(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20220715BHJP
【FI】
G02B7/02 F
G02B7/02 B
G02B7/02 A
(21)【出願番号】P 2020007685
(22)【出願日】2020-01-21
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000147350
【氏名又は名称】株式会社精工技研
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】平尾 朋三
(72)【発明者】
【氏名】飯島 良
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-104100(JP,A)
【文献】特開2009-053528(JP,A)
【文献】特開2012-208279(JP,A)
【文献】特開2013-205808(JP,A)
【文献】特開2011-048303(JP,A)
【文献】国際公開第2009/128519(WO,A1)
【文献】特開2017-156627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージセンサと、硬化性樹脂で形成されたレンズ、弾性体で形成された絞り部材、および、中空構造のホルダと、を備えたレンズユニットであって、
前記ホルダには、光軸に沿った一方の側の第1端から前記絞り部材と前記レンズがこの順に配置され、光軸に沿った他方の側の第2端に前記イメージセンサが配置され、
前記レンズは、中央に形成された曲面部と、曲面部の外側に形成されたフランジ部と、を有し、
前記フランジ部は、
光軸に直交し、前記イメージセンサ側に形成される第1平坦面と、
光軸に直交し、前記絞り部材側に形成される第2平坦面と、
第1平坦面よりも外側に形成され、第1平坦面から前記イメージセンサの側に傾斜したレンズ傾斜面と、を有し、
前記ホルダは、前記レンズの第1平坦面と当接する第1当接面と、第1当接面よりも外側に形成され、第1当接面から前記イメージセンサの側に傾斜したホルダ傾斜面と、を有し、
前記絞り部材は、前記レンズの第2平坦面と当接する第2当接面を有し、
第2当接面の範囲は、光軸方向から見て第1当接面の範囲と重複する重複範囲を有し、
前記レンズの第1平坦面から前記レンズの焦点面までの距離と、前記ホルダの第1当接面から前記イメージセンサの結像面までの距離とが等しく、
前記ホルダ傾斜面と前記レンズ傾斜面との間には全周に亘って第1空隙が設けられ、
前記レンズの外周面と前記ホルダの内面との間には全周に亘って第2空隙が設けられている、
レンズユニット。
【請求項2】
光軸を含む断面において、前記レンズ傾斜面および前記ホルダ傾斜面の光軸に対する傾斜角度は、0度から30度の範囲内である、
請求項1に記載されたレンズユニット。
【請求項3】
光軸方向から見て、前記第2空隙は、前記レンズの外径の5~10%の範囲内である、
請求項1又は2に記載されたレンズユニット。
【請求項4】
前記レンズの線膨張係数は、前記ホルダの線膨張係数よりも大きい、
請求項1から3のいずれか一項に記載されたレンズユニット。
【請求項5】
前記絞り部材は、外側の周縁に設けられた接着剤によって前記ホルダの内面に固定され、
前記ホルダ傾斜面の外側において、前記ホルダと前記レンズは、光軸方向の第3空隙が設けられている、
請求項1から
4のいずれか一項に記載されたレンズユニット。
【請求項6】
前記重複範囲よりも外側において、光軸方向で前記フランジ部と前記絞り部材との間に第4空隙が設けられている、
請求項1から
5のいずれか一項に記載されたレンズユニット。
【請求項7】
前記ホルダの第2端には、前記イメージセンサを位置決めするための段差が形成されている、
請求項1から
6のいずれか一項に記載されたレンズユニット。
【請求項8】
前記レンズの曲面部は、非球面を有する、
請求項1から
7のいずれか一項に記載されたレンズユニット。
【請求項9】
前記ホルダには、前記レンズと前記イメージセンサの間の気体を退避させるための貫通孔が形成されている、
請求項1から
8のいずれか一項に記載されたレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズユニットに関し、特に、ホルダ内に光学部品が収容されたレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばスマートフォン、携帯電話、又は、タブレット端末等の比較的小型の電子機器に搭載される小型のレンズユニットが知られている。かかるレンズユニットは、効率的な実装のために電子機器の回路基板に配置されている(例えば、特許文献1)。
