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▶ ケンブリッジ エンタープライズ リミティッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】複合層、その製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C25D 15/02 20060101AFI20220714BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
C25D15/02 F
C25D7/00 S
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019558508
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2018060983
(87)【国際公開番号】W WO2018197713
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】1706783.6
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500341551
【氏名又は名称】ケンブリッジ エンタープライズ リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ダヴォール・コピック
(72)【発明者】
【氏名】ミハエル・フランシスクス・デ・フォルデル
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ヨハン・ロンジェ
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0036978(US,A1)
【文献】特開2012-082510(JP,A)
【文献】特開2015-042776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブと金属の複合層であって、前記層が、少なくとも10μmの厚さを有し、前記カーボンナノチューブが、層全体に分散され、前記層に少なくとも0.001体積%かつ最大65体積%の体積分率で存在し、前記体積分率が、細孔容積は含まない、金属及びカーボンナノチューブの総体積に基づ
前記複合層が、露出したカーボンナノチューブを実質的に含まないように、前記カーボンナノチューブが略均一に金属でめっきされ、
前記複合層が、
を満たす密度を有し、
式中、ρ は、複合層に存在する全ての空隙を含めた、前記少なくとも10μmの厚さを有する複合層の嵩密度であり、ρ 金属 は、金属の体積質量密度物質特性である、複合層。
【請求項2】
前記金属が、アンチモン、ヒ素、ビスマス、カドミウム、クロム、コバルト、銅、金、インジウム、イリジウム、鉄、鉛、マンガン、ニッケル、オスミウム、パラジウム、白金、レニウム、ロジウム、ルテニウム、セレン、銀、テルル、タリウム、スズ、亜鉛、及びこれらの合金からなる群より選択される少なくとも1つであり、前記合金には、セリウム、ガドリニウム、ランタン、ネオジム、プラセオジム、サマリウム、イットリウムを含むものが含まれる、請求項1に記載の複合層。
【請求項3】
カーボンナノチューブと金属の複合層を製造するプロセスであって、前記プロセスが、
カーボンナノチューブを提供する工程と、
電解液溶液にカーボンナノチューブを分散する工程と、
前記金属を含む作用電極及び対電極を提供することであって、各々が電解液に接触している、提供する工程と、
前記作用電極を前記カーボンナノチューブ及び金属で電気めっきし、少なくとも10μm/分の前記複合層の厚さ変化速度で、少なくとも10μmの厚さに前記複合層を成長させる工程と、を含み
少なくともプロセスの一部で、前記少なくとも10μmの厚さの複合層が、
を満たす密度比を有し、
式中、ρは、複合層に存在する全ての空隙を含めた、前記少なくとも10μmの厚さを有する複合層の嵩密度であり、ρ金属は、金属の体積質量密度物質特性である、カーボンナノチューブと金属の複合層を製造するプロセス。
【請求項4】
前記少なくとも10μm/分の複合層の厚さ変化速度で複合層を成長させるために前記作用電極を前記カーボンナノチューブ及び金属で電気めっきする間、面密度の変化速度が最大0.8kg/m2/分である、請求項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブが、ヒドロキシル、フェノール、カルボニル、カルボン酸、カルボキシル、リン酸、ホスホノ、スルホン酸、スルフヒドリル、硫化物、二硫化物、アミノ、四級アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1つで官能化される、請求項又はに記載のプロセス。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブの官能化度が、少なくとも1重量%である、請求項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記電解液が、少なくとも析出の開始時において、少なくとも0.0001重量%のカーボンナノチューブを含む、請求項3~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記電解液が、少なくとも析出の開始時において、0.2重量%以下のカーボンナノチューブを含む、請求項3~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記電解液が、少なくとも析出の開始時において、0.05~1.2Mの範囲の金属濃度を有する、請求項3~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
伝熱のための蒸発濃縮装置であって、前記装置は、蒸発器領域及び濃縮器領域を有する密閉容器を備え、前記容器は容器の内面に形成されたウィッキング層及び容器内の作動流体を有し、前記ウィッキング層は、請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブと金属の複合層を含み、蒸発器領域における作動流体の蒸発、蒸発器領域から濃縮器領域への蒸発した作動流体の物質移動、及び濃縮器領域における作動流体の濃縮は、伝熱に貢献し、濃縮した作動流体は、ウィッキング層に沿って蒸発器領域へ戻される、蒸発濃縮装置。
【請求項11】
ヒートパイプの形状である、請求項10に記載の蒸発濃縮装置。
【請求項12】
蒸気チャンバの形状である、請求項10に記載の蒸発濃縮装置。
【請求項13】
アノード、電解液、及びカソードを備えた電気化学装置であって、前記アノード及び前記カソードの少なくとも一方が、活物質層及び集電層を含み、前記集電層が、請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブと金属の複合層である、電気化学装置。
【請求項14】
電鋳プロセスであって、
請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブと金属の複合層を提供する工程、又はカーボンナノチューブと金属の複合層を製造するために請求項3~9のいずれか一項に記載のプロセスを実行する工程と、
電鋳生成物を生成するために、複合層に追加の金属の電気めっきを実行する工程と、を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合層、複合層の製造方法、及びかかる複合層の使用に関する。本発明は特に電気めっき可能な金属とカーボンナノチューブで形成された複合体に適用できる。
