(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】コンクリート用再生養生シート
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20220715BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20220715BHJP
B32B 5/32 20060101ALI20220715BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20220715BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20220715BHJP
E21D 11/10 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
E04G21/02 104
B32B5/18 101
B32B5/32
B32B7/022
B32B7/027
E21D11/10 Z
(21)【出願番号】P 2016215332
(22)【出願日】2016-11-02
【審査請求日】2019-08-30
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】柳川 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】登川 貴仁
【合議体】
【審判長】前川 慎喜
【審判官】有家 秀郎
【審判官】土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-61184(JP,A)
【文献】特開2014-37693(JP,A)
【文献】特開2010-196396(JP,A)
【文献】特開2016-94743(JP,A)
【文献】特開2012-251401(JP,A)
【文献】特許第5877271(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/00-21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分不透過性の保水シートと、
前記保水シートの片面に設けられた劣化した粘着層と、
テープ基材
、並びに前記テープ基材における片側の面に設けられて前記劣化した粘着層に剥離可能に貼り付けられた保水シート側粘着層、及び
前記テープ基材における反対側の面に設けられてコンクリートに粘着可能かつ剥離可能なコンクリート側粘着層を有する両面粘着テープと、
前記保水シートの反対面に積層され、前記保水シートより保温性が高い保温シートと、
を備え、
前記劣化した粘着層の粘着力が、前記コンクリート側粘着層の粘着力より弱いことを特徴とするコンクリート
用再生養生シート。
【請求項2】
前記保温シートが、発泡樹脂にて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート
用再生養生シート。
【請求項3】
前記保温シートが、互いに積層された第1保温層と第2保温層とを含み、これら第1、第2保温層が、発泡倍率が互いに異なる発泡樹脂にて構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート
用再生養生シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの養生に用いられる養生シートに関し、特に養生中のコンクリートの保水性及び保温性を確保するためのコンクリート養生シートに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、打設後の養生中、所要の水分が保持されている必要がある。乾燥すると、セメントの水和反応が進まず、品質を確保できない。そこで、養生中のコンクリートに保水性の樹脂シートを貼り付ける技術が種々提案されている(特許文献1、2等参照)。
【0003】
特許文献1によれば、水分不透過性の樹脂シートを、接着剤を介して、養生中のコンクリートの表面に貼り付ける。樹脂シートによって、コンクリートからの水分蒸発が抑えられる。
特許文献2では、セロハンからなる基材シートの片面に水分不透過性の樹脂層を積層している。基材シートの反対側面の適宜な位置に粘着剤を設け、養生中のコンクリートに貼り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4360342号公報
【文献】特開2014-152565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲特許文献1、2では、養生中のコンクリートの保水性は確保できても保温性の確保は難しい。所望のコンクリート品質を得るには、保温も重要である。例えば養生期間中、気温が大きく変化すると、コンクリートの表面側と奥側との温度差が大きくなる。そうすると、コンクリートに内部応力が発生し、それがクラックの原因となることが考えられる。
本発明は、かかる事情に鑑み、養生中のコンクリートの保水性だけでなく保温性をも確保し、コンクリートの品質を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート養生シートは、
水分不透過性の保水シートと、
前記保水シートの片面に設けられ、コンクリートに粘着可能かつ剥離可能な粘着層と、
前記保水シートの反対面に積層され、前記保水シートより保温性が高い保温シートと、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
