(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】ウレタン(メタ)アクリレート含有組成物、光硬化性樹脂組成物、その硬化物、ハードコート剤、及びハードコート層付き基材
(51)【国際特許分類】
C08G 18/67 20060101AFI20220715BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20220715BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220715BHJP
C09D 175/14 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C08G18/67 005
C08G18/79 020
C08F290/06
C09D175/14
(21)【出願番号】P 2020188680
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2020-12-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390028048
【氏名又は名称】根上工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】畠中 瑞生
(72)【発明者】
【氏名】福田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 健太
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-107827(JP,A)
【文献】国際公開第2020/129666(WO,A1)
【文献】特開2013-163765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08F 290/06
C09K 175/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート混合物(A)と、3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(B)とを、又は前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート混合物(A)と前記ポリイソシアネート化合物(B)とジイソシアネート化合物(C)とを反応させてなる、ウレタン(メタ)アクリレートを含む組成物であり、
前記ウレタン(メタ)アクリレートは、1分子中に4個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、重量平均分子量が20000以上であり、
前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート混合物(A)の水酸基価が121~150mgKOH/gであり、
前記ポリイソシアネート化合物(B)が、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体
のみからなる、ウレタン(メタ)アクリレート含有組成物。
【請求項2】
前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート混合物(A)が、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも2種を含む、請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート含有組成物。
【請求項3】
前記ジイソシアネート化合物(C)が、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアナートからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のウレタン(メタ)アクリレート含有組成物。
【請求項4】
前記ジイソシアネート化合物(C)が、ヘキサメチレンジイソシアネートを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリレート含有組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリレート含有組成物と、光重合開始剤とを含む、光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の光硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項7】
請求項5に記載の光硬化性樹脂組成物からなるハードコート剤。
【請求項8】
基材の表面に、請求項7に記載のハードコート剤の硬化物からなるハードコート層を有するハードコート層付き基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン(メタ)アクリレート含有組成物、光硬化性樹脂組成物、その硬化物、ハードコート剤、及びハードコート層付き基材に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリレートを含む光硬化性樹脂組成物は、ハードコート等に用いられる。
特許文献1には、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも2種を含み、水酸基価が80~120mgKOH/gであるジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート混合物等と、ジイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート化合物との反応物を含む樹脂組成物が提案されている。この樹脂組成物によれば、硬度や擦傷性に優れると共にカールやクラックの発生も少なく、公知のものよりも更に優れる硬化皮膜を与えるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の樹脂組成物の硬化皮膜は、硬度が充分でないことや、カールやクラックの発生を充分に抑制できないことがあった。
