(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】発光装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
H01S 5/18 20210101AFI20220715BHJP
H01L 33/08 20100101ALI20220715BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20220715BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
H01S5/18 ZNM
H01L33/08
G03B21/00 D
G03B21/14 A
(21)【出願番号】P 2018147763
(22)【出願日】2018-08-06
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】石沢 峻介
(72)【発明者】
【氏名】岸野 克巳
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0365480(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L33/00-33/46
H01S 5/00- 5/50
G03B21/00
G03B21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体に設けられ、複数の柱状部を有する積層体と、
を有し、
前記柱状部は、発光層を有し、
前記積層体の積層方向における、前記柱状部の最も前記基体側の第1位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の最大幅をaとし、
前記積層方向における、前記発光層の最も前記基体側の第2位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の最大幅をbとし、
前記積層方向における、前記発光層の最も前記基体から離れた側の第3位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の最大幅をcとし、
前記積層方向における、前記柱状部の最も前記基体から離れた側の第4位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の最大幅をdとし、
前記積層方向において、前記第1位置と前記第2位置との間の距離をL1、前記第3位置と第4位置との間の距離をL2、としたとき、
(b-a)/L1>(d-c)/L2、a<b、c<d、かつ、a<d
の関係を満た
し、
前記発光層は、
第1部分と、
前記第1部分よりもInの濃度が低い第2部分と、
を有し、
前記積層方向からみて、前記第2部分は、前記第1部分を囲んでいる、
発光装置。
【請求項2】
基体と、
前記基体に設けられ、複数の柱状部を有する積層体と、
前記積層体の前記基体側とは反対側に設けられた電極と、
を有し、
前記柱状部は、発光層を有し、
前記積層体の積層方向における、前記柱状部の最も前記基体側の第1位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の最大幅をaとし、
前記積層方向における、前記発光層の最も前記基体側の第2位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の最大幅をbとし、
前記積層方向における、前記発光層の最も前記基体から離れた側の第3位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の最大幅をcとし、
前記積層方向における、前記柱状部の前記電極との接触領域の最も前記基体側の第4位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の最大幅をdとし、
前記積層方向において、前記第1位置と前記第2位置との間の距離をL1、前記第3位置と前記第4位置との間の距離をL2、としたとき、
(b-a)/L1>(d-c)/L2、a<b、c<d、かつ、a<d
の関係を満た
し、
前記発光層は、
第1部分と、
前記第1部分よりもInの濃度が低い第2部分と、
を有し、
前記積層方向からみて、前記第2部分は、前記第1部分を囲んでいる、
発光装置。
【請求項3】
基体と、
前記基体に設けられ、複数の柱状部を有する積層体と、
を有し、
前記柱状部は、発光層を有し、
前記積層体の積層方向における、前記柱状部の最も前記基体側の第1位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の径をaとし、
前記積層方向における、前記発光層の最も前記基体側の第2位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の最大幅をbとし、
前記積層方向における、前記発光層の最も前記基体から離れた側の第3位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の最大幅をcとし、
前記積層方向において、前記第3位置より前記基体から離れた側で、前記積層方向からみた前記柱状部の径が最大である第4位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の径をdとし、
前記積層方向において、前記第1位置と前記第2位置との間の距離をL1、前記第3位置と第4位置との間の距離をL2、としたとき、
(b-a)/L1>(d-c)/L2、a<b、c<d、かつ、a<d
の関係を満た
し、
前記発光層は、
第1部分と、
前記第1部分よりもInの濃度が低い第2部分と、
を有し、
前記積層方向からみて、前記第2部分は、前記第1部分を囲んでいる、
発光装置。
【請求項4】
請求項
1ないし3のいずれか1項において、
前記発光層は、複数の前記第1部分を有し、
