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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】配膳車
(51)【国際特許分類】
   A47B 31/00 20060101AFI20220715BHJP
   A47B 31/02 20060101ALI20220715BHJP
   F25D 23/12 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
A47B31/00 H
A47B31/02 B
A47B31/02 D
F25D23/12 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021183958
(22)【出願日】2021-11-11
【審査請求日】2022-05-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504288627
【氏名又は名称】株式会社井上製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121418
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 修
(72)【発明者】
【氏名】井上 茂
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-101217(JP,A)
【文献】特開2001-112549(JP,A)
【文献】特開2003-339454(JP,A)
【文献】特開2021-153703(JP,A)
【文献】登録実用新案第3059543(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 31/00
A47B 31/02
F25D 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にカート収容室を有し、且つ該カート収容室内の食品を加熱するための加熱装置並びに同食品を冷却するための冷却装置を備えた配膳車本体と、該配膳車本体の前記カート収容室内に収容される配膳カートとで構成される配膳車であって、前記カート収容室は、前面に開口部を有し、該開口部に対して前記カート収容室の一側壁前縁に本体扉が開閉自在に取り付けており、前記配膳車本体並びに前記配膳カートは、それぞれの下部に取り付けられたキャスターで移動可能であり、前記配膳車本体のカート収容室の後壁には、前記加熱装置から供給される過熱蒸気や熱風の送入口と吸込口、並びに前記冷却装置から供給される冷気の送入口と吸込口が設けられ、前記配膳カートは、上下壁および左右壁を有し、前後側に開口部を有する仕切り壁のないカート本体を備え、該カート本体の前記開口部に対して前記左右壁の一側壁前縁にカート扉が開閉自在に取り付けられており、前記配膳カートの左右壁には、互いに同一高さとなされた左右一対のカート内ステイが上下方向に所定間隔をあけて設けられ、前記カート内ステイは、カート本体の前後方向に伸び且つ前記左右壁からカート本体の中央側方向へ突出した形状となされ、前記左右一対のカート内ステイによって、ホテルパンおよび/またはトレイが前記配膳カート内に多段に配置可能となされており、前記カート内ステイが、その幅中央部分に段部を備え、該段部からカート本体の中央側方向部分が下段部、前記段部からカート本体の中央側方向と反対方向部分が上段部となされている、配膳車。
【請求項2】
各カート内ステイに、長さ方向に所定間隔をあけて透孔が列設されている、請求項1記載の配膳車。
【請求項3】
配膳カートのカート本体内に、該カート本体内を上下方向に区画する一または複数の区画壁が設けられ、該区画壁によって、前記カート本体内が複数の区画室に分割されている、請求項1または請求項2記載の配膳車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や介護施設等において、入院患者や入所者等に給食を行う際に使用される配膳車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、給食を行う際に用いられる配膳車として、内部に調理済の食品が入った各種食器を載せるトレイが多段に収容されるカートと、該カートが収容されるカート収容室を有する配膳車本体とからなる配膳車が知られている。
【0003】
