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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】スクリーン印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 1/18 20060101AFI20220715BHJP
   B41M 1/06 20060101ALI20220715BHJP
   B41M 3/00 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
B41M1/18
B41M1/06
B41M3/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2016017999
(22)【出願日】2016-02-02
(65)【公開番号】P2017136725
(43)【公開日】2017-08-10
【審査請求日】2019-01-18
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】509334963
【氏名又は名称】株式会社ユーホウ
(74)【代理人】
【識別番号】100123618
【弁理士】
【氏名又は名称】雨宮 康仁
(72)【発明者】
【氏名】増子 光晴
【合議体】
【審判長】吉村 尚
【審判官】藤本 義仁
【審判官】畑井 順一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭587-102678(JP,A)
【文献】特開平2-167770(JP,A)
【文献】特開2005-10251(JP,A)
【文献】特開平7-5697(JP,A)
【文献】特開2004-233984(JP,A)
【文献】特開2008-80666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/18,1/06
B41M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電飾看板 パネルに固定される半透明シートの片面に同一画像を複数回印刷するスクリーン印刷方法であって、
前記半透明シートの片面への前記画像の印刷に用いられる印刷板のうちの少なくとも一部は、均等な間隔で配列された網点の大きさを変えることで濃淡を表示するAM(Amplitude Modulation)スクリーンを用いて製版され、
前記AMスクリーンにおける、1インチ当りに並んでいる網点の数を示すスクリーン線数は、700線/インチ以上である、ことを特徴とするスクリーン印刷方法。
【請求項2】
前記半透明シートの片面への前記画像の印刷に用いられる印刷板のうちの少なくとも一部は、ランダムに配置された網点の密度を変化させて濃淡を表示するFM(Frequency Modulation)スクリーンも用い製版される、
ことを特徴とする請求項に記載のスクリーン印刷方法。
【請求項3】
前記半透明シートの片面への前記画像の印刷には、透過度が30%以下までのインキが用いられる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスクリーン印刷方法。
【請求項4】
前記半透明シートの片面への前記画像の印刷に用いられるインキは、透明インキに白系のインキを混ぜ合わせて生成される、
ことを特徴とする請求項1,2,又は3に記載のスクリーン印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷方法に関し、特に、画質を劣化させることなく画像再現を高め、印刷コストを低減可能なスクリーン印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、裏面側から光を照射することにより、半透明なプラスチック板に貼り付けた透明又は半透明のシートに印刷された広告画像を駅の利用者や通行人に鮮明に表示する電飾看板は、駅構内や地下道に多数設置されている。
【0003】
オフセット印刷や、グラビア印刷、スクリーン印刷では、インキの塗布量が少なく、片面印刷では印刷部分の色濃度に限界があるため、この発案前は透明又は半透明のシートの両面に広告画像を印刷して両画像を一致させるようにし、電飾看板に表示される広告画像の色濃度を高めていた。例えば、オフセット印刷では、透明又は半透明のシートの表面に印刷板を用いて広告画像を印刷した後、時間おいてインキの乾燥を十分にさせ、次いで前記印刷板の逆の印刷板を用いて表面が印刷された透明又は半透明のシートの裏面に印刷を施し、表裏の印刷で色濃度を高めていた(例えば特許文献1参照)ため、印刷予備シートも両面印刷分必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公昭49-15273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、両面の印刷板とその印刷予備シート数が必要となるため、電飾看板の製造コストが高くなる要因となっていた。また、両面に同じ広告画像を印刷することは極めて困難であり、両画像が完全には一致せずに、特に図柄の境界がぼやけたものとなっていた。さらに、仮に精密に印刷を行って両画像を一致させることができたとしても、正面方向以外、例えば斜め方向から見た場合には透明又は半透明のシートの厚み分だけ図柄がずれることになるため、特に図柄の境界が不鮮明になっていた。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、画質を劣化させることなく画像再現を高め、印刷コストを低減可能なスクリーン印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明に係るスクリーン印刷方法は、電飾看板パネルに固定される半透明シートの片面に同一画像を複数回印刷するスクリーン印刷方法であって、前記半透明シートの片面への前記画像の印刷に用いられる印刷板のうちの少なくとも一部は、均等な間隔で配列された網点の大きさを変えることで濃淡を表示するAM(Amplitude Modulation)スクリーンを用いて製版され、前記AMスクリーンにおける、1インチ当りに並んでいる網点の数を示すスクリーン線数は、700線/インチ以上である、ことを特徴とする。