【0005】
本発明は、硬化時の収縮率が低く、高硬度でカールやクラックが発生しにくい硬化物を形成できる光硬化性樹脂組成物が得られるウレタン(メタ)アクリレート含有組成物、硬化時の収縮率が低く、高硬度でカールやクラックが発生しにくい硬化物を形成できる光硬化性樹脂組成物及びその硬化物、硬化時の収縮率が低く、高硬度でカールやクラックが発生しにくいハードコート層を形成できるハードコート剤及びこれを用いたハードコート層付き基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート混合物(A)と、3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(B)とを、又は前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート混合物(A)と前記ポリイソシアネート化合物(B)とジイソシアネート化合物(C)とを反応させてなる、ウレタン(メタ)アクリレートを含む組成物であり、
前記ウレタン(メタ)アクリレートは、1分子中に4個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、重量平均分子量が5000以上であり、
前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート混合物(A)の水酸基価が121~150mgKOH/gである、ウレタン(メタ)アクリレート含有組成物。
[2]前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート混合物(A)が、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも2種を含む、前記[1]のウレタン(メタ)アクリレート含有組成物。
[3]前記ポリイソシアネート化合物(B)が、イソホロンジイソシアネートの3量体、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの3量体、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアナートの3量体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記[1]又は[2]のウレタン(メタ)アクリレート含有組成物。
[4]前記ジイソシアネート化合物(C)が、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアナートからなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記[1]~[3]のいずれかのウレタン(メタ)アクリレート含有組成物。
[5]前記[1]~[4]のいずれかのウレタン(メタ)アクリレート含有組成物と、光重合開始剤とを含む、光硬化性樹脂組成物。
[6]前記[5]の光硬化性樹脂組成物の硬化物。
[7]前記[5]の光硬化性樹脂組成物からなるハードコート剤。
[8]基材の表面に、前記[7]のハードコート剤の硬化物からなるハードコート層を有するハードコート層付き基材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、硬化時の収縮率が低く、高硬度でカールやクラックが発生しにくい硬化物を形成できる光硬化性樹脂組成物が得られるウレタン(メタ)アクリレート含有組成物、硬化時の収縮率が低く、高硬度でカールやクラックが発生しにくい硬化物を形成できる光硬化性樹脂組成物及びその硬化物、硬化時の収縮率が低く、高硬度でカールやクラックが発生しにくいハードコート層を形成できるハードコート剤及びこれを用いたハードコート層付き基材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、「ウレタン(メタ)アクリレート」は、1個以上のウレタン結合を有する(メタ)アクリレートである。
「(メタ)アクリレート」は、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
「ポリ(メタ)アクリレート」は、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基の総称である。
「重量平均分子量」(以下、「Mw」とも記す。)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」とも記す。)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
「水酸基価」は、試料中の水酸基をアセチル化して、アセチル化に使用した酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウムの量を、前記試料1.0gに対するmg数で表したものであり、試料中の水酸基の含有量を示す尺度となる。水酸基価は、JIS K 0070:1992に規定されている中和滴定法を用いて測定される。
以下、本発明の好適な実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0009】
〔ウレタン(メタ)アクリレート含有組成物〕
本発明のウレタン(メタ)アクリレート含有組成物(以下、「組成物(a)」とも記す。)は、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート混合物(A)(以下、「(A)成分」とも記す。)と、3個以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有するポリイソシアネート化合物(B)(以下、「(B)成分」とも記す。)とを、又は(A)成分と(B)成分とジイソシアネート化合物(C)(以下、「(C)成分」とも記す。)とを反応させてなり、ウレタン(メタ)アクリレートを含む。
