(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】エアロゲルを製造するための連続的な方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/16 20060101AFI20220715BHJP
B01J 2/02 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C01B33/16
B01J2/02 Z
(21)【出願番号】P 2018567196
(86)(22)【出願日】2017-07-03
(86)【国際出願番号】 FR2017051802
(87)【国際公開番号】W WO2018007740
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-06-08
(32)【優先日】2016-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518449205
【氏名又は名称】キー エアロゲル
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルイーズ,フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】クラヴィエール,ジャン-イヴ
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/079040(WO,A1)
【文献】特表2001-504752(JP,A)
【文献】特開2015-067465(JP,A)
【文献】特表2002-505940(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0267768(US,A1)
【文献】特表2003-512277(JP,A)
【文献】特表平09-508055(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0323589(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102583407(CN,A)
【文献】特開2007-198786(JP,A)
【文献】MONER-GIRONA, M. et al.,Sol-Gel Route to Direct Formation of Silica Aerogel Microparticles Using Supercritical Solvents,Journal of Sol-Gel Science and Technology,2003年,26,645-649
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/16
B01J 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体(2)から造粒エアロゲル(1)を製造する方法であって、当該方法は以下の工程、即ち、
混合反応器(5)において、前記前駆体(2)を、合成溶媒(3)及び加水分解剤と混合してゲルを得る混合工程と、
造粒装置(6)において、得られた生成物を造粒して、顆粒を生成する造粒工程と、
熟成反応器(7)において、前記顆粒を前記合成溶媒(3)及び前記加水分解剤と接触させた状態に維持する維持工程と、
洗浄反応器(8)において、洗浄溶媒を添加することにより前記顆粒を洗浄して、前記加水分解剤を抽出する洗浄工程と、
乾燥装置において、超臨界CO
2を過剰に送ることによって、前記顆粒を乾燥させて前記合成溶媒(3)及び/又は前記洗浄溶媒を抽出する乾燥工程と、
を含み、
前記造粒工程、維持工程、洗浄工程及び乾燥工程がCO
2の臨界点の圧力より高い圧力で実施され、これらの工程間でもこれらの条件が維持されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記混合工程では、前記前駆体(2)を、合成溶媒(3)、加水分解剤および触媒(4)と混合してゲルを得ており、
前記洗浄工程では、前記加水分解剤および前記触媒(4)が抽出される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合工程もまた、CO
2の臨界点の圧力よりも高い圧力で実施される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥工程の際に、
合成溶媒および洗浄溶媒を含む溶媒
が負荷された前記顆粒が超臨界CO
2ジェットにさらされ、それらを流動床条件の下に、そして、CO
2が超臨界であり且つ、
合成溶媒および洗浄溶媒を含む溶媒
