(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】ICカード、およびICカードの制御方法
(51)【国際特許分類】
G06K 19/07 20060101AFI20220715BHJP
B42D 25/305 20140101ALI20220715BHJP
G06F 21/32 20130101ALI20220715BHJP
【FI】
G06K19/07 180
B42D25/305 100
G06F21/32
(21)【出願番号】P 2017054474
(22)【出願日】2017-03-21
【審査請求日】2019-12-25
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003362
【氏名又は名称】弁理士法人i.PARTNERS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪井 友美
【合議体】
【審判長】田中 秀人
【審判官】山崎 慎一
【審判官】山澤 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-163492(JP,A)
【文献】特開2003-242464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K19/07
B42D25/305
G06F21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置と通信する通信部と、
予め生体認証用情報が記憶された記憶部と、
利用者の指紋情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記利用者の指紋情報と、前記記憶部に記憶された生体認証用情報とを照合する生体情報照合部と、前記端末装置から送信されたコマンドの処理を行うコマンド処理部とを有する処理部とを備え、
前記処理部
の前記生体情報照合部は、前記端末装置からRESET信号が受信された
起動時の初期化処理時に開始され、前記取得部が前記利用者の指紋情報を取得可能な状態であるか否かを判定し、前記取得部が前記利用者の指紋情報を取得可能な状態であると判定した場合、前記利用者の指紋情報と前記生体認証用情報とを照合し、
照合の結果を前記コマンド処理部に送信する、
前記コマンド処理部は、照合の結果を前記記憶部に記憶させるとともに
前記RESET信号に対する応答として、ATR信号を前記端末装置に送信する
、
前記処理部のコマンド処理部は、各装置が起動した後に前記端末装置から照合コマンドが受信された場合、前記記憶部に前記照合の結果が記憶されているか否かを判定し、前記記憶部に前記照合の結果が記憶されているとき、照合処理を省略して照合結果に応じて照合コマンドに対応するコマンド処理を実行し、前記通信部を用いて前記照合コマンド処理に応じた応答を前記端末装置に送信する、
ICカード。
【請求項2】
前記コマンド処理部は、
前記記憶部に前記照合の結果が記憶されていない場合、前記照合コマンドに応じたコマンド処理の一部として、前記照合の処理を行い、
前記行った照合の処理の結果に基づくコマンド処理を行うと共に、前記照合の結果を前記記憶部に記憶させる、
請求項1
に記載のICカード。
【請求項3】
前記コマンド処理部は、
前記記憶部に前記照合の結果が記憶されている場合、更に、前記照合の結果が所定条件を満たしているか否かを判定し、
前記照合の結果が所定条件を満たしていない場合に、前記照合コマンドに応じたコマンド処理の一部として、前記照合の処理を行い、
前記行った照合の処理の結果に基づくコマンド処理を行うと共に、前記照合の結果を前記記憶部に記憶させる、
請求項1または2
に記載のICカード。
【請求項4】
前記コマンド処理部は、前記記憶部に前記照合の結果が記憶されていない場合、前記起動時以外に、前記照合コマンドよりも前に受信される所定のコマンドに応じたコマンド処理の一部として、前記照合の処理を行う、
請求項1から3
のうちいずれか1項に記載のICカード。
【請求項5】
端末装置と通信する通信部と、予め生体認証用情報が記憶された記憶部と、利用者の指紋情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された指紋情報と前記記憶部に記憶された生体認証用情報とを照合する生体情報照合部と、前記端末装置から送信されたコマンドの処理を行うコマンド処理部とを備えるICカード
であって、
