IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキョーニシカワ株式会社の特許一覧 ▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両の内装構造 図1
  • 特許-車両の内装構造 図2
  • 特許-車両の内装構造 図3
  • 特許-車両の内装構造 図4
  • 特許-車両の内装構造 図5
  • 特許-車両の内装構造 図6
  • 特許-車両の内装構造 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】車両の内装構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 37/00 20060101AFI20220715BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20220715BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20220715BHJP
   B62D 25/08 20060101ALN20220715BHJP
【FI】
B60K37/00 G
B60K35/00 A
B60R13/02 B
B62D25/08 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017155153
(22)【出願日】2017-08-10
(65)【公開番号】P2019034568
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】寄田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】吉村 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】富永 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】藪 秀生
(72)【発明者】
【氏名】信岡 俊祐
(72)【発明者】
【氏名】落水 均
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-095001(JP,A)
【文献】特開2001-233087(JP,A)
【文献】特開2007-064722(JP,A)
【文献】特開2006-248344(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146261(WO,A1)
【文献】特開2011-248317(JP,A)
【文献】特開2012-081781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/00
B60R 13/02
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に発泡層を有するインストルメントパネルの上面に、貫通孔としての照射開口部が形成され、
前記インストルメントパネル内に、前記照射開口部を通してフロントウインドガラスに向けて照射を行うヘッドアップディスプレイが配設され、
前記照射開口部と前記ヘッドアップディスプレイとの間に、前壁部と該前壁部よりも車両後方側に位置される後壁部と車両の左右方向に隔置された左右一対の側壁部とを有して、全体として環状のベゼルが配設され、
前記インストルメントパネルのうち前記照射開口部の車両前方側を閉じている部位となる前側内周面部と該照射開口部の車両後方側を閉じている部位となる後側内周面部とが、上方に向かうにつれて車両後方側に位置するように傾斜して形成され、
記前側内周面部が水平面に対してなす前傾斜角度が鋭角とされる一方、前記後側内周面部が水平面に対してなす後傾斜角度が鈍角となるように設定され、
前記インストルメントパネルの上面の前記発泡層が、前記照射開口部内に向けて延長されて、該延長された発泡層が該照射開口部の内周面部を形成しており、 前記発泡層によって前記ベゼルの上端部が覆われて、前記照射開口部を前記ヘッドアップディスプレイの照射方向と反対方向から見たときに該ベゼルが目視できないようにされている、
ことを特徴とする車両の内装構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記ベゼルの前記後壁部は、その上端部が前記インストルメントパネルの表面側に位置された状態で、該インストルメントパネルの裏面側に対して固定具によって固定され、
前記ベゼルの前記後壁部の上端部が、前記発泡層に対して、前記固定具による固定方向と略同一方向から当接されている、
ことを特徴とする車両の内装構造。
【請求項3】
請求項2において、
前記ベゼルの前記後壁部の上端部と前記固定具による固定部との間に、前記発泡層のシール部となる薄肉部が位置され、
前記ベゼルの前記後壁部の上端部が、前記発泡層のうち前記薄肉部よりも厚肉な厚肉部で覆われている、
ことを特徴とする車両の内装構造。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記ヘッドアップディスプレイの照射方向において、前記前側内周面部の長さが前記後側内周面部の長さよりも長くされている、ことを特徴とする車両の内装構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記前側内周面部に位置する前記発泡層が、薄肉部と該薄肉部の上側に位置する厚肉部とを有しており、
