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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】創外固定器
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/64 20060101AFI20220715BHJP
【FI】
A61B17/64
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019075359
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020171526
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】515095807
【氏名又は名称】新井 哲也
(73)【特許権者】
【識別番号】516263616
【氏名又は名称】ヤマウチマテックス・エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230124763
【弁護士】
【氏名又は名称】戸川 委久子
(74)【代理人】
【識別番号】100224742
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】新井 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山内 隆嗣
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-543405(JP,A)
【文献】再公表特許第2007/139031(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0185064(US,A1)
【文献】特開昭63-139543(JP,A)
【文献】特表2013-527015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56-17/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具本体(1)がプラスチック製の棒体から成り、かつ、この器具本体(1)の胴部には、長さ方向と直角を成す方向に貫通する挿通孔(11)(11)…が長さ方向の全体に亘って所定ピッチで複数形成され、各前記挿通孔は同一の方向に貫通しており、更に器具本体(1)の胴部には、各前記挿通孔(11)(11)…を底部とし、かつ、内側に係止凸部(12a)(12a)を備えたスリット部(12)(12)…が設けられて、骨折部位に固定される創外固定用のピンに対応する位置のスリット部(12)内に前記創外固定用のピン(P)を押し込んで器具本体(1)の挿通孔(11)内にピン(P)が装着可能となっていることを特徴とする創外固定器。
【請求項2】
器具本体(1)のスリット部(12)が、挿通孔(11)の直径よりも幅が小さい通路部(R)と、開口縁に形成された面取り部(M)(M)とから構成されて、スリット部(12)の内壁全体が係止凸部(12a)となっていることを特徴とする請求項1記載の創外固定器。
【請求項3】
器具本体(1)のスリット部(12)において、通路部(R)の幅が挿通孔(11)の孔径の65%~80%の大きさであることを特徴とする請求項2記載の創外固定器。
【請求項4】
器具本体(1)が、横断面形状が円形の丸棒から構成されると共に、丸棒両端に半球状の球状端部(13)(13)がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載の創外固定器。
【請求項5】
器具本体(1)の材料としてPEEK樹脂が使用されていることを特徴とする請求項1~4の何れか一つに記載の創外固定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創外固定器の改良、詳しくは、簡単な構造でピン留めを容易に行うことができ、またピン留め部の位置調節作業も不要で、しかも、創外固定器を装着したままX線撮影も行える創外固定器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、指を骨折した際、骨折部位を正常な位置で安定化させるために骨折部位の前後に挿通した複数のピンを棒状の創外固定器に固定する方法が知られているが、創外固定器のピン留め部の位置が決まっているとピンの挿通位置を創外固定器のピン留め部の位置に合わせる必要があるため、治療を迅速に行うことが難しい。
【0003】
そこで、従来においては、上記ピン留め部の位置を調節できるようにした創外固定器も公知となっているが(例えば、特許文献1~3参照)、この種の調節型の創外固定器に関しては、構造が複雑になってコストが高く付くだけでなく、ピン留めを行う際にピン留め部の位置調節が必要となるため、治療の迅速化に限界がある。
【0004】
