(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】喫煙材を加熱するための装置
(51)【国際特許分類】
A24F 40/465 20200101AFI20220714BHJP
A24F 40/20 20200101ALI20220714BHJP
A24F 47/00 20200101ALI20220714BHJP
A24B 15/167 20200101ALI20220714BHJP
【FI】
A24F40/465
A24F40/20
A24F47/00
A24B15/167
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020175420
(22)【出願日】2020-10-19
(62)【分割の表示】P 2018567854の分割
【原出願日】2017-06-27
【審査請求日】2020-11-16
(32)【優先日】2016-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】アウン, ワリード アビ
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特許第6875044(JP,B2)
【文献】特表2015-531601(JP,A)
【文献】特表2015-524261(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104095291(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0064159(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/465
A24F 40/20
A24F 47/00
A24B 15/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように前記喫煙材を加熱するための装置とともに使用するための物品であって、
変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材の本体と、
喫煙可能でない熱伝導要素であり、加熱材の前記本体と熱接触し、前記加熱材の加熱によって前記要素の漸進的な加熱がもたらされるように加熱材の前記本体に対して配置された喫煙可能でない熱伝導要素と、
喫煙材であり、前記要素と熱接触し、前記漸進的な加熱によって前記喫煙材の漸進的な加熱がもたらされるように前記要素に対して配置された喫煙材と
を備えた物品。
【請求項2】
前記要素が加熱材の前記本体と面接触している、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記喫煙材が前記要素と面接触している、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
加熱材の前記本体が前記要素に少なくとも部分的に埋め込まれている、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
加熱材の前記本体が前記要素に完全に埋め込まれている、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記要素が前記喫煙材の長さの少なくとも大部分に沿って延在している、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記要素が前記喫煙材の全長に沿って延在している、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記加熱材が、導電性材料、磁性材料、及び磁性導電性材料からなる群から選択された1つ以上の材料を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記加熱材が金属又は金属合金を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記加熱材が、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、コバルト、導電性炭素、グラファイト、普通炭素鋼、ステンレス鋼、フェライトステンレス鋼、銅、及び青銅からなる群から選択された1つ以上の材料を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
前記喫煙材がタバコ及び/又は1つ以上の保湿剤を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記喫煙材が前記加熱材と面接触している、請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記要素が円錐又は円錐台である、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
前記喫煙材が非液体の喫煙材である、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
前記喫煙材がタバコを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項16】
前記喫煙材がタバコ以外の喫煙材を更に含む、請求項
15に記載の物品。
【請求項17】
前記喫煙材が、挽きタバコ、刻みラグタバコ、押出タバコ、再生タバコ、再生喫煙材、液体、ゲル、ゲル化シート、粉末、又は塊を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項18】
前記加熱材が閉回路の形態である、請求項1に記載の物品。
【請求項19】
前記要素が網目を備える、請求項1に記載の物品。
【請求項20】
前記喫煙材が、接着以外の固定により前記要素に固定される、請求項1に記載の物品。
【請求項21】
前記喫煙材が、前記要素に固定されない、請求項1に記載の物品。
【請求項22】
前記要素が前記喫煙材によって取り囲まれる、請求項1に記載の物品。
【請求項23】
前記要素が矩形の断面を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項24】
前記物品が反対側にある端部を有し、前記熱伝導要素は、前記物品のいずれの端部にも延在しない、請求項1に記載の物品。
【請求項25】
加熱材の前記本体は、2つの副面によって接合された反対側を向いた2つの主面を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項26】
前記熱伝導要素が導電性材料から作られる、請求項1に記載の物品。
【請求項27】
前記物品が、前記喫煙材を囲むカバーであり、互いに重なって接着される自由端を有する前記カバーを備える、請求項1に記載の物品。
【請求項28】
喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように前記喫煙材を加熱するための装置であって、
変動磁場を発生させるための磁場発生器と、
前記変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材の本体と、
喫煙可能でない熱伝導要素であり、加熱材の前記本体と熱接触し、前記変動磁場の侵入による前記加熱材の加熱によって前記要素の漸進的な加熱がもたらされるように加熱材の前記本体に対して配置された喫煙可能でない熱伝導要素と、
喫煙材を備えた物品の少なくとも一部分を受け入れるための加熱領域であり、前記要素と熱接触し、前記漸進的な加熱によって前記加熱領域の漸進的な加熱がもたらされるように前記要素に対して配置された加熱領域と
を備えた装置。
【請求項29】
加熱材の前記本体が前記要素に少なくとも部分的に埋め込まれている、請求項
28に記載の装置。
【請求項30】
加熱材の前記本体が前記要素に完全に埋め込まれている、請求項
28に記載の装置。
【請求項31】
前記要素が前記加熱領域内に突出している、請求項
28に記載の装置。
【請求項32】
前記要素が前記加熱領域の周りに少なくとも部分的に延在している、請求項
28に記載の装置。
【請求項33】
前記要素が前記加熱領域の長さの少なくとも大部分に沿って延在している、請求項
28に記載の装置。
【請求項34】
前記要素が前記加熱領域の全長に沿って延在している、請求項
33に記載の装置。
【請求項35】
前記要素の第1の部分と第2の部分がそれぞれ異なる熱質量を有する、請求項
28に記載の装置。
【請求項36】
前記要素の前記第2の部分が前記要素の前記第1の部分よりも厚く、
加熱材の前記本体が、前記要素の前記第1の部分にのみ面接触し、
前記要素の前記第2の部分には、変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材がない、請求項
35に記載の装置。
【請求項37】
前記喫煙材が前記加熱材と面接触している、請求項
28に記載の装置。
【請求項38】
前記要素が円錐又は円錐台である、請求項
28に記載の装置。
【請求項39】
前記喫煙材が非液体の喫煙材である、請求項
28に記載の装置。
【請求項40】
前記喫煙材がタバコを含む、請求項
28に記載の装置。
【請求項41】
前記喫煙材がタバコ以外の喫煙材を更に含む、請求項
40に記載の装置。
【請求項42】
前記喫煙材が、挽きタバコ、刻みラグタバコ、押出タバコ、再生タバコ、再生喫煙材、液体、ゲル、ゲル化シート、粉末、又は塊を含む、請求項
28に記載の装置。
【請求項43】
前記加熱材が閉回路の形態である、請求項
28に記載の装置。
【請求項44】
前記要素が網目を備える、請求項