複数の前記第1部分は、前記積層方向に並び、
隣り合う前記第1部分の間には、前記第2部分が設けられている、発光装置。
【請求項5】
請求項1ないし
4のいずれか1項において、
前記柱状部は、
第1半導体層と、
前記第1半導体層と導電型の異なる第2半導体層と、
を有し、
前記発光層は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられている、発光装置。
【請求項6】
請求項1ないし
5のいずれか1項に記載の発光装置を有する、プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザーは、高輝度の次世代光源として期待されている。中でも、ナノコラムを適用した半導体レーザーは、ナノコラムによるフォトニック結晶の効果によって、狭放射角で高出力の発光が実現できると期待されている。このような半導体レーザーは、例えば、プロジェクターの光源として適用される。
【0003】
例えば特許文献1には、n型ポスト、n型ポスト上に設けられた発光領域ポスト、および発光領域ポスト上に設けられたp型ポストを有する柱状部を含む半導体発光装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような発光装置において、n型半導体層側からp型半導体層側に向けて一定の割合で徐々に幅が大きくなる柱状部を有する発光装置が知られている。このような発光装置では、活性層で発生した光が柱状部のp型半導体層側に漏れて、例えばp型半導体層上に設けられた電極に吸収されてしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置の一態様は、
基体と、
前記基体に設けられ、複数の柱状部を有する積層体と、
を有し、
前記柱状部は、発光層を有し、
前記積層体の積層方向における、前記柱状部の最も前記基体側の第1位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の最大幅をaとし、
前記積層方向における、前記発光層の最も前記基体側の第2位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の最大幅をbとし、
前記積層方向における、前記発光層の最も前記基体から離れた側の第3位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の最大幅をcとし、
前記積層方向における、前記柱状部の最も前記基体から離れた側の第4位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の最大幅をdとし、
前記積層方向において、前記第1位置と前記第2位置との間の距離をL1、前記第3位置と第4位置との間の距離をL2、としたとき、
(b-a)/L1>(d-c)/L2、a<b、c<d、かつ、a<d
の関係を満たす。
【0007】
本発明に係る発光装置の一態様は、
基体と、
前記基体に設けられ、複数の柱状部を有する積層体と、
前記積層体の前記基体側とは反対側に設けられた電極と、
を有し、
前記柱状部は、発光層を有し、
前記積層体の積層方向における、前記柱状部の最も前記基体側の第1位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の最大幅をaとし、
前記積層方向における、前記発光層の最も前記基体側の第2位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の最大幅をbとし、
前記積層方向における、前記発光層の最も前記基体から離れた側の第3位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の最大幅をcとし、
前記積層方向における、前記柱状部の前記電極との接触領域の最も前記基体側の第4位置での、前記積層方向からみた前記柱状部の最大幅をdとし、
前記積層方向において、前記第1位置と前記第2位置との間の距離をL1、前記第3位置と前記第4位置との間の距離をL2、としたとき、
(b-a)/L1>(d-c)/L2、a<b、c<d、かつ、a<d
の関係を満たす。
【0008】
前記発光装置の一態様において、
前記発光層は、
第1部分と、
前記第1部分よりもInの濃度が低い第2部分と、
を有し、
前記積層方向からみて、前記第2部分は、前記第1部分を囲んでいてもよい。
【0009】
前記発光装置の一態様において、
前記発光層は、複数の前記第1部分を有し、
複数の前記第1部分は、前記積層方向に並び、
隣り合う前記第1部分の間には、前記第2部分が設けられていてもよい。
【0010】
前記発光装置の一態様において、
前記柱状部は、
第1半導体層と、
前記第1半導体層と導電型の異なる第2半導体層と、
を有し、
前記発光層は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられていてもよい。
【0011】
本発明に係るプロジェクターは、
前記発光装置の一態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【
図2】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【
図3】第1実施形態に係る発光装置の柱状部を模式的に示す断面図。
【
図4】第1実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
【
図5】第1実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
【
図6】第1実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
【
図7】第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【