【0010】
(A)成分は、詳しくは後述するが、1個以上の水酸基を有するジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(以下、「水酸基含有ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート」とも記す。)を含む。(A)成分と(B)成分、必要に応じて(C)成分を反応させると、水酸基含有ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートの水酸基と、(B)成分や(C)成分のイソシアネート基とがウレタン結合を形成し、ウレタン(メタ)アクリレートが生成する。
【0011】
組成物(a)においては、(A)成分の一部が、(B)成分又は(C)成分と反応せずに残存していてもよい。例えば、(A)成分が、水酸基を有さないジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、つまりジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(以下、「DPH(M)A」とも記す。)を含む場合、DPH(M)Aは(B)成分や(C)成分と反応しないため、組成物(a)はDPH(M)Aを含む。
【0012】
組成物(a)においては、(B)成分又は(C)成分の一部が、(A)成分と反応せずに残存していてもよいが、(B)成分及び(C)成分の実質的に全てが(A)成分と反応していることが好ましい。この場合、(メタ)アクリレート組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートのみからなるものか、ウレタン(メタ)アクリレートと、(B)成分又は(C)成分と反応しなかった(A)成分との混合物となる。
【0013】
<(A)成分>
(A)成分は、少なくとも2種のジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートからなる。
ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートは、ジペンタエリスリトールの6個の水酸基のうち1個以上が(メタ)アクリロイルオキシ基で置換された化合物である。具体的には、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、DPH(M)Aが挙げられる。
上記のうち、DPH(M)A以外のジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートは、水酸基含有ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートである。したがって、(A)成分は、少なくとも1種の水酸基含有ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートを含む。
【0014】
(A)成分は、本組成物(a)を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物の硬度、耐擦り傷性に優れる点から、少なくとも2種のジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。具体的には、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも2種を含むことが好ましい。
【0015】
(A)成分の水酸基価は、121~150mgKOH/gであり、121~140mgKOH/gが好ましい。水酸基価が前記下限値以上であれば、本組成物(a)を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物の可とう性、加工性に優れ、前記上限値以下であれば、硬化物の硬度、耐擦り傷性に優れる。
(A)成分の水酸基価は、(A)成分を構成するジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートの種類と比率により調整できる。
【0016】
<(B)成分>
(B)成分としては、分子内に3個以上のイソシアネート基を有する化合物であればよく、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0017】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート化合物の多量体、ビウレット体及びアダクト体が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、オクタデシレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネートが挙げられる。
多量体としては、例えば、3量体が挙げられる。3量体は、ヌレート体、イソシアヌレートともいう。
【0018】
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂環族ジイソシアネート化合物の多量体、ビウレット体及びアダクト体が挙げられる。
脂環族ジイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン-2,4(又は2,6)-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ダイマー酸ジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)が挙げられる。
多量体としては、例えば、3量体が挙げられる。
【0019】