前記生体情報照合部は、前記端末装置からRESET信号が受信された起動時の初期化処理時に開始され、前記取得部が前記利用者の指紋情報を取得可能な状態であるか否かを判定し、前記取得部が前記利用者の指紋情報を取得可能な状態であると判定した場合、前記利用者の指紋情報と前記生体認証用情報とを照合し、照合の結果を前記コマンド処理部に送信する、
前記コマンド処理部は、照合の結果を前記記憶部に記憶させるとともに
前記RESET信号に対する応答として、ATR信号を前記端末装置に送信
し、
前記コマンド処理部は、各装置が起動した後に前記端末装置から照合コマンドが受信された場合、前記記憶部に前記照合の結果が記憶されているか否かを判定し、前記記憶部に前記照合の結果が記憶されているとき、照合処理を省略して照合結果に応じて照合コマンドに対応するコマンド処理を実行し、前記通信部を用いて前記照合コマンド処理に応じた応答を前記端末装置に送信する、
ICカードの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ICカード、およびICカードの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、個人情報をターゲットとしたセキュリティ攻撃が拡大しており、銀行ATM(Automatic Teller Machine)カード、クレジットカード、個人番号カードといったIDカードは、IC(Integrated Circuit)チップを搭載したICカードへの移行が進められている。これに関連し、ICカードを利用する利用者の指紋などの生体情報を使って本人認証を実施する機能を有するICカードが普及し始めている。しかしながら、従来の技術では、指紋データ等の生体情報を用いた照合処理には、膨大な処理時間を要している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、認証に要する処理時間を短縮することができるICカード、およびICカードの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のICカードは、通信部と、記憶部と、取得部と、処理部とを持つ。通信部は、端末装置と通信する。記憶部には、予め生体認証用情報が記憶される。取得部は、利用者の指紋情報を取得する。処理部は、取得部によって取得された指紋情報と記憶部に記憶された生体認証用情報とを比較する生体情報照合部と、端末装置から送信されたコマンドの処理を行うコマンド処理部とを有する。生体情報照合部は、端末装置からRESET信号が受信された起動時の初期化処理時に開始され、取得部が利用者の指紋情報を取得可能な状態であるか否かを判定し、取得部が利用者の指紋情報を取得可能な状態であると判定した場合、利用者の指紋情報と生体認証用情報とを照合し、照合の結果をコマンド処理部に送信する。コマンド処理部は、照合の結果を記憶部に記憶させるとともにRESET信号に対する応答として、ATR信号を端末装置に送信する。さらに、コマンド処理部は、各装置が起動した後に端末装置から照合コマンドが受信された場合、記憶部に照合の結果が記憶されているか否かを判定し、記憶部に照合の結果が記憶されているとき、照合処理を省略して照合結果に応じて照合コマンドに対応するコマンド処理を実行し、通信部を用いて照合コマンド処理に応じた応答を端末装置に送信する。また、コマンド処理部は、各装置が起動した後に端末装置から照合コマンドが受信された場合、記憶部に照合の結果が記憶されているか否かを判定し、記憶部に照合の結果が記憶されているとき、照合処理を省略して照合結果に応じて照合コマンドに対応するコマンド処理を実行し、通信部を用いて照合コマンド処理に応じた応答を端末装置に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態におけるICカード1の概略構成図。
【
図2】実施形態におけるICカード1のハードウェア構成図。
【
図3】実施形態におけるICカード1の機能構成図。
【
図4】ICチップ20および照合プロセッサ60により実行される処理の流れの概略を示すフローチャート。
【
図5】端末装置100およびICカード1によって実行される処理の一例を示すシーケンス図。
【
図6】端末装置100およびICカード1によって実行される処理の他の例を示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のICカード、およびICカードの制御方法を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、実施形態のICカードは接触型のICカードであるものとして説明するが、非接触型のICカードであっても構わない。
【0008】