図8】第2実施形態の変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【
図9】第3実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【
図10】第3実施形態に係る発光装置の柱状部を模式的に示す断面図。
【
図11】第4実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0014】
1. 第1実施形態
1.1. 発光装置
まず、第1実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る発光装置100を模式的に示す断面図である。
図2は、第1実施形態に係る発光装置100を模式的に示す平面図である。なお、
図1は、
図2のI-I線断面図である。
【0015】
発光装置100は、
図1および
図2に示すように、基体10と、積層体20と、第1電極40と、第2電極42と、を含む。なお、便宜上、
図2では、積層体20の柱状部30以外の部材の図示を省略している。
【0016】
基体10は、例えば、板状の形状を有している。基体10は、例えば、Si基板、GaN基板、サファイア基板などである。
【0017】
積層体20は、基体10に設けられている。図示の例では、積層体20は、基体10上に設けられている。積層体20は、例えば、バッファー層22と、柱状部30と、を有している。
【0018】
なお、本発明において、「上」とは、積層体20の積層方向(以下、単に「積層方向」ともいう)において、柱状部30の発光層34からみて基体10から遠ざかる方向のことであり、「下」とは、積層方向において、発光層34からみて基体10に近づく方向のことである。
【0019】
また、本発明において、「積層体20の積層方向」とは、柱状部30の第1半導体層32と発光層34との積層方向のことである。
【0020】
バッファー層22は、基体10上に設けられている。バッファー層22は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層やAlGaN層などである。バッファー層22は、例えば、基部24と、凸部26と、を有している。基部24は、基体10上に設けられている。基部24の上面には、凸部26、および柱状部30を形成するためのマスク層50が設けられている。凸部26は、マスク層50に形成された開口部に位置している。
【0021】
柱状部30は、バッファー層22上に設けられている。柱状部30の積層方向と直交する方向における断面形状は、例えば、多角形、円などである。
図2に示す例では、柱状部30の断面形状は、正六角形である。柱状部30の径は、例えば、nmオーダーであり、具体的には10nm以上500nm以下である。柱状部30は、例えば、ナノコラム、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノピラーとも呼ばれる。柱状部30の積層方向の大きさは、
例えば、0.1μm以上5μm以下である。
【0022】
なお、本発明において、「径」とは、柱状部30の平面形状が円の場合は、直径であり、柱状部30の平面形状が多角形の場合は、該多角形を内部に含む最小の円、すなわち最小包含円の直径である。また、「平面形状」とは、積層方向からみた形状のことである。
【0023】
柱状部30は、
図1および
図2に示すように、複数設けられている。隣り合う柱状部30の間隔は、例えば、1nm以上30nm以下である。複数の柱状部30は、積層方向からみて、所定の方向に所定のピッチで配列されている。
図2に示す例では、複数の柱状部30は、平面視において、正三角格子状に配列されている。複数の柱状部30は、例えば、積層方向からみて、最密充填に配列されている。複数の柱状部30は、フォトニック結晶の効果を発現することができる。
【0024】
柱状部30は、
図1に示すように、第1半導体層32と、発光層34と、第2半導体層36と、を有している。
【0025】
第1半導体層32は、バッファー層22上に設けられている。第1半導体層32は、基体10と発光層34との間に設けられている。第1半導体層32は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層やAlGaN層などである。第1半導体層32は、発光層34と接触する第1接触領域32aを有している。第1接触領域32aは、第1半導体層32の上面である。図示の例では、第1接触領域32aは、ファセット面である。
【0026】
発光層34は、第1半導体層32上に設けられている。発光層34は、第1半導体層32と第2半導体層36との間に設けられている。発光層34は、不純物がドープされていないi型の半導体層である。発光層34は、電流が注入されることで光を発生させることが可能な層である。
【0027】
発光層34は、第1部分34aと、第2部分34bと、を有している。第1部分34aおよび第2部分34bは、例えば、InGaN層である。第2部分34bのインジウム(In)の濃度は、第1部分34aのInの濃度よりも低い。第2部分34bのバンドギャップは、第1部分34aのバンドギャップよりも大きい。積層方向からみて、第2部分34bは、第1部分34aを囲んでいる。第1部分34aは、複数設けられている。複数の第1部分34aは、積層方向に並んでいる。隣り合う第1部分34aの間には、第2部分34bが設けられている。図示の例では、第1部分34aは、3つ設けられている。発光層34は、第1部分34aおよび第2部分34bから構成された井戸構造を有している。
【0028】
なお、発光層34は、例えば、GaN層とInGaN層とから構成された半導体超格子(SL)構造を有するガイド層を有していてもよい。この場合、ガイド層が第1部分34aおよび第2部分34bを有していてもよい。
【0029】