前記配膳車におけるカートは、その左右方向中央部分に複数の仕切り壁部材が上下方向に列設され、上下に隣り合う仕切り壁部材間に前記トレイを差し込むことでカート内にトレイが多段に配置される構造となっている。そして、前記仕切り壁部材によって左右に仕切られた空間の一側が調理済食品の冷蔵室となされ、同他側が調理済食品を再加熱するための温蔵室とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016―195717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した配膳車の場合、トレイを上下方向に多段に収容することを前提として、複数の仕切り壁部材を上下方向に列設して左右方向中央部分に仕切り壁を立設する構造となっているため、カート内にホテルパンを収容することができないという不都合があった。
【0006】
また、配膳車の内部に前述した複数の仕切り壁部材を上下方向に列設して仕切り壁を構築するのに製造上の手間を要する上、コストもかかるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、内部に仕切り壁を有さず、トレイとホテルパンの両方を収容することができる配膳車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の本発明は、内部にカート収容室を有し、且つ該カート収容室内の食品を加熱するための加熱装置並びに同食品を冷却するための冷却装置を備えた配膳車本体と、該配膳車本体の前記カート収容室内に収容される配膳カートとで構成される配膳車であって、前記カート収容室は、前面に開口部を有し、該開口部に対して前記カート収容室の一側壁前縁に本体扉が開閉自在に取り付けており、前記配膳車本体並びに前記配膳カートは、それぞれの下部に取り付けられたキャスターで移動可能であり、前記配膳車本体のカート収容室の後壁には、前記加熱装置から供給される過熱蒸気や熱風の送入口と吸込口、並びに前記冷却装置から供給される冷気の送入口と吸込口が設けられ、前記配膳カートは、上下壁および左右壁を有し、前後側に開口部を有する仕切り壁のないカート本体を備え、該カート本体の前記開口部に対して前記左右壁の一側壁前縁にカート扉が開閉自在に取り付けられており、前記配膳カートの左右壁には、互いに同一高さとなされた左右一対のカート内ステイが上下方向に所定間隔をあけて設けられ、前記カート内ステイは、カート本体の前後方向に伸び且つ前記左右壁からカート本体の中央側方向へ突出した形状となされ、前記左右一対のカート内ステイによって、ホテルパンおよび/またはトレイが前記配膳カート内に多段に配置可能となされおり、前記カート内ステイが、その幅中央部分に段部を備え、該段部からカート本体の中央側方向部分が下段部、前記段部からカート本体の中央側方向と反対方向部分が上段部となされていることを特徴とする配膳車である。
【0009】
請求項2記載の本発明は、前記請求項1記載の配膳車について、各カート内ステイに、長さ方向に所定間隔をあけて透孔が列設されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の本発明は、前記請求項1または請求項2記載の配膳車について、配膳カートのカート本体内に、該カート本体内を上下方向に区画する一または複数の区画壁が設けられ、該区画壁によって、前記カート本体内が複数の区画室に分割されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る配膳車は、その配膳車本体のカート収容室内に収容される配膳カートについて、従来の一般的なカートとは異なり、内部に仕切り壁が一切なく、配膳カートの左右壁における左右一対のカート内ステイにホテルパンおよび/またはトレイが配置され得るため、前記ホテルパンには調理済の食品を直接入れて冷却保存したり、再加熱することができる。また、本発明に係る配膳車は、その配膳カート内の左右一対のカート内ステイにトレイを配置することもでき、この場合には、該トレイ上に、飯茶わんに入れられた御飯、お椀に入れられた汁物、各種の皿に盛られた主菜や副菜等を載置することができる。
【0012】
そのため、本発明に係る配膳車によれば、その使用態様に応じてホテルパンとトレイを選択的に搭載したり、或いはホテルパンとトレイを同時に搭載でき、多様な給食の提供が可能になるという格別の効果が得られる。
【0013】
更に、カート内ステイが、その幅中央部分に段部を備え、該段部からカート本体の中央側方向部分が下段部、前記段部からカート本体の中央側方向と反対側部分が上段部となされている本発明に係る配膳車によれば、左右一対の前記カート内ステイの下段部にホテルパンの本体部を単に載置するだけで配膳カート内にホテルパンを容易に配置することができ、また、左右一対の前記カート内ステイの上段部にはトレイのフランジ部を掛け止めるだけで、配膳カート内にトレイを簡単に配置することができる。そのため、配膳カートに対するホテルパンとトレイの搬入搭載性が向上する。
