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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】歯科訪問診療用ユニット
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20220715BHJP
   A61G 15/10 20060101ALI20220715BHJP
   A61B 50/30 20160101ALN20220715BHJP
【FI】
A61C19/00 D
A61G15/10
A61B50/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022032206
(22)【出願日】2022-03-03
【審査請求日】2022-03-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500061110
【氏名又は名称】有限会社アイデーエム
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】坂俣 一雄
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 誠
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-115353(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108514458(CN,A)
【文献】特開2013-233334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00 - 19/10
A61G 15/00 - 15/18
A61B 50/00 - 90/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から空気を吸引する吸気部と、該吸気部で吸引した空気を排出する送気口とを有する送気ユニットと、
患者の口腔内に向けて送気する送気ノズルが一方の端部に取り付けられ、前記送気ユニットの前記送気口に他方の端部が接続される送気チューブと、
着座部と、前記着座部を支持する支持部とを有する椅子と、
少なくとも前記送気ユニット、前記送気チューブ及び前記椅子を収容する筐体と、
を備え、
前記筐体は、前記椅子の前記着座部を露出させるように、前記筐体の一部が前記筐体の他の部分に対して開閉可能に構成されており、
前記送気チューブは、前記椅子の前記着座部の下側に、前記支持部の周囲を周回するようにして前記筐体内に収容される、歯科訪問診療用ユニット。
【請求項2】
外部から空気を吸引する吸気部と、該吸気部で吸引した空気を排出する送気口とを有する送気ユニットと、
患者の口腔内に向けて送気する送気ノズルが一方の端部に取り付けられ、前記送気ユニットの前記送気口に他方の端部が接続される送気チューブと、
着座部を有する椅子と、
少なくとも前記送気ユニット、前記送気チューブ及び前記椅子を収容する筐体と、
を備え、
前記筐体は、前記椅子の前記着座部を露出させるように、前記筐体の一部が前記筐体の他の部分に対して開閉可能に構成されており、
前記送気ノズルの前方を照明する照明装置が、前記送気チューブの前記一方の端部の近傍に装着されるように構成されている、歯科訪問診療用ユニット。
【請求項3】
外部から空気を吸引する吸気部と、該吸気部で吸引した空気を排出する送気口とを有する送気ユニットと、
患者の口腔内に向けて送気する送気ノズルが一方の端部に取り付けられ、前記送気ユニットの前記送気口に他方の端部が接続される送気チューブと、
着座部を有する椅子と、
少なくとも前記送気ユニット、前記送気チューブ及び前記椅子を収容する筐体と、
を備え、
前記筐体は、前記椅子の前記着座部を露出させるように、前記筐体の一部が前記筐体の他の部分に対して開閉可能に構成されており、
前記送気ユニットの前記吸気部は、空気を吸引する吸気ファンと、該吸気ファンを回転させる電動モータとを有し、
前記送気ユニットは、前記電動モータを回転駆動させる電力を供給する電源バッテリーをさらに備え、
前記歯科訪問診療用ユニットは、前記送気ユニットを無線通信を介して操作するリモートコントローラをさらに備え、
前記送気ユニットは、前記リモートコントローラから送信される操作信号を受信し、該操作信号に応じて前記電動モータの回転駆動を制御する制御ユニットをさらに備え、
前記リモートコントローラは、前記送気チューブの前記一方の端部の近傍に装着されるように構成されている、歯科訪問診療用ユニット。
【請求項4】
外部から空気を吸引する吸気部と、該吸気部で吸引した空気を排出する送気口とを有する送気ユニットと、
患者の口腔内に向けて送気する送気ノズルが一方の端部に取り付けられ、前記送気ユニットの前記送気口に他方の端部が接続される送気チューブと、
着座部を有する椅子と、
少なくとも前記送気ユニット、前記送気チューブ及び前記椅子を収容する筐体と、
を備え、
前記筐体は、前記椅子の前記着座部を露出させるように、前記筐体の一部が前記筐体の他の部分に対して開閉可能に構成されており、
複数のキャスターを有するキャスター部が前記筐体の底部に設けられている、歯科訪問診療用ユニット。
【請求項5】
前記支持部は前記着座部の高さを調節できるように構成されている、請求項1に記載の歯科訪問診療用ユニット。
【請求項6】
前記椅子は、前記着座部の高さを調節できるように前記着座部を支持する支持部を備えている、請求項2~4のいずれか1項に記載の歯科訪問診療用ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科訪問診療用ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歯科医院への通院が困難な在宅診療者等の患者を歯科医師や歯科助手(以下、「歯科医師等」という。)が訪問して、患者の歯科診療や口腔ケア(以下、「診療等」という。)を行うことが行われている。そのような歯科訪問診療用の歯科診療用器具を携行するために、マイクロモータハンドピースやスリーウェイシリンジを含む歯科診療用器具と、それらの駆動源を含む歯科診療用器具の関連機器とを持ち運び可能な筐体に収納した往診用歯科診療装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5785901号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
