(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】発光装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
H01S 5/18 20210101AFI20220715BHJP
H01S 5/026 20060101ALI20220715BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20220715BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
H01S5/18
H01S5/026 610
B82Y20/00
G03B21/14 A
(21)【出願番号】P 2018140329
(22)【出願日】2018-07-26
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】西岡 大毅
(72)【発明者】
【氏名】岸野 克巳
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-222001(JP,A)
【文献】特表2016-527706(JP,A)
【文献】特開2013-009002(JP,A)
【文献】特開2013-239690(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0270517(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0363912(US,A1)
【文献】特開2012-134259(JP,A)
【文献】特開2009-054795(JP,A)
【文献】特開2008-060433(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0219306(US,A1)
【文献】中国実用新案第205666251(CN,U)
【文献】国際公開第2014/136607(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00- 5/50
H01L33/00-33/64
G03B21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1発光部と、
前記第1発光部とは共振波長が異なる複数の第2発光部と、
を有し、
隣り合う前記第1発光部の間に、前記第2発光部が配置され、
複数の前記第1発光部の各々で共振する光の位相は、揃っており、
複数の前記第2発光部の各々で共振する光の位相は、揃って
おり、
前記第1発光部は、複数の第1構造体を有し、
複数の前記第1構造体は、周期的に配列され、
前記第2発光部は、複数の第2構造体を有し、
複数の前記第2構造体は、周期的に配列され、
前記第1構造体および前記第2構造体は、開口部である、
発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
複数の前記第1発光部は、前記第1発光部における光の共振方向に配列され、
複数の前記第2発光部は、前記第2発光部における光の共振方向に配列されている、発光装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1発光部および前記第2発光部は、発光層を有する、発光装置。
【請求項4】
請求項
1ないし3のいずれか1項において、
複数の前記第1構造体および複数の前記第2構造体は、正三角格子状に配列され、
複数の前記第1発光部および複数の前記第2発光部は、正三角格子状に配列されている、発光装置。
【請求項5】
請求項
1ないし3のいずれか1項において、
複数の前記第1構造体および複数の前記第2構造体は、正方格子状に配列され、
複数の前記第1発光部および複数の前記第2発光部は、正方格子状に配列されている、発光装置。
【請求項6】
請求項1ないし
5のいずれか1項において、
隣り合う前記第1発光部の間の距離は、一方の前記第1発光部において共振する光が他方の前記第1発光部において共振する光に結合する距離であり、
隣り合う前記第2発光部の間の距離は、一方の前記第2発光部において共振する光が他方の前記第2発光部において共振する光に結合する距離である、発光装置。
【請求項7】
請求項1ないし
6のいずれか1項に記載の発光装置を有する、プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザーは、高輝度の次世代光源として期待されている。中でも、ナノコラムを適用した半導体レーザーは、ナノコラムによるフォトニック結晶の効果によって、狭放射角で高出力の発光が実現できると期待されている。このような半導体レーザーは、例えば、プロジェクターの光源として適用される。
【0003】
上記のようなレーザーは、コヒーレンスが高い光源であるため、プロジェクターの光源として用いる場合には、スペックルノイズが問題となる。スペックルノイズを低減させるには、コヒーレンスを低くすることが必要である。
【0004】
例えば特許文献1には、複数のレーザー素子が配列されてなるレーザーアレイにおいて、各レーザー素子が、最隣接のレーザー素子から発振されるレーザー光とは波長が異なるレーザー光が発振されるように配置されていることが記載されている。このような発光装置では、異なる波長のレーザー光が出射されるため、コヒーレンスを低くすることができ、スペックルノイズを低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようなスペックルノイズを低減させることができる発光装置においても、狭放射角で光を出射することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発光装置の一態様は、
複数の第1発光部と、
前記第1発光部とは共振波長が異なる複数の第2発光部と、
を有し、
隣り合う前記第1発光部の間に、前記第2発光部が配置され、
複数の前記第1発光部の各々で共振する光の位相は、揃っており、
複数の前記第2発光部の各々で共振する光の位相は、揃っている。
【0008】
前記発光装置の一態様において、
複数の前記第1発光部は、前記第1発光部における光の共振方向に配列され、
複数の前記第2発光部は、前記第2発光部における光の共振方向に配列されていてもよい。
【0009】
前記発光装置の一態様において、
前記第1発光部および前記第2発光部は、発光層を有してもよい。
【0010】
前記発光装置の一態様において、
前記第1発光部は、複数の第1構造体を有し、
複数の前記第1構造体は、周期的に配列され、
前記第2発光部は、複数の第2構造体を有し、
複数の前記第2構造体は、周期的に配列され、
前記第1構造体および前記第2構造体は、柱状部であってもよい。
【0011】
前記発光装置の一態様において、
前記第1発光部は、複数の第1構造体を有し、
複数の前記第1構造体は、周期的に配列され、
