわち、FR内で)生じる。任意に、抗PD-L1イディオタイプ抗体は、配列番号56のVH配列を、その配列の翻訳後修飾を含めて、含む。特定の実施形態において、VHは、(a)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号44のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)配列番号42のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0113】
別の態様では、抗PD-L1イディオタイプ抗体が提供され、この抗体は、配列番号55のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態において、配列番号55のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL配列は、参照配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、そのVL配列を含む抗PD-L1イディオタイプ抗体は、参照配列を含む抗イディオタイプ抗体と同じ抗PD-L1抗体に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号55において合計で1~10個のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失している。ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域で(すなわち、FR内で)生じる。任意に、抗PD-L1イディオタイプ抗体は、配列番号55のVL配列を、その配列の翻訳後修飾を含めて、含む。特定の実施形態において、VLは、(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0114】
別の態様では、抗PD-L1イディオタイプ抗体が提供され、この抗体は、上記に提供される実施形態のいずれかにあるようなVH、及び上記に提供される実施形態のいずれかにあるようなVLを含む。一実施形態において、抗体は、それぞれ、配列番号56及び配列番号55のVH配列及びVL配列を含み、これにはそれらの配列の翻訳後修飾が含まれる。
【0115】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1イディオタイプ抗体が提供され、この抗体は、配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む、VHと、配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、VLと、を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号41のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号42のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVHと、配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLと、を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号44のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号42のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVHと、配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLと、を含む。
【0116】
いくつかの実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、図1及び2に示される、抗体48C1の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVR(例えば、Kabat)を含む。いくつかの実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、図1及び2に示される、抗体48C1のVH及び/またはVLを含む。
【0117】
別の態様では、抗PD-L1イディオタイプ抗体は、配列番号58のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する、重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。ある特定の実施形態において、配列番号58のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列は、参照配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、そのVH配列を含む抗PD-L1イディオタイプ抗体は、参照配列を含む抗イディオタイプ抗体と同じ抗PD-L1抗体に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号58において合計で1~10個のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失している。ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域内で(すなわち、FR内で)生じる。任意に、抗PD-L1イディオタイプ抗体は、配列番号58のVH配列を、その配列の翻訳後修飾を含めて、含む。特定の実施形態において、VHは、(a)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号52のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0118】
別の態様では、抗PD-L1イディオタイプ抗体が提供され、この抗体は、配列番号57のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態において、配列番号57のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL配列は、参照配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、そのVL配列を含む抗PD-L1イディオタイプ抗体は、参照配列を含む抗イディオタイプ抗体と同じ抗PD-L1抗体に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号57において合計で1~10個のアミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失している。ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域で(すなわち、FR内で)生じる。任意に、抗PD-L1イディオタイプ抗体は、配列番号57のVL配列を、その配列の翻訳後修飾を含めて、含む。特定の実施形態において、VLは、(a)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0119】
別の態様では、抗PD-L1イディオタイプ抗体が提供され、この抗体は、上記に提供される実施形態のいずれかにあるようなVH、及び上記に提供される実施形態のいずれかにあるようなVLを含む。一実施形態において、抗体は、それぞれ配列番号58及び配列番号57のVH配列及びVL配列を含み、これにはそれらの配列の翻訳後修飾が含まれる。
【0120】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1イディオタイプ抗体が提供され、この抗体は、配列番号45のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号46のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号47のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVHと、配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLと、を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVHと、配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLと、を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号52のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVHと、配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLと、を含む。
【0121】
本発明のさらなる態様において、上記の実施形態のいずれかによる抗PD-L1イディオタイプ抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体を含む、モノクローナル抗体である。一実施形態において、抗PD-L1イディオタイプ抗体は、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、またはF(ab’)断片である。別の実施形態において、抗PD-L1イディオタイプ抗体は、完全長抗体、例えば、本明細書において定義される無傷のIgG1抗体または他の抗体クラスもしくはアイソタイプである。
【0122】
本発明のさらなる態様において、上記の実施形態のいずれかに従ってまたは本明細書に記載される抗PD-L1イディオタイプ抗体は、異種部分または薬剤にコンジュゲートされる。
【0123】
別の態様では、上記の実施形態のいずれかに従ってまたは本明細書に記載される抗PD-L1イディオタイプ抗体のうちの1つ以上を含む組成物が、本明細書に提供される。本明細書に記載される抗イディオタイプ抗体をコードする核酸、核酸を含むベクター、及びベクターを含む宿主細胞もまた、本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、単離されるか、または精製される。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、細胞培養培地である。
【0124】
ii.産生方法
以下は、本発明に従って使用される抗イディオタイプ抗体の産生について例示的な技術として記載する。
【0125】
1.ポリクローナル抗体
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体を含み得る。ポリクローナル抗体の調製方法は、当業者に既知である。ポリクローナル抗体は、哺乳動物において、例えば、免疫付与剤及び必要に応じてアジュバントの1回以上の注射によって産生され得る。典型的には、免疫付与剤及び/またはアジュバントは、複数の皮下または腹腔内注射によって哺乳動物に注射される。免疫付与剤は、抗PD-L1、その抗原結合断片、またはその融合タンパク質を含み得る。免疫付与される哺乳動物において免疫原性であることが知られているタンパク質に免疫付与剤を共役させることが有用であり得る。かかる免疫原性タンパク質の例としては、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、及び大豆トリプシン阻害剤が挙げられるが、それらに限定されない。用いられ得るアジュバントの例としては、フロイント完全アジュバント、及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコール酸塩)が挙げられる。免疫化プロトコルは、過度な実験なしに当業者によって選択され得る。次いで、哺乳動物が、採血され、血清が抗イディオタイプ抗体力価についてアッセイされ得る。必要に応じて、哺乳動物は、抗体力価が増加するか、または頭打ちになるまで促進され得る。
【0126】
2.モノクローナル抗体
本発明の抗体は、あるいは、モノクローナル抗体であり得る。モノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)によって最初に記載されるハイブリドーマ法により作製されてもよいし、組換えDNA法によって作製されてもよい(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)。
【0127】
ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えばハムスターなどが、上述のように免疫化されて、免疫化に使用されるタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するか、または産生することのできるリンパ球が誘発される。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫化され得る。免疫化の後、リンパ球が単離され、次いでポリエチレングリコールなどの好適な融合剤を使用して骨髄腫細胞株と融合されて、ハイブリドーマ細胞が形成される(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986))。
【0128】
このように調製されたハイブリドーマ細胞は、好適な培地に播種され増殖し、この培地は、非融合の親骨髄腫細胞(融合パートナーとも称される)の増殖または生存を阻害する1つ以上の物質を含有する。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマの選択培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含むことになり(HAT培地)、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の増殖を防止する。
【0129】
融合パートナー骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定した高レベルの産生を支持し、かつ非融合の親細胞に対して選択する選択培地に対して感受性を示すものである。骨髄腫細胞株は、Salk Institute Cell Distribution Center(San Diego,California USA)から入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、ならびにAmerican Type Culture Collection(Manassas、VA、USA)から入手可能なSP-2及び誘導体、例えば、X63-Ag8-653細胞に由来するものなどのマウス骨髄腫株である。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も、ヒトモノクローナル抗体の産生に関して記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984)、及びBrodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
