(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】ペースト絞り出し機
(51)【国際特許分類】
A23P 30/20 20160101AFI20220715BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20220715BHJP
【FI】
A23P30/20
A23L19/00 B
(21)【出願番号】P 2021086505
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】309001724
【氏名又は名称】株式会社和田機械
(72)【発明者】
【氏名】和田 義臣
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-106603(JP,A)
【文献】登録実用新案第3139586(JP,U)
【文献】登録実用新案第3196745(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23P 10/00-30/40
A21C 1/00-15/04
A23G 1/00-9/52
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下端が開口した円筒部を備え、上端部に円筒部よりも外径を大きくした鍔が形成された円筒容器の正面側の長さ方向の中間部にペースト挿入孔が形成され、背面側の上部にペースト挿入孔よりも上位に位置させて開口端から鍔と円筒部をともに軸心に沿って縦長に切り欠く第1の切欠き部と、第1の切欠き部の下側に連続して円筒部の中心部に達する第2の切欠き部が第1の切欠き部よりも幅広く形成された円筒容器と、
栗、さつまいも等のイモ類、カボチャ、豆類の餡等々のペーストを複数列のひも状に絞り出す細孔が複数設けられたノズル円盤を内蔵するキャップが円筒容器の下端部に着脱自在に装着され、
円筒容器の上方においてその円筒容器と軸心を一致させたアクチェータがフレームに設けられ、円筒容器内部にアクチェータによって上下動する押し出し円盤が内装されていることを特徴とするペーストの絞り出し機。
【請求項5】
ハンガー板の馬蹄型の段付き部は、U字形状が形成されたベース板の上に軸心を一致させて固着されている請求項1ないし請求項4に記載のペーストの絞り出し機。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は栗、さつまいも等のイモ類、カボチャ、豆類の餡等々のペーストを簡単に効よく美しく絞り出すためのペースト絞り出し機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
栗、さつまいも等のイモ類、カボチャ、豆類の餡等々のペーストを円筒容器に収容し、円筒容器の下端に設けられた多数の細孔から搾り出された連続したひも状ペーストで洋菓子や和菓子を覆った菓子が知られている。
例えば、最も知られているのは栗のペーストを利用した洋菓子のモンブランである。直径数ミリの細孔から絞り出された複数列のひも状ペーストをカップケーキ型のスポンジ生地やタルト生地に螺旋状に覆いかぶせるようにしたものとしてよく知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来モンブラン菓子を作る際に使用される絞り出し器として
図11に示すものがある。
図11に示す絞りだし器51は、手動操作される機構のもので、ペーストを挿入するために上端が円形に開口された円筒容器52が傾斜状態にその下端において回動可能に支承されている。円筒容器52の下端には直径数ミリの細孔53aが多数設けられたノズル円盤53が内装されている。円筒容器52の内部には円形の押し出し円盤54が軸方向に移動可能に設けられている。その押し出し円盤54は、軸心を一致させたラック棒55の下端に取り付けられている。ラック棒55には多数の歯形が形成されており、そのラック棒55はフレーム56上部に設けられた本体ブロック57内において円形の歯車(図示略す)にかみ合っており、この歯車は同一軸上に設けられたハンドル58を所定角度回動させることにより回転する。ハンドル58を手前方向に引き寄せると歯車の回転に伴ってラック棒55が下降し、円筒容器52上端の開口部から挿入された栗ペーストは押し出し円盤54に押し下げられ、ノズル円盤53の細孔53aからひも状に絞り出される構成となっている。