打設後のコンクリートがある程度硬化して型枠を撤去した段階で、コンクリートの表面に前記コンクリート養生シートを貼り付ける。コンクリート養生シートに粘着層を設けることによって、コンクリートの鉛直壁や天井面にもコンクリート養生シートを貼り付けることができる。このコンクリート養生シートによって、養生中のコンクリートの保水性及び保温性を確保できる。つまり、保水シートによってコンクリートからの水分の蒸発を抑えることができる。これによって、コンクリート内を湿潤状態に保つことができ、コンクリート中のセメントの水和反応を十分に起こさせることができる。かつ、保温シートによってコンクリートからの放熱を抑えることができる。気温が大きく変化しても、コンクリートの表面側と奥側との温度差を小さく抑えることができる。これによって、コンクリートに内部応力が発生するのを防止でき、クラックが形成されるのを防止できる。この結果、コンクリートの品質を高めることができる。
【0008】
前記保温シートは、発泡樹脂にて構成されていることが好ましい。これによって、保温性を確実に高めることができる。
前記保温シートが、互いに積層された第1保温層と第2保温層とを含むことが好ましい。これら第1、第2保温層が、発泡倍率が互いに異なる発泡樹脂にて構成されていることが好ましい。第1保温層が、第2保温層より低発泡倍率であり、かつ前記保水シートと第2保温層との間に介在されていることがより好ましい。これによって、コンクリート養生シートをロール状に巻回した状態から展開する際、巻き癖を直しやすくできる。
【0009】
使用済のコンクリート養生シートに両面粘着テープを貼り付けてもよい。
使用済のコンクリート養生シートにおいては、粘着層が劣化、汚損、損耗、消失等している。劣化、汚損した粘着層に重ねて、両面粘着テープを貼り付ける。或いは、粘着層が損耗、消失することで、露出した保水シートの上に、新たな粘着層として両面粘着テープを貼り付ける。
要するに、前記保水シートの前記片面に、前記粘着層として、又は前記粘着層上に重ねて、両面粘着テープが貼り付けられていてもよい。前記両面粘着テープにおける保水シート側とは反対側の粘着面は、コンクリートに粘着可能である。
これによって、使用済のコンクリート養生シートのコンクリートに対する粘着性を簡単に回復させることができる。この結果、コンクリート養生シートを再利用でき、施工コストを低減できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコンクリート養生シートによれば、養生中のコンクリートの保水性及び保温性を確保でき、コンクリートの品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート養生シートを、使用前の状態で示す拡大断面図である。
【
図2】
図2は、前記養生シートを、養生中のコンクリートに貼り付けた使用状態で示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態を示し、使用済の養生シートを両面粘着テープで再生する工程の拡大断面図である。
【
図4】
図4は、前記再生養生シートを、養生中のコンクリートに貼り付けた使用状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図2に示すように、本形態のコンクリート養生シート1は、養生時のコンクリート9に適用される。対象となるコンクリート9の種類は特に限定がない。トンネル等の土木構造物のコンクリートであってもよく、建物等の建築構造物のコンクリートであってもよい。床コンクリートでもよく、壁又は柱コンクリートでもよく、天井コンクリートでもよい。
【0013】
図1に拡大して示すように、コンクリート養生シート1は、保水シート10と、保温シート20を備えている。詳しくは、コンクリート養生シート1は、剥離シート13、粘着層11、保水シート10、接着層12、保温シート20の第1保温層21、及び第2保温層22の順に積層された多層構造になっている。
【0014】
保水シート10は、水分不透過性樹脂にて構成されている。水分不透過性樹脂は、少なくともコンクリート9の湿潤性を保持し得る程度の水分不透過性を有している。かかる水分不透過性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。より好ましくは、保水シート10は、PETにて構成されている。
保水シート10の厚みは、例えば数十μm~数百μm程度であり、好ましくは25μm程度である。
【0015】
保水シート10の片面10aには、粘着層11が設けられている。好ましくは、粘着層11は、片面10aの全域に設けられている。粘着層11は、コンクリート9に対して粘着可能かつ剥離可能である。
粘着層11としては、例えばアクリル系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤、ウレタン樹脂系粘着剤、ゴム系粘着剤等が用いられる。アクリル系粘着剤は、エマルジョン型でもよく、ホットメルト型でもよい。
未使用時のコンクリート養生シート1における粘着層11の表面には、剥離シート13が貼られている。
【0016】
保水シート10の反対面10bには、接着層12が設けられている。好ましくは、接着層12は、反対面10bの全域に設けられている。接着層12の材質は、粘着層11と同じ材質であってもよく、粘着層11とは異なる材質であってもよい。
【0017】
保水シート10の反対面10b上に、接着層12を挟んで、保温シート20が重ねられている。
保温シート20は、第1保温層21と、第2保温層22を含む。第1保温層21と保水シート10とが、接着層12によって接着されている。第2保温層22は、外部に面している。
【0018】
保温シート20(保温層21,22)は、発泡樹脂にて構成されている。発泡樹脂としては、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレンなどの発泡ポリオレフィンの他、発泡ウレタン等が挙げられる。好ましくは、第1、第2保温層21,22は、架橋発泡ポリエチレン等の架橋発泡ポリオレフィンにて構成され、更に独立気泡構造になっている。
なお、保温シート20(保温層21,22)用の発泡樹脂は、非架橋樹脂でもよく、連続気泡構造でもよい。
第1、第2保温層21,22の発泡倍率は、例えば10~50倍程度であり、好ましくは30~50倍程度である。
