(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】コンクリート打設装置およびコンクリート打設方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20220715BHJP
【FI】
E21D11/10 B
E21D11/10 C
(21)【出願番号】P 2018119421
(22)【出願日】2018-06-25
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512270807
【氏名又は名称】株式会社北斗工業
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】常田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】中平 憲文
(72)【発明者】
【氏名】山下 雄大
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-195999(JP,A)
【文献】特開2005-090077(JP,A)
【文献】特開平10-220006(JP,A)
【文献】特開2014-190147(JP,A)
【文献】特開2010-229761(JP,A)
【文献】特開2012-036564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル軸方向に移動可能な移動台車と、
前記移動台車に上載された分岐管と、
コンクリートポンプと前記分岐管とを連結する圧送管と、
前記分岐管から延設された左右一対の打設管と、を備えるコンクリート打設装置であって、
前記打設管は、一端が前記分岐管に接続されて、他端がトンネル側部に配設されて
いて、
前記打設管の一端部には仕切弁が形成されていて、前記打設管の他端部は可とう管により構成されて
いることを特徴とするコンクリート打設装置。
【請求項2】
トンネル軸方向に移動可能な移動架台を備え、
前記移動架台は、1打設サイクルに対応する打設区間長以上の長さを有しており、
前記移動台車が、前記移動架台上を移動可能であることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート打設装置。
【請求項3】
トンネル軸方向に移動可能な移動型枠を備え、
前記移動台車が、前記移動型枠上を移動可能であることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート打設装置。
【請求項4】
前記移動台車が、前記打設管を支持する左右一対の支持アームを備えており、
前記支持アームは、走行車輪を備えていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のコンクリート打設装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のコンクリート打設装置を利用して、型枠とトンネル内周面との間にコンクリートを打設するコンクリート打設方法であって、
前記移動台車を移動させる工程と、左右同時にコンクリートを打設する工程とを含むことを特徴とする、コンクリート打設方法。
【請求項6】
複数の前記コンクリート打設装置がトンネル軸方向に間隔をあけて配設されており、
一方の前記コンクリート打設装置と、他方の前記コンクリート打設装置とを交互に利用してコンクリートを打設することを特徴とする、請求項5に記載のコンクリート打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設装置およびこれを利用したコンクリート打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次覆工コンクリートやトンネル内に側壁コンクリート等を打設する際には、トンネル内に設けられた型枠とトンネル内壁面との間にコンクリートを打設する。コンクリートを打設する際には、作業員が打設管を移動させながら打設区間に対して全体的にコンクリートを打ち込むのが一般的である。ところが、コンクリート断面に対して、片側ずつコンクリートを打設すると、型枠に作用するコンクリート圧によって、型枠が偏心してしまうおそれがある。型枠が偏心すると、寸法精度が低下するおそれがある。
そのため、左右均等にコンクリートを打ち込むことで、型枠の偏心を抑制する施工方法が採用されている。
例えば、特許文献1には、コンクリートポンプからトンネル軸方向に延びる主配管と主配管からトンネル幅方向両側に分岐する枝配管とからなる圧送管を、トンネル縦断方向に異なる位置に複数本配設して、コンクリートを左右同時に打ち込む施工方法が開示されている。
