(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】鋳型プレート
(51)【国際特許分類】
B22D 11/055 20060101AFI20220715BHJP
【FI】
B22D11/055 A
B22D11/055 B
(21)【出願番号】P 2021549423
(86)(22)【出願日】2020-01-08
(86)【国際出願番号】 DE2020100005
(87)【国際公開番号】W WO2020156607
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】102019102313.0
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522212088
【氏名又は名称】ケイエムイー・スペシャル・プロダクツ・アンド・ソリューションズ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】フーゲンシュット・ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ・トーマス
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】独国特許発明第102016124801(DE,B3)
【文献】特開2009-006375(JP,A)
【文献】特開2006-320925(JP,A)
【文献】特開2004-074283(JP,A)
【文献】中国実用新案第204997021(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00-11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造側(2)とこの鋳造側(2)とは反対向きの裏側(3)を備えた鋳型プレートであって、裏側(3)に、裏側(3)に向かって開放した
複数の冷却通路(5)が配置され、
各冷却通路
(5)が、鋳造側(
2)に対向する冷却面(
9)を備え、
各冷却通路
(5)内に、インサート(6)が配置され、これにより、インサート(6)の内面(7)と冷却面(9)の間に、冷却ギャップ(4)が形成され、インサート(6)が、固定ボルト(17)を介して冷却面(9)内の固定点(15)と結合されているものにおいて、
固定点(15)が、冷却面(9)内に配置されかつ冷却通路(5)の縦方向(L)に延在しかつ冷却ギャップ(4)の高さを決定しかつ冷却ギャップ(4)を画成するウェブ(8)の上に形成されていること、及び、固定点(15)がウェブ(8)よりも大きい幅を有し、これにより、
冷却ギャップ(4)が、固定点(15)から鋳造側(3)の方向に見て
部分的に固定点(15)の下まで延在すること、を特徴とする鋳型プレート。
【請求項2】
固定点(15)が、冷却面(9)に対する島状の隆起であること、を特徴とする請求項1に記載の鋳型プレート。
【請求項3】
固定点(15)の領域内の鋳造側(2)と冷却面(9)の間の鋳型プレート(1)の厚さが、この冷却通路(5)の他の領域内よりも小さくないこと、を特徴とする請求項2に記載の鋳型プレート。
【請求項4】
複数の固定点(15)が、冷却通路(5)の縦方向(L)及び横方向(Q)に互いに位置をずらして配置されていること、を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の鋳型プレート。
【請求項5】
冷却通路(5)の縦方向(L)
で固定点(15)
を備えた長さ部分内
に、
鋳型プレートの裏側(3)まで達しかつ鋳型プレート(1)を支持する支持プレートに支持される後方の支持突起(10)がインサート(6)に配置されていること、を特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の鋳型プレート。
【請求項6】
支持突起(10)が、
インサート(6)の両縦側に、互い
に対向する
ように配置されていること、を特徴とする請求項5に記載の鋳型プレート。
