(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】金属加工装置におけるノズルの状態又はタイプの特定
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20220714BHJP
【FI】
B23K26/00 M
(21)【出願番号】P 2021535878
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2019085963
(87)【国際公開番号】W WO2020127492
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】102018132795.1
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019108172.6
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503168692
【氏名又は名称】バイストロニック レーザー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルディ アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ファーニ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】メッサー ケビン
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-334922(JP,A)
【文献】特開平09-168885(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014212682(DE,A1)
【文献】仏国特許出願公開第02911081(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の加工装置(100)であって、
外側の一端にノズル出口開口(131)を有し、気体噴射を生成するガスノズル(101)と、
前記ノズル出口開口(131)を有する前記ガスノズル(101)の端部のデジタル画像(105)を取得する電子カメラ(103)と、
ノズル状態グループ(109-1,109-2,109-3)及びノズルタイプから少なくとも1つのノズルパターンに前記デジタル画像(105)をマッピングするパターン認識モジュール(115)と、を含み、
前記パターン認識モジュール(115)が、学習済みニューラルネットワーク(107)又はディープラーニングアルゴリズムと、前記ノズル状態及び前記ノズルタイプを検出する手段とを含み、
前記ガスノズル(101)の異なる照明状態で前記電子カメラ(103)によって取得されたデジタル画像(105)が、前記ニューラルネットワーク(107)の入力層(125)への入力データとして使用され、
入力された画像(105)に応じて、前記デジタル画像(105)に示されている前記ガスノズル(101)のノズル状態又はノズルタイプが、前記学習済みニューラルネットワーク(107)の出力層(127)において取得され、同じ1つの画像(105)で、前記ノズルタイプと前記ノズル状態の両方を特定でき、
前記ニューラルネットワーク(107)に対して、切削の専門家によって予め評価及び分類されている使用済みガスノズル(101)と未使用のガスノズル(101)の既存の画像データに基づいて、最初に学習及び教示が行われ、各ニューロン(129)間の重み、及びニューロン(129)自身の重みは、学習が正常に終了した後、前記アルゴリズムが、学習した基準及び程度に従って、前記ノズル状態、特に摩耗の程度と、前記ノズルタイプとを自動で検出できるように設定され、前記ガスノズル(101)の各タイプ及び摩耗の程度が、学習中に前記ニューラルネットワーク(107)にとって既知となること、
を特徴とする加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加工装置(100)であって、
前記加工装置(100)が、前記デジタル画像(105)の記録中に前記ノズル出口開口(131)を照光する照明装置(111)を含むこと、を特徴とする加工装置。
【請求項3】
請求項2に記載の加工装置(100)であって、
前記照明装置(111)が、複数の方向から前記ノズル出口開口(131)を照光する複数の光源(113)を含むこと、を特徴とする加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載の加工装置(100)であって、
前記複数の光源(113)が、前記ノズル出口開口(131)の周りに均等に配置されること、を特徴とする加工装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の加工装置(100)であって、