【0011】
また、上記のスクリーン印刷方法において、前記半透明シートの片面への前記画像の印刷に用いられる印刷板のうちの少なくとも一部は、ランダムに配置された網点の密度を変化させて濃淡を表示するFM(Frequency Modulation)スクリーンも用い製版されてもよい。なお、前記FMスクリーンにおける、1インチ当りに並んでいる網点の数を示すスクリーン線数が略400線/インチである事、若しくは網点のサイズが20μm以下である事が好ましい。
【0012】
さらに、上記のスクリーン印刷方法において、前記半透明シートの片面への前記画像の印刷には、透過度が30%以下までのインキが用いられる事が好ましい。なお、前記半透明シートの片面への前記画像の印刷には、従来持つインキの透過性を軽減するためのインキが用いられる事が好ましい。
【0013】
そして、上記のスクリーン印刷方法において、前記半透明シートの片面への前記画像の印刷に用いられるインキは、透明インキに白系のインキを混ぜ合わせて生成される、ものであればよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、画質を劣化させることなく画像再現を高め、印刷コストを低減可能なスクリーン印刷方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る電飾看板の製造方法を説明する。
【0016】
本実施形態に係る電飾看板は、オフセット印刷機を用いて、半透明のシートの片面に広告画像を複数回印刷し、広告画像が印刷された半透明のシートをパネルに固定する事により、製造される。なお、本実施形態では、半透明のシートの片面への広告画像の印刷は、オフセット印刷で行われるものとして説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、グラビア印刷、スクリーン印刷、及びインクジェット印刷等で行われてもよい。
【0017】
具体的には、まず、印刷版の原版を四枚用意する。印刷版の原版は、CTP(Computer To Plate)により画像形成可能な記録層を有するものであればより良い。例えば、印刷版の原版としては、半導体レーザ露光等によりデジタルデータから直接画像形成可能であり、露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が向上するサーマルポジ型の記録層を有するものや、露光部が硬化して画像形成するサーマルネガ型の記録層を有するもの等が挙げられる。
【0018】
次に、広告画像を表す画像データをCTPセッターに入力して色分解処理及び網点生成を行い、均等な間隔で配列された網点の大きさを変えることで濃淡を表示するAM(Amplitude Modulation)スクリーンを用いて、オフセット印刷機で用いられる色(本実施形態では、シアン、マゼンダ、イエロー、及びブラックの四色)毎の網点を示す製版用データを生成する。なお、本実施形態において、オフセット印刷機では、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの四色が用いられるものとして説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、オフセット印刷機で用いられる色の数は任意であり、三色以下であってもよいし、特殊インキを含む五色以上であってもよい。
【0019】
ここで、AMスクリーンでは、解像度を表現する方法としてスクリーン線数(1インチ当りに並んでいる網点の数)が用いられる。電飾看板の製造では、175線/インチの比較的低分解能の網点が用いられるのが一般的であるが、本実施形態では、200線/インチ以上の高細線の網点が用いられている。これにより、本実施形態における電飾看板の製造方法のように、半透明のシートの片面に広告画像を複数回印刷する場合でも、干渉モアレやロゼッタパターンの発生により画像の質感や、実存感及び細部の再現性等が低下することを防止することができる。
【0020】
なお、スクリーン線数は、200線/インチ以上であれば任意であり、干渉モアレやロゼッタパターンの発生による画像の質感や、実存感及び細部の再現性等の低下をより確実に防止するためには、超高細線700線/インチ以上であることが好ましく、例えば、700線/インチ、900線/インチ、及び1000線/インチ等でもよい。もっとも、スクリーン線数を高くすると、CTPセッターの解像度の制約や、小面積の網点の耐刷性低下等の問題が生じてしまうため、より好適には、700線/インチ程度とするのがよい。
【0021】
なお、本実施形態では、AMスクリーンを用いるものとして説明するが、ランダムに配置された網点の密度を変化させて濃淡を表示するFM(Frequency Modulation)スクリーンを用いてもよいし、AMスクリーンとFMスクリーンとを組み合わせた方式を用いてもよい。また、オフセット印刷機で用いられる色のうちの少なくとも一部にAMスクリーンを用い、それ以外の色にFMスクリーンを用いてもよい。なお、FMスクリーンを用いる場合、スクリーン線数は、印刷版の製版時の網点再現性を安定させ、印刷時の管理を容易にするため、略400線/インチ以上であることが好ましい。
【0022】
続いて、用意した四枚の印刷版の原版を一枚ずつCTPセッターにセットし、製版用データに基づいて、印刷版の原版を露光した後、アルカリ現像液により現像処理を行って、イエロー、シアン、マゼンタ、及びブラックの印刷板をそれぞれ製版する。
【0023】
ここで、露光に用いる光源は、印刷版の原版が有する記録層に応じて選択されるが、現在、従来のフィルム刷版露光のキセノンなどの諸光源を含めるが、CTP露光に用いられる活性光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源や、固体レーザや半導体レーザ等が特に好ましい。