【0130】
ハイブリドーマ細胞が成長する培養培地は、抗原に対して指向されたモノクローナル抗体の産生に関してアッセイされる。ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはインビトロ結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定され得る。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson et al.,Anal.Biochem.,107:220(1980)に記載されるScatchard分析によって判定され得る。
【0131】
所望の特異性、親和性、及び/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が特定されたら、クローンを、限界希釈手技によってサブクローニングし、標準的方法によって増殖させることができる(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986))。この目的に適切な培養培地としては、例えば、D-MEMまたはRPMI-1640培地が挙げられる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、例えば、マウスにこの細胞を腹腔内注射することによって、動物において腹水癌としてインビボで増殖させることができる。
【0132】
サブクローンにより分泌されるモノクローナル抗体は、例えば、親和性クロマトグラフィー(例えば、タンパク質Aまたはタンパク質G-セファロースを使用する)またはイオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析などの従来の抗体精製手技によって、培地、腹水、または血清から好適に分離される。
【0133】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離及び配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの源として機能する。単離されると、DNAが発現ベクター内に入れられてよく、これは次いで、宿主細胞、例えばE.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはさもなければ抗体タンパク質を産生しない骨髄腫などにトランスフェクトされて、組換え宿主細胞内のモノクローナル抗体の合成体が得られる。抗体をコードするDNAの細菌における組換え発現に関する概説論文としては、Skerra et al.,Curr.Opinion in Immunol.,5:256-262(1993)及びPliickthun,Immunol.Revs.130:151-188(1992)が挙げられる。
【0134】
さらなる一実施形態において、モノクローナル抗体または抗体断片は、McCafferty et al.,Nature,348:552-554(1990)に記載される技術を使用して作製された抗体ファージライブラリから単離されてもよい。Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991)、及びMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)は、それぞれ、ファージライブラリを使用したマウス及びヒト抗体の単離を記載する。その後の刊行物は、非常に大きなファージライブラリを構築するための戦略として、鎖シャッフリング(Marks et al.,Bio/Technology,10:779-783(1992))、ならびに組み合わせ感染及びインビボ組換えによる高い親和性(nM範囲)のヒト抗体の産生を記載する(Waterhouse et al.,Nuc.Acids.Res.21:2265-2266(1993))。したがって、これらの技術は、モノクローナル抗体を単離するための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術の実行可能な代替案である。
【0135】
原則として、合成抗体クローンは、ファージコートタンパク質に融合した抗体可変領域(Fv)の様々な断片をディスプレイするファージを含むファージライブラリをスクリーニングすることによって選択される。かかるファージライブラリは、所望の抗原に対してスクリーニングされる。所望の抗原に結合することができるFv断片を発現するクローンは、抗原に吸着し、それ故に、ライブラリ内の非結合クローンから分離される。その後、結合クローンは、抗原から溶出し、追加の抗原吸着/溶出サイクルによってさらに富化され得る。
【0136】
可変ドメインは、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433-455(1994)に記載されるように、VH及びVLが短い柔軟性ペプチドを介して共有結合される一本鎖Fv(scFv)断片として、またはそれらが各々定常ドメインに融合して非共有結合的に相互作用するFab断片としてのいずれかで、ファージ上に機能的にディスプレイされ得る。
【0137】
VH及びVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別個にクローニングされ、ファージライブラリ内でランダムに組換えられ得、その後、これは、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433-455(1994)に記載されるように、抗原結合クローンについて検索され得る。免疫化源由来のライブラリは、ハイブリドーマの構築を必要とすることなく、高親和性抗体を免疫原に提供する。あるいは、ナイーブレパートリーは、Griffiths et al.,EMBO J,12:725-734(1993)に記載されるように、クローニングされて、いずれの免疫化も伴うことなく、単一のヒト抗体源を広範囲の非自己抗原及び自己抗原に提供することができる。最後に、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381-388(1992)に記載されるように、幹細胞からの再編成されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使用して高度に可変的なCDR3領域をコードし、インビトロでの再編成を達成することによってナイーブライブラリを合成的に作製することもできる。
【0138】
ライブラリのスクリーニングは、当該技術分野で既知の様々な技術によって達成され得る。例えば、抗PD-L1は、吸着プレートに付着した宿主細胞で発現された吸着プレートのウェルを被覆するために使用され得るか、または細胞選別で使用され得るか、またはストレプトアビジンでコーティングしたビーズで捕捉するためにビオチンにコンジュゲートされ得るか、またはディスプレイライブラリをパニングするための任意の他の方法で使用され得る。
【0139】
遅い解離速度(及び良好な結合親和性)を有する抗体の選択は、Bass et al.,Proteins,8:309-314(1990)及びWO92/09690に記載されるように、長時間の洗浄及び一価ファージディスプレイの使用、ならびにMarks et al.,Biotechnol.,10:779-783(1992)に記載されるように、抗原の低被覆密度の使用によって促進され得る。
【0140】
本発明の抗イディオタイプ抗体のうちのいずれも、目的とするファージクローンを選択するのに好適な抗原スクリーニング手順を設計し、続いて、目的とするファージクローンからのFv配列、及びKabat et al.,Sequences of Proteins of lmmunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1-3に記載される好適な定常領域(Fe)配列を用いて完全長抗イディオタイプ抗体クローンを構築することによって得ることができる。
【0141】
3.抗体バリアント
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体のアミノ酸配列バリアントが企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。かかる修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内における、残基からの欠失、及び/または残基への挿入、及び/または残基の置換が含まれる。最終構築物に到達するために欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせを行うことができるが、最終構築物が所望の特性、例えば、抗原結合を保有することを条件とする。
a.置換、挿入、及び欠失バリアント
【0142】
ある特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体バリアントを提供する。置換変異誘発のために対象となる部位は、HVR及びFRを含む。保存的置換を表1の「保存的置換」という見出しの下に示す。より実質的な変化が表1の「例示的な置換」という見出しの下に提供され、アミノ酸側鎖クラスに関連して、以下でさらに記載される。アミノ酸置換は、目的とする抗体に導入され、生成物は、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、低下された免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCに関してスクリーニングされ得る。
【0143】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って群分けされ得る:
-疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
-中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
-酸性:Asp、Glu、
-塩基性:His、Lys、Arg、
-鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro、
-芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0144】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴うであろう。
【0145】
1つのタイプの置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。概して、さらなる研究のために選択される結果として生じる変異体(複数可)は、親抗体に対してある特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)における修飾(例えば、改善)を有し、かつ/または親抗体のある特定の生物学的特性を実質的に保持するであろう。例示的な置換バリアントは、例えば、本明細書に記載の技術等のファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を使用して好都合に生成され得る親和性成熟抗体である。簡潔には、1つ以上のHVR残基が変異され、バリアント抗体がファージ上にディスプレイされ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0146】
改変(例えば、置換)は、HVRにおいて、例えば抗体親和性を改善するために行われ得る。かかる改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を経るコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Afol.Biol.207:179-196(2008)を参照されたい)、及び/またはSDR(a-CDR)で行われてもよく、得られたバリアントVHまたはVLが結合親和性に関して試験される。二次ライブラリからの構築及び再選択による親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態において、多様性は、種々の方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のうちのいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子に導入される。次いで、二次ライブラリが創出される。次いで、ライブラリは、所望の親和性を有する任意の抗体バリアントを特定するためにスクリーニングされる。多様性を導入するための別の方法は、HVR指向アプローチを伴い、その方法では、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)がランダム化される。抗原結合で伴われるHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して、特異的に特定され得る。特に、CDR-H3及びCDR-L3が標的化されることが多い。
【0147】
ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、かかる改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減しない保存的改変(例えば、本明細書に提供される保存的置換)は、HVR内で行われ得る。かかる改変は、HVR「ホットスポット」またはSDRの外側であり得る。上で提供されるバリアントVH及びVL配列のある特定の実施形態において、各HVRは、改変されていないか、または1つ、2つ、もしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有するかのいずれかである。
【0148】
変異誘発の標的とされ得る抗体の残基または領域の特定のための有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085に記載される「アラニンスキャニング変異誘発」と称される。この方法において、標的残基の残基または基(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)は、特定され、かつ中性または負に荷電されたアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)により置き換えられ、抗体と抗原との相互作用が影響を受けたかどうかを決定する。さらなる置換は、最初の置換に対する機能感受性を示すアミノ酸位置に導入され得る。
【0149】
あるいは、または加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造は、抗体と抗原との間の接触点を特定する。かかる接触残基及び隣接する残基が置換の候補として標的とされてもよく、または排除されてもよい。変異体は、スクリーニングされて、それらが所望の特性を有するかどうかが決定され得る。