訪問診療先では、患者は、例えば床上に敷かれた布団の上や床上に設置されたベッドの上に仰向けに寝た姿勢、その姿勢から上体をいくらか起こした姿勢、あるいは椅子に着座した姿勢で、歯科医師等から診療等を受ける。訪問診療先には歯科医師等が診療等の間に着座するための椅子等が用意されていない場合があり、その場合には、歯科医師等は患者の口の辺りに自身の手元が届く高さに合わせて自身の姿勢を変え、時には中腰の姿勢を維持した状態で診療等を行う必要があるため、歯科医師等が長時間にわたって診療等を続ける際には歯科医師等の身体的負担が大きくなる。
【0005】
特許文献1に開示された従来の往診用歯科診療装置は、マイクロモータハンドピースやスリーウェイシリンジ等の歯科診療用器具を持ち運び可能に収納する筐体に関するものに過ぎず、訪問診療先における歯科医師等の診療等の間の身体的負担を軽減する手段については何ら提供していない。
【0006】
そこで本発明は、歯科訪問診療用の器具を収容し、かつ訪問診療先における歯科医師等の診療等の間の身体的負担を軽減することを可能とする歯科訪問診療用ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、外部から空気を吸引する吸気部と、吸気部で吸引した空気を排出する送気口とを有する送気ユニットと、患者の口腔内に向けて送気する送気ノズルが一方の端部に取り付けられ、送気ユニットの送気口に他方の端部が接続される送気チューブと、着座部を有する椅子と、少なくとも送気ユニット、送気チューブ及び椅子を収容する筐体と、を備え、筐体は、椅子の着座部を露出させるように、筐体の一部が筐体の他の部分に対して開閉可能に構成されている、歯科訪問診療用ユニットが提供される。
【0008】
上記のように構成された本発明の一態様に係る歯科訪問診療用ユニットによれば、少なくとも送気ユニット及び送気チューブが筐体に収容されるので、歯科訪問診療用ユニットを搬送した訪問診療先で、歯科医師等が送気ユニット及び送気チューブを用いて患者の口腔内への送気を行うことができる。一例として、歯科医師等は、一方の手で送気チューブを把持して患者の口腔内への送気を行い、他方の手で他の器具を把持して患者への診療等を行うことが可能である。さらに、筐体は、椅子の着座部が露出するように、筐体の一部が筐体の他の部分に対して開閉可能に構成されているので、歯科医師等は、訪問診療先で筐体の一部を他の部分に対して開いて椅子の着座部を露出させることにより、椅子の着座部に着座して診療等を行うことが可能となる。そのため、歯科医師等が長時間にわたって診療等を続ける際の歯科医師等の身体的負担を低減することが可能となる。
【0009】
本発明の他の態様によれば、椅子は、着座部の高さを調節できるように着座部を支持する支持部を備えていてもよい。これにより、歯科医師等は診療等を行う際に着座部の高さを自身の所望の高さに調節することが可能となる。診療等が終了した後は、着座部を筐体内に収容可能な高さまで下げることで、筐体の一部を筐体の他の部分に対して閉じて椅子を再び筐体内に収容することができる。
【0010】
本発明の他の態様によれば、送気チューブは、椅子の着座部の下側に、支持部の周囲を周回するようにして筐体内に収容されてもよい。
【0011】
本発明の他の態様によれば、送気ユニットの吸気部は、空気を吸引する吸気ファンと、吸気ファンを回転させる電動モータとを有し、送気ユニットは、電動モータを回転駆動させる電力を供給する電源バッテリーをさらに備えていてもよい。吸気ファンを回転させる電動モータへ電源バッテリーから電力を供給する構成とすることにより、訪問診療先が交流100ボルト電源等の外部電源へのアクセスが無い場所である場合であっても、送気ユニット及び送気チューブを用いた患者の口腔内への送気を行うことが可能となる。
【0012】
本発明の他の態様によれば、送気ノズルの前方を照明する照明装置が、送気チューブの一方の端部の近傍に装着されるように構成されていてもよい。これにより、歯科医師等は、例えば、送気チューブの一方の端部の近傍を把持して送気ノズルから患者の口腔内へ送気を行った後に懐中電灯等の照明装置へ持ち替えることなく、送気チューブの一方の端部の近傍を把持したままの状態で照明装置で患者の口腔内を照明して目視観察することが可能となる。
【0013】
本発明の他の態様によれば、歯科訪問診療用ユニットは、送気ユニットを無線通信を介して操作するリモートコントローラをさらに備え、送気ユニットは、リモートコントローラから送信される操作信号を受信し、操作信号に応じて電動モータの回転駆動を制御する制御ユニットをさらに備えていてもよく、さらには、リモートコントローラは、送気チューブの一方の端部の近傍に装着されるように構成されていてもよい。リモートコントローラが送気ユニットに導電線を用いて有線接続された構成では、訪問診療先での使用の際に導電線の取り回しが煩雑になり、また、導電線に電流が流れる際に、導電線から意図しない電磁ノイズが発生して訪問診療先に設置された他の医療機器の作動に影響を与えたり、さらには導電線からの漏電により患者を感電させたりするおそれがある。これに対し、本発明の一態様に係る上記構成のようにリモートコントローラにより送気ユニットを無線通信を介して操作するように構成することで、導電線を用いた有線接続で送気ユニットを操作する構成とした場合の上記デメリットを解消することが可能である。
【0014】
本発明の他の態様によれば、複数のキャスターを有するキャスター部が筐体の底部に設けられていてもよい。これにより、キャスター部のキャスターを床面上等に置いてキャスターを転がすようにして歯科訪問診療用ユニットを移動させることができるので、搬送時に歯科訪問診療用ユニットを抱えたり背負ったりする負担を軽減することが可能となる。
【0015】
本発明の他の特徴事項および利点は、例示的且つ非網羅的に与えられている以下の説明及び添付図面から理解することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、歯科訪問診療用の器具を収容し、かつ訪問診療先における歯科医師等の診療等の間の身体的負担を軽減することを可能とする歯科訪問診療用ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る歯科訪問診療用ユニットの全体構成を筐体の外面パネルを外した状態で示す示す正面図である。