前記第2発光部は、複数の第2構造体を有し、
複数の前記第2構造体は、周期的に配列され、
前記第1構造体および前記第2構造体は、開口部であってもよい。
【0012】
前記発光装置の一態様において、
複数の前記第1構造体および複数の前記第2構造体は、正三角格子状に配列され、
複数の前記第1発光部および複数の前記第2発光部は、正三角格子状に配列されていてもよい。
【0013】
前記発光装置の一態様において、
複数の前記第1構造体および複数の前記第2構造体は、正方格子状に配列され、
複数の前記第1発光部および複数の前記第2発光部は、正方格子状に配列されていてもよい。
【0014】
前記発光装置の一態様において、
隣り合う前記第1発光部の間の距離は、一方の前記第1発光部において共振する光が他方の前記第1発光部において共振する光に結合する距離であり、
隣り合う前記第2発光部の間の距離は、一方の前記第2発光部において共振する光が他方の前記第2発光部において共振する光に結合する距離であってもよい。
【0015】
本発明に係るプロジェクターは、
前記発光装置の一態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【
図2】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【
図3】第1実施形態に係る発光装置の第1構造体が配置される格子点を実空間において模式的に示した図。
【
図4】第1実施形態に係る発光装置の第1構造体が配置される格子点に対応する、波数空間における逆格子点を模式的に示した図。
【
図6】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【
図7】参考例1に係る発光装置の共振領域を説明するための図。
【
図8】参考例1に係る発光装置から出射される光の放射角を説明するための図。
【
図9】参考例1に係る発光装置から出射される光の波長を説明するための図。
【
図10】参考例2に係る発光装置の共振領域を説明するための図。
【
図11】参考例2に係る発光装置から出射される光の放射角を説明するための図。
【
図12】参考例2に係る発光装置から出射される光の波長を説明するための図。
【
図13】第1実施形態に係る発光装置の共振領域を説明するための図。
【
図14】第1実施形態に係る発光装置から出射される光の放射角を説明するための図。
【
図15】第1実施形態に係る発光装置から出射される光の波長を説明するための図。
【
図16】第1実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
【
図17】第1実施形態の第1変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【
図18】第1実施形態の第2変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【
図19】第1実施形態の第3変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【
図20】第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【
図21】第2実施形態に係る発光装置の第1構造体が配置される格子点を実空間において模式的に示した図。
【
図22】第2実施形態に係る発光装置の第1構造体が配置される格子点に対応する、波数空間における逆格子点を模式的に示した図。
【
図24】第2実施形態の変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【
図25】第2実施形態の変形例に係る発光装置を模式的に示す斜視図。
【
図26】第2実施形態の変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【
図27】第3実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0018】
1. 第1実施形態
1.1. 発光装置
まず、第1実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る発光装置100を模式的に示す断面図である。
図2は、第1実施形態に係る発光装置100を模式的に示す平面図である。
【0019】
発光装置100は、
図1および
図2に示すように、複数の第1発光部E1と、複数の第2発光部E2と、複数の第3発光部E3と、複数の第4発光部E4と、第1電極50と、第2電極52と、を有している。なお、便宜上、
図2では、第1~第4発光部E1~E4以外の部材の図示を省略している。
【0020】
まず、第1発光部E1について説明する。
図1は、発光装置100の第1発光部E1を模式的に示す断面図である。第1発光部E1は、例えば、基体10および積層体20によって構成されている。
【0021】
基体10は、
図1に示すように、例えば、板状の形状を有している。基体10は、例えば、Si基板、GaN基板、サファイア基板などである。
【0022】
積層体20は、基体10に設けられている。図示の例では、積層体20は、基体10上に設けられている。積層体20は、バッファー層22と、第1構造体30と、を有している。
【0023】
バッファー層22は、基体10上に設けられている。バッファー層22は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層などである。バッファー層22上には、第1構造体30を形成するためのマスク層60が設けられている。
【0024】
なお、本発明において、「上」とは、積層体20の積層方向(以下、単に「積層方向」ともいう)において、第1構造体30の発光層43からみて基体10から遠ざかる方向の
ことであり、「下」とは、積層方向において、発光層43からみて基体10に近づく方向のことである。
【0025】
また、本発明において、「積層体20の積層方向」とは、第1構造体30の第1半導体層41と発光層43との積層方向のことである。
【0026】
第1構造体30は、バッファー層22上に設けられている。第1構造体30は、例えば、柱状の柱状部である。第1構造体30の積層方向と直交する方向における断面形状は、例えば、正六角形等の多角形、円などである。第1構造体30の径は、例えば、nmオーダーであり、具体的には10nm以上500nm以下である。第1構造体30は、例えば、ナノコラム、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノピラーとも呼ばれる。第1構造体30の積層方向の大きさは、例えば、0.1μm以上5μm以下である。
【0027】
なお、本発明において、「径」とは、第1構造体30の平面形状が円の場合は、直径であり、第1構造体30の平面形状が多角形の場合は、該多角形を内部に含む最小の円、すなわち最小包含円の直径である。また、「平面形状」とは、積層方向からみた形状のことである。