【背景技術】
【0002】
電気めっきは、金属、合金、セラミック、並びに集積回路、磁器記録デバイス、及び他の用途の複合膜の析出として周知である。向上したプロセス条件の制御により、典型的には銅、ニッケル又は金を使用してリソグラフィーによりパターンが作製されたミクロ構造をめっきする、数ある堅牢な微小電気機械システム(MEMS)製造プロセスの一環として、ミクロンスケールで電気めっきを適用することが可能となった。特に、LIGA「Bley(2013)」が、多くの高精度のマイクロスケールコンポーネント(ギア、ベアリング、モーター、タービン、ノズル、アクチュエータ、センサ等)を、サブミクロンの構造細部、数ミクロンの横方向寸法、及び数千ミクロン厚さにて、広範囲に渡り同時に加工するために使用されてきた。これらのスケールでは、電鋳の主な欠点である析出速度及び厚さが制限されない。しかし、LIGAをミリメートルスケールでの3D加工プロセスに拡大するよう試みることは「Jingら(2007)」、費用が高くなり、時間もかかることが示されている。
【0003】
局所析出の制御及び電鋳部の材料特性のさらなる向上は、種々の電気化学添加剤によって可能となる。特に、高電流密度領域のめっき速度は、レベリング剤により遅くなり、析出均一度は阻害剤により向上する。電気化学添加剤もまた残留応力の低減及び析出された結晶粒組織を精錬することに使用され、物質特性を向上させる。多様なナノ粒子もまた添加剤として機能し、析出された薄膜に組み込まれてナノ複合体を形成する。これらは、硬度及び耐食性を増加させることが示されている[Lowら(2006)]。概して、ナノ複合体は強度、剛性及び破壊時の伸び率を向上させる可能性があるため魅力的である[Chaiら(2008)]。電気めっきされた複合体は、向上した導体許容電流[Subramaniamら(2013)]、及び熱伝導度[Subramaniamら(2014)]を示すことができる。このような複合体は、予め組み立てられたカーボンナノチューブ上に銅を電気めっきさせることにより製造することができる。
【0004】
電鋳は、電気めっきを採用した最初の製造プロセスの一つであり、マンドレル又は鋳型を電着することによりコーティングした後に、自立部を形成する析出した金属を分離させることにより、堅牢な3D部を製造するために使用される。電鋳はその正確さ及び多様な長さスケールで複雑な部を製造することができることから、幅広い工業用途が見出されている。非常に大きな長さスケールの電鋳は、費用がかかること、及び薄肉部(エアクラフトのウイングスキンなど)の機械加工が難しくなることを回避し、一方で、小さな長さスケールでは、その高い寸法公差精度、サブミクロンの表面詳細の複製能力により、極めて正確な部を加工することができる(CD、DVD、ブルーレイディスクの複製など)。電鋳は、連続プロセスにも適用することが可能であり、連続及び有孔な箔及びメッシュの生成に使用される。
【0005】
Leeら(2011)は、電気泳動の析出プロセスを開示しており、カーボンナノチューブと銅ナノ粒子がアリ塚様に相互接合したネットワークが形成される。銅ナノ粒子が核を生成し、主にカーボンナノチューブの交差し端部接触位置に成長する。ネットワークは炭素繊維に結合して形成される。
【0006】
Araiら(2004)はNi-析出多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の粉体を形成する方法を開示している。Niめっき浴は、均一に分散されたMWCNTと共に提供される。結果として得られる構造は「ダンプリング串刺し構造(skewered dumpling structure)」と表現され、析出されたNi粒子がカーボンナノチューブによって串刺しされている。
【0007】
Araiら(2010)は、電着によってCu及びMWCNTで形成された複合層の形成を開示している。MWCNTはCVDを介して蒸着し、2800度で30分間熱処理される。MWCNTは硫酸銅析出パス内に分散され、ここで、均一な分散液は、ポリアクリル酸分散剤を組み込むことでのみ可能となる。結果として得られる析出層の形態は、比較的大きなCu粒子がCNTで串刺しされている。
【0008】
Manu and Priya(2013)は、電気化学析出を介する高密度のMWCNT-Cu膜の加工を開示している。Cu-MWCNTの積層構造からMWCNTの垂直配向まで、多様な表面形態が実証されている。
【0009】
Chaiら(2008)は、CNT強化銅ナノ複合体の形成を開示している。これらは高密度形式で形成され、その論文内で採用された応力ひずみ試験に適している。
【0010】
中国特許第104233379号、中国特許第102140668号、国際公開第2011005693号及び中国特許第104611735号は、銅電着の実施方法を変更するために、CNTを銅めっき溶液に添加することが公開されている。表面の機械的活性化が必要であり、すなわち界面活性剤の添加を要する。析出溶液に使用されるCNT濃度は0.1-1g/Lである。本プロセスではCNT-Cu複合粉を得ることができる。中国特許第104233379号で開示されるSEM及びTEMでは、複合粉は、CNTが不均一に分散した、丸いCu粒子から構成されているように見える。
【0011】
先行技術において、CNTが組み込まれた銅電気めっきは、比較的低体積量で、CNTが組み込まれたCu粒子を形成するのに効果的であることが見出された。しかし、本発明者は、形態及び体積形成率は改善が可能であると考える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、既知の技術は堅牢な金属―ナノチューブ複合体材料を形成することはできないと考える。カーボンナノチューブ(CNT)複合体のバルク処理では、一般的に弱い素材特性をもたらす。これは不均一なCNT分布によって作り出された応力集中によるものと考えられている。さらに、これはナノスケール及びマイクロスケール構造規制の欠如によるものと考えられている。さらには、弱い素材マトリクスは、弱い総合的な複合体の特性に寄与し得るように見える。またさらには、比較的弱い粒子間及びマトリクス粒子間相互作用もまた弱い総合的な複合体の特性に寄与し得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述した課題の少なくとも1つを対処するために考案されている。好ましくは、本発明は、上述した課題の少なくとも1つを、低減する、改善する、回避する、又は克服する。
【0014】
本発明者らは速い電着プロセスを提供することが可能であることを見出した。カーボンナノチューブを電着添加剤として使用することで、電気めっきされた金属-ナノチューブ複合層の速度と析出厚さを向上させ、さらなる技術的な利点を提供することを見出した。
【0015】
従って、第1の好適な態様において、本発明は、カーボンナノチューブと金属の複合層を提供し、層は少なくとも10μmの厚さを有し、カーボンナノチューブは、層全体に分散され、少なくとも0.001体積%かつ最大で65体積%の体積分率で層に存在し、体積分率は、細孔容積は含まない金属及びカーボンナノチューブの総体積に基づく。
【0016】
第2の好適な態様において、本発明は、カーボンナノチューブと金属の複合層を製造するためのプロセスを提供し、本プロセスは、
カーボンナノチューブを提供する工程と、
電解液溶液中にカーボンナノチューブを分散する工程と、