前記複数の光源(113)は個別に制御可能であること、を特徴とする加工装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載の加工装置(100)であって、
前記複数の光源(113)が、所定の波長の光を放射するように構成されること、を特徴とする加工装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の加工装置(100)であって、
前記パターン認識モジュール(115)は、2つ以上の異なる程度で前記ノズル状態(109-1,109-2,109-3)を示すように構成されること、を特徴とする加工装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の加工装置(100)であって、
前記加工装置(100)が、前記ノズル状態(109-1,109-2,109-3)を手動入力するためのユーザインターフェース(119)を含むこと、を特徴とする加工装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の加工装置(100)であって、
前記加工装置(100)は、クラウドと、又は当該加工装置(100)の外部の他の中央コンピュータとネットワーク接続可能であること、を特徴とする加工装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の加工装置(100)であって、
前記加工装置(100)は平面切削システム又は切削装置であること、を特徴とする加工装置。
【請求項11】
ガスノズル(101)の摩耗状態(109-1,109-2,109-3)を検出する方法であって、
ノズル出口開口(131)を有するガスノズル(101)の端部のデジタル画像(105)を検出するステップ(S101)と、
パターン認識モジュール(115)を用いて、ノズル状態グループ(109-1,109-2,109-3)及びノズルタイプから少なくとも1つのノズルパターンに前記デジタル画像(105)をマッピングするステップ(S103)であって、前記パターン認識モジュール(115)が学習済みニューラルネットワーク(107)又はディープラーニングアルゴリズムを含み、前記ガスノズル(101)に異なる照明を用いて電子カメラ(103)によって取得されたデジタル画像(105)が、前記ニューラルネットワーク(107)の入力層(125)への入力データとして利用され、前記入力された画像(105)に応じて、前記デジタル画像(105)に示された前記ガスノズル(101)の前記ノズル状態又は前記ノズルタイプが、前記学習済みニューラルネットワーク(107)の出力層(127)において取得され、同じ1つの画像(105)を用いて、前記ノズルタイプと前記ノズル状態の両方を特定できる、ステップ(S103)と、
前記ノズル状態及び前記ノズルタイプを検出するステップ(S104)であって、前記ニューラルネットワーク(107)に対して、切削の専門家によって予め評価及び分類されている使用済みのガスノズル(101)と未使用のガスノズル(101)の既存の画像データに基づいて、最初に学習及び教示が行われ、各ニューロン(129)間の重み、及びニューロン(129)自身の重みは、正常に学習が終了した後で、前記アルゴリズムが、学習した基準及び程度に従って、前記ノズル状態、特に、摩耗の程度と、前記ノズルタイプとを自動で検出できるように設定され、前記ガスノズル(101)の各タイプと摩耗の程度とが、学習中に前記ニューラルネットワーク(1207)にとって既知となる、ステップ(S104)と、
を含む方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記ノズル出口開口(131)が、前記デジタル画像(105)の取得中に
複数の光源(113)で照光されること、を特徴とする加工装置。
【請求項13】
請求項
12に記載の方法であって、
前記
複数の光源(113)が個別に制御されること、を特徴とする方法。
【請求項14】
請求項
12または13に記載の方法であって、
前記
複数の光源(113)が所定の波長の光を放射すること、を特徴とする方法。
【請求項15】
請求項11から14のいずれか1項に記載の方法であって、
前記ノズル状態(109-1,109-2,109-3)は、ユーザインターフェース(119)から入力されること、を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル状態とノズルタイプの少なくとも一方を自動検出する機能を備える加工装置、特に金属切削機に関し、更に、ノズル状態とノズルタイプの少なくとも一方を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削システム、特に、平面切削システムでは、ワークがレーザビーム及び気体噴射を用いて機械加工される。気体動力学が重要な役割を担うが、これは、ガスノズルが重要な部品であるためである。加工処理、及びワークの厚さや種類に応じて、それぞれ異なるガスノズルが利用される。ガスノズルは、切削中の機械加工作業に近接して関わるため、ガスノズルは激しく摩耗する部品である。したがって、ガスノズルは、その状態が定期的に確認され、摩耗状態に応じて交換される。間違ったノズルタイプで、又は摩耗したガスノズルを用いて切削を行うと、切削品質が大幅に低下することになる。