また、特許文献2には、一端がコンクリートポンプに接続されるとともに、他端が多数に分岐された圧送管を用いる施工方法、各他端を前後左右に異なる位置において型枠の開口に接続し、打設区間に対して複数箇所から同時にコンクリートを打ち込む施工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-067949号公報
【文献】特開2001-280094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の施工方法では、複数のコンクリートポンプを操作して、圧送管毎にコンクリートを打ち込むが、複数のコンクリートポンプの制御に手間がかかる。また、複数のコンクリートポンプを配置するスペースが確保できない場合には、採用することができない。
また、特許文献2の施工方法では、複数に分岐された圧送管の端部を、作業員がそれぞれ異なる位置に配置する必要があるため、準備作業に手間がかかる。また、コンクリートの打ち込み時も、圧送管の各端部において打設状況を監視する必要があり、多数の作業員を配置する必要がある。
本発明は、前記の問題点を解決することを目的とするものであり、施工時の手間を低減することができ、かつ、高品質に施工を行うことを可能としたコンクリート打設装置と、このコンクリート打設装置を利用したコンクリート打設方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明のコンクリート打設装置は、トンネル軸方向に移動可能な移動台車と、前記移動台車に上載された分岐管と、コンクリートポンプと前記分岐管とを連結する圧送管と、前記分岐管から延設された左右一対の打設管とを備えるものである。前記打設管は、一端が前記分岐管に接続されて、他端がトンネル側部に配設されていて、前記打設管の一端部には仕切弁が形成されていて、前記打設管の他端部は可とう管により構成されている。
また、本発明のコンクリート打設方法は、前記コンクリート打設装置を利用して型枠とトンネル内周面との間にコンクリートを打設するものである。当該コンクリート打設方法は、前記移動台車を移動させる工程と、左右同時にコンクリートを打設する工程とを含んでいる。
かかるコンクリート打設装置およびコンクリート打設方法によれば、移動台車を移動させることで、所定箇所へのコンクリートの打ち込みを簡易に行うことができる。また、左右に対して同時にコンクリートを打設できるため、型枠に作用する圧力が均等で、型枠が偏心し難い。また、左右2箇所でのコンクリートを打設できるため、比較的少ない人数で施工を行うことができる。
【0006】
なお、複数の前記コンクリート打設装置をトンネル軸方向に間隔をあけて配設すれば、一方のコンクリート打設装置によって打ち込まれたコンクリートの養生中に、他方のコンクリート打設装置を利用してコンクリートを打ち込むことができる。こうすることで、トンネル軸方向に連続するコンクリート打設を効率的に行うことができ、ひいては、全体的な工期短縮を図ることができる。
【0007】
前記コンクリート打設装置は、1打設サイクルに対応する打設区間長以上の長さを有していて、トンネル軸方向に移動可能な移動架台を備えているのが望ましい。この場合、前記移動台車は、前記移動架台上を移動させればよい。かかるコンクリート打設装置を利用すれば、上方が開口している型枠とトンネル内周面との隙間に対して、上方から打設管を配管してコンクリートを連続して打ち込むことができる。また、移動架台は、打設区間長以上の長さを有しているため、移動架台上で分岐管を移動させることで、打設区間全体にコンクリートを行きわたらせることができる。
また、前記コンクリート打設装置は、トンネル軸方向に移動可能な移動型枠を備えていて、前記移動台車が前記移動型枠上を移動するものであってもよい。かかるコンクリート打設装置によれば、移動架台を備えている場合と同様に、コンクリート打設中に他の工区での作業を並行して実施することができる。また、移動型枠は、トンネル軸方向に移動可能であるため、型枠の組み立てに要する手間を削減することができる。
また、前記打設管を支持するための左右一対の支持アームを備えていれば、打設管をより移動させやすい。なお、前記支持アームは、走行車輪を備えているのが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコンクリート打設装置およびコンクリート打設方法によれば、移動台車をトンネル軸方向に移動させることで、コンクリート打設時の配管に要する手間を低減し、所定箇所へのコンクリートの打ち込みを簡易かつ小人数で行うことができる。また、分岐管を介して、左右に対して同時にコンクリートを打設できるため、型枠に作用する圧力が均等であり、型枠が偏心し難い。その結果、簡易な構成で高品質にトンネル坑内でのコンクリート打設作業を行うことが可能となる。