が負荷された粒子がCO
2負荷された粒子よりも重くなるような温度及び圧力の条件下に置く、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記流動床の速度は、
合成溶媒および洗浄溶媒を含む溶媒
が負荷された粒子が飛び去らず、且つ、
合成溶媒および洗浄溶媒を含む溶媒がCO
2によって置換されるまでCO
2ジェットと直面し続けるように調節されており、
CO
2だけを含んだそれらが、塔の頂部から飛び去り、当該方法において更に使用されるべく回収され得る、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
合成溶媒および洗浄溶媒を含む
前記溶媒はエタノールである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記合成溶媒(3)及び/又は洗浄溶媒が有機溶媒であり、前記乾燥工程が100~200バールの圧力及び35~50℃の温度で行われる、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記乾燥工程の後に、超臨界CO
2を不活性ガスに置換する工程、次いで、減圧工程を含む、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記減圧工程は段階的な減圧工程である、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記超臨界CO
2を不活性ガスに置換する工程において、超臨界CO
2で充填された前記顆粒が前記不活性ガスのジェットにさらされ、それらを流動床条件の下に、そして、CO
2が超臨界であり且つ、前記超臨界CO
2の充填顆粒が前記不活性ガスで充填された粒子よりも重くなるような温度及び圧力の条件下に置く、ことを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前駆体(2)から造粒エアロゲル(1)を製造するための設備であって、
混合反応器(5)と、
前記混合反応器(5)からのゲル化液体ジェットから顆粒を形成することができる造粒装置(6)と、
熟成反応器(7)と、
洗浄反応器(8)と、
乾燥装置と、
減圧装置(13)と、
を備え、
前記熟成反応器(7)、前記洗浄反応器(8)及び前記乾燥装置、並びに、これらの反応器間で生成物を移送するための手段は、前記生成物をCO
2の臨界点の圧力より高い圧力で1つの反応器から別の反応器まで維持するよう作動及び許容するように構成されている、ことを特徴とする設備。
【請求項12】
前記造粒装置(6)は、前記熟成反応器(7)の内部に配置されている、ことを特徴とする請求項11に記載の設備。
【請求項13】
前記混合反応器(5)はまた、前記生成物をCO
2の臨界点の圧力より高い圧力で1つの反応器から別の反応器まで維持するよう作動及び許容するように構成されている、ことを特徴とする請求項11又は12に記載の設備。
【請求項14】
前記顆粒に含まれる溶媒の超臨界CO
2による置換を可能とするように構成された第1の流動床塔(9)を更に備える、ことを特徴とする
請求項11に記載の設備。
【請求項15】
前記第1の流動床塔(9)は、
下から、超臨界CO
2を注入する手段と、
下から、溶媒負荷された顆粒を導入する手段と、
上から、CO
2負荷された顆粒を排出する手段と、
を備えてなる、ことを特徴とする請求項14に記載の設備。
【請求項16】
前記顆粒に含まれる超臨界CO
2を、加圧された不活性ガスに置換するように構成された第2の流動床塔(11)を更に備える、ことを特徴とする請求項14に記載の設備。
【請求項17】
前記第2の流動床塔(11)は、
下から、超臨界N
2を注入する手段と、
下から、CO
2負荷された顆粒を導入する手段と、
上から、加圧不活性ガスで充填された顆粒を排出する手段と、
を備えてなる、ことを特徴とする請求項16に記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の分野に関し、特に、エアロゲルを製造するための連続的な方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアロゲルは固体材料(又は固体物質)であり、その構造が、細孔の大部分が2~50nmの直径(メソ細孔)を有する多孔質マトリックスからなる固体材料である。これにより、高い気孔率(約95%)、高い比表面積(1000m2/gまで)、低い熱伝導率(約0.01W/m.K)、低い屈折率(約1.05)、及び高い光透過率(90%)などの例外的な特性を得ることができる。これは、例えば断熱材として非常に効率的である。エアロゲルの製造は、コロイド状分子溶液又は同様のものを架橋ゲルに変換することに基づいている。エアロゲルは、前駆体の性質に応じて、無機(例えば、酸化ケイ素、ジルコニウム又はチタンベースの前駆体)、有機(例えば、レゾルシノール-ホルムアルデヒド、ポリウレタン又はセルロースポリマー)又は混合物(ハイブリッド)(有機・無機前駆体又は組み合わせによって得られる)になることが可能である。