【0028】
第1構造体30は、複数設けられている。隣り合う第1構造体30の間の距離は、例えば、1nm以上50nm以下である。ここで、
図3は、積層方向からみて、第1構造体30が配置される格子点G1を実空間において模式的に示した図である。
図4は、積層方向からみて、第1構造体30が配置される格子点G1に対応する、波数空間における逆格子点G2を模式的に示した図である。
図5は、
図4の中央付近の拡大図であり、
図5の正六角形は、第1ブリルアンゾーンを示している。
【0029】
図3に示すように、格子点G1は、周期的に配列され、具体的には、正三角格子状に配列されている。すなわち、複数の第1構造体30は、周期的に配列され、具体的には、正三角格子状に配列されている。複数の第1構造体30は、フォトニック結晶の効果を発現することができる。具体的には、第1構造体30が周期的に配列された2次元フォトニック結晶中では、フォトニックバンド構造が形成される。このΓ点における一つ目のフォトニックバンド端の光は、2次元面内で共振しつつ面外垂直方向に回折光を発生させるため、フォトニック結晶面発光レーザーに利用することができる。
図5の矢印は、第1発光部E1で共振する光の共振方向、すなわち、2次面内における定在波の共振方向を示している。複数の第1構造体30が正三角格子状に配列している場合、共振方向は、
図5に示すように、互いに60°で交わる第1軸A1、第2軸A2、および第3軸A3方向となる。
【0030】
第1構造体30は、
図1に示すように、第1半導体層41と、第1ガイド層42と、発光層43と、第2ガイド層44と、第2半導体層45と、を有している。
【0031】
第1半導体層41は、バッファー層22上に設けられている。第1半導体層41は、基体10と発光層43との間に設けられている。第1半導体層41は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層などである。
【0032】
第1ガイド層42は、第1半導体層41上に設けられている。図示の例では、第1ガイド層42は、第1半導体層41の径よりも大きい径を有している。第1ガイド層42は、例えば、GaN層とInGaN層とから構成された半導体超格子(SL)構造を有している。第1ガイド層42を構成するGaN層およびInGaN層の数は、特に限定されない。
【0033】
発光層43は、第1ガイド層42上に設けられている。発光層43は、第1半導体層41と第2半導体層45との間に設けられている。図示の例では、発光層43の径は、第1
ガイド層42の径と同じである。発光層43は、電流が注入されることで光を発生させることが可能な層である。発光層43は、例えば、GaN層とInGaN層とから構成された量子井戸(MQW)構造を有している。発光層43を構成するGaN層およびInGaN層の数は、特に限定されない。
【0034】
第2ガイド層44は、発光層43上に設けられている。図示の例では、第2ガイド層44の径は、発光層43の径と同じである。第2ガイド層44は、例えば、GaN層とInGaN層とから構成された半導体超格子(SL)構造を有している。第2ガイド層44を構成するGaN層およびInGaN層の数は、特に限定されない。第1ガイド層42および第2ガイド層44は、発光層43と、積層方向とは直交した方向に伝搬する光と、の重なりを大きくする、すなわち光閉じ込め係数を大きくする機能を有する層である。
【0035】
第2半導体層45は、第2ガイド層44上に設けられている。第2半導体層45は、第1半導体層41と導電型の異なる層である。第2半導体層45は、例えば、Mgがドープされたp型のGaN層などである。第1半導体層41および第2半導体層45は、発光層43に光を閉じ込める機能を有するクラッド層である。
【0036】
複数の第1発光部E1は、
図2に示すように、例えば、正三角格子状に配列されている。複数の第1発光部E1は、第1発光部E1における光の共振方向に配列されている。第1発光部E1における光の共振方向は、第1軸A1方向、第2軸A2方向、および第3軸A3方向の3方向である。
【0037】
図示の例では、隣り合う第1発光部E1の間に、第2~第4発光部E2~E4のいずれか1つが配置されている。具体的には、第1軸A1方向において隣り合う第1発光部E1の間に、第2発光部E2が配置されている。第2軸A2方向において隣り合う第1発光部E1の間に、第3発光部E3が配置されている。第3軸A3方向において隣り合う第1発光部E1の間に、第4発光部E4が配置されている。
【0038】
複数の第1発光部E1の各々で共振する光の位相は、揃っている。すなわち、隣り合う第1発光部E1の間の距離は、一方の第1発光部E1において共振する光が他方の第1発光部E1において共振する光に結合する距離である。そのため、発光装置100では、第1軸A1方向に配列された複数の第1発光部E1において、1つの定在波を形成することができる。第2軸A2方向および第3軸A3方向に配列された複数の第1発光部E1においても同様である。具体的には、隣り合う第1発光部E1の間の距離は、数十μmである。
【0039】
次に、第2発光部E2について説明する。
図6は、第2発光部E2を模式的に示す断面図である。第2発光部E2は、上述した第1構造体30の代わりに、
図6に示すように、第2構造体32を有している。第2構造体32は、柱状の柱状部である。第2構造体32の径は、第1構造体30の径と異なる。そのため、第2発光部E2は、第1発光部E1と共振波長が異なる。図示の例では、第2構造体32の径は、第1構造体30の径よりも小さい。
【0040】
第2発光部E2は、第2構造体32を有することによって第1発光部E1と共振波長が異なること以外は、上述した第1発光部E1と基本的に同じである。
【0041】
例えば、隣り合う第2発光部E2の間に、第1,第3,第4発光部E1,E3,E4のいずれか1つが配置されている。また、複数の第2発光部E2の各々で共振する光の位相は、揃っている。また、複数の第2発光部E2は、第2発光部E2における光の共振方向に配列されている。また、複数の第2構造体32は、周期的に配列され、具体的には、正
三角格子状に配列されている。また、複数の第2発光部E2は、正三角格子状に配列されている。また、隣り合う第2発光部の間の距離は、一方の第2発光部E2において共振する光が他方の第2発光部E2において共振する光に結合する距離である。
【0042】
なお、上記では、第1構造体30の径と第2構造体32の径が異なることにより、第1発光部E1と第2発光部E2とは、共振波長が異なる例について説明した。しかし、第1発光部E1と第2発光部E2との共振波長を異ならせる方法は、特に限定されず、第1構造体30および第2構造体32の周期および屈折率のいずれか1つを異ならせてもよい。ただし、第1構造体30および第2構造体32の径を異ならせる方法がプロセス上、容易である。
【0043】
