(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】仮囲いパネル用の下地材ユニット
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20220715BHJP
【FI】
E04G21/32 B
(21)【出願番号】P 2020175718
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】391046610
【氏名又は名称】日本セイフティー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519178157
【氏名又は名称】株式会社アンドシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】中山 慎一
(72)【発明者】
【氏名】大倉 龍一
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3053769(JP,U)
【文献】特開2002-309779(JP,A)
【文献】特開平08-254019(JP,A)
【文献】特開2019-157531(JP,A)
【文献】国際公開第2010/132922(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮囲いパネルを支持するためそのパネルの背面に設置される、単管の長さを所要長さに整えて形成し
た縦地、つなぎ、及びひかえを、単管で形成した杭と横地にクランプを介して結合し、仮囲いパネルの支持に用いる下地材において、
前記縦地の上部に設けた前記ひかえの上端部を連結するひかえ連結部と、
前記ひかえの下部に設けて前記つなぎの
後部を連結するつなぎ連結部と、
前記縦地の下部において縦地の長さ方向に直交し且つ後方へ向けて突出したつなぎ固定用の下部ブラケットと、この下部ブラケットが有する、楔部材で押付けられて前記つなぎを支持する支持部と、前記楔部材とこの楔部材が装填されて楔作用をさせる楔穴とを備えており、前記つなぎの組立て時の水平姿勢において当該つなぎの手前側の端部を、前記楔部材と支持部の間で前記下部ブラケットに固定する一方、前記つなぎの折畳み時の垂直姿勢において当該つなぎの後部を前記楔部材と支持部の間で固定するようにした二方向固定部とを備え、
組立て時には、側面から見て前記縦地が垂直辺、前記ひかえが斜辺、前記つなぎが底辺となる略直角三角形状を呈するように組立て前記連結部と二方向固定部を固定し、折畳み時には
、前記縦地にひかえが連結されたまま、且つ前記ひかえにつなぎが連結されたままで、前記ひかえとつなぎが縦地と平行に折畳まれて
前記二方向固定部を固定することを特徴とする仮囲いパネル用の下地材ユニット。
【請求項2】
前記ひかえ連結部は、前記縦地の上部において縦地の長さ方向に直交し且つ後方に向けて突出させたひかえ用のブラケットと、当該ブラケットの後部にボルト・ナット等の連結部材を備えている請求項1の仮囲いパネル用の下地材ユニット。
【請求項3】
前記つなぎは、折畳み時に前記縦地、つなぎ、ひかえを平行に保持するスペーサを備える請求項1
又は2のいずれかの仮囲いパネル用の下地材ユニット。
【請求項4】
前記縦地は、少なくとも上下部又は上下部と中間部に、横地の両端部を結合するための嵌合ポケット又は嵌合穴を備える請求項1
~3のいずれかの仮囲いパネル用の下地材ユニット。
【請求項5】
請求項4の縦地の複数に、前記嵌合ポケット又は嵌合穴に嵌合される結合用の爪部を両端部に備える横地を結合して仮囲いパネル用の支持装置を形成する