前記ベゼルの前記前壁部の上端部が、前記薄肉部と前記厚肉部との段差部でもって覆われている、
ことを特徴とする車両の内装構造。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記ベゼルの左右一対の前記側壁部の外面に、前記発泡層の薄肉部の先端部が当接され、
前記左右一対の前記側壁部の上端部が、前記発泡層の厚肉部でもって覆われている、
ことを特徴とする車両の内装構造。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、
前記前側内周面部に位置する前記発泡層が、厚肉部によって形成されて上方に向かうにつれて車両後方側に位置するように大きく膨出する膨出部を有するように形成され、
外光が前記照射開口部を通して前記ヘッドアップディスプレイに入射されたときに、該ヘッドアップディスプレイでの外光の反射光が前記膨出部に向かうようにされている、
ことを特徴とする車両の内装構造。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、
前記ヘッドアップディスプレイよりも車両後方側に、車幅方向に延びるクロスカービームが配設され、
前記ヘッドアップディスプレイの脱着軌跡が、前記クロスカービームよりも車両前方側の前方空間を通るように設定されている、
ことを特徴とする車両の内装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の内装構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インストルメントパネルは、基材の表面に発泡層を形成したものが多く用いられている。また、インストルメントパネルには、各種の開口部が形成されるものである。特許文献1には、インストルメントパネルに形成された開口部の開口縁部から内周縁部に渡って発泡層が位置されるようにすると共に、内周縁部にある基材の端面を発泡層で覆うものが開示されている。特許文献2には、長く形成された開口部の内周面部に、発泡層が長く位置されるようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-233087号公報
【文献】特開2002-264733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インストルメントパネルに形成される開口部として、ヘッドアップディスプレイ用の照射開口部がある。すなわち、貫通孔としての照射開口部の直下方に配設されたヘッドアップディスプレイからの照射光を、照射開口部を通過させた後、フロントウインドガラスで後方に向けて(運転者に向けて)反射させるようにしたものがある。
【0005】
照射開口部とヘッドアップディスプレイとの間には、かなり大きな隙間が形成されることから、照射開口部とヘッドアップディスプレイとの間に、ベゼルを配設することも行われている。ベゼルは、車両からみて前壁部と後壁部と左右一対の側壁部とを有して、全体として環状の形状とされる。
【0006】
照射開口部に対応させてベゼルを設けた場合、照射開口部とベゼルとの間にパーティンググラインが構成されると、外観上の見栄えが悪くなるばかりでなく、ベゼル(特にその上端部)がフロントウインドガラスに映り込んでしまうこともあり、好ましくないものである。
【0007】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、照射開口部に対応させてベゼルを設けた場合に、外観上の見栄え向上とベゼルがフロントウインドガラスに映り込んでしまう事態を防止できるようにした車両の内装構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
基材の表面に発泡層を有するインストルメントパネルの上面に、貫通孔としての照射開口部が形成され、
前記インストルメントパネル内に、前記照射開口部を通してフロントウインドガラスに向けて照射を行うヘッドアップディスプレイが配設され、
前記照射開口部と前記ヘッドアップディスプレイとの間に、前壁部と該前壁部よりも車両後方側に位置される後壁部と車両の左右方向に隔置された左右一対の側壁部とを有して、全体として環状のベゼルが配設され、
前記インストルメントパネルのうち前記照射開口部の車両前方側を閉じている部位となる前側内周面部と該照射開口部の車両後方側を閉じている部位となる後側内周面部とが、上方に向かうにつれて車両後方側に位置するように傾斜して形成され、
記前側内周面部が水平面に対してなす前傾斜角度が鋭角とされる一方、前記後側内周面部が水平面に対してなす後傾斜角度が鈍角となるように設定され、
前記インストルメントパネルの上面の前記発泡層が、前記照射開口部内に向けて延長されて、該延長された発泡層が該照射開口部の内周面部を形成しており、 前記発泡層によって前記ベゼルの上端部が覆われて、前記照射開口部を前記ヘッドアップディスプレイの照射方向と反対方向から見たときに該ベゼルが目視できないようにされている、
ようにしてある。
【0009】