特許文献1に記載された撮像装置(レンズユニット)では、撮像レンズによる結像面側に突出した突出部を有するレンズ枠と、内周面にレンズ枠の雄ネジと螺合する雌ネジを有する鏡筒とを有し、雄ネジと雌ネジを介してレンズ枠を光軸方向に直進移動させて撮像レンズの焦点調整が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レンズユニットを回路基板に配置するために、回路基板上に配置されるべき他の電子コンポーネントとともに半田リフロー工程を経る必要がある。半田リフロー工程では、例えば270℃の高温環境下に晒されることになる。そのため、より小型の電子機器に搭載するためには、レンズユニット自体の小型化を図るとともに、半田リフロー工程におけるレンズユニットの各部の熱膨張による光学性能の変化を極力抑制することが要請される。
【0005】
しかし、上述した従来のレンズユニットのように、ネジによって焦点調整を行う場合、半田リフロー工程前に適切な焦点調整を行ったとしても高温環境下において例えばネジが光軸に対して傾斜する等によって撮像レンズの光軸方向の位置が変化してしまうことがある。いったん光軸方向の位置が変化してしまうと室温環境に戻った後にレンズユニット各部の形状が元に戻らないため、半田リフロー工程の後に光学性能が劣化する場合がある。さらに、ネジによる焦点調整機構を設ける構成の場合、レンズユニットのさらなる小型を図る場合にネジ切りの微細加工に限界があるとともに、ネジ調整機構を外側に設けている分、レンズユニットの小型化を図ることが困難である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、レンズユニットの小型化を図るとともに、熱膨張の前後での光学性能の劣化を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、イメージセンサと、硬化性樹脂で形成されたレンズ、弾性体で形成された絞り部材、および、中空構造のホルダと、を備えたレンズユニットである。
前記ホルダには、光軸に沿った一方の側の第1端から前記絞り部材と前記レンズがこの順に配置され、光軸に沿った他方の側の第2端に前記イメージセンサが配置される。前記レンズは、中央に形成された曲面部と、曲面部の外側に形成されたフランジ部と、を有する。前記フランジ部は、光軸に直交し、前記イメージセンサ側に形成される第1平坦面と、光軸に直交し、前記絞り部材側に形成される第2平坦面と、第1平坦面よりも外側に形成され、第1平坦面から前記イメージセンサの側に傾斜したレンズ傾斜面と、を有する。前記ホルダは、前記レンズの第1平坦面と当接する第1当接面と、第1当接面よりも外側に形成され、第1当接面から前記イメージセンサの側に傾斜したホルダ傾斜面と、を有する。前記絞り部材は、前記レンズの第2平坦面と当接する第2当接面を有する。第2当接面の範囲は、光軸方向から見て第1当接面の範囲と重複する重複範囲を有する。前記レンズの第1平坦面から前記レンズの焦点面までの距離と、前記ホルダの第1当接面から前記イメージセンサの結像面までの距離とが等しい。前記ホルダ傾斜面と前記レンズ傾斜面との間には全周に亘って第1空隙が設けられるとともに、前記レンズの外周面と前記ホルダの内面との間には全周に亘って第2空隙が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のある態様によれば、レンズユニットの小型化を図ることができ、かつ熱膨張の前後での光学性能の劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態のレンズユニットの平面図である。
【
図3】第1の実施形態のレンズユニットの分解断面図である。
【
図4】第1の実施形態のレンズユニットにおいて、レンズのフランジ部とホルダとの係合関係を説明する断面図である。
【
図5】第1の実施形態のレンズユニットにおいて、レンズのフランジ部周辺の部分を拡大して示す拡大断面図である。
【
図6】
図5において、室温時と熱膨張時の各部の形状の相違を説明する図である。
【
図7】
図5において、レンズユニットの組立時に接着剤がレンズ側に漏出した場合の状態を説明する図である。
【
図8】第2の実施形態のレンズユニットの断面図である。
【
図9】第2の実施形態の変形例に係るレンズユニットの断面図である。
【0010】
以下、
図1~
図7を参照して、第1実施形態のレンズユニット1について説明する。
本実施形態のレンズユニット1は、極めて小型のレンズユニットであり、例えば、全体として実質的に直方体形状をなしている。
図1は、レンズユニット1の光軸Axの物体側(つまり、光が入射する側)から見た場合の平面図である。
物体側から見た場合のレンズユニット1の外形形状は、概ね正方形であり、その一辺の長さは10mm以下、代表的には1~6mm程度である。レンズユニット1の高さ(
図2の縦方向の長さ)は、例えば5mm以下である。
【0011】
図2は、レンズユニット1を、光軸Axを含む面で切断したときの断面図(
図1のA-A断面を示す図)である。
図2では、レンズユニット1を使用する場合に光軸Axが物体に向く側を「物体側」と表記し、その反対側を「像面側」と表記している。この表記は専ら説明の便宜のために行うものであり、本実施形態のレンズユニット1の構造を何ら限定する意図はない。
以下の説明では、光軸Axに沿った方向を「光軸方向」、光軸Axに直交する面に沿った方向(例えば、
