(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】プレミックス原薬の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/167 20060101AFI20220715BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20220715BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220715BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220715BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220715BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220715BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220715BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220715BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220715BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220715BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220715BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
A61K31/167
A61P29/02
A61K9/20
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/38
A61K47/10
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/34
A61K47/26
A61K47/20
(21)【出願番号】P 2018080206
(22)【出願日】2018-04-18
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2017083077
(32)【優先日】2017-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231796
【氏名又は名称】日本臓器製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125427
【氏名又は名称】藤井 郁郎
(72)【発明者】
【氏名】坂本 浩
(72)【発明者】
【氏名】駒居 邦男
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-081876(JP,A)
【文献】特開2008-050264(JP,A)
【文献】特開2013-216610(JP,A)
【文献】特開2001-055344(JP,A)
【文献】特開2015-193600(JP,A)
【文献】特開2016-190794(JP,A)
【文献】特開2018-090638(JP,A)
【文献】国際公開第2017/195796(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)
レーザー回折法により粒度分布を測定したとき、アセトアミノフェン100体積%に対して、200μm以上の粒子を20体積%以上含有するアセトアミノフェンに分散剤を配合し、1回又は複数回解砕整粒することにより、アセトアミノフェン粒子の表面に分散剤を分散・付着させ、アセトアミノフェン及び分散剤の粉末100体積%に対して、200μm以上の粒子を30体積%以下含有する粉末とし、さらに、B)その他の添加剤を配合し、添加剤を配合する過程において1回又は複数回解砕整粒することにより、アセトアミノフェン粒子の表面に添加剤を分散・付着させる、打錠機又は造粒機に供給するためのプレミックス原薬の製造方法。
【請求項2】
造粒機が連続式造粒システムに含まれるものである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
必要に応じて、プレミックス原薬100重量%に対して、0.5~3.0重量%の水を添加する請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
分散剤が、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸又はケイ酸カルシウムである請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
その他の添加剤が結晶セルロース、崩壊剤、界面活性剤、水溶性高分子及び糖アルコール類から選ばれる1又は2種以上である請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
その他の添加剤が、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーL、アミノアルキルメタクリレートコポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、カルボシキメチルスターチナトリウム、酸化チタン、酸化鉄、タルク、澱粉、滑沢剤、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、乳糖、糖類、糖アルコール類、D-マンニトール、トレハロース、マクロゴール、ラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベートから選ばれる1又は2種以上である請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
解砕整粒は石臼式