第2半導体層36は、発光層34上に設けられている。第2半導体層36は、第1半導体層32と導電型の異なる層である。第2半導体層36は、例えば、Mgがドープされたp型のGaN層やAlGaN層などである。第2半導体層36は、発光層34と接触する第2接触領域36aを有している。第2接触領域36aは、第2半導体層36の上面である。図示の例では、第2接触領域36aは、平坦な面である。第1半導体層32および第2半導体層36は、発光層34に光を閉じ込める機能を有するクラッド層である。
【0030】
発光装置100では、p型の第2半導体層36、不純物がドープされていない発光層34、およびn型の第1半導体層32により、pinダイオードが構成される。発光装置100では、第1電極40と第2電極42との間に、pinダイオードの順バイアス電圧を
印加すると、発光層34に電流が注入されて発光層34において電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。発光層34において発生した光は、第1半導体層32および第2半導体層36により積層方向と直交する方向に伝搬し、複数の柱状部30によるフォトニック結晶の効果により定在波を形成し、発光層34において利得を受けてレーザー発振する。そして、発光装置100は、+1次回折光および-1次回折光をレーザー光として、積層方向に出射する。
【0031】
なお、図示はしないが、基体10とバッファー層22との間、または基体10の下に反射層が設けられていてもよい。該反射層は、例えば、DBR(Distributed Bragg Reflector)層である。該反射層によって、発光層34において発生した光を反射させることができ、発光装置100は、第2電極42側からのみ光を出射することができる。
【0032】
ここで、
図3は、発光装置100の柱状部30を模式的に示す断面図である。第1位置P1は、
図3に示すように、積層方向における、柱状部30の最も基体10側の位置である。図示の例では、第1位置P1は、例えば、柱状部30のバッファー層22との接触領域の位置である。第2位置P2は、積層方向における、発光層34の最も基体10側の位置である。第3位置P3は、積層方向における、発光層34の最も基体10から離れた側の位置である。第4位置P4は、積層方向における、柱状部30の最も基体10から離れた側の位置である。第4位置P4は、例えば、柱状部30の第2電極42との第2接触領域36aの位置である。
【0033】
発光装置100では、積層方向からみて、第1位置P1での柱状部30の最大幅をaとし、第2位置P2での柱状部30の最大幅をbとし、第3位置P3での柱状部30の最大幅をcとし、第4位置P4での柱状部30の最大幅をdとし、積層方向において、第1位置P1と第2位置P2との間の距離をL1、第3位置P3と第4位置P4との間の距離をL2、としたとき、下記式(1)の関係を満たす。
【0034】
(b-a)/L1>(d-c)/L2、a<b、c<d、かつ、a<d ・・・(1)
【0035】
式(1)において、(b-a)/L1は、例えば、柱状部30の発光層34よりも下部における、基体10側から第2電極42側に向かう最大幅の拡大率(以下、「第1拡大率」ともいう)である。(d-c)/L2は、例えば、柱状部30の発光層34よりも上部における、基体10側から第2電極42側に向かう最大幅の拡大率(以下、「第2拡大率」ともいう)である。なお、「柱状部の最大幅」とは、柱状部30の平面形状が円の場合は、直径であり、柱状部30の平面形状が多角形の場合は、該多角形を内部に含む最小包含円の直径である。
【0036】
第1電極40は、バッファー層22上に設けられている。バッファー層22は、第1電極40とオーミックコンタクトしていてもよい。第1電極40は、第1半導体層32と電気的に接続されている。図示の例では、第1電極40は、バッファー層22を介して、第1半導体層32と電気的に接続されている。第1電極40は、発光層34に電流を注入するための一方の電極である。第1電極40としては、例えば、バッファー層22側から、Ti層、Al層、Au層の順序で積層したものなどを用いる。なお、基体10が導電性の場合には、図示はしないが、第1電極40は、基体10の下に設けられていてもよい。
【0037】
第2電極42は、積層体20の基体10側とは反対側に設けられている。図示の例では、第2電極42は、第2半導体層36上に設けられている。第2半導体層36は、第2電極42とオーミックコンタクトしていてもよい。第2電極42は、第2半導体層36と電気的に接続されている。第2電極42は、発光層34に電流を注入するための他方の電極である。第2電極42としては、例えば、ITO(indium tin oxide)などを用いる。
【0038】
発光装置100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0039】
発光装置100では、上記式(1)を満たす。そのため、発光装置100では、柱状部30の発光層34よりも上部の第2拡大率は、柱状部30の発光層34よりも下部の第1拡大率よりも小さい。これにより、発光装置100では、例えば第2拡大率が第1拡大率と同じ場合に比べて、柱状部30の発光層34よりも上部における平均屈折率を小さくすることができる。具体的には、第2半導体層36の平面方向の平均屈折率を小さくすることができる。したがって、発光装置100では、柱状部30の上部側から漏れる光の量、具体的には、柱状部30の第2半導体層36側に漏れる光の量を低減することができ、例えば、第2電極42において吸収される光の量を低減することができる。また、例えば、発光層34近傍の光強度を大きくすることができる。
【0040】
なお、「平面方向の平均屈折率」とは、積層方向の所定の位置において、積層方向と直交する方向の平均屈折率であり、例えば、積層体20の柱状部30が設けられた部分の平面方向の平均屈折率をnAVEとすると、nAVEは、下記式(2)として表される。
【0041】
【0042】