図1は、実施形態におけるICカード1の概略構成図である。ICカード1は、例えば、プラスチックのカード基材PT(カード本体の一例)に、ICモジュール10を実装して形成されている。すなわち、ICカード1は、ICモジュール10と、指紋センサ50と、照合プロセッサ(図では照合Pr)60と、これらが埋め込まれたカード基材PTとを備える。また、ICカード1は、コンタクト部15を介して外部の端末装置100と通信可能である。照合プロセッサ60は、指紋センサ50により取得された利用者の指紋情報を、ICモジュール10内に保持された生体認証用情報と比較することで、利用者の認証を行い、認証結果をICモジュール10に出力する。指紋センサ50は、生体情報を取得する「取得部」の一例であり、指紋情報は「生体情報」の一例である。生体情報は、指紋情報ではなく、静脈パターン情報、虹彩情報、声紋情報、DNA情報などであってもよい。なお、照合プロセッサ60がICモジュール10の外部に設けられているのは、あくまで一例であり、照合プロセッサ60に相当する機能をICモジュール10が備えてもよい。
【0009】
ICカード1は、例えば、端末装置100により送信されたコマンド(処理要求)を、コンタクト部15を介して受信し、受信したコマンドに応じた処理(コマンド処理)を実行する。そして、ICカード1は、コマンド処理の実行結果であるレスポンス(処理応答)を端末装置100にコンタクト部15を介して送信する。端末装置100は、ICカード1と通信する装置であり、例えば、リーダ/ライタ装置を含む装置である。
【0010】
ICモジュール10は、コンタクト部15と、ICチップ20とを備える。ICモジュール10は、例えば、テープ上にICモジュール10が複数配置されたCOT(Chip On Tape)などの形態で取引されるモジュールである。なお、テープから個片抜きして切り離した単体のICモジュール10をCOTという場合がある。
【0011】
コンタクト部15は、ICカード1が動作するために必要な各種信号の端子を有している。ここで、各種信号の端子は、電源電圧、クロック信号、リセット信号などを端末装置100から供給される端子、及び、端末装置100と通信するためのシリアルデ―タ入出力端子(SIO端子)を含む。
【0012】
ICチップ20は、例えば、1チップのマイクロプロセッサなどのLSI(Large Scale Integration)である。
【0013】
図2は、実施形態におけるICカード1のハードウェア構成図である。
図2に示すように、ICカード1は、コンタクト部15と、ICチップ20とを備えたICモジュール10を備えている。そして、ICチップ20は、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)24と、CPU25と、ROM(Read Only Memory)26と、RAM(Random Access Memory)27と、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)28とを備える。これらの構成要素は、内部バスBS1を介して接続されている。
【0014】
UART24は、上述したSIO端子を介して、端末装置100とシリアルデータ通信を行う。UART24は、SIO端子を介して受信したシリアルデータ信号をパラレル変換したデータ(例えば、1バイトのデータ)を内部バスBS1に出力する。また、UART24は、内部バスBS1を介して取得したデータをシリアル変換して、SIO端子を介して端末装置100に出力する。UART24は、例えば、SIO端子を介してコマンドを端末装置100から受信する。また、UART24は、SIO端子を介してレスポンスを端末装置100に送信する。UART24は、「通信部」の一例である。
【0015】
CPU25は、ROM26又はEEPROM28に記憶されているプログラムを実行して、ICカード1の各種処理を行う。CPU25は、例えば、コンタクト部15を介して、UART24が受信したコマンドに応じたコマンド処理を実行する。
【0016】
ROM26は、例えば、マスクROMなどの不揮発性メモリである。ROM26は、ICカード1の各種処理を実行するためのプログラム、及びコマンドテーブルなどのデータを記憶する。
RAM27は、例えば、SRAM(Static RAM)などの揮発性メモリである。RAM27は、ICカード1の各種処理を行う際に利用されるデータを一時記憶する。
【0017】
EEPROM28は、例えば、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである。EEPROM28は、ICカード1が利用する各種データを記憶する。EEPROM28は、例えば、ICカード1を利用した各種サービス(アプリケーション)に使用される情報を記憶する。