摩砕機又は棒状若しくはインペラー型解砕整粒機により行う請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7いずれか一項に記載の製造方法により製造されたプレミックス原薬を用いる錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセトアミノフェン製剤を製造するためのプレミックス原薬の製造方法に関する。なお、本発明における「プレミックス原薬」とは、原薬と添加剤を混合して医薬製造用の混合原料製品として販売されるものに限定されず、原薬と添加剤の混合物等であれば何れも包含するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬製剤を製造するに際し、まず開発段階では小さなスケールで検討を始め、開発のステージが進むに連れてスケールを上げて行き、最終的に商用生産に移る時にはさらにスケールを上げるのが一般的である。固形製剤である錠剤の製造方法としては、例えば、造粒物を調製せずに原薬と添加剤の混合物を打錠する乾式直接打錠法(「乾式直打法」、あるいは単に「直打法」ともいう。)に対し、乾式造粒法(乾式ローラーコンパクター法、ロールグラニュレータ法)又は湿式造粒法(撹拌造粒法、押出し造粒法、噴霧造粒法、流動層造粒法)等のいくつかの方法で造粒物を調製した後に打錠する方法があるが、いずれの方法においても、ごく一部の例外を除いて、商用生産に移る際にはスケールアップが必要となる。医薬品はその性格上、安全性と有効性が最優先され、この安全性と有効性は開発のステージで確定されるが、この安全性と有効性を確立した際のサンプルの品質は、商用生産で大量に製造した製品にも担保されていなければならない。すなわち、スケールアップの前後で品質は同等でなければならないが、品質管理等に関する手法に課題が有るとの指摘もあった。
【0003】
一方、医薬品製造においては、食品や石油化学製品等の製造と違って、バッチ生産が一般的であり、連続生産の導入は遅れていた。しかし、最近の潮流として、米国食品医薬品局(FDA)等からも連続式造粒システムの開発が求められており、ガイドライン等も提示され、連続生産を導入した医薬品が承認されている。日本国内では現時点では承認例はないが、医薬品医療機器総合機構(PMDA)から同様に連続生産の導入の方向性が求められている。また、連続造粒装置及び連続顆粒製造システムに関する特許文献(特開2015-85225号公報)も公開されている。この連続生産のメリットの1つとして、スケールアップが必要ない、或いは容易であるということが挙げられる。このような潮流の中、原薬と添加剤粉末を連続的に製造工程内に定量供給し、混合⇒結合剤添加⇒造粒⇒乾燥⇒整粒⇒打錠と進む連続生産システムにおいて、同等な品質の医薬品固形製剤が製造でき、回分式(バッチシステム)に比較しスケールアップが容易な連続式造粒システムの開発がなされている。例えば、原薬に添加剤を配合し、定量フィーダーを介して連続式造粒システムに供給した後、ここに結合剤溶液を添加するが、各ポイントにおいて工程解析システム(PATシステム)等を用いて状況を監視、制御することにより、同一品質の造粒品質の製品のスケールアップが容易になる方法が推奨されている。しかし、投入される原薬粒子の粉体物性(粒子径・形状・粒子密度等)は、メーカー間や、また、同一メーカーでも季節(夏期と冬期)やロット間により変動することは周知である。原薬粒子の粉体物性が変動すれば後工程の製品品質が変動し易くなるが、投入する原薬粒子の均質化(解砕整粒、分散)等の前処理方法については知られていなかった。
【0004】
現在、医薬品固形製剤における造粒方法は、ほとんどが回分式(バッチ式)で優れた製品が生産されている。しかし、スケールアップにおいて、例えば流動層造粒においては、大型機になるほど、単位面積当たりの仕込み量(kg/m2:積載密度)は大きくなり、積載厚みは増加するため、造粒中の粒子に加わる厚密は大きくなるという問題があった。このような状況下において、スケールアップの前後で同等品質の製剤を生産するためには様々な課題があった。
【0005】
乾式直打法は1970年頃以前に欧米で多く採用されてきた方法である。その理由としては、当時の原薬や添加剤の粒子径は比較的大きく、溶解度も高い原薬が多く、さらに、当時の医薬品製造の作業環境における空調設備は未整備で、湿度は高い(成り行き)ため、原薬や添加剤の二次凝集等の弊害はほとんどなく、それらの粒子に作用する力は重力(質量)が主であったためである。これに対して、最近の原薬は難溶性のものが多くなったことから、溶解性の改善のためにピンミル、ハンマーミル、ジェットミル等を用いて微粉砕しているケースが多く、静電気帯電、分子間力(ファンデルワールス力)、表面エネルギーが強く作用することになる。一方、溶解性の極めて高い原薬は、不溶性添加剤と配合した場合であっても、結合剤溶液のスプレー添加により、溶解性の高い原薬が選択的に先行して結合剤ミストと結合、凝集して、その表面にゲル(継粉)を生成して溶解が遅延するケースがある。特に、低含量で固有の色調を有する原薬においては、製剤化した場合に色斑や斑点等均一性に問題を生じることがある。以上のことより、最近は、固形製剤の製造方法として乾式直打法はほとんど採用されず、湿式造粒法が主流となっている。
【0006】
原薬合成における粉体物性(粒度分布や粒子形状・密度等)は、各原薬メーカーによって異なるが、同一メーカーであっても、季節変動(特に、夏期と冬期の温度・湿度の差等)が影響することは周知されており、例えば、原薬の合成・晶析工程のプラントが設置されている環境は、製剤の製造工程等のように空調が完備され、温度管理等が周到に行われている環境ではなく、屋外に近い環境であるケースが多い。特に、原薬合成の最終の冷却工程については、殆どが成り行きで、空調設備の完備した環境で生産しているケースはまだ少ない。従って、冷却工程における冷却速度は、装置サイズ、設備環境により大幅に変動し、この結果、得られる原薬の粉体物性(粒子径・粒度分布・粒子形状・粒子密度・帯電性・分子間力等)は変動することを免れない。このようなことから製造過程における晶析工程において生成された大きな結晶や、二次凝集による塊等には、500μm以上の粒子が1体積% 以上含有されて不揃いである。このように粒子が不揃いで、粉体物性の季節変動幅が大きいと最終製品(錠剤等)の溶出率の均一性は期待できない。これらを改善するため、原薬メーカーは、ジェットミル、ピンミルやハンマーミル等を用いて原薬を微粉砕し供給(市販)しているが、60μm以下の粒子は過粉砕され極めて二次凝集しやすく、錠剤等を製造する医薬品(製剤)メーカーは苦慮している。例えば、撹拌式混合器では二次凝集した小塊の分散は極めて困難である。また、この小塊を振動ふるいを用いて除去することもあるが、振動することで静電気帯電を助長して二次凝集を進行させることになるので不適切である。このように粉体物性が各季節等で変動する原薬に添加剤を混合して得られた混合粉末をプレミックス原薬として、打錠機や湿式造粒システムに投入しても、得られた錠剤や造粒物の物性も変動して、常に品質が同一である最終製品を製造することは困難であった。