【0003】
エアロゲルは、乾燥工程中にゲルの液体部分をガスで置換することによって得られる。この変換には、極めて困難な方法及び非常に重厚な設備が必要であり、したがって高い製造コストが必要である。実際に、良質のエアロゲルを製造するためには、ゲルのナノ構造の部分的又は全体的破壊を引き起こす、関連する毛細管力を伴う二相系を生じることなく、乾燥工程を実施しなければならない。したがって、超臨界乾燥(SCD:supercritical drying)環境で、高温高圧下で行わなければならない。これは、特に生成物が超臨界乾燥モジュールにバッチで導入されるため、効率的な工業生産には適していない。妥当なコストで工業量のエアロゲルを製造するために、乾燥工程は周囲圧力で行うことができる(APD、Ambient Pressure Drying:周囲圧力乾燥)が、そのとき溶媒の蒸発のために生成物の質が損なわれ、これは、生成物の必要な化学修飾に関連する他の困難を引き起こす。さらに、様々な工程を必要とする前駆体からのエアロゲルの製造は、様々な場所で様々な作用因子によって個別にまた幾度か実施されることが多く、それによって生産時間及びコストがさらに増大し、また、生成物の最終的な質の変化により誘発されるリスクが高まる。
【0004】
特許文献1は、乾燥工程中の超臨界CO2の注入、圧力波の送達、及び減圧中の非反応性及び非凝縮性ガス(NRNC:non-reactive and non-condensable)の使用によるエアロゲルの製造のための促進された方法を提案している。しかし、記載された方法では、バッチモードで不連続に作動する抽出器を使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、これらの欠点を少なくとも部分的に補うことである。この目的のために、本発明は、前駆体から造粒エアロゲルを製造する方法であって、次の工程、即ち、
-前駆体を合成溶媒及び加水分解剤、例えば水及び適宜には触媒と混合して、ゲルを得る混合工程、
-得られた生成物を、特にゲルのジェットを切断することにより造粒して顆粒を生成する造粒工程、
-顆粒を合成溶媒及び加水分解剤と接触させて維持する維持工程、
-洗浄溶媒を添加することにより顆粒を洗浄して、特に加水分解剤及び適宜には触媒を抽出する洗浄工程、
-超臨界CO2を過剰に送ることによって、合成溶媒及び/又は洗浄溶媒を抽出するために顆粒を乾燥させる乾燥工程、
を含む方法を提案する。
【0007】
このプロセスは、造粒工程、維持工程、洗浄工程及び乾燥工程がCO2の臨界点の圧力より高い圧力で実施され、これらの工程の間にこれらの条件が維持される点で特有である。
【0008】
これらの提供(措置)のおかげで、エアロゲル製造方法を連続的に実施することができ、生成物が依然として流体である段階で、圧力の増加を行うことができる。実際、生成物が固体になるとすぐに(造粒されるとすぐに)、圧力の増加はもはや連続的に実施することができなくなる。本発明のおかげで、生成物は、一旦固体になるといかなる圧力の蓄積も、最終的な減圧を除いた減圧も、必要としなくなる。これにより、製造時間とコストが大幅に削減され、危険な状態の変化と減圧工程が削減され、生成物の質が向上する。
【0009】
他の特徴によれば、
-混合工程がまた、CO2の臨界点の圧力よりも高い圧力で行うことができ、この工程のわずかな加速を可能にする、
-乾燥工程の間に、溶媒負荷された顆粒を超臨界CO2ジェットに供して、それらを流動床条件下、CO2が超臨界であり、溶媒負荷された粒子がCO2負荷粒子よりも重くなるようにする温度及び圧力の条件下に置くことができ、連続する乾燥工程を行って、乾燥工程を加速することを可能にする、
-合成溶媒及び/又は洗浄溶媒が有機溶媒であってよく、乾燥工程は100~200バールの圧力及び35~50℃の温度で行ってよく、エタノールがプロセスにとって安価で適切な生成物であり、100~200バール及び35~50℃の条件は、流動床へのCO2の一定の注入速度では、エタノールを含有する粒子が、超臨界CO2のみ含有するものが塔の頂部から飛散するのに対して、飛散しないようにして、さらなる処理のために回収することができるようにする、
-エアロゲル製造方法は、乾燥工程の後に、超臨界CO2を不活性ガス、好ましくは窒素に置換する工程、次いで、好ましくは段階的な減圧工程を含むことができ、この追加的な工程はエアロゲル顆粒を損傷することのない迅速な減圧を可能にする、