【請求項7】
インサート(6)が、縦側で対向する支持突起(10)の間に、
冷却通路(5)の縦方
(L)向で支持突起(10)の隣
に配置された領域よりも大きい厚さを備えること、を特徴とする請求項6に記載の鋳型プレート。
【請求項8】
固定点(15)の領域内で、鋳型プレート(1)とインサート(6)の間に作業ギャップが配置され、これにより、鋳型プレート(1)が、固定点(15)において、インサート(6)に対して可動に支承され、
鋳型プレート(1)の膨張時に、固定点(15)が、インサート(6)に対して横で冷却通路(5)の縦方向(L)及び横方向(Q)
に移動可能であること、を特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の鋳型プレート。
【請求項9】
作業ギャップが、2/10mmよりの小さいこと、を特徴とする請求項8に記載の鋳型プレート。
【請求項10】
インサート(6)が、ネジ固定要素(20)を組み込むことで固定点(15)とネジ止めされていること、を特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の鋳型プレート。
【請求項11】
固定点(15)が、ネジ付きインサート(16)を備えること、を特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の鋳型プレート。
【請求項12】
固定ネジ(17)のボルトヘッド(21)が、インサート(6)内の段の付いた貫通孔(18)内に完全に没入するように配置されていること、を特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の鋳型プレート。
【請求項13】
インサート(6)が、
後方の支持突起(10)によって、隣接する冷却通路(5)の間に配置された冷却通路(5)を画成するウェブ(12)
の端面に及び/又は
鋳型プレート(1)の冷却通路(5)
を画成する壁の裏側
に凹部として形成されたポケット(23)
の底部に
、鋳造側の方向に当接すること、を特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の鋳型プレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念の特徴を備えた鋳型プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造時の銅鋳型の熱負荷は、特に薄スラブ連続鋳造設備において銅合金内に著しい材料応力を生じさせ得る。鋳型プレートは、その溶融物に面する高温側、即ち鋳造側が極端な熱応力を受けるが、冷却水に面する裏側は、十分に冷たいままである。数ミリメートルの厚さの鋳型プレート内で、高温側と水冷された裏側との間に数百ケルビンの温度勾配が生じる。これは、鋳造側から裏側への厚さプロファイル内に異なった熱膨張を生じさせる。但し、鋳造側は、膨張しようとするが、同時に、冷却水に面する裏側によって膨張を阻止される。これから、高い内部材料応力が生じる。内部材料応力が、銅合金の弾性限界を超えると、これは、鋳造側の塑性変形、いわゆるバルジングを生じさせる。材料疲労以外に、塑性変形は、鋳型の広幅側と狭幅側の間にギャップ形成も生じさせる。いがらの狭幅側と広幅側の間に生じたギャップ内に、液状の鋼が浸入し得る。これは、幅調整中に鋳型プレートに損傷を与え得る。最悪の場合、鋳型内のストランド凝固殻は、スラブの外側のコーナー領域において裂け得る。
【0003】
鋳物表面の適時の後加工による予防保全によってギャップ形成に対処することが知られている。後加工に基づいて低減される肉厚は、鋳型の残存耐用年数を減少させる。これは、更にまた、整備インターバルを短くし、連続鋳造設備の稼働率を低下させる。
【0004】