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ジイソシアネート化合物の多量体、ビウレット体及びアダクト体、並びにトリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ハロゲン化フェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、3-フェニル-2-エチレンジイソシアネート、クメン-2,4-ジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-エトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4’-ジイソシアネートジフェニルエーテル、5,6-ジメチル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートジフェニルエーテル、ベンジジンジイソシアネート、9,10-アンスラセンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートベンジル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアネートジフェニルメタン、2,6-ジメチル-4,4’-ジイソシアネートジフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジイソシアネートジフェニル、1,4-アンスラセンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネートが挙げられる。
多量体としては、例えば、3量体が挙げられる。
【0020】
(B)成分は、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分としては、耐候性がより優れる点から、イソホロンジイソシアネートの3量体、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの3量体、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアナートの3量体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0021】
<(C)成分>
(C)成分としては、分子内に2個のイソシアネート基を有する化合物であればよく、例えば、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物それぞれの具体例は前記と同様のものが挙げられる。上記のジイソシアネート化合物はそれぞれアロファネート体であってもよい。
【0022】
(C)成分は、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(C)成分としては、耐候性がより優れる点から、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアナートからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0023】
(B)成分と(C)成分との合計に対する(B)成分の割合は、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。(B)成分の割合が前記下限値以上であれば、本組成物(a)を含む光硬化性樹脂組成物の硬化時の収縮を抑制でき、硬化物からなる皮膜のカールを抑制できる。また、硬化物の可とう性、加工性に優れ、硬化物からなる皮膜を表面に設けた基材を屈曲させたときに、皮膜にクラック、剥がれ等の不具合が生じにくい。
【0024】
(B)成分と(C)成分との合計の含有量は、(A)成分の水酸基に対するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)等を考慮して適宜設定できる。
NCO/OHは、例えば0.5~2である。
【0025】
(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計質量に対する(A)成分の割合は、60~85質量%が好ましく、65~85質量%がより好ましく、70~80質量%がさらに好ましい。
(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計質量に対する(B)成分の割合は、10~40質量%が好ましく、15~35質量%がより好ましく、20~30質量%がさらに好ましい。
(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計質量に対する(C)成分の割合は、0~10質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましい。
【0026】
<ウレタン(メタ)アクリレート>
ウレタン(メタ)アクリレートは、(A)成分に含まれる水酸基含有ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートと(B)成分との反応物、又は前記水酸基含有ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートと(B)成分と(C)成分との反応物である。
【0027】
ウレタン(メタ)アクリレートは、(A)成分に由来して、(メタ)アクリロイル基を有する。
ウレタン(メタ)アクリレートが1分子中に有する(メタ)アクリロイル基の数は、4個以上であり、6~20個が好ましく、10~15個がより好ましい。(メタ)アクリロイル基の数が前記下限値以上であれば、本組成物(a)を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物の硬度が高く、耐擦り傷性、ハードコート性に優れ、前記上限値以下であれば、本組成物(a)を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物の可とう性、加工性に優れ、硬化物からなる皮膜(硬化皮膜)を表面に設けた基材を屈曲させたときに、硬化皮膜にクラック、剥がれ等の不具合が生じにくい。
1分子中の(メタ)アクリロイル基の数は、(A)成分の水酸基と、(B)成分と(C)成分の合計のイソシアネート基とが、モル比1:1で反応することによる理論値から求められる。
【0028】
