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特許7105536PCSK9阻害剤及びコレステロール代謝改善用食品組成物
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  • 特許-PCSK9阻害剤及びコレステロール代謝改善用食品組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】PCSK9阻害剤及びコレステロール代謝改善用食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/37 20060101AFI20220715BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20220715BHJP
   A61K 31/01 20060101ALI20220715BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20220715BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220715BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
A61K31/37
A23L33/10
A61K31/01
A61K31/352
A61P3/06
A61P43/00 111
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2016197425
(22)【出願日】2016-10-05
(65)【公開番号】P2018058792
(43)【公開日】2018-04-12
【審査請求日】2019-09-30
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100206944
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 絵美
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100215957
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 明照
(72)【発明者】
【氏名】平田 拓
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】渕野 留香
【審判官】田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-34562(JP,A)
【文献】国際公開第2013/129334(WO,A1)
【文献】特開2016-136908(JP,A)
【文献】特開2011-256133(JP,A)
【文献】国際公開第2011/016366(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/074906(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/077975(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/110419(WO,A1)
【文献】特開平8-59461(JP,A)
【文献】特開平9-2947(JP,A)
【文献】Arch Biochem Biophys.,2016 June 1,Vol. 599,p.22-30
【文献】J Clin Pharmacol,1996,Vol.36,No.5,p.422-427
【文献】Journal of Innate Immunity,2016,Vol.8,p.211-220
【文献】Sci.Transl.Med,2014,6(258),DOI:10.1126/scitranslmed.3008782.
【文献】動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療のエッセンス、日本動脈硬化学会、2014年3月(http://dl.med.or.jp/dl-med/jma/region/dyslipi/ess_dyslipi2014.pdf)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JMEDPlus/JST7580/JSTPlus(JDreamIII)
A61K31/00-33/44、A23L33/00-33/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルガモチン、7-メトキシ-5-ゲラニルオキシクマリン、α-マンゴスチン、2-メチル-2-ペンテン、又はスクワレン を有効成分として含有する、PCSK9発現抑制剤。
【請求項2】
ベルガモチン、7-メトキシ-5-ゲラニルオキシクマリン、α-マンゴスチン、2-メチル-2-ペンテン、又はスクワレン を有効成分として含有する、肝臓へのLDLコレステロール取り込み促進用食品組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のPCSK9発現抑制剤を含む、PCSK9発現抑制用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCSK9阻害剤及びコレステロール代謝改善用食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
循環器系病疾患の主要因の1つである動脈硬化を防ぐには、過剰な悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を除去することが重要と考えられている。LDLコレステロール量を制御するために、古くはコレステロール生合成の抑制、すなわちコレステロールの流入量を減らすことが行われてきた。
【0003】
しかし、近年の研究から、コレステロールの流入量を減らすだけでは、循環器疾患リスクを低減するために不十分であることが分かってきた。最近では、コレステロールの逆転送によって、悪玉コレステロールを排出(クリアランス)する試みが注目されている。肝臓で生合成されたコレステロールはLDLコレステロールとなって体の末梢に運ばれる。コレステロールの逆転送とは、末梢に運ばれた後で不要となったコレステロールが、末梢から高密度リポタンパク質(HDL)によって引き抜かれ、肝臓へと戻っていくことをいう。コレステロールの逆転送の最初のステップを担うのがHDLであり、不要なコレステロールを引き抜く力を引き抜き能という。引き抜き能はHDLの質を示す指標の1つである。コレステロールの逆転送経路は、善玉コレステロール(HDLコレステロール)の質向上によって活性化され得ると考えられている。