【0007】
例えば、薬物の中でも特に静電気帯電が極めて強いアセトアミノフェンは、60μm以下の微粒子が二次凝集粒子となって存在する。また、大きく不揃いな粒子は一見、単一の粒子に見えるが、実際には針状結晶や片状結晶等が集積・積層した粒子であり、これらを強い衝撃力で粉砕すると二次凝集粒子を生成してしまう。
図1~3の走査電子顕微鏡(SEM)写真に示すように、市販のアセトアミノフェン原薬は、ピンミルやハンマーミル等の強い衝撃力で粉砕されているため、二次凝集粒子として存在している。このため、回分式撹拌造粒機(バーチカルグラニュレーター:パウレック製等)で撹拌・混合しても、全体として均一ではあるが局所的に二次凝集した小塊が存在する。この二次凝集した小塊の分散は極めて困難であるため、二次凝集した小塊のままで造粒が進行し、結果的に色斑や斑点等の含量均一性に問題が生じることがあった。
【0008】
なお、粉砕と解砕・整粒・分散について記述すると、1)粉砕とは大きな粒子にハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等を用い強い衝撃を与え粒子を小さく調整する単位操作であり、2)解砕・整粒・分散は凝集した粒子や結晶(針状・柱状・片状等)が集積及び積層した原薬粒子に、やや弱い衝撃を与え解砕・分散・整粒するもので、その作用は、粉砕と同様な操作で一部重複しており、混同されやすいが粉体工学分野においては明確に区分されている単位操作である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、アセトアミノフェン製剤を製造するための原薬と添加剤からなるプレミックス原薬を提供するものであり、特に、粉体の流動性や均質性が優れていることで、他の製造方法によるものよりも、要求される乾式直打法や連続式造粒システム等に適用性の高いプレミックス原薬の製造方法を提供することを課題とする。
【0010】
特に凝集性が強いアセトアミノフェンは、その溶解性を改善するために、ジェットミル、ピンミルやハンマーミル等を用いて微粉砕されている。しかし、60μm以下の微粒子をピンミルやハンマーミル等で粉砕すると過剰に粉砕されることがあり、その結果として、静電気帯電、分子間力(ファンデルワールス力)、表面エネルギーが強く、二次凝集して流動性が極めて悪い原薬となる。このため、製剤化の過程において、造粒操作等で添加剤を多く配合して流動性等の改善を図るが、二次凝集した原薬微粒子の分散は困難であり、これらの問題に対処する優れた方法はなかった。また、二次凝集した原薬粒子等は結合剤溶液中での分散が不均質になり易いため、結果として、部分的に二次凝集した小塊が存在する造粒物になり、含量均一性にやや難点が生じることがあった。そこで、本発明者等はアセトアミノフェンの流動性を改善させると共に、過粉砕せずに大きな粒子のみを選択的に押しつぶすような作用で粒度調整することにより、流動性や均質性が改善され、製造性に優れたアセトアミノフェン含有プレミックス原薬を提供することを本発明の課題として検討した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アセトアミノフェンの製剤化に際して、アセトアミノフェン100体積%に対して、200μm以上の粒子を20体積%以上含有するアセトアミノフェン原薬に、分散剤を配合して1回又は複数回解砕整粒することにより、アセトアミノフェン粒子の表面に分散剤を分散・付着させ、アセトアミノフェン及び分散剤の粉末100体積%に対して、200μm以上の粒子を30体積%以下含有する粉末とし、さらに、その他の添加剤を配合する過程において、1回又は複数回解砕整粒してアセトアミノフェン粒子の表面に添加剤を分散・付着させることで、多種類の添加剤を多量に使用せずとも、流動性、溶解性、均質性に優れ、また、粉体物性(粒子径・粒度分布・粒子形状・密度等)の変動幅を少ないプレミックス原薬を製造できることを見出した。
【0012】
さらに、溶解性の改善には、一般的に比表面積を大きくすることに重点が置かれているが、アセトアミノフェン粒子の表面改質も重要なポイントであり、比表面積は変わらずとも原薬粒子表面に可溶化剤や高分子結合剤を付着させ、レイアリングすることで溶出率が改善できることを見出した。これらの知見により、本混合粉末をプレミックス原薬として用いて、従来、流動性が悪い薬物では難しいとされていた最も簡単な乾式直打法により製剤化することが可能となった。また、本プレミックス原薬を連続式造粒システムに供給することで、優れた均質性の造粒物が得られ、さらには、安定した品質の製造することが可能となった。
【0013】
特に、原薬中の大きな結晶(針状又は柱状結晶等)等を選択的に解砕して、長径/短径比が3以下、望ましくは球状の粒子になるように、石臼式解砕機〔石臼式摩砕機とも云う、商品名:スーパーマスコロイダー(増幸産業株式会社)等)〕や棒状又はインペラー型解砕整粒機〔商品名:コーミル(株式会社パウレック)等)等の粒子を押しつぶすような作用で、衝撃力が弱く、発熱も少ない、解砕、整粒、分散できる装置を用いることが重要である。そのことは、
図4及び5の写真に示されるように、解砕整粒機で処理後のアセトアミノフェンは(
図5)、解砕整粒処理前のアセトアミノフェン(
図4)に含まれる大きな結晶が細かくされ、また、
図1~3のSEM写真の二次凝集粒子が存在する市販のアセトアミノフェンと違って、二次凝集がなく分散していることからも明らかである。
【0014】
また、アセトアミノフェン原薬に分散剤、及び、所望により、可溶化剤を配合した段階や、さらにその他の添加剤を配合した段階において、解砕整粒機を用いて、原薬の粒子径が大きな結晶や凝集した塊を選択的に解砕整粒して、原薬粒子の表面に分散剤等添加剤を均一に分散・付着させたプレミックス原薬を用いることで、薬物の凝集性や低流動性が改善されて、溶出性や成形性に優れ、苦味マスキングが施された小型化錠や徐放錠等の製剤を製造できることを見出した。
【0015】
また、錠剤の小型化のために添加剤の量を少なくすると、成形性が悪く、硬度が不足する場合があるが、薬物と添加剤を配合していく過程において、特に水溶性添加剤を配合する前に、若干量の水分を添加して、粉体の水分を調整したプレミックス原薬とすることで、これを打錠した場合、優れた硬度を有する錠剤が得られることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち、本発明は、例えば下記(1)~(9)に関するものであるが、これらに限定されるものではない。