鋳造側の鋳型プレートの変形(バルジング)を阻止するため、裏側の支持プレートもしくはいわゆる水槽に対する鋳型プレートの固定点は、互いに僅かな間隔を置いて配置され、比較的多数で設けられている。互いに狭い間隔を置いて配置された固定点は、所定の冷却通路経過を設定する。冷却通路の配置に応じて、排熱は、高温側全体にわたって見て、望ましくない不均一性を備え得る。不均一な排熱は、鋳造中に更にまた材料応力を、特に鋳型プレートのメニスカス領域に生じさせる。材料応力は、塑性変形が生じるほど高くなり得る。極端な場合、銅合金は、軟化させることさえある。更に、鋳型プレートの高温側と低温側の温度勾配によって惹起される、鋳型プレートの塑性変形の基本的な危険がある。
【0005】
独国特許第102016124801号明細書から、冷却通路内のインサートにより冷却水の流速を増加させることが知られている。これにより、冷却ギャップが構成され、これら冷却ギャップを経て、高い圧力及び高い流速を備えた水が導かれ得る。冷却通路の局所的な横断面を低減させるこれらインサートは、部分的に相対的に広い冷却通路を橋渡しする。これにより、僅かな数のインサートしか必要ない。確かに、一方では、できるだけ大きいインサートが合目的であるが、それは、これにより、冷却プレートの裏側が簡素化されるからであり、他方では、非常に広い冷却通路と相応に広いインサートによってバルジングの危険が増大する。
【0006】
クランプ又は固定ボルトを介してインサートを冷却面内の固定点と結合することが提案される。更に、固定ボルトを介して鋳型プレートが支持プレート又は水槽と結合された領域でのホットスポットを回避することが提案される。このため、少なくとも1つの冷却通路は、固定点から、鋳型プレートの裏側とは反対側の鋳造側の支持プレートもしくは水槽の方向に見て、固定点の下まで延在する。これにより、固定点のベース領域での冷却が改善され得る。
【0007】
特開2006-320925号公報は、固定点の下の付加的な冷却通路を開示する。固定点は、鋳型プレートを支持プレートと結合するための固定ボルトを収容するために使用される。独国特許第102016124801号明細書とは違って、外側に隣接する冷却通路は準備されないので、冷却通路は、固定点の下まで延在するのではなく、固定点の下に別の冷却通路が形成される。しかしながら、製造は、比較的複雑である。
【0008】
独国特許出願公開第102004001928号明細書は、金属を連続鋳造するための液冷式の鋳型を開示するが、鋳型プレートは、固定ボルトによって支持構造と結合されている。鋳型プレートもしくは鋳型チューブ及び支持構造は、引掛りなく互いに結合され、支持構造と鋳型プレートもしくは鋳型チューブとの間に作業ギャップが存在する。作業ギャップは、固定点の横、特にそこに配置されたネジ付きインサート-固定点の一部であるかこの一部を構成する-の横に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国特許第102016124801号明細書
【文献】特開2006-320925号公報
【文献】独国特許出願公開第102004001928号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の根底にある課題は、バルジングの危険が軽減されている、鋳型プレートを示すことである。連続鋳造時の鋳型プレートの変形は、最小化すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1の特徴を備えた鋳型プレートによって解決される。
【0012】
従属請求項は、本発明の有利な発展形に関する。
【0013】
本発明による鋳型プレートは、鋳造側とこの鋳造側とは反対向きの裏側を備える。鋳型プレートは、銅合金から成る。鋳型プレートは、別のコンクリート製のプレートと共に鋳型を構成することができ、鋳型は、金属溶融物の連続鋳造時に使用される。裏側に、裏側に向かって開放した少なくとも1つの冷却通路が配置されている。この冷却通路は、鋳造側に対向する冷却面を備える。冷却通路内に、インサートが配置され、これにより、インサートの内面と冷却面の間に、冷却ギャップが形成される。鋳造作業中、冷却水は、冷却面を介して鋳型プレートを冷却し、これにより鋳造側も冷却するために、この冷却ギャップを経て導かれる。インサートは、固定ボルトを介して冷却面内の固定点と結合されている。冷却面の領域は、冷却部の溝底と呼ぶこともできる。本発明は、インサートと鋳型プレートの間に別の固定点が存在することを排除しない。好ましくは、インサートは、冷却面内の、即ち冷却通路内の固定点を介してのみ鋳型プレートと結合されている。