請求項4の仮囲いパネル用の下地材ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事現場等を囲むように設置される仮囲いパネル(以下、単にパネルともいう。)を、その裏面から支持するために使用される複数種類の下地材をユニット化した下地材ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より工事現場などに配置される仮囲いパネルをその裏面から支持する下地材を用いた支持構造は、単管と呼ばれる小径の鋼管(以下、パイプ材ともいう)を所要の長さに整えたパイプ材により形成される縦地、杭、つなぎ、ひかえ、横地等の名称で呼ばれる各下地材と、これらの各下地材を結合、連結するためのクランプによって構成されている。
【0003】
上記下地材は、工事現場等を囲むようにパネルを並べて仮囲いパネルとして設置するとき、そのパネルの背面側において仮囲いパネルを支持するための支持装置として組み立てられる。なお本明細書においては、パネルを正面から見たとき、そのパネルの背面に沿った左右を左右方向とし、パネルの背面に直交する方向を前後方向とする。そして、パネル背面に近い側をパネル背面の前方、前部、手前側とし、パネル背面から遠い側をパネル背面の後方、後部、向こう側とする。
【0004】
仮囲いパネルを支持する下地材の組立ては、一例として、仮囲いパネルの背面側の手前側と向こう側の2点に夫々に少なくとも1本の杭を略垂直姿勢で地中に埋設して立て、立てた手前側の杭(パネル背面に近い側)に、クランプで縦地を結合支持させて略垂直姿勢に立て、前部の杭と後部の杭の上部に、水平姿勢で前後方向に向けたつなぎをクランプを介して結合し、前記縦地の上部と向こう側の杭に近い前記つなぎとの間に、斜め姿勢でひかえを渡し、渡したひかえをクランプによって前記縦地の上部と後部の杭に結合させ前記つなぎに結合することにより組立てられ、パネル支持構造に形成されている。
【0005】
上記のように仮囲いパネルを支持する下地材の組み立ては、仮囲いパネルを設置する現場において単管により形成された様々な長さのパイプ材による複数種類の下地材と必要なクランプを用いて人手により施工されているため、組立てに手間がかかるという問題がある。
【0006】
上記のように下地材は、長さが異なるパイプ材が複数種類あって夫々に必要とする本数も半端ではないため、予め多数本の単管を夫々に所要の長さに切断して準備しなければならないという問題に加え、仮囲いパネルの支持装置としての役割を終えたら、分解して回収し、長さの異なる多数のパイプ材を長さ単位で分類して保管する必要があるため、分類ごとの保管や員数の管理が煩わしいという問題もある。
【0007】
しかし、単管を用いた仮囲いの支持手段や仮設足場などの仮設資材の分野において、仮囲いを支持する下地材をユニット化して、その取扱いの省力化や合理化を目指した技術は、例えば、特許文献1~5を参照しても見当たらない。
【0008】
本発明の発明者らは、上記のような点に鑑み、先に、従来の仮囲いパネルを支持するための下地材が、その下地材を構成するすべてのパイプ材をいちいち現場で組み立て、用済み後は再びその現場で一つずつ分解するという煩わしい手間を要していたという問題の解決を目的として、組立てや分解の手間を大幅に削減でき、かつ下地材の保管や管理の手間も著しく省力化、合理化できる下地材ユニットを提案している。
【0009】
先に提案した下地材ユニットは、仮囲いパネルを支持するためそのパネルの背面に設置される、単管により形成した長さの異なる杭、縦地、つなぎ、ひかえ、及び横地と、これらの連結のためのクランプを少なくとも用いる下地材において、前記縦地の上部に設けたひかえの上端部を連結するひかえ連結部と、同じく前記縦地の下部に設けたつなぎの手前側の端部を連結するつなぎ連結部と、前記ひかえの下端部と前記つなぎの向こう側の端部近傍をクランプにより結合・分離自在に連結する自在連結部とを備えたものである。
【0010】
上記下地材ユニットは、組立時に、側面から見て前記縦地が垂直辺、前記ひかえが斜辺、前記つなぎが底辺となる略直角三角形状を呈する状態にして自在連結部のクランプを締付け、縦地を前記杭と横地に結合して組立て、また折畳み時には、前記自在連結部を開放して前記ひかえ下端部と前記つなぎの向こう側との自在連結部の結合を解いた状態にし、更に縦地を前記杭と横地との結合から取り外した状態にして、前記つなぎを前記つなぎ連結部において前記縦地と平行に立て、前記ひかえを前記ひかえ連結部において前記縦地と平行に垂下させて折畳むようにしたものである。