(1)A)アセトアミノフェン100体積%に対して、200μm以上の粒子を20体積%以上含有するアセトアミノフェンに分散剤を配合し、1回又は複数回解砕整粒することにより、アセトアミノフェン粒子の表面に分散剤を分散・付着させ、アセトアミノフェン及び分散剤の粉末100体積%に対して、200μm以上の粒子を30体積%以下含有する粉末とし、さらに、B)その他の添加剤を配合し、添加剤を配合する過程において1回又は複数回解砕整粒することにより、アセトアミノフェン粒子の表面に添加剤を分散・付着させる、、打錠機又は造粒機に供給するためのプレミックス原薬の製造方法。
(2)造粒機が連続式造粒システムに含まれるものである上記(1)に記載の製造方法。
(3)必要に応じて、プレミックス原薬100重量%に対して、0.5~3.0重量%の水を添加する上記(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)分散剤が、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸又はケイ酸カルシウムである上記(1)~(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)その他の添加剤が結晶セルロース、崩壊剤、界面活性剤、水溶性高分子又は糖アルコール類である上記(1)~(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)その他の添加剤が、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーL、アミノアルキルメタクリレートコポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、カルボシキメチルスターチナトリウム、酸化チタン、酸化鉄、タルク、澱粉、滑沢剤、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、乳糖、糖類、糖アルコール類、D-マンニトール、トレハロース、マクロゴール、ラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベートから選ばれる1又は2種以上である上記(1)~(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)解砕整粒は石臼式摩砕整粒機又は棒状若しくはインペラー型解砕整粒機により行う上記(1)~(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)上記(1)~(7)のいずれかに記載の製造方法により製造されたプレミックス原薬を用いる錠剤の製造方法。
(9)上記(1)~(8)のいずれかに記載の製造方法により製造されたプレミックス原薬。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る製造方法(以下「本製造方法」ということがある。)によれば、アセトアミノフェンを広範囲な割合(0.5%~98重量%)で含有するプレミックス原薬が製造でき、このプレミックス原薬を用いることで、スケールアップが容易で、製造工程も簡略化できるため、生産コストが低減できる。また、本製造方法によれば、流動性や溶解性の改善のために、多種類の添加剤を多量に使用する必要がないので、従来と比べて小型化された錠剤を製造することができる。このようにして製造された錠剤は、原薬粒子が打錠機の臼や杵の金属表面に直接接触することで打錠障害が発現しやすいケースにおいても、原薬粒子の表面が、分散剤、不溶性添加剤、界面活性剤(可溶化剤)、水溶性高分子等の添加剤粒子で被覆されているため、打錠障害の発生が低減できる等の副次的な効果も併せもっている。さらに、本製造方法により製造されたプレミックス原薬を乾式直打法に供する場合、打錠に適した水分値(原薬や添加剤の物性や配合割合にもよるが、プレミックス原薬100重量%に対して、概ね0.5%~3.0重量%)に調製することで、二次凝集が低減でき、且つ、高い錠剤硬度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、市販のアセトアミノフェンに二次凝集粒子が含まれることを示すSEM写真である。
【
図2】
図2は、市販のアセトアミノフェンに二次凝集粒子が含まれることを示すSEM写真である。
【
図3】
図3は、市販のアセトアミノフェンに二次凝集粒子が含まれることを示すSEM写真である。
【
図4】
図4は、解砕整粒機処理前のアミノフェンの写真である。
【
図5】
図5は、解砕整粒機処理後のアミノフェンの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、アセトアミノフェン原薬及び分散剤等の添加剤を配合した後、1回又は複数回解砕整粒して、原薬粒子の表面に添加剤を分散・付着させるプレミックス原薬の製造方法等に関する。より具体的には、アセトアミノフェン100体積%に対して、200μm以上の粒子を20体積%以上含有するアセトアミノフェンに分散剤を配合し、1回又は複数回解砕整粒することにより、アセトアミノフェン粒子の表面に分散剤を分散・付着させ、アセトアミノフェン及び分散剤の粉末100体積%に対して、200μm以上の粒子を30体積%以下含有する粉末とし、さらに、その他の添加剤を配合し、添加剤を配合する過程において1回又は複数回解砕整粒することにより、アセトアミノフェン粒子の表面に添加剤を分散・付着させる、打錠機又は造粒機に供給するためのプレミックス原薬の製造方法等に関する。
【0020】
本願において「プレミックス原薬」とは、原薬と添加剤を混合して医薬製造用の混合原料製品として販売されるもの等に限定されず、原薬と添加剤の混合物であれば何れも包含する。本製造方法により製造されるプレミックス原薬は、流動性等が改善されている上に、粉体の物性の変動幅が低減され均一性が高いことから、製造性が高いものである。従って、本プレミックス原薬を用いて、錠剤等に製剤化する場合、造粒工程を省略した乾式直打法や、品質管理が難しい連続式造粒システムにも適用でき、また、添加剤の種類や量を低減して小型で高含量の錠剤等の製造やその製造コストの低減を可能とする。
【0021】