図2の紙面上の横方向)を「横方向」と表記することがある。また、光軸Axを含む面で切断したときの断面図において、光軸Axに近い側を「内側」、光軸Axから遠い側を「外側」と表記することがある。
【0012】
図2に示すように、レンズユニット1は、像面側の端部にイメージセンサ2(撮像素子)を備える。イメージセンサ2としては、CMOS,CCD等の固体撮像素子が挙げられる。
本実施形態のレンズユニット1を小型の電子機器に効率的に搭載させるため、レンズユニット1は、他の電子コンポーネントとともに電子機器の回路基板(図示せず)上に配置される。より具体的には、レンズユニット1のイメージセンサ2側の端部が回路基板の基板面に向くように配置され、半田リフロー工程を経て、レンズユニット1が回路基板上に固定される。
【0013】
半田リフロー工程では、リフロー炉において回路基板上の半田を溶融させるために、レンズユニット1は、例えば270℃程度の高温に晒されることになる。仮に、高温環境下においてレンズユニット1の各部の熱膨張の差により大きな歪みが生じたならば、半田リフロー工程の後に室温まで温度が低下した場合でもその歪みが残留し、光学性能に影響を与える。例えば、半田リフロー工程の前に所定の光学性能が達成できていたとしても、半田リフロー工程の後には、当該光学性能が達成できていないことが生じうる。
かかる観点から、本実施形態のレンズユニット1は、以下の目的を実現するように構成されている。
【0014】
(i) 製造完成時点においてレンズの焦点面がイメージセンサの結像面に一致するように構成され、焦点調整を不要とする。それによって、焦点合わせ機構を不要とし、小型化を図る。
(ii) 半田リフロー工程等の高温環境下によって熱膨張が生ずる場合であっても、レンズユニット1の各部に歪みを生じさせず、熱膨張の前後において光学性能(つまり、レンズの焦点面がイメージセンサの結像面に一致すること)に実質的に変化がないようにする。
【0015】
以下、上記(i), (ii)の目的を実現するための本実施形態のレンズユニット1の具体的な構造について説明する。
【0016】
図2に示すように、本実施形態のレンズユニット1は、イメージセンサ2と、硬化性樹脂で形成されたレンズ4、弾性体で形成された絞り部材3、および、中空構造のホルダ5と、を備える。
ホルダ5は、絞り部材3とレンズ4を収容するとともに、所望の光学性能が得られるように、イメージセンサ2に対してレンズ4を所定の位置に配置するために設けられている。ホルダ5には、物体側端部520(第1端の一例)から光軸Axに沿って絞り部材3とレンズ4がこの順に配置され、像面側端部526(第2端の一例)にイメージセンサ2が配置される。
【0017】
図2に示すように、絞り部材3には、光軸Axに沿って物体側から見たときに、レンズ4に向かうにつれて(つまり、
図3の物体側主表面31fから像面側主表面31rに向かうにつれて)、円形の開口3Hの領域の径が小さくなるように、テーパ面322が形成される。テーパ面322によって規定される絞り部材3の開口3Hは、物体側からレンズ4に入射する光の範囲を規制する絞りとして機能する。
絞り部材3は、薄板状の弾性体であり、例えば、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の耐熱性を有する樹脂を用いて一体的に成形される。絞り部材3は、例えばアルミニウム等の金属であってもよい。
【0018】
図3に示すように、絞り部材3の外縁には側壁面31tが形成され、物体側主表面31fと側壁面31tの間には面取り面31cfが形成され、像面側主表面31rと側壁面31tの間には面取り面31crが形成される。
側壁面31tは、後述するホルダ5の内面51よりも僅かに大きく形成されており、側壁面31tがホルダ5の内面51に接するようにして圧入されることで、絞り部材3がホルダ5の収容部5Cに保持される。
絞り部材3の像面側主表面31rの一部は、後述するレンズ4の第2平坦面423と当接する第2当接面323である。
【0019】
図2および
図3に示すように、絞り部材3の面取り面31cfとホルダ5の内面51の間には、接着剤10が充填され、絞り部材3とホルダ5の連結をより強固にする。すなわち、絞り部材3自体が小型であり、側壁面31tとホルダ5の内面51の圧入の締め代を大きく取ることができないため、熱膨張時に絞り部材3がホルダ5から外れることがないように、補強的に接着剤10を使用している。接着剤10の材料は問わないが、例えば、熱硬化性樹脂材料や紫外線硬化性樹脂材料を使用することができる。
図1に示すように、接着剤10は、絞り部材3の外側の周縁に設けられる。
【0020】
なお、
図2に示す例では、絞り部材3の物体側主表面31fをホルダ5の物体側端部520と同一面としているが、その限りではない。絞り部材3の物体側主表面31fは、ホルダ5の物体側端部520よりも物体側に突出していてもよいし、逆に、像面側に凹んでいてもよい。
【0021】