また、本発明のコンクリート打設装置は、1打設サイクルに対応する打設区間長以上の長さを有する移動架台または移動型枠を備えることで、移動架台または移動型枠上を移動する移動台車によって打設区間全体にコンクリートを行きわたらせることが可能となる。また、移動架台または移動型枠を移動させることでコンクリート打設装置の据え付けが完了するため、作業性がより向上する。
さらに、本発明のコンクリート打設方法は、複数の前記コンクリート打設装置をトンネル軸方向に間隔をあけて配設することで、一方のコンクリート打設装置によって打ち込まれたコンクリートの養生中に、他方のコンクリート打設装置を利用してコンクリートを打ち込むことが可能となり、さらなる工期短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るトンネルの断面図である。
【
図2】同実施形態に係るコンクリート打設装置を示す平面図である。
【
図3】同コンクリート打設装置を示す側面図である。
【
図4】同コンクリート打設装置を示す正面図である。
【
図6】コンクリート打設方法の概要を示す縦断図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、道路トンネルを構築する場合において、トンネル1の坑内に床版11を架設するための側壁12,12を形成する場合について説明する。本実施形態のトンネル1は、
図1に示すように、シールド工法により形成されており、断面円形を呈している。側壁12は、トンネル1の左右にそれぞれ形成されている。側壁12の外面(地山側面)は、トンネル1の内壁面(覆工13の表面)に沿って弧状に形成されていて、側壁12の内空側の側面は、略垂直に形成されている。側壁12の上端部内側(他の側壁12側)の角部には、床版11の端部を載置するための段差14が形成されている。なお、床版11と側壁12との取付部の形状は限定されるものではない。また、側壁12の側面は、必ずしも垂直である必要はなく、傾斜していてもよい。また、トンネル1の断面形状は円形に限定されるものではない。
左右の側壁12,12は、
図2~
図4に示すコンクリート打設装置2を利用して形成する。本実施形態のコンクリート打設装置2は、少なくとも、移動型枠3と、移動台車4と、分岐管5と、圧送管6と、打設管7とを備えている。
【0011】
移動型枠3は、トンネル1の坑内において、トンネル軸方向に移動可能である。移動型枠3は、1打設サイクルに対応する打設区間長以上の長さを有している。
本実施形態の移動型枠3は、
図3または
図4に示すように、トンネル1の底面に敷設されたレール31上を走行する。なお、移動型枠3は、必ずしもレール31上を走行する必要はなく、トンネル1の底面や覆工コンクリート上を走行してもよい。
移動型枠3は、架台32と、架台32を支持する支柱33と、支柱33の下端に設けられた複数の車輪34,34,…と、せき板35とを備えている。すなわち、移動型枠3は、型枠を備えた移動式の架台(移動架台)である。
【0012】
架台32は、
図3および
図4に示すように、覆工板受321と、複数の覆工板322とを組み合わせることにより形成されている。覆工板受321は、覆工板322を支持する部材であって、鋼材を組み合わせることにより形成されている。本実施形態では、H形鋼を使用する。なお、覆工板受321を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、溝形鋼であってもよい。覆工板322は、覆工板受321上に敷設されている。覆工板322は、前後左右に連続して敷設されていて、コンクリート打設装置2の上面を覆っている。
なお、架台32の構成は限定されるものではなく、例えば、覆工板322に代えて鋼板を敷設してもよい。また、覆工板受321は、桁と桁受等により構成してもよい。
図2および
図3に示すように、架台32(覆工板322)の上には、移動台車4の走行レール41が敷設されている。
【0013】
支柱33は、
図3および