本製造方法においては、アセトアミノフェンと添加剤を混合した粉末を、解砕整粒機を使用して解砕・整粒し、原薬粒子の表面に分散剤や可溶化剤等の添加剤を均一に分散・付着させることが重要である。本製造方法において、解砕整粒するために使用する装置としては、特に限定されるものではないが、石臼(グラインダー)や棒状又はインペラー型の回転体(回転数:約800rpm~3000rpm)により、大きな粒子を選択的に押しつぶすような作用で粒度調整する解砕整粒機が適している。例えば、投入した原料粉末は間隔を自由に調製できる上下2枚の無気孔グラインダーの間隔に送り込まれて、そこで生じる圧縮、剪断、転がり摩擦等によってすり潰されて、原料粉末の粒子は次第に丸みを帯び、より滑らかになるという機能を有する石臼式摩砕機(スーパーマスコロイダー等)が挙げられる。本製造方法においては、石臼式摩砕機のクリアランス(砥石間隙)は100~200μm程度、回転数800~3000rpmが好ましい。また、投入した原料粉末を回転するインペラ(回転羽根)による遠心力で円筒状のスクリーンに押し付けで解砕し、インペラ上で整粒した後、スクリーンに設けられた多数の開口部から原料粉末を排出するという機能を有する棒状又はインペラー型解砕整粒機(コーミル等)が挙げられる。解砕整粒機のスクリーン径(スクリーンの開口部の直径)は1mm~3mm程度が好ましい。
【0022】
「解砕」と同様に粒子を細かくする処理として「粉砕」があるが、粉砕機はハンマーやピンが高速回転(回転数:約5000rpm~15000rpm)して、原料粉末粒子を圧縮、衝撃、摩擦、せん断等の強い衝撃を与えて粒子を細かくするもので、特に粒子の大きさに関係なく処理する。従って、例えば、アセトアミノフェンの場合、ピンミル、ハンマーミル、ジェットミル等の粉砕機を用いて微粉砕すると、小さい粒子が過粉砕され、表面積が大きくなり、静電気帯電や分子間力の影響が強くなることから、流動性が低下して二次凝集が生じるため、装置内壁面への付着等が起こり、作業性が低下する。
【0023】
以上のことから、本製造方法においては、一般的な粉砕処理ではなく、アセトアミノフェンの粗大結晶や塊を選択的にほぐして細かくし、微粉領域の粒子については過粉砕せずに均一に分散させ、粒子表面に分散剤等添加剤を均一に付着させる、すなわち、解砕整粒を行うことが重要である。特に、薬物の結晶の中でも細長い形状の針状結晶については、長径/短径比が3以下になるように解砕整粒して粒子径を調整することで、より均一に分散させることができる。これにより、薬物の静電気帯電や分子間力は抑えられて流動性や凝集性が改善するため、より製造性が向上する。特に、製造過程における晶析工程において生成された大きな結晶や、二次凝集による塊等が含まれているような粒子径が不揃いである薬物を使用する場合は、小さな粒子径の薬物をさらに過粉砕して二次凝集の原因とならないように、大きい粒子径の薬物を選択的に細かくして粒子径を調整できる解砕整粒処理が好ましい。また、本製造方法において、解砕整粒工程は、原薬や添加剤の配合割合や量等、又、作業環境等に応じて、1回のみならず、必要な回数実施することが好ましい。
【0024】
従って、本製造方法においては、原薬メーカーや製造ロットにより差はあるものの、アセトアミノフェン原薬は、当初、アセトアミノフェン100体積%に対して、200μm以上の粒子を20体積%以上含有するするところ、分散剤を配合して解砕整粒することにより、大きい粒子を選択的に細かくし、アセトアミノフェン及び分散剤の粉末100体積%に対して、少なくとも、200μm以上の粒子を30体積%以下含有する粉末とする。ここで、解砕整粒後の200μm以上の粒子の割合は、解砕整粒前に比べて減少するものとする。なお、本発明における粒度分布はレーザー回折散乱法(マスターサイザー2000:マルバーン社)を用いた体積分布評価により求められる。また、プレミックス原薬の粒度分布は、添加剤(例えば:結晶セルロースや崩壊剤)配合割合にもよるが、添加剤の粒子径が支配的になるため、原薬そのものの粒子径よりも大きく表示されることもある。
【0025】
最近は、原薬製造メーカーにおいて、原薬合成の晶析工程で生成する結晶を平均粒子径が60μm以下に微粉砕しているケースが多いため、難溶性の原薬は二次凝集力が強く、流動性、均一性に難点が生じ、また、粉砕装置内壁面への付着により収率が低下する。しかし、原薬と分散剤(カープレックスやアエロジル)、必要に応じて、界面活性剤(可溶化剤)を混合し、衝撃力の弱い石臼式摩砕機やインペラー型解砕整粒機を用いて、大きな粒子を選択的に解砕整粒し均一分散することで、再凝集は防止でき、流動性や溶出性を改善できる。
【0026】
乾式直打法や湿式造粒システムに供給できるプレミックス原薬の本発明方法は、原薬と分散剤(含水二酸化ケイ素(カープレックス)や軽質無水ケイ酸(アエロジル)等)を0.0~6.0重量%配合し、解砕整粒して均一分散させ、さらに、その他の添加剤として、例えば、水溶性高分子結合剤、糖アルコール、トレハロース、カルボキシビニルポリマー等を、解砕整粒して原薬粒子の表面に分散・付着させるものである。本プレミックス原薬を用いることで、乾式直打法においては不具合が生じやすい、難流動性で、且つ帯電性の強い原薬であっても、含量均一性に優れた錠剤を製造することができる。
【0027】
また、本製造方法では、1)アセトアミノフェンと分散剤(含水二酸化ケイ素や軽質無水ケイ酸等)を1回又は複数回解砕整粒して均一分散させ、さらに、2)不溶性添加剤(結晶セルロースや崩壊剤等)を配合し、3)必要に応じて、打錠に適した水分値に調整し、4)水溶性高分子結合剤(カルボキシビニルポリマーやヒドロキシプロピルセルロース等)を難流動性原薬粒子の表面に1回又は複数回解砕整粒して均一に分散・付着(まぶす)させることで、帯電性や流動性が改善され、二次凝集を防止できるプレミックス原薬を得ることができる。さらに、複数種の原薬を配合する場合において、接触により原薬が変質するケースでは、中間層を設けて接触を回避させることもある。
【0028】
また、原薬メーカーや添加剤メーカーより入荷した原薬や添加剤の水分は、各社の出荷規格が厳しくなったため、打錠に適した水分値よりも過乾燥されていることが多くなっている。このため、原薬の静電気帯電、分子間力(ファンデルワールス力)及び表面エネルギーが高くなって二次凝集しやすくなることから、製剤化した際に含量均一性に問題が生じることがある。さらには、錠剤硬度も低くなりやすい。そこで、本製造方法においては、必要に応じて、打錠に適した水分値、すなわち、プレミックス原薬100重量%に対し、0.5~3.0重量%の水分値、に調整することにより、原薬の静電気帯電、分子間力(ファンデルワールス力)及び表面エネルギーを抑えられるため、製剤化した場合の二次凝集等による含量均一性に関わる問題や錠剤硬度に関わる問題を解消できる。