【0004】
一方、コレステロールの逆転送は、LDLコレステロールの取り込み向上によっても活性化され得る。HDLによって末梢から引き抜かれたコレステロールは、HDLコレステロールとして血中を移動し、その後コレステロール転送作用を受けてLDLによって肝臓に運ばれて取り込まれる。肝臓でのLDLコレステロール取り込みを増やすことができれば、コレステロールを体外への排泄へと向かわせることができる。そのため、LDLコレステロールの取り込みを担うLDL受容体の働きが重要である。
【0005】
近年、LDL受容体の代謝に影響する、プロ蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を阻害することで、LDL受容体を増やし、過剰なLDLコレステロールの取り込みを促進するという試みが注目されている。PCSK9はタンパク質分解酵素であり、肝臓表面に発現するLDL受容体に結合し、これを分解する。PCSK9阻害薬は、PCSK9阻害を介して、LDL受容体の分解を抑え、血中LDLコレステロールの肝細胞内への取り込みを促進する作用を持つ。PCSK9阻害薬は、日本でも医薬品として製造販売が開始されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Dong B et al., J. Biol. Chem. 290, 4047-4058 (2015)
【文献】Tai etal., Mol. Nutr. Food Res. 58, 2133-2145 (2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、製造販売が開始されているPCSK9阻害薬は抗体医薬品であり、PCSK9阻害作用に関する低分子化合物又は天然物での報告例は、ベルベリン(非特許文献1)、クルクミン(非特許文献2)等、わずかである。食品成分によって、安価にかつ穏やかにPCSK9を阻害することは、消費者にとって大きなメリットである。
【0008】
本発明は、新たなPCSK9阻害剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、プレニル基を有する化合物を有効成分として含有する、PCSK9阻害剤を提供する。本発明に係るPCSK9阻害剤は、上記化合物を有効成分として含有することにより、PCSK9阻害作用を発揮しうる。
【0010】
プレニル基を有する上記化合物は、クマリン構造、及び該クマリン構造の環上の炭素原子に結合する炭素数5、10又は15のプレニルオキシ基を有する化合物であることが好ましい。PCSK9阻害剤が上記構造を有する化合物を有効成分として含有することにより、更に高いPCSK9阻害作用を発揮しうる。
【0011】
上記化合物は、ベルガモチン又は7-メトキシ-5-ゲラニルオキシクマリンであることが好ましい。
【0012】
プレニル基を有する上記化合物は、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩であることが好ましい。
【0013】
【化1】

[式(1)中、R、R、R、R、R、R、R、Rはそれぞれ独立に、炭素数5、10若しくは15のプレニル基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は水素原子を示し、R、R、R、R、R、R、R、Rのうちの1つ以上は炭素数5、10又は15のプレニル基を示す。]
【0014】
PCSK9阻害剤が上記構造を有する化合物を有効成分として含有することにより、更に高いPCSK9阻害作用を発揮しうる。
【0015】
上記一般式(1)で表される化合物は、α-マンゴスチンであることが好ましい。
【0016】
プレニル基を有する上記化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。PCSK9阻害剤が下記構造を有する化合物を有効成分として含有することにより、更に高いPCSK9阻害作用を発揮しうる。
【0017】
【化2】

[式(2)中、nは1~3の整数を示し、Rは炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、又は水素原子を示す。]
【0018】
本発明はまた、上記化合物を有効成分として含有する、コレステロール代謝改善用食品組成物を提供する。該食品組成物は上記化合物を有効成分として含有するため、摂取することにより、摂取者のコレステロール代謝を改善することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、新規なPCSK9阻害剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】試験例1での被検物質のPCSK9阻害作用を示すグラフである。
図2】試験例3での被検物質のPCSK9阻害作用を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
本発明のPCSK9阻害剤は、プレニル基を有する化合物を有効成分として含む。
【0023】
プレニル基を有する化合物は、天然物に由来するものであっても人為的に合成したものであってもよい。化合物へのプレニル基の導入は、公知のプレニル化反応によって行うことができ、例えばプレニル化酵素を用いて導入することができる。プレニル基を有する化合物が、プレニル基を1つ有しているものであってよく、プレニル基を2つ以上有しているものであってもよい。
【0024】
プレニル基を有する化合物としては、例えば、クマリン構造、及び該クマリン構造の環上の炭素原子に結合している炭素数5、10若しくは15のプレニルオキシ基を有する化合物、後述する下記一般式(1)若しくは(2)で表される化合物又はその塩等が挙げられる。本実施形態に係るPCSK9阻害剤は、有効成分として、プレニル基を有する化合物の1種を単独で含んでもよく、2種以上を含んでもよい。
【0025】
クマリン構造、及び該クマリン構造の環上の炭素原子に結合している炭素数5、10又は15のプレニルオキシ基を有する化合物は、具体的には例えば、下記一般式(3)で表される化合物又はその塩である。