28に記載の装置。
【請求項45】
前記喫煙材が、接着以外の固定により前記要素に固定される、請求項
28に記載の装置。
【請求項46】
前記喫煙材が、前記要素に固定されない、請求項
28に記載の装置。
【請求項47】
前記要素が前記喫煙材によって取り囲まれる、請求項
28に記載の装置。
【請求項48】
前記要素が矩形の断面を有する、請求項
28に記載の装置。
【請求項49】
加熱材の前記本体は、2つの副面によって接合された反対側を向いた2つの主面を有する、請求項28に記載の装置。
【請求項50】
前記熱伝導要素が導電性材料から作られる、請求項28に記載の装置。
【請求項51】
変動磁場を発生させるための前記磁場発生器が螺旋コイルを含む、請求項
28に記載の装置。
【請求項52】
喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように前記喫煙材を加熱するためのシステムであって、
喫煙材を備えた物品と、
装置と
を備え、前記装置は、
変動磁場を発生させるための磁場発生器と、
前記変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材の本体と、
喫煙可能でない熱伝導要素であり、加熱材の前記本体と熱接触し、前記変動磁場の侵入による前記加熱材の加熱によって前記要素の漸進的な加熱がもたらされるように加熱材の前記本体に対して配置された喫煙可能でない熱伝導要素と、
前記物品の少なくとも一部分を受け入れるための加熱領域であり、前記要素と熱接触し、前記漸進的な加熱によって前記加熱領域の漸進的な加熱がもたらされるように前記要素に対して配置された加熱領域と
を備える、システム。
【請求項53】
前記喫煙材が前記加熱材と面接触している、請求項
52に記載のシステム。
【請求項54】
前記要素が円錐又は円錐台である、請求項
52に記載のシステム。
【請求項55】
前記喫煙材が非液体の喫煙材である、請求項
52に記載のシステム。
【請求項56】
前記喫煙材がタバコを含む、請求項
52に記載のシステム。
【請求項57】
前記喫煙材がタバコ以外の喫煙材を更に含む、請求項
56に記載のシステム。
【請求項58】
前記喫煙材が、挽きタバコ、刻みラグタバコ、押出タバコ、再生タバコ、再生喫煙材、液体、ゲル、ゲル化シート、粉末、又は塊を含む、請求項
52に記載のシステム。
【請求項59】
前記加熱材が閉回路の形態である、請求項
52に記載のシステム。
【請求項60】
前記要素が網目を備える、請求項
52に記載のシステム。
【請求項61】
前記喫煙材が、接着以外の固定により前記要素に固定される、請求項
52に記載のシステム。
【請求項62】
前記喫煙材が、前記要素に固定されない、請求項
52に記載のシステム。
【請求項63】
前記要素が前記喫煙材によって取り囲まれる、請求項
52に記載のシステム。
【請求項64】
前記要素が矩形の断面を有する、請求項
52に記載のシステム。
【請求項65】
前記物品が反対側にある端部を有し、前記熱伝導要素は、前記物品のいずれの端部にも延在しない、請求項52に記載のシステム。
【請求項66】
加熱材の前記本体は、2つの副面によって接合された反対側を向いた2つの主面を有する、請求項52に記載のシステム。
【請求項67】
前記熱伝導要素が導電性材料から作られる、請求項52に記載のシステム。
【請求項68】
前記物品が、前記喫煙材を囲むカバーであり、互いに重なって接着される自由端を有する前記カバーを備える、請求項52に記載のシステム。
【請求項69】
変動磁場を発生させるための前記磁場発生器が螺旋コイルを含む、請求項
52に記載のシステム。
【請求項70】
喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように前記喫煙材を加熱する方法であって、
変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材の本体を用意するステップと、
喫煙可能でない熱伝導要素を用意するステップであり、前記喫煙可能でない熱伝導要素が、加熱材の前記本体と熱接触し、前記変動磁場の侵入による前記加熱材の加熱によって前記要素の漸進的な加熱がもたらされるように加熱材の前記本体に対して配置された、ステップと、
前記要素と熱接触する喫煙材を用意するステップと、
前記要素の漸進的な加熱がもたらされ、以て、前記喫煙材の漸進的な加熱がもたらされるように、前記加熱材に前記変動磁場を侵入させるステップと
を含む方法。
【請求項71】
前記喫煙材が前記加熱材と面接触している、請求項
70に記載の方法。
【請求項72】
前記要素が円錐又は円錐台である、請求項
70に記載の方法。
【請求項73】
前記喫煙材が非液体の喫煙材である、請求項
70に記載の方法。
【請求項74】
前記喫煙材がタバコを含む、請求項
70に記載の方法。
【請求項75】
前記喫煙材がタバコ以外の喫煙材を更に含む、請求項
74に記載の方法。
【請求項76】
前記喫煙材が、挽きタバコ、刻みラグタバコ、押出タバコ、再生タバコ、再生喫煙材、液体、ゲル、ゲル化シート、粉末、又は塊を含む、請求項
70に記載の方法。
【請求項77】
前記加熱材が閉回路の形態である、請求項
70に記載の方法。
【請求項78】
前記要素が網目を備える、請求項
70に記載の方法。
【請求項79】
前記喫煙材が、接着以外の固定により前記要素に固定される、請求項
70に記載の方法。
【請求項80】
前記喫煙材が、前記要素に固定されない、請求項
70に記載の方法。
【請求項81】
前記要素が前記喫煙材によって取り囲まれる、請求項
70に記載の方法。
【請求項82】
前記要素が矩形の断面を有する、請求項
70に記載の方法。
【請求項83】
加熱材の前記本体は、2つの副面によって接合された反対側を向いた2つの主面を有する、請求項70に記載の方法。
【請求項84】
前記熱伝導要素が導電性材料から作られる、請求項70に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱するための装置、そのような装置とともに使用するための物品、そのような装置及びそのような物品を備えたシステム、並びに、喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙巻タバコ、葉巻タバコなどの喫煙品は、使用の間、タバコを燃焼させてタバコ煙を発生させる。燃焼させずに化合物を放出する製品を創出することによってこれらの喫煙品に代わるものを提供する試みがなされている。そのような製品の例としては、いわゆる「非燃焼加熱式(heat not burn)」製品、又はタバコ加熱装置若しくはタバコ加熱製品がある。これらは、材料を燃焼するのではなく加熱することで化合物を放出する。その材料は、例えば、タバコでもよいし、他の非タバコ製品でもよい。非タバコ製品は、ニコチンを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様は、喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱するための装置とともに使用するための物品を提供する。この物品は、変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材の本体と、喫煙可能でない熱伝導要素であり、加熱材の本体と熱接触し、加熱材の加熱によって要素の漸進的な加熱がもたらされるように加熱材の本体に対して配置された喫煙可能でない熱伝導要素と、喫煙材であり、要素と熱接触し、漸進的な加熱によって喫煙材の漸進的な加熱がもたらされるように要素に対して配置された喫煙材とを備えている。
【0004】
例示的な実施形態では、要素は加熱材の本体と面接触している。
【0005】
例示的な実施形態では、喫煙材は要素と面接触している。
【0006】
例示的な実施形態では、加熱材の本体は要素に少なくとも部分的に埋め込まれている。
【0007】
例示的な実施形態では、加熱材の本体は要素に完全に埋め込まれている。
【0008】
例示的な実施形態では、要素は喫煙材の長さの少なくとも大部分に沿って延在している。
【0009】
例示的な実施形態では、加熱材の本体は要素の第1の端部にのみ配置され、要素の反対側の第2の端部には、変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材がない。
【0010】
例示的な実施形態では、加熱材は、導電性材料、磁性材料、及び磁性導電性材料からなる群から選択された1つ以上の材料を含む。
【0011】
例示的な実施形態では、加熱材は金属又は金属合金を含む。
【0012】
例示的な実施形態では、加熱材は、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、コバルト、導電性炭素、グラファイト、普通炭素鋼、ステンレス鋼、フェライトステンレス鋼、銅、及び青銅からなる群から選択された1つ以上の材料を含む。
【0013】
例示的な実施形態では、喫煙材はタバコ及び/又は1つ以上の保湿剤を含む。
【0014】
例示的な実施形態では、喫煙材は非液体である。
【0015】
本発明の第2の態様は、喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱するための装置を提供する。この装置は、変動磁場を発生させるための磁場発生器と、変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材の本体と、喫煙可能でない熱伝導要素であり、加熱材の本体と熱接触し、変動磁場の侵入による加熱材の加熱によって要素の漸進的な加熱がもたらされるように加熱材の本体に対して配置された喫煙可能でない熱伝導要素と、喫煙材を備えた物品の少なくとも一部分を受け入れるための加熱領域であり、要素と熱接触し、漸進的な加熱によって加熱領域の漸進的な加熱がもたらされるように要素に対して配置された加熱領域とを備えている。