【0003】
最近のほとんどのシステムでは、ガスノズルを交換する必要があるかどうかや、交換する時点を作業者が自分で確認して判断しなければならない。このような確認には多大な労力と時間を要する。また、多くの場合、ガスノズルを交換しなければならないと認識する時点が遅過ぎる、すなわち材料が最適でない方式で切削された後でしか認識されない。また、まだ使用できる状態であっても、作業者が予防的に早めに交換してしまう場合もあり得る。この方式は技術的に非効率である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、最適な切削品質を維持して、不良な切削加工を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この技術的目的は、独立請求項に係る構成によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項、明細書、及び図面に記載される。
【0006】
第1の態様によれば、本目的は、加工装置、特に金属切削装置、好ましくはレーザ金属切削機によって達成され、本装置は、外側の一端にノズル出口開口を有し、気体噴射を生成するガスノズルと、ノズル出口開口を有するガスノズル端部のデジタル画像を取得する電子カメラと、ノズル状態及び/又はノズルタイプのグループから選択される少なくとも1つのノズルパターンにデジタル画像をマッピングするパターン認識モジュールと、を含む。外側は、ガスノズルの外側を意味する。気体は、ガスノズル内に流入し、ノズル出口開口を通って外部の環境に流れ出る。自動のノズル状態検出によって、ガスノズルの交換が遅れるという欠点を克服できる。機械はより自動化され、より信頼できるものになる。切削品質を容易に維持できると共に、摩耗したガスノズルに起因する不良な切削加工を防ぐことができる。
【0007】
ノズルタイプを検出することで、例えば、ガスノズルを同じタイプの別のガスノズルに交換でき、タイプの混同を回避できるという技術的利点が得られる。作業者による手動交換、又は自動ノズル交換器による交換の際に間違ったタイプのノズルが使用されることを、ノズルタイプの検出機能によって防止できる。ガスノズルのタイプの違いは、ノズル開口のサイズによって、また高圧切削と低圧切削のタイプの違いによって生じる。
【0008】
本加工装置の、技術的に有利な実施形態において、加工装置は、デジタル画像の記録中にノズル出口開口を照光する照明装置を含む。これにより、例えば、画像品質や、ノズル状態の検出精度が向上するという技術的利点が得られる。また、販売先によって異なり得る制御不能な外光の煩わしい影響が低減される。
【0009】
本加工装置の技術的に有利な他の実施形態において、照明装置は、複数の方向からノズル出口開口を照光する複数の光源を含む。これにより、例えば、ガスノズルを異なる方向から選択的に照光できるという技術的利点が得られる。
【0010】
本加工装置の技術的に有利な他の実施形態において、複数の光源は、ノズル出口開口の周りに均等に配置される。これにより、例えば、同等の照明条件で画像が取得されるという技術的利点が得られる。
【0011】
本加工装置の技術的に有利な他の実施形態において、複数の光源は個別に制御可能である。これにより、例えば、ガスノズルを1つ以上の光源によって選択的に照光できるという技術的利点が得られる。
【0012】
本加工装置の技術的に有利な他の実施形態において、光源は、所定の波長の光を照射するように構成される。これにより、例えば、ガスノズルの変色が単純な方式で検出されるという技術的利点が得られる。
【0013】
本加工装置の技術的に有利な他の実施形態において、電子カメラは、所定の波長範囲でデジタル画像を検出するように構成される。これにより、例えば、煩わしい環境光を抑制できるという技術的利点が得られる。
【0014】
本加工装置の技術的に有利な他の実施形態において、パターン認識モジュールは、2つ以上の異なる程度でノズル状態を示すように構成される。これにより、例えば、切削品質要件に応じたタイミングでガスノズルを交換できるという技術的利点が得られる。
【0015】
本加工装置の技術的に有利な他の実施形態において、パターン認識モジュールは、学習済みニューラルネットワーク又はディープラーニングアルゴリズムを含む。これにより、例えば、ノズルパターンを迅速に分類できるという技術的利点が得られる。
【0016】
本加工装置の技術的に有利な他の実施形態において、加工装置は、ノズル状態を手動で入力するためのユーザインターフェースを含む。これにより、例えば、パターン認識モジュールに、更に多くのデータに基づいて学習させて、ノズル状態の検出を改良できるという技術的利点が得られる。