各々が電解液と接触している、金属を含む作用電極及び対電極を提供する工程と、
作用電極をカーボンナノチューブ及び金属で電気めっきして、少なくとも10μm/分の複合層厚変化率で、少なくとも厚さ10μmに複合層を成長させる工程と、を含み、
ここで、少なくともプロセスの一部として、少なくとも10μmの厚さの複合層は、
を満たす密度比を有し、
式中、ρは、複合層に存在する全ての空隙を含めた、少なくとも10μmの厚さを有する複合層の嵩密度であり、ρ金属は、金属の体積質量密度材料特性である。
【0017】
第3の好適な態様において、本発明は、電熱のための蒸発濃縮装置を提供し、装置は、蒸発器領域及び濃縮器領域を有する密閉容器を備え、容器は容器の内面に形成されたウィッキング層及び容器内の作動流体を有し、ウィッキング層は、第1の態様に記載されるカーボンナノチューブと金属の複合層を含み、蒸発器領域における作動流体の蒸発、蒸発器領域から濃縮器領域への蒸発した作動流体の物質移動、及び濃縮器領域における作動流体の濃縮が伝熱に貢献し、濃縮した作動流体はウィッキング層に沿って蒸発器領域へ戻される。
【0018】
第4の好適な態様において、本発明は、アノード、電解液、及びカソードを含む、電気化学装置を提供し、アノード及びカソードの少なくとも1つが、活物質層及び集電層を備え、集電層は、第1の態様に記載されるカーボンナノチューブと金属の複合層である。
【0019】
第5の好適な態様において、本発明は、電鋳プロセスを提供し、本プロセスは、
第1の態様に記載されるカーボンナノチューブと金属の複合層を提供する、又は、第2の態様に記載されるプロセスを実行し、カーボンナノチューブと金属の複合層を製造する工程と、
複合層内に追加の金属の電気めっきを実行し、電鋳物を生成する工程と、を含む。
【0020】
本発明の、第1、第2、第3、第4及び/又は第5の態様は、互換性のある範囲で、以下の任意選択的特徴のうちの1つ、又はあらゆる組み合わせを有し得る。
【0021】
カーボンナノチューブと金属の複合層は、少なくとも20μm、少なくとも30μm、少なくとも40μm、少なくとも50μm、少なくとも60μm、少なくとも70μm、少なくとも80μm、少なくとも90μm、又は、少なくとも100μmの厚さを有し得る。電気めっき技術によって形成された先行技術の複合層では、厚さのある層を形成するには時間がかかり、本発明の好適な実施形態で見られる層とは同様の形態を提供しない。カーボンナノチューブと金属の複合層は、少なくとも0.2mm、少なくとも0.3mm、少なくとも0.4mm、少なくとも0.5mm、又は少なくとも0.6mmの厚さを有する。
【0022】
好ましくは、カーボンナノチューブは層全体に均一に分散される。得られる均一の機械的、電気的及び熱的特性の点でこれが好ましい。
【0023】
複合層中のカーボンナノチューブの体積分率は、少なくとも0.01体積%、より好ましくは少なくとも0.1体積%、より好ましくは少なくとも1体積%、さらにより好ましくは少なくとも5体積%であり得る。
【0024】
理解されるように、細孔を除いた複合素材の体積に関して評価した場合、カーボンナノチューブの体積分率は、低減された空隙率は典型的にはより多くの金属の存在を意味するという範囲で、空隙率によって影響を受ける、例えば、さらなる電気めっきにより細孔にめっきされる。
【0025】
複合層におけるカーボンナノチューブの体積分率は、最大で50体積%、最大で40体積%、又は最大で30体積%であり得る。
【0026】
複合層におけるカーボンナノチューブの重量分率は、複合材の重量に基づいて、少なくとも0.001重量%であり得る。より好ましくは、複合層におけるカーボンナノチューブの重量分率は、少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも1重量%であり得る。
【0027】
複合層におけるカーボンナノチューブの重量分率は、最大20重量%、最大15重量%、又は最大10重量%であり得る。
【0028】
好ましくは、カーボンナノチューブは、略均一に金属でめっきされる。これは、例えば、透過電子顕微鏡(TEM)によって評価することができる。本発明の好ましい実施形態では、複合材の形態は、先行技術におけるそれとは異なることが見出された。先行技術では、凝集した金属粒子が見られ、CNTと金属粒子の形態は、串(CNT)に刺されたダンプリング(金属粒子)に似ている。
【0029】
好ましくは、カーボンナノチューブは、複合材が実質的に、曝されたカーボンナノチューブを含まない範囲で、略均一に金属でめっきされる。すなわち、TEM試験において、全てのカーボンナノチューブが、好ましくは少なくとも金属の薄層によってコーティングされている。
【0030】
金属は、アンチモン、ヒ素、ビスマス、カドミウム、クロム、コバルト、銅、金、インジウム、イリジウム、鉄、鉛、マンガン、ニッケル、オスミウム、パラジウム、白金、レニウム、ロジウム、ルテニウム、セレン、銀、テルル、タリウム、錫、亜鉛、及びこれらの合金からなる群より選択される少なくとも1つであり、合金には、セリウム、ガドリニウム、ランタン、ネオジム、プラセオジム、サマリウム、イットリウムを含むものが含まれる。好適な金属には、水溶液内で便利に電気めっきされるものを含む。その中でも、その電気めっきの容易さを鑑みて、かつその電気的特性及び熱的特性を鑑みて、銅が特に好ましい。
【0031】
複合層は、
を満たす密度比を有し得り、
式中、ρは、複合層に存在する全ての空隙を含めた、少なくとも10μmの厚さを有する複合層の嵩密度であり、ρ金属は、金属の体積質量密度物質特性である。
【0032】
従って、少なくともプロセスの一部として、10μmの厚さに達した時、層は比較的低密度を有する。密度は、本明細書において、層の嵩密度(すなわち空隙(空隙率))の、金属密度(これは金属の嵩密度というよりも金属の物質特性である)に対する比として表現される。銅とCNTで形成され、約0.05mg/mm2の面密度及び約100μmの厚さを有する複合層を例にとってみると、これは
を表す。
【0033】
より好ましくは、複合層は、
を満たす密度比を有し得る。
【0034】
より好ましくは、複合層は、
を満たす密度比を有し得る。
【0035】
より好ましくは、複合層は、
を満たす密度比を有し得る。
【0036】
より好ましくは、複合層は、
を満たす密度比を有し得る。
【0037】
いくつかの代替の実施形態において、複合層の密度比は、上述された範囲よりも高くなり得る。これは、例えば、電解液にCNTの比較的低い濃度を使用することによって、かつ/又は比較的低い析出電圧(大きさに関して)を使用することによって達成され得る。係る代替の実施形態において、密度比は、0.35超であり得る。例えば、密度比は、最大0.8、又は最大0.75であり得る。
【0038】
成長複合層で作用電極を電気めっきする間、複合層厚さの変化率は少なくとも20μm/分であり得る。複合層厚さの変化率は、少なくとも30μm/分、少なくとも40μm/分、少なくとも50μm/分、又は、少なくとも60μm/分であり得る。
【0039】
好ましくは、カーボンナノチューブ及び金属で作用電極を電気めっきし、複合層を少なくとも10μm/分の複合層厚さの変化率で成長させる間、面密度の変化率は、最大1.6kg/m2/分、又は最大1.0kg/m2/分、又は最大0.8kg/m2/分である。より好ましくは、面密度の変化率は、最大0.5kg/m2/分、最大0.4kg/m2/分、最大0.3kg/m2/分、最大0.2kg/m2/分、又は最大0.1kg/m2/分である。
【0040】