【0016】
例示的な実施形態では、加熱材の本体は要素に少なくとも部分的に埋め込まれている。
【0017】
例示的な実施形態では、加熱材の本体は要素に完全に埋め込まれている。
【0018】
例示的な実施形態では、加熱材の本体は要素の第1の端部にのみ配置され、要素の反対側の第2の端部には、変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材がない。
【0019】
例示的な実施形態では、要素は加熱領域内に突出している。
【0020】
例示的な実施形態では、要素は加熱領域の周りに少なくとも部分的に延在している。
【0021】
例示的な実施形態では、要素は加熱領域の長さの少なくとも大部分に沿って延在している。
【0022】
例示的な実施形態では、要素の第1の部分と第2の部分はそれぞれ異なる熱質量(thermal mass)を有する。
【0023】
例示的な実施形態では、要素の第2の部分は要素の第1の部分よりも厚く、加熱材の本体は、要素の第1の部分にのみ面接触し、要素の第2の端部には、変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材がない。
【0024】
例示的な実施形態では、熱質量は要素に沿った距離とともに変わる。
【0025】
例示的な実施形態では、熱質量は要素の長さの少なくとも大部分にわたって変わる。
【0026】
例示的な実施形態では、加熱材の第1の部分の厚さが加熱材の第2の部分の厚さと異なる結果、要素の第1の部分と第2の部分はそれぞれ異なる熱質量を有する。
【0027】
例示的な実施形態では、要素の第1の部分の材料組成は、要素の第2の部分の材料組成と同じである。
【0028】
例示的な実施形態では、要素の材料組成は要素全体で均一である。
【0029】
例示的な実施形態では、要素の第1の部分の密度は、要素の第2の部分の密度と同じである。
【0030】
例示的な実施形態では、要素の密度は要素全体で均一である。
【0031】
例示的な実施形態では、装置は、喫煙材を燃焼させることなく喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱するためのものである。
【0032】
本発明の第3の態様は、喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱するためのシステムを提供する。このシステムは、喫煙材を備えた物品と、装置とを備えている。この装置は、変動磁場を発生させるための磁場発生器と、変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材の本体と、喫煙可能でない熱伝導要素であり、加熱材の本体と熱接触し、変動磁場の侵入による加熱材の加熱によって要素の漸進的な加熱がもたらされるように加熱材の本体に対して配置された喫煙可能でない熱伝導要素と、物品の少なくとも一部分を受け入れるための加熱領域であり、要素と熱接触し、漸進的な加熱によって加熱領域の漸進的な加熱がもたらされるように要素に対して配置された加熱領域とを備えている。
【0033】
例示的な実施形態では、第3の態様のシステムの装置は第2の態様の装置である。第3の態様のシステムの装置は、第2の態様の装置の例示的な各実施形態に存在するような上記の特徴のうちの任意の1つ以上の特徴を有することができる。
【0034】
本発明の第4の態様は、喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱する方法を提供する。この方法は、変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材の本体を用意するステップと、喫煙可能でない熱伝導要素を用意するステップであり、この喫煙可能でない熱伝導要素が、加熱材の本体と熱接触し、変動磁場の侵入による加熱材の加熱によって要素の漸進的な加熱がもたらされるように加熱材の本体に対して配置された、ステップと、要素と熱接触する喫煙材を用意するステップと、要素の漸進的な加熱がもたらされ、以て、喫煙材の漸進的な加熱がもたらされるように、加熱材に変動磁場を侵入させるステップとを含む。
【0035】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱するための装置とともに使用するための物品の例の概略断面図である。
【
図3】喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱するための装置の例の概略断面図である。
【
図4】喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱するための別の装置の例の概略断面図である。
【
図5】喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱するための別の装置の例の概略断面図である。
【
図6】喫煙材を備えた物品と、喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱するための
図3の装置とを備えたシステムの例の概略断面図である。
【
図7】喫煙材を備えた物品と、喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱するための
図4の装置とを備えた別のシステムの例の概略断面図である。
【
図8】喫煙材を備えた物品と、喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱するための
図5の装置とを備えた別のシステムの例の概略断面図である。
【
図9】喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱する方法の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本書では、用語「喫煙材」は、加熱されると揮発成分を、典型的には蒸気又はエアロゾルの形態で供する材料を含む。「喫煙材」は非タバコ含有材料であってもよいし、タバコ含有材料であってもよい。「喫煙材」は、例えば、タバコ自体、タバコ派生物、膨張タバコ、再生タバコ、タバコ抽出物、均質化タバコ、又はタバコ代替品のうちの1つ以上を含んでいてもよい。喫煙材は、挽きタバコ、刻みラグタバコ、押出タバコ、再生タバコ、再生喫煙材、液体、ゲル、ゲル化シート、粉末、又は塊などの形態とすることが可能である。「喫煙材」は、他に非タバコ製品を含んでいてもよい。この非タバコ製品は、製品によってニコチンを含んでもよいし、含まないでもよい。「喫煙材」は、1つ以上の保湿剤、例えばグリセロール又はプロピレングリコールを含んでいてもよい。
【0038】
本書では、用語「加熱材」又は「ヒーター材」は、変動磁場の侵入によって加熱可能な材料を指す。
【0039】
誘導加熱は、導電性物体に変動磁場を侵入させることによってその物体を加熱するプロセスである。このプロセスは、ファラデーの電磁誘導の法則及びオームの法則によって説明される。誘導ヒーターは、電磁石と、この電磁石に交流電流などの変動電流を流すための装置を備えることができる。加熱しようとする物体と電磁石が、電磁石によって生じた変動磁場がこの物体に侵入するような適切な相対位置に配置されると、この物体内に1つ以上の渦電流が発生する。この物体は電流の流れに対する抵抗を有する。したがって、この物体内にこのような渦電流が発生すると、渦電流が物体の電気抵抗に抗して流れ、それによってこの物体が加熱される。このプロセスは、ジュール加熱、オーム加熱、又は抵抗加熱と呼ばれる。誘導加熱することができる物体は、サセプタとして知られている。
【0040】
サセプタが閉回路の形態のときは、使用時におけるサセプタと電磁石との磁気結合が強くなり、その結果、ジュール加熱が増大し、又は改善されることが分かっている。
【0041】
磁気ヒステリシス加熱は、磁性材料からなる物体に変動磁場が侵入することによって物体を加熱するプロセスである。磁性材料は、原子スケールの磁石すなわち磁気双極子を多く含んでいると考えることができる。磁場がこのような材料に侵入すると、磁気双極子は磁場に沿って整列する。したがって、交流磁場(例えば、電磁石によって生じたもの)などの変動磁場が磁性材料に侵入すると、磁気双極子の向きは、印加された変動磁場に応じて変化する。このような磁気双極子の再配向によって、磁性材料内に熱が発生する。
【0042】
物体が導電性及び磁性の両方を有するときは、その物体に変動磁場を侵入させると、物体にジュール加熱及び磁気ヒステリシス加熱の両方を生じさせることができる。さらに、磁性材料を使用すると、磁場を強めることができ、それによりジュール加熱を強めることができる。
【0043】
上記のプロセスの各々において、熱は、外部熱源によって熱伝導により発生するのではなく、物体自体の内部で発生するので、物体内の急速な温度上昇と、より均一な熱分布を達成することができる。これは、特に、物体の材料及び幾何形状を適切に選び、その物体に対して変動磁場の大きさ及び向きを適切に選ぶことによって達成することができる。さらに、誘導加熱及び磁気ヒステリシス加熱では、変動磁場の源と物体との間に物理的な接続部を設ける必要がないので、設計自由度及び加熱プロファイルの制御性を高めるとともに、コストを抑えることができる。
【0044】