【0029】
また、溶解性を改善するためには、界面活性剤(可溶化剤)による表面改質が重要で、粉末状の界面活性剤(可溶化剤)、例えば、粉末状のマクロゴール、ラウリル硫酸ナトリウム等をそのまま、又は、水分調整のための水に溶解して添加し、1回又は複数回解砕整粒して原薬粒子の表面に均一分散・付着してもよい。
【0030】
本製造方法で製造されたプレミックス原薬を用いて錠剤を製造する場合、造粒工程が省略された乾式直打法であっても、原薬粒子の表面に、不溶性添加剤と水溶性高分子添加剤を解砕整粒して均一分散・付着させることで、結合性、徐放性を生じさせることができる。さらに、本製造方法の過程において、打錠に適した水分値に調整することで、水も結合剤として作用することとなり、硬度が30N以上の錠剤を製造できる。また、本製造方法は、二次凝集した小塊で存在する原薬粒子の分散に優れるため、本プレミックス原薬を乾式直打法や湿式連続式造粒システムにより製剤化した場合でも、含量均一性に優れた錠剤や造粒物が得られる。
【0031】
最近の原薬は、溶出率を高める目的で、微粉砕機(ピンミル、ハンマーミル、ジェットミル等)を用いて微粉砕されていることがあるが、原薬の粉体物性によっては、静電気帯電・分子間力・表面エネルギーがより大きくなり二次凝集して、逆に溶出率が低下するケースがある。また、微粉砕工程は装置壁面への付着等による収率低下やコストアップの要因となることがある。このため、本製造方法のように、原薬合成の晶析工程で産出された大きな粒子径の結晶や二次凝集した原薬に分散剤(カープレックスやアエロジル等)を、0.0~3.0重量%程度配合して、解砕整粒機により原薬粒子の表面に分散剤を均一分散・付着させることで、混合粉末の粒子径が調整されて流動性や分散性を改善することができる。この混合粉末にカルボキシビニルポリマーや水溶性高分子等を8.0~25.0重量%、さらに結晶セルロース、糖アルコール類、崩壊剤等を1.0~35.0重量%配合して均一分散・付着させた後、湿式連続造粒システムに供給することもできる。一方、この混合粉末に、結晶セルロース、崩壊剤等(5~45重量%)、界面活性剤(可溶化剤)粉末を配合し、必要に応じて水分調整し、さらに水溶性添加剤(例えば、糖アルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等)を0.0~35.0重量%配合して均一分散・付着させた後、直接打錠法により打錠することで、錠剤の含量均一性のみならず、溶解性についても改善できる。
【0032】
本発明におけるアセトアミノフェンの配合割合は、特に制限されるものではなく、本発明に係るプレミックス原薬(以下「本プレミックス原薬」ということがある。)100重量%に対して、0.5~98重量%と広範囲の配合が可能であるが、錠剤を小型化して服用性を向上させるためには、薬物の配合量を多くすることが好ましく、本プレミックス原薬100重量%に対して、75~95重量%であり、好ましくは85~95重量%であり、さらに好ましくは87~93重量%である。また、本製造方法において、アセトアミノフェン一種単独で使用してもよいが、対象とする疾患に応じてその他の医薬活性成分を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0033】
本製造方法で使用する添加剤としては、通常、一般製剤の製造に使用されている種々の添加剤を目的に応じて適宜配合することができ、崩壊剤、結合剤、矯味剤、着色剤、張化剤、界面活性剤(可溶化剤)、抗酸化剤、保存剤、可塑剤、pH調整剤、甘味剤、香料等が挙げられる。
【0034】
本製造方法で使用する分散剤としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、重質無水ケイ酸、水酸化アルミナマグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム造粒物等が挙げられ、好ましくは、含水二酸化ケイ素又は軽質無水ケイ酸で、より好ましくは、含水二酸化ケイ素である。これらの分散剤は、一種単独で使用してもよいし、また二種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
本発明における分散剤の配合割合は、特に制限されるものではないが、プレミックス原薬100重量%に対して0.01~6.0重量%であり、好ましくは0.3~2.0重量%であり、原薬粒子の表面を完全に被覆する必要はない。また、分散剤の粒子径は、原薬粒子に対して、好ましくは1/10以下であり、より好ましくは1/100以下である。
【0035】
本製造方法において界面活性剤(可溶化剤)を配合する場合は、基本的には、分散剤と一緒に粉末状の可溶化剤を配合することができるが、水分調整をする場合には、可溶化剤(液状であるポリソルベート80等)を水に溶解させて、水分調整と同時に添加することもできる。本製造方法で使用する界面活性剤(可溶化剤)としては、粉末状では、例えば、マクロゴール4000、マクロゴール6000又はマクロゴール20000等のマクロゴール粉末、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。また、液状では、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート80、マクロゴール200、マクロゴール400等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、溶出改善等に用いられる、ポリソルベート、マクロゴール(ポリエチレングリコール)、ラウリル硫酸ナトリウム等である。これらの界面活性剤(可溶化剤)は、一種単独で使用してもよいし、また二種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
本発明における界面活性剤(可溶化剤)の配合割合は、特に制限されるものではないが、プレミックス原薬100重量%に対して0~6.0重量%であり、好ましくは0.5~3.0重量%である。
【0036】