【0018】
更に、内部バスBS1には、照合プロセッサ60が接続されている。照合プロセッサ60は、例えば、CPUとプログラムメモリとを含む。照合プロセッサ60は、専用線などで指紋センサ50と接続され、指紋センサ50が指紋情報を取得可能な状態(通電状態)であるか否かを検知することができる。例えば、指紋センサ50上に利用者の指が触れ、指紋センサ50が通電した場合に、照合プロセッサ60は、指紋センサ50が指紋情報を取得可能な状態であると判定する。指紋センサ50は、静電容量型、感熱型、光学型などのうちいずれかの方式で利用者の指紋情報を取得する。
【0019】
図3は、実施形態におけるICカード1の機能構成図である。ICカード1は、例えば、上述したUART24および指紋センサ50と、処理部30と、記憶部40とを備える。処理部30は、例えば、生体情報照合部32と、コマンド処理部34とを備える。コマンド処理部34は、例えば、CPU25がプログラム44を実行することで実現される。また、生体情報照合部32は、例えば、照合プロセッサ60がプログラム44を実行することで実現される。記憶部40は、例えば、EEPROM28や照合プロセッサに付随するプログラムメモリにより実現される。記憶部40には、予め、生体認証用情報42と、プログラム44とが記憶される。生体認証用情報42は、指紋センサ50により取得された指紋情報との照合対象となる情報であり、指紋の形状パターンを幾何情報にした情報、何らかの特徴量に変換した情報、或いはこれらの組み合わせなどである。生体認証用情報42には、例えば、ICカードの持ち主である利用者の指紋から抽出された種々の情報が含まれる。
【0020】
生体情報照合部32は、指紋センサ50によって取得された指紋情報と、記憶部40に予め記憶された生体認証用情報42とを比較し、これらが合致した場合に、本人認証が成功したと判定する。「合致する」とは、例えば、情報の一致程度を示すスコアが閾値以上であることを意味する。本人認証が成功すると、生体情報照合部32は、記憶部40におけるセキュアな領域へのアクセスを許可し、所定の処理を実行可能な状態とする。
【0021】
コマンド処理部34は、端末装置100により送信されたコマンド(処理要求)に応じて、各種コマンドの処理(コマンド処理)を実行する。また、コマンド処理部34は、コマンド処理の結果であるレスポンスを、UART24を介して端末装置100に送信する。コマンド処理部34は、照合の成功を条件とするコマンド処理に関しては、生体情報照合部32からの認証成功通知がなされた場合に、すなわち記憶部40におけるセキュアな領域へのアクセスが許可された場合に、処理を先に進める。
【0022】
図4は、ICチップ20および照合プロセッサ60により実行される処理の流れの概略を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、処理部30(ICチップ20および照合プロセッサ60)と指紋センサ50とに電力が供給されることで、これらの装置が起動し、更に端末装置100から初期化処理のためのRESET信号が受信されたときに開始される。
【0023】
まず、処理部30は、指紋センサ50が指紋情報を取得可能な状態であるか否かを判定し(ステップS100)、指紋センサ50が指紋情報を取得可能な状態である場合、指紋センサ50に指紋情報の送信を要求するリクエスト情報を送信する(ステップS102)。これを受けて、指紋センサ50は、予め決められたデータフォーマットと送信周期で指紋情報を送信する。
【0024】
次に、処理部30は、指紋センサ50により指紋情報が送信されるまで待機し(ステップS104)、指紋センサ50により指紋情報が送信された場合に、指紋センサ50によって取得された指紋情報と、記憶部40に予め記憶された生体認証用情報42とを照合する(ステップS106)。
【0025】
次に、処理部30は、照合結果(本人認証結果)を記憶部40に記憶させ(ステップS108)、RESET信号に対する応答として、ATR(Answer to Reset)信号を端末装置100に送信する(ステップS110)。これによって、本フローチャートの処理が終了する。
【0026】
なお、記憶部40に記憶された照合結果(本人認証結果)は、ICカード1への電力供給が途絶えてICチップ20等が終了する際、または再びICカード1への電力供給が開始されてICチップ20等が再起動する際に消去されるものとする。例えば、照合結果(本人認証結果)が記憶部40のRAM27に記憶される場合、電力供給が停止されたときに照合結果が消去される。また、照合結果(本人認証結果)が記憶部40のEEPROM28に記憶される場合、処理部30は、再起動時に、EEPROM28に記憶された照合結果を消去する。