この構成の絞り出し器51においては、絞り出しが終わって次のペーストを円筒容器52に挿入する毎に、ラック棒55に連結された押し出し円盤54を円筒容器52の上部から完全に脱出させるとともに、手前方向へ若干傾斜させてから行う動作が必要となる。円筒容器52へのペースト挿入に手間がかかり、絞り出しの作業効率が悪い。
また、常に片手でハンドル58を操作しなければならないので、栗ペーストを盛り付けるカップケーキ型のスポンジ生地やタルト生地を片手で持って回転させる等々の不安定な動きをしなければならず、見た目のきれいな螺旋状の盛り付けができない。
【0004】
この発明は、絞り出し容器となる円筒容器をフレームに取り付けたまま取り外すことなく又は傾斜させる等々の動作を不要とし、連続した絞り出し作業が可能で、作業効率が高く、両手による盛り付け作業を可能して見映えのするきれいな螺旋状の盛り付けができる機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、栗、さつまいも等のイモ類、カボチャ、豆類の餡等々からなるペーストを絞り出すペーストの絞り出し機において、ペーストを収容する円筒容器の外周面にペースト挿入孔を設けることにより連続した絞り作業を可能にするもので、以下の構成となっている。
1.ペーストを挿入する円筒容器の上下端が開口した円筒部の正面側の長さ方向の中間部の外周面にペースト挿入孔が形成されている。
2.円筒部の上端部にはその円筒容器よりも外径寸法を大きくしたリング状の鍔が形成されている。
3.円筒部の上部背面側外周に開口端から円筒部と鍔を切り欠く縦長で細幅の第1の切欠き部が形成され、その第1の切欠き部の下部は円筒容器の内径に達するように第1の切欠き部よりも幅を広くした広幅の第2の切欠き部が形成されている。第1の切欠き部と第2の切欠き部は通じている。
4.円筒容器の下端部には、リング状のキャップが着脱自在に装着されている。このキャップの内部には、ペーストを複数列のひも状に絞り出すためのノズル円盤が内装されている。
5.円筒部にはペーストを押し下げるための円形の押し出し円盤が内装され、その押し出し円盤は後述する軸方向に摺動するアクチェータに連結されている。押し出し円盤の原点位置は挿入孔よりも上位に設定される。
6.円筒容器をほぼ垂直に保持するフレームには、円筒部の外径寸法よりもやや幅を広くし、かつ鍔の外径寸法よりも幅が狭くU字形状に切り欠かかれた切り欠き部が形成され、さらに上面側に鍔の外径寸法より内径をやや大きくした馬蹄型の段付き部が形成されたハンガー板が水平に取り付けられている。馬蹄型の段付き部の開口部幅は鍔の外径寸法よりも小さく形成され、鍔が馬蹄型の段付き部からずれ出ないようになっている。
7.前記ハンガー板の上方に、切欠き部の軸心と一致させた軸方向移動用のアクチェータがフレームに垂直に取り付けられている。このアクチェータは、エアシリンダ、電動アクチェータや歯車にかみ合ったラック棒等々が採用される。
9.アクチェータがエアシリンダの場合、電磁弁を介して圧力空気源に接続され、操作回路の電磁弁の切り替えによりピストンロッドが伸縮して押し出し円盤を上下動させる。
10.円筒容器外周面に形成されたペースト挿入孔からペーストを挿入して電磁弁を作動させると、エアシリンダの上端部から圧力空気がシリンダ内に供給されることによりピストンロッドが突出し、ピストンロッドを介して押し出し円盤が下降し、ペーストがノズル円盤から所定の太さのひも状ペーストとして絞り出される。
11.押し出し円盤が最下端まで下降して絞り出しが終了すると、押し出し円盤は上昇に転じて挿入孔よりも上方の原点に復帰し、次の絞り出しに備える。押し出し円盤はペースト挿入孔よりも上位に位置するから続いてのペーストの挿入が即可能となり、押し出し円盤を円筒容器から脱出させることなく連続して作業を継続することができる。
12.一日の作業が終了して掃除等々のために円筒容器をフレームから取り外すには、押し出し円盤が原点位置にあるとき、円筒容器を垂直方向に所定量持ち上げることにより鍔をハンガー板の馬蹄型段付き部より上方に脱出させ、そのまま手前方向に引き寄せればよい。ハンガー板のU字形切欠き部の開口部の幅は円筒部の外径寸法よりも広く形成されており、鍔は馬蹄型段付き部から上方へ飛び出ているのでハンガー板から取り外すことができる。円筒容器の背面側には縦長で細幅の第1の切欠き部とその下側に幅広の第2の切欠き部が設けられているので、エアシリンダのピストンロッドは第1の切欠き部を介して脱出可能であり、押し出し円盤は幅広の第2の切欠き部を介して脱出可能であり、円筒容器をフレームから簡単に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成とすることにより、以下の効果が得られる。