図1及び2を参照すると、本発明の実施形態による物品の例の概略断面図及び概略透視図が示されている。物品1は、喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱するための装置とともに使用するためのものである。
【0045】
物品1は、変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材10の本体と、喫煙可能でない熱伝導要素20と、喫煙材30と、喫煙材30の周りのカバー40とを備えている。これらの材料の各々の例は下記で説明する。
【0046】
カバー40は、物品1の外面を画定し、使用時、装置と接触することができる。この実施形態では、物品1は、実質的に円形の断面を有する細長い円筒状である。しかしながら、他の実施形態では、物品1は、円形以外の断面を有してもよく、及び/又は細長くなくてもよく、及び/又は円筒状でなくてもよい。この実施形態では、物品1は、紙巻タバコに近い大きさを有する。
【0047】
この実施形態において、カバー40はラッパー42を備え、ラッパー42は、その自由端が互いに重なるように喫煙材30の周りに巻かれる。したがって、ラッパー42は、物品1の周方向の外面のすべて又は大部分を形成する。ラッパー42は、紙、再生タバコなどの再生喫煙材などから形成することができる。この実施形態のカバー40はまた、ラッパー42の重ねられた自由端を互いにくっつける接着剤(図示せず)を備える。接着剤は、例えば、アラビアゴム、天然樹脂又は合成樹脂、でんぷん、及びニスのうちの1つ以上を含むことができる。接着剤は、ラッパー42の重ねられた自由端が離れるのを防ぐ助けとなる。他の実施形態では、接着剤を省略してもよい。
【0048】
カバー40は喫煙材30を取り囲む。カバー40は、物品1の輸送中及び使用中に喫煙材30が損傷しないように保護する助けとなる。使用中、カバー40はまた、空気の流れが喫煙材30に入ってそれを通るように導く助けとなり得、蒸気又はエアロゾルの流れが喫煙材30を通ってそれを出るように導く助けとなり得る。
【0049】
この実施形態では、喫煙材30は管の形状をしている。この管は実質的に円形断面を有している。喫煙材30は、物品1の一端から物品1の反対側の端部まで延在する。したがって、使用時、空気は、物品1の一端で喫煙材30内に引き込むことができ、その空気は、喫煙材30を通過して、喫煙材30から放出された揮発成分を受け取ることができ、次いで、典型的には蒸気又はエアロゾルの形態の揮発成分は、物品1の反対側の端部で喫煙材30から引き出すことができる。物品1が細長いこの実施形態において、喫煙材30がその間を延在する物品1のこれらの端部は、物品1の長手方向の両端である。しかしながら、他の実施形態では、これらの端部は、物品の任意の2つの反対側にある端部又は側など、物品の任意の2つの端部又は側であってもよい。
【0050】
要素20は細長く、喫煙材30の一端から喫煙材30の反対側の端部まで延在する。これは、使用時、喫煙材30をより完全に加熱する助けとなり得る。しかしながら、他の実施形態では、要素20は、喫煙材30の両端のいずれにも延在しなくてもよく、又は、喫煙材30の端部の一方までのみ延在し、喫煙材30の端部の他方からは離間してもよい。要素20は、喫煙材30の長さの大部分に沿って延在することができる。
【0051】
要素20は、物品1の一端から物品1の反対側の端部まで延在する。これは、物品1の製造の助けになり得る。しかしながら、他の実施形態では、要素20は、物品1の両端のいずれにも延在しなくてもよく、又は、物品1の端部の一方までのみ延在し、物品1の端部の他方からは離間してもよい。
【0052】
この実施形態では、要素20は、物品1の軸と実質的に揃えられた軸に沿って延在する。これは、物品1の製造の助けになり得る。この実施形態では、揃えられた軸は一致する。この実施形態の変形では、揃えられた軸は互いに平行であってもよい。しかしながら、他の実施形態では、軸は互いに傾けてもよい。
【0053】
この実施形態において、要素20は喫煙材30によって取り囲まれる。すなわち、喫煙材30は要素20の周りに延在する。要素20が喫煙材30の両端のいずれにも延在しない実施形態では、喫煙材30は、要素20の周りに延在し、要素20の端部を覆うこともでき、その結果、要素20は喫煙材30によって取り囲まれる。
【0054】
要素20は、その長さに垂直な矩形、又は実質的に矩形の断面を有する。要素20は、2つの副面によって接合された反対側を向いた2つの主面を有する。したがって、要素20の奥行き又は厚さは、要素20の他の寸法に比べると比較的短い。しかしながら、他の実施形態では、要素20は、円形、楕円形、環状、多角形、方形、三角形、星形、放射状フィン形、X字形、T字形、中空、又は孔開きなど、矩形以外の形状の断面を有することができる。
【0055】
この実施形態では、要素20の断面は、要素20の長さに沿って一定である。さらに、この実施形態では、要素20は、平面状、又は実質的に平面状である。この実施形態の要素20は、平坦な帯板又はリボンと考えることができる。しかしながら、他の実施形態ではその限りではない。
【0056】
いくつかの実施形態では、要素20は平面状でなくともよい。例えば、要素20は、波状の経路又は波打った経路を辿ってもよく、ねじれていてもよく、ひだ状、螺旋状、渦巻状であってもよく、上に突起を有する、及び/又は中にぎざぎざを有する板又は片又はリボンを備えてもよく、網目を備えてもよく、又は不均一で平面状でない形状を有してもよい。このような平面状でない形状は、空気が物品1を通過して、喫煙材30が加熱されたときに生成される揮発材を受け取る助けとなり得る。平面状でない形状によって、空気は曲がりくねった経路を辿り、空気に乱流が生じ、要素20から喫煙材30への熱伝達がより良くなり得る。平面でない形状によって、また、要素20の単位長さ当たりの要素20の表面積を大きくすることもできる。これは、要素20によって喫煙材30の加熱を増大させる、又は改善することができる。
【0057】
要素20は、加熱材10の本体と熱接触及び面接触の両方の接触をしている。この実施形態では、加熱材10の本体は要素20に埋め込まれている。より詳細には、加熱材10の本体は要素20に取り囲まれ、その結果、加熱材10の本体は要素20に完全に埋め込まれている。他の実施形態では、加熱材10の本体は、要素20に部分的にだけ埋め込まれてもよい、又は、加熱材10の本体は、要素20の表面上にあってもよく、要素20に埋め込まれなくてもよい。いくつ他の実施形態では、要素20は加熱材10の本体と熱接触することができるが、加熱材10の本体と面接触しなくてもよい。
【0058】
この実施形態では、加熱材10の本体は、要素20の第1の端部にのみ配置されている。要素20の反対側の第2の端部には加熱材がない。したがって、加熱材10の本体と要素20は、使用時の加熱材の加熱によって要素20の漸進的な加熱がもたらされるような相対位置に配置されている。より詳細には、使用時、加熱材10の本体から発する熱がまず、要素20の第1の端部を加熱し、次いで、要素20の第1の端部から次第に離れていく要素20の部分が順に加熱される。他の実施形態では、加熱材10の本体と要素20は、加熱材10の加熱によってやはり要素20の漸進的な加熱をもたらすことができる異なった態様の相対位置に配置されてもよい。例えば、加熱材10の本体は要素20の中央に配置され、要素20の第1及び第2の端部の両方から離れていてもよい。
【0059】
加熱材10の本体は、その長さに垂直な矩形、又は実質的に矩形の断面を有する。加熱材10の本体は、2つの副面によって接合された反対側を向いた2つの主面を有する。したがって、加熱材10の本体の奥行き又は厚さは、加熱材10の本体の他の寸法に比べると比較的短い。しかしながら、他の実施形態では、加熱材10の本体は、円形、楕円形、環状、星形、多角形、方形、三角形、X字形、又はT字形など、矩形以外の形状の断面を有することができる。
【0060】
喫煙材30は要素20と熱接触している。したがって、要素20は、使用時、喫煙材30を加熱するために加熱可能である。この実施形態では、喫煙材30は、要素20と面接触している。これは、喫煙材30を要素20に接着することによって達成される。しかしながら、他の実施形態では、この固定は接着以外によるものでもよい。いくつかの実施形態では、喫煙材30は、このように要素20に固定されなくてもよい。
【0061】
この実施形態では、喫煙材30は要素20の全長に沿って要素20を取り囲む。したがって、喫煙材30は、上記のような要素20の漸進的な加熱によって喫煙材30の漸進的な加熱がもたらされるように、要素20に対して配置されている。より詳細には、使用時、加熱材10の本体に比較的近い位置にある要素20の第1の部分から発する熱はまず、隣接する喫煙材30の第1の部分を加熱する。これは、喫煙材の第1の部分の喫煙材の少なくとも1つの成分の揮発及びその中のエアロゾルの形成を開始させる。時間が経つと、加熱材10の本体から比較的離れた要素20の第2の部分の温度が、要素20の第1の部分からの熱伝導によって上昇する。これによって、要素20の第2の部分に隣接する喫煙材30の第2の部分が、要素20の第2の部分から発する熱によって加熱される。これは、喫煙材の第2の部分の喫煙材の少なくとも1つの成分の揮発及びその中のエアロゾルの形成を開始させる。したがって、物品1の喫煙材30が時間とともに漸進的に加熱される。これは、使用者が吸入するために、エアロゾルを物品1の端部から比較的素早く形成して放出することを可能にする助けとなり、さらに、喫煙材30からのエアロゾルの経時的な放出をさらに可能にし、その結果、喫煙材30の第1の部分がエアロゾルの生成を終えた後でさえ、エアロゾルを形成して放出し続ける。喫煙材の第1の部分が揮発可能な成分を使い尽くした結果、このようにエアロゾルの生成が終わることができる。