【0150】
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドの範囲であるアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、及び単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入バリアントは、抗体の血清半減期を増加させる酵素(例えば、ADEPTのための)またはポリペプチドへの、抗体のN末端またはC末端の融合を含む。
【0151】
4.組換え方法及び組成物
抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載される組換え方法及び組成物を使用して産生され得る。一実施形態において、本明細書に記載される抗イディオタイプ抗体をコードする単離された核酸が提供される。かかる核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/または重鎖)をコードし得る。さらなる一実施形態において、かかる核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる実施形態において、かかる核酸を含む宿主細胞が提供される。1つのかかる実施形態において、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、これらで形質転換されている)。一実施形態において、宿主細胞は、真核生物、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ球細胞(例えば、YO、NSO、Sp20細胞)である。一実施形態において、抗PD-L1イディオタイプ抗体の作製方法が提供され、本方法は、抗体の発現にとって好適な条件下で、上記で提供されるように、抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養すること、及び任意に、宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から抗体を回復することを含む。
【0152】
抗PD-L1イディオタイプ抗体の組換え産生のために、例えば、上述のものなどの抗体をコードする核酸が単離され、宿主細胞内でのさらなるクローニング及び/または発現のために、1つ以上のベクター中に挿入される。かかる核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離され、配列決定され得る。
【0153】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞には、本明細書に記載される原核生物細胞または真核生物細胞が含まれる。例えば、抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要ではないときに細菌中で産生され得る。細菌中の抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号を参照されたい。(E.coliにおける抗体断片の発現について説明している、Charlton,Methods in Afolecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245-254も参照されたい。)発現後、抗体は、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離され得、さらに精製され得る。
【0154】
原核生物に加えて、グリコシル化経路が「ヒト化」されている菌類及び酵母株を含む糸状菌類または酵母などの真核微生物は、抗体をコードするベクターにとって好適なクローニングまたは発現宿主であり、それらは、部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)、及びLi et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006)を参照されたい。
【0155】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために昆虫細胞と組み合わせて使用され得る、多数のバキュロウイルス株が特定されている。植物細胞培養物もまた、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するための、PLANTIBODIES(商標)技術について記載する)を参照されたい。
【0156】
脊椎動物細胞もまた、宿主として使用することができる。例えば、懸濁液中で成長するように適合される哺乳動物細胞株が、有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7)、ヒト胚性腎臓株(例えば、Graham et al.,J Gen Viral.36:59(1977)に記載される293または293細胞、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載されるTM4細胞、サル腎臓細胞(CVl)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VER0-76)、ヒト子宮頸癌腫細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MOCK、バッファローラット肝臓細胞(BRL3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep02)、マウス乳房腫瘍(MMT060562)、例えばMather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載される、TRI細胞、MRC 5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR-CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))、ならびにYO、NSO、及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。抗体産生に好適なある特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268(2003)を参照されたい。
【0157】
C.アッセイ
本明細書で提供される抗PD-L1イディオタイプ抗体は、当該技術分野で既知の様々なアッセイにより、それらの物理的/化学特性及び/または生物学的活性に関して特定されるか、スクリーニングされるか、またはそれらを特徴としてよい。
【0158】
i.結合アッセイ及び他のアッセイ
一態様では、本発明の抗体は、例えば、ELISA、ウェスタンブロットなどの既知の方法によってその抗原結合活性に関して試験される。結合親和性は、当該技術分野で既知の一般的な方法によって測定され得る。一実施形態において、抗体のKが、非標識抗原の一連の滴定の存在下でFabを最小濃度の(125I)標識抗原と平衡化し、その後、抗Fab抗体でコーティングしたプレートに結合している抗原を捕捉することによってFabの抗原に対する溶液結合親和性を測定する以下のアッセイによって説明される、抗体のFabバージョン及び抗原分子によって実行される、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される(Chen,et al.,(1999)J.Mol.Biol 293:865-881)。アッセイの条件を確立するために、マイクロタイタープレート(Dynex)を50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、PBS中2(w/v)%のウシ血清アルブミンで、室温(約23℃)で2~5時間遮断する。非吸着性プレート(Nunc番号269620)中、100pMまたは26pMの[125I]抗原を、目的とするFabの段階希釈液と混合する(Presta et al.,(1997)Cancer Res.57:4593-4599における抗VEGF抗体、Fab-12の評価と一貫している)。次いで、目的とするFabを一晩インキュベートするが、このインキュベーションは、平衡が達成されることを確実にするために、より長い期間(例えば、約65時間)継続し得る。その後、室温での1時間のインキュベーションのために混合物を捕捉プレートに移動する。その後、溶液を除去し、PBS中0.1%のTween-20でプレートを8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルのシンチラント(scintillant)(MicroScint-20;Packard)を付加し、プレートをTopcountガンマ計数器(Packard)上で10分間計数する。20%以下の最大結合を付与する各Fabの濃度を競合結合アッセイにおける使用のために選択する。
【0159】
別の実施形態に従って、Kは、25℃で、10の応答単位(RU)で固定化抗原CM5チップを用いて、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000装置(BIAcore,Inc.,Piscataway,N.J.)を使用した表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。簡潔に述べると、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサチップ(CM5、BIAcore Inc.)を、供給業者の指示書に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化させる。抗原をpH4.8の10mMの酢酸ナトリウムによって5μg/ml(0.2μM)に希釈した後、5μl/分の流量で注射し、カップリングされたタンパク質の約10の応答単位(RU)を達成する。抗原の注射に続いて、1Mのエタノールアミンを注射して、未反応基を遮断する。動態測定のために、Fabの2倍段階希釈液(0.78nM~500nM)を、0.05%のTWEEN20(商標)界面活性剤を含むPBS(PBST)中、25℃で、約25μL/分の流速で注射する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)は、会合及び解離のセンサグラムを同時に適合することによって、単純な1対1Langmuir結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を使用して算出される。平衡解離定数(K)は、比率koff/konとして算出される。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによるオンレートが10-1-1を超える場合、オンレートは、ストップトフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)、または撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定される場合に、増加する抗原濃度の存在下で、25℃で、PBS中20nMの抗-抗原抗体(Fab型)(pH7.2)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加または減少を測定する蛍光消光技法を使用することによって決定することができる。
【0160】
別の態様では、競合アッセイは、抗PD-L1抗体の結合について本明細書に記載される抗PD-L1イディオタイプ抗体のうちのいずれかと競合する別の抗イディオタイプ抗体を特定するために使用されてよい。ある特定の実施形態において、かかる競合抗体は、抗PD-L1抗体の同じエピトープ(例えば、直鎖または立体構造のエピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示の方法が、Morris(1996)“Epitope Mapping Protocols,”in Afethods in Afolecular Biology vol.Humana Press,Totowa,NJ)に提供されている。
【0161】
例示的な競合アッセイにおいて、固定化PD-L1抗体は、それぞれ、抗PD-L1抗体に結合する第1の標識化抗体(例えば、第1の標識化抗PD-L1イディオタイプ抗体)、及び抗PD-L1抗体に結合することに関して第1の抗体と競合するその能力に関して試験されている第2の非標識化抗体(例えば、第2の非標識化抗PD-L1イディオタイプ抗体)を含む溶液中にインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清中に存在し得る。対照として、固定化抗PD-L1抗体は、第2の非標識化抗体ではなく第1の標識化抗体を含む溶液中にインキュベートされる。第1の抗体を抗PD-L1抗体に結合するのに許容的な条件下でインキュベーション後、過剰非結合抗体は除去され、固定化抗PD-L1抗体に関連する標識の量が測定される。固定化抗PD-L1抗体に関連する標識の量は、対照試料に対して試験試料中で実質的に低減される場合、次いでそれは、第2の抗体が、抗PD-L1抗体に結合するために第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory A1anual ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)を参照されたい。競合アッセイはまた、抗PD-L1抗体でトランスフェクトされ、細胞表面上に発現した細胞を用いて、上述の様式で、FACSで行われ得る。さらに、抗PD-L1抗体を用いたELISAはまた、競合アッセイにおいて使用され得る。
【0162】
別の態様では、ゲルシフトアッセイを用いて、本発明の抗イディオタイプ抗体と、抗PD-L1抗体などの標的抗体との相互作用を特定し得る。
【0163】
例示的なゲルシフトアッセイにおいて、抗PD-L1抗体は、抗イディオタイプ抗体で予めインキュベートされる。予めインキュベートされた抗PD-L1抗体及び抗イディオタイプ抗体で予めインキュベートされていない対照抗PD-L1抗体を、ゲル電気泳動に供し、二次抗体(例えば、IgG/Igカッパ抗PD-L1抗体に対してIgG及びIgカッパ二次抗体)でプローブ化する。予めインキュベートされた抗PD-L1抗体及び対照抗PD-L1抗体の移動性を比較し、予めインキュベートされた抗PD-L1抗体及び対照抗PD-L1抗体の移動性の違いは、抗PD-L1抗体と抗イディオタイプ抗体との相互作用を示す。
【0164】
D.抗イディオタイプ抗体を使用方法
i.使用方法