【0011】
上記下地材ユニットにおいて、前記のひかえ連結部とつなぎ連結部は、縦地の長さ方向に直交する向き(後方)に突出させたブラケットにボルト・ナット等の連結部材を備えている。前記自在連結部は、前記ひかえの下端に首振り自在に枢着されたクランプにより形成されている。前記つなぎには、組立て時における自在連結部のクランプの位置決めのために位置決め部材が設けられている。前記位置決め部材には、前記つなぎの折畳み時に当該つなぎを前記縦地に仮止めする保持機能を持たせている。
【0012】
使用時に側面視略直角三角形状に組立てられる上記下地材ユニットは、パネルを支持するため、通常は前記杭と横地に、交差する部材同士の結合のため連結クランプを用いて結合するようにしている。前記下地材ユニットでは、その縦地と横地とを結合するために、連結クランプを用いない構造を採ることもある。
【0013】
連結クランプを使用しない例としては、前記縦地に、横地に設けた楔状を呈する結合用の爪部を嵌合するため嵌合穴や嵌合ポケットによる結合部材を、当該縦地の長さ方向(高さ方向)に沿った2~3の複数箇所に設ける。この構成を採用すると、縦地と横地の結合する部品として不可欠であった連結クランプが不要になって部品点数を削減できる。
【0014】
先に提案した上記下地材ユニットは、仮囲いパネルを背面から支持する杭、縦地、つなぎ、ひかえ、横地、及びクランプを少なくとも用いる下地材において、前記縦地の上部に設けた前記ひかえの上端部を連結するひかえ連結部と、同じく前記縦地の下部に設けた前記つなぎの手前側の端部を連結するつなぎ連結部と、前記ひかえの下端部と前記つなぎの向こう側の端部近傍をクランプで結合・分離自在に連結する自在連結部とを備えて複数種類の下地材を連結状態でユニット化したから、側面視略直角三角形状に組立てる下地材ユニットを仮囲いパネルの背面側に設けた前後の杭にクランプで結合し、横地に前記縦地を結合するという少ない手間で仮囲いパネルの支持装置を形成できる。また、支持装置の折畳みは、前記杭と横地との結合を解いて下地材ユニットの自在連結部の結合を解いて折畳むと、縦地とつなぎとひかえの3本が平行に束ねられた状態で下地材ユニットのまま回収することができるから、クランプ等で結合して組立てた単管の分解が不要になって作業手間を大幅に省力化できる利点がある。
【0015】
先に提案した下地材ユニットは、上記のような利点があったが、使用している中でさらに改良すべき点のあることが判った。
即ち、上記下地材ユニットは、縦地の上端部の上部ブラケットにひかえの上端をボルト・ナット等の連結部材で結合すると共に、縦地の下端部近くの下部ブラケットにつなぎの先端部をボルト・ナット等の連結部材で結合する一方で、前記ひかえの下端部とつなぎの後部を首振り自在の自在連結部で連結する連結構造であるため、組立、折畳み時の操作性や安全性、並びに運搬時や収納時の安定性に課題のあることが判った。
【0016】
その課題とは、縦地の上部にひかえの上端を、同じ縦地の下部につなぎの前端を、それぞれボルト・ナット等の連結部材で結合しているため、組立時に縦地に連結されたひかえとつなぎの2本の単管を片手で支持しつつ、当該ひかえの下端とつなぎの後部とを、自在クランプをインパクトドライバで締め込んで結合しなければならないという労力や作業の煩わしさが解決すべき課題の一つである。
【0017】