次に、第3発光部E3について説明する。第3発光部E3は、第1,第2発光部E1,E2と共振波長が異なること以外は、上述した第1発光部E1と基本的に同じである。第3発光部E3は、例えば、第1,第2構造体30,32と異なる径の第3構造体を有することにより、第1,第2発光部E1,E2と共振波長が異なる。第3構造体は、柱状の柱状部である。
【0044】
次に、第4発光部E4について説明する。第4発光部E4は、第1~第3発光部E1~E3と共振波長が異なること以外は、上述した第1発光部E1と基本的に同じである。第4発光部E4は、例えば、第1~第3構造体と異なる径の第4構造体を有することにより、第1~第3発光部E1~E3と共振波長が異なる。第4構造体は、柱状の柱状部である。
【0045】
上記のように、第1~第4発光部E1~E4の共振波長は、互いに異なる。第1~第4発光部E1~E4の共振波長は、例えば、数nmずつ異なる。例えば、第1発光部E1の共振波長は、463nmであり、第2発光部E2の共振波長は、462nmであり、第3発光部E3の共振波長は、461nmであり、第4発光部E4の共振波長は、460nmである。発光装置100は、例えば、青色領域の光を出射することができる。
【0046】
第1~第4発光部E1~E4は、
図2に示すように、積層方向からみて、例えば、正六角形の形状を有している。図示の例では、第1~第4発光部E1~E4は、積層方向からみて同じ大きさである。そのため、発光装置100では、第1~第4発光部E1~E4を、第1~第3軸A1~A3方向に最密に配置することができる。
【0047】
隣り合う第1発光部E1の間の距離、隣り合う第2発光部E2の間の距離、隣り合う第3発光部E3の間の距離、および隣り合う第4発光部E4の間の距離は、例えば、互いに同じである。積層方向からみて、複数の第1発光部E1の総面積、複数の第2発光部E2の総面積、複数の第3発光部E3の総面積、および複数の第4発光部E4の総面積は、例えば、互いに同じである。すなわち、複数の第1発光部E1が配置されている領域全体の広さ、複数の第2発光部E2が配置されている領域全体の広さ、複数の複数の第3発光部E3が配置されている領域全体の広さ、および複数の第4発光部E4が配置されている領域全体の広さは、互いに同じである。そのため、発光装置100では、出射される各波長の光において、強度や放射角を同じにすることができる。
【0048】
なお、一般的に、積層方向から見た発光部の面積と、出射される光の放射角とは、フーリエ変換の関係にある。すなわち、NFP(Near Field Pattern)とFFP(Far Field Pattern)とは、フーリエ変換の関係にある。そのため、発振部の面積が小さい場合は、放射角が大きくなり、発振部の面積が大きい場合は、放射角が小さくなる。
【0049】
発光装置100では、p型の第2半導体層45、不純物がドープされていない発光層4
3および第1,第2ガイド層42,44、ならびにn型の第1半導体層41により、pinダイオードが構成される。発光装置100では、第1電極50と第2電極52との間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加すると、発光層43に電流が注入されて発光層43において電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。発光層43において発生した光は、第1半導体層41および第2半導体層45により積層方向と直交する方向に伝搬し、例えば複数の第1構造体30によるフォトニック結晶の効果により第1発光部E1において定在波を形成し、発光層43において利得を受けてレーザー発振する。そして、発光装置100は、+1次回折光および-1次回折光をレーザー光として、積層方向に出射する。
【0050】
発光装置100では、上記のように、第1~第4発光部E1~E4ごとに定在波を形成し、第1~第4発光部E1~E4ごとに共振波長が異なる。そのため、第1~第4発光部E1~E4ごとに異なる波長の光を出射することができる。
【0051】
なお、図示はしないが、基体10とバッファー層22との間、または基体10の下に反射層が設けられていてもよい。該反射層は、例えば、DBR(Distributed Bragg Reflector)層である。該反射層によって、発光層43において発生した光を反射させることができ、発光装置100は、第2電極52側からのみ光を出射することができる。また、高出力化を図ることができる。
【0052】
第1電極50は、
図1に示すように、バッファー層22上に設けられている。バッファー層22は、第1電極50とオーミックコンタクトしていてもよい。第1電極50は、第1半導体層41と電気的に接続されている。図示の例では、第1電極50は、バッファー層22を介して、第1半導体層41と電気的に接続されている。第1電極50は、発光層43に電流を注入するための一方の電極である。第1電極50としては、例えば、バッファー層22側から、Ti層、Al層、Au層の順序で積層したものなどを用いる。なお、基体10が導電性の場合には、図示はしないが、第1電極50は、基体10の下に設けられていてもよい。
【0053】
第2電極52は、第2半導体層45上に設けられている。第2半導体層45は、第2電極52とオーミックコンタクトしていてもよい。第2電極52は、第2半導体層45と電気的に接続されている。第2電極52は、発光層43に電流を注入するための他方の電極である。第2電極52としては、例えば、ITO(indium tin oxide)などを用いる。
【0054】
なお、上記では、InGaN系の発光層43について説明したが、本発明に係る発光層43しては、電流が注入されることで発光可能なあらゆる材料系を用いることができる。例えば、AlGaN系、AlGaAs系、InGaAs系、InGaAsP系、InP系、GaP系、AlGaP系などの半導体材料を用いることができる。
【0055】
発光装置100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0056】
発光装置100では、複数の第1発光部E1と、第1発光部E1とは共振波長が異なる複数の第2発光部E2と、を有し、隣り合う第1発光部E1の間に、第2発光部E2が配置され、複数の第1発光部E1の各々で共振する光の位相は、揃っており、複数の第2発光部E2の各々で共振する光の位相は、揃っている。
【0057】
そのため、発光装置100では、第1発光部E1および第2発光部E2において、異なる波長の光を出射することができる。これにより、発光装置100では、広帯域化を図ることができ、1種類の波長の光を出射する場合に比べて、コヒーレンスを低くすることができる。その結果、スペックルノイズを低減させることができる。
【0058】