【0027】
[初期化処理時の生体認証]
図5は、端末装置100およびICカード1によって実行される処理の一例を示すシーケンス図である。本シーケンスは、端末装置100からICカード1に電力が供給される場面で行われる。以下の説明では、一例として、ICチップ20がコマンド処理部34であり、照合プロセッサ60が生体情報照合部32であるものとして説明する。
【0028】
まず、端末装置100は、ICカード1のICチップ20、照合プロセッサ60、指紋センサ50のそれぞれに対して電力供給を行う(ステップS200、S202、S204)。
【0029】
次に、端末装置100は、ICチップ20にRESET信号を送信する(ステップS206)。電力供給を受けて起動したICチップ20は、端末装置100からRESET信号を受信すると、照合プロセッサ60に対して、指紋照合処理が可能か否かを確認するための確認情報を送信する(ステップS208)。
【0030】
一方で、電力供給を受けて起動した照合プロセッサ60は、指紋センサ50の通電状態を基に、指紋センサ50が指紋情報を取得可能な状態であるか否かを判定する(ステップS210)。
【0031】
また、照合プロセッサ60は、S210の処理で、指紋センサ50が指紋情報を取得可能な状態である場合には、その旨を示す情報を、ICチップ20に送信する(ステップS212)。そして、照合プロセッサ60は、指紋情報が取得可能な状態の指紋センサ50に、指紋情報の送信を要求するリクエスト情報を送信する(ステップS214)。
【0032】
指紋センサ50は、リクエスト情報を受けると、指紋情報を照合プロセッサ60に送信する(ステップS218)。
【0033】
ICチップ20は、指紋センサ50が指紋情報を取得可能な状態である場合、記憶部40に記憶された生体認証用情報42を読み出し、この生体認証用情報42を照合プロセッサ60に送信する(ステップS216)。
【0034】
照合プロセッサ60は、ICチップ20により送信された生体認証用情報42と、指紋センサ50により送信された指紋情報とを照合し、その照合結果(本人認証結果)をICチップ20と指紋センサ50とにそれぞれ送信する(ステップS220、S222)。
【0035】
次に、ICチップ20は、照合プロセッサ60から照合結果を受信すると、これを記憶部40に記憶させる(ステップS224)。そして、ICチップ20は、UART24を用いて、ATR信号を端末装置100に送信する(ステップS226)。
【0036】
[照合コマンドに対応したコマンド処理時の生体認証]
図6は、端末装置100およびICカード1によって実行される処理の他の例を示すシーケンス図である。本シーケンスは、ICカード1の各装置が起動した後に、端末装置100からICカード1に「照合コマンド」が送信される場面で行われる。照合コマンドとは、例えば、端末装置100側からの要求で、ICカード1を利用する利用者の本人認証を行うときに送信されるコマンドである。
【0037】
まず、端末装置100は、ICカード1のICチップ20(コマンド処理部34)に照合コマンドを送信する(ステップS300)。
【0038】
次に、ICチップ20は、記憶部40に照合結果が記憶されているか否かを判定し(ステップS302)、記憶部40に照合結果が記憶されている場合、上述した指紋照合処理を省略して、照合結果に応じて照合コマンドに対応するコマンド処理を実行する(ステップS304)。そして、ICチップ20は、コマンド処理の結果であるレスポンスを、UART24を介して端末装置100に送信する(ステップS306)。
【0039】
例えば、照合結果が「合致しない」場合、すなわち本人認証が不成立の場合には、ICチップ20は、処理を先に進めずに、エラー情報などをレスポンスとして端末装置100に送信する。一方、照合結果が「合致する」場合、すなわち本人認証が成立の場合には、ICチップ20は、コマンド処理を先に進める。
【0040】
一方、ICチップ20は、記憶部40に照合結果が記憶されていない場合、照合プロセッサ60(生体情報照合部32)に対して、指紋照合処理が可能か否かを確認するための確認情報を送信し(ステップS308)、上述した指紋照合処理を開始する。例えば、ICチップ20等の起動時に、指紋センサ50に指が置かれずに、処理時間がタイムアウトした場合、記憶部40には照合結果が記憶されなくなる。この場合、ICチップ20は、指紋照合処理を開始する。
【0041】
次に、照合プロセッサ60は、指紋センサ50の通電状態を基に、指紋センサ50が指紋情報を取得可能な状態であるか否かを判定し(ステップS310)、指紋センサ50が指紋情報を取得可能な状態である場合には、その旨を示す情報を、ICチップ20に送信する(ステップS312)。