また、折畳みにおいても、つなぎの後端部にある自在連結部のクランプをインパクトドライバで緩める作業を必須とするため手間取っていた。さらに、折畳んだ下地材ユニットは、縦地の上にひかえとつなぎが平行姿勢で重なる形に折畳まれるが、平行になった縦地、ひかえ、つなぎの各部材の平行状態を強制力を以て拘束する手段がないため、折畳み状態で運んだり積み上げたりするとき、平行状態の部材が開いてしまうという課題が生じていた。加えて、縦地に対してひかえとつなぎを人手によって折畳む際に、単管同士の間に指を挟んでしまう危険性のあることも判った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】実開平2-112844号公報
【文献】実開平4-82251号公報
【文献】実開平6-79971号公報
【文献】特開2000-314234号公報
【文献】特許第6403281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
そこで本発明は、発明者らが先に提案した下地材ユニットを実際に使用して判明した課題、即ち、組立時と折畳み時の作業性を向上させ、同時に安全性を確保できる構造と形態を備える改良された下地材ユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明下地材ユニットの構成は、
仮囲いパネルを支持するためそのパネルの背面に設置される、単管の長さを所要長さに整えて形成した杭、縦地、つなぎ、ひかえ、横地、及びクランプを少なくとも用いる下地材において前記縦地の上部に設けた前記ひかえの上端部を連結するひかえ連結部と、前記ひかえの下端部に設けた前記つなぎの向こう側の端部を連結するつなぎ連結部と、前記縦地の下部に設けた前記つなぎの端部を結合・分離自在に固定する二方向固定部とを備え、組立時に側面から見て前記縦地が垂直辺、前記ひかえが斜辺、前記つなぎが底辺となる略直角三角形状を呈するように組み立てて固定され、折畳み時に前記ひかえにつなぎが連結され前記縦地にひかえが連結されたまま、前記ひかえとつなぎが縦地と平行に折畳まれて固定されることを特徴とする。
【0021】
前記ひかえ連結部は、前記縦地の上部において縦地の長さ方向に直交し且つ後方に向けて突出したひかえ用のブラケットと、当該ブラケットにボルト・ナット等の連結部材を備えている。
【0022】
前記の二方向固定部は、前記縦地の下部において縦地の長さ方向に直交し且つ後方に向けて突出したつなぎ用のブラケットと、このブラケットが備えるつなぎ締結用の楔部材を主要部材として備えている。前記ブラケットと楔部材は、組立て時に水平姿勢になっているつなぎの手前側(前部)を楔作用でブラケットに固定して保持すると共に、折畳み時に起立姿勢になる前記つなぎの向こう側(後部)を楔作用でブラケットに固定して保持する。
【0023】
前記つなぎは、その手前側に、折畳み時、前記縦地、つなぎ、ひかえを平行に保持するためのスペーサを備えている。
【0024】
前記縦地には、少なくとも上下部又は上下部と中間部に、横地の両端部を結合するための嵌合ポケット又は嵌合穴を備えたものもある。
【0025】
前記縦地の嵌合ポケット又は嵌合穴に嵌合される結合用の爪部を両端に備える横地を、その爪部を前記篏合ポケット又は篏合穴に結合すると、組立てた複数の下地材ユニットを左右方向で連結することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、仮囲いパネルの支持装置の形成に用いる下地材を、仮囲いパネルを支持するためそのパネルの背面に設置される、単管の長さを所要長さに整えて形成した杭、縦地、つなぎ、ひかえ、横地、及びクランプを少なくとも用いる下地材における前記縦地の上部に設けた前記ひかえの上端部を連結するひかえ連結部と、前記ひかえの下部に設けた前記つなぎの向こう側の端部を連結するつなぎ連結部と、前記つなぎの手前側の端部を結合・分離自在に連結する二方向固定部とを備え、組立時に側面から見て前記縦地が垂直辺、前記ひかえが斜辺、前記つなぎが底辺となる略直角三角形状を呈するように組立てて楔部材で固定し、折畳み時に前記縦地にひかえが連結され、且つ前記ひかえにつなぎが連結されたままで、前記ひかえとつなぎが縦地と平行に折畳まれて楔部材で固定される下地材ユニットを構成したから、下地材ユニットの組立時や折畳み時にインパクトドライバが不要になって労力の軽減と作業性が良好になり、同時にスペーサの設置で組立、折畳み操作時の安全性も高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明下地材ユニットの組立て設置状態を説明するための斜視図。