図4に示すように、架台32を下側から支持している。支柱33は、H形鋼からなり、架台32に対して垂直に立設されている。なお、支柱33を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、溝形鋼等であってもよい。また、支柱33は、伸縮可能(高さ調整可能)であってもよい。本実施形態では、左右一対の支柱33,33が、トンネル軸方向に複数組(本実施形態では18組)配設されている。トンネル軸方向に並設された複数本の支柱33同士は、下端部と上部において連結部材331,332を介して連結されている。連結部材331,332は、トンネル軸方向に沿って配設されたH形鋼からなる。本実施形態では、6本の支柱33を上下1組の連結部材331,332によって連結している。また、トンネル横断方向に隣り合う上側の連結部材331同士の間には、連結梁333が横架されている。すなわち、本実施形態では、前後左右に配設された12本の支柱33が、連結部材331,332および連結梁333を介してユニット300を形成している。そして、本実施形態のコンクリート打設装置2は3つのユニット300を有している。なお、連結部材331,332および連結梁333は、必要に応じて配設すればよい。
図3に示すように、同一のユニット300を構成する複数の支柱33のうち、トンネル軸方向に隣り合う支柱33同士は、斜材(ブレース)334を介して連結されている。なお、斜材334は必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
【0014】
車輪34は、
図3および
図4に示すように、下側の連結部材332に取り付けられていて、レール31上を走行する。本実施形態では、1本の連結部材332に対して、前後に間隔をあけて車輪34が配設されている。すなわち、1つのユニット300に対して、前後左右に4つの車輪34,34,…が設けられている。なお、車輪34の数および配置は限定されるものではない。また、連結部材332を省略する場合等には、車輪34は、支柱33に直接取り付けてもよい。
【0015】
せき板35は、側壁12を形成する際の型枠を構成する板材である。本実施形態のせき板35では、
図4に示すように、支柱33からトンネル壁面に向けて張り出した取付部材351によって背面側から支持されているとともに、吊部材352によって架台32に吊持されている。せき板35は、取付部材351を介して側壁12の内空側側面の位置に沿うように設置されている。せき板35を構成する材料は、コンクリート打設時の圧力に対して十分な耐力を有したものであれば限定されるものではなく、例えば、鋼板や木板を使用すればよい。また、せき板35の背面(コンクリート打設面と反対側の面)には、増強を目的とした補強材(リブや格子状の部材)が設けられていてもよい。取付部材351は、伸縮可能な部材により構成されており、支柱33からの張り出し長さが調整可能である。すなわち、せき板35は、支柱33に進退可能に設けられている。なお、取付部材351は、必ずしも伸縮可能である必要はなく、支柱33との固定位置をずらすことで、支柱33からの張り出し長を調整してもよい。また、せき板35は、必ずしも支柱33に対して進退可能である必要はない。
【0016】
移動台車4は、移動型枠3の上面においてトンネル軸方向に沿って移動する。
図2に示すように、移動台車4には、分岐管5が上載されている。本実施形態の移動台車4は、移動型枠3の上面に敷設された走行レール41を走行する。移動台車4は、
図5に示すように本体部42と、本体部42から左右に延設された一対の支持アーム43,43を備えている。
本体部42は、鋼材を組み合わせることにより形成されている。本体部42を構成する材料は限定されるものではないが、例えば、H形鋼や溝形鋼により構成すればよい。本体部42は、鋼材を組み合わせることにより形成された枠材421と、枠材421のトンネル軸方向中央部に横架された前後2本の横材422,422と、前側の横材422よりも前側において逆V字状に設けられた斜材423,423とを備えている。移動台車4に上載される分岐管5は、本体部42の横材422,422および斜材423,423に上載する。本体部42の下面には、
図4に示すように、走行レール41上を走行する車輪44が取り付けられている。車輪44は、本体部42の枠材421の角部にそれぞれ取り付けられている。なお、車輪44の数および配置は限定されるものではない。
【0017】
支持アーム43,43は、
図4および
図5に示すように、左右の打設管7,7を支持する。支持アーム43は、鋼材を組み合わせることにより形成されている。なお、支持アーム43を構成する材料は限定されるものではないが、本体部42と同じものにより構成すればよい。支持アーム43の下面には、移動型枠3(覆工板323)の上面を走行可能な走行車輪431,431が設けられている。走行車輪431は、支持アーム43の先端部において、支持アーム43の下面に設けられている。なお、走行車輪431の数および配置は限定されるものではない。また、走行車輪431は省略してもよい。