ある特定の実施形態において、抗イディオタイプ抗体のうちのいずれか、または本明細書に提供されるかかる抗体を含む組成物は、生体試料中の抗PD-L1抗体の存在の検出に有用である。ある特定の実施形態において、抗PD-L1イディオタイプ抗体のうちのいずれか、または本明細書に提供されるかかる抗体を含む組成物は、試料中の抗PD-L1抗体を定量化するのに有用である。ある特定の実施形態において、生体試料は、全血または全血成分、例えば、赤血球、白血球、血小板、血清、及び血漿など、腹水、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、唾液、痰、涙液、汗、粘液、脳脊髄液、尿、及び目的とする抗体を含有し得る人体の他の構成要素などの生物学的液体である。様々な実施形態において、試料は、任意の動物からの身体試料である。様々な実施形態において、試料は、ヒトからの試料である。
【0165】
ある特定の実施形態において、抗イディオタイプ抗体のうちのいずれか、または本明細書に提供されるかかる抗体を含む組成物は、別の分子(例えば、抗PD-L1抗体のFc領域に結合する抗体)に結合するその能力に影響することなく免疫アッセイにおいて抗PD-L1の存在の検出に有用である。
【0166】
抗PD-L1イディオタイプ抗体、またはかかる抗体を含む組成物は、ELISA、ビーズベースの免疫アッセイ、及び質量分析が挙げられるが、これらに限定されない、様々な異なるアッセイにおいて使用することができる。
【0167】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体に結合する抗イディオタイプ抗体のうちのいずれか、またはかかる抗体を含む組成物は、アッセイにおいてその干渉を低減するために、患者試料から抗PD-L1抗体を欠失し、検出するか、または分化させるために有用である。
【0168】
いくつかの実施形態において、試料は、哺乳動物からの試料である。いくつかの実施形態において、試料は、例えば、臨床試料中のヒト化抗体などの抗体を測定するとき、ヒト対象からの試料である。いくつかの実施形態において、生体試料は、臨床患者または治療的抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)で治療された患者からの生体試料である。ある特定の実施形態において、生体試料は、血清または血漿である。ある特定の実施形態において、生体試料は、臨床患者からの血清である。ある特定の実施形態において、生体試料は、尿である。ある特定の実施形態において、生体試料は、臨床患者からの尿である。
【0169】
ある特定の実施形態において、標識された抗PD-L1イディオタイプ抗体を含む組成物が提供される。標識としては、直接検出される標識または部分(蛍光標識、発色団標識、電子密度の高い標識、化学発光標識、及び放射性標識等)、ならびに間接的に、例えば、酵素反応または分子相互作用により検出される酵素またはリガンド等の部分が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な標識としては、放射性同位体32P、14C、125I、H、及び131I、希土類キレートまたはフルオレセイン及びその誘導体などのフルオロフォア、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルセリフェラーゼ(luceriferases)、例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、J3-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖質オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸塩デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化させる酵素、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはマイクロペルオキシダーゼとカップリングされた、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなどの複素環式オキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定した遊離ラジカルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0170】
ii.抗PD-L1抗体の検出のための方法及び組成物
1.ELISA
いくつかの実施形態において、抗PD-L1イディオタイプ抗体は、ELISAアッセイにおいて使用される。本明細書に記載されるアッセイは、目的とする抗体のための捕捉試薬として抗PD-L1イディオタイプ抗体を利用するELISAである。アッセイの第1のステップにおいて、目的とする抗体を含有する疑いがあるかまたはそれを含有する生体試料は、捕捉抗体が検出ステップにおいて検出され得るように、目的とする抗体を捕捉するか、または結合するように、捕捉(もしくはコーティング)抗体で接触され、インキュベートされる。検出ステップは、目的とする結合抗体のうちのいずれかで接触されるとき、存在する場合、目的とする抗体に結合する検出可能な抗体の使用を伴う。検出手段は、抗体における標識を検出するために使用され、したがって、目的とする抗体の存在または量が存在する。
【0171】
ある特定の実施形態において、アッセイは、以下のステップを利用する。
【0172】
第1のステップ
本明細書にアッセイの第1のステップにおいて、本明細書に定義される目的とする抗体を含有する疑いがあるかまたはそれを含有する生体試料は、目的とする抗体に対する抗イディオタイプ抗体である、固定化した捕捉(またはコーティング)試薬で接触され、インキュベートされる。いくつかの実施形態において、これらの抗イディオタイプ抗体は、モノクローナル抗体であり、任意の種からの抗体であり得る。いくつかの実施形態において、これらの抗イディオタイプ抗体は、齧歯動物抗体であり、さらなる実施形態において、マウスまたはラット抗体であり、さらなる実施形態において、マウス抗体である。
【0173】
様々な実施形態において、抗イディオタイプは、本明細書に開示される任意の抗イディオタイプ抗体である。ある特定の実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、3つの重鎖超可変領域(HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3)ならびに3つの軽鎖超可変領域(HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3)を含む抗体であり、(a)HVR-H1は、配列番号35のアミノ酸配列を含み、(b)HVR-H2は、配列番号36のアミノ酸配列を含み、(c)HVR-H3は、配列番号34のアミノ酸配列を含み、(d)HVR-L1は、配列番号14のアミノ酸配列を含み、(e)HVR-L2は、配列番号15のアミノ酸配列を含み、(f)HVR-L3は、配列番号16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、配列番号54の重鎖可変領域配列及び配列番号53の軽鎖可変領域配列を含む。
【0174】
別の実施形態に従って、抗イディオタイプ抗体は、3つの重鎖超可変領域(HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3)ならびに3つの軽鎖超可変領域(HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3)を含む抗体であり、(a)HVR-H1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み、(b)HVR-H2は、配列番号44のアミノ酸配列を含み、(c)HVR-H3は、配列番号42のアミノ酸配列を含み、(d)HVR-L1は、配列番号20のアミノ酸配列を含み、(e)HVR-L2は、配列番号21のアミノ酸配列を含み、(f)HVR-L3は、配列番号22のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、配列番号56の重鎖可変領域配列及び配列番号55の軽鎖可変領域配列を含む。
【0175】
別の実施形態に従って、抗イディオタイプ抗体は、3つの重鎖超可変領域(HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3)ならびに3つの軽鎖超可変領域(HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3)を含む抗体であり、(a)HVR-H1は、配列番号51のアミノ酸配列を含み、(b)HVR-H2は、配列番号52のアミノ酸配列を含み、(c)HVR-H3は、配列番号50のアミノ酸配列を含み、(d)HVR-L1は、配列番号26のアミノ酸配列を含み、(e)HVR-L2は、配列番号27のアミノ酸配列を含み、(f)HVR-L3は、配列番号28のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、配列番号58の重鎖可変領域配列及び配列番号57の軽鎖可変領域配列を含む。
【0176】
通常、固定化は、アッセイ手順前に、水に不溶なマトリクスもしくは表面への吸着(米国特許第3,720,760号)または非共有結合性もしくは共有結合性のカップリングにより(例えば、米国特許第3,645,852号またはRotmansら、J.Immunol.Methods,57:87-98(1983)中に記載されるように、例えば、硝酸及び還元剤による支持体の事前の活性化を伴うまたは伴わない、グルタルアルデヒドまたはカルボジイミドの架橋結合を用いて)、あるいはその後、例えば、免疫沈降法などの方法により、捕捉試薬を不溶化することによって達成される。いくつかの実施形態において、捕捉抗体は、ビオチンにコンジュゲートされ、ストレプトアビジンでコーティングされたマイクロタイタープレートに結合している。他の実施形態において、捕捉抗体は、HisタグまたはGSTなどのタンパク質タグにコンジュゲートされ、好適な表面、例えば、ニッケルもしくは銅でコーティングされた表面またはグルタチオンでコーティングされた表面に結合している。
【0177】
固定化のために使用される固相は、例えば、表面、粒子、多孔質マトリックスなどの形態の支持体を含む、本質的に水不溶性であり、かつ免疫測定アッセイに有用な任意の不活性支持体または担体であり得る。一般に使用されている支持体の例としては、小シート、SEPHADEX(登録商標)ゲル、ポリ塩化ビニル、プラスチックビーズ、及びポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどから製造されたアッセイプレートまたは試験管、例えば、96ウェルマイクロタイタープレート、ならびに濾紙などの粒子材料、アガロース、架橋デキストラン、及び他の多糖が挙げられる。あるいは、米国特許第3,969,287号、同第3,691,016号、同第4,195,128号、同第4,247,642号、同第4,229,537号、及び同第4,330,440号に記載される反応性水不溶性マトリックス、例えば、臭化シアン活性化炭水化物、及び反応性基質が、捕捉-試薬固定化に好適に用いられる。いくつかの実施形態において、固定化捕捉試薬は、マイクロタイタープレート上にコーティングされる。いくつかの実施形態において、使用される固相は、一度にいくつかの試料を分析するために使用され得るマルチウェルマイクロタイタープレート、例えば、NUNC MAXISORB(商標)またはIMMULONT(商標)として販売されるものなどのMICROTEST(商標)またはMAXISORP(商標)96ウェルELISAプレートである。
【0178】
固相は、非共有結合もしくは共有結合相互作用、または所望の場合、物理的結合によって結合し得る、上で定義された捕捉試薬でコーティングされる。結合技術には、米国特許第4,376,110号に記載されるもの及びそこに引用される参考文献が含まれる。共有結合の場合、プレートまたは他の固相が、室温で1時間等の当該技術分野で周知の条件下で、捕捉試薬と一緒に架橋剤とインキュベートされる。
【0179】
捕捉試薬を固相物質に結合させるために一般に使用された架橋結合剤には、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシコハク酸イミドエステル、例えば、4-アジドサリチル酸とのエステル、3,3’-ジチオビス(スクシンイミジル-プロピオン酸塩)などのジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、及びビス-N-マレイミド-1,8-オクタンなどの二官能性マレイミドが含まれる。メチル-3-((p-アジドフェニル)-ジチオ)プロピオイミデート(propioimidate)などの誘導体化剤は、光の存在下で架橋を形成することが可能である、光励起性中間体を産出する。
【0180】
96-ウェルプレートが利用される場合、それらは、典型的には、0.05Mの炭酸ナトリウムなどの緩衝液中で、少なくとも約10時間、インキュベーションにより希釈される、捕捉試薬の混合物でコーティングされ得る。いくつかの実施形態において、インキュベーションは、少なくとも一晩、約4~20℃、または約4~8℃の温度で、約8~12、約9~10、または約9.6のpHである。さらに短いコーティング時間(1~2時間)が望ましい場合、ニトロセルロースフィルターの底面を有する96ウェルプレート(Millipore MULTISCREEN(商標))を使用するか、または37℃でコーティングすることができる。プレートは、アッセイ自体に先んじて長期間積み重ねてコーティングされ、次いで、アッセイが、手動で、半自動で、または自動で、例えば、ロボット工学を使用して、いくつかの試料で同時に行われ得る。
【0181】
次いで、コーティングされたプレートは、典型的には、結合部位に非特異的に結合して、それを飽和させる遮断剤で処理されて、遊離リガンドのプレートのウェル上の過剰部位への望ましくない結合を阻止する。この目的に適切な遮断剤の例としては、例えば、ゼラチン、ウシ血清アルブミン、卵アルブミン、カゼイン、及び脱脂乳が挙げられる。遮断処理は、典型的には、周囲温度の条件下で、約1~4時間または約1.5~3時間行われる。
【0182】
コーティング及び遮断後、適切に希釈された標準物質(目的とする精製した抗体)または分析される生物学的試料が固定化相に添加される。ある特定の実施形態において、希釈率は、約5~15重量%、または約10重量%である。この目的のために希釈に使用され得る緩衝液としては、(a)0.5%のBSA、0.05%のTWEEN20(商標)洗剤(P20)、0.05%のPROCLIN(商標)300抗生物質、5mMのEDTA、0.25%の3-((3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)-1-プロパンスルホネート(CHAPS)界面活性剤、0.2%のベータ-ガンマグロブリン、及び0.35MのNaClを含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、(b)0.5%のウシ血清アルブミン(BSA)、0.05%のP20、及び0.05%のPROCLIN(商標)300を含有するPBS(pH7)、(c)0.5%のBSA、0.05%のP20、0.05%のPROCLIN(商標)300、5mMのEDTA、及び0.35MのNaClを含有するPBS(pH6.35)、(d)0.5%のBSA、0.05%のP20、0.05%のPROCLIN(商標)300、5mMのEDTA、0.2%のベータ-ガンマグロブリン、及び0.35MのNaClを含有するPBS、ならびに(e)0.5%のBSA、0.05%のP20、0.05%のPROCLIN(商標)300、5mMのEDTA、0.25%のCHAPS、及び0.35MのNaClを含有するPBSが挙げられる。PROCLIN(商標)300は、保存剤として作用し、TWEEN20(商標)は、非特異的な結合を除去するために界面活性剤として作用する。