【
図2】本発明下地材ユニットの一例の組立てた状態の側面図。
【
図3】
図2の下地材ユニットの折畳み途中の側面図。
【
図4】
図2の下地材ユニットの折畳んだ状態の側面図。
【
図8】本発明下地材ユニットの別例において、縦地に設けた嵌合ポケットに、横地の長さ方向の端部に設けた結合用の爪部が結合した状態の斜視図。
【
図9】縦地に嵌合ポケットを設けた本発明下地材ユニットの別例の背面図。
【
図10】
図8の嵌合ポケットに代えて縦地に設けた嵌合穴に、横地の長さ方向の端部に設けた結合用の爪部が結合した状態の斜視図。
【
図11】縦地に嵌合穴を設けた本発明下地材ユニットの他の例の背面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に本発明下地材ユニットFUの実施形態の一例について
図1~
図7を参照して説明する。
【0029】
(第一実施形態)
図1は本発明下地材ユニットFUを、仮囲い用パネルP(
図1の仮想線参照)の支持装置に組立てた状態の要部の斜視図である。
図1において、Eは工事現場の地盤、1,2は前記地盤Eに下半側を埋めて垂直に立設した前、後で2本の杭である。
【0030】
前後の杭1,2を一組とする杭は、左右方向に向けて列設されるパネルPの列に対し、適宜間隔」をもって左右方向に複数組の杭1,2が立設される。
図1では3組の前、後の杭1,2が示されている。
【0031】
本発明下地材ユニットFUは、
図2に示すように、組立て状態では側面視ほぼ直角三角形状を呈する。
図2の下地材ユニットFUにおいて、3は垂直姿勢の縦地であり、この縦地3は、その上部と下部に、後部方向(
図2の右方向)に突出した上部ブラケット4と下部ブラケット5を備えている。
【0032】
上部ブラケット4は、
図2で斜め姿勢のひかえ6の上端部を、ボルト、ナット等の連結部材4aにより回転自在に連結してひかえ連結部を構成している。
【0033】
下部ブラケット5は、使用時の水平姿勢と折畳み時の垂直姿勢のつなぎ7を、いずれの姿勢においても縦地3に固定する二方向固定部を具備するので、以下に説明する。
平面視略U状のブラケット本体の底壁5aを縦地3に固定することにより、左,右側壁5b,5cがパネルPの背面に直交する向きに延びた姿勢で、前記縦地3の下部寄りに設けられている。前記ブラケット本体の底壁5aの下端には、この下部ブラケット5に組立て時の水平姿勢で収まるつなぎ7の手前側の端部を保持すると共に、折畳み時の垂直姿勢で収まるつなぎ7の下端部(後部)を保持するための舌片状の支持部51が設けられている。
【0034】
下部ブラケット5の左右側壁5b,5cには、左右側壁5b,5cに貫通して装填される楔部材52を保持する楔穴5d,5eが設けられている。楔部材52は、
図5の左側(左側壁5b側)が太く中間部が先端に向けて細くなるテーパ部52aに形成されている。
【0035】
前記楔部材52において右側壁5cの楔穴5eから突出した先端には、左側壁5bの楔穴5dから楔部材52が抜け出ないために凸状のストッパ52bが設けられている。右側壁5cの楔穴5eは、前記ストッパ52bを通過させることができる形状を備える。一方、左側壁5bの楔穴5dは、前記ストッパ52bが通過できない穴形状を備える。なお楔穴5dから突出した楔部材52の後端部は、当該後端部が楔穴5dから楔部材先端側へ通過できないストッパ形状を備えている。
【0036】
下部ブラケット5は、底壁5aが備える支持部51、及び左右側壁5b,5cに設けた楔穴5d,5eと楔穴5d,5eに装填された楔部材52を具備していることによって、組立て時に水平姿勢で下部ブラケット5に入るつなぎ7の端部(前部)を、楔作用で緊縛して固定し、また折畳み時にも、垂直姿勢になったつなぎ7の端部(後部)を楔作用で緊縛して固定できる。