【0017】
本加工装置の技術的に有利な他の実施形態において、加工装置は、クラウド、又は加工装置外部の他の中央コンピュータとネットワーク接続することができる。この目的に応じて、加工装置は、通信インターフェースを含んでよく、この通信インターフェースによって、クラウド又は他の中央コンピュータとのデータ接続を確立できる。これにより、例えば、測定データを(IoTキットを介して)中央コンピュータに書き戻せるため、パターン認識をより最適化できるという技術的利点が得られる。また、複数の加工装置からデータを収集でき、より多彩なデータを分析できると、更に最適化されたパターン認識が実現して、より有利である。省略可能な構成であるが、加工装置毎に個別に最適化されたパターン認識が提供されてよい。また、加工装置がネットワーク接続される実施形態では、加工装置の機能性を継続的に監視することで、メンテナンス性の向上と装置の故障率の低下を実現できる。加工装置がネットワーク接続される実施形態では、加工装置のソフトウェアを常に最新に維持することができる。
【0018】
本加工装置の技術的に有利な他の実施形態において、加工装置は、平面切削機又は切削装置である。これにより、例えば、ノズル状態の検出が、特に適した加工装置で利用されるという技術的利点が得られる。
【0019】
第2の態様によれば、前述した目的は、ガスノズルの摩耗状態を検出する方法によって達成され、本方法は、ノズル出口開口を有するガスノズル端部のデジタル画像を取得するステップと、パターン認識モジュールを用いて、ノズル状態及び/又はノズルタイプのグループから選択される少なくとも1つのノズルパターンにデジタル画像をマッピングするステップとを含む。本方法によって、第1の態様に係る加工装置で達成されるものと同じ技術的利点が得られる。この場合、画像処理(特徴抽出処理)を用いて画像を前処理すると有利であり得る。
【0020】
本方法の、技術的に有利な実施形態において、ノズル出口開口は、デジタル画像の記録中に照光される。この場合も同様に、画像品質とノズル状態の検出精度が向上するという技術的利点が得られる。
【0021】
本方法の技術的に有利な他の実施形態において、複数の光源が個別に制御される。この場合も同様に、例えば、ガスノズルを1つ以上の光源によって選択的に照光できるという技術的利点が得られる。
【0022】
本方法の技術的に有利な他の実施形態において、光源は所定の波長の光を照射する。この場合も同様に、ガスノズルの変色を容易に検出できるという技術的利点が得られる。
【0023】
本方法の技術的に有利な他の実施形態において、ノズル状態はユーザインターフェースから入力される。この場合も同様に、パターン認識モジュールに、更に多くのデータに基づいて学習させて、ノズル状態の検出を改良できるという技術的利点が得られる。その結果、アルゴリズムの継続的学習が可能になる。
【0024】
本発明の例示的実施形態は、図面に記載されると共に、下記においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ガスノズルを有する加工装置を示す図である。
【
図2】ガスノズルの各種異なる画像を示す図である。
【
図3】ノズル状態の検出処理を模式的に示す図である。
【
図4】ノズル状態を検出する方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に、加工装置100の上部のガスノズル101の図を示す。加工装置100は、平面切削機、金属シート及び/又は金属パイプの切断機等、金属を切削する加工装置として機能する。加工装置100は、金属シート/金属パイプのレーザ切断機であると好ましい。加工装置100には、ノズル又はガスノズル101が設けられる。ガスノズル101は、切削ガスが流出できるノズル出口開口131を有し、好ましい形態であるレーザ切削機の場合、ノズル出口開口131は、機械の作動状態においてレーザビームが通過する部位である。
【0027】
下記では、電子カメラ103を用いて、ガスノズル101のタイプと、ガスノズル101の摩耗の深刻度又は程度を特定する。この目的に合わせて、ノズル心出しステーションの加工装置100を利用するが、この加工装置100は、電子カメラ103と複数の照明とを用いてノズル出口開口131の中心に対するレーザビームの心合わせを確認又は測定することができる。この場合、平面切削機の切削ヘッドが加工装置100の全体に亘って移動するため、ガスノズル101は、カメラ103の上方に移動して停止する。次に、カメラ103は、ノズル出口開口131と共にガスノズル101を下方から捉える。同様に下方から入射する照明は、ノズルの端部の確認を容易にする。ガスノズル101は、カメラ103の視野121の中央に配置される。
【0028】