さらに、発光装置100では、複数の第1発光部E1の各々で共振する光の位相は、揃っており、複数の第2発光部E2の各々で共振する光の位相は、揃っている。そのため、隣り合う第1発光部E1において、一方の第1発光部E1において共振する光は、他方の第1発光部E1において共振する光に結合することができ、複数の第1発光部E1全体を、1つの定在波を形成する共振領域とすることができる。第2発光部E2においても同様である。したがって、発光装置100では、一方の発光部において共振する光が他方の発光部において共振する光に結合しない場合に比べて、出射される光の放射角を小さくすることができる。これにより、例えば、プロジェクターの光源に発光装置100を用いた場合に、後段のレンズの小型化を図ることができる。
【0059】
以上のように、発光装置100では、スペックルノイズを低減させることができ、かつ狭放射角で光を出射することができる。
【0060】
ここで、
図7は、参考例1に係る発光装置S1の共振領域R1を説明するための図である。
図8は、参考例1に係る発光装置S1から出射される光の放射角を説明するための図である。
図9は、参考例1に係る発光装置S1から出射される光の波長を説明するための図である。
図10は、参考例2に係る発光装置S2の共振領域R2を説明するための図である。
図11は、参考例2に係る発光装置S2から出射される光の放射角を説明するための図である。
図12は、参考例2に係る発光装置S2から出射される光の波長を説明するための図である。
図13は、発光装置100の共振領域R3を説明するための図である。
図14は、発光装置100から出射される光の放射角を説明するための図である。
図15は、発光装置100から出射される光の波長を説明するための図である。
【0061】
なお、便宜上、
図7,10,13では、共振領域R1,R2,R3を円で示している。また、
図8,11,14において、横軸は、放射角を示し、縦軸は、光の強度を示している。また、
図9,12,15において、横軸は、波長を示し、縦軸は、光の強度を示している。すなわち、
図9,12,15は、光のスペクトルを示している。
【0062】
図7に示すように、発光装置S1の共振領域R1は、
図10に示す発光装置S2の共振領域R2の面積よりも大きい。そのため、
図8に示すように、発光装置S1から出射される光の放射角は、小さくなる。しかしながら、発光装置S1は、1種類の波長の光を出射するため、
図9に示すように、発光装置S1から出射される光は、コヒーレンスが高くスペックルノイズが発生し易い。
【0063】
図10に示すように、発光装置S2は、複数の共振領域を有し、例えば、4種類の波長の光を出射することができる。そのため、
図12に示すように、発光装置
S2から出射される光は、コヒーレンスが低く、スペックルノイズを低減させることができる。しかしながら、発光装置S2の共振領域R2の面積は、発光装置S1の共振領域R1の面積よりも小さいため、
図11に示すように、発光装置S2から出射される光の放射角は、大きくなる。
【0064】
発光装置100では、複数の第1発光部E1の全体を、所定の波長の光を共振させる1つの共振領域R3とすることができる。そのため、
図13に示すように、例えば、発光装置S2の共振領域R2よりも大きな共振領域R3を4つ有することができる。これにより、
図14に示すように、出射される光の放射角を小さくすることができ、かつ、
図15に示すように、コヒーレンスが低く、スペックルノイズを低減させることができる。
【0065】
発光装置100では、複数の第1発光部E1は、第1発光部E1における光の共振方向に配列され、複数の第2発光部E2は、第2発光部E2における光の共振方向に配列され
ている。そのため、発光装置100では、隣り合う第1発光部E1において、一方の第1発光部E1において共振する光は、他方の第1発光部E1において共振する光に結合することができる。同様に、隣り合う第2発光部E2において、一方の第2発光部E2において共振する光は、他方の第2発光部E2において共振する光に結合することができる。
【0066】
発光装置100では、第1発光部E1および第2発光部E2は、発光層43を有する。そのため、第1発光部E1および第2発光部E2は、発光層43において光を発生させることができる。
【0067】
発光装置100では、第1発光部E1は、複数の第1構造体30を有し、複数の第1構造体30は、周期的に配列され、第2発光部E2は、複数の第2構造体32を有し、複数の第2構造体32は、周期的に配列され、第1構造体30および第2構造体32は、柱状部である。そのため、発光装置100では、第1構造体30および第2構造体32の上方に、欠陥や歪みが生じる可能性を低くすることができる。
【0068】
発光装置100では、複数の第1構造体30および複数の第2構造体32は、正三角格子状に配列され、複数の第1発光部E1および複数の第2発光部E2は、正三角格子状に配列されている。発光装置100では、複数の第1構造体30が正三角格子状に配列されていることにより、第1発光部E1における共振方向を、互いに60°で交わる第1~第3軸A1~A3方向とすることができる。さらに、複数の第1発光部E1が正三角格子状に配列されていることにより、3つの共振方向に対して、第1発光部E1を等方的に配置させることができる。これにより、3つの方向に共振する光に対して、等価な共振器を作製することができるため、共振領域の面積当たりの光閉じ込めを最大にすることができる。第2構造体32および第2発光部E2においても同様である。
【0069】
発光装置100では、隣り合う第1発光部E1の間の距離は、一方の第1発光部E1において共振する光が他方の第1発光部E1において共振する光に結合する距離であり、隣り合う第2発光部E2の間の距離は、一方の第2発光部E2において共振する光が他方の第2発光部E2において共振する光に結合する距離である。そのため、発光装置100では、複数の第1発光部E1の各々で共振する光の位相を揃えることができ、かつ、複数の第2発光部E2の各々で共振する光の位相を揃えることができる。
【0070】
1.2. 発光装置の製造方法
次に、第1実施形態に係る発光装置100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図16は、第1実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0071】
図16に示すように、基体10上に、バッファー層22をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical
Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などが挙げられる。
【0072】
次に、バッファー層22上に、マスク層60を形成する。マスク層60は、例えば、電子ビーム蒸着法やプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などによる成膜、ならびにフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によるパターニングによって形成される。積層方向からみて、マスク層60の柱状部を形成するための開口部62の面積を、第1~第4発光部E1~E4において、互いに異ならせる。これにより、第1~第4発光部E1~E4において、柱状部の径を互いに異ならせることができる。
