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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20220715BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20220715BHJP
   G09F 3/10 20060101ALI20220715BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C09J7/38
G09F3/02 W
G09F3/10 A
B32B27/00 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017201294
(22)【出願日】2017-10-17
(65)【公開番号】P2019073643
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸哉
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-252247(JP,A)
【文献】特開2002-132158(JP,A)
【文献】特開2016-090874(JP,A)
【文献】特開平04-137390(JP,A)
【文献】特開2010-139910(JP,A)
【文献】特開2008-62596(JP,A)
【文献】特開2002-323856(JP,A)
【文献】特開2014-35527(JP,A)
【文献】特開2013-190729(JP,A)
【文献】特開平9-052478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
G09F 1/00- 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の一方の面側に設けられた粘着剤層と、
エネルギー線が照射されることにより発光する発光剤により形成されたパターンである情報担持部と、を備え、
前記情報担持部は、前記粘着剤層の前記基材に対向する面と反対の面側に設けられて おり、
前記粘着剤層の、JIS K7244-6:1999に準拠して測定される、温度23℃、周波数1Hzの貯蔵弾性率は、0.01MPa以上0.1MPa以下である ことを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記エネルギー線は、紫外線であり、
前記発光剤は、紫外線が照射されることにより発光する請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着シートの平面視において、前記情報担持部が形成された領域は、前記基材よりも小さい請求項1または2に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印字されたバーコードを光学的手段で読み取ることにより、各種カードから個人情報を得たり、商品やカタログに記載されている商品情報を得たりすることが広く行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、粘着ラベルと、粘着ラベルの表面に設けられたバーコードとを有するバーコードラベルが開示されている。このバーコードは、白いラベルに黒いバーが所定間隔を置いて印字されたものである。
【0004】
しかしながら、このようなバーコードは、肉眼により容易に認識できるため、不正に情報を読み取られることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-77314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、不正に情報を読み取られるのを防止することができる粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)~(3)に記載の本発明により達成される。
(1) 基材と、
前記基材の一方の面側に設けられた粘着剤層と、
エネルギー線が照射されることにより発光する発光剤により形成されたパターンである情報担持部と、を備え、
前記情報担持部は、前記粘着剤層の前記基材に対向する面と反対の面側に設けられており、
前記粘着剤層の、JIS K7244-6:1999に準拠して測定される、温度23℃、周波数1Hzの貯蔵弾性率は、0.01MPa以上0.1MPa以下であることを特徴とする粘着シート。
【0008】
(2) 前記エネルギー線は、紫外線であり、
前記発光剤は、紫外線が照射されることにより発光する上記(1)に記載の粘着シート。
【0011】
) 前記粘着シートの平面視において、前記情報担持部が形成された領域は、前記基材よりも小さい上記(1)または(2)に記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、情報担持部(例えば、バーコード等)の位置が目視では確認できないため、不正に情報を読み取られるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の粘着シート(第1実施形態)を示す断面図である。
図2図2は、図1に示す粘着シートの情報担持部の情報を読み取っている状態を示す断面図である。
図3図3は、図1に示す粘着シートの製造方法を示す断面図である。
図4図4は、図1に示す粘着シートの製造方法を示す断面図である。
図5図5は、図1に示す粘着シートの製造方法を示す断面図である。
図6図6は、図1に示す粘着シートの平面図である。
図7図7は、本発明の粘着シート(第2実施形態)を示す断面図である。
図8図8は、図1に示す粘着シートの製造方法を示す断面図である。