【0014】
通常、インサートは、冷却面の領域内で鋳型プレートと結合されているのではなく、冷却面の領域外で鋳型プレートと結合されている。しかしながら、冷却面上もしくは冷却面内に直接的に固定点を配置することにより、冷却通路の隣接する壁の間の領域が橋渡しされる。冷却通路の壁の領域に、締結点が配置され、これら締結点を介して、鋳型プレートは、鋼から成る支持プレート又は水槽とネジ止めすることができる。良好に差別化するために、本発明では、支持プレートと鋳型プレートを結合するための点は、締結点と呼ばれるが、鋳型プレートとインサートを結合するための点は、固定点と呼ばれる。両場合で、結合は同様に、即ち固定ボルトもしくは締結ボルトを介して、即ちネジ継手を介して行なわれる。本発明の場合、固定ボルトは、スタッドボルトとして鋳型プレートに配置することができるので、ナットを固定ボルトにネジ固定する必要がある。しかしながらまた、逆に、ネジヘッドを備え、固定点もしくは締結点のネジ付き収容部にねじ込まれる固定ボルトでもあり得る。スタッドボルトとネジボルトの混在構成が可能である。
【0015】
本発明による固定点の配置の重要な利点は、いずれにしても支持プレートの後方に支持されるインサートが、冷却ギャップを決定し、流速を増大させるために利用されるだけでなく、むしろ、冷却ギャップの領域内のバルジングによる塑性変形を防止するために寄与することである。冷却面の領域内の固定点もしくは固定は、特に多数の固定点が設けられている場合には、鋳造インサート中の鋳型プレート全体の寸法安定性を著しく改善する。好ましくは、少なくとも、締結点と同数の固定点が設けられている。結合点(締結点を含む固定点)の倍増は、鋳造側に対する鋳型プレートの肉厚を増大させる必要なく、鋳型プレートを極端に補強すること生じさせる。これにより、大量の熱を依然として非常に短い時間内で排出することができ、連続鋳造鋳型の広幅側と狭幅側の間のギャップ形成の危険と同様に、塑性変形の危険が低減される。ギャップ形成がほとんどない又は全くない場合、予防保全は、全く必要ないか、もはやそこまでは必要ない。鋳物表面の後加工は、必要時により大きなインターバルで行なうことができる。これにより、鋳型の耐用年数は、全体的に大きくなるので、連続鋳造設備の稼働率が改善される。
【0016】
実用的な実施形態では、固定点は、特に、冷却面に対する島状の隆起である。冷却面は、好ましくは、実質的に平坦な面である。冷却面内には、インサートの内面に向いた個々のウェブを配置することができる。これらウェブの間もしくは冷却面と内面の間に、冷却水が貫流する個々の冷却ギャップが構成される。固定点は、好ましくはウェブの領域に存在するので、それぞれの冷却ギャップは、依然として実質的に真直ぐに延在することができる。冷却面内の個々のウェブも、好ましくは真直ぐに互いに平行に、即ちそれぞれの冷却通路の縦方向に延在する。冷却通路内に、好ましくは2つ又は3つのウェブが配置されている。ウェブの数に応じて、冷却通路内には各ウェブの領域に固定点が存在する。従って、通路の横方向の固定点の間隔は、ウェブの間隔に一致する。間隔は、それぞれ中心間間隔に関係している。好ましくは、横方向に互いに離間した2つの固定点が生じる。
【0017】
更に、冷却面内の島状の隆起は、固定が、冷却面への係合を介して行なわれるのではなく、冷却面上の固定点を介して行なわれるとの利点を有する。これにより、固定点の領域内の鋳造側と冷却面の間の鋳型プレートの厚さは、この冷却通路の他の領域内よりも小さくない。従って、固定点の領域に材料脆弱部が生じない。更にまた、これは、力の伝達に関する利点及び熱の伝達の均一化に関する利点を有する。鋳造側の後加工用の材料の余裕は、維持されている。
【0018】