上記解決手法によれば、ベゼルの上端部が発泡層で覆われて外部から目視されないため、外観上の見栄えが向上される。また、ヘッドアップディスプレイの照射方向とは反対方向から照射開口部を見たときにベゼルが目視されないことから、ベゼルがフロントウインドガラスに映り込んでしまう事態も防止される。また、インストルメントパネルの上面部分から照射開口部の内周面部に渡って発泡層が位置(存在)することから、照射開口部の上側の開口縁に鋭利なエッジが形成されることがなく、外観上の見栄え向上でさらに好ましいばかりでなく、照射開口部の上側の開口縁がエッジ状としてフロントウインドガラスに映り込んでしまうことを防止あるいは抑制する上で好ましいものとなる。
【0010】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記ベゼルの前記後壁部は、その上端部が前記インストルメントパネルの表面側に位置された状態で、該インストルメントパネルの裏面側に対して固定具によって固定され、
前記ベゼルの前記後壁部の上端部が、前記発泡層に対して、前記固定具による固定方向と略同一方向から当接されている、
ようにしてある(請求項2対応)。この場合、固定具による固定を行うだけで、ベゼルにおける後壁部の上端部を、発泡層に対して精度よく位置決めされた状態でもってこの発泡層に当接させることができる。
【0011】
前記ベゼルの前記後壁部の上端部と前記固定具による固定部との間に、前記発泡層のシール部となる薄肉部が位置され、
前記ベゼルの前記後壁部の上端部が、前記発泡層のうち前記薄肉部よりも厚肉な厚肉部で覆われている、
ようにしてある(請求項3対応)。この場合、発泡層の厚肉部でもってベゼルの後端部の上端部を十分に覆うことができる。また、固定具による固定を行う際に、発泡層が邪魔になることもない。
【0012】
前記ヘッドアップディスプレイの照射方向において、前記前側内周面部の長さが前記後側内周面部の長さよりも長くされている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、ヘッドアップディスプレイからの外光の反射光を、照射開口部の前側内周面部でもって遮断して、ヘッドアップディスプレイで反射された外光がフロントウインドガラスへ向かう事態を防止あるいは抑制する上で好ましいものとなる。
【0013】
前記前側内周面部に位置する前記発泡層が、薄肉部と該薄肉部の上側に位置する厚肉部とを有しており、
前記ベゼルの前記前壁部の上端部が、前記薄肉部と前記厚肉部との段差部でもって覆われている、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、薄肉部と厚肉部との段差を有効に利用して、ベゼルの前壁部の上端部を覆うことができる。
【0014】
前記ベゼルの左右一対の前記側壁部の外面に、前記発泡層の薄肉部の先端部が当接され、
前記左右一対の前記側壁部の上端部が、前記発泡層の厚肉部でもって覆われている、
ようにしてある(請求項6対応)。この場合、薄肉部でシール作用を得つつ、厚肉部でもって側壁部の上端部を十分に覆うことができる。
【0015】
前記前側内周面部に位置する前記発泡層が、厚肉部によって形成されて上方に向かうにつれて車両後方側に位置するように大きく膨出する膨出部を有するように形成され、
外光が前記照射開口部を通して前記ヘッドアップディスプレイに入射されたときに、該ヘッドアップディスプレイでの外光の反射光が前記膨出部に向かうようにされている、
ようにしてある(請求項7対応)。この場合、発泡層を有効に利用して、ヘッドアップディスプレイに入射された外光の反射光がフロントウインドガラスへ向かうのを防止あるいや抑制することができる。
【0016】
前記ヘッドアップディスプレイよりも車両後方側に、車幅方向に延びるクロスカービームが配設され、
前記ヘッドアップディスプレイの脱着軌跡が、前記クロスカービームよりも車両前方側の前方空間を通るように設定されている、
ようにしてある(請求項8対応)。この場合、大型部材となるヘッドアップディスプレイを、クロスカービームの前方空間を有効に利用して脱着させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、外観上の見栄え向上とベゼルがフロントウインドガラスに映り込んでしまう事態を防止できる
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態を示す側面一部断面図。
図2】照射開口部を真上から見た状態を示す図。
図3】照射開口部をヘッドアップディスプレイの照射方向と反対方向から見た状態を示す図。
図4】ベゼルの斜視図。
図5】照射開口部とその付近の状態を示すもので、車幅方向での断面図。
図6】照射開口部とその付近の状態を示すもので、前後方向での断面図。
図7】成形型を利用して発泡層の薄肉部を形成する部分を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。まず、 図1において、1はフロントウインドガラス、2は運転席、10はインストルメントパネルである。インストルメントパネル10の上面には、運転席2の前方位置おいて、メータフード部10aが形成されている(図2参照で、インストルメントパネル10は、実施形態では左ハンドル車用)。そして、インストルメントパネル10の上面のうちメータフード部10aの直前方位置において、貫通孔となる照射開口部20が形成されている。そして、インストルメントパネル10内には、照射開口部20の直下方に位置させて、ヘッドアップディスプレイ30が配設されている。
【0020】