図9図9は、図1に示す粘着シートの製造方法を示す断面図である。
図10図10は、図1に示す粘着シートの製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の粘着シート(第1実施形態)を示す断面図である。図2は、図1に示す粘着シートの情報担持部の情報を読み取っている状態を示す断面図である。図3は、図1に示す粘着シートの製造方法を示す断面図である。図4は、図1に示す粘着シートの製造方法を示す断面図である。図5は、図1に示す粘着シートの製造方法を示す断面図である。図6は、図1に示す粘着シートの平面図である。
【0015】
図1に示すように、本発明の粘着シート10は、基材1と、基材1の一方の面(図中下側の面)側に設けられた粘着剤層2と、エネルギー線が照射されることにより発光する発光剤により形成されたパターンである情報担持部3と、を備える。
【0016】
これにより、発光剤にエネルギー線を照射しない限り、情報担持部3の情報を読み取れない構成とすることができる。例えば、発光剤が後述するダウンコンバージョン材料であった場合、可視光環境下では、情報担持部3を視認することができず情報担持部3の情報を読み取ることができないが、図2に示すように、励起光L1として紫外線を照射した際に、可視光である発光光L2を読み取ることができる。よって、不正に情報を読み取られるのを防止することができる。
【0017】
なお、「情報担持部」としては、特に限定されないが、バーコードのような一次元コードや、QRコード(登録商標)のような二次元コードや、文字、数字、記号等、何らかのパターンに情報が担持されたものを言う。
【0018】
また、「情報」とは、特に限定されないが、例えば、商品の値段、サイズ、製造場所や、個人または会社の名前、住所、年齢等が挙げられる。
【0019】
また、本明細書中では、「紫外線」は、波長が200nm以上400nm以下程度の光のことを言い、「赤外線」は、波長が780nm以上1500nm以下程度の光のことを言い、「可視光」は、波長が400nm超780nm未満の光のことを言う。
【0020】
また、粘着シート10は、図1に示す未使用状態では、粘着剤層2側から剥離ライナー4に積層されている。そして、粘着シート10を剥離ライナー4から剥がして被着体に貼着される。
【0021】
(剥離ライナー)
剥離ライナー4は、粘着剤層2から剥離可能なシート材であり、粘着剤層2を保護するものである。剥離ライナー4としては、フィルムまたは紙等が挙げられる。
【0022】
フィルムとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等が、紙としては、上質紙、クラフト紙、グラシン紙等が挙げられる。
【0023】
剥離ライナー4は、粘着剤層2から剥離可能なように、シリコーン等が塗布されたものが好ましい。
【0024】
また、剥離ライナー4の厚みは、取り扱い性を考慮して、例えば50μm以上250μmであるのが好ましい。ここで、剥離ライナー4の厚みとしては、無作為に選出された10箇所について測定された厚みの平均値とする。
【0025】
以下、粘着シート10の各部について説明する。
(基材)
基材1は、粘着剤層2を支持する機能を有する部位である。
【0026】
基材1は、有色、無色に関わらず、光透過性(可視光透過性および紫外線透過性)を有するものであるのが好ましい。これにより、基材1を介して情報担持部3を読み取ることができる。
【0027】
基材1の構成材料としては、例えば、各種樹脂材料、各種金属材料、各種セラミックス材料、セルロース等の植物性材料、動物性たんぱく質(例えば、ケラチン等)等の動物性材料等が挙げられる。
【0028】
基材1の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;セルローストリアセテート、セルロースジアセテート等のアセテート;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン等の樹脂材料が挙げられる。
【0029】
また、基材1は、前述した以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、染料、顔料等の着色剤、アニリド系、フェノール系等の酸化防止剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、軟化剤、分散剤等が挙げられる。
なお、基材1は、多孔質体や、複数の層を備える積層体であってもよい。
【0030】
また、基材1は、粘着剤層2との密着性を高めるための表面処理が施されたものであってもよい。
【0031】
このような表面処理としては、例えば、ポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系等のプライマー塗布、コロナ処理等が挙げられる。
【0032】
基材1の厚さは、特に限定されないが、15μm以上500μm以下であるのが好ましく、20μm以上200μm以下であるのがより好ましい。
【0033】
(粘着剤層)
粘着剤層2を形成する粘着剤としては、アクリル系、ポリウレタン系、シリコーン系、合成ゴム系等が挙げられる。
【0034】
これらの中でも、透明性が高く、長期の保存性に優れている点で、アクリル系が好ましい。
【0035】
アクリル系粘着剤は、粘着性を付与するモノマー、凝集力を付与するモノマーおよび架橋性官能基を有するモノマー等を成分とするポリマーが、架橋剤により架橋されているものが挙げられる。
【0036】
粘着性を付与するモノマーとしては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート等が挙げられる。
【0037】