図2図1に示した歯科訪問診療用ユニットを、筐体の上側フレームを下側フレームから上方に離した状態で示す図である。
図3図1に示した歯科訪問診療用ユニットの左側面図である。
図4図1に示した歯科訪問診療用ユニットの背面図である。
図5図1に示した歯科訪問診療用ユニットの上面図である。
図6図1に示した歯科訪問診療用ユニットを、図5に示すA-A線に沿って筐体を破断した状態で示す図である。
図7図1に示した歯科訪問診療用ユニットに備えられた送気ユニットの概略構成を示す図である。
図8図7に示した送気ユニットのブロック構成図である。
図9図1等に示した送気ユニットの送気口に接続される送気チューブを示す図である。
図10図9に示した送気チューブを図1等に示した筐体内に収容した歯科訪問診療用ユニットを、筐体の下側部分及び上側部分の正面側の外面パネルを取り外した状態で示す図である。
図11図10に示した歯科訪問診療用ユニットを、筐体の上側部分を取り外し、かつ筐体の下側部分の正面側の外面パネルを取り外した状態で示す図である。
図12図11に示した歯科訪問診療用ユニットの椅子の着座部の高さを調節する様子を示す図である。
図13】本実施形態の歯科訪問診療用ユニットの第1の変形例を示す図である。
図14】本実施形態の歯科訪問診療用ユニットの第2の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、実施形態に示される構成要素のすべてが、本発明の必須の構成要素であるとは限らない。
【0019】
(本実施形態の歯科訪問診療用ユニットの構成)
最初に、本発明の実施の形態に係る歯科訪問診療用ユニットの全体構成について、図1図4を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る歯科訪問診療用ユニットの全体構成を筐体の正面側の外面パネルを外した状態で示す正面図、図2図1に示した歯科訪問診療用ユニットを、筐体の上側フレームを下側フレームから上方に離した状態で示す図、図3図1に示した歯科訪問診療用ユニットの左側面図、図4図1に示した歯科訪問診療用ユニットの背面図である。
【0020】
図1に示されているように、本発明の実施の形態に係る歯科訪問診療用ユニット100は、筐体110と、筐体110内に収容された椅子120と、筐体110内に収容された送気ユニット130とを備えている。
【0021】
図1を参照すると、筐体110は、筐体110の下側部分110aを構成する下側フレーム112と、筐体110の上側部分110bを構成する上側フレーム114とを有する。下側フレーム112と上側フレーム114とは、4隅のフレームの端部同士を当接させるように重ねると一体となって立方格子状のフレーム構造を成すように構成されている。上側フレーム114と下側フレーム112とは互いに着脱自在であり、上側フレーム114を下側フレーム112から取り外すことで筐体110の上側部分110bを下側部分110aから開き、上側フレーム114を下側フレーム112に取り付けることで筐体110の上側部分110bを下側部分110aに対して閉じることができる。このようにして、筐体110は、筐体110の一部である上側部分110bが筐体110の他の部分である下側部分110aに対して開閉可能に構成されている。
【0022】
一例として、下側フレーム112及び上側フレーム114は、それぞれ、円形、正方形あるいは矩形等の断面形状を有する中空もしくは中実の棒状部材の端部を結合して構成することができる。それらの棒状部材は、鉄やアルミニウム等の金属、木材、樹脂等で形成されたものを用いることができる。棒状部材同士の結合には、ボルト及びナット等の締結具、ねじ止め、リベット止め、溶接、接着剤等の任意の手段を棒状部材の材料や形状に応じて用いることができる。さらに、棒状部材同士の結合には、例えばL字形状や三角形形状等のブラケットを結合補助具として用いてもよい。
【0023】
下側フレーム112の下部には、筐体110の底面を形成する底板116aが設置されている。さらに、下側フレーム112の上部には、筐体110の中間面を形成する中間板116bが設置されている。これらの底板116a及び中間板116bは、筐体110内に各種機材や物品を収容するための載置面として機能すると共に、筐体110の構造の一部として筐体110の剛性を高める役割を有する。これらの底板116a及び中間板116bは、例えば、L字形状や三角形形状等のブラケットを結合補助具として用いて、ボルト及びナット等の締結具、ねじ止め、リベット止め、溶接、接着剤等の任意の手段により下側フレーム112に固定されている。
【0024】
下側フレーム112の4つの周囲面に外面パネル112aが設けられており、上側フレーム114の4つの周囲面と上面に外面パネル114aが設けられている。これらの外面パネル112a,114aは、筐体110の周囲を覆い、筐体110内部を外部環境から隔てる役割を有する。これにより、筐体110は各種機材や物品を外部環境から隔てた状態で内部に収容する。外面パネル112a,114aは、例えば、金属板、木材板、樹脂板等によって形成することができる。外面パネル112a,114aは、フレーム112,114に対して固定されてもよいし、着脱自在に取り付けられていてもよい。外面パネル112a,114aのフレーム112,114への固定には、例えば、ビス止め、両面粘着シート、接着剤を用いることができ、外面パネル112a,114aのフレーム112,114への着脱自在な取り付けには、例えば、面ファスナーやスナップフィット式係止構造等を用いることができる。
【0025】
これらの外面パネル112a,114aのうち、一部がフレーム112,114へ固定され、他の一部がフレーム112,114へ着脱自在に取り付けられるように構成されていてもよい。図示した例では、筐体110の4つの側面のうち図1の正面図に現れる面における外面パネル112a,114aがフレーム112,114へ着脱自在に取り付けられており、他の側面及び上面における外面パネル112a,114aはフレーム112,114に固定されている。図1には外面パネル112a,114aが取り外された状態の筐体110が示されており、筐体110の底面を形成する底板116aの上には送気ユニット130と収容部140とが設置され、筐体110の中間面を形成する中間板116bの上には各種機材等を収容する収容空間が形成されている。収容部140は引出し式の複数の引出収容部142を有しており、それらの引出収容部142を図1の図示手前側に引き出してその内部へ物品の出し入れを行うことが可能である。このように外面パネル112a,114aの一部をフレーム112,114へ着脱自在に取り付け可能に構成することで、外面パネル112a,114aを取り外して筐体110内部に収容されている物品や器具等を容易に取り出すことができる。