いくつかの実施形態において、カーボンナノチューブ及び金属で作用電極を電気めっきし、複合層を成長させる間、電流密度の大きさは制御される。電気めっきの初期段階では、電流密度は比較的高く、例えば、少なくとも3mA/mm2であり得る。その後、電流密度は比較的低くまで低減され得、例えば最大2.5mA/mm2である。
【0041】
好ましくは、カーボンナノチューブは、共有及び/又は非共有官能化を有する。共有官能化がより強力な相互作用のため好ましい。
【0042】
好適な官能基は、以下のカテゴリに当てはまり得る:水溶性(親水性)、荷電、界面活性剤様(陰イオン性、陽イオン性、非イオン性)、酸含有、及び金属錯体/キレート基。
【0043】
好ましくは、カーボンナノチューブは、ヒドロキシル、フェノール、カルボニル、カルボン酸、カルボキシル、リン酸、ホスホノ、スルホン酸、スルフヒドリル、硫化物、二硫化物、アミノ、四級アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1つで官能化される。
【0044】
カーボンナノチューブの官能化度が少なくとも1重量%であり得る。より好ましくは、カーボンナノチューブの官能化度は、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも4重量%又は少なくとも5重量%であり得る。1重量%より低い官能化度は、水の中でCNTを担持するのには効果が低いと考えられる。さらに、CNTが主にWEに移動するのに十分な電荷を有するかどうかに影響を与える。
【0045】
電解液は、少なくとも析出の開始時において、少なくとも0.0001重量%のカーボンナノチューブを含有し得る。これよりも低い場合、本発明におけるカーボンナノチューブの有利な効果は分かりにくい。電解液は、少なくとも析出の開始時において、0.2重量%以下のカーボンナノチューブ、より好ましくは0.1重量%以下カーボンナノチューブを含有し得る。これより高い場合、電解液でCNTの担持を維持することは困難であることが見出される。
【0046】
電解液は、少なくとも析出の開始時において、少なくとも0.05Mの金属濃度を有し得る。より好ましくは、金属の濃度は、少なくとも0.2Mであり得る。例えば、金属の濃度は、最大0.8Mであり得る。より好ましくは、金属の濃度は、最大0.5Mであり得る。代替的な実施形態において、電解液中の金属の濃度は、析出の開始時において、最大1.0M又は最大1.2Mなどと高い。これらは、良好な複合層を生成し、より高い濃度であるほど、より高密度の複合層が得られやすい。
【0047】
いくつかの実施形態において、第3の態様に記載される蒸発濃縮装置は、ヒートパイプの形態である。
【0048】
いくつかの実施形態において、第3の態様に記載される蒸発濃縮装置は、蒸気チャンバの形態である。
【0049】
さらなる任意選択的な本発明の特徴を以下に説明する。
【0050】
本発明の実施形態を、以下の添付図面を参照して一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】簡易的なCNT-銅ナノ複合体析出に使用される電気化学セルを示す。
図2】CNT上にCu析出の核生成を起こす基板を示す。
図3】CNT上のCu析出の自発核生成を示す。
図4】低倍率の、析出後の作用電極の上面及び側壁のSEM画像を示す。スケールバーは1mmを表す。
図5】析出層上の作用電極の側面のSEM画像を示す。スケールバーは20μmを表す。
図6】H2SO4濃度を変動し、電解液に少量のCNT(<0.01重量%)を添加することによる、銅ナノ複合体の電着(DC)層高さへの影響を示す。
図7】CNTが添加されていない、図6の対照データを提供する。
図8】Cu-CNTの複合層析出層の面密度(1単位面積当りの質量)を示す。
図9】CNTが添加されていない、図8の対照データを提供する。
図10】Cu-CNT複合層の析出における、H2SO4濃度の高さ増加率への影響を示す。
図11】異なるH2SO4濃度での、Cu層とCu-CNT複合層の析出の高さ変化を比較する。
図12】高酸濃度(0.8M H2SO4)にてパルス電着(PED)を使用して、さらなる析出速度及び高さの増加が達成可能であることを示す。図12では、多孔質CNT-銅ナノ複合体が埋め戻されない限り(ex situパラフィンワックス充填)、連続した析出が初期の高い析出速度を回復しないことを示す。
図13】DC析出と比較して、PEDが、有意に析出面密度を増加させ、質量析出速度は、ex situワックス埋め戻しによって、有意に影響を受けないことを示す。
図14図13の経時的な析出層の空隙率の変化を示す。
図15】本発明の実施形態による成長CNT-Cu複合層の成長時の面密度の変化率を示す。この変化率は析出中に印加された電流密度(A/cm2)に比例すると考えられているが、電力供給、対電極範囲及び電解液分解によって制限される。mg/mm2/分の単位は数値的にkg/m2/分の単位に相当する。
図16図15と比較した、CNTを含まないCu層の成長時の面密度の変化率を示す。ほかの条件は一緒である。
図17】本発明の実施形態によるCNT-銅複合体のSEM画像(平面図)に重ねて表示されたEDX材料分布を示す。視野は560μm×420μm。等高線もまた画像上に重ねて表示され、画像内で白色の矢印で各所に示される。等高線は、良好な銅の信号が検出された領域をデミットし、一般的にはマップのより明るい領域にある。はっきりとは見えないが、画像上に重ねられた個々の点はCNTからの放射を表し、一般的には良好な銅の信号が検出された領域に見られる。信号の強度及び密度は、センサに対する局所傾きによって影響される。
図18】CNT-銅複合体の上面の5つのスペクトルからの原子炭素含有量のEDX測定値を示す。炭素含有量の変化は、各測定値の比較的小さな視野範囲によって説明することができ、図17と同様であり、すなわち560μm×420μmである。
図19】本発明の実施形態によるヒートパイプの概略部分的断面図を示す。
図20】本発明の実施形態による蒸気チャンバの概略部分的断面図を示す。
図21】析出層の形態が電流密度によって影響されることを示す一連のSEM画像を論証する。図21の析出層は-3.7mA/mm2の電流密度を使用して析出された。
図22】析出層の形態が電流密度によって影響されることを示す一連のSEM画像を論証する。図22の析出層は-2.6mA/mm2の電流密度を使用して析出された。
図23】析出層の形態が電流密度によって影響されることを示す一連のSEM画像を論証する。図23の析出層は-1.8mA/mm2の電流密度を使用して析出された。
図24】商用焼結Cu粉末塗布層を有するヒートパイプを通じた分的断面の比較的低倍率SEM画像を示す。
図25】白い破線枠によって図24で示された範囲の拡大図を示す。
図26】高度な多孔性のCu-CNT析出層を有する本発明の実施形態によるヒートパイプを通じた分的断面の比較的低倍率SEM画像を示す。
図27】白い破線枠によって図26で示された範囲の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明のさらなる任意選択的特徴
本発明の好ましい実施形態では、速い電着プロセスを提供する。酸化又は、より一般的には、官能化多層カーボンナノチューブ(ox-MWCNT)を電着添加剤として用い、その空隙率を同時に制御しながら、電気めっきされる金属-ナノチューブナノ複合体の速度と析出厚さを向上させる。カーボンナノチューブ(CNT)複合体のバルクプロセスは、(1)不均一なCNTの分散により生成される応力集中、(2)ナノ及びマイクロスケール構造制御の欠如、(3)弱い素材マトリクス、及び(4)乏しい粒子間及びマトリックス粒子の相互作用により、一般的に弱い素材特性をもたらすため、堅牢な金属-ナノチューブナノ複合体の形成は、長年の問題である。これらの問題に対処することは、例えば、強度、伝導性及び熱伝導性が向上した複合体材料を提供するのに役立つ。