【0062】
他の実施形態では、喫煙材30と要素20は、要素20の漸進的な加熱によってやはり喫煙材30の漸進的な加熱をもたらすることができる異なった態様の相対位置に配置されてもよい。例えば、喫煙材30は要素20の一方の側にのみ配置されてもよい、及び/又は、要素20の全長に沿って延在しなくてもよく、使用時、要素20の漸進的な加熱によってやはり喫煙材30の漸進的な加熱がもたらされる。いくつかの実施形態では、喫煙材30は、要素20と熱接触しつつ、要素20から隙間を空けて配置されて、要素20の漸進的な加熱によって喫煙材30の漸進的な加熱がもたらされるように、要素20に対して配置されてもよい。
【0063】
図3を参照すると、本発明の実施形態による装置の例の概略透視図が示されている。装置100は、喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱するためのものである。
【0064】
装置100は、変動磁場を発生させるための磁場発生器112と、変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材130の本体と、加熱材130の本体と熱接触及び面接触の両方の接触をして、変動磁場の侵入による加熱材の加熱によって要素140の漸進的な加熱がもたらされるように加熱材130の本体に対して配置された喫煙可能でない熱伝導要素140と、喫煙材を備えた物品の少なくとも一部分を受け入れるための加熱領域111であり、要素140と熱接触し、漸進的な加熱によって加熱領域111の漸進的な加熱がもたらされるように、要素140に対して配置されている加熱領域111とを備える。
【0065】
より詳細には、この実施形態の装置100は、本体110と吸い口120とを備える。吸い口120は、プラスチック材、厚紙、酢酸セルロース、紙、金属、ガラス、セラミック、又はゴムなどの任意の適切な材料で作ることができる。吸い口120は、それを貫通する通路122を画定する。吸い口120は、加熱領域111内への開口を覆うように本体110に対して配置可能である。吸い口120を本体110に対してこのように配置すると、吸い口120の通路122は、加熱領域111と流体連通する。使用時、通路122は、揮発材が加熱領域111に挿入された物品から装置100の外部に流れることを可能にする通路として働く。この実施形態では、装置100の吸い口120は、本体110に吸い口120を接続するように、本体110と取外し可能に係合可能である。他の実施形態では、吸い口120は、蝶番又は可撓性部材などによって、本体110と永続的に接続することができる。物品自体が吸い口を備える実施形態などのいくつかの実施形態では、装置100の吸い口120を省略することができる。
【0066】
装置100は、加熱領域111を装置100の外部と流体接続する空気入口を画定することができる。このような空気入口は、装置100の本体110及び/又は装置100の吸い口120によって画定することができる。使用者は、吸い口120の通路122を通して(1つ以上の)揮発成分を引き込むことによって喫煙材の(1つ以上の)揮発成分を吸入することができる。(1つ以上の)揮発成分が物品から出ると、空気は、装置100の空気入口を経て加熱領域111内に引き込むことができる。
【0067】
この実施形態では、本体110は加熱領域111を備える。加熱領域111は、物品の少なくとも一部分を受け入れるための凹部111を備える。他の実施形態では、加熱領域111は、凹部以外、例えば、棚、面、又は突起であってもよく、また、物品と協働するため又はそれを受け入れるために物品との機械的な嵌合を必要としてもよい。この実施形態では、加熱領域111は細長く、物品全体を受け入れるような大きさと形状である。他の実施形態では、加熱領域111は物品の一部分だけ受け入れるような大きさであってもよい。
【0068】
この実施形態では、磁場発生器112は、電源113と、コイル114と、コイル114に交流電流などの変動電流を流すためのデバイス116と、制御器117と、制御器117を使用者が操作するためのユーザインターフェース118とを備える。
【0069】
この実施形態の電源113は充電式電池である。他の実施形態では、電源113は、例えば、非充電式電池、キャパシタ、電池-キャパシタハイブリッド、又は商用電源への接続部など、充電式電池以外とすることができる。
【0070】
コイル114は任意の適切な形態を採ることができる。この実施形態では、コイル114は、銅などの導電性材料の螺旋コイルである。いくつかの実施形態では、磁場発生器112は、コイル114が巻かれた透磁性コアを備えることができる。このような透磁性コアは、使用時、コイル114によって生成される磁束を集中させ、磁場をより強力にする。透磁性コアは、例えば鉄で作ることができる。いくつかの実施形態では、透磁性コアは、コイル114の長さに沿って部分的にだけ延在して、特定の領域のみに磁束を集中させることができる。いくつかの実施形態では、コイルは平面コイルでもよい。すなわち、コイルは2次元の渦巻体であってもよい。
【0071】
図3を考慮すると、この実施形態では、要素140が加熱領域111内に突出していることが理解されよう。要素140は、自由な第1の端部から、要素140が本体110の残りの部分に取り付けられた第2の端部までの長さを有している。自由端は、物品が加熱領域111内に挿入されると物品に入るように加熱領域111に対して配置される。要素140は、加熱領域111の長さの大部分に沿って延在する。いくつかの実施形態では、要素140は加熱領域111の全長に沿って延在する。
【0072】
要素140は、その長さに垂直な矩形の断面を有する。要素140の奥行き又は厚さは、要素140の他の寸法に比べると比較的短い。しかしながら、他の実施形態では、要素140は、円形、楕円形、環状、星形、多角形、方形、三角形、X字形、又はT字形など、矩形以外の形状の断面を有することができる。この実施形態では、要素140の断面は、要素140の長さに沿って一定である。さらに、この実施形態では、要素140は、平面状、又は実質的に平面状である。この実施形態の要素140は、平坦な帯板と考えることができる。しかしながら、他の実施形態ではその限りではない。例えば、いくつかの実施形態では、要素140は中空、又は孔が空いていてもよい。
【0073】
この実施形態では、加熱材130の本体は要素140に埋め込まれている。より詳細には、加熱材130の本体は要素140に取り囲まれ、その結果、加熱材130の本体は要素140に完全に埋め込まれている。他の実施形態では、加熱材130の本体は、要素140に部分的にだけ埋め込まれてもよい、又は、加熱材130の本体は、要素140の表面上にあってもよく、要素140に埋め込まれなくてもよい。いくつ他の実施形態では、要素140は加熱材130の本体と熱接触することができるが、加熱材130の本体と面接触しなくてもよい。
【0074】
加熱材130の本体は、その長さに垂直な矩形、又は実質的に矩形の断面を有する。加熱材130の本体は、2つの副面によって接合された反対側を向いた2つの主面を有する。したがって、加熱材130の本体の奥行き又は厚さは、加熱材130の本体の他の寸法に比べると比較的短い。しかしながら、他の実施形態では、加熱材130の本体は、円形、楕円形、環状、星形、多角形、方形、又は三角形など、矩形以外の形状の断面を有することができる。
【0075】
この実施形態では、加熱材130の本体は、要素140の第1の端部にのみ配置されている。この場合、要素140の第1の端部は要素140の自由端である。要素140の反対側の第2の端部には加熱材がない。したがって、加熱材130の本体と要素140は、使用時の加熱材の加熱によって要素140の漸進的な加熱がもたらされるような相対位置に配置されている。より詳細には、使用時、加熱材130の本体から発する熱はまず、要素140の第1の端部を加熱する。次いで、要素140の第1の端部からの熱伝導によって、要素140の第1の端部から次第に離れていく要素140の部分が順に加熱される。他の実施形態では、加熱材130の本体と要素140は、加熱材130の漸進的な加熱によってやはり要素140の漸進的な加熱をもたらすことができる異なった態様の相対位置に配置されてもよい。例えば、喫煙材130の本体は要素140の第2の端部にのみ配置されてもよい、また、要素140の第1の端部には加熱材がなくてもよい。
【0076】
要素140が加熱領域111内に突出しているので、要素140の漸進的な加熱によって加熱領域111の漸進的な加熱がもたらされ、したがって加熱領域111内のいかなるものも漸進的に加熱されることが認識されよう。したがって、(
図6に示し、下記で説明するように)使用時に喫煙材を備えた物品が加熱領域111に配置されると、喫煙材130の本体に比較的近い位置にある要素140の第1の部分から発する熱は、加熱材130の本体に比較的近い物品の第1の部分の喫煙材を加熱する。これは、物品の第1の部分の喫煙材の少なくとも1つの成分の揮発及びその中のエアロゾルの形成を開始させる。時間が経つと、加熱材130の本体から比較的離れた要素140の第2の部分の温度が、要素140の第1の部分からの熱伝導によって上昇する。これによって、要素140の第2の部分に隣接する物品の第2の部分の喫煙材が、要素140の第2の部分から発する熱によって加熱される。これは、物品の第2の部分の喫煙材の少なくとも1つの成分の揮発及びその中のエアロゾルの形成を開始させる。したがって、物品の喫煙材が時間とともに漸進的に加熱される。上記と同様に、これは、使用者が吸入するために、エアロゾルを物品の端部から比較的素早く形成して放出することを可能にする助けとなり、さらに、喫煙材からのエアロゾルの経時的な放出をさらに可能にし、その結果、物品の第1の部分の喫煙材がエアロゾルの生成を終えた後でさえ、エアロゾルを形成して放出し続ける。