【0026】
筐体110の下側部分110aと上側部分110bとは、例えば、下側フレーム112及び上側フレーム114のそれぞれの4隅のフレームの端部に正極ないし負極の磁石を設けて、下側フレーム112と上側フレーム114を4隅のフレームの端部同士を当接させるように重ねて一体化させたときに、それらの磁力により固定されるように構成してもよい。この状態で歯科訪問診療用ユニット100を訪問診療先に搬送し、歯科訪問診療用ユニット100を使用する時には、歯科医師等がそれらの磁力に抗して筐体110の上側部分110bの上側フレーム114を下側部分110aの下側フレーム112から引き離して、筐体110の上側部分110bを下側部分110aから取り外すことができる。あるいは、歯科訪問診療用ユニット100の搬送時には、結束ベルトを1つ以上用いて、筐体110の下側部分110a及び上側部分110bを図示上下方向に周回するようにして下側部分110aと上側部分110bとを結束して互いに固定し、歯科訪問診療用ユニット100の使用時にはその結束ベルトを外して、筐体110の上側部分110bを下側部分110aから取り外すようにしてもよい。歯科訪問診療用ユニット100の搬送時や保管時には、筐体110の上側部分110bと下側部分110aとは、上記に説明した固定手段の他、その他の任意の固定手段を用いて互いに固定することが可能である。
【0027】
次に、本発明の実施の形態の歯科訪問診療用ユニット100に備えられた椅子120について、主に図5及び図6を参照して説明する。図5は、図1に示した歯科訪問診療用ユニットの上面図であり、図6は、図1に示した歯科訪問診療用ユニットを、筐体を図5に示すA-A線に沿って破断した状態で示す図である。
【0028】
特に図6に示されているように、椅子120は、歯科医師等が着座するための着座部122と、着座部122を支持する支持部124とを有している。着座部122は、支持部124の上端部分に、支持部124の延伸方向軸周りに回転可能に取り付けられている。図5に示されているように、支持部124は、一例として、内部にガスを封入すると共にスプリングを収容したシリンダ部124aと、シリンダ部124aに対して延伸方向軸に沿って進入及び突出するように変位可能な支柱部124bとを含むガスシリンダー装置で構成されている。支持部124には、シリンダ部124aからの支柱部124bの突出量を調節して固定するためのレバー124cが設けられている。レバー124cは、例えば、操作者がレバー124cを上側に跳ね上げた状態で着座部122に着座して体重をかけながら着座部122の高さ、すなわちシリンダ部124aからの支柱部124bの突出量を調節した後、レバー124cの跳ね上げを終了してレバー124cを元の位置に戻すことにより、シリンダ部124aからの支柱部124bの突出量を所望の状態に固定することができるように構成されている。
【0029】
図示した例では、シリンダ部124aの底部にフランジ125が設けられており、そのフランジ125が筐体110の底板116aにボルト及びナット等の締結具、リベット止め、溶接、接着剤等の任意の締結手段を用いて固定されている。また、筐体110の中間板116bには、支持部124のシリンダ部124aないし支柱部124bを通す開口が形成されている。それらの開口の形状及び寸法は、シリンダ部124aないし支柱部124bの外径形状及び寸法とほぼ同じ形状とすることが好ましい。これにより、椅子120は、筐体110に固定された状態で筐体110に収容される。
【0030】
図1図3及び図4を参照すると、本実施形態の歯科訪問診療用ユニット100に備えられた送気ユニット130は、外気を吸引する吸気部132と、吸引した空気を送気する送気口134とを有している。送気口134には、先端部184に送気ノズル186(図9参照)が装着された送気チューブ180(図9参照)の基端部188が着脱自在に装着される。図示した例では、送気口134は筐体110の左側面側に設けられ、吸気部132は筐体110の背面側に設けられているが、これらの吸気部132及び送気口134の配置位置はこの例に限られない。吸気部132及び送気口134には、それぞれ、空気清浄フィルタ132c,134a(図7参照)が設けられている。
【0031】
ここで、図7図9を参照して、図1等に示した送気ユニット130のより詳細な構成について説明する。図7は、図1に示した歯科訪問診療用ユニットに備えられた送気ユニットの概略構成を示す図であり、図8は、図7に示した送気ユニットのブロック構成図であり、図9は、図1等に示した送気ユニットの送気口に接続される送気チューブを示す図である。
【0032】
図7を参照すると、送気ユニット130は、内部空間を形成して各部構成を収容する収納空間部131と、収納空間部131内に外気を吸引する吸気部132と、収納空間部131内に吸引された空気を収納空間部131の外に排気する送気口134とを備えている。
【0033】
吸気部132は、吸気ファン132aと、吸気ファン132aを回転駆動させる電動モータ132bと、空気清浄フィルタ132cとを有している。空気清浄フィルタ132cは収納空間部131の一側面に設置され、吸気ファン132aは収納空間部131に隣接するように収納空間部131内に設置されている。吸気ファン132aは、例えば、プロペラファン、シロッコファン、ターボファン、エアホイルファン、プレートファンで構成することができる。
【0034】