【0026】
【化3】
【0027】
式(3)中、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、1価の有機基又は水素原子を示し、R、R、R、R、R及びRのうちの1つ以上が炭素数5、10又は15のプレニルオキシ基を示す。R及びR、R及びR、R及びR、R及びR、R及びRは、それぞれ結合して環を形成していてもよい。
【0028】
有機基としては、例えば、炭素数1~15のアルキル基、炭素数2~15のアルケニル基、炭素数1~15のアルコキシ基、炭素数2~15のアルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1~5のアルコキシ基又はアルケニルオキシ基であることが好ましい。上記一般式(3)で表される化合物は、例えば下記式(4)で表される化合物、すなわち7-メトキシ-5-ゲラニルオキシクマリンであってよい。
【0029】
【化4】
【0030】
上記一般式(3)で表される化合物はまた、下記一般式(5)で表される化合物であってもよい。
【0031】
【化5】
【0032】
式(5)中のR、R、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数5、10若しくは15のプレニルオキシ基、炭素数1~15のアルキルオキシ基又は水素原子を示し、R、R、R及びRのうちの1つ以上が炭素数5、10又は15のプレニルオキシ基を示す。
【0033】
上記一般式(5)で表される化合物としては、例えばベルガモチン等が挙げられる。
【0034】
上記一般式(3)で表される化合物は、天然物に由来するものであっても人為的に合成したものであってもよく、市販品を用いることができる。ベルガモチン及び7-メトキシ-5-ゲラニルオキシクマリンは、例えば、レモン、グレープフルーツ等の柑橘類の抽出物を分画又は精製して得ることができる。柑橘類の抽出物としては、例えば、柑橘類のフラベド(外果皮)抽出物、柑橘類の皮から抽出されるオイル等が挙げられる。
【0035】
本実施形態に係るPCSK9阻害剤の有効成分であるプレニル基を有する上記化合物は、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩であってもよい。
【0036】
【化6】
【0037】
式(1)中、R、R、R、R、R、R、R、Rはそれぞれ独立に、炭素数5、10若しくは15のプレニル基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は水素原子を示し、R、R、R、R、R、R、R、Rのうちの1つ以上は炭素数5、10又は15のプレニル基を示す。
【0038】
上記一般式(1)で表される化合物は、天然物に由来するものであっても人為的に合成したものであってもよく、市販品を用いることができる。上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、α-マンゴスチン等が挙げられる。α-マンゴスチンは、マンゴスチン果皮抽出物を分画又は精製して得ることができる。
【0039】
本実施形態に係るPCSK9阻害剤の有効成分であるプレニル基を有する上記化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であってもよい。
【化7】
【0040】
式(2)中、nは1~3の整数を示し、Rは炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、又は水素原子を示す。
【0041】
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、2-メチル-2-ペンテン等が挙げられる。一般式(2)で表される化合物は、天然物に由来するものであっても人為的に合成したものであってもよく、市販品を用いることができる。
【0042】
本実施形態に係るPCSK9阻害剤は、上記有効成分を含有するため、当該PCSK9阻害剤を摂取することにより、PCSK9の発現を抑制することができ、その結果、LDL受容体の分解を抑制し、LDLコレステロールのクリアランスを促し、血中のLDLコレステロールを適切な範囲に調節することができる。したがって、本実施形態に係るPCSK9阻害剤は、コレステロール代謝改善、コレステロール値調節、LDLコレステロール値低減、高LDLコレステロール症改善等に用いることができる。
【0043】
本実施形態に係るPCSK9阻害剤は、固体(例えば、粉末)、液体(水溶性又は脂溶性の溶液又は懸濁液)、ペースト等のいずれの形状でもよく、また、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、軟膏剤、硬膏剤等のいずれの剤形をとってもよい。また、放出制御製剤の形態をとることもできる。本実施形態に係るPCSK9阻害剤は、上述の有効成分のみからなるものであってもよい。
【0044】
上記各種製剤は、上述の有効成分と、薬学的に許容される添加剤(賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤等)とを混和することによって調製することができる。
【0045】
例えば、賦形剤としては、ラクトース、スクロース、デンプン、デキストリン等が挙げられる。結合剤としては、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が挙げられる。崩壊剤としては、結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン等が挙げられる。乳化剤又は界面活性剤としては、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。基剤としては、セトステアリルアルコール、ラノリン、ポリエチレングリコール、米糠油、魚油(DHA、EPA等)、オリーブ油等が挙げられる。溶解補助剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、Tween80等が挙げられる。懸濁化剤としては、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0046】