凝集力を付与するモノマーとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0038】
架橋性官能基を有するモノマーとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシル基を有するモノマー、アクリル酸等のカルボキシル基を有するモノマー等が挙げられる。
【0039】
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
【0040】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のビウレット体、イソシアヌレート体、アダクト体等が挙げられる。
【0041】
エポキシ系架橋剤としては、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミンや1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロへキサン等が挙げられる。
【0042】
金属キレート系架橋剤としては、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等が挙げられる。
【0043】
粘着剤層2の、JIS K7244-6:1999に準拠して測定される、温度23℃、周波数1Hzの貯蔵弾性率は、0.01MPa以上0.1MPa以下であるのが好ましく、0.02MPa以上0.08MPa以下であるのがより好ましい。これにより、粘着シート10を被着体100に貼着した貼着状態から粘着シート10を剥がすと、その際、粘着剤層2が変形し、情報担持部3も変形する。よって、粘着シート10を一旦剥がしてから再度貼着した場合に、情報担持部3を読み取ることを困難にすることができる。
【0044】
粘着剤層2の厚さは、特に限定されないが、15μm以上500μm以下であるのが好ましく、20μm以上200μm以下であるのがより好ましい。
【0045】
(情報担持部)
情報担持部3は、エネルギー線が照射されることにより、発光する発光剤を含むインクを用いて形成されたインク層で構成されており、任意のパターン(本実施形態では、バーコード)となっている。
【0046】
なお、インクとしては、水系インク、溶剤系インク、UV硬化性インク、ラテックスインク等を用いることができる。
【0047】
水系インクは、水系溶媒にバインダー樹脂が溶解したインクである。溶剤系インクは、溶剤にバインダー樹脂が溶解したインクである。UV硬化性インクは、UV照射により硬化する液状のモノマー中にバインダー樹脂が溶解したインクである。ラテックスインクは、分散媒にバインダー樹脂が分散したインクである。
【0048】
バインダー樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレート、アクリルアミド、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、および塩化ビニリデンの単独重合体又は共重合体、フッ素樹脂、および天然樹脂が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂およびスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体系樹脂のうち少なくともいずれかが好ましく、アクリル系樹脂およびスチレン-アクリル酸共重合体系樹脂のうち少なくともいずれかがより好ましく、スチレン-アクリル酸共重合体系樹脂がさらに好ましい。なお、上記の共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、およびグラフト共重合体のうちいずれの形態であってもよい。
【0049】
発光剤は、例えば、アップコンバージョン発光する材料(アップコンバージョン材料)や、ダウンコンバージョン発光する材料(ダウンコンバージョン材料)等、受光した光(吸収した光)の波長とは異なる波長の光を発光する波長変換発光剤料が挙げられる。
【0050】
本明細書において、アップコンバージョン発光する材料(アップコンバージョン材料)とは、所定の波長の光を吸収することにより励起され、当該波長よりも短い波長の光を放出(発光)する機能を有する材料のことをいう。また、本明細書において、ダウンコンバージョン発光する材料(ダウンコンバージョン材料)とは、所定の波長の光を吸収することにより励起され、当該波長よりも長い波長の光を放出(発光)する機能を有する材料のことをいう。
【0051】
特に、発光剤としてアップコンバージョン材料を用いることにより、例えば、発光剤を含む材料に赤外線等の長波長のエネルギー線(以下、単に「光」または「励起光L1(図2参照)」とも言う)が照射された場合に、アップコンバージョン材料から可視光を放出(発光)させることができる。
【0052】
アップコンバージョン材料は、所定の波長の光を吸収することにより励起され、当該波長よりも短い波長の光を放出(発光)する機能を有するものであれば、特に限定されないが、以下のような条件を満足するものであるのが好ましい。
【0053】
アップコンバージョン材料は、粒子状をなしているのが好ましい。これにより、アップコンバージョン材料の取り扱いが容易となる。また、アップコンバージョン材料を溶解するために特殊な溶媒を用いるのを省略することができる。
【0054】
アップコンバージョン材料が粒子状をなしている場合、当該粒子の平均粒径は、10nm以上200nm以下であるのが好ましく、15nm以上100nm以下であるのがより好ましい。これにより、アップコンバージョン材料の発光効率をより優れたものとすることができる。
【0055】
アップコンバージョン材料を励起する光(励起光L1)の波長は、780nm以上4000nm以下であるのが好ましく、800nm以上2500nm以下であるのがより好ましく、820nm以上1400nm以下であるのがさらに好ましい。