移動台車4は、ウィンチ45から延設されたワイヤー(図示せず)に接続されている。ウィンチ45は、
図3に示すように、移動型枠3の上面に敷設された走行レール41の一端側に設けられている。ウィンチ45から延設されたワイヤーは、走行レール41の他端側に設けられた滑車(図示せず)に掛けまわされているとともに、移動台車4に取り付けられている。移動台車4は、ウィンチ45を操作することにより、移動型枠3の上面(走行レール41上)を前後に走行する。
【0018】
分岐管5は、
図5に示すように、1本の圧送管6と、左右一対の打設管7,7との間に介設された管材である。すなわち分岐管5は、平面視Y字状を呈しており、1本の第一管路51と、2本の第二管路52,52とが接続されている。第一管路51は、本体部42の横材422,422に上載されている。また、各第二管路52は、本体部42の斜材423に上載されている。本実施形態では、治具(図示せず)を介して、第二管路52を斜材423に固定している。なお、分岐管5は、Y字状に限定されるものではなく、T字状であってもよい。また、第二管路52は、必ずしも斜材423に固定する必要はない。分岐管5は、圧送管6を介して第一管路51に供給されたコンクリートを、左右の打設管7,7に接続する左右の第二管路52,52に振り分ける。左右の第二管路52,52は、同じ内径を有しており、第一管路51から供給されたコンクリートは、各第二管路52に均等に振り分けられる。本実施形態の分岐管5は、鋼管により形成されているが、分岐管5を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、塩化ビニル管であってもよいし、可とう管であってもよい。
【0019】
圧送管6は、コンクリートポンプP(
図6参照)から分岐管5に至る管である。すなわち、圧送管6は、コンクリートポンプPから分岐管5までコンクリートを圧送するための輸送路である。本実施形態の圧送管6は、少なくとも一部が可とう管により構成されている。すなわち、圧送管6は、可とう管を曲げたり伸ばしたりすることで、移動台車4の移動に追従する。なお、圧送管6の構成は限定されるものではなく、例えば、可とう管と直管とを組み合わせてもよいし、可とう管のみで構成してもよい。本実施形態では、移動台車4の本体部42の枠材421の後側の角部に、圧送管6を上載するための斜材424が設けられている。なお、斜材424は、必要に応じて形成すればよい。
【0020】
打設管7は、分岐管5(第二管路52,52)から左右に延設されている。打設管7の一端は分岐管5(第二管路52)に接続されていて、打設管7の他端は型枠とトンネル1の内周面との間(トンネル側部)に配設されている。すなわち、打設管7は、圧送管6および分岐管5を介して圧送されたコンクリートを、所定の位置に打ち込むための管路である。本実施形態の打設管7は先端部71が可とう管により構成されていて、コンクリート排出口72の位置調整が可能となっている。なお、打設管7の構成は限定されるものではなく、例えば、その全長を可とう管としてもよい。打設管7の基端部(分岐管5側の端部)には、仕切弁(ゲートバルブ)73が形成されている。仕切弁73は、例えば、コンクリートの排出を一時的に停止することでコンクリート排出口72の位置調整を行う場合や、左右のコンクリート打設量を調整する場合等に使用する。なお、打設管7に設置されるバルブの形式は限定されるものではない。また、バルブ(仕切弁73)は必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
【0021】
次に、本実施形態のコンクリート打設装置2を利用した、側壁12の施工方法について説明する。
まず、コンクリート打設装置2(移動型枠3)を所定の位置に据え付ける。移動型枠3を移動させる際は、せき板35を支柱33側に後退させておくことで、せき板35とトンネル1の内壁面との間に隙間を確保しておく。移動型枠3を所定の位置に据え付けたら、せき板35を張り出して(取付部材351を伸張させて)、せき板35の下端をトンネル1の内壁面に当設させる。このとき、せき板35の下端に、せき板35とトンネル1の内壁面との隙間を遮蔽する部材を設置してもよい。せき板35を所定の位置に設置したら、せき板35の前端(必要時応じて前端及び後端)に妻型枠(図示せず)を設置する。妻型枠を設置して型枠の組み立てが完了したら、せき板35(型枠)とトンネル1の内周面との間にコンクリートを打設する。