-超臨界CO2を不活性ガスに置換する工程において、超臨界CO2で充填された顆粒を前述の不活性ガスのジェットに供してよく、それらを流動床条件下、CO2が超臨界であり、超臨界CO2の充填顆粒が不活性ガスで充填された粒子よりも重くなるようにする温度及び圧力の条件下に置き、そのため、超臨界CO2を不活性ガスで置換して連続的に実施し、この工程を加速する工程を可能にする。
【0010】
本発明はまた、前駆体から造粒エアロゲルを製造するための設備であって、
-混合反応器、
-造粒装置であって、適宜には熟成反応器の内部に配置された、混合反応器からのゲル化液体ジェットから顆粒を形成することができる造粒装置、
-熟成反応器(エイジング反応器)、
-洗浄反応器、
-乾燥装置、
-減圧装置
を備える設備に関する。
【0011】
この設備は、熟成反応器、洗浄反応器及び乾燥装置、ならびにこれらの反応器間で生成物を移送するための手段は、生成物をCO2の臨界点の圧力より高い圧力で1つの反応器から別の反応器まで維持するよう作動及び許容するよう構成される点で、特有である。
【0012】
これらの提供(措置)のおかげで、設備は、エアロゲル顆粒を連続的に製造することを可能にし、圧力の増加は、生成物がまだ流体である段階において可能である。
【0013】
他の特徴によれば、
-混合反応器は、前述の生成物がCO2の臨界点の圧力より高い圧力で1つの反応器から別の反応器まで維持するよう作動及び許容するよう構成することもでき、特に、これは反応時間をさらに短縮する、
-装置は、超臨界CO2による顆粒に含まれる溶媒の置換を可能にするように構成された第1の流動床塔をさらに備えてよく、それによって顆粒の連続乾燥と乾燥工程の加速が可能になる、
-装置は、顆粒に含まれる超臨界CO2を、加圧された不活性ガス、好ましくは窒素に置換するように構成された第2の流動床塔をさらに備えてよく、エアロゲル顆粒を損傷することなく迅速に減圧するようにする。
【0014】
本発明は、添付の図面を参照しながら、以下の詳細な説明を読むことでよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に従う方法を実行することができる設備を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による方法は、連続的にエアロゲル1を製造することにある。これを行うために、エアロゲル1を製造するすべての工程は、エアロゲルが固体になる造粒工程から乾燥工程まで、乾燥工程に必要なCO2臨界点の圧力より高い圧力下で行われる。この方法に含まれる場合、前駆体の製造は、CO2の臨界点の圧力より高い圧力で行うこともできる。混合工程は、CO2の臨界点の圧力より高い圧力で実施されてもされなくてもよい。CO2の臨界点は、約31℃の温度及び約73バールの圧力に位置する。エアロゲル製造の原料は液体であるため、例えばポンプを用いて連続的に加圧することができる。これにより、乾燥段階の間にゲル(固体)を加圧する必要がなくなる。これはバッチでのみ行うことができるものである(バッチプロセス)。
【0017】
エアロゲル1の製造に使用される原料は前駆体である。シリカエアロゲル1の製造のために、前駆体は、砂のようなシリカに富む供給源から製造することができる。それは、アルコキシシラン、より具体的には、TMOS(テトラメチルオルトシリケート)又はTEOS(テトラエチルオルトシリケート)であり得る。これは、メタノール及びエタノールがそれぞれの反応の副産物であるので好ましい場合がある。又はケイ酸ナトリウムとも呼ばれる水性ケイ酸及びそのオリゴマー(ポリケイ酸)から製造することができる。本発明の範囲を逸脱することなく、エアロゲル1を製造するために他の種類の前駆体を使用することができ、例えば、炭素、アルミナ、金属酸化物、または、セルロース、ポリウレタン若しくはそれらに由来する生成物のような有機前駆体を使用することができる。
【0018】
以下の説明は、シリカエアロゲル1の製造を示すが、当業者であれば、これらの方法を他のタイプのエアロゲル1の製造に転用することは容易である。
【0019】
本発明による方法は、前駆体2の製造を含むことができ、この場合、前駆体2の製造に必要な生成物は、ポンプを用いて導入される。
【0020】
前駆体2は、本方法以外のもので製造することもでき、その場合、前駆体2は、混合する前に導入される。
【0021】