【0183】
用いられる捕捉試薬の量は、標準物と比較して良好なシグナルを与えるのには十分大きいが、試料中の最大の予測されたレベルの目的とする抗体と比較して過剰なモル濃度ではない。ある特定の実施形態において、添加される生体試料の量は、固定化された捕捉試薬が、試料の適切な希釈後の生体試料中に予測される目的とする遊離抗体の最大モル濃度の過剰なモル濃度である。この予測されたレベルは、主として、分析される特定の生体試料中の目的とする遊離抗体の濃度レベルと患者の臨床症状との間におけるいずれかの既知の相関に依存する。したがって、例えば、成人患者は、血清中にかなり高い最大の予想された濃度の目的とする遊離抗体を有し得るのに対し、子供は、与えられた用量に基づいて血清中により低いレベルの目的とする遊離抗体を有することが予想されるであろう。
【0184】
捕捉試薬の濃度は、生体試料の必要な希釈を考慮にいれた、目的とする抗体の目的とする濃度範囲によって決定され得る。捕捉試薬の最終濃度はまた、目的とする範囲にわたってアッセイ感度を最大にするために経験的に決定され得る。概して、モル過剰は、試料の適当な希釈の後、生体試料中の目的とする抗体の最大の予測されたモル濃度の適切に約10倍未満である。
【0185】
試料及び固定化捕捉試薬のインキュベーションの条件は、アッセイ感度を最大にし、解離を最小限に抑えるように、かつ試料中に存在する目的とする任意の抗体が固定化捕捉試薬に結合することを確実にするように選択される。インキュベーションは、約0℃~約40℃の範囲内にあり、例えば、室温でまたはほぼ室温で、完全に一定の温度で達成される。インキュベーションの時間は、概して、約10時間を超えない。様々な実施形態において、インキュベーション時間は、捕捉試薬への目的とする抗体の結合を最大にするために、室温でまたはほぼ室温で、約0.5~3時間、または約1.5~3時間である。生物学的体液中のプロテアーゼが目的とする抗体を分解することを妨げるために、プロテアーゼ阻害剤が添加される場合、インキュベーションの持続時間は、さらに長くなり得る。
【0186】
この段階で、インキュベーション混合物のpHは、通常、約4~9.5の範囲内であるか、または約6~9、または約7~8の範囲内であるであろう。インキュベーション緩衝液のpHは、捕捉されるべき目的とする抗体への捕捉試薬の特異的な結合の有意なレベルを維持するために選択される。様々な緩衝液は、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩、TRIS-HCl、またはTRIS-リン酸塩、酢酸塩、バルビタールなどを含む、このステップ間、所望のpHを達成及び維持するために使用され得る。用いられた特定の緩衝液は、本発明にとって重要というわけではないが、個々のアッセイにおいてある緩衝液がその他の緩衝液より好ましくあり得る。
【0187】
任意の第2のステップ
アッセイ方法の任意の第2のステップにおいて、生体試料は、目的とする捕捉されなかった抗体を除去するために、固定化した捕捉試薬から分離される(例えば、洗浄することによって)。洗浄のために用いられる溶液は、概して、考慮すべき事項により決定されるpHを持つ緩衝液(「洗浄緩衝液」)であり、約6~9のpH範囲を持つインキュベーションのステップのための上述の緩衝液である。洗浄は、3回以上行われ得る。洗浄の温度は、概して、冷蔵庫の温度から中程度の温度であり、アッセイの期間中維持される一定温度を有し、典型的には、約0~40℃、または約4~30℃である。例えば、洗浄緩衝液は、洗浄前に貯蔵庫内で4℃の氷中に置かれ得、プレート洗浄機がこのステップで利用され得る。架橋結合剤または他の好適な薬剤はまた、目的とする捕捉抗体が後のステップにおいてある程度解離することに懸念がある場合、結合したばかりの目的とする抗体が捕捉試薬に共有結合的に接着されることを可能にするために、この段階で添加されてもよい。
【0188】
第3のステップ
次のステップにおいて、存在する目的とする任意の結合抗体と固定化した捕捉試薬を、約20~40℃または約36~38℃の温度で、検出可能な抗体と接触させ、2つを接触するための正確な温度及び時間は、主に用いられる検出手段に応じて異なる。例えば、4-メチルウンベリフェリル-β-ガラクトシド(MUG)、ストレプトアビジン-HRP、またはストレプトアビジン-β-ガラクトシダーゼを、検出のための手段として使用するとき、接触は、シグナルを最大限に増幅するために、一晩(例えば、約15~17時間またはそれ以上)を行われ得る。検出可能な抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体であり得るが、好ましくは、検出可能な抗体は、バックグラウンドノイズを低減させるために、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、同じ抗イディオタイプ抗体は、アッセイにおいてコーティングまたは検出のために使用される。他の実施形態において、異なる抗イディオタイプ抗体は、コーティングまたは検出のために使用され得、これらは、バックグラウンドノイズを最小限にするために選択される。
【0189】
いくつかの実施形態において、検出可能な抗体は、ヒト抗体に結合する非ヒト種からの抗体である。いくつかの実施形態において、検出可能な抗体は、抗huIgG Fc抗体である。いくつかの実施形態において、検出可能な抗体は、マウス抗huIgG Fcγ抗体である。いくつかの実施形態において、検出可能な抗体は、直接検出可能である。ある特定の実施形態において、検出可能な抗体は、ビオチン化される。このような場合、ビオチン化標識のための検出手段は、アビジンまたはストレプトアビジン-HRPであり得、検出手段の読み出しは、蛍光測定または比色測定であり得る。いくつかの実施形態において、抗体は、HRPにコンジュゲートされ、検出手段は、比色測定である。
【0190】
(上記のように)期待された遊離抗体の最大濃度に関して検出可能な抗体のモル過剰は、それを洗浄した後に、プレートに添加される。この抗体(直接的または間接的に検出可能である)は、あらゆる抗体を用いることができるが、モノクローナル抗体である。検出可能な抗体の親和性は、少量の目的とする遊離抗体を検出することができるのに十分高くなくてはならないが、目的とする抗体を捕捉試薬から引き出すほど高くない。
【0191】
第4のステップ
アッセイ方法の最終ステップにおいて、現在、捕捉試薬に結合している試料からの目的とするあらゆる遊離抗体のレベルは、検出可能な抗体のための検出手段を用いて測定される。生体試料が臨床患者からの生体試料である場合、測定ステップは、既知の量と比較した目的とする抗体のレベルを決定するために、上の3つのステップの結果として生じる反応物を標準曲線と比較することを含む。
【0192】
固定化捕捉試薬に添加される抗体は、直接標識されるか、または過剰な第1の抗体を洗い流した後に第1の抗体の動物種のIgGに対して指向されたモル過剰の第2の標識抗体を添加することによって間接的に検出されるかのいずれかである。後者の間接アッセイでは、第1の抗体に対する標識された抗血清が試料に添加されて、標識抗体をインサイチュで産生する。
【0193】
第1の抗体または第2の抗体のいずれかに用いられる標識は、抗イディオタイプ抗体への目的とする遊離抗体の結合に干渉しない任意の検出可能な官能性である。
【0194】
好適な標識の例は、蛍光色素、化学発光及び放射性標識などの直接検出され得る部分、ならびに検出されるように反応されるかまたは誘導体化されなければならない酵素などの部分を含む、免疫アッセイで用いるために知られている多数の標識である。かかる標識の例としては、放射性同位体32P、14C、125I、H、及び131I、希土類キレートまたはフルオレセイン及びその誘導体などのフルオロフォア、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルセリフェラーゼ(luceriferases)、例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、HRP、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖質オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸塩デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化させる酵素、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはマイクロペルオキシダーゼとカップリングされた、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなどの複素環式オキシダーゼ、ビオチン(例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ストレプトアビジン-HRP、及びストレプトアビジン-β-ガラクトシダーゼによってMUGで検出可能)、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定した遊離ラジカルなどが挙げられる。
【0195】
これらの標識をタンパク質またはポリペプチドに共有結合させる従来の方法が利用可能である。例えば、カップリング剤、例えば、ジアルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミド、ビス-イミデート、ビス-ジアゾ化ベンジジンなどを使用して、抗体を、上述の蛍光標識、化学発光標識、及び酵素標識でタグすることができる。例えば、米国特許第3,940,475号(蛍光定量法)及び米国特許第3,645,090号(酵素)、Hunter et al.,Nature,144:945(1962)、David et al.,Biochemistry,13:1014-1021(1974)、Pain et al.,J.Immunol.Methods,40:219-230(1981)、及びNygren,J.Histochem.and Cytochem.,30:407-412(1982)を参照されたい。
【0196】
酵素などのかかる標識の抗体へのコンジュゲーションは、免疫アッセイ技法の当業者にとって標準の操作手技である。例えば、O’Sullivan et al.“Methods for the Preparation of Enzyme-antibody Conjugates for Use in Enzyme Immunoassay,”in Methods in Enzymology,ed.J.J.Langone and H.Van Vunakis,Vol.73(Academic Press,New York,New York,1981),pp.147-166を参照されたい。好適な市販の標識抗体もまた、使用され得る。
【0197】
最後に標識された抗体を添加した後、結合している抗体の量は、過剰な結合していない標識抗体を洗浄により除去し、その後、標識に適切な検出方法を用いて結合した標識の量を測定し、測定された量を生体試料中の目的とする抗体の量と相関させることによって決定される。例えば、酵素の場合、発現及び測定された色の量は、存在する目的とする抗体の量の直接測定値となるであろう。具体的には、HRPが標識である場合、色は、450nmの読み出し波長及び620または630nmの参照波長を用いて、基質TMDを用いて検出され得る。
【0198】
一例では、第1の標識されていない抗体に対して指向された酵素標識された第2の抗体が固定化相から洗浄された後、色または化学発光が、固定化捕捉試薬を酵素基質とインキュベートすることによって発現及び測定される。次いで、目的とする抗体の濃度は、並行して目的とする標準抗体によって生成された色または化学発光と比較することによって計算される。
【0199】
2.質量分析
いくつかの実施形態において、抗PD-L1イディオタイプ抗体は、抗PD-L1抗体のための質量分析アッセイにおいて使用される。本明細書に記載されるアッセイは、生体試料からの抗PD-L1抗体の免疫親和性捕捉のための抗PD-L1イディオタイプ抗体を利用する。試料は、質量分光法によって抗PD-L1抗体の定量化の前に、クロマトグラフィーなどの分離技術を用いてさらに処理され得る。いくつかの実施形態において、特徴のあるペプチド断片は、タンパク質分解によって産生され、選択されるシグネチャーペプチドは、抗PD-L1抗体のための代理分析物として測定される。ある特定の実施形態において、代理ペプチドは、タンデム質量分光法(MS/MS)による検出によるHPLCを用いて定量化される。
【0200】
a.生体試料の処理
抗PD-L1抗体は、ヒトなどの哺乳動物に投与されるか、または組織、細胞培養、血漿、もしくは血清から選択される生物学的起源と接触させる。血清及び血漿試料からの分析は、それらの高いプロテオームバックグラウンド、すなわち、多くのタンパク質及び他の分析物のため、問題があることが知られている。ある特定の期間後、投与から数分、数時間、数日後の範囲にわたって、抗PD-L1抗体またはその断片を含む生体試料が、回収される。生体試料は、シリンジまたはカニューレによって液体を抽出することを含む、任意の手段によって回収され得る。生体試料は、血清、血漿などの血液もしくは血液生成物、または目的とする抗体を含有する他の体液であり得る。
【0201】
生体試料は、製剤化すること、固定化すること、遠心分離、単離すること、消化すること、血液細胞凝固を誘発もしくは防止すること、加水分解すること、または精製することを含む、従来の手順によって分析試料を形成するために処理される。生体試料の処理は、不純物を除去し、試料の不均一性を低減させるのに役立ち、試料成分の分離、またはあいまいなデータ収集もしくは分析を妨げ得る。あるいは、または加えて、処理は、試料の取扱いを単純化し、分解から保護し、試料体積を最小限にするか、または質量分光分析において目的とする試料成分(分析物)について選択する。あるいは、または加えて、処理は、生体試料を、薬物代謝物または薬物動態効果を決定する際に目的とする、代謝産物、断片、または誘導体に変化させる。
【0202】
b.処理した分析試料の捕捉