【0053】
好ましい実施形態において、これらの問題に対処するための本発明者らによるアプローチは、CNT表面の化学的性質及び電解液の電荷を制御し、電気めっき中の良好な粒子間の相互作用及び均一の融合を確実にし、均質のナノ複合体を形成することである。特に、統合前の電解液中及び作用電極(WE)上の凝集作用を軽減するために、CNT酸化状態、プロトン化度、及び分散濃度を利用する。電解液組成物の、マイクロ規模構造、複合材の空隙率及び厚さへの影響が実証される。さらなる細孔の埋め戻しは、ポストプロセスでの古典的な電気めっきによって、又はCNT添加剤が消費されたあとの継続した析出によって容易に達成することができる。
【0054】
CNTは、析出速度の向上を可能にする特にその高い電気伝導性、広い表面積、容易に変性される表面の化学性及び電荷性により電気めっき添加剤として魅力的であり、その優れた機械的、電荷的及び熱的特性が、得られるナノ複合材の素材特性を向上させる。正確に少量のCNTをマトリクスに組み込むことで、大きく複合材の強度[Chaiら(2013)]、及び熱伝導率[Subramania金属(2014)]を向上させることが示されている。
【0055】
本発明のプロセスの好ましい実施形態では、簡易的な電気めっき設定が用いられ、銅作用電極12(WE)及び硫酸銅中の対電極14(CE)及びox-MWCNT懸濁液が添加された硫酸電解液16からなる。これは図1にて示される。電圧が印加され、電流がポテンショスタット(図示せず)を使用して測定する一方で、サイドオンカメラで析出層厚さ及び核生成メカニズムを監視する。カメラはex situでの高さモニタリング、ならびに/又はin situでの高さモニタリング及び/又は品質管理に使用することができる。析出の間、プロトン化及び複合化したox-MWCNT(ox-MWCNT金属イオンでキレート化によって複合した)は、容易にかつ/又は迅速にWEに移動し、そこで銅析出に組み込まれる。脱プロトン化した又は分極化したCNTは、より近くの電極へと移動する。それによって、多少はWEへも移動し、同様のプロセスを経ることとなる。0.2Mを上回る硫酸濃度を有する電解液中の銅核生成の発生がWEから開始されるフロントに観察され、一方でより低い酸濃度での確率的核生成もまた、既にWEと電気接触しているナノチューブ上に直接発生する。これは図2及び図3にて図示される。両者において堅牢な3D多孔質CNT-銅ナノ複合体が析出され、図4及び図5に示される。
【0056】
析出された複合体は、ブミクロンの銅結晶がCNTを完全に被覆し、複数の長さスケールで細孔を形成する3Dネットワークを形成することが見出された。サブミクロンの銅結晶は析出中に大きく成長し、高さ率を減速させる主要因であると考えられる。複合体表面積は、より大きな表面粗さ、及びマイクロ規模の突起、及び銅析出の突き出しによりさらに増大する。この表面積の増大も、析出を減速させる主要因であると現在理解されている。したがって、析出中の表面積が増大するにつれて、減速が生じる。
【0057】
電解液に添加されたox-MWCNTは、荷電基の表面密度及び電解液の酸含有量(すなわちpH)により決定される、その表面電荷のため、懸濁液内で安定する。
【0058】
荷電基のタイプはFTIR測定によって得ることができる。追加的又は代替的に、EDX量を使用し、酸素の原子分率及び荷電基を含む他の分子を得ることが可能であり、表面密度を推定することができる。表面電荷基の密度はCNT上の総電荷を考慮するときに主に役立つ。電荷がない又はCNTが負電荷である場合は、WEに移動することはなく、代わりに、CEにでも移動し得る。もし電解液でCNTに電荷がなかった場合でも、電場にて分極を受け、WEの近くにあるものはWEに移動する。性質上、より酸化したCNTは、析出を加速する。
【0059】
本作業で試験された組成物では、析出中、硫酸を含まない電解混合液中に凝集が観察されることはない。これらの電解混合液を使用して析出されたナノ複合体は、純銅電気めっきと比較して、析出された層厚さに最大で10倍以上の増加を示した。0.2Mの硫酸濃度を含む電解液では、析出から最初の数分以内に観察できる凝集が形成される。これらの大半が半透明であり、WEに移動すると容易に変形することが観察される。析出の間、CNTが銅析出に組み込まれるため、粒子の数が次第に減少するが、大部分はその大きさに影響は受けないままである。高い酸含有量(>0.4M H2SO4)を有する電解液では、ナノチューブは容易に凝集し、数十ミクロンの粒子を析出プロセスの間ずっと形成し続ける。粒子サイズと不透明度の両方が、酸濃度の増加に伴って増加する。
【0060】
酸度を高めた電解液で直流(DC)を使用して析出されたCNT-Cu複合体及び純銅(対照試料)の電着の高さ、速度及び面密度が図6~11に示される。
【0061】
FIJIを使用して析出された層の端部をサイドオンカメラによってトラッキングすることによって析出高さを得た。これらの曲線は、デジタルローパスバターワースフィルタを使用した後、微分し、高さ析出速度を得る。一方、面密度は、析出中の計測された電流及び電極表面積を使用して得た。
【0062】
データは、DC電着の間、少量のCNTを電解液(<0.01重量%)に添加することによって、純銅析出と比較して、CNT-Cu複合体の析出高さを著しく増加することができることを示している。(図6及び図7)。電気めっきされた銅の層の高さは、最大で0.4M高めた硫酸濃度で増加し、析出の間、大部分が直線を維持する。しかし、0.8Mを有する電解液における銅析出では、最初の10分以内で大幅な高さの増加を示し、その後は析出中一定を維持し、最も薄い膜(60分後<110μm)をもたらす。最も厚い銅膜は0.4M硫酸にて析出され、60分後には255μmに達する。CNTの添加により、析出高さに著しい非線形をもたらし、著しく高い析出高さを生成する。最大で0.4Mの硫酸濃度の増加は、析出高さを増加させ、60分後に1.1mmに達する。しかし、0.8Mの硫酸を含む電解における析出されたナノ複合体は、0.2M及び0.4Mで析出されたものと同等の高さを示した。さらには、0.8Mの硫酸濃度は、最初の30分で最大の析出高さを生成した。最初の5分で570μmと優れた高さに達成し、10分では800μmを超えた。
【0063】
ナノ複合体及び最大0.4Mの硫酸濃度を有する純銅試料の面密度は同等であり、CNTの添加によっては電着の質量は増加しないことを示している(図8及び図9)。0.8Mの硫酸で析出されたナノ複合体は4分で最大の面密度を有する。しかし、その後急速に直線的に析出速度が減少し、同等の銅試料よりも小さい面密度となる。これは低い面密度かつ大きい試料高さであることから、資料は最大の空隙率を有することとなる。
【0064】
析出高さの速度を、得遅延補正を有するデジタルバターワースローパスフィルタを使用しフィルタ処理された高さ曲線(図10)を微分することによって得た。フィルタ処理するにも関わらず、1分前のデータは、高いノイズにより信頼性がない。0.8Mの硫酸を有する電解液で、DC電着を使用した高さの最大増加が得られ、1分で110μm/分を超えた。しかし、電解液からCNTが消耗し、銅表面積が増加することによりこの速さは急降下する。ナノチューブは析出中に補充されることはなく、濃度の減少、最終的にはナノ複合体の析出の終了に至る。CNTが消費された後の継続した析出は、構造が埋め戻されることによって、複合体の空隙率を減少させる。