次いで、前駆体2を加水分解剤(例えば水)、合成溶媒3(例えばエタノール、例えば95%エタノール、メタノール又はアセトン)及び必要に応じて触媒4などと混合する。この混合は、混合反応器5中で行われる。加水分解と縮合の2つの反応が起こる。加水分解は加水分解剤の存在によって引き起こされ、前駆体2から、例えば二酸化ケイ素を形成することを可能にする。二酸化ケイ素は、合成溶媒3と共にコロイド溶液を形成する。縮合は、ゲルと呼ばれる連続的な三次元ネットワークにおけるコロイド粒子の凝集からなる。したがって、ゲル化について述べる。縮合及び加水分解の反応の相対速度は、触媒4の導入によって制御することができる。選択される触媒4のタイプ、より正確にはそのpHは、凝縮によって生成されるネットワークのタイプ、したがって最終生成物としてのエアロゲル1のタイプに影響を与える。例えば、アンモニアを塩基性触媒4として選択することができる。加水分解及び縮合反応は、すべての生成物を混合することによって、又は連続的に、中間体溶液を調製し、次いでこれらの中間体溶液を一緒に混合することによって、同時に起こり得る。これらは、1段階の合成又は2段階の合成と呼ばれる。
【0022】
混合後、造粒段階が行われる。ゲルの粘度が十分に上昇したときにゲルを切断して顆粒を得る。これは、ジェットカッターなどの造粒装置6によって、又は当業者に公知の別の解決策、例えば点滴(drip)もしくはスプレーによって、達成される。造粒装置6の種類は、得られる顆粒の粒度分布に影響を与えることがあり、ジェットカッターは、典型的には50ミクロン超、ミリメートル以上の大型の顆粒を特に生成し、スプレーは、約5ミクロン以下の寸法までの微細な顆粒を生成し、このような微細な顆粒は粉末と呼ばれることもあるが、本発明の範囲内ではこれらも顆粒と呼ぶ。
【0023】
本発明では、CO2の臨界点の圧力より高い圧力で混合工程を行ってもよいし、行わなくてもよいが、CO2の臨界点の圧力より高い圧力で造粒工程を行わなければならない。このことは、スムーズに動作することを妨げることはなく、この操作をわずかに加速する傾向がある。高圧での造粒は当業者に公知であり、いかなる特定の問題も提起しない。
【0024】
造粒後の次の工程は、熟成工程(エイジング工程、ageing step)である。ゲルが形成された後、反応をまだ完了していない多数の粒子が依然として存在する。熟成工程は、例えば、熟成反応器7での溶液のゲルの長い浸漬からなっていてよく、熟成反応器7は合成中に同じ溶媒、加水分解剤及び触媒を含有していてもよい。熟成工程の後、実質的にすべての粒子が反応し、分子間のすべての結合が完了し、次いでゲルはより固体になる。このようにして得られた構造のタイプは、時間、溶液のpH、合成溶媒の種類及び温度などの様々なパラメータに従って変動する。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、造粒及び熟成工程は、同じ熟成反応器7において行われる。ゲルは次に熟成反応器7の頂部から導入されるか、熟成反応器7に落下する前に顆粒に切断され、加水分解及び縮合反応が継続することができる。
【0026】
熟成工程の後、顆粒から不純物および未反応化合物の残留物を除去するために洗浄工程が行われる。ほとんどの不純物は触媒と水でできている。乾燥工程における水又は他の成分の存在は、混合物が超臨界CO2に完全には可溶性でなく、したがって質の粗悪な最終生成物となる可能性があると、エアロゲル1のネットワークの分解を引き起こす可能性がある。そのため、洗浄工程は重要である。洗浄は、洗浄反応器8内の洗浄溶媒溶液に浸漬することによって行うことができる。洗浄工程に使用される溶媒は、エタノール、又は、超臨界CO2に可溶な別の溶媒(例えば、アセトン、イソプロパノール、若しくはメタノール)であり得る。
【0027】
洗浄工程は、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)又はヘキサメチルジシラザン(HMDZ)などの疎水化剤を導入する機会であり得る。この薬剤は、疎水性にするためにゲル表面と相互作用する。これは、最終的に生成されるエアロゲル1が空気の湿気と接触したときに劣化しないようにするために、一部の適用に必要である。疎水化剤はまた、乾燥段階中又は乾燥段階後に導入することもできる。
【0028】
最後に、エアロゲル1を得るために、顆粒中に存在する溶媒、例えばエタノールをゲルから除去しなければならない。二相状態によって生じる毛細管応力により、ゲルネットワーク内の分子間の結合を蒸発が破壊し得るため、単純な蒸発による乾燥は、良質のエアロゲル1を生成しない。良質のエアロゲル1を製造するために、本発明による方法は、超臨界乾燥工程を含む。このタイプの乾燥は、二相系及びそれに伴う毛細管力を避けることによって乾燥中のエアロゲルの損傷を避けることを可能にし、そうでなければゲルのナノ構造の部分的又は完全な破壊を引き起こす。
【0029】