最適な冷却能力のため、冷却面の下の鋳型プレートの厚さが、それほど変動しない場合が望ましい。特に、できるだけホットスポットが、即ち排熱が低下している点が、生じるべきでない。理論的に、島状の隆起が非常に大きい面を有する場合には、このようなホットスポットが生じ得るが、それは、冷却水が、島状の隆起の中核領域に到達しないからである。従って、このような固定点の下の排熱は、低下していることがある。但し、本発明によれば、少なくとも1つの冷却ギャップが、固定点から鋳造側の方向に見て固定点の下まで延在すること、が企図されている。固定点は、いわばアンダーカットされている。アンダーカットは、片側又は両側で行なうことができる。固定点がウェブの中央に配置されている場合、アンダーカットは、一定の幅及び/又は高さを備えたウェブが、固定点の下でも延在するように形成することができるが、固定点自体は、ウェブの上で初めて始まる。これにより、ウェブは、固定点の下で、固定点外と同様に冷却される。ホットスポットは生じない。排熱は、ウェブの全長にわたって均等かつ均一に保たれる。
【0019】
複数の固定点が、好ましくは、冷却通路の縦方向だけでなく横方向にも互いに位置をずらして配置されている。前で説明したように、固定点は、特に、それぞれのウェブに関して整列した配置で存在する。隣接する2つのウェブの固定点は、必ずしも同じ長さ部分内に、即ち横方向に直接的に相並んで配置される必要はない。固定点は、特に、縦方向に互いに位置をずらして配置することができる。従って、2つのウェブから出発して、横方向だけでなく縦方向にも固定点の数の増大を必要とする固定点の配置が得られる。それぞれの固定点は、特に縦方向に見て、鋳型プレートを支持プレートに固定する締結点から間隔を置いて存在する。固定点は、例えば、ジグザグパターン又は台形パターンで配置することができる。目標は、冷却通路の領域内の薄肉の鋳型プレートのできるだけ均等な支持を生じさせることである。このため、必要時に、個々の固定点は、同じ高さに、即ち同じ長さ部分内に配置することができる。
【0020】
インサートが設置位置で支持プレートに支持されることが、従来技術である。従って、インサートは、支持突起のその周縁領域に、少なくとも部分的に、鋳型プレートの裏側から冷却面までの冷却通路の深さ全体にわたって延在する高さもしくは厚さを備える。
【0021】
本発明の場合、固定点が存在することによって、鋳型プレートの裏側まで達する後方の支持突起が、好ましくは冷却通路の長さ部分内に配置されていることが企図されている。これにより、鋳型プレートは、ウェブもしくは固定点を介して直接的に裏側に配置された支持プレートに支持することができる。インサートが、冷却通路を画成するウェブ、又は、一般的な形態では冷却通路の壁、に重なる場合、インサートは、熱膨張によって裏側内に生じる引張力を受け止めることができる。鋳型は、冷却通路内の固定点によってインサートから浮くことができず、インサートは、ウェブ又は壁に支持されるので、更にまた、鋳造側の方向に移動することができない。支持突起は、ウェブ又は壁に重なることができる。支持突起は、ウェブの僅かな高さの領域に重なること又は鋳型プレートの裏側のポケットに嵌入することができるので、支持突起は、裏側から突出しない。この場合、支持突起は、引張力及び圧縮力を受け止め、隣接する面の位置(支持プレートの前面/ウェブの裏側)に応じて隣接する部品(鋳型プレート、支持プレート)に伝達することができることによって、二重の機能を有する。
【0022】
特に、インサートの両縦側に、互いに直接的に対向する支持突起が存在し、しかも固定点の高さに存在する。非常に接近している固定点の場合、即ち、縦方向に僅かな間隔を有する固定点の場合、支持突起を互いに融合することができる、もしくは、相応に広い唯一の支持突起を設けることができる。
【0023】
互いに対向する支持突起により、固定点で作用する力は、インサートの左側及び右側で均等に鋳型プレートからインサートを介して後方の支持プレートに導入することができる。好ましくは、直接的に対向する2つの支持突起の間の領域は、1つ又は2つの固定ボルトを内部に配置した厚いヨークとして形成されている。従って、インサートは、縦側で対向する支持突起の間に、好ましくは、縦方向で支持突起の隣に配置された領域よりも大きい厚さを備える。大きい厚さにより、固定ボルトの領域もしくは固定点の領域にインサートの高い曲げ剛性が達成される。