以上に説明した下部ブラケット5と当該ブラケット5が備える支持部51、楔部材52等の構成によって、つなぎ7の端部を水平姿勢、及び垂直姿勢のいずれの場合も固定する二方向固定部の一例を構成する。
【0037】
前記つなぎ7は、その向こう側(後部、
図2の右側)の端部寄りに、前記ひかえ6の下端部と、ブラケット8aとボルト・ナット等の連結部材8bによって常時連結されている連結部8を備える。
【0038】
上部ブラケット4のひかえ連結部4aにより、ひかえ6は縦地3に対して平行に折畳み可能であり、ひかえ6とつなぎ7は、連結部8によってつなぎ7が前記ひかえ6に対して平行に折畳み可能である。
【0039】
9は、つなぎ7の手前側の端部近傍に設けたスペーサで、このスペーサ9は、つなぎ7を連結部8においてひかえ6に対し起立させたとき、起立したつなぎ7をひかえ6との間に指が挟まらない隙間sを形成し、且つひかえ6に対しつなぎ7を平行に保持する作用がある。隙間sは、つなぎ7が縦地3と平行になったとき(折畳み時)にもスペーサ9の作用で形成される。
【0040】
図2の状態に組立てた本発明下地材ユニットFUは、その縦地3の下部を、手前側の杭1に連結クランプ(図示せず)で結合すると共に、つなぎ7の連結部8の向う側(
図2の右方)を連結クランプ(図示せず)で向う側の杭2に結合して立ち姿勢にする(
図1参照)。
【0041】
前、後の杭1,2に結合して立ち姿勢にされた複数の下地材ユニットFUは、
図1に示すように、左右向(横方向)で平行に立っている複数本の縦地3が連結クランプ等の結合手段(
図1に示さず)で横地10に結合される。左右方向に並んでいる縦地3の横地10への結合位置は、縦地3の高さ方向において、少なくとも上下部の2箇所、
図1の例では中間部を含む3箇所で結合されている(
図1参照)。上記のように組立てられる本発明下地材ユニットFUには、仮囲いパネルPがその背面において結合フックやクランプ等を介して取付けられ、工事現場などの仮囲いとして設置される。
【0042】
本発明下地材ユニットFUでは、組立て時に水平姿勢で下部ブラケット5の左右側壁5b、5cの間に手前側の端部が入るつなぎ7は、その端部がブラケット本体の底壁5aの下部に設けた支持部51に下から支承されると共に、左側壁5bの楔穴5dにストッパ52bを位置付けるように後退させている楔部材52が、ハンマー等で右側壁5c側に打ち込まれ、テーパ部52aの楔作用がつなぎ7に下向きの力を加えるから、つなぎ7は水平姿勢で支持部51と楔部材52の間に強固に保持される。
【0043】
一方、本発明下地材ユニットFUで支持していた仮囲いパネルPの撤去は、まずパネルPを下地材ユニットFUから取り外し、各横地10と横方向に並んでいる縦地3とを結合している各連結クランプ等の結合手段を外し、この後、夫々の縦地3と杭1の結合、及びつなぎ7と杭2の結合を解いて、全部の下地材ユニットFUを伏せた姿勢で地上に下す。
【0044】
地上に下した各下地材ユニットFUにおいて、つなぎ7と縦地3をブラケット5に楔作用で結合している楔部材52を楔穴5d,5eの中で
図5の左方にずらして楔作用を解き、つなぎ7の前部を下部ブラケット5から抜く。
【0045】
つなぎ7は連結部8でひかえ6に対して回転自在であり、ひかえ6もつなぎ7を連結したままで縦地3に対して回転自在であるから、つなぎ7をひかえ6に対し連結部8で起立させた形にすると、つなぎ7が備えるスペーサ9の作用でひかえ6と平行に折畳まれる。
【0046】
つなぎ7と平行になったひかえ6を、上部ブラケット4の連結部4aにおいて縦地3に対し折畳むと、つなぎ7の後部(
図3、
図4、
図6の下部)が、下部ブラケット5の楔穴5d,5eより内側(底壁5aの側、このとき楔部材52の先端のストッパ52bは左側壁5bの楔穴5dの内側に位置付けられている。)に入る。そこで楔部材52の先端のストッパ52bを右側壁5cの楔穴5eに通し楔部材52をハンマー等で打ち込むと、地上で垂直姿勢に置かれたつなぎ7の後部(