ヘッドアップディスプレイ30は、車幅方向に延びるクロスカービーム40に対して、図示を略すブラケットを介して、固定具によって着脱自在に固定されている。この固定具による固定は、インストルメントパネル10の下方空間を通して行われるようになっている。すなわち、固定解除されたヘッドアップディスプレイ30は、クロスカービーム40の前方空間を通して、インストルメントパネル10の下方から車室内へと取り出すことが可能とされている。ヘッドアップディスプレイ30を取付けるには、上記とは逆の経路(軌跡)を通るように行われる。このように、実施形態では、大型部材となるヘッドアップディスプレイ30の取付けと取外しの際の脱着軌跡が、クロスカービーム40の前方空間を通るようにされている。なお、クロスカービーム40は、ステアリング支持部材あるいはインパネ支持部材とも称されるもので、左右一対のヒンジピラー同士を連結する強度部材である。
【0021】
ヘッドアップディスプレイ30(の上面に位置されるレンズ面)からの照射光は、矢印αで示すように、後上方に向かいつつフロントウインドガラス1に向かうように照射される。この照射光は、フロントウインドガラス1で反射されて(反射部を符号βで示す)、矢印γで示すように、運転席2(に着座している運転者)に向けて照射される。これにより、ヘッドアップディスプレイ30の照射光によって提供される各種の情報が、運転者の前方に表示されることになる。
【0022】
インストルメントパネル10は、図5図6に示すように、基材11と表皮層12と発泡層13とによって形成されている。発泡層13は、基材11と表皮層12との間に位置される。発泡層13は、型内に設置された基材11と表皮層12との間に充填された発泡材を発泡させることによって形成される。
【0023】
照射開口部20とヘッドアップディスプレイ30との間には、ベゼル50が配設される。ベゼル50は、図4図5に示すように、前壁部50aと、後壁部50bと、左右一対の側壁部50cとを有して、全体的に方形の環状となるように形成されている。ベゼル50には、その前部と後部とにおいてそれぞれ、左右方向に間隔をあけて複数の固定部50dが形成されている。
【0024】
照射開口部20の内周面部の形状は、短い方形の筒状として形成されて、その前側内周面部および後側内周面部は後上方に向かうように傾斜されている。これに対応して、ベゼル50の前壁部50aおよび後壁部50bも、後上方に向かうように傾斜されている(図6参照)。
【0025】
ヘッドアップディスプレイ30の照射方向(矢印α方向)において、照射開口部20における前側内周面部の長さが、後側内周面部の長さよりも十分に長くされている。また、照射開口部20における前側内周面部が水平面に対してなす角度が鋭角とされ、後側内周面部が水平面に対してなす角度が鈍角(略90度の場合を含む)とされている。
【0026】
ベゼル50は、ヘッドアップディスプレイ30の照射方向において、前壁部50aの長さよりも、後壁部50bの長さが長くされている。さらに、前壁部50aは後壁部50bよりも低い位置とされて、実施形態では前壁部50aの上端が後壁部50bの下端よりも低い位置となるようにされている。なお、インストルメントパネル10の上面のうち照射開口部20が形成されている部分やその付近は、緩やかに後上方に向かうように傾斜されている(図6参照)。
【0027】
図2は、照射開口部20を真上から見た状態であり、前壁部50aおよび左右一対の側壁部50cの上端は目視不能であるが、ベゼル50のうち後上方へ傾斜すると共に長くされた後壁部50bが目視可能とされる。図3は、照射開口部20を、ヘッドアップディスプレイ30の照射方向とは反対方向(矢印αで示す方向と反対方向)から見た状態であり、ベゼル50が全く目視できない状態となる。
【0028】
図2図3のような視認状態とするための詳細な設定について、図5図6を参照しつつ説明する。まず、インストルメントパネル10の上面の発泡層13が、短い方形の筒状に形成された照射開口部20の内周面部に向けて延長されて該内周面部に渡って発泡層が位置される(発泡層13を覆う表皮層12も位置される)。この照射開口部20の内周面部に位置する発泡層13は、その成形時においてシール部となる薄肉部13aと、薄肉部13a以外の厚肉部13b(一般部)とを有するものである。そして、薄肉部13aが、厚肉部13bよりも照射開口部20の奥側に位置される。
【0029】
まず、図5において、ベゼル50のうち、左右の側壁部50cの外側面に、薄肉部13aの先端部が当接されている。また、側壁部50cの上端部が、厚肉部13bにより覆われている。なお、ヘッドアップディスプレイ30の上面(照射用のレンズ面)は、側面視において下方に凸となるように湾曲されているが、この湾曲に沿うように、側壁部50cの下面が湾曲されている。
【0030】
側壁部50cの上端部が厚肉部13b覆われているために、照射開口部20を上方から見た状態では、側壁部50cの上端部が目視できないものとなる。またフロントウインドガラス1には、側壁部50cの上端部が映り込まないものとなる。
【0031】
厚肉部13bが照射開口部20の内周面部から照射開口部20の上側の開口縁部に渡って滑らかに連続して存在するため(エッジ部を形成しないため)、照射開口部20を上方から見た状態では、フロントウインドガラス1には照射開口部20の開口端がパーティンググラインあるいはエッジとしては映り込まない(あるいは映り込みにくい)ものとなる。
【0032】