ただし、上記式(2)において、εAは、柱状部30の誘電率であり、εBは、複数の柱状部30の間の部分の誘電率であり、図示の例では、空気の誘電率である。φは、積層方向の所定の位置において、平面に方向における、複数の柱状部30の面積の総和と、複数の柱状部30の間の部分の面積の総和と、の合計に対する、複数の柱状部30の面積の総和の比であり、柱状部30の充填率ともいえる。
【0043】
発光装置100では、発光層34は、第1部分34aと、第1部分34aよりもInの濃度が低い第2部分34bと、を有し、積層方向からみて、第2部分34bは、第1部分34aを囲んでいる。そのため、発光装置100では、後述する実験例のように、出射される光の波長のばらつきが小さく、純色性の高い光を出射することができる。これにより、発光装置100では、発振波長の光を効率的に増幅することできるとともに、吸収損失を低減でき、発振閾値の低減が可能となる。
【0044】
発光装置100では、発光層34は、複数の第1部分34aを有し、複数の第1部分34aは、積層方向に並び、隣り合う第1部分34aの間には、第2部分34bが設けられている。そのため、発光装置100では、第1部分34aを形成する際に過剰なInが結晶表面に析出して滞在したとしても、第1部分34a上に第2部分34bを形成することにより、例えば過剰なInは第2部分34bに取り込まれ、過剰なInを除去することができる。
【0045】
発光装置100では、柱状部30は、第1半導体層32と、第1半導体層32と導電型の異なる第2半導体層36と、を有し、発光層34は、第1半導体層32と第2半導体層36との間に設けられている。そのため、発光装置100では、p型の第2半導体層36、不純物がドープされていない発光層34、およびn型の第1半導体層32により、pinダイオードを構成することができる。
【0046】
なお、上記では、発光装置100は、レーザーであったが、本発明に係る発光装置は、LED(Light Emitting Diode)であってもよい。
【0047】
1.2. 発光装置の製造方法
次に、第1実施形態に係る発光装置100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図4~
図6は、第1実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0048】
図4に示すように、基体10上に、バッファー層22の基部24をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法が挙げられる。より具体的には、高周波プラズマ窒素源を利用したMBE(RF-MBE)法が挙げられる。
【0049】
次に、バッファー層22上にマスク層50を形成する。マスク層50は、例えば、酸化シリコン層、酸化チタン層、チタン層、これらの積層膜などである。マスク層50は、例えば、電子ビーム蒸着法やプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などによる成膜、ならびにフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によるパターニングによって形成される。
【0050】
次に、マスク層50をマスクとして、例えば、RF-MBEにより、バッファー層22の基部24上に、バッファー層22の凸部26および第1半導体層32をエピタキシャル成長させる。
【0051】
図5に示すように、例えば、RF-MBEにより、第1半導体層32上に第1層35aをエピタキシャル成長させる。第1層35aは、インジウム(In)とガリウム(Ga)と窒素(N)とを含む。第1層35aの成長を、Inの照射量比を所定以上として行うことにより、InGaNは、第1半導体層32の第1接触領域32a全面での成長が抑制されてInが第1接触領域32aをマイグレーションし、第1半導体層32の頂上部に対してc軸方向に結晶が析出する。このとき、InGaNは、例えばGaN層との格子歪みの蓄積を回避するために、柱状部30の中央部に凝集してドット状に成長する。これにより、第1部分34aと、第1部分34aよりもInの濃度が低い第2部分34bとが形成される。図示はしないが、成長中、過剰なInは結晶表面に析出して滞在する。第1層35aの成長温度は、例えば、600℃以上700℃以下である。
【0052】
図6に示すように、例えば、RF-MBEにより、第1層35a上に第2層35bをエピタキシャル成長させる。第2層35bの成長は、Inの照射を遮断してGaおよびNのみを照射する。これにより、析出されたInは、結晶に取り込まれてInGaNとなる。また、析出されたInは、第2層35bの成長時の熱により蒸発して除去される。これにより、第1部分34a上に第2部分34bを形成することができる。第2層35bの成長温度は、例えば、600℃以上900℃以下である。
【0053】
析出されたInが除去された後に、In照射を再開し、InGaNを成長させる。以上のようにInの照射と遮断とを繰り返すことにより、
図1に示すように、Inの濃度が高い3つの第1部分34aが、Inの濃度が低い第2部分34bに覆われた発光層34を形成することができる。なお、便宜上、
図1では、第1層35aの第2部分34bと、第2層35bの第2部分34bと、を一体的に図示している。
【0054】
ここで、積層方向からみて、第1部分34aの径は、例えば、InGaNとGaNとの格子定数の差から決まる。そのため、複数の柱状部30間において、径のばらつきを小さくすることができ、均一性の高い発光特性を得ることができる。
【0055】
図1に示すように、例えば、発光層34上に第2半導体層36をエピタキシャル成長さ
せる。これにより、柱状部30を形成することができる。
【0056】
なお、第2半導体層36および発光層34の成長温度を、第1半導体層32の成長温度よりも例えば200℃程度低くすることで、第2半導体層36および発光層34の径を、第1半導体層32の径よりも大きくすることができる。
【0057】
また、第2半導体層36は、例えば、Mgがドープされているため、径が大きくなりやすい。しかし、