【0077】
物品が加熱領域111に配置されると、要素140は物品の喫煙材と熱接触する。物品が加熱領域111に配置されると、要素140が物品の喫煙材と面接触することが好ましい。したがって、要素140から喫煙材に熱を直接伝えることができる。他の実施形態では、要素140は喫煙材と面接触しないようにしてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、喫煙材は、要素140と熱接触しつつ、要素140から隙間を空けて配置されてよく、又は物品のラッパーによって間隔を空けて配置されてもよい。
【0078】
この実施形態では、コイル114は、加熱領域111の長手方向軸と実質的に揃えられた長手方向軸に沿って延在する。揃えられた軸は一致する。この実施形態の変形では、揃えられた軸は互いに平行であってもよい。しかしながら、他の実施形態では、軸は互いに傾けてもよい。さらに、コイル114は、要素140の長手方向軸と実質的に一致する長手方向軸に沿って延在する。他の実施形態では、コイル114及び要素140の長手方向軸は、互いに平行にすることによって互いに揃えることができる、又は、互いに傾けることができる。この実施形態では、コイル114及び磁場発生器112の残りの部分は、要素140及び加熱領域111に対して固定された位置にある。
【0079】
この実施形態では、コイル114に変動電流を流すためのデバイス116は、電源113とコイル114との間に電気的に接続される。この実施形態では、制御器117もまた、電源113に電気的に接続され、デバイス116に通信可能に接続されてデバイス116を制御する。より詳細には、この実施形態では、制御器117はデバイス116を制御して、電源113からコイル114への電力の供給を制御するためのものである。この実施形態では、制御器117は、プリント回路基板(PCB:printed circuit board)上の集積回路(IC:integrated circuit)などのICを備える。他の実施形態では、制御器117は異なる形態を採ることができる。いくつかの実施形態では、本装置は、デバイス116及び制御器117を備える単一の電気又は電子構成部品を有することができる。この実施形態では、制御器117は、ユーザインターフェース118を使用者が操作することによって動作する。この実施形態では、ユーザインターフェース118は、本体110の外側に配置される。ユーザインターフェース118は、押しボタン、トグルスイッチ、ダイヤル、タッチスクリーンなどを備えることができる。他の実施形態では、ユーザインターフェース118は遠隔にあって、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))などによって装置の残りの部分に無線で接続することができる。
【0080】
この実施形態では、使用者がユーザインターフェース118を操作すると、制御器117は、デバイス116に、コイル114に交流電流を流してコイル114に交流磁場を発生させる。装置100のコイル114と加熱材130の本体は、コイル114によって生成された変動磁場が加熱材130の本体に侵入するような適切な相対位置に配置されている。この実施形態では、加熱材は導電性材料であり、したがって、この侵入は、加熱材に1つ以上の渦電流を生じさせる。渦電流が加熱材の電気抵抗に抗して加熱材内を流れると、加熱材はジュール加熱によって加熱される。加熱材が磁性材料で作られているとき、加熱材内の磁気双極子の向きは印加された磁場の変化に応じて変化し、それによって、加熱材内に熱が生成される。
【0081】
この実施形態では、磁場発生器112のコイル114のインピーダンスは、加熱材130の本体のインピーダンスと等しい、又は実質的に等しい。もしも、その代わりに、加熱材130の本体のインピーダンスがコイル114のインピーダンスよりも低い場合、使用時の加熱材130の本体の両端間に発生する電圧は、インピーダンスを一致させたときに加熱材130の本体の両端間に生成することができる電圧よりも低くなる可能性がある。或いは、その代わりに、加熱材130の本体のインピーダンスがコイル114のインピーダンスよりも高い場合、使用時の加熱材130の本体に発生する電流は、インピーダンスを一致させたときに加熱材130の本体に生成することができる電流よりも低くなる可能性がある。インピーダンスを一致させると、使用時、加熱材130の本体に発生する加熱電力を最大にするために電圧と電流とのバランスをとる助けとなり得る。いくつかの実施形態では、デバイス116のインピーダンスは、コイル114と加熱材130の組み合わさったインピーダンスと等しくすることができる、又は実質的に等しくすることができる。
【0082】
この実施形態の装置100は、加熱領域111の温度を検知するための温度センサ119を備える。温度センサ119は、制御器117に通信可能に接続され、その結果、制御器117は加熱領域111の温度を監視することができる。制御器117は、加熱領域111の温度を所定の温度範囲内に確実に維持するために、温度センサ119から受信された1つ以上の信号に基づいて、必要に応じてコイル114に流す変動電流又は交流電流の特性をデバイス116に調節させることができる。この特性は、例えば、振幅又は周波数又は負荷サイクルとすることができる。使用時、加熱領域111内に配置された物品内の喫煙材は、所定の温度範囲で、喫煙材を燃焼させることなく喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるのに十分な加熱がなされる。したがって、制御器117、及び装置100は全体として、喫煙材を燃焼させることなく喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱するように構成される。いくつかの実施形態では、温度範囲は、約50℃~約300℃、例えば、約50℃と約250℃との間、約50℃と約150℃との間、約50℃と約120℃との間、約50℃と約100℃との間、約50℃と約80℃との間、又は約60℃と約70℃との間である。いくつかの実施形態では、温度範囲は約170℃と約220℃との間である。他の実施形態では、温度範囲は、この範囲以外であってもよい。いくつかの実施形態では、温度範囲の上限は300℃よりも高くすることができる。いくつかの実施形態では、温度センサ119を省略することができる。いくつかの実施形態では、加熱材は、加熱材を加熱しようとする最高温度に基づいて選択されたキュリー点温度を有することができ、その結果、加熱材を誘導加熱することによってその温度より高くさらに加熱することを妨げる又は防ぐ。
【0083】
図4を参照すると、本発明の実施形態による別の装置の例の概略断面図が示されている。
図4の装置200は、装置の要素140の形態を除けば、
図3の装置100と同一である。したがって、簡潔にするために、2つの実施形態に共通の特徴を再び詳細には説明しない。
図3の装置100に対して本書で説明した可能な変形のいずれも、
図4の装置200に対してなされて個別の各実施形態を形成することができる。
【0084】
物体の熱質量は、物体の質量(重量)に物体の熱容量(物体が熱エネルギーを蓄える能力)を掛けたものに比例する。物体の異なる部分が、重量又は密度が異なる場合、並びに/或いは熱容量が異なる場合のみ、異なる熱質量を有することができる。
【0085】
この実施形態では、要素140の第1の部分140aと第2の部分140bはそれぞれ異なる熱質量を有する。要素140の第1の部分140aの材料組成及び密度は、要素140の第2の部分140bの材料組成及び密度と同じである。実際、要素140の材料組成及び密度は要素140全体で均一とすることができる。しかしながら、要素140の第1の部分140aの厚さが要素140の第2の部分140bの厚さと異なる結果、要素140の第1の部分140aと第2の部分140bはそれぞれ異なる熱質量を有する。より詳細には、要素140の第2の部分140bが要素140の第1の部分140aよりも厚い結果、要素140の第2の部分140bは要素140の第1の部分140aよりも大きな熱質量を有する。
【0086】
この実施形態では、熱質量は、要素140の自由な第1の端部から要素140の第2の端部まで要素140の長さに沿った距離とともに連続的に大きくなる。より詳細には、この実施形態では、熱質量は、長さに沿った距離とともに直線的に、又は実質的に直線的に大きくなる。これは、要素140の厚さが、自由端からの要素140の長さに沿った距離とともに直線的に、又は実質的に直線的に大きくなることによる。言い換えれば、要素140は直線的に先細となっている。しかしながら、他の実施形態では、熱質量は、要素140の長さに沿った距離とともに連続的ではないように変わることができる。例えば、その変化は階段状であってもよいし、又は、要素140の少なくとも1つの部分は連続的で、要素140の少なくとも1つの他の部分は階段状であってもよい。当業者であれば、容易に、熱質量を変えたい態様を決定して、使用時に所望の漸進的な加熱プロファイルを与えることができる。また、要素140の長さに沿う要素140の厚さの変わり方に対する適切なプロファイルを選択して、所望の漸進的な加熱プロファイルを与えることもできる。
【0087】