【0024】
有利な発展形では、鋳型プレートとインサートの間の結合は、鋳型プレートが高い熱的な影響に基づいて鋳造条件下で膨張を阻止されないように形成されている。これは、本発明の1つの発展形においては、固定点の領域内で、鋳型プレートとインサートの間に作業ギャップが配置されていること、によって得ることができる。作業ギャップは、非常に小さい。鋳型プレートが、固定点において、インサートに対して可動に支承されていることが、得られる。この場合、固定点、即ち鋳型プレートは、冷却通路に対して横に、即ち横で冷却通路の縦方向と横方向に引掛りなく移動可能である。可動の支承は、鋳型プレートが付加的な自由度によってバルジングに対して係止しており、従って塑性変形にさらされていると、理解すべきでない。付加的な応力が鋳型プレート内に構成されることが、防止されるに過ぎない。従って、固定ボルトは、十分に大きい貫通孔内に存在するが、この貫通孔は、鋳型プレートが、この鋳型プレートに配置された固定ボルトと共にインサートに対して横に、しかしながら限定的にインサートに対して垂直にだけ移動できる大きさである。鋳型プレートに対して相対的なインサートの位置は、支持プレートの裏側に当接することによって固定的に設定されている。
【0025】
固定ボルトは、本発明の発展形では、ネジ固定要素を組み込むことで固定点とネジ止めされている。特に、ネジ固定要素は、ボルトヘッドと固定点の間に存在するスリーブ上に支持される。この場合、固定ボルトは、スリーブ及びネジ固定要素並びに鋳型プレート共にユニットを構成し、このユニットが、インサートに対して横に移動可能である。
【0026】
固定ボルトを内部に配置した貫通孔は、好ましくは、直径内に段部を備え、これにより、ボルトヘッド用の当接面と、ボルトヘッドが支持されるスリーブのカラーが存在する。作業ギャップと組み合わせた当接面は、冷却面に対して垂直な鋳型プレートの自由度を規定する。ここでは、バルジングの危険を増大させることなく、インサートに対して相対的な鋳型プレートの横の移動を可能にするための最小のギャップで既に十分である。作業ギャップの幅は、好ましくは0.2mmよりも小さい。
【0027】
冷媒が作業ギャップに浸入できたとしても、作業ギャップは、本発明の意味で、冷媒通路として形成されているのではなく、実質的に僅かな幅を備える。基本的に、本発明の範囲内で、作業ギャップは、鋳型プレートのできるだけ均一な冷却と一定の剛性を達成するために固定点の配置と数を変化させることができるのと同様に、異なるように設定することができる。
【0028】
本発明の範囲内で、「鋳型プレートとインサートの間の引掛りのない結合」との表現は、鋳型プレートが、熱的な影響に基づいてインサートに対して縦方向又は横方向に移動したときに、鋳型プレートの銅材料内に僅かな材料応力しか生じないことと理解すべきである。同時に摩擦値が僅かである場合のインサートと固定点の接触は、重要でない。この領域内のインサートと鋳型プレートの間の高い予荷重による引掛りもしくはロックだけを、好ましくは回避すべきである。
【0029】
最後に、固定ボルトのボルトヘッドが、インサート内の段の付いた貫通孔内に完全に没入するように配置されている場合が、特に有利であるとみなされる。貫通孔の領域内のインサートの若干大きい厚さは、支持突起がインサートの縦側に配置され、固定点と支持突起の間にインサートの高い捩り剛性が与えられているべきであるとのことに起因する。インサートは、この領域ではヨークとして機能する。しかしながら、これは、特に長いネジボルトを使用しなければならないことを意味しない。省材料の理由から、ボルトヘッドは、完全に貫通孔内に没入するように配置することができる。
【0030】