図2に示すように、積層方向からみて、平面形状が正六角形の柱状部30を正三角格子状に配列させて最密充填に配置することにより、複数の柱状部30の間の距離を小さくすることができる。そのため、第2半導体層36を成長させる際の原料が複数の柱状部30の間に入りにくくなり(シャドウ効果)、第2半導体層36の径が発光層34の径に対して大きくなりすぎることを抑制することができる。複数の柱状部30の間の距離は、第2半導体層36を成長させる際に、シャドウ効果が発現される距離であり、シャドウ効果および成長温度により、式(1)を満たす柱状部30を形成することができる。
【0058】
次に、バッファー層22上に第1電極40を形成し、第2半導体層36上に第2電極42を形成する。第1電極40および第2電極42は、例えば、真空蒸着法などにより形成される。なお、第1電極40および第2電極42の形成順序は、特に限定されない。
【0059】
以上の工程により、発光装置100を製造することができる。
【0060】
2. 第2実施形態
2.1. 発光装置
次に、第2実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。
図7は、第2実施形態に係る発光装置200を模式的に示す断面図である。
【0061】
以下、第2実施形態に係る発光装置200において、上述した第1実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0062】
上述した発光装置100では、発光層34の第2部分34bは、InGaN層であった。これに対し、発光装置200では、
図7に示すように、第2部分34bは、InGaN層である第1領域34b1と、GaN層である第2領域34b2と、を有している。
【0063】
第1領域34b1のInの濃度は、第1部分34aのInの濃度よりも低い。第2領域34b2は、積層方向からみて、第1部分34aおよび第1領域34b1を囲んでいる。
【0064】
2.2. 発光装置の製造方法
次に、第2実施形態に係る発光装置200の製造方法について、説明する。発光装置200の製造方法は、例えば、発光装置100に比べて、発光層34を形成する際に、Inの照射を遮断してGaおよびNのみを照射する第2層35bの成長時間を長くすること以外は、上述した第1実施形態に係る発光装置100の製造方法と基本的に同様である。したがって、その説明を省略する。
【0065】
2.3. 発光装置の変形例
次に、第2実施形態の変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。
図8は、第2実施形態の変形例に係る発光装置210を模式的に示す断面図である。
【0066】
以下、第2実施形態の変形例に係る発光装置210において、上述した第2実施形態に
係る発光装置200の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0067】
発光装置210では、
図8に示すように、積層体20は、第3半導体層38を有している点において、上述した発光装置200と異なる。
【0068】
第3半導体層38は、柱状部30と第2電極42との間に設けられている。第3半導体層38は、例えば、複数の柱状部30を繋げている層である。第3半導体層38の材質は、例えば、第2半導体層36と同じである。図示の例では、第4位置P4は、柱状部30の第3半導体層38との接触領域の位置である。発光装置210は、例えば、発光装置200に比べて、隣り合う柱状部30の間の距離が小さい。
【0069】
発光装置210は、発光層34上に第2半導体層36を成長させて柱状部30を形成した後、さらに、GaN層を成長させることにより、第3半導体層38を形成することができる。
【0070】
3. 第3実施形態
3.1. 発光装置
次に、第3実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。
図9は、第3実施形態に係る発光装置300を模式的に示す断面図である。
【0071】
以下、第3実施形態に係る発光装置300において、上述した第1実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0072】
発光装置100では、
図1に示すように、第2接触領域36aは、平坦な面であった。これに対し、発光装置300では、
図9に示すように、第2接触領域36aは、ファセット面である。
【0073】
ここで、
図10は、発光装置300の柱状部30および第2電極42を模式的に示す断面図である。発光装置300では、
図10に示すように、第4位置P4は、積層方向における、第2接触領域36aの基体10側の位置である。
【0074】
発光装置300では、発光装置100と同様に、柱状部30の第2半導体層36側に漏れる光の量を低減することができ、例えば、第2電極42において吸収される光の量を低減することができる。
【0075】
3.2. 発光装置の製造方法
次に、第3実施形態に係る発光装置300の製造方法について、説明する。発光装置300の製造方法では、例えば、第2半導体層36の成長温度や成膜速度を調整して第2接触領域36aをファセット面とすること以外は、上述した第1実施形態に係る発光装置100の製造方法と基本的に同様である。したがって、その説明を省略する。なお、発光装置100の製造方法では、ファセット面を有する第2半導体層36を形成した後に、エッチングなどによって第2接触領域36aを平坦な面にしてもよい。
【0076】
4. 第4実施形態
次に、第4実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。
図11は、第4実施形態に係るプロジェクター900を模式的に示す図である。
【0077】
本発明に係るプロジェクターは、本発明に係る発光装置を有している。以下では、本発
明に係る発光装置として発光装置100を有するプロジェクター900について説明する。
【0078】