【0056】
これにより、アップコンバージョン材料の発光効率をより優れたものとすることができる。また、アップコンバージョン材料の選択の幅が広がる。また、受発光装置200(リーダー)の光源として、安価、簡易な構成で一般に広く普及しているものを好適に用いることができる。
【0057】
アップコンバージョン材料による発光のピーク波長は、400nm以上780nm以下であるのが好ましく、420nm以上730nm以下であるのがより好ましい。これにより、アップコンバージョン材料が発光する光を可視光とすることができる。
【0058】
また、アップコンバージョン材料は、有機材料で構成されたものであってもよいが、無機物質を含む材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、アップコンバージョン材料を含むシートSの耐久性をより向上させることができる。
【0059】
なお、有機材料で構成されたアップコンバージョン材料と無機物質を含む材料で構成されたアップコンバージョン材料とを併用してもよい。
【0060】
アップコンバージョン材料を構成する有機材料(アップコンバージョン発光しうる有機材料)としては、例えば、4-[N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(メチル)アミノフェニル]-4’-(6-ヒドロキシヘキシルスルフォニル)スチルベン(APSS 励起光波長:962~968nm、発光色:黄緑色)、等が挙げられる。
【0061】
アップコンバージョン材料を構成する無機物質(アップコンバージョン発光しうる無機物質)としては、例えば、ランタノイドイオン含有の無機物質、遷移金属イオン含有の無機物質等が挙げられる。
【0062】
中でも、アップコンバージョン材料がランタノイドイオン含有の無機物質を含むものであると、アップコンバージョン材料の発光効率をより優れたものとすることができる。
【0063】
また、アップコンバージョン材料が遷移金属イオン(例えば、Ti2+)含有の無機物質を含むものであると、アップコンバージョン材料の発光効率を十分なものとしつつ、アップコンバージョン材料のコストの低減を図ることができる。
【0064】
アップコンバージョン発光しうるランタノイドイオン含有の無機物質としては、例えば、1種または2種以上のランタノイドイオンをドープしたハロゲン化物、酸化物(例えば、希土類酸化物、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムやこれらの複合酸化物等)、硫化物(例えば、希土類酸化物等)やこれらの複合材料等が挙げられる。
【0065】
ランタノイドイオンがドープされるハロゲン化物、酸化物、硫化物としては、例えば、BaY、KZnF、NaYF、NaYb(WO、Ga-La、Y、Gd、ZrO、ZnO、BaTiO、ZrF-SiO、ZnO-SiO等が挙げられる。
【0066】
アップコンバージョン発光しうるランタノイドイオン含有の無機物質の具体例としては、Y:Yb:ErをドープしたNaYF(Y:Yb:Er=78:20:2、励起光波長:980nm、発光色:緑色)、Y:Yb:ErをドープしたNaYF(Y:Yb:Er=69:30:1、励起光波長:980nm、発光色:青色)、Y:Yb:TmをドープしたNaYF(Y:Yb:Tm=78:20:2、励起光波長:980nm、発光色:赤色)、Er3+をドープしたBaCl(励起光波長:1535nm、発光色:緑色)等が挙げられる。
【0067】
また、アップコンバージョン発光しうる遷移金属イオン含有の無機物質としては、例えば、Ti2+をドープしたMgCl(励起光波長:1060~1075nm、発光色:赤紫色)等が挙げられる。
【0068】
また、条件(例えば、形状、組成、表面処理の種類、大きさ等)の異なる複数種のアップコンバージョン材料を用いてもよい。
【0069】
発光剤としてダウンコンバージョン材料を用いることにより、例えば、発光剤を含む材料に紫外線等の短波長の光(励起光L1)が照射された場合に、ダウンコンバージョン材料から可視光の波長領域の光を放出(発光)させることができる。エネルギー線が、紫外線であり、発光剤が、紫外線が照射されることにより発光するものであることにより、発光剤の材料の選定が比較的容易になるとともに、入手するのが比較的安価であるという利点がある。
【0070】
ダウンコンバージョン材料は、粒子状をなしているのが好ましい。これにより、ダウンコンバージョン材料の取り扱いが容易となる。また、ダウンコンバージョン材料を溶解するための特殊な溶媒を用いるのを省略することができる。
【0071】
ダウンコンバージョン材料が粒子状をなしている場合、当該粒子の平均粒径は、10nm以上200nm以下であるのが好ましく、15nm以上100nm以下であるのがより好ましい。これにより、ダウンコンバージョン材料の発光効率をより優れたものとすることができる。
【0072】
ダウンコンバージョン材料を励起する光(励起光)の波長は、200nm以上400nm以下であるのが好ましく、300nm以上380nm以下であるのがより好ましい。
【0073】
これにより、ダウンコンバージョン材料の発光効率をより優れたものとすることができる。また、ダウンコンバージョン材料の選択の幅が広がる。また、ダウンコンバージョン材料を発光させるための光源として、安価、簡易な構成で一般に広く普及しているものを好適に用いることができる。
【0074】
ダウンコンバージョン材料による発光のピーク波長は、400nm以上780nm以下であるのが好ましく、420nm以上730nm以下であるのがより好ましい。これにより、ダウンコンバージョン材料による発光を、可視光とすることができる。
【0075】