ウレタン(メタ)アクリレートのMwは、5000以上であり、20000以上が好ましい。Mwが前記下限値以上であれば、硬化物の可とう性、加工性に優れる。
ウレタン(メタ)アクリレートのMwは、200000以下が好ましく、150000以下がより好ましい。Mwが前記上限値以下であれば、硬化物の硬度が高く、耐擦り傷性、作業性に優れる。
【0029】
組成物(a)において、ウレタン(メタ)アクリレートとDPH(M)Aとの比率(ウレタン(メタ)アクリレート:DPH(M)A)は、60:40~95:5が好ましく、75:25~90:10がより好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートとDPH(M)Aとの比率が前記範囲内であれば、硬化物の硬度と可とう性のバランスがより優れる。
ウレタン(メタ)アクリレートとDPH(M)Aとの比率は、GPCの面積比である。
【0030】
<組成物(a)の製造方法>
組成物(a)は、(A)成分と(B)成分とを反応させるか、又は(A)成分と(B)成分と(C)成分とを反応させること(ウレタン化工程)により製造できる。これら各成分を反応させると、(A)成分のうち水酸基含有ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートの水酸基と(B)成分又は(C)成分のイソシアネート基とがウレタン結合を形成してウレタン(メタ)アクリレートが生成する。(A)成分がDPH(M)Aを含む場合には、DPH(M)Aは反応せずにそのまま残存する。
【0031】
ウレタン化工程の反応温度は、例えば50~150℃、さらには60~100℃である。
ウレタン化工程の反応時間は、反応温度、触媒の有無や種類によって異なるが、例えば6~48時間、さらには12~36時間である。
【0032】
ウレタン化工程は、反応時間の短縮の観点から、触媒の存在下で行うことが好ましい。触媒としては、公知のウレタン化触媒を用いることができ、例えばジブチルスズアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート等の有機金属化合物、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の塩基性化合物が挙げられる。
触媒の使用量は、用いる触媒の活性によって適宜調整することが可能であるが、(A)成分に対し、0.01~0.50質量%が好ましく、0.03~0.30質量%がより好ましく、0.05~0.25質量%がさらに好ましい。
【0033】
ウレタン化工程は、(メタ)アクリロイル基が反応することを抑制する観点から、熱重合禁止剤の存在下で行うことが好ましい。熱重合禁止剤としては、公知の熱重合禁止剤を用いることができ、例えば2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、4-メトキシフェノールが挙げられる。
熱重合禁止剤の使用量は、用いる熱重合禁止剤の活性によって適宜調整することが可能であるが、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計に対し、0.01~1.5質量%が好ましく、0.03~1.0質量%がより好ましく、0.03~0.8質量%がさらに好ましい。
【0034】
ウレタン化工程においては、(B)成分及び(C)成分の実質的に全てを(A)成分と反応させることが好ましい。
反応物の赤外線吸収スペクトルを測定し、イソシアネート残基に由来する波長2200~2300cm-1の吸収が観察されなくなったことをもって、(B)成分及び(C)成分の実質的に全てが(A)成分と反応したと判断することができる。
【0035】
〔光硬化性樹脂組成物〕
本発明の光硬化性樹脂組成物(以下、「本樹脂組成物」とも記す。)は、組成物(a)と光重合開始剤とを含む。組成物(a)がウレタン(メタ)アクリレートを含むことから、本樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートと光重合開始剤とを含む。組成物(a)がDPH(M)Aを含む場合には、ウレタン(メタ)アクリレートとDPH(M)Aと光重合開始剤とを含む。
本樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート及びDPH(M)A以外の、重合性不飽和結合(重合性炭素-炭素二重結合等)を有する化合物(以下、「他の重合性化合物」とも記す。)をさらに含んでいてもよい。
本樹脂組成物は、必要に応じて、非反応性希釈剤をさらに含んでいてもよい。
本樹脂組成物は、必要に応じて、上記以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0036】
<光重合開始剤>
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を用いることができ、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、α-ヒドロキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルフォリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、ヒドロキシベンゾフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-S-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロ)-S-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4、6-ビス(トリクロロメチル)-S-トリアジン、鉄-アレン錯体、チタノセン化合物が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
<他の重合性化合物>
他の重合性化合物としては、重合性不飽和結合を1個有する単官能モノマー、重合性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマー等が挙げられる。