一方、従来においては、複数のピン挿通孔を長さ方向に所定間隔で並設したパイプ型の創外固定器も提案されているが(特許文献4参照)、この創外固定器に関しては、ピンの端部をピン挿通孔の位置に合わせて創外固定器の長さ方向と直交する方向にピンを差し込む必要があるため、針穴を通すような高い集中力が必要となる。
【0005】
加えて、上記特許文献4に記載されている創外固定器は、X線を透過しない金属製のパイプから構成されているため、創外固定器を指に装着した状態でX線撮影を行えないという欠点があり、治療時に骨折部位のX線撮影を行う際、創外固定器を一旦取り外した後、撮影後に装着し直すという手間を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平6-38922号公報
【文献】特表2011-502028号公報
【文献】特開2015-89439号公報
【文献】特開2007-75268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の如き問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、創外固定器の装着を迅速かつ容易に行うことができ、また創外固定器を装着したままの状態でX線撮影も行うことができ、しかも、製造コスト面でも有利な創外固定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0009】
即ち、本発明は、創外固定器の器具本体1をプラスチック製の棒体から構成し、かつ、この器具本体1の胴部に、長さ方向と直角を成す方向に貫通する挿通孔11・11…を長さ方向の全体に亘って所定ピッチで複数形成し、各前記挿通孔は同一の方向に貫通し、更に器具本体1の胴部に、各前記挿通孔11・11…を底部とし、かつ、内側に係止凸部12a・12aを備えたスリット部12・12…を設けて、骨折部位に固定される創外固定用のピンに対応する位置のスリット部12内に前記創外固定用のピンPを押し込んで器具本体1の挿通孔11内にピンPを装着可能とした点に特徴がある。
【0010】
また上記器具本体1のスリット部12については、挿通孔11の直径よりも幅が小さい通路部Rと、開口縁に形成された面取り部M・Mとから構成して、スリット部12の内壁全体を係止凸部12aとすることで、どの角度からでもピンPの挿入を容易に行うことができる。
【0011】
また上記器具本体1のスリット部12に関しては、通路部Rの幅を挿通孔11の孔径の65%~80%の大きさとすることで、適度な力でピンPの挿入が可能で、かつ、挿入後にピンPの抜けが生じ難いスリット部12を形成できる。
【0012】
また上記器具本体1については、横断面形状が円形の丸棒から構成すると共に、丸棒両端に半球状の球状端部13・13をそれぞれ形成することによって、器具本体1が肌に接触した際の刺激や痛痒を抑えることができる。
【0013】
また上記器具本体1の材料としては、高温な熱処理による殺菌処理が可能で、かつ、繰り返し使用しても疲労破壊が生じ難い疲労耐性に優れたPEEK樹脂を好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、創外固定器をプラスチック製の棒体から構成し、更に器具本体の胴部に、挿通孔を所定ピッチで形成して、器具本体の胴部に、各挿通孔を底部とする係止凸部を備えたスリット部を設けているため、ピンの胴部をスリット部内に押し込んで任意の挿通孔内にピンを簡単に装着することができる。
【0015】
また本発明の創外固定器は、骨折部位に対するピンの固定位置や創外固定器のピン留め部の位置調整が不要であるため、創外固定器の装着を迅速に行うこともできる。また挿通孔内に固定したピンはスリット部の係止凸部によって抜け止めされるため、多少の衝撃を受けても創外固定器が簡単に外れる心配もない。
【0016】
また本発明の創外固定器は、形状もシンプルで射出成形により大量生産できるため、製造コストを低減して一個当たりの単価も抑えられる。しかも、本発明の創外固定器は、X線透過性を有するプラスチック材料から構成しているため、創外固定器を装着したままの状態で治療時のX線撮影を行うことができる。
【0017】
したがって、本発明により、指を骨折した患者に対して迅速な治療処置を行うことができ、X線撮影を併用した治療も装着した状態で行える創外固定器を提供できることから、本発明の実用的利用価値は頗る高い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一実施形態における創外固定器を表わす全体斜視図及び全体側面図である。
図2】本発明の第一実施形態における創外固定器にピンを取り付けた状態を表わす全体斜視図および全体側面図である。
図3】本発明の第一実施形態における創外固定器のスリット部を表わす拡大説明図である。
図4】本発明の第一実施形態における創外固定器のスリット部の変更例を表わす拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
『第一実施形態』