具体的には、移動型枠3上において、移動台車4を移動させる工程と、左右同時にコンクリートを打設する工程とを行う。コンクリートは、移動台車4を所定の位置に停止させた状態で、コンクリートの上面が所定の高さに達するまで流し込む。このとき、打設管7は、型枠の上面の開口部からせき板35とトンネル1の内壁面との間に挿入する。コンクリートの上面が所定の高さに到達したら、コンクリートの打設を一時的に中断し、移動台車4を移動させて、引き続き打設を再開する。このように、コンクリートの流し込みと、移動台車4の移動を繰り返すことで、型枠(せき板35)の全長に対して、コンクリートを打設する。なお、コンクリートの打設方法は限定されるものではなく、例えば、移動台車4を常時前後に移動させながら、コンクリートを流し込んでもよい。
【0022】
本実施形態では、
図6に示すように、2台のコンクリート打設装置2,2をトンネル軸方向に間隔をあけて配設する。そして、一方のコンクリート打設装置2を利用して打設した区間B
2のコンクリートの養生中に、他方のコンクリート打設装置2を利用して、区間A
2のコンクリートを打設する。すなわち、一方のコンクリート打設装置2と、他方のコンクリート打設装置2とを交互に利用してコンクリートを打設することで、工期短縮化を図る。なお、同一のトンネル1の施工時に使用するコンクリート打設装置2の台数は限定されるものではない。
【0023】
本実施形態のコンクリート打設装置2を利用すれば、移動型枠3を移動させることで、所定箇所へのコンクリートの打ち込みを簡易に行うことができる。すなわち、移動型枠3の上で移動台車4を所定位置まで移動し、左右2箇所でコンクリートを打設できるため、比較的少ない人数で所定区間に対して施工を行うことができる。また、移動台車4を利用しているため、打設管7の移動が容易である。さらに、打設管7は、支持アーム43により支持されているため、作業員が持ち運ぶ必要が無い。
加えて、移動型枠3を利用しているため、型枠の組み立ておよび脱型に要する手間を大幅に削減することができる。
複数のコンクリート打設装置2を利用することで、トンネル軸方向に連続するコンクリート打設を効率的に行うことができ、ひいては、全体的な工期短縮を図ることができる。
移動型枠3は、支柱33と架台32とで門型を呈していて、架台32とトンネル底面との間に車両等が通過可能な空間が形成されているため、コンクリート打設装置2を利用した作業中に、コンクリート打設装置2の前後を行き来することが可能である。そのため、コンクリート打設中であっても、他の工区での作業を進行させることができ、その結果、工期短縮化を図ることができる。
【0024】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
対象となるトンネル1は道路トンネルに限定されるものではなく、例えば、鉄道トンネルであってもよい。
また、コンクリート打設装置2およびコンクリート打設方法により形成される側壁12の用途は限定されるものではない。また、コンクリート打設装置2およびコンクリート打設方法により形成される部材は、トンネル1内の側壁12に限定されるものではなく、例えば、覆工コンクリートであってもよい。
前記実施形態のコンクリート打設装置2は、せき板35(型枠)が設けられた移動型枠3を備えていたが、コンクリート打設装置2は、必ずしも移動型枠3を備えている必要はない。すなわち、コンクリート打設装置2は、1打設サイクルに対応する打設区間長以上の長さを有していて、トンネル軸方向に移動可能な移動架台を備えるものであってもよい。このとき、移動台車4は、移動架台上を移動可能に設けるものとする。また、型枠は、コンクリート打設装置2とは別に、設置するものとする。
コンクリート打設装置2は、必ずしも移動型枠3または移動架台を有している必要はない。
また、移動型枠3(移動架台)の車輪44には、モータ等の動力源に接続されていてもよい。すなわち、コンクリート打設装置2は、自走可能であってもよい。
また、前記実施形態では、ウィンチ45を利用して移動台車4を移動させるものとしたが、移動台車4の移動手段は限定されるものではなく、例えば、モータ等の動力源を利用してもよいし、人力により移動させてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 トンネル
11 床版
12 側壁
2 コンクリート打設装置
3 移動型枠(移動架台)
31 レール
32 架台
33 支柱
34 車輪
35 せき板
4 移動台車
41 走行レール
42 本体部
43 支持アーム
44 車輪
45 ウィンチ
5 分岐管
6 圧送管
7 打設管