単官能モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート等の水酸基含有単官能(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、ジメチルアクリルアミド、イソボルニルアクリレートが挙げられる。
多官能モノマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールジ、トリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ又はトリ(メタ)アクリレート等の水酸基含有多官能(メタ)アクリレート、DPH(M)A、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらのモノマーは、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。単官能モノマーと多官能モノマーとを併用してもよい。
【0038】
<非反応性希釈剤>
非反応性希釈剤は、重合性不飽和結合を有さず、常温で液状の化合物である。
非反応性希釈剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン等の有機溶剤、水が挙げられる。これらの非反応性希釈剤は、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
非反応性希釈剤としては、希釈性や乾燥工程での作業性に優れる点で、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒や酢酸エチル等のエステル系溶媒が好ましい。
【0039】
<他の成分>
他の成分としては、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌剤、防黴剤、消泡剤、レベリング剤、フィラー、増粘剤、密着性付与剤、チキソ性付与剤、光輝材等の添加剤が挙げられる。
【0040】
<各成分の含有量>
組成物(a)の含有量は、本樹脂組成物の総質量に対し、30~95質量%が好ましく、50~95質量%がより好ましい。組成物(a)の含有量が前記下限値以上であれば、硬化物の硬度と可とう性のバランスがより優れる。
【0041】
他の重合性化合物の含有量は、本樹脂組成物の総質量に対し、0~50質量%が好ましく、0~30質量%がより好ましい。他の重合性化合物の含有量が前記上限値以下であれば、硬化物の硬度と可とう性のバランスがより優れる。
【0042】
組成物(a)と他の重合性化合物との合計の含有量に対する組成物(a)の割合は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。組成物(a)の割合が前記下限値以上であれば、硬化物の硬度と可とう性のバランスがより優れる。
【0043】
光重合開始剤の含有量は、本樹脂組成物の総質量に対し、0.1~10質量%が好ましく、1~7質量%がより好ましい。光重合開始剤の含有量が前記下限値以上であれば、本樹脂組成物の光硬化性がより優れ、前記上限値以下であれば、本樹脂組成物の保存安定性がより優れる。
【0044】
非反応性希釈剤の含有量は、本樹脂組成物の総質量に対し、0~80質量%が好ましく、20~60質量%がより好ましい。非反応性希釈剤の含有量が前記下限値以上であれば、作業性がより優れる。
【0045】
本樹脂組成物は、組成物(a)と、光重合開始剤と、必要に応じて他の重合性化合物及び他の成分からなる群から選ばれる少なくとも1種を混合することにより製造できる。各成分の混合順序は特に限定されない。
【0046】
本樹脂組成物は、光を照射することで硬化させて硬化物とすることができる。
本樹脂組成物に光が照射されると、光重合開始剤の分子内開裂や水素移動により活性種(ラジカルやカチオン)が生成し、前記活性種がウレタン(メタ)アクリレートやDPH(M)A、他の重合性化合物に作用して重合又は架橋反応が起こり、本樹脂組成物が硬化する。
【0047】
光としては、可視光線、紫外線、プラズマ、赤外線、電離放射線等が挙げられる。これらの中では、照射装置が広く普及している観点から、紫外線が好ましい。
光の照射条件は、使用する光源に応じて適宜選定できる。紫外線を照射する場合の積算光量は、例えば50~1000mJ/cm2である。
【0048】
本樹脂組成物は、例えば、ハードコート剤、塗料、インク、レジスト、架橋剤等の用途に用いることができる。
本樹脂組成物は、高硬度でカールやクラックが発生しにくい硬化物を形成できる点から、ハードコート剤として好適である。
【0049】
本樹脂組成物からなるハードコート剤は、基材の表面にハードコート層を形成するために用いることができる。
例えば、基材の表面にハードコート剤を塗布し、必要に応じて乾燥することで、ハードコート剤からなる塗膜を形成する。次いで、前記塗膜に光を照射して硬化させることで、ハードコート剤の硬化物からなるハードコート層(硬化皮膜)を形成する。これにより、ハードコート層付き基材が得られる。
【0050】
基材としては、例えばフィルム、シート、その他各種の成形物が挙げられる。カールを抑制できることの有用性が高い点では、フィルムが好ましい。フィルムの厚さは、例えば10~500μmである。
基材の材質としては、例えば樹脂、金属、ガラス、木が挙げられる。樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂が挙げられる。
【0051】
塗布方法としては、公知の塗布方法を適宜採用でき、例えばスプレーコート、スピンコート、グラビヤコートが挙げられる。
乾燥条件としては、非反応性希釈剤を除去できればよく、例えば60~110℃で0.5~10分間の条件が挙げられる。
光の照射条件は前記と同様である。
塗膜の厚さは、形成するハードコート層の厚さに応じて設定される。