【0014】
また、各カート内ステイに、長さ方向に所定間隔をあけて透孔が列設された本発明に係る配膳車によれば、カート内に送入される過熱蒸気や熱風等の加熱媒体並びに冷気がカート内壁にあたると共に、各カート内ステイに列設された前記透孔内を通過して移動することとなるため、カート内部における加熱媒体や冷気の循環が促進される。また、各カート内ステイに透孔が列設されることで配膳カートの軽量化が促進される。
【0015】
更に、配膳カートのカート本体内に、該カート本体内を上下方向に区画する一または複数の区画壁が設けられ、該区画壁によって、前記カート本体内が複数の区画室に分割された本発明に係る配膳車によれば、各区画室ごとに異なる温度設定が可能となる。例えば、ある区画室に調理済の食品が直接入られたホテルパンを配置した場合には、該ホテルパン内の調理済食品に適した温度で冷却および再加熱ができ、また別の区画室に御飯や汁物、主菜および副菜等の各種調理済食品が入れられた一膳分の食器が載置されたトレイを配置した場合には該一膳分の調理済食品に適した温度で冷却および再加熱ができる。そのため、複数の分割された区画室を用いて、各区画室に収容された調理済食品の適所適温での冷蔵と温蔵が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る配膳車の斜視図である。
図2図1の配膳車の下部拡大斜視図である。
図3】同実施形態の配膳車の本体扉を開けた状態の正面図であって、配膳カートのカート扉が閉まった状態を示す。
図4】同実施形態の配膳車の本体扉を開けた状態の正面図であって、配膳カートのカート扉を開けた状態を示す。
図5】配膳カートの内部拡大正面図である。
図6】カート収容室から配膳カートが出された状態の配膳車本体の正面図である。
図7】本発明に係る配膳車の他の実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0018】
なお、本発明の配膳車において、前後、左右および上下は、図3を基準とし、前とは図3の図紙面の表側方向を指し、後とは同裏側方向を意味する。また、左とは図3の左側方向を指し、右とは同右側方向を意味する。更に、上とは図3の上側方向を指し、下とは同下側方向を意味する。
(実施形態1)
【0019】
図1図3に示すように、本発明に係る配膳車1は、内部にカート収容室9を有し、且つ該カート収容室9内の食品を加熱するための加熱装置(図示せず)並びに同食品を冷却するための冷却装置(図示せず)を備えた配膳車本体10と、該配膳車本体10の前記カート収容室9内に収容される配膳カート5とで構成される。
【0020】
前記カート収容室9は、前面に開口部9aを有し、開口部9aに対して、前記カート収容室9の一側壁前縁の上下部分にそれぞれ設けられたヒンジ3を介して本体扉2が開閉自在に取り付けられており、該本体扉2の内面には該本体扉2を気密に閉止させるためのパッキン2aが方形枠状に貼着されている。
【0021】
また、前記配膳車本体10は、その下底面の四隅に移動用の本体キャスター4が取り付けられて、移動自在となされている。
【0022】
更に、図6に示すように、配膳車本体10のカート収容室9の後壁9bにおいて、その左側には過熱蒸気等の加熱媒体が送入される加熱媒体送入口13が上下方向に列設され、またカート収容室9の後壁9bの下部には加熱媒体を吸い込む吸入口14が設けられている。更に、カート収容室9の後壁9bにおける右寄り中段部分から下方には冷気が送入される冷気送入口16が設けられ、カート収容室9の後壁9bの上部には冷気が吸い込まれる冷気吸込口15が設けられている。
【0023】
図3図5に示すように、前記配膳カート5は、上下壁17・18および左右壁19・20を有し、前後側部に開口部5bを有する仕切り壁のないカート本体5aを備え、該カート本体5aの前記開口部5bに対して、前記左壁19前縁の上下側部分にそれぞれ設けられたヒンジ6aを介してカート扉6が開閉自在に設けられ、また前記カート本体5aの下壁18の下面四隅にはカートキャスター7が取り付けられている。
【0024】
そして、本実施形態では、配膳カート5の左右壁19・20に、互いに同一高さとなされた左右一対のカート内ステイ8が上下方向に所定間隔をあけて設けられている。
【0025】