図6において、ベゼル50のうち、後壁部50bの後面に、発泡層13における薄肉部13aが当接されている。また、後壁部50bの上端部が、厚肉部13bに対して当接しつつ厚肉部13bによって覆われている。後壁部50bの上端部は、厚肉部3bの表面側(表皮層12を有する側)に当接されている。
【0033】
後壁部50b側の固定部50dが、固定具60によって、インストルメントパネル10(の裏面側に形成された固定部位10a)に固定されている。固定具60の固定方向(図6中、矢印δで示す方向)と、後壁部50b上端部の厚肉部13bへの当接方向とが略同一方向とされる。つまり、固定具60によって固定を行う際に、その固定方向δにほぼ沿うようにして後壁部50bの上端部が厚肉部13bに徐々に接近しつつ当接されることになり、後壁部50bと厚肉部13bとの密着性向上や当接部位の位置決めを精度よく行う上で好ましいものとなる。
【0034】
図6において、ベゼル50の前壁部50a部分における発泡層13は、薄肉部13aと厚肉部13bとが存在するが、その間に段差部13cを有するものとなっている。この段差部13cの段差は、前壁部50aの肉厚と同じかやや大きく設定されている。そして、前壁部50aの上端部が、上記段差部13cに位置されて、薄肉部13aに当接される(着座される)と共に、厚肉部13bによって覆われている。
【0035】
前壁部50a側の固定部50cに対する固定具による固定は、固定具60による後壁部50b側の固定と同様の手法で行われる。ただし、固定方向が、前上方に向かう方向とされる。つまり、前壁部50a側を固定する固定具の固定方向が、前壁部50aが薄肉部13aに当接される方向とほほ同方向とされて、薄肉部13aに対する前壁部50aに密着性が高くされる。
【0036】
前壁部50aの上端を覆う厚肉部13bは、後上方に向けて大きく膨出された膨出部13dとされている。これにより、図6破線矢印で示すように、上方からの外光、特に前上方からの外光が、ヘッドアップディスプレイ30(の上面を構成する照射レンズ面)に入射されたときに、その反射光が膨出部13dに向かうこととなって、照射開口部20を通して外部へ向けて(特にフロントフレームが1に向けて)反射されることが防止あるいは抑制される。
【0037】
なお、ヘッドアップディスプレイ30の上面(レンズ面)が、側面視において下方に向けて凸となるように湾曲されているのは、ヘッドアップディスプレイ30で反射される外光が照射開口部20を通して外部へ向けて照射されないようにするためである。膨出部13dを形成形成しておくことによりにより、ヘッドアップディスプレイ30のレンズ面の湾曲をあまり大きくする必要がなくなり、ヘッドアップディスプレイ30によって表示される情報の歪み防止の上で好ましいものとなる。
【0038】
次に、薄肉部13aと厚肉部13bとを形成する一例について図7を参照しつつ説明する。まず、70は成形型で、固定型71と移動型72とによってキャビティ73が構成される。
【0039】
キャビティ73内には、基材11と表皮層12とが配設される。基材11には、表皮層12に向けて突出された三角リブ11aが形成されており、表皮層12の端部は、この三角リブ11aを跨ぐように配設される。この状態で、基材11と表皮層12との間に発泡材が充填されて、発泡材が発泡されることにより、基材11と表皮層12とに一体化された発泡層13が形成される。型締め力によって表皮層12が三角リブ11aに押しつけられていることにより、発泡層13が三角リブ11aを超えてその外部へと移動することが規制される(三角リブ11aによる発泡層13の漏れ防止=シール作用)。
【0040】
図7矢印で示す方向が型締め方向となり、その逆方向が型抜き方向となる。三角リブ11aによるシール面が型締め方向となす角度θは、60度以上とするのが好ましいものである。
【0041】
なお、図7に示す例は、図5に示す側壁部50cに対応した短い薄肉部13aを形成するものとなっている。すなわち、図7において、薄肉部13aの長さをシール長として示してあるが、比較的短いものとされる。これに対して、図6に示す前壁部50a、後壁部50bに対応した薄肉部13aは、基材11の成形時における型抜きの関係から三角リブ11aを用いないで発泡層のシールを行うことにより形成されて、側壁部50cに対応した薄肉部13aの長さよりも長くされている。
【0042】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能である。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、ヘッドアップディスプレイによる情報表示を行う車両用として好適である。
【符号の説明】
【0044】
α:ヘッドアップディスプレイの照射方向
β:フロントウインドガラスでの反射部
γ:フロントウインドガラスからの反射光
δ:固定具による後壁部の固定方向
1:フロントウインドガラス
2:運転席
10:インストルメントパネル
11:基材
11a:三角リブ
12:表皮層
13:発泡層
13a:薄肉部(発泡層形成時のシール部)
13b:厚肉部(一般部)
13c:段差部
13d:膨出部
20:照射開口部
30:ヘッドアップディスプレイ
40:クロスカービーム
50:ベゼル
50a:前壁部
50b:後壁部
50c:側壁部
50d:固定部
60:固定具
70:成形型
71:固定型
72:移動型
73:キャビティ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7