押し出し円盤の原点位置がペースト挿入孔よりも上位に設定されているから、押し出し円盤を円筒容器から脱出させることなくペーストの挿入が即可能となり、従来のように押し出し円盤を円筒容器から毎回脱出させてペーストを挿入する手間及び時間がかからず、連続した作業が可能となり、作業性の向上につながる。
押し出し円盤及びエアシリンダのピストンロッドが円筒容器内に位置していても、円筒容器を持ち上げて手前へ引き寄せるだけで円筒容器の取り外しが可能となり、円筒容器の掃除やノズル円盤の交換が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】は本発明の実施例の一部を破断した正面図である。
【
図2】は本発明の実施例の一部を破断した側面図である。
【
図3】は本発明の実施例の円筒容器及びキャップの斜視図である。
【
図4】は本発明の実施例の円筒容器の背面図である。
【
図5】は本発明の実施例のハガー板の平面図である。
【
図6】は本発明の実施例のハンガー板の斜視図である。
【
図7】は本発明の実施例の作動要領を示す背面図である。
【
図8】は本発明の実施例の作動要領を示す背面図である。
【
図9】は本発明の別の実施例の円筒容器とキャップの斜視図である
【
図10】は本発明の別の実施例のキャップの正面図である
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施例を
図1ないし
図11に基づいて説明する。
【実施例】
【0010】
栗、さつまいも等のイモ類、カボチャ、豆類の餡等々のペーストPは
図2に示すようにスティック状に形成されている。このスティック状のペーストPをひも状のペーストに成形するための円筒容器1は、
図3に示すように金属又は硬質の合成樹脂からなり、円筒部2の上端及び下端が開口しており、上端部にはリング状に鍔3が形成されている。この鍔3は円筒素材の削り出しによる場合と、リングを円筒部の上端に嵌装し溶接する場合がある。
【0011】
図1ないし
図4において、上端が開口した円筒部2の外周面の上部背面側に開口端から縦長に細幅の第1の切欠き部4が形成され、その第1の切欠き部4の下部にはペーストPを円筒容器1の下端から押し出すための押し出し円盤5の形状よりも大きな広幅の第2の切欠き部6が連続して形成されている。
切欠き部4と切欠き部6は、円筒容器1内で押し出し円盤5を上下動させるためのアクチェータとしてのエアシリンダ7のピストンロッド8と押し出し円盤5を円筒容器1から脱出させるために設けられている。従って、第2の切欠き部6は押し出し円盤5の形状よりも大きく形成される。
図中9はピストンロッド8を延長するための連結棒で、押し出し円盤5に連結されている。
【0012】
円筒部2の長さ方向の中間部には、所定の大きさに成形されたスティック状のペーストPを円筒容器1へ挿入するためのペースト挿入孔10が形成されている。この挿入孔10はスティック状のペーストPの形状に対応した大きさに形成される。
【0013】
円筒部2の下端部にはねじ部11が形成され、リング状のキャップ12が着脱自在に螺着されている。ペーストPを絞り出すための多数の細孔13を有するノズル円盤14がキャップ12に内装されている。ノズル円盤14の細孔13の穴径は、例えば2ミリから6ミリ程度である。絞り出されるペーストの直径は用途に応じて決定されるので上記穴径に限定されない。
【0014】
円筒容器1を装着するためのハンガー板15は
図5及び
図6に示すようにフレーム17に取り付けられている。フレーム17は、所定の高さに枠組みされており、そのフレーム17の上部中央にハンガー板15が取り付けられている。このハンガー板15にはU字形状の切欠き部15aがベース板15bの端部に形成されており、その切欠き部15aの幅Aが円筒部2の外径寸法よりも幅広で、かつ円筒部2上端の鍔3の外径寸法よりも狭くなるように形成されている。このハンガー板15の上面には、円筒容器1の鍔2の外径寸法よりも大きな内径に形成された馬蹄型の段付き部16が一体に形成されている。この段付き部16は円形の一部を切り欠いた開口部(開口幅B)が形成されたもので、その開口部は鍔2の外径寸法よりも狭く形成されており、鍔2が水平方向への移動で馬蹄型段付き部16の開口部(開口幅B)から抜け出ることはない。