抗体は、投与した抗PD-L1抗体に対して特異的な固定した抗イディオタイプ抗体を有する免疫親和性ビーズに捕捉される。様々な実施形態において、抗イディオタイプは、本明細書に開示される任意の抗イディオタイプ抗体である。投与した抗PD-L1抗体に対して特異的な抗イディオタイプ抗体は、当該技術分野で知られている任意の好適な方法を用いて免疫親和性ビーズにコンジュゲートされ得る。いくつかの実施形態において、投与した抗PD-L1抗体に対して特異的な抗イディオタイプ抗体は、ビオチン化され、強力なビオチン-ストレプトアビジンの相互作用(K=10-15M)を通してストレプトアビジンでコーティングした常磁性ビーズに結合している。ストレプトアビジンでコーティングした常磁性ビーズを使用する理由には、(i)強力なストレプトアビジン-ビオチンの相互作用(K=10-15M)、(ii)固定化したストレプトアビジン/ビオチン化した分析物は、証明された方法である、(iii)高い結合能力(無傷のタンパク質に対して十分な材料)、(iv)低い非特異的結合、(v)質量分析に適合する溶媒による試料の溶出、(vi)ビーズからの良好な試料回収、ならびに(vii)使いやすさ及び自動化に適していることが含まれる。
【0203】
免疫親和性ビーズは、多孔質ポリマーモノリスを含み得、捕集リザーバと流体が流れるように連通しているフロースルーチャネルに設けられ得る。ビーズは、生物学的起源からの試料が、一端またはオリフィスに導入され、試料が他端またはオリフィスから溶出されるカラムまたは漏斗のようなフロースルー容器に収容され得る。免疫親和性ビーズは、それぞれが別個の捕集リザーバに連通している複数のフロースルー容器に分布され得る。容器及びリザーバは、12×8の行列の96マイクロタイターウェル形式、または自動化及び結果の再現性のために24×16の行列の384マイクロタイターウェル形式に構成され得る。
【0204】
抗PD-L1抗体を受容した哺乳動物(生物学的起源)からの血漿または血清試料は、手作業のピペット操作または自動化されたロボット分配によってビーズに塗布する。
【0205】
ビーズは、ウェルまたは他の容器に設けられ、または試料が一端またはオリフィスに導入され、洗浄溶出物または溶出試料が他端またはオリフィスから溶出されるカラムまたは他のフロースルー装置に収容され得る。ビーズ結合抗イディオタイプ抗体に対して特異的な試料成分が結合可能である。ビーズを洗浄して非特異的タンパク質及び他の非特異的試料成分をすすぐ。結合抗体は、ビーズ上で、例えば、PNGaseFで脱グリコシル化され得る。結合した試料成分は、試料プレート中に溶出され得、分離されたものは容器またはウェルに収容される。次いで、溶出した試料は、手作業のピペット操作によりまたはロボット移送によって対処され、逆相クロマトグラフィーによって分離され得、分離された試料成分が質量分析計によって分析される。
【0206】
いくつかの実施形態において、生体試料は、プロテアーゼで消化され得る。特徴のあるペプチド断片は、タンパク質分解によって産生され、選択されるシグネチャーペプチドは、抗PD-L1抗体のための代理分析物として測定される。例示的な実施形態において、生体試料は、トリプシン消化で消化され得る。トリプシン消化では、試料は、DTTで還元され、ヨード酢酸ナトリウムでS-カルボキシメチル化され、次いで、トリプシンで消化され得る。消化された試料は、分離方法、例えば、逆相HPLC、例えば、Nucleosil C18カラム、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、例えば、TSK 3000SWxLカラム、またはTSKボロン酸カラムを使用するボロン酸アフィニティクロマトグラフィーによって分析され得る。
【0207】
c.試料成分の分離
分析試料を形成するために、生体試料は、1つを超える試料成分の分離に影響を及ぼすように適用され得る。分離方法は、親和性、クロマトグラフィー、及び電気泳動方法を含む。親和性方法は、親和性クロマトグラフィー、吸着、及び固定化親和性マトリックスを含む。クロマトグラフィー法は、HPLC、疎水性相互作用(HIC)、アニオン交換、カチオン交換、逆相、順相、イオン対逆相、薄層、キャピラリーフロー、及びサイズ排除を含む。電気泳動方法は、単一次元、スラブゲル、キャピラリー、ポリアクリルアミド、変性、天然、自由溶液、紙、2次元、等電点電気泳動、及び勾配電位を含む。他の分離方法は、透析、遠心分離、遠心沈降、浮選、沈降、免疫沈降、及びゲル濾過を含む。
【0208】
分離方法は、溶出時間、疎水性、親水性、泳動時間、割合、速度、クロマトグラフィー保持時間、溶解度、分子容積またはサイズ、正味荷電、荷電状態、イオン電荷、等電点、解離定数(pKa)、抗体親和性、電気泳動移動度、イオン化ポテンシャル、双極子モーメント、水素結合能、及び気相中におけるイオン移動度が含まれるが、これらに限定されない、1つ以上の物理化学的性質による生体試料の成分の分離をもたらし得る。
【0209】
質量分析計入口装置中へのキャピラリーフロー注入による低い流量により、質量検出の感度を高め、例えば、無傷なタンパク質及び抗体のような低濃度分析物及び高分子量種を検出し、特徴付けることができる。
【0210】
d.分離した試料成分の質量分析
質量分光分析のための試料の調製は、概して、既知の技術に従って行われ得る。“Modem Protein Chemistry:Practical Aspects”,Howard,G.C.and Brown,W.E.,Eds.(2002)CRC Press,Boca Raton,Floridaを参照されたい。
【0211】
本発明の方法は、生体試料から由来する抗体混合物の分析に適しており、成分を連続的にまたはバッチ形式で溶出し、または質量分析計によって直接検出される親和性またはクロマトグラフィーを含む1つ以上のプロセスにより、混合物の異なった化学成分が、最初に単離され、分離され、または部分的に分離される。断片化、脱アミド、糖化、酸化、部分的配列情報、例えばN末端及びC末端、二量体及び凝集状態を含む、抗体の様々な構造的特徴及び特性を、質量分光分析から解明することができる。生体試料中の1つ以上の化学成分は、投与された抗PD-L1抗体が既知の配列、構造、及び分子量のものであるため、その正確な質量の測定によって高度に特異的な形で特徴付けることができる。
【0212】
高質量精度、高感度、及び高解像度を可能にする様々な質量分光システムが当該技術分野で知られており、本発明の方法において用いることができる。かかる質量分光計の質量分析器としては、四重極型(Q)、飛行時間型(TOF)、イオントラップ、磁場型またはFT-ICRまたはその組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。質量分析計のイオン源は、主として試料分子イオン、または疑似分子イオン、及びある特定の特徴付け可能な断片イオンを生じなければならない。かかるイオン源の例は、大気圧イオン化源、例えば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)及び大気圧化学イオン化(APCI)及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)を含む。ESI及びMALDIは、質量分光分析に対してタンパク質をイオン化するための二種の最も一般的に用いられている方法である。ESI及びAPCIは、LC/MSによる小分子の分析のために最も一般的に使用されるイオン源技術である(Lee,M.“LC/MS Applications in Drug Development”(2002)J.Wiley & Sons,New York)。
【0213】
表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI)は、高スループットの質量分析を可能にする表面ベースのイオン化技術の一例である(米国特許第6,020,208号)。典型的には、SELDIは、タンパク質及び他の生体分子の複雑な混合物を分析するために使用される。SELDIは、溶液中の例えばタンパク質のような分析物と相互作用する「タンパク質チップ」などの化学的に反応性の表面を用いる。かかる表面は、分析物と選択的に相互作用し、それらをその上に固定化する。したがって、本発明の分析物は、チップ上で部分的に精製され、次いで、質量分析計で迅速に分析され得る。基質表面上の異なった部位に複数の反応性部分を提供することによって、スループットが増大され得る。
【0214】
機能的システムでは、質量分析計は、目的とする化学種の質量を、その正確なまたは計算された質量の20ppm以内まで、典型的にはその正確なまたは計算された質量の5ppm以下まで精確に測定するであろう。市販の質量分析計は、質量スペクトルシグナル強度またはピーク面積が定量的に代表することを確実にするために混合物中の複数の成分について十分なスペクトルを獲得することを可能にする頻度で同時に全質量スペクトルをサンプリングし、記録することができる。これはまた、全ての質量に対して観察される溶出時間が質量分析計によって変更または歪められないことを確実にし、定量的測定値が大量の一過性シグナルを測定する必要性によって損なわれないことを確実にするのに役立つであろう。
【0215】
分析的変動は、標的分析物の物理化学的特性と類似の物理化学的特性を有する内部標準(IS)の使用によって修正され得る。(Mesmin et al.(2011)Bioanalysis 3:477-480)。いくつかの実施形態において、シグネチャーペプチドは、抗PD-L1抗体のための代理分析物として測定される場合、シグネチャーペプチドに対応する安定同位体標識化(SIL)ペプチドは、内部標準として使用され得る。(Hagman et al.(2008) Anal.Chem.80:1290-1296、Mesmin et al.(2010)Rapid Commun.Mass Spectrom.24:2875-2884)。
【0216】
3.エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI)
高感度が、増加した分析物イオン化効率のために低流量で達成される(Gale et al(1993)Rapid Commun.Mass Spectrom.7:1017)。したがって、分範囲当たりナノリットルの流量で試料含有液体のエレクトロスプレー注入を実施することによって、適切な検量後に正確な定量がもたらされ、質量分光分析と併用される場合、液中に含まれる分析物に対して高感度がもたらされる。高選択性及び感度をもたらし、MSに対する前工程としての正確な定量分析をもたらす小型化され、統合されたマイクロカラム及び親和性クロマトグラフィー吸着剤を有するマイクロカラムアレイを含むシステム及び装置が報告されている(米国特許第6,811,689号、米国特許第6,020,208号、米国特許第6,579,719号)。
【0217】
抗体などの比較的高分子量の化合物の質量は、ほとんどの質量分析計によって容易に決定される質量電荷比(m/z)(2000~3000の典型的なm/z範囲)で検出され得る。エレクトロスプレーイオン化質量分析ESI-MSは、具体的には、荷電、極性、または塩基性化合物に、また多重に荷電した化合物を優れた検出限界で分析するために適している。したがって、ESIは、大きな生体分子、例えば、150,000以上の分子量(MW)の抗体及び抗体-薬物コンジュゲートの検出及び特徴付けを可能にする。高分子量イオンを用いると、一連の多重に荷電した分子イオンが典型的には観察される。陽イオンの分子量は、測定されたm/z比に電荷数(n)を掛け、カチオン質量(C+)にイオン上の電荷数(n)を掛けたものを引くことによって決定される。
【0218】
ESI法は、インターフェースレンズ電位を制御することによって断片化の有無を制御することを可能にする。エレクトロスプレーイオン化(ESI)は、液体分離方法(前工程)ならびに質量分光検出法(後工程)と適合性がある(“Electrospray Ionization Mass Spectrometry:Fundamentals,Instrumentation,and Applications”,Cole,R.B.,Ed.(1997)Wiley,New York。
【0219】
ESI-MSデータは、多数のスキャンを併せて平均化し、データを平滑化して良好なピーク強度及び形状をもたらすことによって獲得され得る。低分子量化合物では、観察される最も多いピークは、しばしば、陽イオンモードでは[M+H]+イオン、陰イオンモードでは[M-H]-である。二重及び三重に荷電したイオンならびに二量体もまた、観察され得る。二重に荷電した陽イオンは、質量(MW+2C+)/2に観察され、MWは分子量であり、C+は、H、Na、またはNH4などのイオン化陽イオンである。非常に低分子量の化合物を除いて、検出されるイオンは、多重に荷電されるであろう。ESIのソフトな(低イオン化電位)条件のため、典型的には分子イオンのみが観察される。ESIスペクトルは、イオンが有する様々な電荷数のため、質量対電荷比が異なるいくつかの分子イオンピークを有し得る。
【0220】
試料、例えばADCまたは他の生体分子の希釈溶液は、ESI-MS分析のための皮下注射針を通してゆっくりとポンプ移送され得る。試料は、フロー注入またはLC/MSを介して導入され得る。典型的な流量は、毎分1マイクロリットル(μl)未満から毎分約1ミリリットル(ml)までの範囲である。ESIは、さもないと蒸発またはイオン化が困難な大きな生体分子に特に適している。針は、高電圧に保たれ、針端部の強電場が噴霧された溶液を荷電し、荷電した液滴を生じる。荷電した液滴は、水を蒸発させ、小オリフィスを通じて真空チャンバー中に移動する分子イオンを最終的に生じる。溶媒蒸発の過程中に、非共有的に結合した複合体が溶液から気相に移動される。(Huら(1994))。
【0221】
穏やかな脱溶媒和条件は、概して、無傷な気相複合体を維持するために必要とされる。イオンが完全に脱溶媒和されることを確実にするためにオリフィスを加熱してもよい。あるMSシステムは、向流の加熱ガスを用い得る。荷電した液滴は、皮下注射針から放出され、真空チャンバーに入る前に溶媒を蒸発させるにつれて収縮する。熱及びガス流は、脱溶媒和を促進するために使用され得る。ESI測定に対して必要とされる試料の量は、小さなキャピラリーエレクトロスプレーエミッター、チップの使用により液の流れを減少させることによって低減させることができ、ナノエレクトロスプレーとして知られているプロセスである。ナノエレクトロスプレー法は、1μlの試料に対して約10~30分間、一定のシグナルを産生し得る低い流量は、イオン効率を増加させ、イオン抑制を低減させることが示されている。ナノエレクトロスプレー法は、しばしばMS/MSタンパク質研究に使用される(Komer et al(1996)J.Am.Soc.Mass Spectrom.7:150-156、Mann,M.and Wilm,M.(1996)Anal.Chem.68:1-8。
【0222】
タンパク質のESIは、分子量が増加するにつれて増加する傾向にある電荷数を有する多重に荷電したイオンを産生する。与えられたイオン種上の電荷数は、例えば、(i)一電荷が異なる2つの荷電状態を比較し、連立方程式を解くこと、(ii)同じ電荷を有するが異なる付加質量を有する種を探すこと、及び(iii)分離された同位体クラスターに対して質量対電荷比を調べることのような方法によって決定することができる。ESI及びESI-MSの方法ならびにこれらの方法を実施するために必要とされるパラメータは、当該技術分野でよく知られている。エレクトロスプレーイオン化法の穏やかさは、無傷な抗体コンジュゲートを質量分析法によって直接検出することを可能にする。