第1保温層21と第2保温層22の発泡倍率は互いに異なっている。好ましくは、第2保温層22の発泡倍率が第1保温層21の発泡倍率より高い。発泡倍率が高い程、柔軟性が高まる。好ましくは、第1保温層21の発泡倍率は30倍程度であり、第2保温層22の発泡倍率は40倍程度である。
第1保温層21と第2保温層22とは、熱融着にて接合されている。なお、第1保温層21と第2保温層22とが接着剤を介して接合されていてもよい。
【0019】
発泡樹脂製の保温シート20(保温層21,22)は、非発泡樹脂製の保水シート10より保温性が高い。すなわち、保水シート10より熱伝導率ないしは熱伝達率が高く、熱を逃がしにくい。第1、第2保温層21,22の熱伝達率は、好ましくは0.5~8W/m2・℃程度である。
一方、水分不透過性については、保水シート10のほうが、保温シート20(保温層21,22)より高い。
各保温シート21,22の厚みは、例えば数mm~十数mmであり、好ましくは5mm程度である。保温シート20全体の厚みは、好ましくは10mm程度である。
【0020】
コンクリート養生シート1は、次のようにして使用される。
養生シート1は、高発泡倍率の第2保温層22が内側を向くようにしてロール状に巻回された状態で流通、搬送される。コンクリート9の施工現場で養生シート1を展開する。第2保温層22を内側にして巻回しておくことで、養生シート1の展開時、巻き癖を直し易くすることができる。
【0021】
打設後のコンクリート9がある程度硬化したら型枠(図示省略)を撤去する。
そして、
図2に示すように、コンクリート9の表面に養生シート1を貼り付ける。詳しくは、剥離シート13を剥がし、粘着層11をコンクリート9の表面に粘着させる。粘着層11を設けておくことによって、コンクリート9の鉛直壁や天井面にも養生シート1を貼り付けることができる。
【0022】
養生シート1の貼り付け期間は、型枠の撤去及び養生シート1の貼り付けから例えば数週間~数ヶ月であり、好ましくは1ヶ月から3ヶ月程度である。
これによって、コンクリート9の養生中、コンクリート9の保水性及び保温性を確保できる。つまり、保水シート10によってコンクリート9からの水分の蒸発を抑えることができる。したがって、コンクリート9内を湿潤状態に保つことができ、コンクリート9中のセメントの水和反応を十分に起こさせることができる。
かつ、保温シート20によってコンクリート9からの放熱を抑えることができる。気温が大きく変化しても、コンクリート9の表面側と奥側との温度差を小さく抑えることができる。これによって、コンクリート9に内部応力が発生するのを防止でき、クラックが形成されるのを防止できる。
この結果、コンクリート9の品質を高めることができる。
養生期間が過ぎたら養生シート1をコンクリート9から剥がして撤去する。
【0023】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態>
図3及び
図4は、本発明の第2実施形態を示したものである。
図3に示すように、本形態では、一度使用したコンクリート養生シート1’を、両面粘着テープ30を付加することで再生している。両面粘着テープ30は、テープ基材31と、その両側の粘着層32,33を備えている。
なお、貼り付け対象に貼り付ける前の各粘着層32,33には剥離シートが設けられているが、その図示は省略する。
【0024】
図3(a)に示すように、使用済のコンクリート養生シート1’においては、粘着層11’が劣化、汚損、損耗、消失等している。
図3(b)に示すように、劣化、汚損した粘着層11’に重ねて、両面粘着テープ30を貼り付ける。或いは、粘着層11’が損耗、消失することで、露出した保水シート10の片面10a上に両面粘着テープ30を貼り付ける。すなわち、片側の粘着層32を、劣化、汚損した粘着層11又は露出した保水シート10に接着する。これによって、使用済のコンクリート養生シート1’と両面粘着テープ30とからなる再生養生シート1Bが出来る。
【0025】
図4に示すように、両面粘着テープ30における保水シート10側とは反対側の粘着層33(粘着面)は、コンクリート9に粘着可能である。つまり、再生養生シート1Bにおいては、両面粘着テープ30の粘着層33が、粘着層11に代わって、コンクリート9との新たな粘着層となる。
このように、第2実施形態によれば、使用済養生シート1’のコンクリート9に対する粘着性を簡単に回復させて再利用できる。したがって、使用の度に新品の養生シート1を用意する必要がなく、施工コストを低減できる。
【0026】
粘着層33は、コンクリート9から剥離可能である。これによって、養生終了後、コンクリート9から再生養生シート1Bを剥がして撤去できる。
更に好ましくは、粘着層32が、劣化した粘着層11又は保水シート10から剥離可能である。これによって、使用済の劣化した両面粘着テープ30を剥がして、新品の両面粘着テープ30に貼り替えることができる。この結果、養生シート1’を何度も使い回すことができ、施工コストを一層低減できる。
【0027】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、保水シート10と保温シート20との接合手段は、接着層12に限られず、熱融着でもよく、保温シート20の発泡成形時の自己接着力であってもよい。
保温シート20が、単層構造であってもよく、3層以上の多層構造であってもよい。保温シート20の材質は、発泡樹脂に限られず、不織布等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、例えばトンネルや建物等の各種コンクリートの養生施工に適用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 コンクリート養生シート
1’ 使用済養生シート
1B 再生養生シート
9 コンクリート
10 保水シート
10a 片面
10b 反対面
11 粘着層
12 接着層
13 剥離シート
20 保温シート
21 第1保温層
22 第2保温層
30 両面粘着テープ
31 テープ基材
32 シート側粘着層
33 コンクリート側粘着層(粘着面)