図3に示すように、レンズ4は、中央に形成された曲面部4Rと、曲面部4Rの外側に形成されたフランジ部4Fと、を有する。曲面部4Rは、湾曲面41sを有し、物体の像をイメージセンサ2の結像面2sに結像させる機能を有する。本実施形態のレンズ4は、平面視で円形形状であり、物体側が凸レンズとなっている。フランジ部4Fは、ホルダ5内でレンズ4を位置決めするために設けられている。
曲面部4Rは、球面レンズでも非球面レンズでもよいが、非球面レンズとすることで収差を小さくできる利点がある。また、レンズ4は樹脂レンズであるため、形状の製作自由度が高く、非球面であっても容易に製作することができる。
レンズ4は、例えば、シリコーン系又はエポキシ系等の耐熱性を有する熱硬化性樹脂を用いて一体的に成形されるが、その限りではない。熱硬化性樹脂のほか、紫外線硬化性樹脂等、エネルギーを加えることで硬化する硬化性樹脂であれば、如何なる材料もレンズ4に適用可能である。
【0022】
図3に示すように、フランジ部4Fは、像面側において、湾曲面41sから外側に向かって順に、第1平坦面421と、レンズ傾斜面422と、像面側端面424とを有する。
第1平坦面421は、光軸Axに直交し、かつイメージセンサ2側に形成された面であり、後述するホルダ5の第1当接面521と当接する。第1平坦面421がホルダ5の第1当接面521と当接することで、レンズ4の焦点面が規定される。
レンズ傾斜面422は、第1平坦面421よりも外側に形成され、第1平坦面421からイメージセンサ2の側に向かって像面側端面424まで傾斜する面である。
像面側端面424は、レンズ傾斜面422よりも外側に形成される。
図3では、像面側端面424は、光軸Axに直交する平坦面としているが、その限りではない。後述するが、像面側端面424は、好ましくは、レンズユニット1が組み付けられた状態でホルダ5のフランジ部収容底面524(後述する)との間で空隙が設けられればよく、平坦面でなくてもよい。
【0023】
フランジ部4Fは、物体側において、湾曲面41sから外側に向かって第2平坦面423を有する。すなわち、第2平坦面423は、光軸Axに直交し、絞り部材3側に形成される。第2平坦面423は、絞り部材3の像面側主表面31rのうち第2当接面323に当接する。言い換えれば、絞り部材3の像面側主表面31rのうち、フランジ部4Fの第2平坦面423と当接する面が第2当接面323である。
第2平坦面423は、絞り部材3の第2当接面323と当接することで、光軸方向でフランジ部4Fが支持されるようにするために設けられている。
【0024】
図2および
図3に示すように、ホルダ5は中空構造であり、絞り部材3とレンズ4を収容して所定の位置に保持する。ホルダ5の像面側端部526には、イメージセンサ2が接着剤10で取り付けられる。イメージセンサ2をホルダ5に取り付けるための接着剤は限定しないが、例えば、熱硬化性樹脂材料や紫外線硬化性樹脂材料を使用することができる。接着剤がイメージセンサ2の結像面2sに侵入することがないように、高粘度の接着剤を用いることが好ましい。
ホルダ5は、例えば、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の耐熱性を有する樹脂を用いて一体的に成形される。
【0025】
図3に示すように、ホルダ5は、物体側に設けられた収容部5Cと、像面側に設けられたレンズ支持部5Sとを有する。
収容部5Cを光軸Axに直交する平面で切断したときの形断面状は、概ね正方形の外縁である。収容部5C内には、絞り部材3とレンズ4を収容する空間が確保されている。絞り部材3が収容部5Cに収容されるときには、既に述べたように、収容部5Cの内面51に圧入されるとともに、絞り部材3の面取り面31cfと収容部5Cの内面51とが接着剤10により固定される。
後述するが、高温度環境下でのレンズ4とホルダ5が熱膨張量の差により接触することがないように、レンズ4の側壁面4tと、収容部5Cの内面51との間には、空隙(後述する空隙G2)が確保されている。
【0026】
図3に示すように、ホルダ5のレンズ支持部5Sは、第1当接面521と第1ホルダ傾斜面522とを有する。第1当接面521は、レンズ4の第1平坦面421と当接する面である。第1ホルダ傾斜面522は、第1当接面521よりも外側に形成され、第1当接面521からイメージセンサ2の側に向かってフランジ部収容底面524まで傾斜した面である。
ホルダ5のレンズ支持部5Sの内周面には、第2ホルダ傾斜面525が形成されている。第2ホルダ傾斜面525は、光軸方向において物体側に向かうにつれて内側に傾斜した傾斜面となっている。
【0027】
ホルダ5には、レンズ4とイメージセンサ2の間の気体を退避させるための貫通孔5h(2箇所)が形成されている。
図2において、仮にレンズ4とイメージセンサ2に囲われたホルダ5内の空間が密閉された状態であると、高温環境下で内部の空気が膨張してレンズ4及び/又はイメージセンサ2に悪影響を及ぼす可能性がある。
図3に示すように、貫通孔5hは、第2ホルダ傾斜面525とホルダ5の外面を連通する。貫通孔5hの位置は、
図3に示した位置に限定されない。例えば、像面側端部526の一部を切り欠くことで貫通孔を形成することもできる。
【0028】
次に、レンズ4と絞り部材3とイメージセンサ2をホルダ5に収容(固定)するときの組立方法について、