図6では下部)が、支持部51と楔部材52のテーパ部52aに挟まれ楔作用で緊縛されて固定される。これにより地上で折畳んで縦地3と平行な垂直姿勢になったつなぎ7をひかえ6と一体のままで折畳み姿勢に固定することができる。
【0047】
上記のようにして折畳み状態が固定される下地材ユニットFUは、楔部材52を抜かない限り折畳み状態の姿で拘束されているから、そのまま運搬、保管しても折畳み状態の姿が崩れることはない。
【0048】
折畳まれている下地材ユニットFUを組立てるには、下部ブラケット5につなぎ7の後部を固定している楔部材52を楔穴5d,5eの中で楔作用を解く位置にずらし、つなぎ7を下部ブラケット5から外し、折畳み時とは逆の操作で
図2の形にして下部ブラケット5の左右側壁5b,5cの間に入れたつなぎ7の前部を、楔部材52を打込んで下部ブラケット5に固定することにより組立てる。
【0049】
上述した第一実施形態の下地材ユニットFUは、縦地3とつなぎ7を常時連結したひかえ6が分離することなく、平行な姿勢の一まとまりの姿になりその姿が楔作用で固定されるから、先に提案した下地材ユニットに比べ、インパクトドライバによるクランプの2アクション締込み作業や弛緩作業がないため、手や腕の負担が減り、組立て及び折畳みの作業性が良好になる。またスペーサを配したから作業時に構成部材に指を挟まれる恐れもない。更に折畳んだ下地材ユニットFUは折畳み状態の姿で固定されているから、下地材ユニットの保管、運搬において姿が崩れることはなく管理面での大幅な合理化に寄与できる。
【0050】
(第二実施形態)
上記の第一実施形態においては、下地材ユニットFUの縦地3が、この縦地3に上下部と中間部の3箇所で連結クランプ(図示せず)を介して3本の横地10に結合されている(
図1参照)。
【0051】
連結クランプを用いた縦地3と横地10の結合は、構成部品として連結クランプを不可欠とするほか、前記縦地3と横地10の結合のため、当該連結クランプの縦地3と横地10へのセット作業、並びにセットした連結クランプの緊締操作や弛緩操作を必須とするため、作業性や作業効率において問題であった。
【0052】
そこで本発明では、まず、前記縦地3に、その少なくとも上下部の2箇所、好ましくは、上下部と中間部の3箇所に、横地10の両端を結合するため、
図9と
図10に例示する嵌合ポケット21又は嵌合穴22を設けた縦地3を用い、他の下地材(ひかえ6とつなぎ7)は第一実施形態と同じ部材を用いて本発明下地材ユニットFUの別例(
図8、
図9参照)と他の例(
図9、
図10参照)を形成する。
【0053】
図8と
図10に示した縦地3の嵌合ポケット21と嵌合穴22は、縦地3の左右方向に2個のほか、前後方向にも嵌合ポケット21と嵌合穴22を設けているが、本発明では左右方向に2個を備えていれば足りる。
【0054】
縦地3が備える上記嵌合ポケット21又は嵌合穴の構成に対応して、横地10には、図示しないが、両端部に前記嵌合ポケット21又は嵌合穴22に嵌合される下向きの爪部30を備えたものを用いる。下向きの爪部30の横地10の端部への設置形態は、
図8、
図10は一例であってこの形態に限定されるものではない。
【0055】
横地10の両端に設けた爪部30を結合するため、嵌合ポケット21又は嵌合穴22を備えた縦地3を本発明下地材ユニットFUに採用すると、両端部に結合用の爪部30を備えた横地10を用いることができるから、連結クランプを用いることなく本発明下地材ユニットFUを、仮囲い用パネルPの支持体として組み立てることができる。
【符号の説明】
【0056】
FU 本発明下地材ユニット
1,2 杭
3 縦地
4 上部ブラケット
5 下部ブラケット
51 支持部
52 楔部材
6 ひかえ
7 つなぎ
8 連結部
9 スペーサ
10 横地
21 嵌合ポケット
22 嵌合穴
30 爪部