【0065】
ナノ複合材高さを、同じ電解液を使用して析出された銅膜高さで除算し、析出に相対的な向上を示す規格化された高さを生成する(図11)。硫酸をまったく含まない電解液にCNTを添加することによって、最大10倍の析出高さの増加を得た一方で、0.4Mの硫酸を有する電解液では、10分で30倍の増加を示した。析出された高さの数百倍の増加は、析出の最初の数分で、0.8Mの硫酸濃度を有する電解液にCNTを添加することで促進された。高酸度電解液の根本的に異なる曲線は、異なる統合メカニズム又は析出速度を示す。
【0066】
CNT-Cuナノ複合体の高さと高さ析出速度は、連続的な析出及び電極全体の電圧をゼロに設定することによって析出を定期的に中断させるパルス電着(PED)技術を用いてさらに増加させることができる。逆パルス電着技術も好適である。連続的PED実験を、大きな初期析出速度を維持するために、電解液、CNT、及びCEを置き換えることによって実施した(図12~14を参照)。大きな初期析出速度はこれらの結果の中では維持されなかったが、直線的析出速度が40分後に得られ、60分で1.7mmを超える析出膜を結果として得た(90分で2.0mm)。これは、析出の後半段階におけるCNT濃度の減少は、PED中に高さ成長速度が減少する要因ではないことを示す。高度な多孔性のナノ複合材を析出と析出の間にパラフィンワックスで埋め戻すことで、第2の析出時に大きな初期析出速度を生成した(図12)。これは、ナノ複合体表面積の増加の合計が、開始から10分後に析出高さが減少する主な原因であることを示している。析出の間、WEの相対的な大きさが、CEと比較して著しく増加し、CEの解離が律速段階となる。したがって、いくつかの実施形態において、成長速度を促進させるために、実質的に大きな面積(高さ増加速度及び面密度増加速度に関して)を有するCEを使用することは有利である。
【0067】
面密度は、第1の析出から第2の析出で、埋め戻しに関わらず確実に増加する(図13)。複合材の面密度は、3D構成が絶えず成長し埋め戻されるため析出の間に増加する。PEDによって生成されたCNT-Cuナノ複合体の初期密度測定は、350μm厚の膜で0.127g/cm3(98.6%空隙率)と低く、2mm厚の層の密度は析出の終わりで、最大1.699g/cm3(81.0%空隙率)に達する。初期の大きな空隙率は、不連続又は非常に粗い初期の析出層を示す。想定通り、埋め戻しされた複合体上の連続的析出での空隙率は、第2の析出の大きな初期析出速度の間に急激に増加する(図14)。
【0068】
構造への適用としては、均一に構造を埋めて材料の多孔性の本質をさらに強化するため、又は新たな特性の追加するためのいずれかのために、細孔ネットワークの埋め戻しを使用することができる。例えば、熱伝導性多孔ネットワークは、熱交換機、ヒートパイプ、及び、蒸気チャンバなどの熱伝導の用途に望ましい。代替的に、このプロセスは、フレームワークが連続的に析出された後に埋め戻しされる、添加剤製造(AM)プロセスに発展させることができる。得られる生成物と電鋳生成物との電鋳プロセスにとって、埋め戻しは必要なものになる。
【0069】
電鋳プロセスで本発明を使用する場合、上述の複合材を最初に形成することができ、足場材としてみなされる。足場材はその後WEから除去され(必要であれば)標準的な電気めっきプロセスの原点(基板)として使用される。本電気めっきプロセスは、細孔内をめっきするし、細孔を充填することによって空隙率の減少を達成する。これを行うことの利点は、既知の電鋳方法と比較して、電鋳生成物を作成する時間を大きく削減し、かつより優れた材料特性(例えば機械的、熱的)を達成することができることである。
【0070】
本発明者らは、初期成長及びその後の細孔を埋める埋め戻しのための可能なメカニズムを検討した。これは比較的推論的であるが、本開示で報告される現象を適切に説明するために提供される。
【0071】
文献及び本発明者による観測に基づいて、電解液中の酸化MWCNTは、金属イオン(キレート化により)複合化、電荷分極を受けるとみなされる(電極間の電場のため)。金属イオンとの錯体形成により、これは個々のCNTの電荷分離及びわずかな正電荷をもたらす。CNTは次にWE(電荷吸着)へと移動し、分極化により多少界磁とアラインすることができる。WEと接触するにあたり、CNT中の電荷は電極と平衡となる。しかしながら、CNTのアスペクト比が高いため、電場増強効果の発生が見込まれ(個々のチューブの平均電場よりも最大80倍大きいと計算される)、次のCNTを平面WE電極の電場よりも多量に引き付ける。経時的に電解液からのCNTは、既に電極と接触しているCNTの先端と接触し(部分的に又は完全に銅で被覆され得る)、より大きい細孔と、次に任意の個々のCNTの長さで「発砲体」を作成する。この推論的説明はCNT凝集にも適用される。
【0072】
先行技術におけるCNT-金属複合層を形成する際の高さの変化速度及び面密度の変化速度と本明細書で提示される試験がどう比較されるかの推定が求められる。
【0073】
本発明者らが推定した、選ばれた先行技術の文献及び本発明の好適な実施形態における高さの変化速度及び面密度の変化速度を表1に要約する。
【表1】
【0074】
図21~23は、析出層の形態が電流密度によって影響を受けることを示す一連のSEM画像を表示する。図21析出層は-3.7mA/mm2の電流密度を用いて析出された。図22の析出層は-2.6mA/mm2の電流密度用いて析出された。図23の析出層は-1.8mA/mm2の電流密度を用いて析出された。したがって、析出層の形態は析出中に使用された電流密度に大きく影響を受け得ることがわかる。
【0075】
したがって、本発明者らは大きな高さ析出速度を有する連続的な析出を可能にする有望なプロセスを論証した。一般的に、AMは、連続的に材料を追加し、下から上へと複雑な物体を創作する出現プロセス一式を含む。かかるプロセスは、要素設計のより大きな自由、工費の低減、サプライチェーンの短縮、エネルギー効率の向上、及び環境影響の低減を可能とする。しかし、現在では、AMの工業的利用は大量の製品カスタマイズ(例えば、歯科インプラント、補聴器、関節置換)及び技術を要する流体用途(例えば、ノズル、タービン翼、複合熱交換器)に限定されている。金属AMは特に、作成された部品に耐久性があるため魅力的なプロセスではあるが、最も工業規模での実施には困難なものでもある。工業用の金属AM技術は主に熱又はワイヤメルトを適用した局所的な粉焼結及び限局性再凝結による部品の作成に頼っている。しかし、金属粉焼結は遅く、大きな素材応力、局所的空隙、高い表面粗さ、及び低い耐摩耗性に悩まされる。ワイヤメルト技術はその一方で精度が低く、再現性に乏しい。
【0076】
多孔性のカーボンナノチューブと金属の複合層は、熱管理用途に特に有用であると考えられる。例えば、複合層は、蒸気チャンバ及び/又はヒートパイプで使用することができる。ヒートパイプの熱的性能に影響を与える要因に関する技術的議論は、既にManimaranら(2012)にて述べられており、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。蒸気チャンバにも同様の考察が適用される。より典型的には、かかる装置は、伝熱のための蒸発濃縮装置であると考えられる。かかる装置は、蒸発器領域及び濃縮器領域を有する密閉容器を備える。容器は、容器の内面上に形成されたウィッキング層及び容器内の作動流体を有する。本発明の実施形態において、ウィッキング層は、本発明の実施形態によるカーボンナノチューブと金属の複合層を含む。蒸発器領域での作動流体の蒸発、蒸発した作動流体の、蒸発器領域から濃縮器領域への物質移動、及び濃縮器領域での作動流体の凝縮は、伝熱に役立つ。凝縮した作動流体は、ウィッキング層に沿って蒸発器領域に戻される。ウィッキング層の形成は本明細書で公開される電着技術により、容器上in situで実行することができる。