電子カメラ105は、ガスノズル101の下方からのデジタル画像を取得するように配置される。ここでの下方は、ガス噴射がガスノズル101から出てくる側を意味する。カメラ103及びレンズ117は、ガスノズル101の直下に配置される。記録中、ガスノズル101のノズル出口開口131は、照明装置111によって各種異なる側から照光される。複数の光源113は、異なる側で点灯できるように構成されてよいが、これは省略可能である。このような複数の光源113による照明は、画像上に検査対象のノズル出口開口131の異なった外見を映し、異なる陰影を生成する。
【0029】
この目的に合わせて、照明装置111は、例えば、4つの光源113を有してよく、4つの光源113は、ノズル出口開口131に対して均一な位置に並べられて、それぞれ異なる方向からノズル出口開口131を照光する。1つの光源113のみを点灯した状態で画像を選択すると、ノズル出口開口131を異なる方向から見た4つの画像が得られる。
【0030】
制御装置(コントローラ)は、各種フィルタを利用して画像を最適化でき、光源113が所定の波長の光を放射するようにしたり、所定の波長の光がカメラ103に記録されるようにしたりできる。光源113も、例えば、発光ダイオードであってよい。
【0031】
図2に、それぞれ別の方向から照光されたガスノズル101のノズル出口開口131を捉えた、複数の異なる画像105を示す。画像105では、ノズル101の中心に、ガスノズル101のノズル出口開口131の底面視図が示されている。ガスノズル101の先端に損傷部123がある。
【0032】
各画像105は、異なる照明を用いて撮影された。各画像105において、4つの光源113のうちの1つのみが点灯されている。光源113のうちの複数個、すなわち2つ、3つ、又は4つを同時に点灯して追加の画像105を撮影すると、ガスノズル101の別の11枚の画像が得られる。これによりデータベースが拡充されて、ノズル状態の検出精度が向上する。通常、光源113の個数及び配置は変更されてよい。
【0033】
このことは、アルゴリズムがガスノズル101に関する空間情報を取得する際に役立つ。異なる照明を用いて撮影された画像105は、最終的に、ノズルタイプとノズル状態を検出するために、パターン認識モジュール115として機能するアルゴリズムに送られる。このため、加工装置100は、例えば、アルゴリズムを実行するマイクロコントローラを含む。
【0034】
図3に、パターン認識モジュール115として使用される学習済みニューラルネットワーク107を用いたノズル状態の検出処理を模式的に示す。ニューラルネットワーク107は、ソフトウェアモジュール又はハードウェアモジュールによって構成される。ただし、一般的な構成において、他のパターン認識モジュール115が利用されてもよい。
【0035】
ニューラルネットワーク107は、通信リンク、すなわちニューロン129を介して互いにリンクされた一連の加工ユニットを含む。ニューラルネットワーク107は、入力層125及び出力層127を含む。これらの層の間に、任意の個数の加工層が存在する。各データは、1つの層から次の層へと順次伝搬される。ニューロン129間の各通信リンクにおいて、データにそれぞれ異なる重み付けが適用される。
【0036】
ガスノズル101に異なる照明を用いてカメラ103で取得したデジタル画像105は、ニューラルネットワーク107の入力層125への入力データとして利用される。これに代えて、特徴抽出部(特徴抽出処理)によって取得されたデータを入力層125に送ることもできる。入力された画像105に応じて、当該画像105に示されたガスノズル101のノズル状態又はノズルタイプが、学習済みニューラルネットワーク107の出力層127において取得される。同じ1つの画像105を用いて、ノズルタイプとノズル状態の両方を特定することができる。ニューラルネットワーク107は、ノズルタイプのみ、又はノズル状態のみを単一の画像105から特定できる。
【0037】
ニューラルネットワーク107でガスノズル101のノズル状態109-1、109-2、若しくは109-3、又はノズルタイプを検出するために、まず、使用済みのガスノズル101と未使用のガスノズル101の既存の画像データに基づいて、ニューラルネットワーク107への学習及び教示を行う。この場合、各ニューロン129間の重みと、ニューロン自身129の重みとが設定される。ガスノズル101の各タイプと摩耗の程度が、学習中に、ニューラルネットワーク107にとって既知となる。正常に学習が終了すると、アルゴリズムは、学習した基準及び程度に従って、摩耗の程度とノズルタイプとを自動で検出できるようになる。学習データの作成元になるガスノズルは、切削の専門家によって事前に評価及び分類されている。
【0038】
このようなニューラルネットワーク107によって、ノズル状態109-1、109-2、及び109-3は、容易且つ迅速に特定することができ、状態検出の信頼性を改善できる。ガスノズル101は、ニューラルネットワーク107を用いて、例えば、下記の基準に基づいて分類されてよい。