【0015】
図7及び
図8円筒容器1を持ち上げて鍔2を馬蹄型段付き部16から脱出させ、さらに手前へ引き寄せれば円筒容器1を容易に外すことができる。円筒容器1の円筒部2の外径寸法はハンガー板15の切欠き部15aの開口幅Aよりも小さいので切欠き部15aから抜け出ることが可能となる。円筒容器1を持ち上げることにより押し出し円盤5は円筒容器1の背面側の幅広の切欠き部6に対応するようになり、その切欠き部6から脱出することができ、ピストンロッド8と連結棒9は切欠き部6上方の切欠き部4から脱出できる。
【0016】
エアシリンダ7上端のポートから圧力空気を供給すると、ピストンロッド8が下降し、押し出し円盤5が円筒容器1内においてペーストPを押し下げて最下端に達すると、エアシリンダ7下端部外側に装着されたセンサ18がエアシリンダ7内部の磁石に反応して通電し、電磁弁(図示略す)を作動させて圧力空気のシリンダポートを切り替えるように作動する。ポートの切り替えが行われると、押し出し円盤5はピストンロッド8とともに上昇してペースト挿入孔10よりも上位置に設定された原点に復帰し、1サイクルが終了する。図中19はピストンロッドの伸縮速度を調整するスピードコントローラである。
【0017】
上記装置において、スティック状ペーストPを使って複数列のひも状ペーストを洋菓子又は和菓子等の上に螺旋状に回しかけるには、ペーストPを円筒容器1のペースト挿入孔10から挿入し、制御盤(図示略す)の運転スイッチを押すと電磁弁が作動するため圧力空気がエアシリンダ7の上端のポートから供給され、ピストンロッド8が押し出し円盤5を最下端まで押し下げる。円筒容器1内においてペーストPは押し出しブロック5に押し潰されてノズル円盤14の細孔13からひも状に絞り出される。
上記実施例ではスティック状のペーストPを使用したが、団子状のペーストであってもよいし、所定量ずつスプーンですくって挿入してもよい。
【0018】
上記実施例においてはノズル円盤14を内蔵するキャップ12を円筒容器1の下端に螺着したが、これに限定されるものではなく、
図9に示すようにしてもよい。この実施例は、円筒容器部21の円筒部22下部に円形または方形等のピン23を向く数か所反対向きに突出させ、キャップ24側にピン23の形状に対応した切欠き部24aをL字状に形成したものである。キャップ24の切欠き部24aと円筒容器21のピン23を対応させ、ピン23が切欠き部24aに入り込むようにした後キャップ21を押し上げ、さらに所定角度回転させる。切欠き部24aの終端部の上辺に逆凹状の窪み24bを設けておけばピン23がその窪み24bに入り込み、キャップ24の回転防止が可能である。キャップ24にはペーストを絞り出す際の下向きの力が常に作用するからピン23と窪み24bの係合が外れることはない。
キャップ24を外すには、キャップ24を持ち上げてピン23と切欠き部24aを対応させ、前記と反対方向に回転させればよい。
この実施例ではキャップ24を簡単に着脱できるから、ひも状ペースト径の変更のためのノズル円盤の交換に素早く対応できる。
【0019】
上記実施例の装置においては、ペーストPを円筒容器1の外周面に設けられたペースト挿入孔10から挿入して制御盤の運転スイッチを押すだけでひも状ペーストが自動で絞り出されので、洋菓子又は和菓子その他を載せた皿やカップを両手で支えて回転操作できる。従来装置のように、片手で押し下げハンドルを操作しながら、同時に他の片手で洋菓子又は和菓子を載せた皿やカップを回転操作する場合に比べてきれいな螺旋状に盛り付けができる。
【符号の説明】
【0020】
1・・・円筒容器
2・・・円筒部
3・・・鍔
4・・・第1の切欠き部
5・・・押し出し円盤
6・・・第2の切欠き部
7・・・エアシリンダ
8・・・ピストンロッド
10・・ペースト挿入孔
12・・キャップ
13・・細孔
14・・ノズル円盤
15・・ハンガー板
16・・馬蹄形段付き部
【要約】
【課題】 この発明は栗、さつまいも等のイモ類、カボチャ、豆類の餡等々のペーストを簡単に効率よく、美しく絞り出すための絞り出し器に関するものである。
【解決手段】栗、さつまいも等のイモ類、カボチャ、豆類の餡等々からなるペーストを絞り出す円筒容器の長さ方向中間部の外周面に、ペースト挿入用の挿入孔を設けることにより連続した絞り作業を可能にするものである。
【選択図】
図1