【0223】
一実施形態において、タンパク質、抗体、抗体断片、または抗体コンジュゲート(大きな分子)のQ1質量スペクトルが、方法の一部として実施される。大きな分子の適切な質のQ1質量スペクトルを得ることができる。タンパク質エンベロープがシフトする可能性があるので、クロマトグラフィーに使用される全ての溶媒が新鮮にされ、スペクトルエンベロープを観察された範囲に位置付けるために溶出溶媒に酸が加えられる。100,000超の質量単位のタンパク質には、ギ酸のような酸を、溶出溶媒、例えば溶媒A(水)とB(アセトニトリル)の両方の溶媒に対して、約0.1%(体積)で使用することができる。より強い酸、例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)は、100,000未満の質量単位を有するタンパク質に対してA及びBの溶媒に対して0.05%(体積)のTFAで使用することができる。ギ酸の量が減少すると、無傷なグリコシル化抗体、トラスツズマブがより多くの電荷を拾い上げ、エンベロープをさらに左に、観察された範囲のm/z(1800~3000m/z)にシフトさせる。クラスター分離(DP)電位が約30~120Vから約70~190Vまで増加すると、抗体上の電荷がさらになお増加する。したがって、印加される電圧、溶媒組成、及びイオン対形成剤は、考慮し、調節すべき因子である。クラスター分離(DP)を増加(勾配付け)させて、最良の電荷イオン範囲を選択するのに十分な分解能を獲得することができる。線形性を、広範囲のm/zにわたって得ることができる。抗体の脱グリコシル化は、無傷な抗体または重鎖、断片またはADCの定量を支援する。グリコシル化は、イオン化効率を低下させるのに貢献し、よって感度を減少させる。抗体または抗体断片コンジュゲートを定量化するとき、抗体の脱グリコシル化が質量スペクトルの不均一性を低減させ、感度を増大させ、よって分析を単純化し得る。
【0224】
逆重畳積分表を使用して、定量される各種に対して正確な質量対電荷比(m/z)を決定する。逆重畳積分ソフトウェアアプリケーション、例えば、Analyst.TM.QS(Applied Biosystems,Foster City,Calif.)は市販されており、及び/または質量分析器とともに提供される。逆重畳積分ソフトウェアは、概してユーザに逆重畳積分質量の表ならびにこれらの質量を計算するために使用されるm/zイオンの副表を提供する。
【0225】
iii.M-タンパク質検出
多発性骨髄腫(MM)は、骨髄中の形質細胞のがんである。多発性骨髄腫は、M-タンパク質及び他の免疫グロブリン(抗体)及びβ-2-ミクログロブリンが挙げられるが、これらに限定されない、血液、尿、及び臓器において高レベルのタンパク質を引き起こす。パラタンパク質としても知られている、モノクローナルタンパク質に対して短い、M-タンパク質は、骨髄腫細胞によって産生され、多発性骨髄腫に罹患しているほとんど全ての患者の血液または尿中に見出され得る。
【0226】
レナリドマイド(Revlimid(登録商標))などの免疫調節薬物は、新たに診断された患者、化学療法または移植に効果がなかった進行性疾患患者及び再発または難治性多発性骨髄腫患者の骨髄腫を治療するための重要な選択肢として知られるようになっている。別の強力な免疫調節薬は、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン(ポマリドマイド、Actimid(登録商標))である。場合によっては、かかる薬剤は、標準的な化学療法剤と組み合わせて使用される。例えば、レナリドミドとデキサメタゾンの併用は、前治療を少なくとも1回受けた多発性骨髄腫患者の治療に対して最近認められている。ポマリドミドも、デキサメタゾンと併せて投与することができる。他の治療と併せて、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))は、多発性骨髄腫の療法として複数の臨床試験において試験されている。
【0227】
国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)は、血清タンパク質電気泳動(SPE)、及び免疫固定電気泳動(IFE)、骨髄形質細胞の割合、ならびに遊離軽鎖(FLC)に比率による血清/尿M-タンパク質レベルの変化を含む、MMにおける治療に対する臨床反応に対する基準を構築している。IMWG基準による完全奏功(CR)を有すると分類される患者のために、血清及び尿は、IFE及びSPEによって判定されるように、M-タンパク質に対して陰性でなければならず、骨髄形質細胞は、5%未満でなければならない。MMの治療は、治療的モノクローナル抗体の導入とともに進化している。SPE及びIFEは、それぞれ、定量化し、免疫グロブリンのクローナル性質を特徴付けるために使用されるため、これらのアッセイは、治療中に使用されるモノクローナル抗体による干渉に供される。本発明の抗イディオタイプ抗体は、Mタンパク質を検出するために臨床アッセイ中、生体試料中の抗PD-L1抗体をシフトするために使用することができる。
【0228】
免疫固定電気泳動(IFE)
免疫固定電気泳動(IFE)は、当該技術分野で知らされており、第1の段階においてアガロースゲルタンパク質電気泳動、及び第2の段階において免疫沈降を用いた2つの段階手順である。分析物は、任意の生体試料であり得る。好ましい実施形態において、分析物は、血清、尿、または脳脊髄液である。一実施形態において、IFEは、(a)アガロースゲル上の電気泳動によってタンパク質を分離するステップと、(b)電気泳動したタンパク質の免疫固定(免疫沈降)を行うステップであって、適切な電気泳動の泳動トラックは、個々の抗血清とオーバーレイであり、抗血清はゲルに拡散し、存在するとき、対応する抗原を沈殿させ、参照トラックのタンパク質は、固定剤で固定させる、免疫固定(免疫沈降)を行うステップと、(c)ブロッティング及び洗浄によって沈殿されていない可溶性タンパク質をゲルから除去するステップであって、抗原-抗体複合体の沈降素は、ゲルマトリックス内に閉じ込められる、除去するステップと、(d)染料によって沈殿したタンパク質を可視化するステップと、を含む。いくつかの実施形態において、免疫固定電気泳動プロセスは、(a)電気泳動ゲル上の少なくとも2つの適用領域に試料を適用することと、(b)ゲルを電気泳動させることと、(c)電気泳動したゲル上にテンプレートを整列させることであってテンプレートは、各電気泳動した領域に対応するテンプレートスロットを有する、整列させることと、(d)原位置でタンパク質を固定することができる組成物を少なくとも1つのテンプレートスロットに適用し、少なくとも1つの残りのテンプレートスロットに一方のタンパク質と反応させることができる抗血清を適用することと、(e)ステップ(d)の結果として得られた生成物をインキュベートすることと、(f)テンプレートを、インキュベートした電気泳動ゲルから除去することと、(g)ステップ(f)のインキュベートした電気泳動ゲルを洗浄することと、(h)ステップ(g)の洗浄したゲルを乾燥させることと、(i)ステップ(h)の乾燥させたゲルを染色させることと、(j)ステップ(i)の染色したゲルを脱色することと、(k)ステップ(j)の脱色したゲルを乾燥させることと、(l)ステップ(k)の乾燥させたゲルを分析することと、を含む。
【0229】
いくつかの実施形態において、方法は、生体試料中の抗PD-L1抗体を検出するために使用される。いくつかの実施形態において、本方法は、(a)生体試料を、抗イディオタイプ抗体を抗PD-L1抗体に結合し、複合体を形成することを可能にする条件下で、本明細書に記載される抗イディオタイプ抗体または組成物と接触させることと、(b)電気泳動ゲルを充填し、免疫固定電気泳動によって、抗イディオタイプ抗体と接触している生体試料中のタンパク質の泳動を抗イディオタイプ抗体と接触していない生体試料と比較することと、を含み、抗イディオタイプ抗体と接触させる試料と、抗イディオタイプ抗体と接触していない試料との間のバンドの泳動の違いは、生体試料中の抗PD-L1抗体の存在を示す。
【0230】
いくつかの実施形態において、本方法は、生体試料中のM-タンパク質を検出するために使用される。いくつかの実施形態において、本方法は、(a)生体試料を、抗イディオタイプ抗体を抗PD-L1抗体に結合し、複合体を形成することを可能にする条件下で、本明細書に記載される抗イディオタイプ抗体または組成物と接触させることと、(b)電気泳動ゲルを充填し、免疫固定電気泳動によって、抗イディオタイプ抗体と接触している生体試料中のタンパク質の泳動を抗イディオタイプ抗体と接触していない生体試料と比較することを含む。いくつかの実施形態において、抗イディオタイプ抗体と接触している試料及び抗イディオタイプ抗体と接触していない試料中のバンドの泳動間の違いがない場合、M-タンパク質が検出される。いくつかの実施形態において、抗イディオタイプ抗体と接触している試料及び抗イディオタイプ抗体と接触していない試料中のバンドの泳動において部分的シフトがある場合、M-タンパク質が検出される。いくつかの実施形態において、抗イディオタイプ抗体と接触している試料及び抗イディオタイプ抗体と接触していない試料中のバンドの泳動間の違いがある場合、M-タンパク質が検出されない。
【0231】
会社の中には、これらのステップのうちの1つ以上を確立する自動化選択を提供するものがある。アッセイは、免疫固定電気泳動アッセイを商品化する会社によって提供される説明書に従って行われ得る。例えば、http://www.ilexmedical.com/files/Sebia%20inserts/IF_Standard_mask_Hydrasis.pdfに記載されるように、アッセイが行われ得る。
【0232】
III.キット
本発明のアッセイ方法は、キットの形態で提供され得る。一実施形態において、このようなキットは、抗イディオタイプ抗体または本明細書に記載される抗イディオタイプ抗体を含む組成物を含む。いくつかの実施形態において、このようなキットは、目的とする抗体に対する抗イディオタイプ抗体、目的とする抗体に結合する検出可能な(標識もしくは非標識)抗体からなる捕捉試薬、及びこれらの試薬を用いたアッセイ方法をいかに実行するかについての指示書の基本的要素を含むパッケージ化された組み合わせである。これらの基本要素は、上文に定義される。
【0233】
キットは、捕捉試薬のための固体支持体をさらに含み得、これは、別個の要素として提供され得るか、または捕捉試薬は、既に固定化される。
【0234】
したがって、キット中の捕捉抗体は、固体支持体上に固定化され得るか、またはそれらはキットに含まれるか、またはキットとは別個に提供されるような支持体上に固定化され得る。いくつかの実施形態において、捕捉試薬は、固体材料(例えば、マイクロタイタープレート、ビーズ、またはコーム)上にコーティングされるか、またはそれに接着されている。検出可能な抗体は、直接検出される標識抗体または異なる種で育てられる非標識抗体に対する標識抗体によって検出される非標識抗体であり得る。標識が酵素である場合、キットは、通常、酵素によって必要とされる基質及び補因子を含み、標識がフルオロフォアである場合、検出可能な発色団を提供する染料前駆体であり、標識がビオチンである場合、アビジン、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、またはMUGを用いてHRPもしくはβ-ガラクトシダーゼにコンジュゲートされたストレプトアビジン。
【0235】
様々な実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、本明細書に開示される抗イディオタイプ抗体のうちのいずれかの1つ以上である。いくつかの実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、(a)配列番号54の重鎖可変領域配列及び配列番号53の軽鎖可変領域配列を含む抗イディオタイプ抗体、(b)配列番号56の重鎖可変領域配列及び配列番号55の軽鎖可変領域配列を含む抗イディオタイプ抗体、(c)配列番号58の重鎖可変領域配列及び配列番号57の軽鎖可変領域配列を含む抗イディオタイプ抗体、ならびに(d)これらの組み合わせから選択される。
【0236】
キットはまた、典型的には、標準物として目的とする抗体、ならびに安定剤、洗浄及びインキュベーション緩衝液などの他の添加剤を含有する。
【0237】
キットの成分は、所定の比率で提供され、様々な試薬の相対量を適切に変化させて、アッセイの感受性を実質的に最大限にする試薬の溶液中の濃度を提供するであろう。特に、試薬は、試験される試料と組み合わせるために、溶解時に適切な濃度を有する試薬溶液を提供する賦形剤を含む、乾燥粉末、通常、凍結乾燥された乾燥粉末として提供され得る。
【0238】
様々な実施形態において、本明細書に記載される抗イディオタイプ抗体を含むキットは、本明細書に記載される方法において(例えば、M-タンパク質を検出する方法において)用いられる。いくつかの実施形態において、キットは、M-タンパク質を検出する方法において用いられるコームにコーティングされたまたは結合された抗イディオタイプ抗体をさらに含む。
【実施例
【0239】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより完全に理解されるだろう。しかしながら、それらは、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に記載される実施例及び実施形態が例証のみを目的とするものであり、それを考慮した様々な修正または変更が当業者に示唆され、本出願の趣旨及び範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることが理解される。
【0240】
実施例1.抗PD-L1抗体アテゾリズマブに対する抗イディオタイプ抗体の生成及び特徴付け
ハイブリドーマの生成。
5つのBalb/cマウス(Charles River Laboratories International,Inc.,Wilmington,MA,USA)に、代謝可能なスクアレン、Tween 80、トレハロース6,6-ジミコレート、及びモノホスホリル脂質A(Sigma Aldrich,USAから得られた全ての成分)を含有するアジュバントにおいて抗PDL1抗体アテゾリズマブで、各後足蹠に、3~4日の間隔で、腹腔内に過免疫した。11回追加免疫した後、血清力価を、抗PDL1抗体に対して陽性血清力価を有するマウスを特定するために、標準酵素結合免疫吸着法(ELISA)によって評価した。脾臓及び膝窩リンパ節からのB細胞を、電気融合(Hybrimune-Hybridoma Production System;Harvard Apparatus,Inc.,Holliston,MA,USA)によって、マウス骨髄腫細胞(X63.Ag8.653またはP3X63Ag.Ul;American Type Culture Collection,Manassas,VA,USA)で融合させた。10~14日後、ハイブリドーマ上清を収集し、ELISAによってCDR特異的抗体産生に関してスクリーニングした。