プロジェクター900は、図示しない筐体と、筐体内に備えられている赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ出射する赤色光源100R、緑色光源100G、青色光源100Bと、を有している。赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bの各々は、例えば、複数の発光装置100を積層方向と直交する方向にアレイ状に配置させ、複数の発光装置100において基体10を共通基板としたものである。赤色光源100R、緑色光源100G、青色光源100Bの各々を構成する発光装置100の数は、特に限定されない。なお、便宜上、
図11では、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bを簡略化している。
【0079】
プロジェクター900は、さらに、筐体内に備えられている、第1レンズアレイ902Rと、第2レンズアレイ902Gと、第3レンズアレイ902Bと、第1光変調装置904Rと、第2光変調装置904Gと、第3光変調装置904Bと、投射装置908と、を有している。第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bは、例えば、透過型の液晶ライトバルブである。投射装置908は、例えば、投射レンズである。
【0080】
赤色光源100Rから出射された光は、第1レンズアレイ902Rに入射する。赤色光源100Rから出射された光は、第1レンズアレイ902Rによって、集光され、例えば重畳されることができる。
【0081】
第1レンズアレイ902Rによって集光された光は、第1光変調装置904Rに入射する。第1光変調装置904Rは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第1光変調装置904Rによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0082】
緑色光源100Gから出射された光は、第2レンズアレイ902Gに入射する。緑色光源100Gから出射された光は、第2レンズアレイ902Gによって、集光され、例えば重畳されることができる。
【0083】
第2レンズアレイ902Gによって集光された光は、第2光変調装置904Gに入射する。第2光変調装置904Gは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第2光変調装置904Gによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0084】
青色光源100Bから出射された光は、第3レンズアレイ902Bに入射する。青色光源100Bから出射された光は、第3レンズアレイ902Bによって、集光され、例えば重畳されることができる。
【0085】
第3レンズアレイ902Bによって集光された光は、第3光変調装置904Bに入射する。第3光変調装置904Bは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第3光変調装置904Bによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0086】
また、プロジェクター900は、第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bから出射された光を合成して投射装置908に導くクロスダイクロイックプリズム906を有することができる。
【0087】
第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム906に入射する。クロスダイクロイックプリズム906は、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は、投射装置908によりスクリーン910上に投射され、拡大された画像が表示される。
【0088】
なお、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bは、発光装置100を映像の画素として画像情報に応じて制御することで、第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bを用いずに、直接的に映像を形成してもよい。そして、投射装置908は、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bによって形成された映像を、拡大してスクリーン910に投射してもよい。
【0089】
また、上記の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micro Mirror Device)が挙げられる。また、投射装置の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0090】
また、光源を、光源からの光をスクリーン上で走査させることにより、表示面に所望の大きさの画像を表示させる画像形成装置である走査手段を有するような走査型の画像表示装置の光源装置にも適用することが可能である。
【0091】
本発明に係る発光装置の用途は、上述した実施形態に限定されず、プロジェクター以外にも用いることが可能である。プロジェクター以外の用途には、例えば、屋内外の照明、ディスプレイのバックライト、レーザープリンター、スキャナー、車載用ライト、光を用いるセンシング機器、通信機器等の光源がある。
【0092】
5. 実験例
以下に実験例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実験例によって何ら限定されるものではない。
【0093】
5.1. 第1実験
5.1.1. 試料の作製