図2~
図4を参照して説明する。なお、
図4(a)はレンズ4のフランジ部4Fの断面の一部を示し、
図4(b)はホルダ5の収容部5Cの断面の一部を示す。
図4(c)は、レンズ4のフランジ部4Fが収容部5Cに収容された状態を示す。
【0029】
先ず、
図3において、ホルダ5の収容部5Cに対して物体側からレンズ4を挿入して、ホルダ5のレンズ支持部5Sに載置すると、フランジ部4Fの第1平坦面421がホルダ5の第1当接面521に当接する。それによって、レンズ4の像面側の変位が規制される。この状態では、
図4(c)に示すように、フランジ部4Fのレンズ傾斜面422と、ホルダ5の第1ホルダ傾斜面522との間には、僅かな空隙G1が設けられる。限定しない例としては、レンズ傾斜面422又は第1ホルダ傾斜面522の法線方向の空隙G1が5~15μm程度である。
【0030】
レンズ傾斜面422の光軸Axに対する傾斜角度θ1(
図4(a)参照)と、第1ホルダ傾斜面522の光軸Axに対する傾斜角度θ2(
図4(b)参照)とは、ともに0度から30度の範囲内であることが好ましい。傾斜角度θ1又はθ2が30度より大きくなると、ホルダ5の収容部5Cに対して物体側からレンズ4を挿入したときに、レンズ4がホルダ5の中心から偏心して配置される場合がある。
なお、傾斜角度θ1と傾斜角度θ2は同じ値でなくても構わない。
【0031】
次いで、レンズ4が挿入済みのホルダ5の収容部5Cに対して、物体側から絞り部材3を圧入する。絞り部材3の圧入は、絞り部材3の第2当接面323がレンズ4の第2平坦面423に当接するまで、絞り部材3の物体側主表面31fを押圧することにより行われる。したがって、絞り部材3の圧入が完了した状態では、フランジ部4Fの第1平坦面421がホルダ5の第1当接面521に当接するとともに、フランジ部4Fの第2平坦面423が絞り部材3の第2当接面323に当接する。つまり、レンズ4は、像面側の第1平坦面421と物体側の第2平坦面423を介して、絞り部材3とホルダ5に挟持された状態で固定される。
圧入後、絞り部材3の面取り面31cfとホルダ5の内面51の間に接着剤10を充填して硬化させる。
【0032】
次いで、接着剤を用いて、イメージセンサ2の結像面2sがホルダ5の像面側端部526に接するようにして、イメージセンサ2をホルダ5に取り付ける。ホルダ5の像面側端部526の外縁には段差527が形成されているため、いったんイメージセンサ2が像面側端部526に取り付けられた後は、光軸Axに直交する平面上でイメージセンサ2が高い精度で位置決めされる。
以上説明したようにして、レンズ4、絞り部材3、および、イメージセンサ2がホルダ5に固定されると、
図2に示したようにレンズユニット1が完成する。
【0033】
レンズユニット1が完成した状態では、レンズ4の第1平坦面421からレンズ4の焦点面までの距離が、ホルダ5の第1当接面521からイメージセンサ2の結像面2sまでの距離5Sh(
図2参照)と等しくなっている。言い換えれば、レンズ4の第1平坦面421がホルダ5の第1当接面521に当接した状態で、レンズ4の焦点面がイメージセンサ2の結像面2sと一致するように、像面側端部526を基準とした第1当接面521の光軸方向の高さが決定されている。そのため、本実施形態のレンズユニット1では、レンズの焦点合わせ機構は不要である。
【0034】
次に、
図5~
図7を参照して、本実施形態のレンズユニット1の特徴点について、さらに詳しく説明する。
図5~
図7の各図とも、レンズ4のフランジ部4Fの周辺の部分の断面を拡大して示してある。
図5を参照すると、レンズ4のフランジ部4Fの第1平坦面421がホルダ5の第1当接面521に当接したときの当接面範囲R1が示される。当接面範囲R1は、
図5において位置P11と位置P12により画定される範囲である。このとき、
図4(c)においても示したように、レンズ4のレンズ傾斜面422と、ホルダ5の第1ホルダ傾斜面522との間には、全周に亘って空隙G1(第1空隙の一例)が設けられている。
【0035】
空隙G1を設けている理由は以下のとおりである。
先ず、仮に、レンズ傾斜面422と第1ホルダ傾斜面522の間に空隙がないとしたならば、各傾斜面の傾斜角度のばらつきによっては、組立時にレンズ4をホルダ5のレンズ支持部5Sに載置した状態で、レンズ傾斜面422が第1ホルダ傾斜面522に部分的に干渉する場合がある。この場合、第1平坦面421は光軸方向に直交する平面上から外れ、フランジ部4Fの第1平坦面421が第1当接面521に少なくとも部分的に当接しない状態が生じ得る。この状態では、レンズ4の所期の位置決めがなされていないため、焦点面のずれ等、レンズ性能に悪影響がある。
第1平坦面421が第1当接面521に少なくとも部分的に当接しない状態であっても、絞り部材3を圧入する際の像面側への押圧力によって、フランジ部4Fの第1平坦面421が当接面範囲R1において第1当接面521に当接することはあり得る。しかし、その場合には、レンズ4に大きな歪みが生じる可能性がある。
よって、レンズ4の焦点を正確に合わせつつ、レンズ4に歪みが生じないようにするために、空隙G1を設けている。