本発明の第一実施形態について、図1図3に基いて説明する。なお同図において、符号1で指示するものは、創外固定器の器具本体であり、符号Pで指示するものは、創外固定器に使用するピンである。
【0020】
「創外固定器の構成」
[1]創外固定器の基本構成について
本実施形態では、図1に示すように、創外固定器の器具本体1をプラスチック製の棒体から構成し、この器具本体1の胴部に、長さ方向と直角を成す方向に貫通する挿通孔11・11…を長さ方向に所定ピッチで複数並べて形成している。また器具本体1の胴部には、各挿通孔11・11…を底部とし、内側に係止凸部12a・12aを備えたスリット部12・12…を設けている。
【0021】
上記の構成を採用することにより、図2に示すように、上記器具本体1の任意のスリット部12内に創外固定用のピンPを押し込んで器具本体1の挿通孔11内にピンPを装着することができる。またX線を透過するプラスチックから器具本体1を構成しているため、創外固定器を装着した状態でX線撮影等を行うこともできる。
【0022】
[2]器具本体の全体形状について
また上記器具本体1の全体形状に関しては、本実施形態では、横断面形状が円形の丸棒から構成しているが、断面形状が多角形状や楕円形状、半円状の棒形状を採用することもできる。また本実施形態では、丸棒両端に半球状の球状端部13・13を形成しており、これによって器具本体1が肌に接触した際の刺激や痛痒を抑えることができる。
【0023】
なお上記器具本体1の寸法については、本実施形態では、長さ44mm、直径4.5mmとしているが、器具本体1の長さは指の長さや固定部位の長さに応じて調節することができ、また器具本体1の太さについても適度な曲げ弾性率の大きさとなるように調節することができる。また上記器具本体1は、必要な長さに切断して使用することもできる。
【0024】
[3]器具本体の材質について
また上記器具本体1の材料に関しては、本実施形態では、高温な熱処理による殺菌処理が可能なPEEK樹脂を使用しており、PEEK樹脂は摺動性や疲労耐性にも優れているため、ピン脱着時に引っ掛かりが生じ難く、繰り返し使用しても破損が生じ難い。一方、器具本体1の材料としては、射出成形が可能なポリアミド系樹脂や塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリスチレン等を使用することもできる。
【0025】
[4]挿通孔の形状や数について
また上記器具本体1の挿通孔11の形状については、使用するピンPの直径1.2mmに対して直径1.4mmの断面円形型の形状としているが、使用するピンPの断面形状に合致した形状を採用することができる。また本実施形態では、各挿通孔11・11…のピッチ(※隣り合う挿通孔11・11の中心間の距離)を3.0mmとしているが、挿通孔11・11のピッチはピンPの固定位置の調節精度や器具本体1の曲げ弾性率を考慮して適宜変更できる。
【0026】
また上記器具本体1の挿通孔11の数に関しても、本実施形態では器具本体1の長さ方向に13個の挿通孔11・11…を並べて設けているが、器具本体1の長さや挿通孔のピッチに応じて挿通孔11・11…の数を適宜変更することもできる。
【0027】
[5]スリット部の形状について
また上記器具本体1のスリット部12については、本実施形態では、図3(a)(b)に示すように挿通孔11の直径よりも幅が小さい通路部Rと、開口縁に円弧状に形成された面取り部M・Mとから構成して、スリット部12の内壁全体を係止凸部12aとしている。これによりシンプルな形状で器具本体1の成形が行えるだけでなく、ピンPをスリット部12に対してどの角度からでもスムーズに挿入できる。
【0028】
また本実施形態では、上記器具本体1のスリット部12の通路部Rの幅を1.0mmとしているが、通路部Rの幅は、挿通孔11の孔径の65%~80%の大きさとすることで、適度な力でピンPを挿入できる。また通路部Rの幅を前記大きさとすることで挿入後にピンPの抜けが生じ難いスリット部12を形成できる。
【0029】
[6]スリット部の形状の変更例について
また上記器具本体1のスリット部12の係止凸部12aに関しては、図4(a)(b)に示すようにスリット部12の内側の挿通孔11近傍に部分的に形成することもできる。また係止凸部12aの形状については、スリット部12の内側に点状または線状の係止凸部12aを複数並べて形成することもできる。
【0030】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、本発明は図示の実施形態に限定されるものではなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、創外固定器の器具本体1の形態は、手指関節用の形態だけでなく、足指関節用や腕関節、脚関節用の形態を採用してもよく、何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0031】
1 器具本体
11 挿通孔
12 スリット部
12a 係止凸部
13 球状端部
P ピン
R 通路部
M 面取り部
図1
図2
図3
図4