超臨界CO2を用いた乾燥のいくつかの技術は、当業者に知られている。本発明による方法の好ましい実施形態によれば、以下の方法が提案される、即ち:
【0030】
超臨界乾燥の第1段階では、顆粒を下側から第1の流動床塔9に導入し、超臨界状態のCO2も下方から注入する。超臨界圧力及び温度が比較的低く、溶媒、例えばエタノールがCO2中に溶解するので、CO2を選択する。流動床を使用することにより、迅速に乾燥することができ、各粒子は、排出される溶媒を溶解するCO2ジェットとじかに直面する。
【0031】
流動床では、ガス注入の速度が調節される。この速度が流動化速度よりも遅い限り、粒子は一緒に沈降したままである。この速度から最大揮発速度まで、粒子は移動式のガスジェットによって上昇するが、飛散はしない。CO2が粒子のそれぞれと極めて迅速に接触できるのはこの状態である。揮発速度を越える、粒子はガスジェットによって取り去られ、塔の頂部から排気される。
【0032】
粒子が、流動床のために選択された温度及び圧力で、エタノール又は超臨界CO2を含む場合、揮発速度は同じではない。シリカエアロゲル1及び溶媒としてのエタノールの製造には、130バールの圧力及び45℃の温度が適している。この揮発速度の差は、流動床の速度を調節するために使用され、その結果CO2のみを含む粒子が塔の頂部を飛散するのに対しエタノールを含有する粒子は飛散せず、さらなる処理のために回収することができる。超臨界CO2をデカンタに排気し、次いで溶媒からセパレータに排気する。エタノールを含有する顆粒は、第1の流動床9に残り、エタノールがCO2で置換されるまで、CO2ジェットに直面し続け、その後それらは飛散する。
【0033】
シリカエアロゲル1及び溶媒としてのエタノールの製造のために、流動床は例えば130バール及び45℃に調整することができる。このような条件により、製造に関連するすべての粒径について、好ましい速度範囲となることが可能になる。
【0034】
第1の流動床9の出口において、エタノールと混合した超臨界CO2は、CO2/エタノールセパレータ10に入り、それが純粋な超臨界CO2を流動床9に再注入することを可能にし、そのためすべての溶媒を徐々に超臨界CO2で置換することができるようになる。混合又は洗浄工程にエタノールを再注入することができる。
【0035】
超臨界乾燥の第2段階では、第2の流動床塔11の中に顆粒が注入され、そこでは窒素が超臨界状態で注入され、あるいは、固定した条件下で、他のいずれかの不活性ガス(例えば乾燥した空気、アルゴン、クリプトンなど)が注入される。第2の流動床11は、第1の流動床9においてCO2がエタノールに置き換わったのと同様に、窒素が第2の流動床11においてCO2に置き換わるように設定される。
【0036】
窒素は、本発明による方法の一部をなす窒素製造ユニット内において、空気も用いて生成することができる。または、設備外で生産することができる。これは、CO2よりもはるかに圧縮性が低いので、本発明の範囲内では非圧縮性であると記載されている。
【0037】
第2の流動床11に戻されるべきCO2充填顆粒から、第1の流動床9に戻されるべき超臨界CO2を分離するために、デカンタ12は、第1流動床9の出口で使用することができる。また、本発明の好ましい実施形態では、この同じデカンタ12を使用して、それぞれ第1の流動床9及び第2の流動床11に戻すために、第2の流動床11の出口で超臨界CO2及び超臨界窒素を分離する。超臨界CO2条件下では、これらの2つのガスの密度は顕著に異なり、デカンテーションは瞬間的である。
【0038】
第2の流動床11の出口では、エアロゲルを減圧しなければならない。窒素はCO2よりも圧縮性が遥かに低いので、減圧によってエアロゲルが損傷することはなく、いくらかCO2がまだ顆粒に存在している場合よりも迅速に行うことができる。したがって、減圧段階は、減圧の速さが毎分0.3バール未満でなければならないことから、CO2を含むエアロゲルの減圧が依然として数時間かかるのに対して、わずか数分で完了する。減圧は、減圧装置13で行われる。減圧は、直接的に又は一連の減圧反応器13を介して行うことができる。
【0039】
各レベルで、窒素を回収して第2の流動床11に送ることができる。第1のレベルの出口では、残留CO2をデカンタ12に戻すことができる。
【0040】
大気条件に戻すとき、窒素を既知の手段によって分離し、エアロゲル1を回収する。粉塵14又はあまりにも細かい顆粒15は、特定の用途に分離して使用することができる。これにより、所望のものに対応する顆粒サイズの造粒エアロゲル1が残る。
【符号の説明】
【0041】
5 混合反応器
6 造粒装置
7 熟成反応器
8 洗浄反応器
9 第1の流動床塔
10 セパレータ
11 第2の流動床塔
12 デカンタ
13 減圧装置