【0077】
一実施形態において、図19に示されるように、ヒートパイプ20が提供される。ヒートパイプ20は、蒸発器領域22及び濃縮器領域24を有する細長い形状をした密閉容器を含む。容器は、容器の内面に形成されたウィッキング層26及び容器内の作動流体28を含む。ウィッキング層は、上述される通り、本発明の実施形態によるカーボンナノチューブと金属の複合層を含む。これは上述される方法により、便利に銅パイプの内表面上に形成することができ、その後、パイプは作動流体が充填され密封される。蒸発器領域22での作動流体28の蒸発、蒸発した作動流体の蒸発器領域22から濃縮器領域24への物質移動、及び濃縮器領域24での作動流体の凝縮は、伝熱に貢献する。凝縮した作動流体は、ウィッキング層26に沿って蒸発器領域22に戻される。作動流体の物質移動は、図19に直線の矢印によって示される。
【0078】
一実施形態において、図20に示されるように、蒸気チャンバ40が提供される。蒸気チャンバ40では、ウィッキング層46が蒸気チャンバの内面上に形成され、蒸気チャンバ内には作動流体48が含まれる。ウィッキング層46は、上述される通り、本発明の実施形態によるカーボンナノチューブと金属の複合層を含む。これは上述される方法により、便利に銅板上に形成することができ、蒸気チャンバは、銅板上に好適なカバーピースを取り付けることで形成され、蒸気チャンバ内の空間は作動流体で充填され密封される。蒸気チャンバは、熱源と接触した場所に位置される(典型的には、冷却を必要とする成分)。液体の作動流体を気化し、気化された作動流体は蒸気チャンバを通り対流する。作動流体蒸気チャンバの冷たい表面上に凝縮され、ウィッキング層で回収される。凝縮された作動流体は蒸気チャンバ内で存在する最も冷たい領域に向かって染み込む。この効果は、蒸気チャンバが熱スプレッダと同様程度に効果的な機能を果たすことである。作動流体の物質移動は、再度図20に直線の矢印によって示される。
【0079】
層は任意の好適な基板上に析出され得る。例えば、基板はワイヤの形状であり得る。さらには、基板はワイヤメッシュなどのメッシュ形状であり得る。かかるワイヤ又はメッシュは本明細書で公開され析出に供されることができ、その後、ヒートパイプ又は蒸気チャンバなどの熱管理装置に組み込まれる。
【0080】
図24~27により、本開示で提供される技術的利点が例示される。図24は商用焼結Cu粉末塗布層を有するヒートパイプを通じた分的断面の比較的低倍率SEM画像を示し、図25は、図24で白い破線で囲まれた範囲の拡大図を示す。ここで示される通り、燒結Cu粒子被覆層は比較的低い空隙率を有する。図26は、高度な多孔性のCu-CNT析出層を有する本発明の実施形態によるヒートパイプを通じた部分的断面の比較的低倍率SEM画像を示す。図27は、図26で白い破線で囲まれた範囲の拡大図を示す。図27に見られる通り、析出層は高い空隙率を有し、開示される熱管理装置に特に好適なものとなる。図26及び27で示される実施形態では、-4.3mA/mm2の初期電流密度で層が形成される。これにより気泡型構造が起こりやすくなる。その後に、電流密度を、例えば、約-2.6mA/mm2以下に低減させ、成長する析出層を統合する。
【0081】
上述の本発明の実施形態において、高伝導素材(銅及びCNT)から形成され、かつ高空隙率の複合層を提供する。フットプリント面積と比較して大きな表面積を有する。(すなわち、具体的なフットプリント面積(又は平面図面積)を有する複合層にとって、複合層により提供される実際の表面積は、実質的にフットプリント面積よりも大きい。)これらの特徴が合わさることで、材料が電池、スーパーコンデンサ、燃料電池などの集電材として使用される場合に多くの特定な利益を提供する。以下に説明される。
【0082】
大きな集電材表面積は、活性材にとって増加した接触面を提供し、作動中の内部装置抵抗を低減させ、効率の向上及びより大きな電流率を可能にする。
【0083】
薄コーティング(いくつかの電池中の金属酸化物などの低伝導性素材)で適用される活性材にとって、より大きな集電材表面積を持つことで、より多くの活性材が使用されることが可能となり、装置の生産力が向上する。
【0084】
電池又はスーパーコンデンサのキャパシティをさらに高めるために、本発明の好ましい実施形態における材料を使用する集電材の厚さは、既知の技術で現在可能とする程度以上に、容易に増加させることができる。
【0085】
高多孔性の集電材は、電解液、反応物質、及び生成物の、活性材へ/からの良好なアクセスを可能にし、装置が安全に稼働できる出力率を大幅に増加させる。
【0086】
集電材を形成するために電着を使用する既知のアプローチを考慮すると、Tabernaら(2006)は、非常に高額で消耗するテンプレートを使用して、ゆっくりと銅ナノピラーを平らな銅電極上に電着させ、集電材として使用する。出力密度は、幾何学的集電材であるため、平らな集電材と比較して6倍の向上を示した。本発明の好ましい実施形態の使用は、より高空隙率及びより大きい表面積を有する、有意により厚い層を析出することが可能であり、そのため、Tabernaら(2006)で示される性能と比較して、集電材として有意に向上した性能特性を有し、より効率的に形成することができる。
【0087】
実験の詳細
酸化CNT懸濁液の調製:工業級MWCNT(Nanocyl、NC7000、100mg)を硝酸(Sigma-Aldrich、70%、20mL)に入れ、マイクロ波反応装置(Anton Paar、Multiwave PRO)内で酸化させる。混合物を激しく攪拌し、10分で175℃に加熱し、30分一定の状態を維持し、室温に冷却する。得られた酸化CNT分散液を、その後200mLのDIで希釈し、繰り返し洗浄した後、80℃で一晩乾燥させる。超音波浴(Elma、320W6時間)を使用し、50mLのDI中で110mgの酸化CNTを再分散する。一晩デカントした後、上清を回収した。溶液の濃度をTGA分析により計測し、0.1重量%に希釈した。
【0088】
銅電極及び電解液調製:銅板(Onecall、0.635mm呼称厚さ)をせん断し、塩酸(Sigma-Aldrich)に5分間浸して洗浄した。DIで洗浄した後、銅板をアルゴン環境下で保管した。0.8Mの硫酸銅(Sigma-Aldrich)と0M~1.0Mの範囲の濃度の硫酸(Sigma-Aldrich)とでいくつかの電解液溶を調整した。
【0089】
電気めっき:洗浄した銅板を1cm間隔で耐酸キュベットに置いた(BrandTech、759170)。次に、1mLの電解液及び10μLの0.1重量%酸化CNT懸濁液をキュベットに添加し、完全に混合する。その後、電気めっきセルを、銅電極をポテンショスタット(BioLogic、VMP3)に接続することにより完成させる。典型的には、カメラで析出層の堆積する映像を収集する間は、電極間に-1Vを90分間印加した。連続的析出の間で、対電極及び電解液を交換した。パルス電着を実行する場合は、電圧を、サイクルがオンの時には-1Vに設定し、10分~5秒0Vに設定した。使用したデューティサイクル(-1Vでのサイクルの割合)は、最大90%であった(すなわち、対応する0Vでのサイクルの割合は最大10%である)。選択された析出層のワックス埋め戻しは、融解したパラフィンワックス(Sigma-Aldrich、53-57℃)に電極を浸し、過剰な融解物を凝固させる前に除去することにより達成した。