【0073】
図1に示すように、マスク層60をマスクとしてバッファー層22上に、第1半導体層41、第1ガイド層42、発光層43、第2ガイド層44、および第2半導体層45を、
この順でエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD法、MBE法などが挙げられる。以上の工程により、柱状部を形成することができる。すなわち、第1発光部E1の第1構造体30、第2発光部E2の第2構造体32、第3発光部E3の第3構造体、および第4発光部E4の第4構造体を形成することができる。
【0074】
次に、バッファー層22上に第1電極50を形成し、第2半導体層45上に第2電極52を形成する。第1電極50および第2電極52は、例えば、真空蒸着法などにより形成される。なお、第1電極50および第2電極52の形成順序は、特に限定されない。
【0075】
以上の工程により、発光装置100を製造することができる。
【0076】
1.3. 発光装置の変形例
1.3.1. 第1変形例
次に、第1実施形態の第1変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。
図17は、第1実施形態の第1変形例に係る発光装置110を模式的に示す平面図である。
【0077】
以下、第1実施形態の第1変形例に係る発光装置110において、上述した第1実施形態に係る発光装置100の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。このことは、以下に示す第1実施形態の第2,第3変形例に係る発光装置において同様である。
【0078】
上述した発光装置100では、
図2に示すように、第1~第4発光部E1~E4は、積層方向からみて、正六角形の形状を有していた。これに対し、発光装置110では、
図17に示すように、第1~第4発光部E1~E4は、積層方向からみて、円形の形状を有している。なお、便宜上、
図17では、第1~第3発光部E1~E3を1つずつ示している。
【0079】
発光装置110では、積層方向からみて、第1~第4発光部E1~E4に囲まれた領域、図示の例では、第1~第3発光部E1~E3に囲まれた領域Fには、例えば、複数の柱状部が設けられている。
【0080】
領域Fに設けられた柱状部の径は、例えば、第1~第4発光部E1~E4の柱状部の径と異なる。例えば、第1~第3発光部E1~E3に囲まれた領域Fにおいて、第1発光部E1に近づくにつれて、領域Fの柱状部の径は、第1発光部E1の柱状部の径に近づいてもよい。また、該領域Fにおいて、第2発光部E2に近づくにつれて、領域Fの柱状部の径は、第2発光部E2の柱状部の径に近づいてもよい。また、該領域Fにおいて、第3発光部E3に近づくにつれて、領域Fの柱状部の径は、第3発光部E3の柱状部の径に近づいてもよい。これにより、発光装置110において、領域界面が共振波長に与える影響を低減することができる。
【0081】
なお、柱状部の周期を変えることにより、第1~第4発光部E1~E4の共振波長を異ならせる場合には、該領域Fにおいて、第1発光部E1に近づくにつれて、領域Fの柱状部の周期は、第1発光部E1の柱状部の周期に近づいてもよい。
【0082】
1.3.2. 第2変形例
次に、第1実施形態の第2変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。
図18は、第1実施形態の第2変形例に係る発光装置120を模式的に示す平面図である。
【0083】
上述した発光装置100では、
図2に示すように、積層方向からみて、隣り合う第1発光部E1の間に、第2~第4発光部E2~E4のいずれか1つのみが配置されていた。具体的には、第1軸A1方向において隣り合う第1発光部E1の間に、1つの第2発光部E2が配置されていた。第2軸A2方向において隣り合う第1発光部E1の間に、1つの第3発光部E3が配置されていた。第3軸A3方向において隣り合う第1発光部E1の間に、1つの第4発光部E4が配置されていた。
【0084】
これに対し、発光装置120では、
図18に示すように、積層方向からみて、隣り合う第1発光部E1の間に、第2~第9発光部E2~E9のうち2つが配置されている。具体的には、第1軸A1方向において隣り合う第1発光部E1の間に、第5発光部E5および第9発光部E9が配置されている。第2軸A2方向において隣り合う第1発光部E1の間に、第2発光部E2および第3発光部E3が配置されている。第3軸A3方向において隣り合う第1発光部E1の間に、第4発光部E4および第7発光部E7が配置されている。
【0085】
発光装置120は、第1~第4発光部E1~E4の他に、第5~第9発光部E5~E9を有している。第1~第9発光部E1~E9は、互いに共振波長が異なる。第5~第9発光部E5~E9は、例えば柱状部の径が異なることにより、第1発光部E1と共振波長が異なること以外は、上述した第1発光部E1と基本的に同じである。
【0086】
発光装置120は、第1~第9発光部E1~E9を有しているため、発光装置100に比べて、よりコヒーレンスを低くすることができ、よりスペックルノイズを低減させることができる。なお、本発明に係る発光装置において、発光部の数は、複数であれば特に限定されない。
【0087】
1.3.3. 第3変形例
次に、第1実施形態の第3変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。
図19は、第1実施形態の第3変形例に係る発光装置130を模式的に示す
断面図である。
【0088】
上述した発光装置100では、
図1に示すように、第2半導体層45の径は、発光層43の径よりも大きかった。これに対し、発光装置130では、
図19に示すように、第2半導体層45の径は、発光層43の径と同じである。図示の例では、第1ガイド層42の径は、積層方向において変化している。第2ガイド層44の径は、発光層43と同じである。
【0089】
例えば、第1ガイド層42、発光層43、第2ガイド層44、および第2半導体層45をエピタキシャル成長させる際の成長温度を調整することにより、第1ガイド層42の径を、積層方向において変化させ、第2半導体層45の径を、発光層43の径および第2ガイド層44の径と同じにすることができる。
【0090】
2. 第2実施形態
2.1. 発光装置
次に、第2実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。
図20は、第2実施形態に係る発光装置200を模式的に示す平面図である。
図21は、第2実施形態に係る発光装置200の第1構造体30が配置される格子点G1を、実空間において模式的に示した図である。
図22は、第2実施形態に係る発光装置200の第1構造体30が配置される格子点G1に対応する、波数空間における逆格子点G2を模式的に示した図である。
図23は、
図22の中央付近の拡大図であり、