図4に示すように、送気ユニット130が筐体110内の所定の配置位置に設置されたときに吸気部132に対向する領域の外面パネル112aの一部は外面パネル112aの残りの部分に対して着脱自在に構成されており、送気ユニット130を作動させるときには、その外面パネル112aの一部を取り外して、筐体110の外部から送気ユニット130内へ外気の吸引を行うことを可能にする。これにより、電動モータ132bを駆動して吸気ファン132aを回転させると、収納空間部131の外から空気清浄フィルタ132cを通して収納空間部131内に空気が吸引される。送気ユニット130は、電動モータ132bの駆動制御を司る制御ユニット136と、制御ユニット136を介して電動モータ132bに電力を供給する電源バッテリー138とをさらに有しており、電動モータ132bは、電源バッテリー138から制御ユニット136を介して供給される電力によって回転駆動される。電源バッテリー138には、アルカリ電池等の1次電池の他、ニッカド電池やリチウムイオン電池などの2次電池を用いることができる。
【0035】
制御ユニット136は、リモートコントローラ160と無線接続され、リモートコントローラ160からの操作信号を無線通信で受信するように構成されている。電動モータ132bの駆動制御(回転のオン・オフ、回転速度の変更等)は、リモートコントローラ160のボタン162を操作者が操作することで行うことが可能である。
【0036】
送気口134は、収納空間部131の吸気部132が設けられた側面とは異なる側面から突出するように形成されている。送気口134は、収納空間部131の内部空間を収納空間部131の外部に連通させる管腔を有している。送気口134は、図1及び図3等に示すように、筐体110の側面に設けられる外面パネル112aに形成された送気口134用の貫通孔を通して外面パネル112aの外側に突出する。
【0037】
次に図8のブロック構成図を参照すると、送気ユニット130の制御ユニット136は、吸気部132の電動モータ132b(図7参照)の回転駆動制御を司る駆動制御回路136aと、リモートコントローラ160からの操作信号を無線通信で受信して駆動制御回路136aに入力する通信部136bとを有している。通信部136bとリモートコントローラ160との無線通信には、例えば、赤外線通信、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の無線通信技術を用いることができる。リモートコントローラ160からの操作信号は、操作者がリモートコントローラ160のボタン162(図7参照)を操作することより、リモートコントローラ160から通信部136bに送信される。
【0038】
駆動制御回路136aは、通信部136bがリモートコントローラ160から受信した操作信号に応じて、電源バッテリー138から吸気部132の電動モータ132aに供給される電圧ないし電流を調節することにより、電動モータ132bの回転駆動を制御する。駆動制御回路136aは、例えば、リモートコントローラ160のボタン162を押す操作を繰り返す度に電動モータ132bの回転駆動のオンとオフとを交互に切り替えるように構成されている。駆動制御回路136aはさらに、例えば、リモートコントローラ160のボタン162を長押しする時間やボタン162をクイックにクリックする回数に応じて、電動モータ132bの回転速度を調節できるように構成されていてもよい。
【0039】
次に、図9を参照して送気チューブ180について説明する。図9(a)に示すように、送気チューブ180は、蛇腹状に形成されて可撓性を有するチューブ部182と、送気ノズル186が着脱自在に取り付けられる先端部184と、図1等に示した送気ユニット130の送気口134に着脱自在に取り付けられる基端部188とを有する。送気チューブ180は、訪問診療先で患者の傍に設置される歯科訪問診療用ユニット100から患者の口元まで届く長さを有し、例えば1~2メートル程度の全長を有することが好ましい。なお、図9では、図示の便宜上、チューブ部182の一部を省略して点線で示している。
【0040】
送気ノズル186は、ディスポと称されるような使い捨てのタイプのものであっても良いし、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)やエチレンオキサイドガス等の滅菌ガスによって滅菌可能なリユースと称される再使用可能なタイプのものであっても良い。送気ノズル186を構成する材料は、それらのディスポ又はリユースの用途に応じて適宜選択することができる。
【0041】
本実施形態では、図9(b)に示すように、上面にボタン162が設けられたリモートコントローラ160を送気チューブ180の先端部184近傍に着脱自在に取り付けられるように構成されている。送気チューブ180へのリモートコントローラ160の取り付けは、着脱アタッチメント(不図示)を介して行うことができる。一例として、着脱アタッチメントは、リモートコントローラ160の背面側が固定される台座部と、チューブ部182の周囲面に着脱自在に取り付けられるスナップフィット部とで構成される。スナップフィット部は、例えば、切欠きを有してチューブ部182の周囲を部分的に囲むC字形の形状に形成され、その切欠きの隙間を通してチューブ部182に対して着脱される。
【0042】
さらに、図9(b)に示すように、本実施形態における送気チューブ180の先端部184近傍には、送気ノズル186から送気する患者の口腔内を照明する照明装置190が設けられている。照明装置190は、一例として、電池を収容する本体部192と、白色LED(白色発光ダイオード)等の光源、レンズ及びリフレクタを収容する照明部194とを有する。照明装置190は、例えば、照明部194を本体部192に対して、照明装置190の長手方向軸周りに所定の方向に所定の角度だけ回転させると照明部194の光源が点灯し、そこから逆方向に元の位置まで回転させると照明部194の光源が消灯するように構成されている。照明装置190は、照明部194が点灯すると送気ノズル186の前方(図9(a)の紙面上方向)に光源からの光を照射し、患者の口腔内を照明することができる。
【0043】
照明装置190は、一例として、本体部192が上記着脱アタッチメント(不図示)の台座部に固定される。図示した例では、照明装置190は送気チューブ180の側面に配置されているが、送気チューブ180に対する照明装置190の配置位置はこれに限られない。
【0044】