【0090】
本プロセスの変更において、低濃度のCNTを有する電気めっき液を使用することが可能である。さらには、析出電圧を-1V~-1V未満に下げる(大きさで)ことができ、例えば、-0.6Vまで下げることができる。析出中に使用する電流密度も下げることができる。この効果は析出層の空隙率の低減にあり、ゆえに析出層のより高い密度に見いだされる。この方法によって、0.380~0.709の範囲の密度比が可能となることを見出した。
【0091】
データ収集及びプロセッシング:析出層の厚さを、収集した映像からフレーム単位で、画像内に端部を見つけ、その端部に沿った粒子をトラッキングすることで測定した(FIJI、TrackMateプラグイン)。その後、析出厚さをプロットする前に粒子トレースを平均化し、一方で、毎分の析出された高さを、MATLABでコード化されたデジタル・ローパス・フィルタを使用して平滑化されたトレースを微分することで計算した。SEM画像を、LEOGE分I1530VPを使用して収集した。
【0092】
材料中のCNTの体積分率の決定:CNT含有重量を析出された銅質量(析出中の移動した総電荷移動量から計算)を、総析出質量又は炭素原子含有率(EDXで計測)から減算することにより決定した。その後、CNT密度を知る必要がある(平均CNT直径及び壁数の測定に基づく)。これらの要素はその後、析出された複合材中のCNTの体積分率を決定するのに使用される。代替的に、材料中のCNTの体積分率が析出条件を知ることなく決定される場合、複合材の空隙は以下に説明される通りに決定することができ、複合材の量を決定し(空隙率を除き)及び金属及びCNTの質量%はエッチングにより選択的に金属を除去することで決定する。金属及びCNTの密度を知ること(上述の通り)は、その後複合材中のCNTの体積分率を決定するのに使用される。さらなる代替として、EDX量を使用することができる。
【0093】
本実施形態におけるCNT-Cu複合体は、1.5-4.5重量%(9.5-24.5v/v%)CNTを含む。これらはさらに電気めっきされ(電鋳)、完全に固体部(0%空隙率)を生成することができ、最小限のCNT含有量は、0.075重量%(0.48v/v%)に低減される。CNT体積分率を増加させる、例えば、10重量%(43.4v/v%)に到達するために、銅をエッチバックすることができる。ここで提案されるCNT含有量の適当な限度としては、析出された複合層中約20重量%(63.3v/v%)であり、これを超えると析出の速度及び形態を著しく妥協することになると考えられる。このレベルであれば、構造の埋め戻が完了した後、CNTの含有量は約1重量%(3.16v/v%)となる。
【0094】
CNTの官能化度の決定:文献の中では、官能基の重量分率はTGA測定によって得ることができることは一般的に許容されている。好ましい実施形態においては、この値は7~10重量%の間であることが見出される。理論的には、CNT表面上の単位面積あたりの官能基数の計算又はCNT表面上の官能化C原子の割合を計算することは可能である。しかし、これには、多くのCNTの層数、各層における最小の炭素数、及び官能基の特性(例えば、OHとCOOH、FTIRスペクトルから)の仮定を含む多くの仮定を必要とする。これらの仮定は計算結果に実質的効果がある。この理由により、本作業において、TGA測定により見いだされる官能基の重量分率に関して、CNTの官能化度を表現することが好ましい。官能化は、電解液中へのCNTの分散を助長するのが目的である。さらに、官能化は、CNTが(正の)電荷を有するため、又は、金属イオンと複合し(正の)電荷を増加させるための手段を提供し、WEへの移動を可能にする。WEでは、成長複合層CNTによって巻き込まれ得る及び/又は金属の核を生成し得る(仮に複合化が起こる場合であって、発明者らの資料作成時における理解としては、CNT上の金属の核生成に複合化は必要でない)。
【0095】
複合層の炭素量及び分布の決定:EDX(エネルギー分散X線分光分析)複合材内の原子炭素の分布を測定するために効果的に使用することができる。シグナルの浸透深さ及び粗面においても有効である。これは図17に示される。焦点はずれ、影あり、X線検出器から傾斜している試料の範囲は弱いシグナルを提供する。さらに、本技術の浸透深さは、電子加速電圧(電子浸透深さ)、材料の密度、X線回折と脱出深さに基づき異なるが、一般的には5μmを超える。本技術は、切取断面図に沿って離散したスポットで材料を、局所的にマッピングすることによって、層の深さを通して材料の組成物をプローブすることができる。EDXはまた、試料中の原子炭素含有量のシグナル浸透深さまでの定量分析を容易に提供することができる(図18)。原子炭素含有量における標準偏差の低減は、より大きい表示/収集領域及び大幅に増加した積算回数を使用することによって達成することができる。本方法でもってしても、実物大の±1-2%誤差は一般的である。
【0096】
複合層のための空隙率及び孔径分布の決定:バルク空隙率は、均一の複合材密度を仮定する一方で、試料体積を推定しその重量を計測することによって容易に得ることができる。BETツールは、生成されたナノ複合体の孔径分布を計測するために使用することができ、大きな試料では、その表面積を決定するためにも使用することができる(正確な測定には一般的に10m2程度が必要である)。最後に、孔径分布及び空隙率は、SEM画像から仮定することもできる。水銀多孔度など他の方法を使用することができる。
【0097】
本発明が上述の例示的な実施形態と共に記載されている一方で、本開示の時点で多くの同等な変更形態及び変形形態が当業者にとって明らかになろう。したがって、上に記載される本発明における例示的実施形態は、例証するものであり、限定するものではない。記載される実施形態に、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更がなされ得る。
【0098】
上記及び/又は以下に列挙される全ての文献は、参照により本明細書で援用する。
【0099】
Wonoh Lee,Sang-Bok Lee,Oyoung Choi,Jin-Woo Yi,Moon-Kwang Um,Joon-Hyung Byun,Erik T.Thostenson,Tsu-Wei Chou,“Formicary-like carbon nanotube/copper hybrid nanostructuresfor carbon fiber-reinforced composites by electrophoreticdeposition”J Mater Sci(2011)46:2359-2364
Susumu Arai,Morinobu Endo,Norio Kaneko“Ni-deposited multi-walled carbon nanotubes by electrodeposition”Carbon42(3):641-644,December 2004
Susumu Arai,Takashi Saito,Morinobu Endo“Cu-MWCNT Composite Films Fabricated by Electrodeposition”J.Electrochem.Soc.2010,volume157,issue3,D147-D153
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