前記カート内ステイ8は、本実施形態では、カート本体5aの左右壁19・20から同カート本体5aの中央側方向へ伸び、ステイ幅中央部分に段部22を備え、該段部22からカート本体5aの中央側方向部分が下段部23、段部22からカート本体5aの中央側方向と反対側部分が上段部24となされている。また、本実施形態では、カート内ステイ8は、その基部に垂下壁8aが形成され、該垂下壁8aがボルトBで左右壁19・20に固定されることで該左右壁19・20に取り付けられている。更に、本実施形態では、カート内ステイ8は、その長さ方向に一定間隔で透孔21が列設されている。
【0026】
前述した構造のカート内ステイ8によれば、フランジ11aを有するホテルパン11のパン本体11bを左右のカート内ステイ8における下段部23上に載置することができ、そして、同様の要領で各段の左右一対のカート内ステイ21の下段部23上にそれぞれホテルパン11を載置することで、該ホテルパン11が配膳カート5内に多段に収容され得る。
【0027】
また、本実施形態に係る前述したカート内ステイ8によれば、前記ホテルパン11ではなく、トレイ12のフランジ12aの左右部分を左右一対のカート内ステイ21の上段部24上に掛止することで、トレイ12をカート本体5a内に収容することもでき、そして、同様の要領で各段の左右一対のカート内ステイ8の上段部24上にそれぞれトレイ12を掛止することで、該トレイ12が配膳カート5内に多段に収容され得る。
【0028】
以上要するに、本実施形態に係る配膳車によれば、配膳カート5内に、ホテルパン11だけを多段に収容したり、トレイ12だけを多段に収容したり、或いはホテルパン11とトレイ12の両方を収容することもできる。そして、配膳車本体10の後壁9bから過熱蒸気や熱風等の加熱媒体や冷気を供給することで、前記ホテルパン11やトレイ12に載置された調理済食品を冷蔵したり、温蔵することができ、該温蔵による食品の再加熱後においては、配膳車本体10の本体扉2を開けると共に、配膳カート5のカート扉6を閉めて、該配膳カート5を病院や介護施設内の配膳場所まで移動させて入院患者や入所者に給食を提供することができる。なお、配膳カート5のカート扉6は、配膳カート5の前後にヒンジ6aを介してそれぞれ取り付けられており、配膳カート5を配膳車本体10内に収容する際には、各カート扉6を開けた状態で収容する。
(実施形態2)
【0029】
図7に示すように、本実施形態の配膳車31は、基本的構成において、前記実施形態1と同様であるため、基本的構成については、前記実施形態1の配膳車1における符号と同一の符号を用いることにより、説明を省略する。
【0030】
本実施形態に係る配膳車31では、前記実施形態1の配膳車1における配膳カート5のカート本体5a内に、該カート本体5a内を上下方向に区画する2箇所の区画壁32を設け、該区画壁32によって、区画された区画室33A~33Cが形成される。そして、例えば、第二区画室33Bにはホテルパン11を収容し、最下部の第三区画室33Cにはトレイ12を収容する等して、前述した第一区画室33A~第三区画室33Cの冷却温度および加熱温度をホテルパン11やトレイ12上に載置される調理済食品に合わせた適温に設定し得るようにする。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の配膳車は、その用途に応じて配膳カート内にホテルパンおよび/またはトレイを配置して多様な使用ができ、しかも内部の調理済食品に適した冷却と再加熱が可能となるため、給食分野において幅広い利用が期待できる。
【符号の説明】
【0032】
1・31 配膳車
2 本体扉
4 本体キャスター
5 配膳カート
6 カート扉
7 カートキャスター
8 カート内ステイ
9 カート収容室
10 配膳車本体
11 ホテルパン
12 トレイ
13 加熱媒体送入口
14 加熱媒体吸込口
15 冷気送入口
16 冷気吸込口
17 カート本体の上壁
18 カート本体の下壁
19 カート本体の左壁
20 カート本体の右壁
22 カート内ステイの段部
23 カート内ステイの下段部
24 カート内ステイの上段部
【要約】
【課題】 配膳車本体とカートからなる配膳車において、カート内に仕切り壁を有さず、トレイとホテルパンの両方を収容することができるようにする。
【解決手段】 配膳車本体10のカート収容室9内にカート5が収容される配膳車1において、カート5の左右壁19・20に、互いに同一高さであって、カート本体5aの中央側方向へ突出した左右一対のカート内ステイ8が上下方向に所定間隔をあけて列設されており、該左右一対のカート内ステイ8にホテルパン11および/またはトレイ12が収容される構造となされている。
【選択図】 図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7