【0036】
図5では、絞り部材3の像面側主表面31rにおいて、レンズ4のフランジ部4Fの第2平坦面423と当接する第2当接面323の範囲として、当接面範囲R2が示される。当接面範囲R2は、
図5において位置P21と位置P22により画定される範囲である。
本実施形態のレンズユニット1では、当接面範囲R2は、光軸方向から見て当接面範囲R1と重複する重複範囲ROを有する。そのため、絞り部材3のホルダ5に対する圧入のために、絞り部材3の物体側主表面31fから像面側に押圧すると、重複範囲ROに光軸方向の力が加わり、第1平坦面421と第1当接面521の面接触、および、第2平坦面423と第2当接面323の面接触が確実になされた状態で、レンズ4が絞り部材3とホルダ5に挟持される。それにより、ホルダ5の収容部5C内で、所望の光学性能が得られる位置にレンズ4を配置することができる。重複範囲ROにおいてレンズ4を絞り部材3とホルダ5の間で拘束するため、半田リフロー工程の前後でレンズ4の光学性能の基準となる位置が保たれる。
なお、絞り部材3の押圧中に上記面接触を確実に行う観点から、重複範囲ROは、当接面範囲R1を基準として50%以上であることが好ましい。
【0037】
次に、
図6を参照して、レンズ4のフランジ部4Fの周辺の部分において、室温時と半田リフロー工程での熱膨張時での各部の形状変化について説明する。
【0038】
実施形態のレンズユニット1では、半田リフロー工程の高温環境に晒される前後でレンズ4に大きな応力が掛からないようにしている。高温環境下でレンズ4に大きな応力が掛かることでレンズ4が変形した場合、半田リフロー工程の後に、レンズ4が半田リフロー工程前の形状に復帰せず、所期の光学性能が得られないためである。
仮に、ホルダ5の線膨張係数がレンズ4より大きいとしたならば、高温環境下でのホルダ5の熱膨張によってレンズ4が物体側に押し上げるように作用し、レンズ4に大きな負荷が掛かる。そこで、ホルダ5の線膨張係数をレンズ4の線膨張係数よりも小さいものにすること好ましい(すなわち、レンズ4の線膨張係数>ホルダ5の線膨張係数の関係)。ここで、レンズ4の材料として使用される透明樹脂材料は、例えば60~100×10-6/K(60~100ppm)等の線膨張係数が高い材料であるが、ホルダ5の材料としては、より低い線膨張係数の樹脂材料を使用することで上記関係が達成される。
【0039】
図6では、室温時のレンズ4の外形を点線(
図5のレンズ4の実線に相当)で示し、熱膨張時のレンズ4の外形を実線で示している。
本実施形態のレンズユニット1では、絞り部材3の一辺、および、レンズ4の径はそれぞれ数mmであるのに対して、厚み1mm以下であることから、熱膨張時の形状変化の量(膨張量)は、厚み方向(つまり、光軸方向)と比較して横方向(つまり、光軸Axに直交する方向)が支配的である。
【0040】
図5に示したように、熱膨張前の状態では、レンズ4のフランジ部4Fの側壁面4tとホルダ5の内面51の間で、全周に亘って空隙G2(第2空隙の一例)が設けられている。空隙G2は、レンズ4が熱膨張したときに、レンズ4の側壁面4tがホルダ5の内面51に干渉して歪みが生ずることがないように設定される。干渉が生じないための空隙G2の横方向の大きさは、レンズ4とホルダ5に使用される樹脂材量によるが、例えば、光軸方向から見て、空隙G2は、レンズ4の外径の5~10%の範囲内であることが好ましい。空隙G2がレンズ4の外径の5%以上あればレンズ4とホルダ5の干渉が生じず、10%以下であればレンズユニット1全体を小型化できる点で好ましい。
【0041】
なお、レンズ4の熱膨張量がホルダ5の熱膨張量より大きい場合、
図6に示すように、空隙G1(レンズ傾斜面422と第1ホルダ傾斜面522の間の空隙;
図5参照)は、室温の場合よりも高温環境下においてさらに拡大することから、高温環境下でレンズ4のレンズ傾斜面422に応力は生じない。
【0042】
図5に示したように、本実施形態のレンズユニット1では、レンズ4を絞り部材3とホルダ5で挟持する重複範囲ROが、レンズ4のフランジ部4Fのうち光軸Axに近い側(つまり、内側)に設けられている。このことは、高温環境下において絞り部材3がホルダ5から外れ難くする点で有利である。その理由は、以下のとおりである。
本実施形態のレンズユニット1では、レンズ4は、
図5の重複範囲ROにおいて絞り部材3とホルダ5に挟持されて拘束されるが、それ以外の部分は自由な状態にある。また、絞り部材3は、その周囲に亘ってホルダ5に圧入されることで拘束されているが、圧入されている位置以外の部分は自由な状態にある。ここで、
図5に示すように、レンズユニット1では、レンズ4の第1平坦面421および第2平坦面423のうち重複範囲ROに相当する位置(拘束位置)と、絞り部材3とホルダ5の圧入位置(拘束位置)とが、比較的離れている。そのため、レンズ4および絞り部材3の熱膨張による変形が、比較的離れた2点の拘束位置の間で生じる(つまり、変形がその間で吸収される)ことから、絞り部材3とホルダ5の圧入位置に大きな負荷が掛からない構造となっている。
【0043】