抗体クローニング及び配列。
【0241】
組換え抗体産生のためのハイブリドーマ細胞の抗体配列をクローンアウトするために、培養したハイブリドーマ細胞から単離されたRNA全体は、抗体可変領域増幅のためにPCRテンプレートであるcDNAを生成するために使用された。PCRのために使用されたオリゴは、マウスV-遺伝子及びJ-遺伝子生殖細胞系列配列に基づいている。哺乳動物発現ベクターにPCR生成物を直接サブクローニングするために、隣接ベクター配列は、それぞれ、順方向プライマー及び逆方向プライマーの5’-及び3’-末端に添付された。重鎖及び軽鎖の可変領域は、プールした生殖細胞系列オリゴで別個に増幅され、PCR生成物を、DNAゲル上に可視化して、予想されたサイズ(重鎖においては400bps及び軽鎖においては350bps)で単一バンドを確認した。
【0242】
精製した重鎖及び軽鎖PCR生成物を、それぞれ、In-Fusion(Clontech)キットを用いてpRK5P-マウスIgG2a及びpRK5P-マウスカッパベクターにサブクローニングした。ライゲーション生成物の形質転換後、いくつかの単一コロニーを、DNA配列シークエンシングのために選択した。DNA配列を、IMGT生殖細胞系列データベースに整列させ、コンセンサス配列を有するクローンを選択し、タンパク質発現のために拡大した。
【0243】
組換え抗体配列を確認するために、重鎖及び軽鎖プラスミドを、HEK293T細胞に一過的にコトランスフェクトした。精製した組換えIgGを、特徴付け、ハイブリドーマ培養物から単離されたIgGと結合活性及び親和性を比較した。
【0244】
モノクローナル抗体105D11、43B5、及び48C1における重鎖及び軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を、図1及び2に示されるように決定した。
【0245】
BIAcoreによるアテゾリズマブへの抗イディオタイプ抗体の結合の特徴付け
抗PDL1 抗ID抗体の結合親和性は、BIAcore(商標)-T2000装置を用いて表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定された。抗イディオタイプ抗体は、約200の反応単位(RU)を達成するために、CM5バイオセンサチップ上にコーティングされた抗マウスFc抗体によって捕捉された。動態測定のために、500nMの抗PDL1 Fabまたはフレームワーク対照Fab(YW167B.43)(Genentech,South San Francisco,CA)は、25℃、30μl/分の流速で、HBS-P+緩衝液(0.1MのHEPES、1.5MのNaCl、0.5%の界面活性剤P20-GE Life Science)中に注射された。会合速度(k)及び解離速度(k)は、単純な1対1Langmuir結合モデル(BIAcore評価ソフトウェアバージョン3.2)を使用して算出された。平衡解離定数(K)を、比率koff/konとして計算した。表2を参照されたい。図3~5も参照されたい。
【0246】
実施例2.免疫固定電気泳動アッセイで用いるための抗イディオタイプ抗体のスクリーニング
アテゾリズマブに対する抗イディオタイプ(抗ID)抗体のスクリーニングを、Sebia IFEプラットフォームにおいて実行して、アテゾリズマブに結合し、Sebia IFEプラットフォーム上にきれいな「ゲルシフト」をもたらす抗ID抗体を特定した。図6を参照されたい。
【0247】
簡潔には、試料は、ゲル電気泳動で用いるための血清の取り扱い、保存、及び調製のための標準的な実験手順に従って設定した。HYDRASYS装置を、製造業者のガイドラインに従って設定した。泳動プロトコル及びゲル処理の設定を、製造業者によって特定されたプロトコルに従って行った。
【0248】
アテゾリズマブ(1500μg/mL)を、PBS中に再懸濁し、それぞれの抗ID抗体または偽対照(PBSのみ)で、振動プラットフォーム上で室温で2時間予めインキュベートした。Maxikit Hydragel 41Fまたは91F(Sebia,Norcross,GA,USA)を用いた半自動HydrasysまたはHydrasys 2において行われた電気泳動を用いて、試料を、分離した。次いで、ゲルの免疫固定(IFE)を、Sebia IFEプロトコルのように、IgG、Igカッパ、Igラムダ、IgA、及び/またはIgMなどの二次抗体を用いた製造業者の仕様書に従って行った。結果は、アテゾリズマブが臨床アッセイプラットフォーム上で検出可能であり、アテゾリズマブと抗IDの特定の複合体がアテゾリズマブのみから分離され得る子を示す。したがって、抗アテゾリズマブ(抗ID)抗体の添加後、IgG/Igカッパ抗体の電気泳動移動度の変化は、抗体の識別、すなわち、アテゾリズマブの証拠を提供する。図6を参照されたい。図6に示されるデータに基づいて、抗体48C1、105D11、及び43B5は、アテゾリズマブの、これらの抗体のうちの1つとの複合体がSebia IFEプラットフォームにおいてきれいなゲルシフトを示したため、選択された。
【0249】
血清中のアテゾリズマブの濃度が増加されるとき、アテゾリズマブの電気泳動移動度を変化させるための抗ID抗体の能力は、抗ID抗体の濃度及びインキュベーション時間に応じて異なる。図8を参照されたい。アテゾリズマブの完全ゲルシフトは、血清中のアテゾリズマブの濃度が500μg/mlであり、インキュベーション時間が2時間であったとき、アテゾリズマブ:抗ID抗体が1:1の比で観察された。しかしながら、血清中のアテゾリズマブの濃度が1000μg/mlまでにお増加したとき、アテゾリズマブ:抗ID抗体が1:4の比が、アテゾリズマブの完全ゲルシフトをもたらすために必要とされた。図8を参照されたい。
【0250】
実施例3.多発性骨髄腫患者からの血清試料中のMタンパク質のスパイクの存在下でアテゾリズマブの検出
多発性骨髄腫患者からのヒト血清試料を使用した。患者の試料は、IFE後の血清中の検出可能なIgA/IgカッパMタンパク質のスパイクを示した(図7、パネル1のレーンA及びレーンK)。患者の血清を、1500μg/mlでアテゾリズマブ抗ID抗体48C1のみ(図7、パネル2)、1500μg/mlでスパイクしたアテゾリズマブのみ(図7、パネル3)、及びそれぞれ1500μg/mlでアテゾリズマブ+アテゾリズマブ抗ID抗体48C1(図7、パネル4)の条件下で30分~2時間予めインキュベートした。免疫固定(IFE)アッセイは、Maxikit Hydragel 41Fまたは91F(Sebia,Norcross,GA,USA)を用いた半自動Hydrasys 2において行われた。製造業者の仕様書に従って、IFEアッセイが行われた。データを分析して、多発性骨髄腫患者における臨床反応評価のために日常的に使用されたIFEアッセイにおいてアテゾリズマブのバンドをシフトするために、アテゾリズマブ抗ID抗体の有効性を決定した。
【0251】
図7のパネル2において、患者血清試料を、アテゾリズマブ抗ID抗体で予めインキュベートした。パネル1とパネル2の比較は、血清の、アテゾリズマブ抗ID抗体による予めのインキュベーションが、患者の検出可能なM-タンパク質の結果を妨げないことを示す。
【0252】
図7のパネル3において、患者血清試料を、1500μg/mlのアテゾリズマブで予めインキュベートした。パネル1とパネル3の比較は、パネル3における検出可能な小さいバンドの添加を示す(矢印レーンG及びK)。これは、IgG/IgカッパヒトmABであるアテゾリズマブなどの大きな生物学的薬物が、検出可能であり、多発性骨髄腫患者における臨床反応評価のために日常的に使用されたIFEアッセイの結果を妨げ得ることを確認する。
【0253】
図7のパネル4において、患者血清試料を、アテゾリズマブ及びアテゾリズマブ抗イディオタイプマウスmABクローン#48C1の両方で予めインキュベートした。パネル3とパネル4の比較(図7)は、アテゾリズマブでスパイクした血清試料へのアテゾリズマブ抗イディオタイプマウスモノクローナル抗体の添加が、抗イディオタイプモノクローナル抗体とアテゾリズマブの結合複合体をもたらし、それによって、Mタンパク質の泳動を妨げることなく、IFEゲル上で低分子量から高分子量へのアテゾリズマブのIgG及びIgカッパの検出可能なIgG及びIgカッパシフトをもたらすことを示す(図7、パネル4、レーンG及びK)。
【0254】
前述の発明は、明確な理解のために例証及び例によっていくらか詳細に記載されているが、説明及び例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。
抗イディオタイプ抗PD-L1抗体105D11軽鎖可変領域のアミノ酸配列:
DIVLTQSPAIMSASPGEKVTITCSASSSVSYMHWFQQKPGTSPKLWIYSTSNLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISRMEAEDAATYYCQQRSSYPPTFGGGTRLEIK(配列番号53)
抗イディオタイプ抗PD-L1抗体105D11重鎖可変領域のアミノ酸配列:
EVQLVETGGGLVKPGGSLKLSCAASGFAFSSYDMSWVRQTPEKRLEWVAYISSGGGSTYYPDTVKGRFTISRDNAKNTLYLQMSSLKSEDTAMYYCARLVYYDYDDAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号54)
抗イディオタイプ抗PD-L1抗体43B5軽鎖可変領域のアミノ酸配列:
DIKMTQSPSSMSVSLGDTVSITCHASQGISSNIGWLQQKPGKSFKGLIYHGTNLEDGVPSRFSGSGSGADYSLTISSLESEDFADYYCVQYAQFPLTFGAGTKLELK(配列番号55)
抗イディオタイプ抗PD-L1抗体43B5重鎖可変領域のアミノ酸配列:
EVQLQQSGPELVKPGASVKISCKASGYSFTDYIMLWVKQSHGKSLEWIGNINPYYGSTSYNLKFKGKATLTVDKSSSTAYMQLNSLTSEDSAVYYCARWGGNYEGWFAYWGQGTLVTVSA(配列番号56)
抗イディオタイプ抗PD-L1抗体48C1軽鎖可変領域のアミノ酸配列:
QIVLTQSPAIMSASPGEKVTITCSASSSVSYMHWFQQKPGTSPKLWIYSTSNLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISRMEAEDAATYYCQQRSGYPPTFGGGTKLEIK(配列番号57)
抗イディオタイプ抗PD-L1抗体48C1重鎖可変領域のアミノ酸配列:
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGFAFSSYDMSWVRQTPEKRLEWVAYISSGGGSTYYPDTVKGRFTISRDNAKNTLYLQMSSLKSEDTAMYYCARTIYYGYDDVMDYWGQGTSVTVSS(配列番号58)
抗イディオタイプ抗PD-L1抗体105D11軽鎖のアミノ酸配列:
DIVLTQSPAIMSASPGEKVTITCSASSSVSYMHWFQQKPGTSPKLWIYSTSNLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISRMEAEDAATYYCQQRSSYPPTFGGGTRLEIKRADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC(配列番号59)
抗イディオタイプ抗PD-L1抗体105D11重鎖のアミノ酸配列:
EVQLVETGGGLVKPGGSLKLSCAASGFAFSSYDMSWVRQTPEKRLEWVAYISSGGGSTYYPDTVKGRFTISRDNAKNTLYLQMSSLKSEDTAMYYCARLVYYDYDDAMDYWGQGTSVTVSSASTKGPSVYPLAPVCGDTTGSSVTLGCLVKGYFPEPVTLTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVTSSTWPSQSITCNVAHPASSTKVDKKIEPRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGK(配列番号60)
抗イディオタイプ抗PD-L1抗体43B5軽鎖のアミノ酸配列:
DIKMTQSPSSMSVSLGDTVSITCHASQGISSNIGWLQQKPGKSFKGLIYHGTNLEDGVPSRFSGSGSGADYSLTISSLESEDFADYYCVQYAQFPLTFGAGTKLELKRADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC(配列番号61)
抗イディオタイプ抗PD-L1抗体43B5重鎖のアミノ酸配列:
EVQLQQSGPELVKPGASVKISCKASGYSFTDYIMLWVKQSHGKSLEWIGNINPYYGSTSYNLKFKGKATLTVDKSSSTAYMQLNSLTSEDSAVYYCARWGGNYEGWFAYWGQGTLVTVSAASTKGPSVYPLAPVCGDTTGSSVTLGCLVKGYFPEPVTLTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVTSSTWPSQSITCNVAHPASSTKVDKKIEPRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGK(配列番号62)
抗イディオタイプ抗PD-L1抗体48C1軽鎖のアミノ酸配列:
QIVLTQSPAIMSASPGEKVTITCSASSSVSYMHWFQQKPGTSPKLWIYSTSNLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISRMEAEDAATYYCQQRSGYPPTFGGGTKLEIKRADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC(配列番号63)
抗イディオタイプ抗PD-L1抗体48C1重鎖のアミノ酸配列:
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGFAFSSYDMSWVRQTPEKRLEWVAYISSGGGSTYYPDTVKGRFTISRDNAKNTLYLQMSSLKSEDTAMYYCARTIYYGYDDVMDYWGQGTSVTVSSASTKGPSVYPLAPVCGDTTGSSVTLGCLVKGYFPEPVTLTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVTSSTWPSQSITCNVAHPASSTKVDKKIEPRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGK(配列番号64)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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