他の実施形態では、代替の特性が第1の部分140aと第2の部分140bの間で異なる結果、要素140の第1の部分140aと第2の部分140bはそれぞれ異なる熱質量を有することができる。例えば、要素140の第1の部分140aの密度又は材料組成が要素140の第2の部分140bの密度又は材料組成と異なる結果、要素140の第1の部分140aと第2の部分140bはそれぞれ異なる熱質量を有することができる。
【0088】
加熱材130の本体は要素140の第1の部分140a内にのみ埋め込まれている。要素140の第2の部分140bには加熱材がない。加熱材130の本体に変動磁場が侵入すると、要素140の第1の部分140aは比較的速い速度で加熱される。時間が経つと、要素140の第2の部分140bの温度は、要素140の第1の部分140aからの熱伝導によって上昇する。しかしながら、要素140の加熱速度は、加熱材130の本体からの距離とともに熱質量が大きくなることによって、加熱材130の本体からの距離とともに下がる。
【0089】
したがって、発生器112によって生成された変動磁場が加熱材130の本体に侵入している間、上記と同様な漸進的な加熱効果を与えることができる。すなわち、使用時、(
図7に示し、下記で説明するように)物品が加熱領域111に配置されると、要素140の第1の部分140aから発する熱が、加熱材130の本体に比較的近い物品の第1の部分の喫煙材を加熱する。これは、物品の第1の部分の喫煙材の少なくとも1つの成分の揮発及びその中のエアロゾルの形成を開始させる。時間が経つと、加熱材130の本体から比較的離れた要素140の第2の部分140bの温度が、要素140の第1の部分140aからの熱伝導によって上昇する。これによって、要素140の第2の部分140bに隣接する物品の第2の部分の喫煙材が、要素140の第2の部分140bから発する熱によって加熱される。これは、物品の第2の部分の喫煙材の少なくとも1つの成分の揮発及びその中のエアロゾルの形成を開始させる。
【0090】
この実施形態では、加熱材130の本体が要素140の第1の部分140aに配置され、要素140の第1の部分140aは、要素140の第2の部分140bよりも吸い口120の通路122に近いことに気づくであろう。したがって、使用時、加熱されて喫煙材の(1つ以上の)成分を揮発する物品の第1の部分もまた、物品の第2の部分よりも吸い口120の通路122に近い。しかしながら、他の実施形態では、その代わりに、加熱材130の本体は要素140の第2の部分140bに配置されてもよい。
【0091】
図5を参照すると、本発明の実施形態による別の装置の例の概略断面図が示されている。
図5の装置300は、装置の加熱要素、喫煙可能でない熱伝導要素、加熱領域、及びコイルの形態を除けば、
図3の装置100と同一である。したがって、簡潔にするために、2つの実施形態に共通の特徴を再び詳細には説明しない。
図3の装置100に対して本書で説明した可能な変形のいずれも、
図5の装置300に対してなされて個別の装置の各実施形態を形成することができる。
【0092】
上記のように、
図3の装置100では、要素140は加熱領域111内に突出している。対照的に、
図5の装置300は、加熱領域111の周りに延在する喫煙可能でない熱伝導要素140を備えている。したがって、
図3の実施形態では、加熱領域111及び使用時にその中にある任意の物品は、内側から外向きに加熱されるが、
図5の実施形態では、加熱領域111及び使用時にその中にある任意の物品は外側から内向きに加熱される。
【0093】
要素140は、加熱領域111を取り囲む管状の喫煙可能でない熱伝導要素140である。しかしながら、他の実施形態では、要素140は完全な管状でなくてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、要素140は、要素140に形成された軸方向に延在する隙間又は切れ目以外を管状としてもよい。要素140は実質的に円形断面を有している。しかしながら、他の実施形態では、要素140は、方形、矩形、多角形、又は楕円形などの円形以外の断面を有してもよい。要素140は、加熱領域111の長手方向軸と実質的に揃えられた長手方向軸に沿って延在する。この実施形態では、揃えられた軸は一致する。この実施形態の変形では、揃えられた軸は互いに平行であってもよい。しかしながら、他の実施形態では、軸は互いに傾けてもよい。
【0094】
この実施形態では、加熱領域111は、要素140によって少なくとも部分的に画定されている。すなわち、要素140は、加熱領域111の輪郭又は範囲を少なくとも部分的に定めている。加熱領域111の長手方向軸に垂直な加熱領域111の断面は、この実施形態では、加熱領域111の長さに沿って一定である。しかしながら、他の実施形態では、断面は、加熱領域111の長さに沿った距離とともに変わってもよい。この実施形態では、加熱領域111の断面は円形であるが、他の実施形態では、加熱領域111の断面は、方形、矩形、多角形、又は楕円形などの円形以外でもよい。
【0095】
喫煙材を含む物品が加熱領域111に配置されると、要素140は喫煙材と熱接触する。喫煙材を含む物品が加熱領域111に配置されると、要素140が喫煙材と面接触することが好ましい。したがって、要素140から喫煙材に熱を直接伝えることができる。他の実施形態では、要素140は喫煙材と直接面接触しないようにしてもよい。これを達成することができる方法の例は上記の通りである。
【0096】
図4の実施形態の要素140と同様に、
図5の実施形態の要素140は、第1の部分140a及び第2の部分140bを有し、要素140の第1の部分140aと第2の部分140bは、それぞれ異なる熱質量を有する。この実施形態では、要素140の第1の部分140aの材料組成及び密度は、要素140の第2の部分140bの材料組成及び密度と同じである。さらに、この実施形態では、要素140の材料組成及び密度は要素140全体で均一である。要素140の第1の部分140aの厚さが要素140の第2の部分140bの厚さと異なる結果、要素140の第1の部分140aと第2の部分140bはそれぞれ異なる熱質量を有する。より詳細には、要素140の第2の部分140bが要素140の第1の部分140aより厚い結果、要素140の第2の部分140bは、要素140の第1の部分140aよりも大きな熱質量を有する。
【0097】
図4の実施形態と同様に、熱質量は、要素140の自由な第1の端部から要素140の第2の端部まで要素140の長さに沿った距離とともに連続的に大きくなる。より詳細には、この実施形態では、熱質量は、長さに沿った距離とともに直線的に、又は実質的に直線的に大きくなる。しかしながら、他の実施形態では、熱質量は、上記と同様に、要素140の長さに沿った距離とともに連続的ではないように変わることができる。
【0098】
上記と同様に、他の実施形態では、密度又は材料組成などの代替の特性が第1の部分140aと第2の部分140bの間で変わる結果、要素140の第1の部分140aと第2の部分140bはそれぞれ異なる熱質量を有することができる。
【0099】
加熱材130の本体は要素140の第1の部分140a内にのみ埋め込まれている。要素140の第2の部分140bには加熱材がない。加熱材130の本体に変動磁場が侵入すると、要素140の第1の部分140aは比較的速い速度で加熱される。時間が経つと、要素140の第2の部分140bの温度は、要素140の第1の部分140aからの熱伝導によって上昇する。しかしながら、要素140の加熱速度は、加熱材130の本体からの距離とともに熱質量が大きくなることによって、加熱材130の本体からの距離とともに下がる。
【0100】
したがって、発生器112によって生成された変動磁場が加熱材130の本体に侵入している間、上記と同様な漸進的な加熱効果を与えることができる。すなわち、使用時、(
図8に示し、下記で説明するように)物品が加熱領域111に配置されると、要素140の第1の部分140aから発する熱が、加熱材130の本体に比較的近い物品の第1の部分の喫煙材を加熱する。時間が経つと、加熱材130の本体から比較的離れた要素140の第2の部分140bの温度が、要素140の第1の部分140aからの熱伝導によって上昇する。これによって、要素140の第2の部分140bに隣接する物品の第2の部分の喫煙材が、要素140の第2の部分140bから発する熱によって加熱される。
【0101】
図4の実施形態に関しては、この実施形態では、加熱材130の本体は要素140の第1の部分140aに配置され、要素140の第1の部分140aは、要素140の第2の部分140bよりも吸い口120の通路122に近い。したがって、使用時、加熱されて喫煙材の(1つ以上の)成分を揮発する物品の第1の部分もまた、物品の第2の部分よりも吸い口120の通路122に近い。しかしながら、他の実施形態では、その代わりに、加熱材130の本体は要素140の第2の部分140bに配置されてもよい。
【0102】
この実施形態では、上記のように、加熱領域111の長手方向軸に垂直な加熱領域111の断面は、加熱領域111の長さに沿って一定である。さらに、上記でも気づくように、要素140の厚さ又は直径は、要素140の長さに沿った距離とともに直線的に変わる。したがって、要素140は、円錐又は円錐台である。この実施形態のコイル114は、加熱領域111の長手方向軸と実質的に一致した軸に沿って延在していることに気づくであろう。コイル114は、コイルが円錐螺旋となるように、加熱領域111の長手方向軸に沿った距離とともに変わる直径を有している。しかしながら、他の実施形態では、コイル114が円形螺旋となるように、コイル114はその全長に沿って実質的に一定の直径を有してもよい。
【0103】
図6、7及び8を参照すると、本発明のそれぞれの実施形態によるシステムの例の概略断面図が示されている。
図6のシステム1000は、
図3の装置100及び喫煙材を含む物品2を備える。