図23の正方形は、第1ブリルアンゾーンを示している。なお、便宜上、
図20では、第1~第4発光部E1~E4以外
の部材の図示を省略している。
【0091】
以下、第2実施形態に係る発光装置200において、上述した第1実施形態に係る発光装置100の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0092】
上述した発光装置100では、
図2に示すように、複数の第1発光部E1は、正三角格子状に配列されていた。さらに、発光装置100では、
図3に示すように、第1構造体30が配置される格子点G1は、正三角格子状に配列されていた。
【0093】
これに対し、発光装置200では、
図20に示すように、複数の第1発光部E1は、正方格子状に配列されている。同様に、複数の第2発光部E2は、正方格子状に配列されている。第3発光部E3および第4発光部E4についても同様である。積層方向からみて、第1~第4発光部E1~E4の形状は、正方形である。
【0094】
さらに、発光装置200では、
図21に示すように、第1構造体30が配置される格子点G1は、正方格子状に配列されている。すなわち、複数の第1構造体30は、正方格子状に配置されている。同様に、複数の第2構造体32は、正方格子状に配置されている。第3発光部E3の第3構造体および第4発光部E4の第4構造体についても同様である。
【0095】
図23の矢印は、第1発光部E1で共振する光の共振方向を示している。複数の第1構造体30が正方格子状に配列している場合、共振方向は、
図23に示すように、互いに90°で交わる第4軸A4および第5軸A5方向となる。
【0096】
複数の第1発光部E1は、
図20に示すように、第1発光部E1における光の共振方向に配列されている。第1発光部E1における光の共振方向は、第4軸A4方向および第5軸A5方向の2方向である。図示の例では、第4軸A4方向において隣り合う第1発光部E1の間に、第2発光部E2が配置されている。第5軸A5方向において隣り合う第1発光部E1の間に、第4発光部E4が配置されている。第4軸A4方向において隣り合う第4発光部E4の間に、第3発光部E3が配置されている。
【0097】
発光装置200では、複数の第1構造体30および複数の第2構造体32は、正方格子状に配列され、複数の第1発光部E1および複数の第2発光部E2は、正方格子状に配列されている。発光装置200では、複数の第1構造体30が正方格子状に配列されていることにより、第1発光部E1における共振方向を、互いに90°で交わる第4軸A4方向および第5軸A5方向とすることができる。さらに、複数の第1発光部E1が正方格子状に配列されていることにより、2つの共振方向に対して、第1発光部E1を等方的に配置させることができる。これにより、2つの方向に共振する光に対して、等価な共振器を作製することができるため、共振領域の面積当たりの光閉じ込めを最大にすることができる。第2構造体32および第2発光部E2においても同様である。
【0098】
2.2. 発光装置の製造方法
次に、第2実施形態に係る発光装置200の製造方法について説明する。第2実施形態に係る発光装置200の製造方法は、上述した第1実施形態に係る発光装置100の製造方法と、基本的に同じである。したがって、その詳細な説明を省略する。
【0099】
2.2. 発光装置の変形例
次に、第2実施形態の変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。
図24は、第2実施形態の変形例に係る発光装置210を模式的に示す断面図である。
図25は、第2実施形態の変形例に係る発光装置210を模式的に示す斜視図である。なお、
図24は、
図25のXXIV-XXIV線断面図である。
【0100】
以下、第2実施形態の変形例に係る発光装置210において、上述した第2実施形態に係る発光装置200の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0101】
上述した発光装置200では、第1構造体30は、柱状部であった。これに対し、発光装置210では、
図24および
図25に示すように、第1構造体30は、第2ガイド層44に設けられた開口部である。第2ガイド層44は、複数の開口部が設けられたフォトニック結晶層である。なお、
図24および
図25は、第1発光部E1を示している。
【0102】
発光装置210では、第1ガイド層42および第2ガイド層44は、GaN層であってもよい。図示の例では、発光装置210は、第2ガイド層44と第2電極52との間に設けられたDBR層46を有している。第1電極50は、積層方向からみて、枠状の形状を有している。発光装置210は、基体10側から光を出射することができる。
【0103】
次に、第2発光部E2について説明する。
図26は、第2発光部E2を模式的に示す断面図である。第2発光部E2の第2構造体32は、例えば、第1構造体30よりも径が小さい開口部である。同様に、第3発光部E3の第3構造体、および第4発光部E4の第4構造体も、第2ガイド層44に設けられた開口部である。
【0104】
発光装置210の製造方法としては、第1半導体層41、第1ガイド層42、発光層43、および第2ガイド層44をこの順でエピタキシャル成長させる。次に、第2ガイド層44を、フォトリソグラフィーおよびエッチングによってパターニングし、例えば第1構造体30を形成した後、さらに、第2ガイド層44を成長させる。これにより、開口部である第1構造体30は、密閉される。
【0105】
なお、例えば、図示せぬ基体に、DBR層46、第2半導体層45、第2ガイド層44をこの順でエピタキシャル成長させた後に、第2ガイド層44をパターニングして第1構造体30を形成する。そして、第1構造体30が設けられた第2ガイド層44に、基体10に形成された第1半導体層41、第1ガイド層42、および発光層43を有する部材を、接合させることにより、発光装置210を形成してもよい。なお、図示せぬ基体は、例えば、第2電極52を形成する前に、除去されてもよい。
【0106】
発光装置210では、第1構造体30および第2構造体32は、開口部である。開口部は、例えば、フォトリソグラフィーおよびエッチングによるパターニングよって形成される。そのため、例えば、第1構造体30および第2構造体32が柱状部である場合に比べて、第1構造体30および第2構造体32を容易に形成することができる。
【0107】
なお、
図25に示す例では、複数の第1構造体30は、正方格子状に配列されているが、複数の第1構造体30は、正三角格子状に配列されていてもよい。同様に、複数の第2構造体32は、正三角格子状に配列されていてもよい。この場合、複数の第1発光部E1および複数の第2発光部E2は、正三角格子状に配列されていてもよい。
【0108】
また、図示はしないが、第1構造体30は、第2ガイド層44ではなく、第1ガイド層42に設けられていてもよい。第2構造体32、第3構造体、および第4構造体についても同様である。
【0109】