-ガスノズルのノズルタイプ
-ノズル開口の真円度
-ノズル開口に対する縁部の真円度(開口部の座ぐりは切削動作に影響を与える)
-被着粒子/スプラッシュ
-変色/酸化
-摩耗(ブラシ洗浄サイクル)
-衝突へこみ、その他の破損/変形
-侵入物
【0039】
前述した各摩耗基準は、例えば、3つの程度109-1,109-2,109-3において、「109-1:破損/交換」、「109-2:非限界用途でOK」、「109-3:全用途でOK/良好」のように評価されてよい。これに代えて、0から1までの値等、動的又は連続した値が利用されてもよい。
【0040】
ただし、一般に、ノズル状態109-1,109-2,109-3の他の基準や異なる個数が利用されてよい。一般に、ノズル状態の検出では、インテリジェントアルゴリズム、人工知能、ニューラルネットワーク、又はディープラーニングアルゴリズムを利用できる。
【0041】
図4に、加工装置100においてガスノズル101のノズル状態を検出する方法のブロック図を示す。本方法は、ノズル出口開口131を有するガスノズル101の端部のデジタル画像105を取得するステップS101を含む。このステップは、例えば、電子カメラ103を利用して実行でき、電子カメラ103は、ガスノズル101の先端を垂直方向下方から捉えるように配置される。これにより、電子カメラ103は、対応するデジタル画像データを生成する。
【0042】
この後、省略可能なステップS102において、ノズルの中心、開口部の直径等の特定の特徴が、アルゴリズムによって、又は画像データのフィルタリングによって抽出されてよい。ステップS102により、加工前処理として、ニューラルネットワーク107の入力層125の大きさを低減できる。
【0043】
ステップS103において、デジタル画像105は、パターン認識モジュール131としての学習済みニューラルネットワーク107により、ノズル状態109-1,109-2,109-3及び/又はノズルタイプを含むグループから選択されたノズルパターンにマッピングされる。
【0044】
ステップS104において、ガスノズル101を継続して利用するのか、又は取り出すのかどうかが自動的に決定される。この決定は、ノズル状態109-1,109-2,109-3のどれが良好でありどれが不良であるのかを特定する所定の構成を利用して実行できる。
【0045】
ノズル状態の検出結果に応じて、切削動作を続行するのか、又はガスノズル101を交換するのかが決定される。ただし、所望の加工適性に応じて、ガスノズル101を早期に交換する必要があるのか、暫く継続して利用できるかについての評価を行うことも可能である。粗い切削加工において、ガスノズル101は、高難度の切削加工を実行する場合よりも長期に亘って利用される。加工装置100内の機械制御部への実装処理は、更に、カメラ103の上方へのガスノズル101の最初の位置決め処理を含んでよい。ガスノズル101をこれ以上使用できないことが検出された場合、機械制御装置はガスノズル101を自動的に排出してよい。
【0046】
前述した加工装置及び加工方法により、僅かな技術的取り組みで、信頼性の高いノズル状態検出を実行することができる。また、正しいタイプのガスノズル101が用いられているかどうかを判定できる。損傷したガスノズル101を適時に検出し、自動で交換することができる。これにより、切削加工が最適でない方式では実施されないことを保証できる。
【0047】
追加的な処理として、切削の専門家によって実際のノズル状態109-1,109-2,109-3を評価して、ユーザインターフェース119を用いて登録してもよい。用途に応じて、ガスノズル101の摩耗を異なる方式で評価することもできる。特定の利用者にとっては依然として使用可能であると認識されるガスノズル101が、他の利用者では既に交換されているという場合もある。このため、ニューラルネットワーク107を更に訓練して学習させ、利用者の判断を考慮させることができる。このように、ニューラルネットワーク107は、利用者から継続して学習できる。
【0048】
本明細書に開示したノズル状態の検出に、電子カメラを用いた既存のノズルの心出し機能を有する加工装置100を利用できる場合、本方法を僅かな労力のみで実施できる。
【0049】
本発明の各実施形態に関して説明及び図示した全ての特徴は、本発明に応じた内容において、有利な効果を同時に実現するように、異なる組み合わせで設けることができる。
【0050】
本発明の保護の範囲は、請求項によって規定されるものであり、明細書に例示した特徴又は図面に記載した特徴には限定されない。
【符号の説明】
【0051】
100 加工装置、101 ガスノズル、103 電子カメラ、105 画像、107 ニューラルネットワーク、109 ノズル状態、111 照明装置、113 光源、115 パターン認識モジュール、117 レンズ、119 ユーザインターフェース、121 視野、123 損傷部、125 入力層、127 出力層、129 ニューロン、131 ノズル出口開口。