図10は、図9に示した送気チューブ180を図1等に示した筐体110内に収容した歯科訪問診療用ユニット100を、筐体110の下側部分110a及び上側部分110bの正面側の外面パネルを取り外した状態で示す図である。図10に示した例では、送気チューブ180は、筐体110の中間板116bの上の上側部分110b内に収容される。送気チューブ180は、可撓性を有するチューブ部182を椅子120の着座部122の下側の、椅子120の支持部124(図6等参照)の周囲を螺旋状に周回させるように屈曲させることにより、筐体110の上側部分110b内に収容することが可能である。送気チューブ180をこのように筐体110内に収容する際には、リモートコントローラ160及び照明装置190を備えた着脱アタッチメント(不図示)を送気チューブ180に装着したままでもよいし、着脱アタッチメントを送気チューブ180から取り外して同じく筐体110の上側部分110b内に収容したり、収容部140の引出収容部142内に格納したりしてもよい。
【0045】
(本実施形態の歯科訪問診療用ユニットの使用例及び利点)
続いて、本実施形態の歯科訪問診療用ユニット100の使用例及び利点について説明する。
【0046】
歯科医師等は、訪問診療先へ赴く前に送気チューブ180及びその他の器具を筐体110内に収容し、筐体110の下側部分110aと上側部分110bとを上述した任意の固定手段で固定して、歯科訪問診療用ユニット100を訪問診療先に搬送する。これにより、歯科訪問診療用ユニット100の運搬時に筐体110の下側部分110aと上側部分110bとが分離して、筐体110内に収容した送気チューブ180や器具等が外部に散逸することを防ぐことができる。
【0047】
訪問診療先では、歯科訪問診療用ユニット100は、例えば、患者が寝ている布団やベッド、あるいは患者が着座している椅子の傍らの、歯科医師等が診療等を行う際に着座する位置に配置される。歯科訪問診療用ユニット100の配置位置が定まった後、歯科医師等は、筐体110の下側部分110aと上側部分110bとを固定している固定手段を外し、筐体110の下側部分110aから上側部分110bを取り外して下側部分110aを開き、上側部分110bを筐体110の下側部分110aの側などに置く。このとき、筐体110の下側部分110aを覆う外面パネル112aのうち、図1に示す正面側に設置された外面パネル112aを取り外して、下側部分110a内に設置された収容部140の各引出収容部142内に収容した器具等を取り出するようにしてもよい。
【0048】
図11は、図10に示した歯科訪問診療用ユニット100を、筐体110の上側部分110bを取り外し、かつ筐体110の下側部分110aの正面側の外面パネル112aを取り外した状態で示す図である。図11に示すように筐体110の上側部分110bを取り外して筐体110の下側部分110aを開くと、筐体110内に収容された椅子120の着座部122と、椅子120の支持部124(図2等参照)の周囲を螺旋状に周回させるようにして収容された送気チューブ180とが露出する。歯科医師等は、その送気チューブ180を筐体110から取り出し、例えば、筐体110の下側部分110aの側などに置かれた上側部分110bの上面の上に一時的に送気チューブ180を載置する。このように、上側部分110bの上面は、診療に用いる各種器具の置き場所として利用することができる。
【0049】
図12は、椅子120の着座部122の高さを調節する様子を示す。次いで、歯科医師等は、図12に示すように、椅子120の支持部124に設けられたレバー124cを上側に跳ね上げた状態で着座部122に着座して体重をかけながら着座部122の高さ、すなわちシリンダ部124aからの支柱部124bの突出量を調節して、着座部122の高さを調節する。椅子120の着座部122の高さは、歯科訪問診療用ユニット100の搬送時に筐体110内に着座部122を収容する最も低い高さ(図12の実線)と、シリンダ部124aからの支柱部124bを最大限に突出させた最も高い高さ(図12の点線)との間で調節可能である。歯科医師等は、自身の所望の高さとなるように着座部122の高さを調節した後、レバー124cを元の位置に戻すことにより、シリンダ部124aからの支柱部124bの突出量を所望の状態に固定して、着座部122の高さを固定することができる。
【0050】
次いで、歯科医師等は、上側部分110bの上面上に載置していた送気チューブ180を取り、送気チューブ180の基端部188(図9参照)を筐体110の側面から突出した送気ユニット130の送気口134に接続すると共に、送気チューブ180の先端部184に送気ノズル186が装着されていない場合には先端部184に送気ノズル186を装着し、また、リモートコントローラ160及び照明装置190を備えた着脱アタッチメント(不図示)が送気チューブ180に装着されていない場合には着脱アタッチメントを図9(b)に示すように送気チューブ180の先端部184近傍に装着する。これにより、送気ユニット130への送気チューブ180の取付け及び送気チューブ180の使用前準備が完了する。
【0051】
さらに、歯科医師等は、歯科訪問診療用ユニット100の筐体110内の収容部140等に収容された他の器具、加えて歯科訪問診療用ユニット100とは別に携行してきた歯科診療用器具がある場合にはそれらを取り出して、診療等に使用可能な状態にセットする。以上により、診療等を行うための歯科訪問診療用ユニット100及び他の器具の準備が完了する。
【0052】
続いて、歯科医師等は送気チューブ180及び各種器具を用いて患者の診療等を行う。歯科医師等は最初に、送気チューブ180の先端部184近傍に取り付けられている照明装置190を上述したように操作して照明部194を点灯させる。歯科医師等は、一方の手で、送気チューブ180の先端部184をリモートコントローラ160と一緒に把持する。このとき、一方の手の親指の腹側がリモートコントローラ160のボタン162の上に位置するように把持することが好ましい。そして、歯科医師等は他方の手で、診療に用いるハンドピース等や、口腔ケアに用いる歯ブラシ等の器具を把持する。
【0053】
歯科医師等は、一方の手で把持した送気チューブ180の先端部184に備えられている照明装置190から照射される光で患者の口腔内を照明しながら、他方の手で把持した器具を用いて患者の診療等を行う。このとき、歯科医師等は上側部分110bを器具の載置台をして用いて、上側部分110bの上面の上に器具などを置いてもよい。
【0054】