3. 第3実施形態
次に、第3実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。
図27は、第3実施形態に係るプロジェクター900を模式的に示す図である。
【0110】
本発明に係るプロジェクターは、本発明に係る発光装置を有している。以下では、本発明に係る発光装置として発光装置100を有するプロジェクター900について説明する。
【0111】
プロジェクター900は、図示しない筐体と、筐体内に備えられている赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ出射する赤色光源100R、緑色光源100G、青色光源100Bと、を有している。赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bの各々は、例えば、複数の発光装置100を積層方向と直交する方向にアレイ状に配置させ、複数の発光装置100において基体10を共通基板としたものである。赤色光源100R、緑色光源100G、青色光源100Bの各々を構成する発光装置100の数は、特に限定されない。なお、便宜上、
図27では、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bを簡略化している。
【0112】
プロジェクター900は、さらに、筐体内に備えられている、第1レンズアレイ902Rと、第2レンズアレイ902Gと、第3レンズアレイ902Bと、第1光変調装置904Rと、第2光変調装置904Gと、第3光変調装置904Bと、投射装置908と、を有している。第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bは、例えば、透過型の液晶ライトバルブである。投射装置908は、例えば、投射レンズである。
【0113】
赤色光源100Rから出射された光は、第1レンズアレイ902Rに入射する。赤色光源100Rから出射された光は、第1レンズアレイ902Rによって、集光され、例えば重畳されることができる。
【0114】
第1レンズアレイ902Rによって集光された光は、第1光変調装置904Rに入射する。第1光変調装置904Rは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第1光変調装置904Rによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0115】
緑色光源100Gから出射された光は、第2レンズアレイ902Gに入射する。緑色光源100Gから出射された光は、第2レンズアレイ902Gによって、集光され、例えば重畳されることができる。
【0116】
第2レンズアレイ902Gによって集光された光は、第2光変調装置904Gに入射する。第2光変調装置904Gは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第2光変調装置904Gによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0117】
青色光源100Bから出射された光は、第3レンズアレイ902Bに入射する。青色光源100Bから出射された光は、第3レンズアレイ902Bによって、集光され、例えば重畳されることができる。
【0118】
第3レンズアレイ902Bによって集光された光は、第3光変調装置904Bに入射する。第3光変調装置904Bは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第3光変調装置904Bによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0119】
また、プロジェクター900は、第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bから出射された光を合成して投射装置908に導くクロス
ダイクロイックプリズム906を有することができる。
【0120】
第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム906に入射する。クロスダイクロイックプリズム906は、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は、投射装置908によりスクリーン910上に投射され、拡大された画像が表示される。
【0121】
なお、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bは、発光装置100を映像の画素として画像情報に応じて制御することで、第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bを用いずに、直接的に映像を形成してもよい。そして、投射装置908は、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bによって形成された映像を、拡大してスクリーン910に投射してもよい。
【0122】
また、上記の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micro Mirror Device)が挙げられる。また、投射装置の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0123】
また、光源を、光源からの光をスクリーン上で走査させることにより、表示面に所望の大きさの画像を表示させる画像形成装置である走査手段を有するような走査型の画像表示装置の光源装置にも適用することが可能である。
【0124】
本発明に係る発光装置の用途は、上述した実施形態に限定されず、プロジェクター以外にも、屋内外の照明、ディスプレイのバックライト、レーザープリンター、スキャナー、車載用ライト、光を用いるセンシング機器、通信機器等の光源としても用いることが可能である。
【0125】
本発明は、本願に記載の特徴や効果を有する範囲で一部の構成を省略したり、各実施形態や変形例を組み合わせたりしてもよい。
【0126】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0127】
10…基体、20…積層体、22…バッファー層、30…第1構造体、32…第2構造体、41…第1半導体層、42…第1ガイド層、43…発光層、44…第2ガイド層、45…第2半導体層、46…DBR層、50…第1電極、52…第2電極、60…マスク層、62…開口部、100…発光装置、100R…赤色光源、100G…緑色光源、100B…青色光源、110,120,130,200,210…発光装置、900…プロジェクター、902R…第1レンズアレイ、902G…第2レンズアレイ、902B…第3レン
ズアレイ、904R…第1光変調装置、904G…第2光変調装置、904B…第3光変調装置、906…クロスダイクロイックプリズム、908…投射装置