RF-MBE法を用いてGaN柱状結晶上へのInGaN結晶の成長実験を行った。具体的には、In、Ga、Nを30分間同時に供給して、GaN柱状結晶上にInGaN結晶を成長させ、さらに、Ga、Nを5分間同時に供給してInGaN結晶上にGaN結晶を成長させて、ナノコラムを形成した。
【0094】
5.1.2. SEM観察
上記のように作成した試料に対して、SEM(Scanning Electron Microscope)を行った。
図12~
図14は、同一基板の面内において、1.7mmずつ離れた位置A,B,Cの3箇所におけるナノコラム上部の鳥瞰SEM像である。
【0095】
図12に示すように、位置Aでは、ナノコラムの頂上部の形状は、六角錐状であった。
図14に示すように、位置Cでは、ナノコラムの中央部にInGaNが凝集して微結晶が析出した。
図13に示すように、位置Bでは、位置Aのナノコラムと、位置Cでのナノコラムとが混在した様子となった。位置A,B,Cの成長条件の違いは、主に成長温度であ
り、RF-MBE装置の特性上、位置Bの温度は、位置Aの温度よりも低く、位置Cの温度は、位置Bの温度よりも低いことが経験上わかっている。
【0096】
図15は、位置Cよりさらに1.7mm離れた位置DでのSEM像である。
図16は、
図15の破線で囲んだ領域の拡大図である。位置Dは、位置Cよりも温度が低い位置である。
図15および
図16に示すように、位置Dでは、Inがドロップレットして析出するという異常成長が確認された。そのため、位置Dでは、ナノコラムが結合して不均一な形状となり、波長などが変化して不均質な発光特性となる。
【0097】
一方、位置Cでは、ナノコラムの中央部にInGaNが凝集したものの、Inの析出が確認されなかった。これは、InGaNの成長させた後のGaN成長時や降温時などに、Inが除去されたためだと考えられる。
【0098】
図12~
図16より、InGaNの成長温度が低いほど、Inの蒸発が抑制されたと考えられ、位置A,B,C,Dにおいて、InGaNのV族とIII族との表面滞在量の比率が異なるものとなったと考えられる。
【0099】
GaNのMBE法による成長においては、表面のGaNのV族とIII族との滞在量の比率によって表面モホロジーが大きく変わることが知られている。また、Nに対してGaを過剰としたGa過剰条件を用いて、結晶表面を2原子層のGaで覆われた状態にすることで、原料のマイグレーションが促進され、原子層レベルで平坦な膜が得られることが知られている。
【0100】
本実験におけるInGaNの成長においても、Inがマイグレーションして、歪みエネルギーが最小となるように結晶が成長した結果、ナノコラムの中央部においてInGaN結晶の凝集が行ったと考えられる。
【0101】
5.1.3. PL特性の評価
上記の試料に対して、室温でPL(Photoluminescence)特性を評価した。波長405nmのInGaNレーザーを励起光源とした。
図17は、位置A,B,CにおけるPL特性の結果を示すグラフである。
【0102】
図17に示すように、位置Cでは、位置A,Bに比べて、発光強度の半値幅が小さく、出射される光の波長のばらつきが小さかった。これにより、ナノコラムの中央部においてInGaN結晶の凝集が起こると、純色性の高い光を出射できることがわかった。
【0103】
結晶中に取り込まれるInの割合は、成長面に依存するため、位置Aのようにファセット面にもInGaNが成長して、ナノコラムの形状が六角錐状の形状になった場合には、ナノコラムの平面方向全体にInが分布して、発光強度の半値幅が大きくなったと考えられる。一方、位置Cのように、InGaNが凝集する場合は、InGaNはほぼc軸方向の成長となったために、Inがナノコラムの平面方向全体に分布することが抑えられ、発光強度の半値幅が小さくなったと考えられる。
【0104】
5.2. 第2実験
上記の第1実験においてInGaNを成長させた代わりに、InGaNとGaNとを交互に成長させてナノコラムを形成した。具体的は、InGaNを3.5分間成長させた後に、GaNを2.0分間成長させることを6回繰り返した。
図18は、このように作製した試料のSEM像である。
【0105】
図18に示すように、過剰なInの析出による10μmオーダーの異常成長は、確認さ
れなかった。したがって、InGaNとGaNとを交互に成長させることにより、過剰なInの析出による異常成長を抑えられることがわかった。なお、
図18において、1μm程度の大きさの異常成長は散見されたが、過剰なInの析出に起因するものであるとは限らず、ナノコラムを形成する前のプロセスや、成長装置の環境によって発生する可能性があるものである。
【0106】
第1実験において、Inの析出による異常成長が確認されなかった位置Cを基板全面に適用することは容易ではない。しかし、第2実験では、過剰なInがドロップレットとして析出して異常成長を始める前に、GaNによって析出したInを除去することができ、基板のより広い範囲で異常成長を抑えることができると考えられる。
【0107】
本発明は、本願に記載の特徴や効果を有する範囲で一部の構成を省略したり、各実施形態や変形例を組み合わせたりしてもよい。
【0108】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0109】
10…基体、20…積層体、22…バッファー層、24…基部、26…凸部、30…柱状部、32…第1半導体層、32a…第1接触領域、34…発光層、34a…第1部分、34b…第2部分、34b1…第1領域、34b2…第2領域、35a…第1層、35b…第2層、36…第2半導体層、36a…第2接触領域、38…第3半導体層、40…第1電極、42…第2電極、50…マスク層、100…発光装置、100R…赤色光源、100G…緑色光源、100B…青色光源、200,210,300…発光装置、900…プロジェクター、902R…第1レンズアレイ、902G…第2レンズアレイ、902B…第3レンズアレイ、904R…第1光変調装置、904G…第2光変調装置、904B…第3光変調装置、906…クロスダイクロイックプリズム、908…投射装置