本製造方法で使用する賦形剤としては、例えば、糖類(乳糖、ブドウ糖、果糖、白糖など)、糖アルコール(D-マンニトール)、結晶セルロース、粉末セルロース、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、デキストリン、βーシクロデキストリン、カルメロースナトリウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、二酸化ケイ素、沈降性炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、乳酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、タルク、カオリン等が挙げられるが、好ましくは、結晶セルロースである。これらの賦形剤は、一種単独で使用してもよいし、また二種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
本発明における賦形剤の配合割合は、特に制限されるものではないが、プレミックス原薬100重量%に対して0~85重量%であり、好ましくは2~60重量%である。
【0037】
本製造方法で使用する崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース類(例えば、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース・カルメロースナトリウム等)、カルボキシメチルスターチ類(例えば、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム(デンプングリコール酸ナトリウム)等)、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシメチルスターチナトリウム、デンプン類(部分アルファー化デンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン等)、アルギン酸、又はベントナイト等が挙げられる。好ましくは、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分アルファー化デンプンであり、また、より好ましくは、クロスポビド又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースで、特に好ましくは、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである。これらの崩壊剤は、一種単独で使用してもよいし、また二種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
本発明における崩壊剤の配合割合は、特に制限されるものではないが、プレミックス原薬100重量%に対して、0~30重量%であり、好ましくは1.5~20重量%である。
【0038】
本製造方法で使用する徐放性基剤としては、例えば、水と接触してヒドロゲルを形成して薬物の放出を制御し得るものが好ましく、ヒドロキシプロピルセルロース(高粘度グレード)、メチルセルロース、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース等のセルロース誘導体、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム等が挙げられ、好ましくは、ヒプロメロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はカルボキシビニルポリマーで、より好ましくは、ヒプロメロース又はカルボキシビニルポリマーである。これらの徐放性基剤は、一種単独で使用してもよいが、二種以上を組み合わせて、製剤が所望の徐放性を示すように調整して使用するのが好ましい。
徐放性基剤の配合量は、特に制限されるものではないが、プレミックス原薬100重量%に対して、0~20重量%であり、好ましくは1~15重量%である。
【0039】
本製造方法で使用する滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、硬化油、ポリエチレングリコール、ジメチルポリシロキサン、カルナウバロウ、ラウリル硫酸ナトリウム、ミツロウ、サラシミツロウ等が挙げられ、好ましくは、ステアリン酸マグネシウムである。これらの滑沢剤は、一種単独で使用してもよいし、また二種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
本発明における滑沢剤の配合割合は、特に制限されるものではないが、プレミックス原薬100重量%に対して0.05~3.0重量%であり、好ましくは0.1~2.5重量%である。
【0040】
本製造方法で使用する結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体(商品名:POVACOAT)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー等の溶液もしくは粉末状の結合剤が挙げられる。これらのうち、水溶性高分子結合剤でも分子量の小さいものは、原薬粒子の表面に付着して界面張力を下げる効果があり、難溶性原薬の溶解性を改善することができる。また、水溶性高分子結合剤の分子量の大きいものは、水分の付着によりゲルを形成して溶出を遅延させ、徐放性作用がある。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下に何ら限定されるものではない。
なお、解砕整粒機はスーパーマスコロイダーMKCA6-5JR(増幸産業社製)又はコーミルQC‐197S(パウレック社製)、打錠機はロータリー打錠機VEL5型(菊水製作所製)を使用した。
【0042】
実施例1
アセトアミノフェン粉末60.0gにカープレックス0.3gを加え、解砕整粒機(スーパーマスコロイダー)で解砕整粒・均一分散した粉末に、さらに、結晶セルロース(セオラスKG-1000)400.0gと崩壊剤(低置換度ヒドロキシプロピルセルロースL-HPC)130.0gを加え、打錠に適した水分値に調整(錠剤100重量%に対して水1.8重量%添加)し、解砕整粒機(コーミル)で解砕整粒・均一分散し、さらに、PVACOAT13.0g及びパーテックM120.0gを加え、解砕整粒機(コーミル)で解砕整粒・均一分散し、打錠機に供給するプレミックス原薬723.3gを得た。このプレミックス原薬を打錠圧12KNで打錠し、硬度119Nの錠剤を得た。
[錠剤中成分] [含量割合(質量%)]
アセトアミノフェン (60.0g) 8.30%
カープレックス (0.3g) 0.04%
結晶セルロース(KG-1000)(400.0g) 55.30%
L-HPC(崩壊剤) (130.0g) 17.98%
水分調整
POVACOAT (13.0g) 1.80%
パーテックM (120.0g) 16.59%
【0043】
実施例2