図7のシステム2000は、
図4の装置200及び喫煙材を含む物品3を備える。
図8のシステム3000は、
図5の装置300、及び喫煙材を備えた物品4を備えている。
【0104】
装置100、200、300のそれぞれの加熱領域111は、各システム1000、2000、3000の物品2、3、4を受け入れるためのものである。これらの実施形態の各々において、物品2、3、4は、吸い口120が各装置100、200、300の本体110から係合を解除されているとき、各装置100、200、300の加熱領域111内に挿入可能である。各システム1000、2000、3000では、磁場発生器112が作動すると、上記のように、加熱材130の本体に侵入する変動磁場が発生して要素140の漸進的な加熱がもたらされる。要素140の漸進的な加熱によって加熱領域111の漸進的な加熱がもたらされ、したがってそれぞれの物品2、3、4の喫煙材の漸進的な加熱がもたらされて、好ましくは、例えば、これも上記のように、喫煙材を燃焼させることなく喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させる。
【0105】
簡潔にするために、装置100、200、300を再び詳細には説明しない。
図3、4及び5の装置100、200、300に対して本書で説明した可能な変形のいずれも、
図6、7及び8のシステム1000、2000、3000の装置100、200、300に対してなされて個別のシステムの各実施形態を形成することができる。
【0106】
図9を参照すると、本発明の実施形態による、喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱する方法の例を示すフロー図が示されている。
【0107】
方法900は、変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材の本体を用意するステップ901を含む。加熱材の本体は、
図3、4及び5を参照して上記で説明した加熱材130の本体など、例えば、喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱するための装置の本体とすることができる。或いは、加熱材の本体は、
図1及び2を参照して上記で説明した加熱材10の本体など、例えば、喫煙材を備えた物品の加熱材の本体とすることができる。
【0108】
本方法はまた、喫煙可能でない熱伝導要素を用意するステップ902を含み、この喫煙可能でない熱伝導要素は、加熱材の本体と熱接触し、変動磁場の侵入による加熱材の加熱によって要素の漸進的な加熱がもたらされるように加熱材の本体に対して配置されている。加熱材の本体は、例えば、要素にはり付けられて、又は要素に埋め込まれて、喫煙可能でない熱伝導要素と面接触することができる。
【0109】
本方法は、要素と熱接触する喫煙材を用意するステップ903をさらに含む。喫煙材は、物品内に備えることができ、例えば、
図1及び2に示されている。
図1の場合のように、要素もまた物品の一部分である結果、喫煙材は要素と熱接触することができる。或いは、
図3、4及び5の場合のように、要素を備えた装置の加熱領域内に喫煙材を挿入する結果、喫煙材は要素と熱接触するように配置することができる。
【0110】
本方法は、要素の漸進的な加熱がもたらされ、以て、喫煙材の漸進的な加熱がもたらされるように、加熱材に変動磁場を侵入させるステップ904をさらに含む。これを達成することができる方法の例は上記で説明されている。喫煙材の加熱は、例えば、喫煙材を燃焼させることなく喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させることとすることができる。
【0111】
上記の実施形態の各々において、加熱材は鋼である。しかしながら、他の実施形態では、加熱材は、導電性材料、磁性材料、及び磁性導電性材料からなる群から選択された1つ以上の材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、加熱材は金属又は金属合金を含むことができる。いくつかの実施形態では、加熱材は、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、コバルト、導電性炭素、グラファイト、普通炭素鋼、ステンレス鋼、フェライトステンレス鋼、銅、及び青銅からなる群から選択された1つ以上の材料を含むことができる。他の(1つ以上の)加熱材は、他の実施形態で使用することができる。加熱材として磁性導電性材料を用いると、使用時、磁性導電性材料と装置の電磁石との磁気結合を強くすることができることが分かっている。これは、磁気ヒステリシス加熱を潜在的に可能にすることに加えて、加熱材のジュール加熱を増大させる、又は改善することができ、したがって、喫煙材の加熱を増大させる、又は改善することができる。
【0112】
加熱材は、誘導電流及び/又は磁気双極子の誘導再配向のほとんどが生じる外側の領域である表皮深さを有することができる。加熱材の厚さを相対的に薄くすることによって、加熱材の他の寸法に比べて相対的に長い奥行き又は厚さを有する加熱材と比べると、所与の変動磁場によって加熱材のより大きな割合を加熱可能にすることができる。したがって、材料をより効率的に使用することになり、それはコストを削減する。
【0113】
上記の実施形態の各々において、喫煙可能でない熱伝導要素は、高い熱伝導率を有する非磁性電気絶縁体から作られる。そのような材料の例として、ダイヤモンド及び熱分解黒鉛シート(適切に配向されている場合)が挙げられる。しかしながら、これらの実施形態の各々に対する各変形例では、要素は1つ以上の他の材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、要素は、銅、炭素、又はアルミニウムなどの導電性材料から作ることができる。
【0114】
上記の実施形態の各々において、喫煙材はタバコを含んでいる。しかしながら、これらの実施形態の各々に対する各変形例では、喫煙材は、タバコのみからなるものであってもよいし、ほぼ全体がタバコのみからなるものであってもよいし、タバコとタバコ以外の喫煙材とを含むものであってもよいし、タバコ以外の喫煙材を含むものであってもよいし、タバコを含まないものであってもよい。いくつかの実施形態では、喫煙材は、蒸気又はエアロゾルの形成剤や、保湿剤(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、トリアセチン、又はジエチレングリコール)を含んでいてもよい。
【0115】
上記の実施形態の各々において、喫煙材は非液体の喫煙材であり、装置は、喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように非液体の喫煙材を加熱するためのものである。他の実施形態では、そうでないこともあり得る。
【0116】
上記の実施形態の各々において、物品1、2、3、4は消耗品である。物品1、2、3、4内の喫煙材30の(1つ以上の)揮発可能な成分のすべて又は実質的にすべてが消費されると、使用者は、装置100、200、300から物品1、2、3、4を取り外して、物品1、2、3、4を処分することができる。使用者は、引き続き、物品1、2、3、4の別のもので装置100、200、300を再使用することができる。しかしながら、他の各実施形態では、物品は消耗品でないものとすることができ、喫煙材の(1つ以上の)揮発可能な成分が消費されると、装置と物品とを一緒に処分することができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、装置100、200、300は、装置100、200、300とともに使用可能な物品1、2、3、4とは別個に販売され、供給され、又はその他の方法により提供される。しかしながら、いくつかの実施形態では、装置100、200、300及び1つ以上の物品1、2、3、4を、キットや組立体などのシステムとして、場合によっては清掃器具などの追加の構成要素とともに一緒に提供してもよい。
【0118】
様々な課題に対処し、技術を進歩させるため、本開示はその全体にわたって様々な実施形態を例証及び例示によって示している。これらの実施形態において、特許請求された発明を実施することが可能である。これらの実施形態は、喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱するための優れた装置と、そのような装置とともに使用するための優れた物品と、そのような装置及びそのような物品を備えた優れたシステムと、喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱する優れた方法とを提供する。本開示の利点及び特徴は、実施形態のうち代表的な例のものにすぎず、すべての利点や特徴を網羅したものでもなければ、他の利点や特徴を排除するものでもない。これらは、特許請求の範囲などに開示される特徴の理解と教示を助けるためだけに提示されている。本開示の利点、実施形態、例、機能、特徴、構造、及び/又は他の側面は、特許請求の範囲によって規定されたとおりに本開示を限定するもの、或いは特許請求の範囲の均等物を制限するものと考えるべきではなく、本開示の範囲及び/又は趣旨から逸脱することなく他の実施形態を利用し、変形を施すことができることを理解されたい。様々な実施形態が、開示された要素、構成、特徴、部品、ステップ、手段などの様々な組合せを適切に備え、それらのみから構成され、或いは実質的にそれらから構成されてもよい。本開示は、特許請求の範囲に現在は記載されていないが将来記載される可能性のある他の発明を含む可能性がある。