【0024】
また、現像処理に用いる現像液又は補充液としては、公知のアルカリ水溶液を適宜選択して使用できる。アルカリ水溶液に使用し得るアルカリ剤としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム等の無機アルカリ塩やモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンイミン、ピリジン等の有機アルカリ剤が挙げられ、これらは一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0025】
現像液及び補充液を用いて現像処理されたイエロー、シアン、マゼンタ、及びブラックの印刷版は、それぞれ水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。
【0026】
続いて、イエロー、シアン、マゼンタ、及びブラックの印刷板をオフセット印刷機の第1印刷胴から最終印刷胴(本実施形態では、第四印刷胴)順次セットし、それぞれの印刷板に対応するインキ、及び湿し水を供給し、印刷版に供給されたインキをブランケット胴を介して圧胴に保持された半透明のシートの片面に転写して行くことにより、半透明のシートの片面に広告画像を印刷する。そして、半透明のシートの片面への広告画像の印刷を複数回行う。このように、広告画像の印刷を複数回行うことで、片面印刷でも色濃度を十分高めることができる。
【0027】
ここで、印刷に用いられる半透明のシートは、腰強度も高く、印刷性に優れ、印刷の見映えも良好なトレース紙が好ましい。本実施形態では、炭酸カルシウム又は焼成クレイ等の白色無機微細粉末を含有する熱可塑性樹脂の延伸フィルムよりなる不透明度(JIS P-8138)が15~35%のトレース合成紙を用いている。
【0028】
また、印刷には、透過度の低い、具体的には不透過性が30%以下までのインキが用いられる。このようなインキは、透過度の高い汎用のイエロー、シアン、マゼンタ、及びブラックのUV(Ultra Violet)硬化型インキ(透明インキ)のそれぞれに、不純物として従来持つインキの透過性を軽減するためのインキ、例えば透過度を低下させる白系のインキを混ぜ合わせて生成される。このように透過度の低いインキを用いて印刷することで、片面印刷でも明度が高くなり過ぎることを防止する事ができる。使途目的のバックライト用としてより鮮明な画像表現が可能な高濃度印刷物となる。
【0029】
そして、広告画像が印刷された半透明のシートをパネルに固定して、電飾看板を製造する。このようにして、パネルに固定された半透明のシートの裏面側に、蛍光灯、電球、水銀灯、及びキセノン灯等の光源から光線を照射して、光を半透明のシートに透過させることにより、電飾看板には、半透明のシートに印刷された広告画像が表示される。
【0030】
以上説明したように、本実施形態における電飾看板の製造方法によれば、被印刷体である半透明のシートの片面に広告画像を複数回印刷することで、従来の電飾看板の製造方法のように半透明のシートの両面に広告画像を印刷して、両画像を一致させるようにすることなく、色濃度を十分高めることができる。これにより、片面の印刷板のみで足り、従来の電飾看板の製造方法のように両面の印刷板を必要としなくなるため、画質を劣化させることなく画像再現を高め、印刷コスト、ひいては電飾看板の製造コストを低減することができる。
【0031】
また、半透明のシートの両面に両画像が一致するように印刷する必要がなくなるため、両画像の不一致に起因して図柄の境界がぼやけたり、半透明のシートの厚みに起因して図柄がずれて図柄の境界が不鮮明になったりすることを防止することができ、画質の劣化を防止できるにとどまらず、画質を向上させることができる。
【0032】
さらに、半透明のシートの片面への広告画像の印刷に用いられる印刷板のうちの少なくとも一部は、AMスクリーンを用いて製版され、AMスクリーンにおけるスクリーン線数を200線/インチ以上、より好ましくは略700線/インチ以上としているため、干渉モアレやロゼッタパターンの発生による画像の質感や、実存感及び細部の再現性等の低下を防止することができる。さらに好適には、AMスクリーンにおけるスクリーン線数を略700線/インチとすることで、CTPセッターの解像度の制約や、小面積の網点の耐刷性低下等の問題を解消することができる。
【0033】
なお、半透明のシートの片面への広告画像の印刷に用いられる印刷板のうちの少なくとも一部は、FMスクリーンを用いて製版されてもよく、FMスクリーンを用いる場合、スクリーン線数や網点のサイズは、特に限定されるものではなく、全般的に任意に選択可能であるが、好ましくは、スクリーン線数を略400線/インチに、或いは網点のサイズを例えば10μm、15μm、及び20μm等、20μm以下にすれば、印刷版の製版時の網点再現性を安定させ、印刷時の管理を容易にすることができる。
【0034】
また、半透明のシートの片面への広告画像の印刷は、上述したように、インクジェット印刷で行われてもよく、この場合、インクジェット印刷における解像度は、1440dpi以上であれば任意であり、ドット形状及び色数等も特に限定されるものではない。したがって、本発明に係る印刷方法は、今後開発される様々なインクジェット印刷にも適用可能である。
【0035】
また、半透明のシートの片面への広告画像の印刷には、不透過度が30%以下までのインキが用いられ、かかるインキは、透過度の高い汎用のイエロー、シアン、マゼンタ、及びブラックのUV硬化型インキ(透明インキ)のそれぞれに、不純物として透過度を低下させる白系のインキを混ぜ合わせて生成される。このように透過度の低いインキを用いて印刷することで、片面印刷でも各色印刷濃度・明度・彩度が幅広く表現可能となり、且つ、必要以上の印刷膜厚が高くなり過ぎる事を防止し、印刷作業環境の標準化及び過度の原材料消費を抑制することができる。
【0036】
なお、本発明に係る印刷方法は、電飾看板に用いられる半透明のシートの印刷に限定されるものではなく、ポスター等、種々の通常被印刷体への印刷にも適用可能であることは言うまでもない。