ハードコート層の厚さは、例えば1~20μmとすることができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。
以下において「部」は「質量部」を示す。
(A)成分としては、アクリロイル基の数が異なる複数のジペンタエリスリトールアクリレートの混合物であり、水酸基含有ジペンタエリスリトールポリアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を含み、水酸基価が129mgKOH/g又は95mgKOH/gであるジペンタエリスリトールアクリレート混合物を用いた。
ウレタンアクリレート・DPHA含有混合物におけるウレタンアクリレートのMw、ウレタンアクリレートとDPHAとの比率は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により求めた。
【0053】
[製造例1]
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた4口フラスコに、水酸基価129mgKOH/gのジペンタエリスリトールアクリレート混合物462部と、メチルエチルケトン400部と、ジブチルスズジラウレート0.3部と、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール0.3部と、ヘキサメチレンジイソシアネートヌレート121部と、ヘキサメチレンジイソシアネート18部とを投入し、充分に攪拌した後、70℃に昇温し、約24時間攪拌加熱して反応させた。反応後、赤外線吸収スペクトル測定によりイソシアネート残基が観測されなくなったのを確認した。このようにして、ウレタンアクリレートとDPHAとを含む混合物(以下、「ウレタンアクリレート・DPHA含有混合物」とも記す。)を得た。
ウレタンアクリレートのMw及び1分子中のアクリロイル基の数、ウレタンアクリレートとDPHAとの比率を表1に示す。
【0054】
[製造例2、比較製造例1~3]
4口フラスコに投入する材料の種類及び量を表1に示すようにした以外は製造例1と同様にしてウレタンアクリレート・DPHA含有混合物を得た。
ウレタンアクリレートのMw及び1分子中のアクリロイル基の数、ウレタンアクリレートとDPHAとの比率を表1に示す。
【0055】
【0056】
[実施例1]
(樹脂組成物の調製)
攪拌装置を備えたフラスコに、製造例1で得たウレタンアクリレート・DPHA含有混合物の100部と、光重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、IGM Resins B.V.社製品名「Omnirad 184」)(以下、単に「Omnirad 184」と記す。)の1.8部と、メチルエチルケトンの20部とを投入し、約1時間攪拌して液状の樹脂組成物を得た。
【0057】
(評価試料の形成)
得られた樹脂組成物を、ガラス板に、乾燥後の膜厚が5μmになるように塗布し、100℃で乾燥して塗膜を形成した。その後、塗膜に対して紫外線を、積算光量が500mJ/cm2となるように照射して硬化皮膜(硬化物)を形成し、硬化皮膜付きガラス板を得た。
ガラス板の代わりに厚さ100μmのフィルム(易接着PET)を用いた以外は上記と同様にして硬化皮膜付きフィルムを得た。
【0058】
(評価)
作製した評価試料(硬化皮膜付きガラス板又は硬化皮膜付きフィルム)について、下記項目を評価し、その結果を表3に示した。
【0059】
<鉛筆硬度>
硬化皮膜付きガラス板の硬化皮膜の表面の鉛筆硬度をJIS K 5600-5-4に従って測定した。
【0060】
<密着性>
硬化皮膜付きフィルムの硬化皮膜側の表面に100マスの碁盤目状にキズを付け、その上からセロハンテープを貼り付け、90度の角度で剥離させた。このときの硬化皮膜の剥がれの有無を観察し、以下の基準で密着性を評価した。
○:剥がれなし。
×:剥がれあり。
【0061】
<カール>
硬化皮膜付きフィルムを10cm×10cmにカットし、水平な台上に載置し、台の表面からフィルムの4辺それぞれの浮き上がった高さ(mm)を測定し、4辺の平均値を測定値とした。
なお、基材自身(硬化皮膜を設ける前のフィルム)について同じ評価を行ったところ、カールは0mmであった。
【0062】
<耐擦傷性>
スチールウール#0000に200g/cm2の荷重をかけて、硬化皮膜付きガラス板の硬化皮膜の表面上を10往復させた。その後、硬化皮膜表面の傷の状況を目視で確認し、以下の基準で耐擦傷性を評価した。
◎:まったく傷が入らない。
○:若干傷が入る。
×:傷が入る。
【0063】
<屈曲性>
硬化皮膜付きフィルムについて、円筒型マンドレル屈曲試験機を用いて、マンドレル試験を実施した。当該マンドレル試験は、硬化皮膜付きフィルムの硬化皮膜側を外側にして行った。硬化皮膜にクラックや剥がれ等の不具合が発生しなかったマンドレルのうち直径が最小のマンドレルの直径(最小マンドレル直径)から以下の基準で屈曲性を評価した。
〇:最小マンドレル直径が3mm以下。
×:最小マンドレル直径が5mm以上。
【0064】
[実施例2、比較例1~3]
フラスコに投入する材料の種類及び量を表2に示すようにした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、評価試料を作製して評価した。評価結果を表3に示す。
【0065】
【0066】
【0067】
上記結果に示すとおり、実施例1~2の樹脂組成物によれば、硬度、基材への密着性、耐擦傷性というハードコートとしての要求特性を充分に維持したまま、カールが小さく、屈曲性にも優れ、柔軟で強靭な特性を併せ持つ硬化皮膜を形成できた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の光硬化性樹脂組成物によれば、高硬度で耐擦傷性が良好であり、カールやクラックが発生しにくい硬化物を形成できる。前記硬化物は、基材への密着性、屈曲性にも優れる。従って本発明の光硬化性樹脂組成物は、ハードコート剤として好適である。本発明の光硬化性樹脂組成物からなるハードコート剤を用いたハードコート層付きフィルムは、フォルダブルデバイス等に適用できる。