ホルダ5の線膨張係数をレンズ4の線膨張係数よりも低くする場合であっても、ホルダ5とレンズ4の線膨張係数の差は80ppm以下であることが好ましい。ホルダ5とレンズ4の線膨張係数の差が80ppmより大きい場合には、ホルダ5とレンズ4の高温環境下での膨張量の差が大きく、レンズ4に歪みが生じやすくなるためである。
他方、前述したように、レンズ4および絞り部材3の熱膨張による変形が2点の拘束位置の間で生じ、その間は、レンズ4と絞り部材3は自由な状態である。そのため、レンズ4と絞り部材3の高温環境下での熱膨張量の差は少ないことが好ましい。レンズ4と絞り部材3の熱膨張量の差を少なくすることで、高温環境下では両者が少しずつ変形し、その後の室温下では両者が元の位置に戻りやすくなる。例えば、レンズ4と絞り部材3の線膨張係数の差は10ppm以下であることが好ましい。
【0044】
図5に示すように、本実施形態のレンズユニット1では、レンズ4のフランジ部4Fの第2平坦面423が、絞り部材3の像面側主表面31rの一部である第2当接面323と当接する構造となっている。すなわち、フランジ部4Fの物体側には傾斜面を設けていないため、レンズユニット1の高さ(つまり、光軸方向の長さ)を低くすることができ、レンズユニット1をより小型にすることができる。
【0045】
図7に示すように、本実施形態のレンズユニット1では、第1ホルダ傾斜面522の外側において、ホルダ5とレンズ4は、光軸方向の空隙G3(第3空隙の一例)が設けられていることが好ましい。より具体的には、レンズ4のフランジ部4Fの像面側端面424と、ホルダ5のフランジ部収容底面524との間には、空隙G3が設けられていることが好ましい。
空隙G3を設けることが好ましい理由は、以下のとおりである。
【0046】
前述したように、絞り部材3は、ホルダ5の内面51に圧入されるとともに、絞り部材3の面取り面31cf(
図3参照)とホルダ5の内面51とが接着剤10により固定される。このとき、接着剤10よりも像面側において絞り部材3がホルダ5に圧入されているため、接着剤10がレンズ4側に侵入することは通常はない。しかし、仮に接着剤10がレンズ4側に侵入した場合であっても、レンズ4の曲面部4Rの光学機能の影響を与えることがないようにするために、空隙G3を設けている。
図7では、接着剤10がレンズ4側に侵入した場合を示しているが、このような場合であっても空隙G3が設けられているため、接着剤10が空隙G3に収容されて、曲面部4Rの湾曲面41sまで到達することはない。ここで、仮に空隙G3がないとしたならば、レンズ4側に侵入してきた接着剤10が毛細管現象によりレンズ4とホルダ5の間から接着剤10が曲面部4Rに到達する可能性がある。このような可能性が排除するために、空隙G3を設けることが好ましい。
【0047】
以上、本実施形態のレンズユニット1について詳述したが、レンズユニット1の主要な特徴をまとめると、以下のとおりである。
(1)本実施形態のレンズユニット1では、レンズ4の第1平坦面421がホルダ5の第1当接面521に当接した状態で、レンズ4の焦点面がイメージセンサ2の結像面2sと一致するように、像面側端部526を基準とした第1当接面521の光軸方向の高さが決定されている。そのため、レンズの焦点合わせ機構が不要であり、レンズユニット1を小型とすることができる。
【0048】
(2)本実施形態のレンズユニット1では、
図5に示したように、当接面範囲R2が光軸方向から見て当接面範囲R1と重複する重複範囲ROを有するとともに、フランジ部4Fのレンズ傾斜面422とホルダ5の第1ホルダ傾斜面522の間に空隙G1が形成される。そのため、絞り部材3をホルダ5に圧入するときには、重複範囲ROに光軸方向の力が加わり、第1平坦面421と第1当接面521の面接触、および、第2平坦面423と第2当接面323の面接触が確実になされた状態で、レンズ4が絞り部材3とホルダ5に挟持される。そのため、レンズユニット1の製造完成時点において、レンズ4の焦点面がイメージセンサ2の結像面2sと正確に一致し、所望の光学性能が得ることができる。
また、本実施形態のレンズユニット1では、重複範囲ROにおいてレンズ4が絞り部材3とホルダ5によって挟持されているため、温度環境に関わらず焦点面が変化し難い構造である。
【0049】
(3)本実施形態のレンズユニット1を半田リフロー工程により電子機器の回路基板上に固定する場合、レンズユニット1は高温環境下に晒される。高温環境下ではレンズユニット1の各部が熱膨張するが、膨張量が支配的な横方向において、レンズ4のフランジ部4Fの側壁面4tと、ホルダ5の内面51の間に空隙G2が形成されているため、レンズ4の側壁面4tがホルダ5の内面51に干渉しない。
レンズ4は、重複範囲RO(
図5参照)において絞り部材3とホルダ5により拘束されているため、高温環境下ではレンズ4が特に横方向に膨張することにより、重複範囲ROを支点としてホルダ5の収容部5Cが外側に反るようにして変形する。このとき、レンズ4は自由状態であり、絞り部材3はホルダ5との圧入位置で拘束されているに過ぎないため、レンズ4と弾性体である絞り部材3は比較的自由に移動可能な状態にある。そのため、高温環境下での各部に掛かる応力は高くないことから、高温環境下から室温に復帰したときには、レンズユニット1の各部は組立時の元の位置に戻り、歪みが生じない。