歯科医院内に設置されているような歯科用照明器は訪問診療先に備えられていないことが通常であり、一般には、訪問診療先で診療等を行う際には患者の口腔内を懐中電灯等で照明することが行われている。その場合、訪問診療先で送気チューブを使用する場合、患者の口腔内の患部を乾燥させるために送気チューブで送気した後に、送気チューブから懐中電灯に持ち替えて口腔内を照明して患部の状態を目視で確認し、さらには必要に応じて再び送気チューブに持ち替えて患部へ送気するといった手順が必要になり、診療等に手間と時間を要する。これに対し、本実施形態によれば、送気チューブ180の先端部184に照明装置190が備えられているため、照明装置190で患者の口腔内を照明して口腔内を歯科医師等が目視で確認しながら送気チューブ180で送気することができ、また、他方の手で把持した器具を用いて診療等を行う際にも送気チューブ180を持ち替えることなくそのまま照明装置190で口腔内を照明することができるので、送気チューブと懐中電灯とを持ち替える必要がある場合に比べて診療等に要する手間と時間を低減することができる。
【0055】
送気チューブ180からの送気のオン・オフ切替えや送風強度の調節は、上述したようにリモートコントローラ160のボタン162を操作して送気ユニット130を作動させることで行うことができる。本実施形態では、送気ユニット130とリモートコントローラ160とが上述したように無線通信するように構成されており、送気ユニット130とリモートコントローラ160とを電気的に接続する導電線は備えられていない。送気ユニットとリモートコントローラとを導電線を用いて電気的に接続した場合には、送気ユニット130の使用時に導電線の取り回しが煩雑となり、また、リモートコントローラを操作して導電線に電流が流れた際に導電線から意図しない電磁ノイズが放射され、場合によっては訪問診療先に設置された医療機器の誤作動を生じさせたり、さらには導電線から漏電して患者に感電させたりするおそれがある。これに対して、本実施形態では送気ユニット130とリモートコントローラ160とを無線接続しているため、上記のような事態が生じる可能性を排除することができる。
【0056】
ここで図7及び図8を参照すると、送気ユニット130での送気動作をオンにするために歯科医師等がリモートコントローラ160のボタン162を操作してリモートコントローラ160から送信された操作信号は、送気ユニット130の通信部136bによって受信され、通信部136bから駆動制御回路136aに入力される。駆動制御回路136aは、入力された操作信号に応じて、電源バッテリー138から吸気部132の電動モータ132bに電力を供給する。電力供給された電動モータ132bは回転駆動し、吸気ファン132aを回転させる。これにより、送気ユニット130の外部の空気が吸気部132の空気清浄フィルタ132cを通って送気ユニット130の収納空間部131内に吸引される。外部空気は、空気清浄フィルタ132cを通る際に埃等が除去されて浄化された状態で収納空間部131内に吸引される。
【0057】
収納空間部131内に吸引された空気は、送気口134を通って送気ユニット130の収納空間部131から排出される。送気口134の収納空間部131内側には空気清浄フィルタ134aが設けられており、収納空間部131内の空気はその空気清浄フィルタ134aを通って埃等がさらに除去されて浄化された状態で送気口134から排気される。
【0058】
上述したように、送気口134には送気チューブ180の基端部188が接続されているため、送気口134から排出された空気は送気チューブ180の基端部188からチューブ部182を通って導かれ、先端部184の送気ノズル186から排出される。歯科医師等は、送気チューブ180の送気ノズル186から排出される空気を患者の口腔内に適宜送気する。先端部184の送気ノズル186から排出される空気は、上述したように送気ユニット130内の吸気部132側の空気清浄フィルタ132cと送気口134側の空気清浄フィルタ134aとを通って浄化されるので、患者の口腔内に清潔な空気を供給することができる。
【0059】
歯科医師等は、上述したように、リモートコントローラ160のボタン162を長押しする時間やボタン162をクイックにクリックする回数に応じて、電動モータ132bの回転速度を調節することができる。また、送気チューブ180からの送気を停止する場合には、リモートコントローラ160のボタン162を操作して、電動モータ132bの回転駆動をオフにする。これらの各種ボタン操作に応じてリモートコントローラ160から操作信号が送気ユニット130の通信部136bに送信され、駆動制御回路136aはそれらの操作信号に応じて電動モータ132bの回転速度の調節や停止を行う。
【0060】
図7及び図8を参照して説明したように、本実施形態における送気ユニット130は内部に電源バッテリー138を備え、電動モータ132bはその電源バッテリー138から供給される電力によって駆動される。そのため、本実施形態の歯科訪問診療用ユニット100は、家庭用交流100ボルト電源等の外部電源を用いることなく、送気ユニット130を動作させることができる。歯科訪問診療用ユニット100の送気ユニット130が外部電源に依存する構成である場合には、例えば、訪問診療先が災害避難場所(公民館や学校の体育館、野外テント等)であると外部電源から電力を得ることが困難であるため、送気ユニット130を動作させることができないおそれがあるが、本実施形態の歯科訪問診療用ユニット100のように電源バッテリー138を備えることで、外部電源から電力供給を受けられない場所や環境でも送気ユニット130を動作させることができる。
【0061】
なお、本実施形態における送気ユニット130は、電源として上記の電源バッテリー138に加えて、家庭用交流100ボルト電源等の外部電源から電力供給を受けるための外部電力受電ユニットを備えていてもよい。これにより、外部電源から電力供給を受けられる場所や環境では、家庭用交流100ボルト電源等の外部電源から電力供給を受けて送気ユニット130を動作させることも可能となる。
【0062】
訪問診療先での診療等を終了すると、歯科医師等は上述とは概ね逆の手順で歯科訪問診療用ユニット100を搬送可能な状態に戻す。より詳細には、椅子120の着座部122を図2図6に示す最も低い位置まで下げ、送気チューブ180を送気口134から取り外して椅子120の着座部122の下側に支持部124の周囲を周回させて収容し、器具等を収容部140内等に収容し、筐体110の上側部分110bを図1に示すように下側部分110aと一体化させ、取り外していた外面パネル112a.124aがあればそれらを筐体110に取り付けた後、任意の固定手段で筐体110の上側部分110bと下側部分110aとを固定する。これにより、歯科訪問診療用ユニット100は訪問診療先に搬送されてきたときの状態に戻り、訪問診療先から搬出することが可能になる。