【0042】
次に、ICチップ20は、指紋センサ50が指紋情報を取得可能な状態である場合、記憶部40に記憶された生体認証用情報42を読み出し、この生体認証用情報42を照合プロセッサ60に送信する(ステップS314)。
【0043】
一方、照合プロセッサ60は、指紋情報が取得可能な状態の指紋センサ50に、指紋情報の送信を要求するリクエスト情報を送信する(ステップS316)。指紋センサ50は、リクエスト情報を受けると、指紋情報を照合プロセッサ60に送信する(ステップS318)。
【0044】
次に、照合プロセッサ60は、ICチップ20により送信された生体認証用情報42と、指紋センサ50により送信された指紋情報とを照合し、その照合結果(本人認証結果)をICチップ20と指紋センサ50とにそれぞれ送信する(ステップS320、S322)。
【0045】
次に、ICチップ20は、照合プロセッサ60から照合結果を受信すると、これを記憶部40に記憶させる(ステップS324)。そして、ICチップ20は、上述したS304の処理として、S324の処理で記憶部40に記憶させた照合結果を基に、照合コマンドに対応するコマンド処理を実行する。
【0046】
なお、上述した実施形態において、ICチップ20(コマンド処理部34)および照合プロセッサ60(生体情報照合部32)は、S302の処理結果として、記憶部40に照合結果が記憶されていないと判定した場合に、指紋照合処理を行うものとして説明したがこれに限られない。例えば、ICチップ20(コマンド処理部34)および照合プロセッサ60(生体情報照合部32)は、記憶部40に照合結果が記憶され、更に、その照合結果が「合致する」または「本人認証の成立」であるか否かを判定し、照合結果が「合致しない」または「本人認証の不成立」である場合に指紋照合処理を行ってもよい。照合結果が「合致する」または「本人認証の成立」であることは、「所定条件」の一例である。これによって、起動時と照合コマンド時の2度に亘って本人認証を行うことができる。
【0047】
また、上述した実施形態では、ICチップ20(コマンド処理部34)および照合プロセッサ60(生体情報照合部32)が、起動時に指紋照合処理を行うものとして説明したがこれに限られない。例えば、ICチップ20(コマンド処理部34)および照合プロセッサ60(生体情報照合部32)は、SELECT(SELECT[by DF name])コマンドに対応したコマンド処理を行う際に、指紋照合処理を行ってもよい。SELECTコマンドとは、記憶部40に記憶されたアプリケーションの所定のファイル(Dedicated File)を指定するコマンドであり、少なくとも照合コマンドよりも前に端末装置100から受信されるコマンドである。SELECTコマンドは、「所定のコマンド」の一例である。
【0048】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、予め生体認証用情報(42)が記憶された記憶部(40)と、利用者の生体情報(指紋情報)を取得する取得部(指紋センサ50)と、起動時に、取得部により取得された利用者の生体情報と、記憶部に記憶された生体認証用情報とを照合すると共に、その照合の結果を記憶部に記憶させる処理部(30)と、を備えることにより、生体情報の照合が要求される照合コマンドが受信されるよりも早いタイミングで、生体情報の照合処理を実施しておくため、本人認証に要する処理時間を短縮することができる。
【0049】
上記実施形態は、以下のように表現することができる。
端末装置と通信する通信部と、
予め生体認証用情報が記憶された記憶部と、
利用者の生体情報を取得する取得部と、
前記記憶部に記憶されたプログラムを実行するハードウェアプロセッサと、を備え、
前記記憶部には、前記ハードウェアプロセッサに、
起動時に、前記取得部により取得された前記利用者の生体情報と、前記記憶部に記憶された生体認証用情報とを照合すると共に、前記照合の結果を前記記憶部に記憶させる処理を実行させる前記プログラムが格納されている、
ICカード。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0051】
1…ICカード、10…ICモジュール、15…コンタクト部、20…ICチップ、24…UART、25…CPU、26…ROM、27…RAM、28…EEPROM、30…処理部、32…生体情報照合部、34…コマンド処理部、40…記憶部、42…生体認証用情報、44…プログラム、50…指紋センサ、60…照合プロセッサ、100…端末装置、BS1…内部バス