【0050】
次に、
図8および
図9を参照して、第2の実施形態のレンズユニットについて説明する。
図8は、第2の実施形態のレンズユニット1Aの断面図であり、
図2と同様に、レンズユニット1Aを、光軸Axを含む面で切断したときの断面を示している。なお、レンズユニット1と同一の構成要素については同一の符号を付している。
本実施形態のレンズユニット1Aのレンズ4Aは、第1の実施形態のレンズ4と異なり、曲面部4Raが物体側に対して凹面を有する構造となっている。
本実施形態のレンズユニット1Aのレンズ4A、ホルダ5A、および、イメージセンサ2のホルダ5Aに対する取り付け方法は、第1の実施形態のレンズユニット1と同じである。すなわち、レンズ4Aは、光軸Axに沿って絞り部材3とホルダ5Aに挟持された状態となっている。
図8には、レンズ4Aのフランジ部4Faの像面側平坦面がホルダ5Aの当接面に当接したときの当接面範囲R1(位置P11と位置P12により画定される範囲)と、レンズ4Aのフランジ部4Faの物体側平坦面が絞り部材3の当接面に当接したときの当接面範囲R2(位置P21と位置P22により画定される範囲)とが示される。レンズユニット1Aでは、当接面範囲R2が当接面範囲R1に対して完全に重複した状態となっている。そのため、絞り部材3を圧入するときの平坦面と当接面同士の面接触が確実になされた状態で、レンズ4Aが絞り部材3とホルダ5Aに挟持される。それにより、ホルダ5Aの収容部内で、所望の光学性能が得られる位置にレンズ4Aを配置することができる。
【0051】
次に、第2の実施形態の変形例に係るレンズユニット1Bについて、
図9を参照して説明する。
図9は、第2の実施形態の変形例に係るレンズユニット1Bの断面図であり、
図2と同様に、レンズユニット1Bを、光軸Axを含む面で切断したときの断面を示している。
この変形例のレンズユニット1Bがレンズユニット1A(
図8参照)と異なるのは、レンズ形状である。レンズユニット1Bのレンズ4Bのフランジ部4Fbは、フランジ部4Faと比較して、物体側の面において外側に窪み425が形成され、それによってフランジ部4Fbと絞り部材3との間に空隙G4(第4空隙の一例)が設けられている。空隙G4を設けることで、レンズ4の物体側への移動自由度が高くなるため、高温環境下においてレンズ4Bに生ずる応力を低下させることができる。
レンズユニット1Bでは、空隙G4を設けることに伴って
図8のレンズユニット1Aよりも当接面範囲R2が狭まっている。このとき、前述したように、重複範囲ROは、当接面範囲R1を基準として50%以上であることが好ましい。
【0052】
図9に示す例では、レンズ4Bのフランジ部4Fbに窪み425を形成することで空隙G4を設けているが、その限りではない。フランジ部4Fbの物体側の表面を平坦面とする代わりに、絞り部材3の像面側主表面に窪みを形成することで空隙G4を設けてもよい。あるいは、フランジ部4Fbの物体側の表面、および、絞り部材3の像面側主表面の両方に窪みを形成することで空隙G4を設けてもよい。
【0053】
図9では、フランジ部4Fbの物体側の表面に段差を付けることで空隙G4を設ける例を示したが、その限りではない。すなわち、フランジ部4Fbに形成する窪みは、空隙G4が設けられる限り如何なる形状でもよく、例えば、テーパ形状であってもよいし、湾曲形状であってもよい。絞り部材3の像面側主表面に窪みを形成する場合も同様である。
【0054】
以上、本発明のレンズユニットの実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。
例えば、第2の実施形態の変形例で述べた技術的特徴(つまり、レンズのフランジ部の物体側の表面、及び/又は、絞り部材の像面側主表面に窪みを形成すること)は、第1の実施形態のレンズユニット1に適用することができる。
【0055】
上述した実施形態のレンズユニット1は直方体形状であるが、本発明は、如何なる外形形状のレンズユニットに対しても適用することができる。例えば、レンズユニットの外形形状を実質的に円筒形状とすることもできる。
【符号の説明】
【0056】
1,1A,1B…レンズユニット
2…イメージセンサ
2s…結像面
3…絞り部材
3H…開口
31f…物体側主表面
31r…像面側主表面
31cf,31cr…面取り面
31t…側壁面
322…テーパ面
323…第2当接面
4,4A,4B…レンズ
4t…側壁面
4R,4Ra…曲面部
41s…湾曲面
4F…フランジ部
421…第1平坦面
422…レンズ傾斜面
423…第2平坦面
424…像面側端面
425…窪み
5,5A…ホルダ
5C…収容部
5S…レンズ支持部
5h…貫通孔
51…内面
520…物体側端部
521…第1当接面
522…第1ホルダ傾斜面
524…フランジ部収容底面
525…第2ホルダ傾斜面
526…像面側端部
527…段差
10…接着剤
Ax…光軸
G1~G4…空隙
P11,P12,P21,P22…位置
R1,R2…当接面範囲
RO…重複範囲