【0063】
[変形例]
<第1の変形例>
ここで、本実施形態の歯科訪問診療用ユニット100の第1の変形例について説明する。図13は、本実施形態の歯科訪問診療用ユニットの第1の変形例を示す図である。
【0064】
図13に示す変形例の歯科訪問診療用ユニット100’は、複数のキャスター126aを備えたキャスター部126を椅子120の底部に備えている。図示した例では、本変形例における椅子120の支持部124’はフランジ部125及び筐体110の底面板116aを通って下方に延びており、その支持部124’の下面にキャスター部126が固定されている。フランジ部125は、支持部124’に溶接等によって固定されており、さらに、ボルト及びナット等の締結具を用いて底面板116aに固定されている。
【0065】
キャスター部126の各脚部126bの端部付近にそれぞれ設けられたキャスター126aは、床面等の上に置かれた歯科訪問診療用ユニット100’を移動させる際に、その移動方向に追従して進行方向を変えることができるように構成された、いわゆる自在キャスターである。図12では図示の簡素化のためにキャスター部126の両端部付近に2つのキャスター126aが描かれているが、キャスター部126は、支持部124’の中心軸から径方向に等間隔な放射状に延びた少なくとも3つの脚部126bを有する。
【0066】
図13に示した歯科訪問診療用ユニット100’は、図6に示した歯科訪問診療用ユニット100と同じ要領で描かれており、本変形例の歯科訪問診療用ユニット100’について上記で特に説明した構成以外の構成は、図6等に示した歯科訪問診療用ユニット100の各部構成と同じである。
【0067】
本変形例によれば、キャスター部126の複数のキャスター126aを床面等の上に置いて転がすようにして歯科訪問診療用ユニット100’を移動させることができる。そのため、歯科訪問診療用ユニット100’を抱えたり背負ったりせずに訪問診療先へ搬送することができ、また、診療等を行っている間に歯科医師等が椅子120に着座したままの状態で、下側部分110aごと移動することができるので、歯科訪問診療用ユニット100’の移動に関する歯科医師等の負担を低減することができる。
【0068】
<第2の変形例>
次に、本実施形態の歯科訪問診療用ユニット100の第2の変形例について説明する。図14は、本実施形態の歯科訪問診療用ユニットの第2の変形例を示す図である。
【0069】
図14に示す変形例の歯科訪問診療用ユニット100”は、筐体110の側面のうち、吸気部132又は送気口134が設けられていないいずれかの側面に、筐体110の下側部分110aと上側部分110bとを連結するヒンジ118が設けられている。ヒンジ118は、一例として、2枚の板部材同士を1本の回転軸で互いに回動自在に連結して成る、いわゆる平蝶番の形態を有している。平蝶番状のヒンジ118の2枚の板部材のうちの一方は下側部分110aの側面の外面プレートに固定され、他方は上側部分110bの側面の外面プレートに固定されている。ヒンジ118は自身の回転軸を中心として2枚の板部材が互いに回動可能であり、これに伴って、ヒンジ118を介して連結された筐体110の下側部分110aと上側部分110bは、ヒンジ118の回転軸を中心として互いに回動可能である。
【0070】
図14に示した歯科訪問診療用ユニット100”について上記で特に説明した構成以外の構成は、図1等に示した歯科訪問診療用ユニット100の各部構成と同じである。
【0071】
図14(a)に示すように筐体110の下側部分110aに対して上側部分110bが閉じた状態から、上側部分110bをヒンジ118の回転軸を中心として下側部分110aに対して約180度の角度に回転させると、図14(b)に示すように筐体110の下側部分110aに対して上側部分110bが開いた状態となる。また、これとは逆に、図14(b)に示すように筐体110の下側部分110aに対して上側部分110bが開いた状態から、上側部分110bをヒンジ118の回転軸を中心として下側部分110aに対して逆方向に約180度の角度に回転させると、図14(a)に示すように筐体110の下側部分110aに対して上側部分110bが閉じた状態となる。このように、本変形例においても筐体110の上側部分110bは下側部分110aに対して開閉可能に構成されている。
【0072】
図14(b)に示すように筐体110の下側部分110aに対して上側部分110bが開いた状態では、上側部分110bの内側が上方を向いた姿勢が維持される。歯科医師等は、訪問診療先での診療等を行う間に、上側部分110bの内側に診療等に使用する器具を一時的に載置してもよい。
【0073】
以上、本発明に係る実施形態及びその変形例について説明したが、これらはその他の様々な形態で実施することが可能であり、種々の省略、置換および変更を行なって実施することができる。これらの実施形態および変形例ならびに省略、置換および変更を行なったものは、特許請求の範囲の技術的範囲とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
100,100’,100” 歯科訪問診療用ユニット
110 筐体
120 椅子
130 送気ユニット
140 収容部
160 リモートコントローラ
180 送気チューブ
190 照明装置

【要約】
【課題】 歯科訪問診療用の器具を収容し、かつ訪問診療先における歯科医師等の診療等の間の身体的負担を軽減することを可能とする歯科訪問診療用ユニットを提供する。
【解決手段】 本発明の一実施形態によれば、外部から空気を吸引する吸気部と、吸気部で吸引した空気を排出する送気口とを有する送気ユニット130と、患者の口腔内に向けて送気する送気ノズルが一方の端部に取り付けられ、送気ユニット130の送気口に他方の端部が接続される送気チューブ180と、着座部122を有する椅子129と、少なくとも送気ユニット130、送気チューブ180及び椅子120を収容する筐体110と、備えた歯科訪問診療用ユニット100が提供される。筐体110は、椅子120の着座部122を露出させるように、筐体110の一部110bが筐体110の他の部分110aに対して開閉可能に構成されている。
【選択図】 図10

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14