また、ダウンコンバージョン材料は、有機材料で構成されたものであってもよいが、無機物質を含む材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、ダウンコンバージョン材料を含むシートSの耐久性をより向上させることができる。
【0076】
ダウンコンバージョン材料としては、例えば、Y:Eu(発光波長:620~630nm)、ZnS:Cu(発光波長:530~540nm)、ZnS:Al(発光波長:445~455nm)等が挙げられる。
【0077】
また、条件(例えば、形状、組成、表面処理の種類、大きさ等)の異なる複数種のダウンコンバージョン材料を用いてもよい。
【0078】
また、本発明では、アップコンバージョン材料とダウンコンバージョン材料とを組み合わせて用いてもよい。
【0079】
このような情報担持部3によれば、可視光環境下では、情報担持部3を視認することができず、情報担持部3の情報を読み取ることができないが、図2に示すように、受発光装置200を用いて励起光L1を照射した際に、発光光L2を読み取ることができる。よって、不正に情報を読み取られるのを防止することができる。
【0080】
また、粘着シート10の平面視において、情報担持部3が形成された領域30は、基材1よりも小さい。これにより、予め情報担持部3の位置を知っていないと、読み取りが難しくなり、不正に情報を読み取られるのをより確実に防止することができる。
【0081】
粘着シート10の平面視において、情報担持部3が形成された領域30の面積は、基材1の面積の5%以上50%以下であるのが好ましく、基材1の10%以上20%以下であるのがより好ましい。これにより、領域30の面積を基材1の面積に対して十分小さくすることができる。よって、予め情報担持部3の位置を知っていないと、読み取りがより難しくなる。
【0082】
また、情報担持部3は、基材1と粘着剤層2との間に設けられているため、貼着状態や、剥離ライナー4から粘着シート10を剥がした際、情報担持部3が外側に露出しない構成となっている。よって、情報担持部3が不本意に摩耗してしまい、情報を読み取れなくなるのを防止することができる。
【0083】
このような本実施形態の粘着シート10は、例えば、以下のようにして製造される。
まず、図3に示すように、基材1上に発光剤を含むインクを用いて印刷を行い、情報担持部3を形成する。一方で、図4に示すように、剥離ライナー4上に粘着剤層2を塗工する。そして、図5に示すように、基材1を、情報担持部3側から、粘着剤層2上に積層し、その後、粘着剤層2を硬化させる。
【0084】
<第2実施形態>
図7は、本発明の粘着シート(第2実施形態)を示す断面図である。図8は、図1に示す粘着シートの製造方法を示す断面図である。図9は、図1に示す粘着シートの製造方法を示す断面図である。図10は、図1に示す粘着シートの製造方法を示す断面図である。
【0085】
以下、これらの図を参照して本発明の粘着シートの第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0086】
本実施形態は、情報担持部の形成位置が異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0087】
図7に示すように、情報担持部3は、粘着剤層2と剥離ライナー4との間に設けられている。すなわち、情報担持部3は、粘着剤層2の基材1に対向する面と反対の面側に設けられている。これにより、貼着状態において、よって、情報担持部3が不本意に摩耗してしまい、情報を読み取れなくなるのを防止することができる。さらに、粘着シート10Aから剥離ライナー4を剥離し、被着体に貼着した後、粘着シート10Aを剥がす際に、粘着剤層2の変形によって情報担持部3がより変形し易くなる。よって、粘着シート10を一旦剥がしてから再度貼着した場合に、情報担持部3を読み取ることを困難にすることができる。
【0088】
また、このような構成では、被着体100が励起光L1および発光光L2を透過する材料で構成されていた場合、被着体100を介して励起光L1を情報担持部3に照射して、被着体100を介して発光光L2を受光することができる。すなわち、被着体100側から情報を読み取ることができる。
【0089】
なお、被着体100を介して発光光L2を受光する構成とする場合、基材1は、暗色であるのが好ましい。これにより、発光光L2を際立たせることができ、より確実に情報を読み取ることができる。
【0090】
このような本実施形態の粘着シート10Aは、例えば、以下のようにして製造される。
図8に示すように、剥離ライナー4上に発光剤を含むインクを用いて印刷を行い、情報担持部3を形成する。そして、情報担持部3が定着したら、図9に示すように、情報担持部3を覆うように、粘着剤層2を剥離ライナー4上に塗工する。そして、図10に示すように、基材1を粘着剤層2上に貼り合わせ、粘着剤層2を硬化させる。
【0091】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0092】
例えば、粘着シートは、基材と粘着剤層との間に、少なくとも1層の中間層を有するものであってもよい。例えば、基材は、接着力増強層(プライマー層等)等を有するものであってもよい。
【0093】
また、前記実施形態では、発光剤は、可視光を発光する場合について説明したが、可視光領域外の光(例えば、赤外線や紫外線)を発光するものであってもよい。
【符号の説明】
【0094】
10 粘着シート
10A 粘着シート
1 基材
2 粘着剤層
3 情報担持部
30 領域
4 剥離ライナー
100 被着体
200 受発光装置
L1 励起光
L2 発光光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10