本実施形態に係るPCSK9阻害剤は、医薬品、医薬部外品、食品組成物、食品添加物、飼料、飼料添加物等の製品の成分として使用することができる。食品としては、例えば、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醤油、味噌、菓子類、飲料等が挙げられる。飲料としては例えば、水、清涼飲料水、果汁飲料、乳飲料、アルコール飲料、ノンアルコール飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。また、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント又は特定保健用食品等における関与成分として使用することもできる。
【0047】
本実施形態に係るPCSK9阻害剤からなる、又はPCSK9阻害剤を含む上記製品は、コレステロール代謝改善用であってよい。本明細書においてコレステロール代謝改善とは、例えば、コレステロール値の調節、LDLコレステロール値の低減、高LDLコレステロール症の改善等を包含する意味である。上記製品には、コレステロールを代謝する力を高める旨、コレステロール値を調節する旨、LDLコレステロール値を低減する旨、高LDLコレステロール症を予防する旨、コレステロールクリアランスを高める旨等の表示が付されていてもよい。
【0048】
本実施形態に係るPCSK9阻害剤は、ヒトに摂取されても、非ヒト哺乳動物に摂取されてもよい。本実施形態に係るPCSK9阻害剤の投与量(摂取量)は、有効成分として、成人1日あたり、体重1kgあたり例えば0.1mg~1gであってよく、1~500mgであってもよい。投与量は、個体の状態、年齢等に応じて適宜決定することができる。
【0049】
本実施形態に係るPCSK9阻害剤は、経口投与(摂取)されてもよく、非経口投与されてもよいが、経口投与されることが好ましい。PCSK9阻害剤は、1日あたりの有効成分量が上記範囲内にあれば、1日1回投与されてもよく、1日複数回に分けて投与されてもよい。
【0050】
本発明はまた、プレニル基を有する化合物を有効成分として含有する、コレステロール代謝改善用食品組成物を提供する。有効成分であるプレニル基を有する化合物の具体的な態様については、上述のPCSK9阻害剤と同様の態様を適用できる。コレステロール代謝改善用食品組成物は、上記有効成分の1種を単独で含んでもよく、2種以上を含んでもよい。コレステロール代謝改善用食品組成物は、上記有効成分のPCSK9阻害作用に基づいてコレステロール代謝を改善するものであってよい。
【0051】
コレステロール代謝改善用食品組成物は、飲料又は食品であってよい。飲料としては、例えば、清涼飲料水、果汁飲料、乳飲料、アルコール飲料、ノンアルコール飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。食品としては、例えば、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醤油、味噌、菓子類等が挙げられる。食品組成物は、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント又は特定保健用食品であってもよい。
【実施例
【0052】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0053】
[試験例1]
被検物質として、ルプロン類混合物、ベルガモチン(ChromaDex社)及び7-メトキシ-5-ゲラニルオキシクマリンを用いた。また、非特許文献1を参考にして、ポジティブコントロールとして塩化ベルベリン水和物(TCI社)を用いた。ルプロン類混合物は、ルプロン、コルプロン及びアドルプロンの混合物である。ルプロン類混合物としては、ホップのヘキサン抽出物を分画して得たものを用いた。7-メトキシ-5-ゲラニルオキシクマリンとしては、レモンのフラベド部のヘキサン抽出物を分画して精製したものを用いた。
【0054】
HepG2細胞をDMEM+10%FBS培地中で、37℃、5%COインキュベーター内で培養した。培養したHepG2細胞に、各サンプルを図1に示す数段階の濃度で添加し、COインキュベーター内で24時間培養した。培養後、培地を回収して遠心分離し、清澄液を発現解析に供した。培養後の細胞は、0.2mL RIPAバッファーで回収し、氷中で5分間超音波処理した後に遠心分離した。清澄液を回収し、BSAを標準物質としたLowry法にてタンパク質濃度を測定し、統一化した後に発現解析に供した。
【0055】
ベルベリン、ルプロン類混合物、ベルガモチン及び7-メトキシ-5-ゲラニルオキシクマリンについて、細胞外に分泌されたPCSK9タンパク質量をウエスタンブロッティング法によって評価した。結果を図1に示す。縦軸は対照区を1.0とした相対値を示す。いずれの被検物質においても細胞外に分泌されたPCSK9タンパク質量は対照区より減少しており、用量依存的なPCSK9発現抑制作用が確認された。また、細胞内のPCSK9タンパク質量についてもウエスタンブロッティング法によって評価したところ、細胞外の場合と同様に、いずれの被検物質においてもPCSK9発現抑制作用が用量依存的に確認された(図示せず)。
【0056】
[試験例2]
ナリンゲニンカルコンを被検物質として、試験例1と同様にPCSK9阻害作用を調べた。ナリンゲニンカルコンは下記式(6)で表される化合物である。
【化8】
【0057】
プレニル基を有さない物質であるナリンゲニンカルコンを用いた場合には、細胞内、細胞外ともにPCSK9の発現抑制効果は見られなかった。プレニル基の存在が、PCSK9発現抑制に関わっている可能性が示された。
【0058】
[試験例3]
プレニル基を有する化合物のPCSK9阻害試験を行った。被検物質として、試験例1で用いたルプロン類混合物、ベルガモチンに加え、2-メチル-2-ペンテン(TCI社)、ファルネソール(異性体混合物、TCI社)、スクワレン(TCI社)、α-トコトリエノール(Cayman Chemical Co.)、α-マンゴスチン(和光純薬工業社)、リコペン(LKTLaboratories Inc. )、4-メチル-2-(2-メチル-1-プロペニル)テトラヒドロピラン(シストランス混合物、TCI社)、及び2-メチル-1-フェニルプロペン(TCI社)を用いた。対照としてDMSOを用いた。
【0059】
上記各種被検物質をそれぞれ5μMの定濃度で用い、試験例1と同様に、細胞外に分泌されたPCSK9タンパク質量を測定した。結果を図2に示す。横軸は対照区を1.0とした相対値を示す。2-メチル-2-ペンテン、スクワレン、α-マンゴスチン、ルプロン類混合物、ベルガモチン添加区においてPCSK9分泌抑制作用が確認された。
図1
図2