貫通孔は、好ましくは両側から段差を備える。一方では、ボルトヘッドを貫通孔内に没入させることができる。中央の領域に、貫通孔は、内側に向けられたカラーの形態の当接面を備える。貫通孔もしくはカラーの反対側に、島状に隆起した固定点が配置されている。固定点は、好ましくは完全にインサートに係合する。固定点の周囲側に、十分に広いギャップが存在するので、鋳型プレートは、貫通孔に対して横に移動可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、従来技術を示し、技術背景を説明するために使用される。保護が求められた実施形態ではない。本発明を、以下で、
図2に純粋に概略的に図示した実施例により詳細に説明する。
【0033】
図1は、鋳型プレート1を部分的に断面にして斜視図で示す。
図1の鋳型プレート1を説明するために使用した符号が、
図2の本発明による鋳型プレート1における実質的に同じ内容の構成要素のために更に使用される。
【0034】
図1の鋳型プレート1は、注視者とは反対に向いた鋳造側と、注視者の方に向いた裏側
3を備える。設置位置で、裏側
3は、詳細には図示してない支持プレートに支持される。鋳造作業中、鋳造側2の高温の溶融物は、熱が鋳型プレート1によって吸収され、冷却水を介して導出されることによって冷却されるが、この冷却水は、冷却ギャップ4を経て導かれ、これら冷却ギャップは、更にまた冷却通路5内に存在する。この鋳型プレート1における鋳造方向は、垂直方向に一致する。従って、冷却通路5は、鋳造方向に対して平行に上から下に向かって延在する。冷却通路は、互いに平行に延在する。
【0035】
冷却通路5内に、それぞれ、裏側3に向かって冷却ギャップ4を画成するインサート6が存在する。インサート6は、横断面をU字型に構成されている。冷却ギャップ4の方に向いたその内面7は、冷却通路5の冷却面9から鋳型プレート1の裏側3の方向に向いたウェブ8に当接する。ウェブ8は、冷却ギャップ4の高さを決定する。ウェブ8の互いの間隔は、冷却ギャップ4の幅を、従って全体として冷却ギャップ4の横断面積を決定する。冷却ギャップ4内は、鋳造作業中に高い圧力が支配する。従って、インサート6は、作業中は、詳細には図示してない支持プレートに支持される。このため、インサートは、鋳型プレート1の裏側3にまで達する互いに間隔を置いて配置された複数の支持突起10を備える。インサートは、その縦側を輪郭形成され、冷却通路5の壁の輪郭に適合されるように縦側に向かって輪郭を付けられた支持突起11を備えるので、インサート6は、冷却通路5内で縦方向Lと横方向Qの両方向に位置決めされている。インサート6は、裏側3に向かってだけ冷却通路5から取り外すことができる。
【0036】
隣接する2つの冷却通路5は、ウェブ12を介して互いに分離されている。ウェブ12内に、互いに間隔を置いて締結点13が存在する。締結点は、ネジ付きインサート14を備え、これらネジ付きインサートを介して、鋳型プレート1は、インサート6と共に裏側に配置すべき支持プレートにネジ止め可能である。これにより、それぞれのインサート6も、冷却通路内に正確に位置決め及び保持される。
【0037】
本発明による鋳型プレート1は、冷却通路5のそれぞれの冷却面9にネジ付きインサート16を備えた固定点15が配置されているとの実質的な違いを有する。固定点15は、鋳型プレート1の裏側3に向いている。固定ボルト17は、それぞれのインサート6内の貫通孔18内に配置され、固定点15のネジ付きインサート16にねじ込まれている。スリーブ19並びにネジ固定要素20を介して、固定ボルト17のボルトヘッド21が、固定点15上に載置されている。貫通孔18内のカラー22は、遊びをもって固定点15とスリーブ19の間に保持されている。詳細には図示してない方法で、固定点とスリーブ19の間に幅2/10mm未満の狭い作業ギャップが存在する。加えて、貫通孔18の直径は、その全ての長さ領域内で、インサート6に対して相対的な固定点15の僅かな横の移動が行なわれ得るような大きさに設定されている。このようにして、インサート6と鋳型プレート1の間の熱的に誘起された応力が回避される。
【0038】