アセトアミノフェン粉末96.0gにアエロジル0.4gを加え、解砕整粒機(スーパーマスコロイダー)で解砕整粒・均一分散した粉末に、結晶セルロース(セオラスKG-1000;旭化成ケミカルズ)300.0gとカルボキシビニルポリマー160.0gを加え、解砕製粒機(コーミル)で解砕整粒・均一分散し、湿式連続造粒システムに供給するプレミックス原薬556.4gを得た。
[プレミックス原薬中成分] [含量割合(質量%)]
アセトアミノフェン (96.0g) 17.27%
アエロジル (0.4g) 0.07%
結晶セルロース(KG-1000)(300.0g) 53.92%
カルボキシビニルポリマー (160.0g) 28.76%
【0044】
実施例3
アセトアミノフェン粉末200.0gにアエロジル3.0gを加え、解砕整粒機(スーパーマスコロイダー)で解砕整粒・均一分散した粉末に、結晶セルロース(セオラスKG-1000)350.0g及び糖アルコール(商品名:トレハロース)130.0gを加え、解砕製粒機(コーミル)で解砕整粒・均一分散し、プレミックス原薬683.0gを得た。
[プレミックス原薬中成分] [含量割合(質量%)]
アセトアミノフェン (200.0g) 29.29%
アエロジル (3.0g) 0.44%
結晶セルロース(KG-1000)(350.0g) 51.24%
トレハロース (130.0g) 19.03%
【0045】
実施例4
アセトアミノフェン粉末300.0gにカープレックス3.0gを加え、解砕整粒機(スーパーマスコロイダー)をで解砕整粒・均一分散した粉末に、マクロゴール4000粉末11.0gと結晶セルロース(KG-1000)350.0gと、さらにHPC-SSL26.0gを加え、解砕整粒機(コーミル)で解砕整粒・均一分散し、プレミックス原薬690.0gを得た。
[プレミックス原薬中成分] [含量割合(質量%)]
アセトアミノフェン (300.0g) 43.5%
カープレックス (3.0g) 0.4%
マクロゴール4000粉末 (11.0g) 1.6%
結晶セルロース(KG-1000)(350.0g) 50.7%
HPC-SSL (26.0g) 3.8%
【0046】
実施例5
アセトアミノフェン粉末700.0gとカープレックス3.2gに水を加えて水分調整し、結晶セルロース(KG-1000)18.0gと崩壊剤(NBD-21)20.0gを加え、解砕整粒機(スーパーマスコロイダー)で解砕整粒・均一分散した粉末に、滑沢剤を配合し、解砕整粒機(コーミル)で解砕整粒・均一分散した直接打錠用プレミックス粒子743.2gを、打錠圧14KNで打錠し、錠剤硬度55Nの錠剤を得た。
[錠剤中成分] [含量割合(質量%)]
アセトアミノフェン (700.0g) 94.2%
カープレックス (3.2g) 0.4%
水分調整
結晶セルロース(KG-1000)(18.0g) 2.4%
崩壊剤(NBD-21) (20.0g) 2.7%
滑沢剤 (2.0g) 0.3%
【0047】
実施例6
アセトアミノフェン粉末300.0gにカープレックス1.5gを加え、解砕整粒機(スーパーマスコロイダー)で解砕整粒・均一分散した粉末を、打錠に適した水分値に調整し、カルボキシビニルポリマー55.0gを加え、解砕整粒機(コーミル)で解砕・均一分散し、さらにヒドロキシプロピルセルロース(HPC)7.0gとトレハロース3.0gを加え、解砕整粒機(コーミル)で解砕・均一分散し、さらに滑沢剤(ステリン酸マグネシウム)8.5gを配合して、直接打錠用プレミックス原薬375.0gを得た。このプレミックス原薬を打錠圧14KNで打錠し、硬度67Nの錠剤を得た。
[錠剤中成分] [含量割合(質量%)]
アセトアミノフェン (300.0g) 80.0%
カープレックス (1.5g) 0.4%
水分調整
カルボキシビニルポリマー (55.0g) 14.7%
HPC(SSL) (7.0g) 1.9%
トレハロース (3.0g) 0.8%
滑沢剤 (8.5g) 2.3%
【0048】
比較例1
アセトアミノフェン粉末100.0gとアエロジル1.5gを均一分散した粉末に、結晶セルロース(UF702:旭化成ケミカルズ)265.0gと滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム)2.0gを加え、ポリ袋で混合した。得られた粉末の流動性評価として、内径15mmの漏斗からの流出について測定したが、本粉末は振動を与えても流出しなかった。このため、本粉末の打錠は困難であった。
[粉末中成分] [含量割合(質量%)]
アセトアミノフェン (100.0g) 27.1%
アエロジル (1.5g) 0.4%
結晶セルロース(UF-702) (265.0g) 71.9%
滑沢剤 (2.0g) 0.6%
合計 368.5g
【0049】
比較例2
アセトアミノフェン粉末100.0gにアエロジル1.5gを加え均一分散した粉末に、結晶セルロース(UF702:旭化成ケミカルズ)265.0gと滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム)8.5gを加え、ポリ袋で混合した。得られた粉末の流動性評価としては、内径15mmの漏斗からの流出を測定したが、本粉末は振動を与えても流出しなかった。このため、本粉末の打錠は困難であった。
[粉末中成分] [含量割合(質量%)]
アセトアミノフェン (100.0g) 26.7%
アエロジル (1.5g) 0.4%
結晶セルロース(UF-702) (265.0g) 70.7%
滑沢剤 (8.5g) 2.3%
合計 375.0g
【0050】
試験例1:アセトアミノフェンの粒度分布の測定
アセトアミノフェン原薬(ロットA~E)及び本製造方法に従って、アセトアミノフェン原薬に分散剤を添加して解砕整粒した粉末(ロットE)について、レーザー回折法による粒子測定法(乾式測定)を用いて、粒度分布の測定を行い、各々200μm以上の粒子の割合を算出した。なお、装置は乾式自動分散ユニットマイクロトレイ(マスターサイザー2000、マルバーン社製)を用い、分散圧縮空気圧は2Bar、粒度分布解析は体積換算法で行った。結果の一例を表1に示した。なお、表1の結果に示される通り、粒度分布の測定においては、測定条件や測定装置に依存して、差が生じることがある。
【0051】
【産業上の利用可能性】
【0052】
本製造方法により製造されたプレミックス原薬は、流動性、溶解性、均質性に優れ、直接打錠法や連続式造粒システムにおいて製剤化できるので、スケールアップが容易で、また、簡略化・効率化された製造工程により、製造コストが低減できるため、非常に有用で実用的である。