固定点15は、それぞれウェブ8の領域に存在する。2つのウェブ8が互いに平行な間隔を置いて存在するので、2列の固定点15が存在する。互いに隣接する列の固定点15は、冷却通路5の縦方向Lに互いに位置をずらして配置されている。冷却ギャップ4を画成するウェブ8が、ほぼ互いに同じ間隔を置いて配置されているので、それぞれの固定点15は、ほぼそれぞれの通路5の左右の壁から同じ間隔を置いて、従ってほぼそこに配置された締結点から同じ間隔を置いて存在する。これにより、鋳型プレート1をインサート6もしくは支持プレートと結合し得る固定点15もしくは締結点13の高い密度が生じる。
【0039】
固定点15は、島状の隆起である。これら隆起は、冷却面
9から間隔を置いて、即ちウェブ8が終わるところから始まる。固定点15がウェブ8よりも大きい幅を有するので、固定点15は、裏側から鋳造側に向かう垂直な注視方向に見ればアンダーカットされている。それぞれ隣接する冷却ギャップ4は、それぞれの固定点15の下まで延在するが、但し、これは、それがウェブ18の幅を設定する限りにおいてのみである。
図2の断面図では、固定点15は、側面がくびれているように見える。従って、固定点15の下のこれらくびれは、直径方向に対向し、ウェブによって互いに分離されたセグメントの形態を有する。ウェブ8は、いわば、固定点15と冷却面9の間の結合要素である。
【0040】
貫通孔18は、直径方向に配置された2つの支持突起10の間に存在するが、これら支持突起は、それぞれ、インサート6の縦側に配置されている。前記支持突起10から間隔を置いて別の支持突起11が存在する。支持突起10,11は、従来技術の実施形態においてのように、詳細には図示してない支持プレートにインサート6を後方から支持するために使用される。広幅の支持突起10は、それぞれのインサート6が、インサート6の縦方向Lに隣接する領域よりも大きい厚さを備えるところに存在する。他の領域は、固定点15もしくは貫通孔18が存在しない長さ部分を意味する。対向する広幅の支持突起10の間の厚い領域は、ヨークとして使用され、冷却面9の領域内の鋳型プレート1から固定点15を介してインサートに加えられる力を吸収するために設けられている。前記支持突起10の間の領域は、特に曲げ剛性を有し、堅牢ある。インサート6が、付加的な固定点15を介して力を吸収することなく冷却ギャップを画成する機能だけを有する残りの領域では、このような堅牢な支持部を必要としない。これに応じて、そこの支持突起11は、横断面を小さく設定されている。
【0041】
インサート6は、冷却面9のウェブ8からインサートの方向に作用する力を吸収し、支持プレートに伝達することができるだけでなく、反対方向に向いた力を吸収することもできる。このため、支持突起10は、2つの冷却通路5の間のウェブ12に重なる。この領域で、インサート6は、冷却通路5よりも広い。ウェブ12は、この領域に若干低い高さを備える。これにより、支持突起10は、裏側3から突出するのではなく、締結点13とウェブ12の残りの領域と同じ平面で終わる。周縁側の冷却通路5の場合のようにウェブが存在しない場合、支持突起10は、裏側3の凹部である裏側のポケット23に嵌入することができる。従って、支持突起10は、裏側3から突出しない。
【0042】
更に、固定ボルト17のボルトヘッド21が、インサート6の段の付いた貫通孔18内に完全に没入するように配置されていることが認められる。
【0043】
本発明による鋳型プレート1は、インサート6の間の多数の固定点15に基づいて、高い曲げ剛性を備え、これにより、熱的影響に基づく塑性変形が回避される。従来技術と比較して、排熱の均一性が維持されている。
【符号の説明】
【0044】
1 鋳型プレート
2 1の鋳造側
3 1の裏側
4 5内の冷却ギャップ
5 1内の冷却通路
6 5内のインサート
7 6の内面
8 7のウェブ
9 5の冷却面
10 支持突起
11 支持突起
12 1のウェブ
13 締結点
14 13内のネジ付きインサート
15 固定点
16 15内のネジ付きインサート
17 15内の固定ボルト
18 貫通孔
19 スリーブ
20 ネジ固定要素
21 17のボルトヘッド
22 18内のカラー
23 3内のポケット
L 5の縦方向
Q 5の横方向